説明

創傷治癒支援因子の精製および使用

【解決手段】血液等の創傷治癒支援因子を含有するソースからの、肝細胞成長因子(HGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換増殖因子α(TGF-α)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、インスリン様成長因子(IGF-I)および線維芽細胞増殖因子(FGF)よりなる群から選択される、精製創傷治癒支援因子を含有する組成物の製造方法であって、該製造方法が、アンチトロンビンIII(A-III)の存在下で実施される精製工程を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血漿に由来する創傷治癒支援因子の精製および使用方法に関する。本発明の特別な様相は、分子をインビトロおよびインビボの両方における分解から保護する精製および方法を含む。
【背景技術】
【0002】
他のものの中で、HGFは創傷治癒支援因子であり、肺のマクロファージや線維芽細胞、肝臓のクッパー細胞等の間葉細胞および白血球において発現されるタンパク質である。HGFはサイトカインであり、細胞の損傷に際して分泌され、ある器官の再生および創傷の治癒に重要であると思われる。化学的にはHGFは糖タンパク質であり、初めに天然の(不活性(inactive))前駆体として合成される。損傷した器官において、前駆体は特定の活性化因子によって開裂して活性(active)HGFとなる。HGFおよび他の因子はヘパリンに結合するが、このことはHGFの活性化およびその受容体への結合に重要であると思われる。HGFに結合する受容体はc-METである。損傷した器官ではc-MET受容体のみがダウンレギュレーションされるので、これらの損傷した器官において、c-MET受容体はHGF受容体相互作用に反応すると思われる唯一の細胞である。創傷治癒過程に影響する因子であるヘパリン結合親和性を有する増殖因子ファミリーにおける、このような因子の例には、他の血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換増殖因子α(TGF-α)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、インスリン様成長因子(IGF-I)および線維芽細胞増殖因子(FGF)が挙げられる。
【0003】
アンチトロンビンIII(AT-III)は血漿糖タンパク質であり、凝固カスケードにおいてセリンプロテアーゼを阻害するため、血液凝固の制御において主要な役割を果たす。AT-IIIは、第IXa、Xa、XI、Xlla因子、およびトロンビンの阻害物質である。従って、AT-IIIは凝固カスケードの様々な段階において血栓形成を制御する。血中AT-III量のわずかな減少は、血栓塞栓症のリスクの増加に関係する。AT-III濃度は、後天性または遺伝性AT-III欠損症患者の、血栓塞栓性疾患の予防および治療において使用される。加えて、AT-IIIが、例えば血管形成および炎症反応等の、多数の他の生物学的反応に関連することが報告されている。これらのメカニズムにおけるAT-IIIの機能は、いまだ完全には理解されていない。
【0004】
当技術分野では、固相結合リガンドとしてヘパリンを使用するアフィニティークロマトグラフィーでのAT-IIIの精製が知られている。ミラー・アンダーソン(Miller-Andersson)ら(血栓症研究(Thrombosis Research) 5巻、439-452頁、1974年)は、ヒトAT-IIIを精製するためのヘパリン−セファロースの使用を開示する。イオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィーを含む方法全体では、34%の収率であった。
【0005】
ヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)は、1972年に初めて単離された、一本鎖の血漿タンパク質である。HRGPの正確な生理学的機能は未だに判っていない。ヘパリンとの相互作用、フィブリノーゲンとフィブリン、プラスミノーゲンと活性化血小板との相互作用により、HRGPは凝固および線維素溶解のモジュレータであると考えられる(コイデ、T.、線維素溶解(Fibrinolysis):カレント・プロスペクツ(Current Prospects)、ガフニー(Gaffney),PJ編、ジョン・リベイ(John Libbey)アンド・カンパニー、ロンドン 1988年、55-63頁)。ポリペプチド鎖は507個のアミノ酸残基からなり、他の血漿タンパク質、例えば、AT-IIIと相同性を共有する領域を含む(コイデ、Tら、(1986年)、バイオケミストリー、25巻、2220-2225頁)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
活性(active)型の創傷治癒支援因子は、インビボ、特に、凝集およびプロテアーゼを含むタンパク分解系を誘発している創傷領域において、迅速に分解される。精製工程の間、インビトロでは、天然型および活性型の創傷治癒支援因子の両者の分解を阻害できることも重要である。その因子の一つであるHGFは、不活性(inactive)前駆体として血液で運ばれ、特異的なアクチベータによって損傷中に活性化されることが知られている。一例として、不活性(変性)型のHGFは、試した精製方法の殆ど全てで少量の検出が可能であったが、一方、活性化(activated)型および/または非活性化(non-activated)型は、本発明の方法を使用した場合のみ見つかった。驚くべきことに、プロテアーゼおよび/またはプロテアーゼの前駆体の除去は、HGFの2つの安定剤(AT-IIIおよび/またはHRGP)の同時精製と組み合わせることにより、容易に作用するかその活性型に変換され得る、活性化型または非活性化型のHGFが増加する。HGFが通常、インビボで不活性前駆体型で循環するという事実により、天然および/または活性HGFの医薬品が、例えば創傷治癒の間、体の多くの機能不全、特に局所適用が可能な場所の機能不全の治療を有意に改善できたことは明らかである。このことは、例えば血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換増殖因子α(TGF-α)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、インスリン様成長因子(IGF-I)および線維芽細胞増殖因子(FGF)等の、ヘパリン結合特性を有する他の成長因子についても期待でき、これらの成長因子の精製および使用も、AT-IIIおよびHRGPの存在下で改善されることが期待される。
【0007】
使用によっては、活性化型および/または非活性化型の創傷治癒支援因子は、2つの特異的安定剤、AT-IIIおよびHRGPを伴って、または、伴わずに供給され得るが、これは他のものによって天然型および活性化型の創傷治癒支援因子のタンパク分解の阻害剤として作用するので、製品の有効性および半減期を増す。適用によっては、ある場合には、患者に創傷治癒支援因子の活性化型または非活性化型のいずれか一方のみを与えることが有利であるかもしれないが、別の場合では、選択された安定剤であるAT-IIIおよびHRGPを添加して、それらの混合物を与えることが有利であるかもしれない。これは、創傷治癒支援因子の分子が如何に速く作用するかによる。この原理は、HGFと類似する、ヘパリン結合特性を有する他の成長因子、例えば血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換増殖因子α(TGF-α)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、インスリン様成長因子(IGF-I)および線維芽細胞増殖因子(FGF)等にも有効である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血液等の創傷治癒支援因子を含有するソースからの、精製創傷治癒支援因子を含有する組成物の製造方法であって、精製工程が、アンチトロンビンIII(AT-III)、ヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)またはそれらの組み合わせの存在下で実施される方法に関する。創傷治癒支援因子は、血液等の創傷治癒支援因子を含有するソースからの、肝細胞成長因子(HGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換増殖因子α(TGF-α)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、IGF-Iおよび線維芽細胞増殖因子(FGF)よりなる群から選択され、該製造方法は、アンチトロンビンIII(AT-III)の存在下で実施される精製工程を含む。
【0009】
本発明の方法は、以下の工程によって実施され得る:
-(i)凍結血液を溶かし、最終的に沈殿を除去し、さらに上澄を処理する工程、
-(ii)上澄を、アニオン交換クロマトグラフィーに要する緩衝液中、アニオン交換クロマトグラフィー物質と接触させる工程であって、緩衝液は生理学的条件と同程度の塩濃度およびおよそ中性のpH値を有し、タンパク質の主要部分は結合せず(創傷治癒支援因子、AT-III、HRGP、アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等を含む)特異的である一方、タンパク質およびプロテアーゼはアニオン樹脂に結合し(例えば、プロトロンビン、FX、FIX等)、
-(iii)アニオン交換クロマトグラフィー物質を分離し、溶液(創傷治癒支援因子、AT-III、HRGP、アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等を含む)を得る工程、
-(iv)溶液をヘパリンアフィニティークロマトグラフィー物質と接触させる工程であって、一方でタンパク質の主要部分は結合せず(アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等)、
-(v)溶液を分離し、ヘパリンアフィニティークロマトグラフィー物質を、ヘパリンアフィニティークロマトグラフィー物質からの創傷治癒支援因子の脱着を可能にするに充分なイオン強度を有する脱着緩衝液で処理する工程、(任意に、創傷治癒支援因子画分の脱着前に、ヘパリンセファロース物質を洗浄緩衝液で処理するが、洗浄溶液は、不純物タンパク質(例えばヘパリン副因子II等)を脱着するために充分な高イオン強度を有するが創傷治癒支援因子画分は脱着しない)、
-(vi)創傷治癒支援因子、AT-IIIおよびHRGPを含有する脱着緩衝液を回収する工程。
【0010】
第二の代替法では、本発明の方法は、以下の工程を用いることにより実施され得る:
(i)凍結血漿を溶かし、任意に沈殿を除去し、さらに上澄を処理する工程、
(ii)珪藻土、シリカゲル、アルミナ等の無機吸着物質を添加し、例えばFXIIおよびプレカリクレイン活性化因子等の、不要な物質を結合するのに充分な時間インキュベートする工程、
(iii)C1-C4アルコール等の低級脂肪族アルコールを添加し、コーン分画Iを形成する工程、
(iv)もしあれば沈殿、および無機吸着物質を除去する工程、
(v)コーン分画I上澄をアフィニティークロマトグラフィー物質で処理して、天然/活性創傷治癒支援因子、AT-IIIおよびHRGP(天然/活性創傷治癒支援因子、AT-IIIおよびHRGPPは以下HAHと称する)を結合し、一方で他の血漿タンパク質(例えばアルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等)の主要部分は結合せずに除去される工程、
(vi)アフィニティークロマトグラフィー物質から創傷治癒支援因子含有物質を溶出し回収する工程(任意に、創傷治癒支援因子画分の脱着前に、親和性樹脂を洗浄緩衝液で処理するが、洗浄液は、不純物タンパク質(例えばヘパリン副因子II等)を脱着するために充分な高イオン強度を有するが創傷治癒支援因子画分は脱着しない)。
【0011】
第三の代替法では、本発明の方法は、以下の工程を用いることにより実施され得る:
(i)凍結血漿を溶かし、任意に沈殿を除去し、さらに上澄を処理する工程、
(ii)上澄を、アニオン交換クロマトグラフィーに要する緩衝液中、アニオン交換クロマトグラフィー物質と接触させる工程であって、緩衝液は生理学的条件と同程度の塩濃度およびおよそ中性のpH値を有し、タンパク質の主要部分は結合せず(創傷治癒支援因子、AT-III、HRGP、アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等)特異的である一方、タンパク質およびプロテアーゼはアニオン樹脂に結合し(例えばプロトロンビン、FX、FIX等)、
(iii)アニオン交換クロマトグラフィー物質を分離し、溶液(創傷治癒支援因子、AT-III、HRGP、アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等を含む)を得る工程;
(iv)珪藻土、シリカゲル、アルミナ等の無機吸着物質を添加し、不要な物質、例えばFXIIおよびプレカリクレイン活性化因子等を結合するのに充分な時間インキュベートする工程、
(v)C1-C4アルコール等の低級脂肪族アルコールを添加し、コーン分画Iを形成する工程、
(vi)もしあれば沈殿、および無機吸着物質を除去する工程、
(vii)コーン分画I上澄をアフィニティークロマトグラフィー物質で処理して、活性創傷治癒支援因子、AT-IIIおよびHRGP(HAH)を結合し、一方で他の血漿タンパク質の主要部分(例えばアルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等)は結合せずに除去される工程、
(viii)アフィニティークロマトグラフィー物質から創傷治癒支援因子含有物質を溶出し回収する工程(任意に、創傷治癒支援因子画分の脱着前に、親和性樹脂を洗浄緩衝液で処理するが、洗浄液は、不純物タンパク質を脱着するために充分な高イオン強度を有するが、創傷治癒支援因子画分は脱着しない)。
【0012】
第四の代替法では、本発明の方法は、以下の工程を用いることにより実施され得る:
(i)凍結血漿を溶かし、任意に沈殿を除去し、さらに上澄を処理する工程、
(ii)上澄を、アフィニティークロマトグラフィー物質で処理することにより、活性創傷治癒支援因子、AT-IIIおよびHRGP (HAH)が結合し、一方、他の血漿タンパク質の主要部分(例えば、アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等)は結合せずに除去される工程;
(iii)アフィニティークロマトグラフィー物質から創傷治癒支援因子含有物質を溶出し回収する工程(任意に、創傷治癒支援因子画分の脱着の前に親和性樹脂を洗浄緩衝液で処理するが、洗浄液は、不純物タンパク質(例えば、ヘパリン補因子II等)を脱着するために充分な高イオン強度を有するが創傷治癒支援因子画分を脱着しない)。
【0013】
本発明の特定の態様において、方法は、特に工程(vi)の後、ウイルス不活化を含む。この方法段階におけるウイルス不活化は、好ましくは、ウイルスを不活化し得る化学物質での処理である。このようなウイルス不活化は、欧州特許EP-A-131740号により詳細に記載されており、いわゆる有機溶媒/界面活性剤法である。欧州特許EP-A-131740号の開示は参照することにより援用される。ウイルス不活化工程の後、アニオン交換クロマトグラフィーを実施してもよい。特にアニオン交換クロマトグラフィーの後、カチオン交換クロマトグラフィーを実施することも可能である。本発明の方法のさらなる態様では、リン酸セルロースでクロマトグラフィーを実施する。リン酸セルロースでのクロマトグラフィーは、このクロマトグラフィーのみの実施で充分であることから、有利であり得る。しかし、リン酸セルロースでのクロマトグラフィーをアニオンおよび/またはカチオン交換クロマトグラフィーと共に用いるのも有利であり得る。
【0014】
代表的には、HGF含有画分は、HGFがリン酸セルロース物質に吸着され得る緩衝液中、リン酸セルロースマトリックス上に用いられる。HGFの溶出は、代表的には、イオン強度≧0.05 Mの塩化ナトリウムまたはその等価物を有する緩衝液で達成される。
【0015】
本発明によれば、該代替法で得られる回収画分は、濃縮および/または透析濾過して濃縮物を得る。濃縮物は、任意に、濃縮物をカチオン交換物質と接触させることにより、さらに処理され得る。カチオン交換物質は、主に(>90%)AT-IIIを含有するA1画分を溶出するイオン強度を有する緩衝液で処理し、続いてこの物質をより高いイオン強度を有する緩衝液で処理することにより、回収される創傷治癒支援因子およびHRGPを主に溶出する。創傷治癒支援因子およびHRGP含有画分を濃縮または透析濾過して、A2画分を得る。
【0016】
析出緩衝液を濃縮物に添加する、本発明の方法の第二の代替法では、濾過を行い、析出物を創傷治癒支援因子およびAT-IIIを回収する緩衝液で処理する。
【0017】
得られる天然創傷治癒支援因子濃縮物のさらなる精製は、天然創傷治癒支援因子およびHRGPが樹脂に結合するカチオン交換樹脂を用い、以下の工程の少なくとも一つを使用することによって実施し得る:
(i)創傷治癒支援因子/HRGP画分を、室温で伝導度が10-450 mS/cm、より好ましくは20-200 mS/cm、最も好ましくは30-100 mS/cmの緩衝液でカチオン交換樹脂から溶出する工程、
(ii)クロマトグラフィー中のpHを6-9、特に6.5-8または6.75-7.25に維持する工程、
(iii)樹脂の荷電基を、約10〜約100モノマーユニットからなる、わずかに疎水性の高分子炭素鎖を用いて、樹脂に結合させる工程。
【0018】
より詳しくは、得られる創傷治癒支援因子濃縮物を精製する第二の代替法の条件は、HRGPが析出する塩析工程を用いて、以下を含んでいる:
(i)ホフマイスター系列による塩、好ましくは、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸アンモニウムおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される塩を使用する;
(ii)塩の濃度を0.3-3 M、特に0.5-2 Mまたは0.75-1.5 Mの範囲の中で選択する;
(iii)溶液のpHを4-10、特に6-9または7-8の範囲の中で選択する;
(iv)得られる析出物を濾過または遠心分離で除去する。
【0019】
商業的に適用可能な創傷治癒支援因子を提供するため、以下の方法の少なくとも一つを含み、得られる天然創傷治癒支援因子濃縮物を処理して病原体を減じる:
(i)有機溶媒/界面活性剤を用いるウイルス不活化;
(ii)光(例えばUVC)または放射線処理を用いるウイルス不活化;
(iii)熱処理を用いるウイルス不活化;
(iv)ウイルスフィルターを用いるウイルス除去。
【0020】
また、本発明の主題は、本発明の方法によって得られる物質の組成物であって、活性化型および/または非活性化型の創傷治癒支援因子、活性型の創傷治癒支援因子またはそれらの組み合わせを含む、組成物である。
【0021】
本発明の一つの態様において、組成物は、活性化型および/または非活性化型の創傷治癒支援因子およびAT-IIIを含有して、インビボおよびインビトロの創傷治癒支援因子の安定性を高める。別の態様では、本発明の組成物は、活性化型および/または非活性化型の創傷治癒支援因子を含有し、HRGPを含むことでインビボおよびインビトロの天然創傷治癒支援因子の安定性を高める。特に、創傷治癒支援因子は完全に活性化されるか、または、創傷治癒支援因子は活性化されない。
【0022】
創傷治癒因子およびHRGPを含有する画分に、サッカライドおよびアミノ酸からなる群より選択される安定剤を添加することは、有利であり得る。代表的には、安定剤は、ポリオール、アルギニン、トレハロース、リシン、マンニトールまたはそれらの組み合わせであり得る。
【0023】
また、本発明の主題は、本発明の組成物を含む医薬組成物である。
【0024】
本発明の医薬組成物は、活性型および/または不活性型の創傷治癒支援因子またはそれらの組み合わせで存在し得るが、好ましくは、液体または凍結乾燥形態であり、代表的には、創傷治癒支援因子約1〜10ng/創傷1cm2/日の用量でゲル、スプレーまたは類似物中に混合され、局所適用される。また組成物は、(適用により)1以上の以下の方法を使用して投与される可能性がある:静脈内、筋肉内、皮下、吸入、髄腔内または直腸内。
【0025】
実験方法
AT-IIIの定量
AT-IIIの生物活性(lU/ml)を、ヘパリンおよびAT-IIIの存在下、トロンビンによる発色性基質H-D-Phe-Pip-Arg-pNA・2 HCl(クロモジェニックス(Chromogenix)、スウェーデン)の開裂をモニターすることによって、ヘパリン補因子活性として定量した。フランツェン・ハンデランド(Frantzen Handeland)ら(Scand. J. Haematol. 31巻、427-436頁、1983年)およびファン・フォールイゼン(van Voorhuizen)ら(Thromb. Haemostas. 52(3)巻、350-353頁、1984年)参照。
【0026】
総タンパク
総タンパク濃度を、280nmでの吸収(A280)を測定することにより定量した。AT-III溶液の濃度(mg/ml)は、係数6.4 lU/mgを用いて計算した。
AT-IIIの比活性度(SA)は、lU/mlとして計算されるヘパリン補因子活性とA280との比と定義した。
【0027】
ヒスチジンリッチ糖タンパク質の定量
HRGPを、「ロケット」の高さが抗原濃度に比例する、ロケット電気泳動技術を用いて定量した(ラウレル(Laurell)、C-B (1966年) Analyt. Biochem. 15巻、45頁;およびラウレル(Laurell)、C-B (1972年) J. Clin. Lab. Invest. 29巻、補遺124、21頁)。HRGPウサギ抗体(ベーリングヴェルケ(Behringwerke))を1%アガロースAゲル(アマシャム・ファルマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech))に含ませた。HRGPサンプル(5 μl)をゲルに適用したが、一晩nmであった(150V、1V/cm)。得られる抗原抗体複合体を染色し、標準物質(ヒト血清)と比較した。
【0028】
等電点電気泳動
ファストシステム(PhastSystem)(アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech))と、プレキャストゲル、pI3〜9を使用し、ファスト(Phast)マニュアルの分離技術ファイルNo.100(写真同封)に従って、等電点電気泳動を実施した。
【0029】
HGF特性評価
このサイトカインの複数の機能特性を有する無傷HGFの有効性を確認するため、ウエスタンブロット分析を行った。そのため、還元条件または非還元条件下で、SDS-PAGEを実施した。ニトロセルロースシートに電気泳動的に移したタンパク質を、市販の抗ヒトHGF IgG(R&Dシステム社)と共にインキュベートした後、市販の共役第二抗体(R&Dシステム社)と共にインキュベートしたが、第二抗体は第一のものに対して特異的である。抗原(タンパク質)の可視化は、呈色反応によって行った。
【0030】
HGFの定量
細胞培養上澄、血清、および血漿におけるHGFレベルを測定するために設計された市販の固相ELISA(R&Dシステムズ社)を使用して、天然HGFに対する相対的質量値を測定した。
HGFに特異的なモノクローナル抗体をマイクロプレート上に予めコーティングする。標準物質およびサンプルをウェルにピペットで入れ、HGFが存在するものは全て固定化抗体に結合した。全ての非結合物質を洗い流した後、HGFに特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェルに加えた。洗浄して全ての非結合抗体酵素試薬を除いた後、基質溶液をウェルに加えたが、最初の工程でHGFに結合した量に比例して発色する。発色が停止した後、450nmに設定したマイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度を測定した。
【0031】
HGFの生物活性
市販の創傷治癒−、遊走−、および増殖アッセイを用いて、生物活性を測定した。B.ラファティ(Rafferty)ら(J. Immunol. Methods 258巻 (2001年) 1-11頁)を参照のこと。
【実施例】
【0032】
実施例1:
本発明のAT-IIIおよびHRPGで安定化した天然(活性)HGFの精製
工程1
健常人ドナーよりプールしたヒト新鮮凍結血漿(1,200kg)を0℃で解凍し、得られる寒冷沈降物(例えば、第VIII因子およびフィブロネクチンを含む)を遠心分離で除去した。通常、この沈降物を第VIII因子のさらなる精製に使用する。
【0033】
工程2
得られた寒冷沈降物(工程1より)をアニオン交換カラム(70リットルDEAEセファロースFF、アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech))で処理して、ビタミンK依存性タンパク質(第IX因子、第X因子、第II因子、プロテインC、プロテインS等)を結合した。このカラムを、0.14M塩化ナトリウムと5mMリン酸ナトリウムを含むpH7.0の緩衝液で洗浄した。非結合タンパク質分画(約1,270kg)をさらに工程3で処理し、一方カラムに結合したタンパク質はさらに処理して、第IX因子、トロンビン等を精製した。
【0034】
工程3
工程2より得た非結合タンパク質分画を、エタノールを添加して最終濃度を8%(v/v)とするさらなる処理によって、例えば、フィブリノーゲンおよびリポタンパク質を含む、コーン分画I沈殿を得た(コーン(Cohn)ら、(1946年) J. Am. Chem. Soc. 68巻、459-475頁)。エタノールの添加前に、5.5kgの珪藻土物質(ハイフロウ・スーパー・セル(Hyflow Super cel))を溶液に加えた。沈殿および珪藻土物質を遠心分離で除去した。
【0035】
工程4
コーン分画I上澄(約1,400kg)をpH7.8にpH調整した後、アフィニティークロマトグラフィーカラム(120リットル ヘパリン−セファロースFF、アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech))で処理して、天然(活性)HGF、AT-IIIおよびHRGP(HAH)を結合し、一方他の血漿タンパク質の主要部分(アルブミン、IgG等)はカラムを通過した。このカラムを600kgの緩衝液(0.4M塩化ナトリウムおよび0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.8)で洗浄して不活性形態のタンパク質を除去し、HAH分画を500kgの緩衝液(2.3M NaClおよび0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.8)で溶出した。得られたHAH溶出物を濃縮し、限外ろ過膜(バイオマックス(Biomax)-10、ミリポア(Millipore))を用いて、0.05Mリン酸ナトリウム、pH7.5、で膜分離した。得られた膜分離されたHAH濃縮物をUF1とした。
【0036】
実施例2:
本発明のAT-IIIおよびHRPGで安定化した天然(活性化型および/または非活性化型)HGFの精製
工程1
健常人ドナーよりプールしたヒト新鮮凍結血漿(1,200kg)を0℃で解凍し、得られる寒冷沈降物(例えば、第VIII因子およびフィブロネクチンを含む)を遠心分離で除去した。通常、この沈降物を第VIII因子のさらなる精製に使用する。
【0037】
工程2
工程1で得た寒冷沈降物を、エタノールを添加して最終濃度を8%(v/v)とするさらなる処理によって、例えば、フィブリノーゲンおよびリポタンパク質を含む、コーン分画I沈殿を得た(コーン(Cohn)ら、(1946年) J. Am. Chem. Soc. 68巻、459-475頁)。エタノールの添加前に、5.5kgの珪藻土物質(ハイフロウ・スーパー・セル(Hyflow Super cel))を溶液に加え、溶液を1〜2時間攪拌した。沈殿および珪藻土物質を遠心分離で除去した。
【0038】
工程3
コーン分画I上澄(約1,400kg)をpH7.8にpH調整した後、アフィニティークロマトグラフィーカラム(120リットル ヘパリン−セファロースFF、アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech))で処理して、天然(活性)HGF、AT-IIIおよびHRGP(HAH)を結合し、一方他の血漿タンパク質の主要部分(アルブミン、IgG等)はカラムを通過した。このカラムを600kgの緩衝液(0.4M塩化ナトリウムおよび0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.8)で洗浄して不活性形態のタンパク質を除去し、HAH分画を500kgの緩衝液(2.3M NaClおよび0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.8)で溶出した。得られたHAH溶出物を濃縮し、限外ろ過膜(バイオマックス(Biomax)-10、ミリポア(Millipore))を用いて、0.05Mリン酸ナトリウム、pH7.5、で膜分離した。得られた膜分離された濃縮物をUF1とした。
【0039】
実施例3:
AT-IIIを除去する、天然HGFのさらなる精製
この方法は室温(+22℃)で実施した。実施例1または2で得た濃縮物UF1(A280=23.6;図1、レーン1)を蒸留水で1:3に希釈した。希釈した溶液(2,050g、導電率2.6mS/cm)は、10mMクエン酸ナトリウム、pH7.5、2.6mS/cmで平衡化したフラクトゲル(Fractogel(R))EMD SO3-650 (M)カチオン交換クロマトグラフィー媒質(1.7l)を充填したカラム(ファルマシア・バイオテック・バイオプロセス・カラム(Pharmacia Biotech Bioprocess Column)、直径15cm)を通した。流速は9リットル/時であった。タンパク質溶液をカラムに負荷し、カラムを7倍容量の平行緩衝液で洗浄した。カラムに吸着されなかった物質は、洗浄液と混合した(14.6kg、「A1分画」とする;図1、レーン2)。より強固に吸着されたタンパク質は、1.9kgの緩衝液(1M NaCl/10mMクエン酸ナトリウム、pH7.5、導電率106mS/cm)で溶出した。溶出液(1.9kg)を濃縮し、0.1Mクエン酸ナトリウム/1%サッカロース、pH7.0、で膜分離した。得られた「A2」は活性HGFおよびHRGPを含有していた(表Iおよび図1、レーン3)。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例4
HRGPを除去する、天然HGFのさらなる精製
490gのUF1(実施例2により製造)に、532gの0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5、372gのクエン酸ナトリウムおよび237gのスクロースを含む、沈殿緩衝液を添加した。沈殿緩衝液は、30分の間、UF1溶液に添加した。15分間攪拌した後、0.45-0.2μmフィルターを用いて沈殿を除去し、フィルターは以下の緩衝液で洗浄して、HGFおよびAT-IIIを回収した:1,617gのクエン酸ナトリウムと1,012gのスクロースを、4,400gの0.05Mリン酸ナトリウムpH7.5に溶解した。得られた濾液は、濾液と示した(表II参照)。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例5
AT-IIIおよび/またはHRGPの至適HGF回収のための重要性を調査するため、以下の実験を行った:
A.実施例2(工程1〜3)による、ヘパリン−セファロースを通過した分画を、さらなる実験に使用した。この分画は、HGF、活性AT-IIIおよびHRGPを含まないが、次にHGFを混合し、AT-IIIまたはHRGPは混合しなかった。有機溶媒/界面活性剤(SD)処理(オクトキシノール、TnBP)の後、この溶液を濾過し(細孔サイズ0.45μmのフィルター)、Q-セファロースXLカラム(アニオン交換樹脂)に適用した。カラムを、SD試薬の除去にも役立つ20mMトリス/HCl、pH7.0の溶液で洗浄した後、結合したタンパク質を、0.2M NaClを含むトリス/HCl緩衝液、pH7.0で溶出した。この溶出液をフラクトゲル(Fractogel) EMD SO3カラムに適用した。洗浄工程の後、10mMクエン酸ナトリウム溶液、pH5.5、および1M NaClで溶出した。
B.HGF混合溶液に精製AT-IIIを添加し、Aに記載したものと同様に精製法を実施した。
【0044】
結果:
実施AおよびBで得られた異なる分画の評価により、両クロマトグラフィーの工程収率は、AT-IIIの不存在下で実施したクロマトグラフィー、特にフラクトゲル(Fractogel) EMD SO3-クロマトグラフィーと比較して、実施Bで得られた溶出液において、有意に高いことが示された。HGFの工程収率はAT-IIIの不存在下で得られる収率の少なくとも倍であった。
【0045】
特に、AT-III不存在下では、HGFは溶出液以外の分画中でも検出されたが、一方、方法Bのカラム通過分画および洗浄分画において、HGFは検出できなかったが、溶出液中で濃縮された。
【0046】
結論として、これらの結果は、AT-IIIの存在が、特にここでアニオン−およびカチオン交換クロマトグラフィーが実施された場合、HGFの工程収率を有意に支持することを示す。
【0047】
実施例6
実施例2によるヘパリン−セファロースカラム溶出液およびUF1、即ち、HGF、AT-IIIおよびHRGPを含むものを、実施例5に従ってSD処理し、濾過して(0.45μm)、リン酸セルロースカラムに適用し、1mMリン酸緩衝液、pH6.0で洗浄した。リン酸緩衝液中の1M NaClでHGFの溶出を行った。
【0048】
このクロマトグラフィーにより、SD試薬の除去およびHGFのさらなる精製が達成され、出発原料と比較して、HGFの方法工程収率は50%を超えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液等の創傷治癒支援因子を含有するソースからの、肝細胞成長因子(HGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換増殖因子α(TGF-α)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、インスリン様成長因子(IGF-I)および線維芽細胞増殖因子(FGF)よりなる群から選択される、精製創傷治癒支援因子を含有する組成物の製造方法であって、該製造方法が、アンチトロンビンIII(A-III)の存在下で実施される精製工程を含む、方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
(i)凍結血液を溶かし、最終的に沈殿を除去し、さらに上澄を処理する工程、
(ii)上澄を、アニオン交換クロマトグラフィーに要する緩衝液中、アニオン交換クロマトグラフィー物質と接触させる工程であって、緩衝液は生理学的条件と同程度の塩濃度およびおよそ中性のpH値を有し、
(iii)アニオン交換クロマトグラフィー物質を分離し、溶液を得る工程、
(iv)溶液をヘパリンアフィニティークロマトグラフィー物質と接触させる工程、
(v)溶液を分離し、ヘパリンアフィニティークロマトグラフィー物質を、ヘパリンアフィニティークロマトグラフィー物質からの創傷治癒支援因子の脱着を可能にするに充分なイオン強度を有する脱着緩衝液で処理する工程、
(vi)創傷治癒支援因子、AT-IIIおよびHRGPを含有する脱着緩衝液を回収する工程
を含む方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、
(i)凍結血漿を溶かし、任意に沈殿を除去し、さらに上澄を処理する工程、
(ii)珪藻土、シリカゲル、アルミナ等の無機吸着物質を添加し、不要な物質を結合するのに充分な時間インキュベートする工程、
(iii)C1-C4アルコール等の低級脂肪族アルコールを添加し、コーン分画Iを形成する工程、
(iv)もしあれば沈殿、および無機吸着物質を除去する工程、
(v)コーン分画I上澄をアフィニティークロマトグラフィー物質で処理して、創傷治癒支援因子、AT-IIIおよびHRGP(HAH)を結合し、一方で他の血漿タンパク質は結合せずに除去される工程、
(vi)アフィニティークロマトグラフィー物質から創傷治癒支援因子を溶出し回収する工程
を含む方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、
(i)凍結血漿を溶かし、任意に沈殿を除去し、さらに上澄を処理する工程、
(ii)上澄を、アニオン交換クロマトグラフィーに要する緩衝液中、アニオン交換クロマトグラフィー物質と接触させる工程であって、緩衝液は生理学的条件と同程度の塩濃度およびおよそ中性のpH値を有し、タンパク質の主要部分は結合せず(創傷治癒支援因子、AT-III、HRGP、アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等を含む)特異的である一方、タンパク質およびプロテアーゼはアニオン樹脂に結合し(例えばプロトロンビン、FX、FIX等)、
(iii)アニオン交換クロマトグラフィー物質を分離し、溶液(創傷治癒支援因子、AT-III、HRGP、アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等を含む)を得る工程;
(iv)珪藻土、シリカゲル、アルミナ等の無機吸着物質を添加し、不要な物質、例えばFXIIおよびプレカリクレイン活性化因子等を結合するのに充分な時間インキュベートする工程、
(v)C1-C4アルコール等の低級脂肪族アルコールを添加し、コーン分画Iを形成する工程、
(vi)もしあれば沈殿、および無機吸着物質を除去する工程、
(vii)コーン分画I上澄をアフィニティークロマトグラフィー物質で処理して、創傷治癒支援因子、AT-IIIおよびHRGP(HAH)を結合し、一方で他の血漿タンパク質の主要部分(例えばアルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等)は結合せずに除去される工程、
(viii)アフィニティークロマトグラフィー物質から創傷治癒支援因子含有物質を溶出し回収する工程(任意に、創傷治癒支援因子画分の脱着の前に親和性樹脂を洗浄緩衝液で処理するが、洗浄液は、不純物タンパク質を脱着するために充分な高イオン強度を有するが創傷治癒支援因子画分を脱着しない)
を含む方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、
(i)凍結血漿を溶かし、任意に沈殿を除去し、さらに上澄を処理する工程、
(ii)上澄を、アフィニティークロマトグラフィーで処理することにより、創傷治癒支援因子、AT-III、HRGP (HAH)が結合し、一方、他の血漿タンパク質の主要部分(例えば、アルブミン、IgG、トランスフェリン、ハプトグロブリン等)は結合せずに除去される工程;
(iii)アフィニティークロマトグラフィー物質から創傷治癒支援因子含有物質を溶出し回収する工程(任意に、創傷治癒支援因子画分の脱着の前に親和性樹脂を洗浄緩衝液で処理するが、洗浄液は、不純物タンパク質(例えば、ヘパリン補因子II等)を脱着するために充分な高イオン強度を有するが創傷治癒支援因子画分を脱着しない)
を含む方法。
【請求項6】
請求項2〜5の方法であって、回収された画分を濃縮および/または透析濾過して濃縮物を得る、方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項の方法であって、特に工程(vi)の後でウイルス不活化を行う、方法。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項の方法であって、ウイルス不活化工程の後、アニオン交換クロマトグラフィーを行う、方法。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか一項の方法であって、特にアニオン交換クロマトグラフィーの後、カチオン交換クロマトグラフィーを行う、方法。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか一項の方法であって、リン酸セルロースでクロマトグラフィーを行う、方法。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか一項の方法であって、ナノ濾過を行う、方法。
【請求項12】
請求項2〜11のいずれか一項の方法であって、請求項2または3の工程(vi)、請求項4の工程(viii)または請求項5の工程(iii)の画分を、ウイルス不活化剤でウイルス不活化に付す、方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、ウイルス不活化剤で処理した画分を、リン酸セルロースクロマトグラフィーに付す、方法。
【請求項14】
請求項12の方法であって、ウイルス不活化剤で処理した画分を、アニオン交換クロマトグラフィーに付した後、カチオン交換クロマトグラフィーを行う、方法。
【請求項15】
請求項8または14の方法であって、カチオン交換物質を、主に(>90%)AT-IIIを含有する画分A1を溶出するイオン強度を有する緩衝液で処理し、その後、回収される創傷治癒支援因子およびHRGPを主に溶出するより高いイオン強度を有する緩衝液で処理する、方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、創傷治癒支援因子およびHRGP含有画分を濃縮または透析濾過して、画分A2を得る、方法。
【請求項17】
前項のいずれか一項の方法であって、析出緩衝液を濃縮物に添加し、濾過を行い、析出物を創傷治癒支援因子およびAT-IIIを回収する緩衝液で処理する、方法。
【請求項18】
前項のいずれか一項の方法であって、得られる創傷治癒支援因子濃縮物を処理して病原体を減じ、以下の方法の少なくとも一つを含むこと特徴とする、方法:
(i)溶媒洗浄液を用いるウイルス不活化;
(ii)光(UVC等)または放射線処理を用いるウイルス不活化;
(iii)熱処理を用いるウイルス不活化;
(iv)ウイルスフィルターを用いるウイルス除去。
【請求項19】
前項のいずれか一項の方法であって、得られる創傷治癒支援因子濃縮物をカチオン交換樹脂を用いてさらに精製することを特徴とし、創傷治癒支援因子およびHRGPは樹脂に結合し、以下の工程の少なくとも一つを含む、方法:
(i)創傷治癒支援因子/HRGP画分を、室温で伝導度10-450 mS/cm、より好ましくは20-200 mS/cm、最も好ましくは30-100mS/cmの緩衝液でカチオン交換樹脂から溶出する工程、
(ii)クロマトグラフィー中のpHを6-9、より好ましくは6.5-8、最も好ましくは6.75-7.25に維持する工程、
(iii)樹脂の荷電基を、約10〜約100モノマーユニットからなる、わずかに疎水性の高分子炭素鎖を用いて、樹脂に結合させる工程。
【請求項20】
前項のいずれか一項の方法であって、得られる創傷治癒支援因子濃縮物を、HRGPが析出する塩析工程を用いてさらに精製することを特徴とし、
(i)ホフマイスター系列による塩、好ましくは、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸アンモニウムおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される塩を使用し、
(ii)塩の濃度を0.3-3 M、特に0.5-2 Mまたは0.75-1.5 Mの範囲の中で選択し、
(iii)溶液のpHを4-10、特に6-9または7-8の範囲の中で選択し、
(iv)得られる析出物を濾過または遠心分離で除去する
ことを特徴とする、方法。
【請求項21】
前項のいずれか一項によって得られる物質の組成物であって、活性化型および/または非活性化型の創傷治癒支援因子またはそれらの組み合わせを含む、組成物。
【請求項22】
請求項21の組成物であって、活性化型および/または非活性化型の創傷治癒支援因子およびAT-IIIを含有して、インビボおよびインビトロの創傷治癒支援因子の安定性を高めることを特徴とする、組成物。
【請求項23】
請求項21および/または22の組成物であって、活性化型および/または非活性化型の創傷治癒支援因子を含有し、HRGPが含まれていて、インビボおよびインビトロの天然創傷治癒支援因子の安定性を高めることを特徴とする、組成物。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか一項の組成物であって、加えて、ポリオール、サッカライドおよび/またはアミノ酸よりなる群から選択される安定剤が存在する、組成物。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか一項の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項26】
請求項25の医薬組成物であって、活性化型および/または非活性化型の創傷治癒支援因子が液体または凍結乾燥形態であり、ゲルまたはスプレーで適用される、医薬組成物。
【請求項27】
請求項26の組成物がゲル、軟膏またはスプレーの形態である、医薬品。
【請求項28】
請求項1〜20に従って得られる、HRGP濃縮画分。
【請求項29】
請求項28の画分であって、ヘパリンアフィニティーおよびウイルス不活化処理の後、得られる混合物をリン酸セルロース物質での処理に付す方法によって得られる、画分。

【公表番号】特表2009−524622(P2009−524622A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551784(P2008−551784)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050714
【国際公開番号】WO2007/085626
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(500050402)オクタファルマ アクチェン ゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】