説明

創傷処置用ポリウレタン発泡体の製造方法

本発明は、シラン末端ポリウレタンを発泡及び硬化することにより得られる、ポリウレタンに基づく新規な創傷接触材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン末端ポリウレタンを発泡及び硬化することにより得られる、ポリウレタンに基づく新規な創傷接触材料を提供する。
【背景技術】
【0002】
滲出性創傷を処置するための発泡体製創傷接触材料は、従来技術に存在する。ある種の触媒及び(発泡体)添加剤の存在下でのジイソシアネート及びオリオール又はNCO-官能性ポリウレタンプレポリマーの混合物と水との反応により製造されたポリウレタン発泡体が、その高い吸収性及び良好な機械的特性のために、通常使用される。芳香族ジイソシアネートは、最も発泡性が良いので、通常使用される。このような方法が多数知られており、例えば、US 3,978,266、US 3,975,567 及びEP-A 0 059 048 に記載されている。しかしながら、上記の方法は、ジイソシアネート又はNCO-官能性プレポリマーを含む反応性混合物を使用する必要があり、その取扱いは、例えば適切な防護手段を必要とするので、技術的に面倒であり、コストがかかるという欠点を有している。このような混合物を(ヒトの)皮膚に直接適用することは、存在するイソシアネート基の高い反応性の故に、不可能である。
【0003】
遊離イソシアネート基を含む組成物の使用する方法と同様に、ポリウレタン発泡体は、発泡剤の使用により発泡し得るシラン末端ポリウレタンプレポリマーを使用して製造することもできる。シーリング発泡体及び絶縁発泡体の製造には、種々の態様が知られており、例えば、EP-A 1 098 920 に記載されている。この組成物を創傷接触材料の製造に使用することは、これまで知られていなかった。創傷接触材料として使用するための重要な必要条件、例えば良好な水蒸気透過性及び高液体吸収能は、これまで記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 3,978,266
【特許文献2】US 3,975,567
【特許文献3】EP-A 0 059 048
【特許文献4】EP-A 1 098 920
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、イソシアネートを含む反応性混合物を用いた場合の上記欠点を解消するポリウレタン製創傷接触材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、シラン末端ポリウレタンプレポリマー(STP: silane-terminated polyurethane prepolymer)は、シラン基の架橋を介して発泡及び硬化した後、医療用の創傷接触材料として非常に有用であることが見出された。
【0007】
従って、本発明は、シラン末端ポリウレタンプレポリマーから得られる発泡体の、創傷接触材料としての使用を提供する。
【0008】
また、本発明は、
a)シラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)
b)(発泡体)添加剤(II)
c)任意に、触媒(III)
d)任意に、発泡剤(IV)、及び
e)任意に、更なる助剤及び添加剤(V)
を含む組成物を発泡させ、発泡の前、間又は後に、組成物を基材に適用し、最後に、水の存在下で硬化させる、創傷接触材料の製造方法を提供する。
更に、本発明は、本発明の方法により得られる創傷接触材料を提供する。
【0009】
加えて、本発明は、創傷処置用接触材料を製造するための、
a)シラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)
b)(発泡体)添加剤(II)
c)任意に、触媒(III)
d)任意に、発泡剤(IV)、及び
e)任意に、更なる助剤及び添加剤(V)
を含む組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリウレタン発泡体創傷接触材料は、多孔性材料であり、好ましくは、少なくとも部分的に連続気泡を有しており、シロキサン結合 Si-O-Si により架橋されたポリウレタンから本質的になり、菌又は外的影響を排除することにより創傷を保護し、生理液又は滲出液を急速かつ高度に吸収し、適切な湿気透過性により創傷を最適な状態に保つ。
【0011】
本発明の目的にとってのシラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)は、2個以上のウレタン基及び2個以上のアルコキシシラン基を有しており、水及び場合により触媒(III)の存在下でシロキサン結合 Si-O-Si を介して反応して架橋されたポリウレタンを形成することができるプレポリマー全てを包含する。
【0012】
このようなシラン末端ポリウレタンプレポリマーは、
i)少なくとも1.5の平均NCO官能価となる遊離イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)を
ii)アルキレン基を介してケイ素原子に結合したアミノ基、ヒドロキシル基及び/又はチオール基を有するジ−及び/又はトリアルコキシシラン(B)と
反応させることにより、あるいは、
iii)少なくとも1.5の平均OH官能価を有するポリヒドロキシ化合物(C)を
iv)アルキレン基を介してケイ素原子に結合したイソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するジ−及び/又はトリアルコキシシラン(D)と
反応させることにより、
得ることができる。
【0013】
遊離イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)は、有機ポリイソシアネートと1.5〜6の官能価を有するポリヒドロキシ化合物とを、有機ポリイソシアネートを過剰に使用して(モル比NCO/OH>1)、常套の方法で反応させることにより得ることができる。
【0014】
適当なポリイソシアネートには、周知の、2以上の平均NCO官能価を有する芳香族、芳香脂肪族、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートが含まれる。
【0015】
そのような適当なポリイソシアネートの例は、1,4-ブチレンジイシソアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4-及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4'-イソシアナトシクロヘキシル)メタン又はそれらの所望異性体含量の混合物、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トルイレンジイシソアネート、1,5-ナフチレンジイシソアネート、2,2'-及び/又は2,4'-及び/又は4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-及び/又は1,4-ビス(2-イソシアナトプロポ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)及びC〜C−アルキル基を有するアルキル2,6-ジイソシアナトヘキサノエート(リシンジイソシアネート)、並びに4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)及びトリフェニルメタン4,4',4''-トリイソシアネートである。
【0016】
上記ポリイソシアネートと同様に、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン及び/又はオキサジアジントリオン構造を有する部分的に変性されたジイソシアネート又はトリイソシアネートも使用することができる。
【0017】
上記のポリイソシアネート又はそれらの混合物は、好ましくは、脂肪族的及び/又は脂環式的に結合したイソシアネート基を有し、2〜4の範囲、好ましくは2〜2.6の範囲、より好ましくは2〜2.4の範囲の平均NCO官能価を有する。1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体ビス(4,4'-イソシアナトシクロヘキシル)メタン又はそれらの混合物を使用することが、特に好ましい。
【0018】
成分(C)として有用なポリヒドロキシ化合物には、ポリウレタン被覆技術において周知の、少なくとも1.5のOH官能価を有する、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリカーボネートポリオールの全てが含まれる。これらポリオールは、単独で又は相互の所望混合物として、使用することができる。しかしながら、ポリエーテルポリオールを使用するのが好ましい。
【0019】
成分(C)としてのポリエステルポリオールは、ジオール並びに場合によりトリオール及びテトラオールと、ジカルボン酸並びに場合によりトリカルボン酸及びテトラカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸又はラクトンとから生成される周知の重縮合物である。遊離ポリカルボン酸に代えて、対応するポリカルボン酸無水物又はポリエステル形成用低級アルコールとの対応するポリカルボン酸エステルを使用することも可能である。
【0020】
ポリエステルポリオールを製造するのに適したジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール(1,3)、ブタンジオール(1,4)、ヘキサンジオール(1,6)、及び異性体ネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートであり、中でも、ヘキサンジオール(1,6)及び異性体ネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートが好ましい。トリオール又はテトラオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが適している。
【0021】
有用なジカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸及び/又は2,2-ジメチルコハク酸が含まれる。対応する酸無水物も、酸源として使用することができる。好ましい酸は、上記のような脂肪族酸及び芳香族酸である。アジピン酸、イソフタル酸及び場合によりトリメリット酸が特に好ましい。
【0022】
末端ヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールの製造において反応種として有用なヒドロキシカルボン酸には、例えば、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸などが含まれる。適当なラクトンには、カプロラクトン、ブチロラクトン及びこれらの同族体が含まれる。カプロラクトンが好ましい。
【0023】
成分(C)として有用なポリヒドロキシ化合物には、更に、400〜8000g/molの範囲、好ましくは600〜3000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有するポリカーボネート、好ましくはポリカーボネートジオールが含まれる。これら化合物は、炭酸誘導体、例えばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート又はホスゲンとポリオール、好ましくはジオールとの反応により、常套の方法で得ることができる。
【0024】
ポリカーボネートを製造するのに有用なジオールの例は、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、及び上記ジオールのラクトン変性ジオールである。
【0025】
ポリカーボネートジオールは、好ましくは、40〜100重量%のヘキサンジオール、好ましくは1,6-ヘキサンジオール及び/又は基本となるジオールに基づくヘキサンジオール誘導体を含む。そのようなヘキサンジオール誘導体は、ヘキサンジオールに基づいており、末端OH基と共にエステル基又はエーテル基を有する。そのような誘導体は、ヘキサンジオールと過剰のカプロラクトンとの反応により、あるいはジ−又はトリヘキシレングリコールを形成するヘキサンジオール自体とのエーテル化により、得られる。
【0026】
成分(C)として有用なポリヒドロキシ化合物は、更にポリエーテルポリオールを含む。適当なポリエーテルポリオールは、例えば、ポリウレタン化学において自体既知であり、カチオン開環によるテトラヒドロフランの重合により得られるポリテトラメチレングリコールポリエーテルである。
【0027】
成分(C)として好ましいポリエーテルポリオールには、周知である、ジ−又はポリ官能性出発分子へのスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド及び/又はエピクロロヒドリンの付加物が含まれ、中でも、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド及びそれらの混合物の付加物が特に好ましい。非常に好ましい化合物は、エチレンオキシドの重量割合が少なくとも5重量%から80重量%、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは10〜30重量%(この重量%は、付加物中に存在するエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位と使用した出発分子との合計に基づく)である、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの付加物である。
【0028】
エチレンオキシド又はプロピレンオキシドによるアルコキシル化は、塩基触媒の存在下で、又は複金属シアン化物(DMC)化合物を使用して、行うことができる。
【0029】
成分(C)のポリエーテルポリオールを調製するのに有用な出発分子には、従来技術で使用されている低分子量ポリオール、有機ポリアミン及び/又は水の全て、例えば、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,4-ブタンジオールが含まれる。好ましい出発分子は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール又はこれらの混合物である。
【0030】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量Mnは、好ましくは300〜20000g/molの範囲、より好ましくは1000〜12000g/molの範囲、最も好ましくは2000〜6000g/molの範囲にある。
【0031】
有機ジ−又はポリイソシアネートと1.5〜6の官能価を有するポリヒドロキシ化合物とを、1未満のNCO/OHモル比で反応させると、成分(C)として有用なウレタン基を有するポリヒドロキシ化合物が得られる。
【0032】
成分(B)として有用であるアミノ基、ヒドロキシル基及び/又はチオール基を有するジ−及び/又はトリアルコキシシランは、当業者にはよく知られており、それらの例は、アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、(アミノメチル)メチルジメトキシシラン、(アミノメチル)メチルジエトキシシラン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルN-(3-トリエトキシシリルプロピル)アスパルテート、ジエチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アスパルテート及びジエチルN-(3-ジメトキシメチルシリル-プロピル)アスパルテートである。ジエチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アスパルテート及びアミノプロピルトリメトキシシランを使用するのが好ましい。
【0033】
成分(D)として有用であって、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するジ−及び/又はトリアルコキシシランも知られている。その例は、イソシアナトメチルトリメトキシシラン、イソシアナトメチルトリエトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジエトキシシラン、3-イソシアナト-プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン及び3-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシランである。3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン及び3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランを使用するのが好ましい。
【0034】
添加剤(II)は、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性界面活性剤又はそれらの混合物であり、これらは、本発明の組成物中で、発泡性、気泡安定性又は得られるポリウレタン発泡体の特性を改良するように機能する。好ましい添加剤(II)は、非イオン性界面活性剤であり、より好ましくは、ポリエーテルシロキサンに基づく非イオン性界面活性剤である。
【0035】
好ましい添加剤(II)は、安定効果のみならず、湿気吸収量及び速度として発現される発泡体の親水化に関して特に有利な影響をもたらす。
【0036】
本発明の組成物に配合するのに有用な触媒(III)は、基本的に、アルコキシシラン基及びシラノール基の加水分解及び縮合をそれぞれ触媒する、ケイ素化学から既知の物質の全てを含む。その例は、金属塩、金属錯体、有機金属化合物、並びに酸及び塩基である。好ましくは、有機及び無機酸又は塩基を使用し、特に好ましくは、例えば塩酸又はp-トルエンスルホン酸のような有機又は無機酸を使用する。触媒(III)を本発明の組成物で使用する場合、好ましくは、発泡体の実際の架橋にも必要である水に溶解する。
【0037】
発泡剤(IV)は、最も単純には空気又は窒素であるが、本発明の組成物を発泡させるために、ポリウレタン化学において知られている他の発泡剤を使用することもできる。発泡剤の例は、n-ブタン、イソブタン、プロパン並びにジメチルエーテル、及びそれらの混合物である。
【0038】
有用な助剤及び添加剤(V)には、例えば、充填材、増粘剤又はチキソトロープ剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、顔料及び/又は流動調節剤が含まれる。
【0039】
好ましい助剤及び添加剤は、充填材、好ましくは有機充填材であり、これは、本発明のポリウレタン発泡体の機械的性質を改良するのに寄与し得る。有用な例には、白亜、微粉末シリカ、特にヒュームドシリカが含まれる。
【0040】
有用な可塑剤には、ポリウレタン発泡体に対して十分な相溶性を有する天然又は合成物質が含まれる。適当な可塑剤の例は、樟脳、(脂肪族)ジカルボン酸、例えばアジピン酸のエステル、ポリエステル、特に1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールと縮合したアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸及びフタル酸に基づくポリエステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル及びヒドロキシカルボン酸エステル(例えば、クエン酸、酒石酸又は乳酸に基づくエステル)である。
【0041】
シロキサン架橋を形成するためのアルコキシシラン基の架橋による硬化は、水の存在下に起こり、水は、液体状態で、例えば触媒の溶媒として、直接添加することができ、あるいは、大気中の湿気として大気から導入され得る。
【0042】
本発明に本質的な組成物は、例えば、乾燥物質に基づいて、80〜99.9重量部のシラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)、及び0.1〜20重量部の(発泡体)添加剤(II)を含む。好ましくは、本発明の組成物は、乾燥物質に基づいて、85〜99.9重量部のシラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)、及び0.1〜15重量部の(発泡体)添加剤(II)、より好ましくは95〜99.9重量部のシラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)、及び0.1〜5重量部の(発泡体)添加剤(II)を含む。
【0043】
助剤及び添加剤(V)は、典型的には0〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の量で添加される。
【0044】
架橋のために周囲湿気を超えて添加される水は、典型的には、アルコキシ基対添加する水のモル比が1又はそれ以下(水過剰)となるような量で添加される。このモル比は、好ましくは0.75又はそれ以下、より好ましくは0.55又はそれ以下である。
【0045】
発泡剤又は発泡剤混合物(IV)は、用いる成分(I)及び(II)並びに所望の成分(III)、(IV)及び(V)の合計量を100重量%とした場合、典型的には、1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは5〜20重量%の量で使用される。
【0046】
成分(I)及び(II)の混合は、任意成分(III)〜(V)の混合もそうであるば、任意の順序で行い得る。
【0047】
成分(I)及び(II)並びに任意成分(III)〜(V)は、好ましくは、それぞれ別個に供給される。すなわち、反応性成分(I)は、水及び任意の触媒(III)の不存在下に供給される。これにより、23℃で少なくとも6ヶ月の貯蔵中に安定である組成物が得られる(貯蔵中に安定であるとは、混合物の粘度の増加が、貯蔵開始時の組成物の粘度と比べて、50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは15%未満であることを意味すると理解すべきである。)
【0048】
本発明の方法における発泡は、組成物の振盪、高回転速度での機械的攪拌又は発泡ガスの減圧により、行われる。発泡中又は発砲後に、組成物は硬化して、所望のポリウレタン発泡体が得られる。完全な固化又は硬化の前に、すなわち、組成物が未だ流動性である限り、組成物は、通常の塗布技術、例えば注入又はブレード塗布により、適当な基材に適用することができる。組成物は、ヒト又は動物の皮膚に直接塗布することもでき、この場合、発泡及び硬化は、通例、同時に起こる。
【0049】
物理的発泡は、所望の機械的攪拌、混合及び分散技術を用いて行うことができる。この方法では、通常、空気が導入されるが、この目的のために窒素又は他のガスを使用することもできる。
【0050】
このようにして得られた発泡体は、発泡中又は発泡の直後に、基材に適用され、あるいは金型に導入され、硬化される。
【0051】
基材への適用は、例えば、注入又はブレード塗布により行われるが、他の常套の方法も採用できる。任意の中間硬化工程を伴う多層塗布も、原則的に可能である。
【0052】
20℃程度の低い温度でも、発泡体について十分な硬化速度が観察される。しかしながら、より速い硬化及び発泡体の固定の為に、通常の加熱及び乾燥装置、例えば(空気循環)乾燥室、熱風又は赤外線放熱器を用いて、30℃を超えるより高い温度を採用することもできる。
【0053】
組成物は、発泡後又は発泡中に、直接皮膚に適用することができ、あるいは、創傷接触材料の商業的製造過程において、創傷部位を覆うために使用する際に創傷接触材料を簡単に剥離できるようにする剥離紙及び/又はホイル/フィルムに適用することができる。
【0054】
適用及び硬化は、それぞれバッチ式又は連続式で行うことができるが、創傷接触材料の商業的製造には完全連続法が好ましい。
【0055】
組成物を、例えばスプレーにより、ヒト又は動物の皮膚に直接適用する場合、硬化は、周囲条件において、体温の影響により、非常に急速に起こる。この場合にも、外部熱源を補助的に使用することができるが、好ましくない。
【0056】
本発明の1つの態様では、シラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)は、添加剤(II)及び場合により更に助剤及び添加剤(V)と混合される。例えば空気又は他のガスの機械的取り込みにより混合物を発泡させた後、触媒(III)を添加し、(発泡した)混合物を適当な基材に適用し、最後に、大気湿気の存在下に硬化する。発泡した混合物の硬化を促進するために、更に、水を加えることができる。水の添加は、好ましくは、(溶解した)触媒(III)と共に行われる。
【0057】
本発明の別の態様では、シラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)を添加剤(II)及び場合により更に助剤及び添加剤(V)と混合し、適当な圧力容器、例えばスプレー缶に移す。その後、発泡剤(IV)を加える。混合物を適当な基材に適用すると、混合物は発泡し、大気湿気により硬化する。
【0058】
本発明の更なる態様では、シラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)を添加剤(II)及び場合により更に助剤及び添加剤(V)と混合し、少なくとも2つの独立した室を有する適当な圧力容器、例えばスプレー缶の第1室に移す。好ましくは適当な量の水と混合された触媒(III)を、圧力容器の第2室に導入する。助剤及び添加剤(V)も、第2室で混合されるが、あまり好ましくない。次いで、発泡剤(IV)をいずれか又は両方の室に加え、最後に2成分混合物を適当な基材に適用し、同時に発泡及び硬化を行う。
【0059】
硬化の前では、ポリウレタン発泡体のフォーム密度は、典型的には50〜800g/Lの範囲、好ましくは100〜500g/Lの範囲、より好ましくは100〜250g/Lの範囲(発泡体体積1リットルあたりの全投入物質の質量(単位:g)である。
【0060】
乾燥後、ポリウレタン発泡体は、微細孔を有し、少なくとも部分的な連続気泡構造は相互連通気泡を含んでいる。硬化した発泡体の密度は、典型的には0.4g/cm3未満、好ましくは0.35g/cm3未満、より好ましくは0.01〜0.2g/cm3の範囲である。
【0061】
DIN EN 13726-1 Part 3.2 による生理食塩水の吸収度は、ポリウレタン発泡体について、典型的には100〜1500%の範囲、好ましくは300〜800%の範囲である(乾燥発泡体の質量に対する吸収された液体の質量の割合)。DIN EN 13726-2 Part 3.2 による蒸気透過率は、典型的に500〜8000g/24時間・m2の範囲、好ましくは1000〜6000g/24時間・m2の範囲、より好ましくは2000〜5000g/24時間・m2の範囲である。
【0062】
ポリウレタン発泡体は、良好な機械的強度及び高い弾性を示す。典型的には、最大応力は0.1N/mm2より大きく、最大伸びは100%より大きい。好ましくは、伸びは200%より大きい(DIN 53504に従って測定)。
【0063】
硬化後のポリウレタン発泡体の厚さは、典型的には0.1〜50mmの範囲、好ましくは0.5〜20mmの範囲、より好ましくは1〜10mmの範囲、最も好ましくは1〜5mmの範囲である。
【0064】
本発明のポリウレタン発泡体は、更に、別の材料、例えばヒドロゲル、(半)透過性フィルム/ホイル、被膜、親水コロイド又は他の発泡体に、接着、積層又は被覆することができる。
【0065】
また、例えば創傷の治癒及び病原菌の回避に関して有益な効果を有する抗菌的又は生理学的に活性な成分を添加し、配合し、又はそれにより被覆することができる。
【実施例】
【0066】
以下において、別途指示がない限り、全ての%は重量%である。
NCO含量は、別途記載がない限り、DIN EN ISO 11909に従って、容量分析により測定した。
【0067】
使用した物質及び略号:
PO:プロピレンオキシド
EO:エチレンオキシド
DBTL:ジブチルスズジラウレート
TegostabTM B 1048:ポリエーテルシロキサン(Degussa(ドイツ、デュッセルドルフ)製)
AerosilTM R 9200:微粉ヒュームドシリカ(Degussa(ドイツ、デュッセルドルフ)製)
MesamollTM:スルホン酸アルキルエステルに基づく可塑剤(Lanxess(ドイツ、レーフェルクーゼン)製
【0068】
シラン末端プレポリマー(STP 1)の調製:
2003.6gの二官能性エトキシ化ポリエーテル(OH価28、分子量4000g/mol、PO/EO比=6.5)、214.3gの3-イソシアナトトリメトキシシラン及び133μlのDBTLの混合物を、NCO含量がゼロになるまで、攪拌しながら60℃で加熱した。
【0069】
実施例1:塩基触媒による発泡体の製造
117.5gのSTP 1 及び3.8gのTegostabTM B 1048 を、プラスチックビーカー内で手動攪拌機を用いて混合し、10分間で約300mlの体積まで発泡させた。その後、2.5gの水酸化カリウム水溶液(1.25mol/L)を加えたところ、20秒以内に硬化が起こった。白色発泡体を得た。
【0070】
実施例2:酸触媒による発泡体の製造
a)117.5gのSTP 1 及び3.8gのTegostabTM B 1048 を、プラスチックビーカー内で手動攪拌機を用いて混合し、10分間で約300mlの体積まで発泡させた。その後、2.5gのp-トルエンスルホン酸5%水溶液を加えたところ、20秒以内に硬化が起こった。白色発泡体を得た。
b)2gのp-トルエンスルホン酸20%水溶液を用いて、上記実験a)を繰り返した。丁度50秒後に、硬化して、白色発泡体が形成された。
【0071】
実施例3:充填材及び可塑剤を含む発泡体
溶解器を用いて、最初に、117.5gのSTP 1 中に、50gのAerosilTM R 9200 を分散させた(ほぼ透明な分散体)。その後、25gのMesamollTM 及び3.8gのTegostabTM B 1048 を加え、最後に、混合物を、プラスチックビーカー内で手動攪拌機を用いて混合し、10分間で約300mlの体積まで発泡させた。2.5gのp-トルエンスルホン酸5%水溶液を加えたところ、20秒以内に硬化が起こり、白色発泡体を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷接触材料としての、シラン末端ポリウレタンプレポリマーから得られる発泡体の使用。
【請求項2】
a)i)少なくとも1.5の平均NCO官能価となる遊離イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)を
ii)アルキレン基を介してケイ素原子に結合したアミノ基、ヒドロキシル基及び/又はチオール基を有するジ−及び/又はトリアルコキシシラン(B)と
反応させることにより、あるいは、
iii)少なくとも1.5の平均OH官能価を有するポリヒドロキシ化合物(C)を
iv)アルキレン基を介してケイ素原子に結合したイソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するジ−及び/又はトリアルコキシシラン(D)と
反応させることにより、
得ることができる、1個より多いアルコキシシラン基を有するシラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)
b)(発泡体)添加剤(II)
c)任意に、触媒(III)
d)任意に、発泡剤(IV)、及び
e)任意に、更なる助剤及び添加剤(V)
を含む組成物を発泡させ、発泡の前、間又は後に、組成物を基材に適用し、最後に、水の存在下で硬化させる、創傷接触材料の製造方法。
【請求項3】
シラン末端プレポリマー(I)は、脂肪族的及び/又は脂環式的に結合したイソシアネート基のみを有し、2〜4の平均NCO官能価を有するポリイソシアネート又はポリイソシアネート混合物に基づく請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
添加剤(II)は、ポリエーテルシロキサンに基づく非イオン性界面活性剤を含む請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
発泡される組成物は、乾燥物質に基づいて、85〜99.9重量部のシラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)及び0.1〜15重量部の(発泡体)添加剤(II)、並びに0〜50重量部の助剤及び添加剤(V)を含む請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
シラン末端プレポリマー中のアルコキシ基対添加する水のモル比が1又はそれ以下となるような量で、硬化のために水を加える請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の方法により得られる創傷接触材料。
【請求項8】
創傷処置用接触材料を製造するための、
a)少なくとも1個のアルコキシシラン基を有するシラン末端ポリウレタンプレポリマー(I)
b)(発泡体)添加剤(II)
c)任意に、触媒(III)
d)任意に、発泡剤(IV)、及び
e)任意に、更なる助剤及び添加剤(V)
を含む組成物の使用。

【公表番号】特表2010−532691(P2010−532691A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515376(P2010−515376)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005259
【国際公開番号】WO2009/007018
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【出願人】(504142961)バイエル・イノヴェイション・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Innovation GmbH
【Fターム(参考)】