説明

力学量センサ、力学量センサの製造方法及び力学量センサを用いた電子機器

【課題】本発明は、錘部の過剰な変位による衝突時の衝撃を緩和して可撓部の破損を防止するとともに金属配線の変形を防止して、検出信号の信頼性低下を防止する。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係る力学量センサは、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、前記可撓部に形成された複数のセンサ素子と、前記可撓部及び前記錘部の上側に形成され、前記複数のセンサ素子と複数の接続端子とを電気的に接続する複数の配線と、前記複数のセンサ素子と前記複数の配線が形成された前記可撓部及び前記錘部の上方を覆うキャップ基板と、前記錘部側と前記キャップ基板側の何れか一方又は双方に配置され、前記錘部の過剰変位に伴う衝撃を緩和する緩衝部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力学量を検出する力学量センサ、力学量センサの製造方法及び力学量センサを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型軽量化、多機能化や高機能化が進み、実装される電子部品にも高密度化が要求されている。このような要求に応じて各種電子部品が半導体デバイスとして製造されるものが増加している。このため、回路素子として製造される半導体デバイス以外に力学量を検出するセンサ等も半導体デバイスを用いて製造されて、小型軽量化が図られている。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて小型で単純な構造を有する加速度センサあるいは角速度センサでは、外力に応じて変位する可動部を半導体基板に形成し、この可動部の変位がピエゾ抵抗素子を利用して検出されるタイプの力学量センサ(いわゆるピエゾ抵抗型センサ)等が実用化されている。
【0003】
上述の力学量センサの具体例を図10に示す。図10は、ピエゾ抵抗素子を用いた3軸の加速度センサ100のセンサ部分の概略構成を示す断面図である。図10において、加速度センサ100は、フレーム部101内に配置された錘部102を可撓部103で支持する構成を備える。フレーム部101、錘部102及び可撓部103は、半導体基板を加工して形成される。この加速度センサ100は、加えられる外力に応じて錘部102が変位し、この変位情報から加速度を検出する。このような構成の加速度センサは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
この加速度センサでは、錘部102は4本の可撓部103によりX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に変位可能に支持されている。各可撓部103の上面には錘部102の変位を検出するため、X軸、Y軸、Z軸に対応する複数のピエゾ素子(図示せず)が形成される。複数のピエゾ素子は複数の接続端子と金属配線(図示せず)により接続される。金属配線は、ピエゾ素子を用いてブリッジ回路を構成するように配線される。すなわち、ピエゾ抵抗型加速度センサは、外力に応じた錘部102の変位を、ブリッジ回路内のピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化で検出するように構成されている。このため、各ピエゾ抵抗素子を接続する金属配線の抵抗値も均等になるように配線する必要があり、特許文献1では、各金属配線の抵抗値を略等価にする構成を提案している。また、ピエゾ抵抗型加速度センサは、出荷前にブリッジ回路の各アーム(ピエゾ抵抗素子と金属配線を含む)のオフセットを補正してバランスを取り、その補正値をメモリに記憶している。
【0005】
また、図10に示した構成の加速度センサ100では、以下のような課題もある。
・加速度センサ100を製造中に可動部(錘部102と可撓部103を含む)に異物が付着する。
・加速度センサ100全体をプラスチックパッケージで封止する場合、その樹脂が上記可動部の動きを妨げる。
・錘部102の過剰変位により可撓部103が破損する。
【0006】
上述の加速度センサ100における課題を解決するため、図11に示す錘部102と可撓部103の上部を覆うキャップ基板104を設けることが提案されている。このようなキャップ基板104を設ける加速度センサは、例えば、特許文献2及び特許文献3に開示されている。キャップ基板104は、シリコンSiやガラス等を用いて形成され、キャップ基板104のハンドリング等を考慮して、その厚さが200μm〜600μmのものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−101033号公報
【特許文献2】特開2007−57517号公報
【特許文献3】特開2008−91845号公報
【特許文献4】特開2008−82953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のようなピエゾ抵抗型加速度センサでは、過剰な外力が加えられて錘部が過剰に変位すると、図12に示すように、錘部102がキャップ基板104側に衝突して、以下のような問題が発生する。図12に示すように、錘部102の上面には、金属配線105が形成されており、錘部102がキャップ基板104に衝突すると、金属配線105に変形が発生する。この加速度センサ100を継続して使用すると、徐々に金属配線105の変形が進行し、ブリッジ回路のバランスが出荷前に記憶した補正値からずれていき、ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を正確に検出できなくなり、加速度センサの信頼性を低下させる。このため、加速度センサは、物理的な使用限界に至る前に、検出信号の信頼性の低下により使用不可になる。
【0009】
この問題に対して、例えば、特許文献4に記載されたピエゾ抵抗型加速度センサでは、可撓部である梁に溝を形成し、この溝内に金属配線を形成して、錘部がキャップ基板に衝突する際に、金属配線が変形することを防止している。
【0010】
しかし、梁に溝を形成すると、可撓部の強度が脆弱になり、溝を形成する際の加工バラツキにより他軸感度(一方の軸方向に印加された加速度が他方の軸方向の加速度として検出される割合)の発生を助長することになる。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑み、錘部の過剰な変位による衝突時の衝撃を緩和して可撓部の破損を防止するとともに金属配線の変形を防止して、検出信号の信頼性低下を防止する力学量センサ、力学量センサの製造方法及び力学量センサを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、前記可撓部に形成された複数のセンサ素子と、前記可撓部及び前記錘部の上側に形成され、前記複数のセンサ素子と複数の接続端子とを電気的に接続する複数の配線と、前記複数のセンサ素子と前記複数の配線が形成された前記可撓部及び前記錘部の上方を覆うキャップ基板と、前記錘部側と前記キャップ基板側の何れか一方又は双方に配置され、前記錘部の過剰変位に伴う衝撃を緩和する緩衝部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の実施の形態に係る力学量センサの製造方法は、半導体基板に、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置される錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を形成し、前記可撓部に複数のセンサ素子を形成し、前記可撓部及び前記錘部の上側に前記複数のセンサ素子と複数の接続端子とを電気的に接続する複数の配線を形成し、前記錘部の過剰変位に伴う衝撃を緩和する緩衝部材を前記錘部の上側に形成し、前記複数のセンサ素子と前記複数の配線と前記緩衝部材の上方を覆うキャップ基板を前記フレーム部の上部に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、錘部の過剰な変位による衝突時の衝撃を緩和して可撓部の破損を防止するとともに金属配線の変形を防止して、検出信号の信頼性低下を防止する力学量センサ、力学量センサの製造方法及び力学量センサを用いた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加速度センサの全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線から見た加速度センサの断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る加速度センサの要部構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る加速度センサの要部構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る(A)はセンサパッケージの概略構成を示す断面図、(B)は(A)の加速度センサの外観を示す平面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るセンサパッケージの概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る加速度センサの検出信号を処理する処理回路の構成を示す図である。
【図8】図7の処理回路を実装したセンサモジュールの構成を示す斜視図である。
【図9】図8のセンサモジュールを実装した携帯型情報端末の構成を示す斜視図である。
【図10】従来の加速度センサの要部構成を示す断面図である。
【図11】図10の加速度センサにキャップ基板を設けた構成を示す断面図である。
【図12】図11の加速度センサにおいて錘部が過剰変位した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、加速度センサに適用した場合について説明する。
【0017】
(加速度センサの構成)
図1は、本実施の形態に係る加速度センサ200の全体構成を示す平面図である。図1では加速度センサ200の面内に直交する2軸(X軸とY軸)を設定し、この2軸に垂直な方向をZ軸と定めている。
【0018】
図1において、201は半導体基板であり、202は可動部を構成する錘部230(図2参照)を接合する錘接合部であり、211〜214は錘接合部202を変位可能に支持する可撓部である。215は可撓部211〜214を支持するフレーム部である。可撓部211〜214上の4箇所には、可動部の変位をX(図1の横方向),Y(図1の縦方向),Z(図1の紙面に対する奥行き方向)の3軸方向で検出する12個のピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4が形成されている。本実施の形態では、ピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4はX軸方向、ピエゾ抵抗素子Ry1〜Ry4はY軸方向、ピエゾ抵抗素子Rz1〜Rz4はZ軸方向をそれぞれ検出するものとする。但し、これらピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4に設定した各軸方向は限定するものではない。
【0019】
また、フレーム部215には、複数の接続パッド221が形成されている。可撓部211〜214の上面とフレーム部215の上面には、ピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4と複数の接続パッド221とを電気的に接続する複数の金属配線222が形成されている。金属配線222は、ピエゾ素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4を用いてブリッジ回路を構成するように配線されている。本実施の形態のピエゾ抵抗型加速度センサ200は、外力に応じて錘部230(図2参照)が変位する際に可撓部211〜214が変位し、その変位方向に応じて各可撓部211〜214に配置されたピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化をブリッジ回路により検出して、加速度検出信号を出力するように構成されている。
【0020】
次に、図1のA−A線から見た加速度センサ200の断面図を図2に示す。図2において、230は錘部であり、240はキャップ基板である。キャップ基板240は、図1に示したピエゾ素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4と金属配線222が形成された可撓部211〜214と錘接合部202の上部を覆うように形成されている。キャップ基板240は、接着剤250により半導体基板201のフレーム部215に接着される。キャップ基板240は、上述したように、加速度センサ200の製造中に可動部(錘部230と可撓部211〜214を含む)に異物が付着することを防止し、加速度センサ200全体を封止する樹脂が可動部の動きを妨げることを防止し、錘部230の過剰変位により可撓部211〜214が破損することを防止するために設けられる。
【0021】
また、本実施の形態のキャップ基板240は、錘部230の過剰変位により錘部230がキャップ基板240に衝突する際に変形して、衝突時の衝撃を緩和するように可撓性を持たせて緩衝部材として用いることに特徴がある。このため、キャップ基板240として、シリコン基板を用いる場合は、その厚さを20〜100μmの範囲に研磨して薄板状に形成して可撓性を持たせる。このキャップ基板240の厚さは、加速度センサ200全体の厚さ(図1の半導体基板201の厚さ)に応じて、可撓性が発揮される厚さであり、かつ可撓部211〜214の厚さより厚くする必要がある。例えば、半導体基板201の厚さが0.6mmであり、可撓部211〜214の厚さが5〜10μmである場合、キャップ基板240の厚さは、20μmとなる。すなわち、キャップ基板240を緩衝部材として用いる場合、その厚さは、錘部230がキャップ基板240に衝突する際の衝撃を緩和するとともに、可撓部211〜214の破損を防止する厚さに調整することが望ましい。
【0022】
なお、キャップ基板240に使用する材料は、シリコン基板に限らず、他の可撓性を有する樹脂材料でもよく、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等を使用することができる。樹脂材料の厚さは、例えば、2〜20μmの範囲である。さらに、樹脂材料としてポリイミドを使用することができ、その厚さは30μm程度である。
【0023】
また、加速度センサ200は、様々な電子機器に搭載されているが、携帯電話機等の小型の電子機器に搭載される例も増えている。特に、携帯電話機等の小型の電子機器に搭載される加速度センサ200は、電子機器内の部品を収納するスペースが非常に狭く、他の部品と収納スペースを競合する例が多く、小型化に対する要求が強い。このため、加速度センサ200の外形寸法をより小型化する必要があり、実装面積の縮小と低背化に対する要求が多い。
【0024】
従来のキャップ基板を備えた加速度センサでは、低背化に対する要求に反するものであり、この点で改善が必要であった。そこで、本実施の形態の加速度センサ200では、キャップ基板240に可撓性を持たせるために20〜100μmの範囲に研磨して、従来のキャップ基板の厚さ200μm〜600μmよりも薄肉化しているため、低背化に対する要求にも応えることが可能である。
【0025】
(加速度センサ200の製造方法)
次に、図1〜図2に示した加速度センサ200の製造方法について説明する。
【0026】
フレーム部215、錘接合部202、可撓部211〜214、錘部230を加工するためのマスクを形成し、該マスクを介して半導体基板201をエッチングすることにより、フレーム部215、錘接合部202、可撓部211〜214、錘部230を形成する。エッチング方法として、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いることができる。加速度センサ200の大きさは、例えば、2mm×2mm×0.625mm(縦×横×高さ)であるものとし、錘部230の大きさは、例えば、1mm×1mm×0.6mm(縦×横×高さ)であるものとする。なお、これらの寸法は限定されない。
【0027】
次に、可撓部211〜214を形成した半導体基板201の上面にピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4に対応する不純物を拡散させるための拡散用マスクを形成する。拡散用マスクの材料としては、例えば、シリコン窒化膜(Si)やシリコン酸化膜(SiO)などを用いることができる。ここでは、シリコン酸化膜をシリコン膜全面に熱酸化あるいはプラズマCVD法により成膜した後、シリコン窒化膜を成膜し、シリコン窒化膜上に、ピエゾ抵抗素子に対応するレジストパターン(図示せず)を形成し、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜にピエゾ抵抗素子に対応する開口をRIE及び熱リン酸などのウェットエッチングにより形成する。次に、拡散用マスクを用いてピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4をイオン注入法により形成する。この結果、図1に示すように、表面の不純物の拡散濃度を所定の拡散濃度(例えば、1×1017〜1×1019atms/cm3、好ましくは1×1018atms/cm3)に調整したピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4を形成することができる。
【0028】
次に、ピエゾ抵抗素子拡散用マスクをエッチング等により除去した後、可撓部211〜214及びフレーム部215の上面に接続パッド221と金属配線222を形成する。接続パッド221と金属配線222は、Al,Al−Si,Al−Ndなどの金属材料をスパッタ法などにより成膜し、それをパターニングすることで得られる。
【0029】
次に、薄肉化する前のキャップ基板240を用意し、フレーム部215の所定位置(接続パッド221と金属配線222が形成されていない部分)に接着剤250により接着する。次に、キャップ基板240を研磨して、20〜100μmの範囲に薄肉化する。また、キャップ基板240は、20〜100μmの範囲に研磨して薄肉化した後、支持体(図示せず)に貼り合わせ、この支持体からフレーム部215の所定位置(接着剤250の塗布位置)に薄肉化したキャップ基板240を写し取り、圧着して固定するようにしてもよい。
【0030】
加速度センサ200では、キャップ基板240を薄板状に形成して可撓性を持たせたことにより、錘部230の過剰変位により錘接合部202の上面がキャップ基板240に衝突した際に、キャップ基板240が撓んで(変形して)衝撃を緩和する。キャップ基板240の撓み量について、以下のような試験を行った。キャップ基板240は、シリコン基板により形成され、厚さが90〜100μmの円板形状であり、キャップ基板240に対するセンサ開口部(可撓部211〜214及び錘部230を含む)の大きさが直径1mm程度の円形であり、錘部230が衝突する際の衝撃力が10000Gとした。この場合、キャップ基板240の固定端(接着剤250による固定端部)から離れた中央部のたわみ量は、約1μmであった。このことから、錘部230の衝突時にキャップ基板240が変形する割合は、その厚さの1%程度であった。この錘部230の衝突時にキャップ基板240が変形することにより、衝撃力を緩和し、錘接合部202の上面に形成された金属配線222の変形が防止されることを確認した。
【0031】
以上のように、第1の実施の形態に示した加速度センサ200では、キャップ基板240を薄板状に形成して可撓性を持たせたことにより、錘部230の過剰変位により錘接合部202の上面がキャップ基板240に衝突した際に、キャップ基板240が撓んで(変形して)衝撃を緩和することにより、錘接合部202の上面に形成された金属配線222の変形を防止することが可能になった。このため、衝突による金属配線222の経時変形に伴う抵抗値のずれを防止することができ、ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を正確に検出することを維持でき、加速度センサ200の信頼性が低下することを防止できる。
【0032】
また、第1の実施の形態に示した加速度センサ200では、キャップ基板240を薄板状に形成したため、加速度センサ200の低背化も可能になり、電子機器に搭載される際の実装体積を縮小できる。このため、特に実装面積の縮小と低背化に対する要求が厳しい携帯電話機等の小型の電子機器への搭載が容易になる。
【0033】
(第2の実施の形態)
本第2の実施の形態では、キャップ基板の錘接合部と対向する面に緩衝部材を設ける例について説明する。なお、第2の実施の形態において例示する加速度センサは、キャップ基板部分の構成を除いて、上記図1に示した加速度センサ200と同一の構成を有するため、その平面図の図示及び構成説明は省略する。
【0034】
図3は、第2の実施の形態に係る加速度センサ300の要部構成を示す断面図である。図3において、上記図2に示した構成と同一の構成部分には同一符号を付している。
【0035】
図3において、加速度センサ300は、キャップ基板310の錘接合部202と対向する面310Aに緩衝部材320を設けている。キャップ基板310は、シリコン基板を用いるものとする。また、キャップ基板310には、ガラス基板、金属基板、樹脂基板等を用いても良い。
【0036】
緩衝部材320は、可撓性を有する弾性ゴム材料を用いるものとする。弾性ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等を使用することができる。緩衝部材320として弾性ゴム材料を使用する場合は、印刷法、液滴吐出法等により形成可能である。弾性ゴム材料の硬度は、液滴吐出法により形成する場合は20〜70の範囲とすることが好ましい。なお、この硬度の測定方法は、JISK6301スプリング式硬さ試験A形に準拠している。また、緩衝部材320の大きさは、錘部230の大きさや配置するスペースの大きさ等に応じて適宜設計すればよい。
【0037】
加速度センサ300では、キャップ基板310の錘接合部202と対向する面310Aに可撓性を有する緩衝部材320を設けたことにより、錘部230の過剰変位により錘接合部202の上面がキャップ基板310の面310Aに衝突する際に、緩衝部材320が撓んで(変形して)衝撃を緩和する。
【0038】
以上のように、第2の実施の形態に示した加速度センサ300では、キャップ基板310の錘接合部202と対向する面310Aに可撓性を有する緩衝部材320を設けたことにより、錘部230の過剰変位により錘接合部202の上面がキャップ基板310に衝突する際に、緩衝部材320が撓んで(変形して)衝撃を緩和することにより、錘接合部202の上面に形成された金属配線222の変形を防止することが可能になった。このため、衝突による金属配線222の経時変形に伴う抵抗値のずれを防止することができ、ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を正確に検出することを維持でき、加速度センサ300の信頼性が低下することを防止できる。
【0039】
また、第2の実施の形態に示した加速度センサ300では、キャップ基板310の厚さを上記第1の実施の形態に示したように薄肉化して、低背化するようにしてもよい。これにより、加速度センサ300の低背化も可能になり、電子機器に搭載される際の実装体積を縮小できる。このため、特に実装面積の縮小と低背化に対する要求が厳しい携帯電話機等の小型の電子機器への搭載が容易になる。
【0040】
なお、キャップ基板310は、加速度センサ300の製造中に可動部(錘部230と可撓部211〜214を含む)に異物が付着することを防止し、加速度センサ200全体を封止する樹脂が可動部の動きを妨げることを防止し、錘部230の過剰変位により可撓部211〜214が破損することを防止することが可能であることは勿論である。また、緩衝部材320は、錘部230と対向するキャップ基板310側の面に配置すれば良く、その配置位置の精度を要求するものではないため、キャップ基板310側に緩衝部材320を配置することは容易である。
【0041】
(第3の実施の形態)
本第3の実施の形態では、錘接合部の上面に緩衝部材を設ける例について説明する。なお、第3の実施の形態において例示する加速度センサは、錘接合部部分の構成を除いて、上記図1に示した加速度センサ200と同一の構成を有するため、その平面図の図示及び構成説明は省略する。
【0042】
図4は、第3の実施の形態に係る加速度センサ400の要部構成を示す断面図である。図4において、上記図2に示した構成と同一の構成部分には同一符号を付している。
【0043】
図4において、加速度センサ400は、錘接合部202の上面に複数の緩衝部材420を設けている。キャップ基板410は、シリコン基板を用いるものとする。また、キャップ基板310には、ガラス基板、金属基板、樹脂基板等を用いても良い。
【0044】
緩衝部材420は、可撓性を有する弾性ゴム材料を用いるものとする。弾性ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等を使用することができる。緩衝部材420として弾性ゴム材料を使用する場合は、印刷法、液滴吐出法等により形成可能である。弾性ゴム材料の硬度は、液滴吐出法により形成する場合は20〜70の範囲とすることが好ましい。なお、この硬度の測定方法は、JISK6301スプリング式硬さ試験A形に準拠している。
【0045】
なお、複数の緩衝部材420は、同一の大きさ、同一の重量のものを用い、その接着位置は、錘部230の変位に影響を及ぼさないように重量バランスを考慮して決定される。
【0046】
加速度センサ400では、錘接合部202の上面に可撓性を有する緩衝部材420を設けたことにより、錘部230の過剰変位により錘接合部202の上面がキャップ基板410に衝突する際に、緩衝部材420が撓んで(変形して)衝撃を緩和する。
【0047】
以上のように、第3の実施の形態に示した加速度センサ400では、錘接合部202の上面に可撓性を有する緩衝部材420を設けたことにより、錘部230の過剰変位により錘接合部202の上面がキャップ基板410に衝突する際に、緩衝部材420が撓んで(変形して)衝撃を緩和することにより、錘接合部202の上面に形成された金属配線222の変形を防止することが可能になった。このため、衝突による金属配線222の経時変形に伴う抵抗値のずれを防止することができ、ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を正確に検出することを維持でき、加速度センサ400の信頼性が低下することを防止できる。
【0048】
また、第3の実施の形態に示した加速度センサ400では、キャップ基板410の厚さを上記第1の実施の形態に示したように薄肉化して、低背化するようにしてもよい。これにより、加速度センサ400の低背化も可能になり、電子機器に搭載される際の実装体積を縮小できる。このため、特に実装面積の縮小と低背化に対する要求が厳しい携帯電話機等の小型の電子機器への搭載が容易になる。また、緩衝部材420の個数は、限定するものではなく、例えば、1個でもよい。
【0049】
なお、キャップ基板410は、加速度センサ400の製造中に可動部(錘部230と可撓部211〜214を含む)に異物が付着することを防止し、加速度センサ200全体を封止する樹脂が可動部の動きを妨げることを防止し、錘部230の過剰変位により可撓部211〜214が破損することを防止することが可能であることは勿論である。
【0050】
(第4の実施の形態)
本第4の実施の形態では、図2に示した加速度センサ200をセンサパッケージに収納した例について説明する。第4の実施の形態において例示する加速度センサ200は、図2に示した加速度センサ200と構成が同一であるため、その図示及び構成説明は省略する。
【0051】
図5において、(A)は第4の実施の形態に係る加速度センサ200を収容したセンサパッケージ500の概略構成を示す断面図、(B)は(A)の加速度センサ200の外観を示す平面図である。
【0052】
図5(A)において、センサパッケージ500は、保護ケース501と保護ケース蓋502により構成される。保護ケース501の内部には、加速度センサ200を収容するための凹部501Aが形成されている。加速度センサ200は、フレーム部215の底面が凹部501Aの底面に接着剤503により固定される。また、保護ケース501の上面501Bには、加速度センサ200の接続パッド221(図1参照)と電気的に接続するための電極(図示せず)が形成されている。この保護ケース501側の電極と加速度センサ200の接続パッド221は、ボンディングワイヤ504により電気的に接続されている。保護ケース蓋502は、保護ケース501の上面501Bに接着剤503により接着される。保護ケース501と保護ケース蓋502は、金属やセラミック等を用いて形成される。
【0053】
図5(B)において、加速度センサ200は、半導体基板201の外形寸法が2mm×2mm(横×縦)であり、上記錘接合部202、可撓部211〜214、錘部230を形成する領域に開口201Aが形成されている。この開口201Aを除く半導体基板201のフレーム部215の幅は、300〜500μmの範囲である。なお、これらの寸法は、限定されない。
【0054】
図5(A)に示すセンサパッケージ500は、加速度センサ200の天地方向を維持して収容する構成例である。
【0055】
センサパッケージ500は、加速度センサ200を収容し、保護ケース蓋502により加速度センサ200上方に空間が確保されているため、可撓性を持たせたキャップ基板240を錘部230の衝突時に変形させることが可能である。
【0056】
次に、加速度センサ200の天地方向を反転して収容するセンサパッケージ600の構成例を図6に示す。図6はセンサパッケージ600の概略構成を示す断面図である。
【0057】
図6において、センサパッケージ600は、加速度センサ200を支持する配線基板601を備える。配線基板601は、段差を有する形状であり、その下段部の周縁部と上段部の周縁部に接続端子602が形成されている。上段部の接続端子602の一方の端部には、バンプ603が形成されている。このバンプ603の形成位置に合わせて、天地方向が反転された加速度センサ200のフレーム部215上に形成された接続パッド221(図1参照)が固定される。したがって、加速度センサ200の接続パッド221は、バンプ603により配線基板601の上段部の接続端子602と電気的に接続される。また、配線基板601の上段部の接続端子602と下段部の接続端子602は、ボンディングワイヤ604により電気的に接続される。
【0058】
加速度センサ200の底面部(図中の上面側)には、センサパッケージ600内を封止樹脂606で封止する際に、加速度センサ200内に封止樹脂606が浸入することを防止する規制板605が接着されている。この規制板605の上方には、封止樹脂606により封止されたセンサパッケージ600の上面側全体を覆う天板607が接着されている。封止樹脂606としては、エポキシ系の材料を用いる。
【0059】
センサパッケージ600は、封止樹脂606を用いたため、加速度センサ200の天地方向を反転させて固定することが可能である。
【0060】
なお、本第4の実施の形態では、センサパッケージ500,600に加速度センサ200を収容する例を示したが、これに限るものではなく、上記第2の実施の形態に示した加速度センサ300又は第3の実施の形態に示した加速度センサ400も同様に収容可能である。
【0061】
(第5の実施の形態)
本第5の実施の形態では、上記第1〜3の実施の形態に示した加速度センサ200,300,400又は上記第4の実施の形態に示したセンサパッケージ500,600を搭載する電子機器の例について説明する。
【0062】
加速度センサ200,300,400又はセンサパッケージ500,600は、例えば、IC等の能動素子を搭載する回路基板上に実装され、ワイヤボンディング接続等の周知の方法および材料によって接続パッド221と、電子回路基板もしくはIC等の能動素子とを接続することにより、加速度センサと電子回路とを1つの電子部品として提供することができる。この電子部品は、例えば、ゲーム機、携帯電話等のモバイル端末機に搭載されて市場に流通することが可能である。
【0063】
以下に、加速度センサ200により検出される加速度検出信号を処理する処理回路の例について説明する。なお、加速度センサ300,400又はセンサパッケージ500,600を適用する場合も以下の処理回路が適用可能である。
【0064】
<処理回路>
上記加速度センサ200により検出される加速度検出信号を処理する各処理回路の構成例について図7を参照して説明する。
【0065】
図7は、加速度センサ200により検出される加速度検出信号を処理する処理回路700の回路構成を示す図である。図7において、処理回路700は、アンプ回路(Amp)701と、フィルタ回路702と、から構成される。
【0066】
アンプ回路701は、印加される加速度に応じて加速度センサ200から出力されるX,Y,Z軸方向の各加速度検出信号(抵抗値変化)を所定の増幅率で増幅してフィルタ回路702に出力する。フィルタ回路702は、抵抗とキャパシタ等を含む回路であり、信号に含まれたノイズ成分を通過させるフィルタ機能を有する。フィルタ回路702は、低周波数の信号成分をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度検出信号として出力する。
【0067】
次に、上記加速度センサ200と処理回700を実装した電子機器とした例について説明する。なお、本明細書において電子機器とは、半導体技術を利用して機能しうる装置全般を指し、電子部品を実装した基板も電子機器の範囲に含まれるものとする。
【0068】
図8は、上記加速度センサ200と処理回路700を実装した電子機器として、例えば、センサモジュール800の一例を示す図である。図8において、センサモジュール800は、上記処理回路700を含む信号処理チップ801と、メモリチップ802と、上記加速度センサ200を含むセンサチップ803と、が基板804上に実装されている。各チップ801,802,803は、ボンディングワイヤ805により接続されている。メモリチップ802は、上述の加速度センサ200を出荷前の補正値や信号処理チップ801の制御用のプログラムやパラメータ等を記憶するメモリである。
【0069】
上記のようなセンサモジュール800を提供することにより、ゲーム機、携帯電話等のモバイル端末機への実装が容易になる。
【0070】
次に、図8に示したセンサモジュール800を電子機器として、例えば、モバイル端末機に実装した例について説明する。
【0071】
図9は、センサモジュール800を実装した電子機器として携帯型情報端末900の一例を示す図である。図9において、携帯型情報端末900は、ディスプレイ部901と、キーボード部902と、から構成される。センサモジュール800は、キーボード部902の内部に実装されている。携帯型情報端末900は、その内部に各種プログラムを記憶し、各種プログラムにより通信処理や情報処理等を実行する機能を有する。この携帯型情報端末900では、センサモジュール800により検出される加速度をアプリケーションプログラムで利用することにより、例えば、落下時の加速度を検出して電源をオフさせる等の機能を付加することが可能になる。
【0072】
上記のようにセンサモジュール800をモバイル端末機に実装することにより、新たな機能を実現することができ、モバイル端末機の利便性や信頼性を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
200,300,400…加速度センサ、201…半導体基板、202…錘接合部、211〜214…可撓部、215…フレーム部、221…接続パッド、222…金属配線、230…錘部、240,310,410…キャップ基板、250…接着剤、320,420…緩衝部材、900…携帯型情報端末、Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4…ピエゾ抵抗素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、
前記可撓部に形成された複数のセンサ素子と、
前記可撓部及び前記錘部の上側に形成され、前記複数のセンサ素子と複数の接続端子とを電気的に接続する複数の配線と、
前記複数のセンサ素子と前記複数の配線が形成された前記可撓部及び前記錘部の上方を覆うキャップ基板と、
前記錘部側と前記キャップ基板側の何れか一方又は双方に配置され、前記錘部の過剰変位に伴う衝撃を緩和する緩衝部材と、
を備えることを特徴とする力学量センサ。
【請求項2】
前記キャップ基板を前記緩衝部材として用いたことを特徴とする請求項1記載の力学量センサ。
【請求項3】
前記キャップ基板は、可撓性を有する厚さに形成したことを特徴とする請求項2記載の力学量センサ。
【請求項4】
前記緩衝部材は、前記錘部側に配置されたことを特徴とする請求項1記載の力学量センサ。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記キャップ基板側に配置されたことを特徴とする請求項1記載の力学量センサ。
【請求項6】
半導体基板に、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置される錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を形成し、
前記可撓部に複数のセンサ素子を形成し、
前記可撓部及び前記錘部の上側に前記複数のセンサ素子と複数の接続端子とを電気的に接続する複数の配線を形成し、
前記錘部の過剰変位に伴う衝撃を緩和する緩衝部材を前記錘部の上側に形成し、
前記複数のセンサ素子と前記複数の配線と前記緩衝部材の上方を覆うキャップ基板を前記フレーム部の上部に形成したことを特徴とする力学量センサの製造方法。
【請求項7】
前記錘部側と前記キャップ基板側の何れか一方又は双方に前記緩衝部材を形成したことを特徴とする請求項6記載の力学量センサの製造方法。
【請求項8】
前記キャップ基板を前記緩衝部材として用いたことを特徴とする請求項6記載の力学量センサの製造方法。
【請求項9】
前記キャップ基板は、可撓性を有する厚さに形成したことを特徴とする請求項8記載の力学量センサの製造方法。
【請求項10】
前記錘部側に前記緩衝部材を形成したことを特徴とする請求項6記載の力学量センサの製造方法。
【請求項11】
前記キャップ基板側に前記緩衝部材を形成したことを特徴とする請求項6記載の力学量センサの製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の力学量センサと、
前記力学量センサにより検出される力学量検出信号を処理する処理回路と、
を備えることを特徴とする電子機器。


【図1】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−281776(P2010−281776A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137082(P2009−137082)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】