説明

剥離シート及び粘着シート

【課題】
環境負荷を軽減した、良好な剥離性能を示す剥離シート及び粘着シートを提供する。
【解決手段】
ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜15質量部の有機ポリシロキサン化合物(B)とを含有する樹脂組成物を成形してなることを特徴とする剥離シート、及び、粘着シート基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層に、前記剥離シートが積層されてなる粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境への負荷が軽減された、良好な剥離性能を示す剥離シート、及び、粘着シート基材上に形成された粘着剤層に、前記剥離シートが積層されてなる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりにより、地球温暖化の原因となる炭酸ガス排出量の抑制が叫ばれている。
石油を原料とするプラスチックフィルムは、廃棄処理(焼却処理)する際、多くの炭酸ガスが発生する。そこで、炭酸ガスの排出量削減を目的に、種々の植物資源を原料とする、生分解性を有するプラスチックフィルムの開発が進められている。
なかでも、ポリ乳酸樹脂は、生体由来の原料から得られる乳酸やその誘導体を原料とするバイオベースポリマーとして、単に生分解性を有する樹脂としてではなく環境にやさしい高分子材料として期待されている。また、樹脂の特性として剛性が強く透明性が高いことが挙げられるため、現在その利用が期待されている。
【0003】
一方、剥離フィルム(又は剥離シート)は、キャスト成膜用の保護フィルムや、粘着製品の粘着剤層の保護フィルム、転写用シートの剥離フィルム等として広く利用されている。
従来、剥離フィルムは、石油由来原料、例えば、ポリエチレンテレフタレートのフィルム表面に、付加反応型シリコーン樹脂等の硬化性樹脂及び硬化剤等を含有する剥離層形成溶液を塗布し、得られた塗膜を乾燥(硬化)して剥離層を形成することによって製造されている。
このようにして得られる剥離フィルムは再利用が不能であるため、使用後廃棄する際に、環境への負荷が大きい。このため、環境への負荷を軽減する目的で、生分解性フィルムを使用した剥離フィルムの開発が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、生分解性プラスチックフィルム上に、生分解性天然ワックスを用いて剥離剤層を形成した生分解性剥離フィルムが開示されている。特許文献2には、生分解性を有する基材の片面に、ポリ乳酸セグメントを含む印刷インキで形成される生分解性を有する印刷層と、ポリ乳酸系樹脂を含む離型剤で形成された生分解性を有する剥離剤層を形成した剥離フィルムが開示されている。
しかしながら、これらの剥離フィルムは、基材シートと剥離剤層との密着性が悪く、剥離剤層が脱落したり転着し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−212428号公報
【特許文献2】特許第3942883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、環境への負荷を軽減し、さらには良好な剥離性能を示し、生産性に優れる、剥離シート、及び該剥離シートを用いる粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹脂(A)と、有機ポリシロキサン化合物(B)とを、特定の割合で含有する樹脂組成物を成形してなる剥離シートは、良好な剥離性能を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明の第1によれば、下記(1)〜(4)のシリコン変性ポリ乳酸系樹脂が提供される。
(1)ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜15質量部の有機ポリシロキサン化合物(B)とを含有する樹脂組成物を成形してなることを特徴とする剥離シート。
(2)前記ポリ乳酸系樹脂(A)が、ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする(1)に記載の剥離シート。
(3)前記有機ポリシロキサン化合物(B)が、環状エーテル基を有する化合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の剥離シート。
【0009】
本発明の第2によれば、下記(4)の粘着シートが提供される。
(4)粘着シート基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層に(1)〜(3)のいずれかに記載の剥離シートが積層されてなる粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の剥離シートは、生分解性樹脂であるポリ乳酸系樹脂と有機ポリシロキサン化合物とを含有する樹脂組成物から得られるものであり、環境への負荷が少なく、しかも、良好な剥離性能を示すシートである。
本発明の粘着シートは、本発明の剥離シートを用いているので、環境への負荷が少なく、良好な剥離性能を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、1)剥離シート、及び、2)粘着シートに項分けして詳細に説明する。なお、本発明において「シート」とは、シート状又はフィルム状のものであることを意味する。
【0012】
1)剥離シート
本発明の剥離シートは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜15質量部の有機ポリシロキサン化合物(B)とを含有する樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
【0013】
〈ポリ乳酸系樹脂(A)〉
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂(A)は、分子内に、乳酸由来の繰り返し単位(下記)
を有する樹脂である。
【0014】
【化1】

【0015】
ポリ乳酸系樹脂(A)としては、例えば、ポリ乳酸樹脂;乳酸モノマーと、乳酸モノマーと共重合可能な他のモノマー(以下、「他のモノマー」と略記することがある。)との共重合体;等が挙げられる。
【0016】
ポリ乳酸樹脂は、乳酸(乳酸モノマー)のホモポリマーである。
本発明に用いるポリ乳酸樹脂としては、L−乳酸のホモポリマー、D−乳酸のホモポリマー、L−乳酸とD−乳酸の混合物(ラセミ体)のポリマーのいずれであってもよい。
【0017】
ポリ乳酸系樹脂(A)が共重合体の場合、該共重合体は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。また、カルボキシル基は、乳酸モノマー由来の繰り返し単位に結合していても、他のモノマー由来の繰り返し単位に結合していてもよい。
【0018】
前記他のモノマーとしては、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族多価アルコール等が挙げられる。
【0019】
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酪、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。また脂肪族ヒドロキシカルボン酸が不斉炭素を有する場合、L体、D体、及びその混合物(ラセミ体)のいずれであってもよい。
【0020】
前記脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;その無水物;等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、l,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
ポリ乳酸系樹脂(A)が共重合体であるとき、用いる乳酸モノマーの全モノマーに対するモル比率は、環境への負荷が少なく、良好な剥離性能を示すシートを得る観点から、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上である。
【0023】
これらの中でも、本発明に用いるポリ乳酸系樹脂(A)としては、入手容易性の観点から、ポリ乳酸樹脂が好ましい。
【0024】
ポリ乳酸系樹脂(A)の質量平均分子量は、特に制限されないが、取り扱い容易性、経済性、機械的特性等の観点から、通常10,000〜3,000,000、好ましくは20,000〜2,000,000、より好ましくは30,000〜500,000である。
【0025】
ポリ乳酸系樹脂(A)の製造方法としては、特に制限されず、従来公知の方法が挙げられる。例えば、乳酸及び所望により他のモノマーを、有機溶媒及び触媒の存在下、脱水縮合する直接脱水縮合法;少なくとも2種類のポリ乳酸系樹脂のホモポリマーを重合触媒の存在下、共重合する方法;乳酸、及び所望により他のモノマーを脱水して環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法;等が挙げられる。
【0026】
また、本発明においては、ポリ乳酸系樹脂(A)として市販品を用いることもできる。市販品としては、商品名:レイシアH100J、レイシアM−151S Q04、レイシアM−151S Q52、レイシアH−100 F19(いずれも三井化学社製);商品名:テラマックTE−2000、テラマックTE−1030、テラマックTE−1070、テラマックTE−7000、テラマックTE−7307、テラマックTE−7300、テラマックTE−8210、テラマックTE−8300、テラマックTP−4000、テラマックTP−4030、テラマックHV−6200(いずれもユニチカ社製);商品名:エコディア(東レ社製);商品名:バイロエコールBE−400、バイロエコールBE−410、バイロエコールBE−900、(いずれも東洋績社製);商品名:カネパールB110(カネカ社製);商品名:ラクリエFC−500(富士ケミカル社製);商品名:REVODE101、REVODE110(大神薬化社製);等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
〈有機ポリシロキサン化合物(B)〉
本発明に用いる有機ポリシロキサン化合物(B)は、ポリシロキサン結合を主骨格とする有機ポリシロキサン化合物である。本発明に用いる有機ポリシロキサン化合物(B)としては、ポリシロキサン結合を主骨格とする化合物であればよいが、ブリードアウトしにくいことから環状エーテル基を有する化合物が好ましい。
【0028】
環状エーテル基としては、特に制約はないが、例えば、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。これらのうち、入手容易性、及び、良好な剥離性能を示すシートが得られる観点から、下記式(G1)、(G2)で表されるエポキシ基、3,4−エポキシシクロへキシル基が好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
本発明に用いる有機ポリシロキサン化合物(B)が有する環状エーテル基の個数は、特に制限されないが、通常1〜4個、好ましくは1〜3個である。また、環状エーテル基は、有機ポリシロキサン化合物(B)のポリシロキサン結合からなる主骨格(主鎖)の末端部に結合していても、主鎖の側鎖部に結合していても、主鎖の末端部と側鎖部の両方に結合していてもよい。
【0031】
有機ポリシロキサン化合物(B)としては、例えば、下記式E10〜E40で表される化合物等が挙げられる。
【0032】
【化3】

【0033】
式中、A’は2価の連結基を表す。
A’の2価の連結基としては、本発明の目的を阻害しない限り特に制約はなく、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基等の、炭素数1〜6のアルキレン基;−O−;−S−;これらの組み合わせ;等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、A’としては、炭素数1〜6のアルキレン基;及び、−(CH−O−(CH−で表される基(式中、a、bは0〜6の整数を表す。但し、a=b=0の場合を除く。);等が好ましい。
【0035】
式中、Gはエポキシ環を含む炭化水素基を表す。例えば、前記G1、G2で表される基が挙げられる。
、R、Rは、式:Si(r4)(r5)(r6)で表される基を示し、r4、r5、r6は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
21〜R40は、水素原子、C1〜6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
【0036】
r4〜r6、R21〜R40のC1〜6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。
【0037】
21〜R40、r4〜r6の置換基を有していてもよいフェニル基の置換基としては、メチル基、エチル基等のC1〜6のアルキル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、R21〜R40、r4〜r6としては、入手容易性等の観点から、C1〜3アルキル基及びフェニル基が好ましく、メチル基及びフェニル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
t及びyは正の整数を表し、u、v、w及びxは自然数をそれぞれ表す。
【0039】
本発明においては、有機ポリシロキサン化合物(B)として、加工性の観点から、オイル状のものが好ましく、常温での動粘度が0.5〜500,000mm・s−1の範囲にあるシリコーンオイルが特に好ましい。
【0040】
本発明においては、有機ポリシロキサン化合物(B)として、市販品をそのまま用いることもできる。市販品としては、商品名:X−22−173DX、X−22−169AS、X−22−169B、X−22−163,X−22−163A、X−22−163B,X−22−163C、X−22−9002,KF−105(いずれも信越化学工業社製);商品名:FZ−3720、BY 16−839、SF 8411、SF 8413、SF 8421、BY 16−876、FZ−3736、BY 16−855 D(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン社製);商品名:COATOSIL2810(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製);等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明の剥離シートは、前記ポリ乳酸系樹脂(A)と有機ポリシロキサン化合物(B)とが、特定の割合で配合してなるものである。
【0042】
本発明の剥離シート形成用の樹脂組成物中における有機ポリシロキサン化合物(B)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜15質量部であり、好ましくは1.0〜10質量部である。有機ポリシロキサン化合物(B)の使用量があまりに少ないと、形成される剥離層が良好な剥離性能を発揮せず、あまりに多いと有機ポリシロキサン化合物が、ブリードアウトしてしまうことにより、得られる剥離層が経時安定性に欠けるものとなる。
【0043】
また、前記樹脂組成物には、結晶化速度、耐熱性、機械物性、耐ブロッキング性等の諸物性を改善するために、無機添加剤等の他の成分を加えてもよい。
無機添加剤としては、例えば、タルク、カオリナイト、酸化ケイ素、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0044】
本発明の剥離シートは、前記樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形することによって製造することができる。具体的には、ポリ乳酸系樹脂(A)、有機ポリシロキサン化合物(B)、及び所望により他の成分を混練し、その混練物(樹脂組成物)から直接、またはいったんペレットを製造した後、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法、キャスト成膜方法等の公知の成膜法により製造することができる。これらの中でも、生産速度が速く、成膜可能な膜厚範囲が広く、膜厚の均一性が高いことから、Tダイ法が好ましい。
Tダイ法は、押出機より押し出された溶融樹脂をTダイから吐出し、キャストロールに押し当てて成形する手法である。
混練する際の温度は180〜200℃が好ましい。
【0045】
得られる剥離シートの厚みは、特に制約はないが、通常1〜300μm、好ましくは10〜200μmである。
【0046】
本発明の剥離シートは、剥離剤層を形成する必要がないため、剥離剤との密着性の善し悪しを考慮する必要がなく、また、生産性にも優れるものである。
【0047】
また、本発明の剥離シートには、物性の向上を目的として、逐次又は成膜と同時に、一軸又は二軸延伸加工を施してもよい。
【0048】
また、本発明の剥離シートには、剥離機能の不要な側の面に後工程で印刷用コート層や、粘着剤層を積層する場合、これらの層との密着性を向上させる目的で、所望により、表面処理を施してもよい。
【0049】
表面処理としては、プラズマ処理、サンドブラスト法や溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等の表面の酸化処理等が挙げられる。これらの中でも、簡便性の観点から、窒素ガスと二酸化炭素ガスの混合気体等の雰囲気下で、コロナ放電処理を施す方法が好ましい。
【0050】
得られた剥離シートは長尺状のものであってもよい。長尺状物である場合、ロール状に巻き取ることにより、容易に運搬、保存することができる。
本発明の剥離シートは、前記のように、ポリ乳酸系樹脂を主成分としている。これにより、環境への負荷を軽減することができる。
【0051】
剥離力は、剥離シートの表面に、例えば、ポリエステル製粘着テープなどの、粘着シート基材の一面に粘着剤層を有する積層体フィルムをゴムローラーで1往復圧着して貼り合わせ、23℃、湿度50%の条件下で30分放置後、JIS Z 0237:2000に準拠して、剥離シート側を0.3m/minの速度で180°方向に引っ張ることによって測定することができる。
また、本発明の剥離シートは良好な剥離性能を示す。本発明の剥離シートの剥離力は、通常、1500〜2700mN/20mmである。
【0052】
2)粘着シート
本発明の粘着シートは、粘着シート基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層に、本発明の剥離シートが積層されてなる。
【0053】
用いる粘着シート基材としては、特に制約はなく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルム;ポリ乳酸系樹脂フィルム;表面に金属蒸着膜を有する樹脂フィルム;合成紙、上質紙、含浸紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔、鉄箔等の金属箔;不織布等の多孔質材料からなるシート;等が挙げられる。
粘着シート基材の厚さは、特に制限されず、通常2〜200μm程度である。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
粘着剤層の厚さは、通常3〜100μm、好ましくは5〜80μmである。
【0054】
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制約はなく、従来公知の方法が挙げられる。
例えば、まず、粘着剤及び所望により溶媒を含有する粘着剤層形成用塗布剤を、粘着シート基材の表面に塗布し、乾燥し、粘着剤層を形成して、粘着剤層付きシート基材を得る。
塗布方法としては、グラビアコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、スクリーン印刷機等の公知の塗工装置によって塗布する方法が挙げられる。
【0055】
次に、得られた粘着剤層付きシート基材の粘着剤層上に、前述の剥離シートを積層し、加圧圧着することにより粘着シートを製造することができる。
加圧圧着する方法としては、特に制約はなく、ゴムローラー等の加圧・圧着装置を用いる方法等が挙げられる。
なお、市販の、粘着剤層付きシート基材をそのまま使用することもできる。
【0056】
また、本発明の粘着シートは、上記粘着剤層形成用塗布剤を、前記剥離シート上に塗布し、乾燥し、粘着剤層を形成した後、該粘着剤層に粘着シート基材を圧着することによっても製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
二軸押出混練機(テクノベル社製、KZW25TWIN−30MG−STM、以下にて同じ)を用いて、ポリ乳酸系樹脂(A1)(東洋紡績社製、商品名:バイロエコールBE−400)100質量部と、有機ポリシロキサン化合物(B1)(東レ・ダウコーニング社製、商品名:X−22−163B)3質量部とを180℃で溶融混練し、押出成形用樹脂組成物を得た。次いで、この樹脂組成物を小型Tダイ押出試験機(東洋精機製作所社製、ラボプラストミル30C150)によって押出成形し、膜厚75μmの剥離シート(1)を作製した。
【0059】
(実施例2〜9、比較例1)
下記に示す種類のポリ乳酸系樹脂(A)、有機ポリシロキサン(B)を用い、第1表記載の配合に従い、実施例1と同様にして剥離シート(2)〜(10)を作製した。表中、各成分の数値は固形分換算の質量部を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
・ポリ乳酸系樹脂(A)
(A1):東洋紡績社製、商品名:バイロエコールBE−400
・有機ポリシロキサン化合物(B)
(B1):東レ・ダウコーニング社製、商品名:SF8413、粘度:18,000mm/s
(B2):エポキシ基を有する有機ポリシロキサン化合物、信越シリコーン社製、商品名:X−22−163B、粘度:60mm/s
(B3):エポキシ基を有する有機ポリシロキサン化合物、信越シリコーン社製、商品名:X−22−173DX、粘度:63mm/s
(B4):3,4−エポキシシクロへキシル基を有する有機ポリシロキサン化合物、信越シリコーン社製、商品名:X−22−169B、粘度:70mm/s
(B5):エポキシ基を有する有機ポリシロキサン化合物、MOMENTIV社製、COATOSIL2810、粘度:20mm/s
(B6):3,4−エポキシシクロへキシル基を有する有機ポリシロキサン化合物、東レ・ダウコーニング社製、FZ−3720、粘度:700mm/s
(B7):3,4−エポキシシクロへキシル基を有する有機ポリシロキサン化合物、東レ・ダウコーニング社製、BY16−839、粘度:6000mm/s
【0062】
(実施例10〜18、比較例2)
実施例1〜9及び比較例1で得られた剥離シート(1)〜(10)の表面に、巾25mm、長さ15cmのポリエステル製粘着テープ(日東電工社製、No.31B 75ハイ)を、粘着テープの粘着剤層側が内側になるように重ね、ゴムローラーで1往復圧着して貼り合わせ、粘着シート(1)〜(10)を得た。
【0063】
得られた粘着シート(1)〜(10)につき、下記に示す方法で、剥離力測定を行った。その結果を下記第2表に示す。
【0064】
〈剥離力測定〉
粘着シート(1)〜(10)を23℃、湿度50%の条件下で30分放置後、JIS Z 0237:2000に準拠して、剥離シートを0.3m/minの速度で180°方向に引っ張ることによって剥離力(mN/20mm)を測定した。
【0065】
【表2】

【0066】
第2表より、ポリ乳酸系樹脂(A)単独の剥離シートを用いた比較例2の粘着シート(10)に比べ、有機ポリシロキサン化合物(B)を含有する剥離シートを用いた実施例10〜18の粘着シート(1)〜(9)は剥離性能に優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜15質量部の有機ポリシロキサン化合物(B)とを含有する樹脂組成物を成形してなることを特徴とする剥離シート。
【請求項2】
前記ポリ乳酸系樹脂(A)が、ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記有機ポリシロキサン化合物(B)が、環状エーテル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離シート。
【請求項4】
粘着シート基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層に、請求項1〜3のいずれかに記載の剥離シートが積層されてなる粘着シート。

【公開番号】特開2011−246552(P2011−246552A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119404(P2010−119404)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】