説明

加圧機構の継続加圧防止方法及び装置

【課題】異常時に、制御装置に拘わらずハードウェア的に圧力を下げ、大気圧に戻すことができるようにする。
【解決手段】自然排気されない一つの空間に対して、加圧弁12と減圧弁14を有する2ポートの電磁弁を用いて加減圧制御する際に、加圧状態が一定時間以上継続したことを検出し、加圧状態が一定時間以上継続した時は、加圧を停止して大気開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧機構の継続加圧防止方法及び装置に係り、特に、電子部品を基板等に実装する際に用いられる電子部品実装装置(マウンタと称する)の上流工程で、電子部品に接着剤を塗布する接着剤塗布装置(ディスペンサと称する)のように、制御装置が異常を起こした際に加圧状態が継続されると困る装置に用いるのに好適な、加圧機構の継続加圧防止方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空圧制御において、加減圧によりアクチュエータを動かすことが一般的に行なわれている。例えばディスペンサでは、シリンダから接着剤を吐出している。
【0003】
図1に例示する如く、CPU10からの信号により、アクチュエータ16の加減圧を、加圧弁12と減圧弁14を備えた2ポートの電磁弁で制御し、自然排気が起きないように密閉すれば、電磁弁の操作で、加圧・減圧・固定の3状態を作ることができるが、一定期間で加圧/減圧状態を繰り返している制御が不具合を起こした場合、望まない状態、例えば加圧状態で固定され、シリンダの突出、接着剤の流出等、ディスペンサ等に被害を及ぼすことがある。
【0004】
一方、特許文献1には、CPUの暴走(ハングアップ)をウォッチドッグ回路で監視し、リセットを掛けて、CPUの暴走を復帰させる方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−20289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術でも、リセットから立ち上がるまでの時間や、正常に起動しない場合は、望まない状態が継続される。又、加減圧が制御装置に依存しているため、ハングアップにより制御が停止した場合、その後の安全を図ることができず、ディスペンサにおけるシリンダの突出、接着剤の流出等の問題を防ぐことができなかった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、異常時に、制御装置に拘わらず、ハードウェア的に圧力を下げ、大気圧に戻すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自然排気されない一つの空間に対して、2ポートの電磁弁を用いて加減圧制御する際に、加圧状態が一定時間以上継続した時は、加圧を停止して大気開放することにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本発明は、又、自然排気されない一つの空間に対して、2ポートの電磁弁を用いて加減圧制御する加圧機構において、加圧状態が一定時間以上継続したことを検出する手段と、加圧状態が一定時間以上継続した時は、加圧を停止して大気開放する手段と、を備えたことを特徴とする加圧機構の継続加圧防止装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハードウェア構成で装置を組むことで、加減圧が制御から離れ、望まない状態となっても、アクチュエータが通常(大気圧)にある状態に戻るようにすることができ、異常状態が継続しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
本実施形態は、図2に示す如く、CPU10と弁12、14の間に、本発明に係る継続加圧防止回路20を挿入したものである。
【0013】
この継続加圧防止回路20は、図3に詳細に示す如く、クロック信号CLKを分周する分周器22、32と、CPU10から入力される加圧信号を反転するためのインバータ24と、該加圧信号の継続時間を計数するための異常検出カウンタ26と、該異常検出カウンタ26の出力を保持するための異常検出ラッチ28と、前記CPU10から入力される加圧信号と該異常検出ラッチ28の出力の論理積を加圧弁30に出力するためのANDゲート30と、減圧(大気開放)時間を計数するための減圧時間カウンタ34と、該減圧時間カウンタ34の出力を保持する減圧時間ラッチ36と、前記異常検出ラッチ28の出力を反転するインバータ38と、前記異常検出ラッチ28の出力とCPU10から入力される減圧(大気開放)信号の論理積を出力するANDゲート40と、前記減圧時間ラッチ36の出力とインバータ38の出力の論理積を出力するANDゲート42と、前記ANDゲート40、42の論理和を減圧弁14に出力するORゲート44とを含んで構成されている。
【0014】
ここでは、Low信号で加圧される制御構成を示しているが、各論理を反転することでHigh信号にも対応できる。
【0015】
本実施形態の継続加圧防止装置は、異常検出カウンタ26によって異常を検知することができ、減圧時間カウンタ34によって、異常後の減圧(排気)を所定時間行なうことができる。
【0016】
即ち、図4に例示する如く、加圧信号がCPU10から入力されると、異常検出カウンタ26のクリア端子CLがディセーブルとなり、異常検出カウンタ26がカウントを開始する。正常に制御されている場合は、一定時間で加圧が解除されるため、クリア端子CLがイネーブルとなり、異常検出カウンタ26はリセットされる。
【0017】
一方、不具合が起き、加圧信号が解除されない場合は、異常検出カウンタ26が一定のカウントを行なったところで、その出力端子Q*から出力された信号がトリガとなり、異常検出ラッチ28が動作しHigh信号が出力される。出力された信号により、加圧信号は全て無視され、加圧が停止される。
【0018】
一方排気は、異常検出ラッチ28の出力を受け、クリア端子CLがディセーブルとなった減圧時間カウンタ34が一定カウントを行ない、減圧時間ラッチ36にトリガを送るまで続く。
【0019】
ここで、異常検出及び減圧時間決定の各カウンタ26、34は、元のクロック信号CLKと分周器22、32によって、任意の周期に設定できる。
【0020】
このようにして、CPU10や制御ソフトウェアのハングアップにより、加圧信号が継続した場合、アクチュエータ16に悪い影響を与えないために、強制的に加圧信号を止める。又、その圧力を開放するために減圧(大気開放)信号を出力する。
【0021】
なお、前記説明においては、本発明がディスペンサに適用される場合を想定して説明していたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、加圧機構一般に同様に適用できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】2ポートの電磁弁を用いた加圧機構の一例の構成を示すブロック図
【図2】本発明が適用された加圧機構の実施形態の全体構成を示すブロック図
【図3】同じく継続加圧防止回路の詳細を示す回路図
【図4】前記実施形態の動作を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0023】
10…CPU
12…加圧弁
14…減圧弁
16…アクチュエータ
20…継続加圧防止回路
26…異常検出カウンタ
28…異常検出ラッチ
34…減圧時間カウンタ
36…減圧時間ラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然排気されない一つの空間に対して、2ポートの電磁弁を用いて加減圧制御する際に、
加圧状態が一定時間以上継続した時は、加圧を停止して大気開放することを特徴とする加圧機構の継続加圧防止方法。
【請求項2】
自然排気されない一つの空間に対して、2ポートの電磁弁を用いて加減圧制御する加圧機構において、
加圧状態が一定時間以上継続したことを検出する手段と、
加圧状態が一定時間以上継続した時は、加圧を停止して大気開放する手段と、
を備えたことを特徴とする加圧機構の継続加圧防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−61351(P2009−61351A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228682(P2007−228682)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】