説明

割型による合成樹脂製品の成形方法及びその装置

【課題】金型の開閉速度を高速にしても金型の開閉が安定してでき、成形速度の高速化と成形品の均質化を図ることができる樹脂成形品の成形方法とその装置を提供する。
【解決手段】固定側金型本体にキャビティプレートを有し、可動側金型本体に、割型を取り付けたスライドプレートと、該スライドプレートを開閉する型閉めカム及び型開きカムを設け、エジェクターの突き出しと前記スライドプレートの開閉動作をリンクさせ、型開きに際してキャビティプレート分離工程と割型を固定したスライドプレートの開き工程を分離して行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂キャップ等の樹脂製品の割型による成形方法及びその装置に関し、特に成形金型に割型を必要とする樹脂製品の成形方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂キャップの成形は、射出成形又は圧縮成形で行っているが、アンダーカット部を有し無理抜きでは破損が生じる恐れのある形状が複雑な樹脂製品の成形は一般に割型で行っている。割型を使用しての成形での型開きは、通常型開きカムの作動によりキャビティプレートの上昇とスライドプレートの開きをリンクさせて同時に行っている。即ち、上型が取り付けられているキャビティプレートと、割型が取り付けられているスライドプレートがリンクして、金型の開閉を行っている。当該金型装置の型開き技術を詳細に記載した文献情報は発見できなかったので、従来合成樹脂キャップの成形技術分野で行われている割型による成形装置における特に型開き方法及び装置を図6〜図8により説明する。図6〜図8は、図9に示すような合成樹脂キャップの射出成形装置の金型構造を示している。図9に示す合成樹脂キャップ70は、天壁71と、該天壁71の外周縁から垂下するスカート壁72と、該スカート壁下端に破断可能な周方向弱化部73を介して設けられ内周面にフラップ74が形成されたタンパーエビデントバンド75とからなっており、周方向弱化部73から下方部の外周面を割型を用いて成形している。
【0003】
図6〜図8は、図9に示すような合成樹脂キャップを成形するための、割型を有する従来の成形装置の要部を示し、図6はキャビティプレート面からみた平面図、図7は図6のA−A断面図、図8はB−B断面図である。図7(a)−(d)及び図8(a)−(d)はそれぞれ対応する状態における断面を示している。従来の割型を有する成形装置は、図7に示すように、固定側金型本体50に固定されたキャビティプレート51に、型開きカム52及びロッキングブロック53(図8)が固定されている。可動側金型本体55のストリッパプレート56には、割型が固定されたスライドプレート57がスライド可能に配置されている。従って、型開きに際して図7(a)及び図8(a)に示す成形が終了した状態(型閉状態)から可動側金型本体55が固定側金型本体50に対して下動することによって、(b)に示すようにキャビティプレート51の開きと、型開きカム52によるスライドプレート57の開きがリンクして同時に行われ、(c)に示す型開き完了の状態となる。次いで、図8(d)に示すようにエジェクター58が突き出すことにより、ストリッパプレート56が上昇して、成形品の型抜き(取り出し)が行われる。
【0004】
以上のように、従来の割型を有する成形装置では、型開きは固定側金型本体50に設けられた型開きカム52の作動により可動側金型本体の下降とスライドプレート57の開きをリンクさせて同時に行っている。そのため、従来の割型を有する成形方法及び装置において、型の開閉速度をより高速化すると、型開閉速度の上昇に伴いスライドプレートの戻りなどが発生して、キャビティプレートの上昇とスライドプレートの開きが追従しなくなり、動作が不安定になってしまい、結果的に商品の均質化を阻害するという問題点が生じている。一方において、合成樹脂キャップ等の小型・大量生産製品の場合、生産性の向上のためには生産速度のより高速化が求められていると共により高品質化が求められている。しかしながら、従来の上記成形方法及び装置において、型開閉速度の上昇に伴い、上記のように動作が不安定になるという事情から、高速化に制限を受け、生産性の向上を阻まれている問題点がある。
【0005】
本願発明に関連する先行技術文献情報は発見できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、従来の割型を必要とする樹脂成形品の成形に際しての、型開きの上記問題点を解決しようとするもので、型の開閉速度を高速にしても型の開閉が安定してでき、成形速度の高速化と成形品の均質化を図ることができる樹脂成形品の成形方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の樹脂成形品の成形方法は、割型を必要とする樹脂成形品の成形方法において、成形終了後の型開きは固定側金型本体と可動側金型本体の分割工程と割型を固定したスライドプレートの開き工程を分離して行なうことを特徴とするものである。
固定側金型本体と可動側金型本体の分割工程と割型を固定したスライドプレートの開き工程を分離したので、スライドプレートの開閉が固定側金型本体と可動側金型本体の分割とを独立して駆動させることができ、高速化してもスライドプレートの開閉、即ち割型の開閉が安定してでき、従来よりも高速化が可能となった。
【0008】
前記スライドプレートの開き工程は、専用の型開きカムで行い、エジェクターの突き出しとスライドプレートの開閉動作をリンクさせてなることで安定して行うことができる。本発明の成形方法及び装置は、天壁と、該天壁の外周縁から垂下するスカート壁と、該スカート壁下端に破断可能な周方向弱化部を介して設けられ内周面にフラップが形成されたタンパーエビデントバンドとからなる合成樹脂キャップの成形に好適に適用できる。
【0009】
上記課題を解決する本発明の樹脂成形品の成形装置は、割型を必要とする樹脂成形品の成形装置において、固定側金型本体にキャビティプレートを有し、可動側金型本体に、割型を取り付けたスライドプレートと、該スライドプレートを開閉する型閉めカム及び型開きカムを設け、エジェクターの突き出しと前記スライドプレートの開閉動作をリンクさせてなることを特徴とするものである。
【0010】
前記スライドプレートは、前記ストリッパプレート上にスライド可能に設けられ、且つ前記型閉めカム及び型開きカムに当接するカムフォロワ面となる型開き側傾斜面及び型閉め側傾斜面が形成され、前記エジェクターの突き上げにより前記型閉めカム及び型開きカムのカム面と当接して割型の開閉を行うように構成されている。前記樹脂成形品の成形装置が、合成樹脂キャップの成形装置に好適であり、複数個の合成樹脂キャップを同時に成形できるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、割型が取り付けられたスライドプレートの開閉動作をそれぞれ専用のカムで行い、エジェクターの突き出しとスライドプレートの開閉動作をリンクさせることで、エジェクターを突き出すとスライドプレートが開き、エジェクターを戻すとスライドプレートが閉じる構造としているので、型開きの際にキャビティプレートの開きとスライドプレートの開きを分離することを可能にした。そのため、キャビティプレートの型開き動作と割型の開閉動作が別系統で行われ、型開閉速度を上昇させても、スライドプレートの開閉動作を安定して行うことができ、従来の割型を有する金型装置よりも高速で型開きができ、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る成形装置のキャビティプレート面から見た平面図である。
【図2】(a)〜(d)は型開き工程の進行順に於ける図1のA−A断面図である。
【図3】(a)〜(d)は型開き工程の進行順に於ける図1のB−B断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成形装置の縦断面概略図であり、右半分にはキャビティ部及びスライドプレートの開閉制御部の各断面を示し、左半分には固定側金型本体の各プレートの連結状態を模式的に示している。
【図6】従来例に係る成形装置のキャビティプレート面から見た平面図である。
【図7】(a)〜(d)は型開き工程の進行順に於ける図6のA−A断面図である。
【図8】(a)〜(d)は型開き工程の進行順に於ける図6のB−B断面図である。
【図9】上記本実施形態に係る成形装置及び従来例の成形装置により、成形された合成樹脂キャップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の割型による合成樹脂製品の成形方法及びその装置の実施形態を図面を基に詳細に説明する。図の実施形態は、図9に示すような合成樹脂キャップを射出成形する場合の成形装置を示している。
図1は可動側金型本体の平面図、図2は図1のA−A断面図、図3はB−B断面図、図4は図3の要部拡大図、図5はその縦断面概略図である。図5の断面図は、分かりやすくするために、右半分にはキャビティ部7及びスライドプレートの開閉制御部8の各断面を示し、左半分には可動側金型本体の各プレートの連結状態を模式的に示している。本実施形態に係る割型を有する成形装置1は、以下に詳述するように、従来キャビティプレートとスライドプレートが連動して同時に型開きしていたものを、キャビティプレートの開きとスライドプレートの開きを分離した点に特徴を有する。
【0014】
本実施形態に係る成形装置1は、図5に示すように、固定側金型本体部2と該固定側金型本体部に対して上下動可能に設けられた可動側金型本体部3とからなり、可動側金型本体部3が図示しない金型駆動源により上下駆動される。
図5において、10はキャビティプレートであり、固定側金型本体部2に固定されている。該キャビティプレート10には、キャビティ型11が図1に示すキャビティ部7に対応するように配列され、各キャビティ型11にはゲートを介してノズル13が配列されている。そして、該キャビティプレート10には型締め時に後述するスライドプレートに係合してその開きを固定するロッキングブロック15が一体に固定されている。図の実施形態では、一度に4×6個のキャップを成形するように、キャビティプレートには24個のキャビティ型が配置されているが、それに限るものではない。
【0015】
可動側金型本体部3には、一対の割型16(図3、図4参照)が取り付けられているスライドプレート17が図1において、各キャビティの横方向中心線Lに対して開閉(スライド)可能に支持するストリッパプレート18が、エジェクター19によって、上下動可能に設けられている。そして、ストリッパプレート18の上下動に伴ってスライドプレート17も上下動し、該スライドプレート17と係合して開閉制御する型開きカム20及び型閉めカム21が固定のカム固定プレート22に固定されている。スライドプレート17は、カムフォロワ部の断面形状を図2に示すように、型開きカム20を挟んで1対づつ設けられ、型開きカム20のカム面と係合する内側傾斜面25が、対向するスライドプレートのカム面が互いに外側向きに傾斜するように形成されている。また、前記内側傾斜面と反対側には、型閉めカム21のカム面と係合する外側傾斜面26が、同様に外向きに傾斜して設けられている。
【0016】
型開きカム20は、図2に示すように、基部がカム固定プレート22に固定され、その上部側に型開きカム面27を有している。型開きカム面27は、各一対のスライドプレートの内側傾斜面25と同角度に傾斜して、内側傾斜面と接触し、後述するようにストリッパプレート18がエジェクターにより突き上げられることによって、スライドプレート17の内側傾斜面25が型開きカム面に沿って移動することにより、図2において左右に開く作用を受ける。また、型閉めカム21も型開きカム20と同様に、その基部がカム固定プレート22に固定され、その上部側に型閉めカム面28を有している。型閉めカム21は、図2に示すよう、隣接するスライドプレート17間及びその最外側のスライドプレート17の外側に配置されて、スライドプレート17間に配置された型閉めカム21は1個で両側に隣接するスライドプレート17を型閉め方向に作動させるように両側に型閉めカム面28が形成されている。型閉めカム面28は、スライドプレート17の外側傾斜面26と同角度に傾斜して、外側傾斜面と接触し、後述するようにスライドプレート17がエジェクターにより下降することによって、外側傾斜面26が型閉めカム面28に沿って移動することにより圧接して閉じる作用を受ける。
【0017】
本実施形態に係る割型を有する成形装置1は、以上のように構成され、型開き工程を図2及び図3に基づいて説明する。図2(a)〜(d)は図1におけるA−A断面における工程図であり、図3(a)〜(d)は、図2(a)〜(d)に対応するB−B断面における工程図である。それぞれにおける(a)は、型閉め状態における各金型で製品が射出成形され、型開きが行われる直前の状態を示す。この状態では、可動側金型本体部3が最上方位置にあり、キャビティプレートが割型に圧接して、キャビティ型、割型、コア型でキャビティを形成し、キャビティ型に固定されたロッキングブロック15がスライドプレート17の外側テーパー面に圧接して、スライドプレートが開くのを阻止している。この状態から、(b)に示すように、可動側金型本体部3が下降することによって、固定側と可動側が分割され、キャビティプレート10が完全に成形品と離れて型開きが行われる。この状態では、スライドプレート17はロッキングブロック15による拘束は解除されているが、まだ閉じた状態に維持されている。
【0018】
次いで、(b)の状態からエジェクター19が上昇して、ストリッパプレート18を突き出すことにより、スライドプレート17が上昇し、スライドプレートの内側傾斜面25が型開きカム面に沿って圧接しながら上昇することにより、スライドプレートが左右に開き、割型が開く。(c)はその途中図であり、(d)はエジェクターの突き出しを終了して、割型が完全に開き、製品の取出が終了した状態を示している。成形品の取り出しは、従来の金型装置と同様な機構によって行われるので詳細な説明は省略するが、例えばコア型の中心部のノックアウトロッド29が上方に突出することにより、成形品をコア型から上方に突き上げて型抜きを行い、次いで図示しない吸盤等により各成形品の上面を吸着して、取り出し位置に排出する。
【0019】
一方、型閉めは上記の型開きと逆の順序で行われ、図2、図3の(d)の状態から、エジェクターが下降することにより、ストリッパプレート18が下降することにより、該ストリッパプレートにスライド自在に設けられたスライドプレート17の外側傾斜面26が型閉めカムの型閉めカム面28に沿って圧接することにより、閉まる方向にスライドし、該スライドプレートに固定された割型16が閉まる。この状態で可動側金型本体部が上昇することによって、キャビティプレート10が割型に圧接すると共に、キャビティプレート10に固定されたロッキングブロック15がスライドプレートに圧接して固定し、型閉めが完了する。
【0020】
以上のように、本発明では、スライドプレートの開閉動作をそれぞれ専用のカムで行い、エジェクター突き出しとスライドプレートの開閉動作をリンクさせることで、エジェクターを突き出すとスライドプレートが開き、エジェクターを戻すとスライドプレートが閉じる構造とすることによって、型開きの際にキャビティプレートの開きとスライドプレートの開きを分離することを可能にした。そのため、型開閉速度を上昇させても、スライドプレートの開閉動作が安定して行うことができ、従来の割型を有する金型装置よりも高速で型開きができ、生産性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の割型による合成樹脂製品の成形方法及び装置は、合成樹脂キャップに限らず割型を必要とする樹脂成形品の金型装置として広く適用でき、特に高速生産を必要とする小型物品の成形に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 樹脂成形品の成形装置
2 固定側金型本体部
3 可動側金型本体部
7 キャビティ部
8 開閉制御部
10 キャビティプレート
11 キャビティ型
13 ノズル
15 ロッキングブロック
16 割型
17 スライドプレート
18 ストリッパプレート
19 エジェクター
20 型開きカム
21 型閉めカム
22 カム固定プレート
25 内側傾斜面
26 外側傾斜面
27 型開きカム面
28 型閉めカム面
29 ノックアウトロッド
70 合成樹脂キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
割型を必要とする樹脂成形品の成形方法において、成形終了後の型開きは固定側金型本体と可動側金型本体の分割工程と割型を固定したスライドプレートの開き工程を分離して行なうことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記スライドプレートの開き工程は、専用の型開きカムで行い、エジェクターの突き出しとスライドプレートの開閉動作をリンクさせてなることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記樹脂成形品が、天壁と、該天壁の外周縁から垂下するスカート壁と、該スカート壁下端に破断可能な周方向弱化部を介して設けられたタンパーエビデントバンドと、該タンパーエビデントバンドの内周面に形成されたフラップからなる合成樹脂キャップである請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
割型を必要とする樹脂成形品の成形装置において、固定側金型本体にキャビティプレートを有し、可動側金型本体に、割型を取り付けたスライドプレートと、該スライドプレートを開閉する型閉めカム及び型開きカムを設け、エジェクターの突き出しと前記スライドプレートの開閉動作をリンクさせてなることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項5】
前記スライドプレートは、前記ストリッパプレート上にスライド可能に設けられ、前記型閉めカム及び型開きカムに当接するカムフォロワ面となる型開き側傾斜面及び型閉め側傾斜面が形成され、前記エジェクターの突き上げにより前記型閉めカム及び型開きカムのカム面と当接して割型の開閉を行うようにしてなる請求項4に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項6】
前記樹脂成形品の成形装置が、合成樹脂キャップの成形装置であり、複数個の合成樹脂キャップを同時に成形できる請求項4又は5に記載の樹脂成形品の成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−212880(P2011−212880A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81132(P2010−81132)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】