説明

加圧浸出、直接電解採取および溶媒/溶液抽出を使用して銅含有物質から銅を回収するプロセス

【課題】本発明は一般的に、加圧浸出および直接電解採取を使用して金属含有鉱石、濃縮物またはその他の金属含有物質から銅および/またはその他の金属バリューを回収する方法を提供すること。
【解決手段】より具体的には、本発明は浸出、溶媒/溶液抽出および電解採取作業と組み合わせて加圧浸出および直接電解採取を使用して、黄銅鉱含有鉱石から銅を回収する、実質的に酸が自生するプロセスに関する。供給流は、黄銅鉱、輝銅鉱、斑銅鉱、銅藍、方輝銅鉱および硫砒銅鉱のうちの少なくとも一つ、またはこれらの混合物もしくは組み合わせを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は一般的に、加圧浸出および直接電解採取を使用して金属含有物質から銅およびその他の金属バリューを回収するプロセスに関する。より具体的には、本発明は金属含有物質から金属を回収するために溶媒/溶液抽出と組み合わせて微粉砕、加圧浸出および直接電解採取を使用するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
銅を含有する物質、例えば銅鉱石、銅含有濃縮物およびその他の銅含有物質の湿式冶金処理は、長年にわたり定着している処理である。しかし、従来の処理技法よりも低費用で高い銅の回収率を達成できるような、銅を含有する物質から銅を、特に黄銅鉱および輝銅鉱のような硫化銅から銅を回収する効果的かつ効率的な方法が好都合である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の開示)
一般的に、本発明の種々の局面によれば、金属含有物質から銅およびその他の金属バリューを回収するプロセスには、種々の物理的コンディショニング、反応および回収プロセスが含まれる。例えば、本発明の種々の実施形態によれば、中温または高温(後述の通り定義)の加圧浸出などによる反応処理の前に金属含有物質の微粉砕を行うことにより、従来技術の金属回収プロセスよりも優れた金属バリューの回収やその他の種々の利点がもたらされる。さらに、適切なコンディショニングを行うと、中間の溶媒/溶液抽出工程を使用せずに加圧浸出生成物流からの銅の直接電解採取が可能になる。さらに溶媒/溶液抽出および電解採取作業においてさらに処理され得る電解採取による希薄電解質抽出流を使用することにより、処理流中の不純物および過剰な酸の少なくとも一部分が除去される。
【0004】
本発明の一つの例示的実施形態によれば、銅含有物質から銅を回収するプロセスには、以下の工程、すなわち:(i)銅含有物質を含む供給流を提供する工程;(ii)制御下の微粉砕に銅含有供給流を付す工程;(iii)銅含有供給流を加圧浸出することにより、銅を含有する溶液を得る工程;(iv)銅を含有する溶液からカソード銅を回収する工程;(v)溶媒/溶液抽出および電解採取作業において銅回収工程による希薄電解質流の少なくとも一部分を処理する工程;および(vi)希薄電解質流の少なくとも一部分を加圧浸出工程に再循環させることにより、加圧浸出作業の酸要求量の一部または全てを得る工程が含まれる。
【0005】
別の例示的実施形態によれば、銅を回収するプロセスには、以下の工程、すなわち:(i)銅を含有する物質の供給流を提供する工程;(ii)銅を含有する供給流を常圧浸出または加圧浸出に付すことにより、銅を含有する溶液を得る工程;(iii)一つ以上の化学的または物理的コンディショニング工程により銅を含有する溶液をコンディショニングする工程;および(iv)銅を含有する溶液を溶媒抽出に付すことなく、銅を含有する溶液から直接銅を電解採取する工程が含まれる。本明細書において、「加圧浸出」という用語は、高温高圧の条件下で材料を酸性の溶液および酸素に接触させる金属回収プロセスを指す。
【0006】
本発明の例示的実施形態の別の局面によれば、電解採取段階による希薄電解質抽出流は、金属回収プロセスから過剰な酸の少なくとも一部分およびそれに含まれる不純物を好都合に除去するものであり、これにより当該不純物がプロセスにおいて有害な水準まで蓄積し、製造効率や生成物(銅カソードなど)の品質に悪影響を及ぼすことが防止される。本発明の一実施形態によれば、希薄電解質抽出流にて除去された過剰な酸は、他の銅抽出プロセスにおいて利用され得、あるいは前記酸は適切な物質(例えば低等級の銅鉱石、採鉱廃棄物、および/または石灰石、苦灰石、長石などの酸中和鉱物を含有するその他の岩石生成物)を使用して消費され得る。
【0007】
本発明の例示的実施形態の別の局面によれば、加圧浸出および電解採取工程にて生成される酸は、加圧浸出工程に再循環され、銅の効果的な浸出のために必要な酸を提供する。このように、濃硫酸よりもむしろ、再循環された酸を含有する溶液を使用する方が経済的に好都合である。
【0008】
本発明の種々の局面によるプロセスの前記利点およびその他の利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読解することにより、当業者には自明となるものである。例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
金属含有物質から銅を回収する方法であって、
(a)金属含有物質を含む供給流を提供する工程;
(b)前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す工程;
(c)高温高圧下の酸化環境内で導入流の少なくとも一部分を浸出に付すことにより、金属含有溶液を含む生成物スラリーおよび残渣を得る工程;
(d)溶媒/溶液抽出技法を使用することなく前記生成物スラリーをコンディショニングすることにより、電解採取に適した金属含有溶液を得る工程;
(e)前記金属含有溶液から銅を電解採取することにより、カソード銅および金属含有希薄電解質流を得る工程;
(f)前記希薄電解質流の一部分を前記浸出工程に再循環させる工程;および
(g)溶媒/溶液抽出技法を使用して前記希薄電解質の少なくとも一部分を処理する工程を包含する方法。
(項目2)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、銅含有硫化物の鉱石、濃縮物または沈殿物を含む供給流を提供することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、黄銅鉱、輝銅鉱、斑銅鉱、銅藍、方輝銅鉱および硫砒銅鉱のうちの少なくとも一つ、またはこれらの混合物もしくは組み合わせを含む供給流を提供することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目4)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、黄銅鉱を含む供給流を提供することを包含する、項目3に記載の方法。
(項目5)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、金属含有物質を含む供給流ならびに銅および酸を含む溶液流を提供することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流中の粒子の実質的に全てが加圧浸出の間に実質的に完全に反応するように前記供給流の粒径を低減することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流の粒径を約25ミクロン未満のP98にまで低減することを包含する、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流の粒径を約10〜約23ミクロンのP98にまで低減することを包含する、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流の粒径を約13〜15ミクロンのP98にまで低減することを包含する、項目6に記載の方法。
(項目10)
前記浸出工程が、加圧浸出容器中で前記供給流の少なくとも一部分を浸出することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記浸出工程が、約140℃〜約180℃の温度および約50psi〜約750psiの全動作圧力にて、加圧浸出容器中で前記供給流の少なくとも一部分を浸出することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記浸出工程がさらに、前記加圧浸出容器中の酸素分圧を約50psi〜約250psiに維持するために前記加圧浸出容器内に酸素を注入することを包含する、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記供給流を加圧浸出する前記工程が、リグニン誘導体、オルトフェニレンジアミン、アルキルスルホネートおよびこれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤の存在下で前記供給流を加圧浸出することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記供給流を加圧浸出する前記工程が、リグノスルホン酸カルシウムの存在下で前記供給流を加圧浸出することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記コンディショニング工程が前記生成物スラリーの少なくとも一部分を固液分離に付すことを包含し、前記金属含有溶液の少なくとも一部分が前記残渣から分離される、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記コンディショニング工程がさらに、前記金属含有溶液の少なくとも一部分を一つ以上の金属含有流の少なくとも一部分と混合することにより、前記金属含有溶液中の所望の銅濃度を達成することを包含する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記コンディショニング工程がさらに、前記金属含有溶液の少なくとも一部分を一つ以上の金属含有流の少なくとも一部分と混合することにより、前記金属含有溶液中約15グラム/リットル〜約80グラム/リットルの銅濃度を達成することを包含する、項目15に記載の方法。
(項目18)
金属含有溶液の一部分が工程(c)に再循環される、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記コンディショニング工程が前記生成物スラリーの少なくとも一部分を濾過に付すことを包含し、前記濾過において、前記金属含有溶液の少なくとも一部分が前記残渣から分離される、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記コンディショニング工程が、前記生成物スラリー中の前記金属含有溶液から前記残渣の少なくとも一部分を分離することを包含し、前記方法がさらに工程(c)においてシーディング剤として前記残渣の少なくとも一部分を使用することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目21)
さらに、(h)浸出作業中に前記希薄電解質流の一部分を使用する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目22)
浸出作業中に前記希薄電解質流の一部分を使用する前記工程が、野積み浸出作業、備蓄浸出作業、バット浸出作業、槽浸出作業、加圧浸出作業またはインサイチュでの浸出作業の少なくとも一つにおいて前記希薄電解質流の一部分を使用することを包含する、項目21に記載の方法。
(項目23)
金属含有物質から銅を回収する方法であって、
(a)金属含有物質を含む供給流を提供する工程;
(b)前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す工程;
(c)高温高圧下の酸化環境内で導入流の少なくとも一部分を浸出することにより、金属含有溶液を含む生成物スラリーと残渣とを得る工程;
(d)前記生成物スラリーの少なくとも一部分を前記浸出工程に再循環させる工程;
(e)溶媒/溶液抽出技法を使用することなく前記生成物スラリーをコンディショニングすることにより、電解採取に適した銅含有溶液を得る工程;
(f)前記金属含有溶液から銅を電解採取することにより、カソード銅および金属含有希薄電解質流を得る工程;および
(g)溶媒/溶液抽出技法を使用して前記希薄電解質流の一部分を処理する工程を包含する方法。
(項目24)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、銅含有硫化物の鉱石、濃縮物または沈殿物を含む供給流を提供することを包含する、項目23に記載の方法。
(項目25)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、黄銅鉱、輝銅鉱、斑銅鉱、銅藍、方輝銅鉱および硫砒銅鉱のうちの少なくとも一つ、またはこれらの混合物もしくは組み合わせを含む供給流を提供することを包含する、項目23に記載の方法。
(項目26)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、金属含有物質を含む供給流ならびに銅および酸を含む溶液流を提供することを包含する、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流中の粒子の実質的に全てが加圧浸出の間に実質的に完全に反応するように前記供給流の粒径を低減することを包含する、項目23に記載の方法。
(項目28)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流の粒径を約25ミクロン未満のP98にまで低減することを包含する、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流の粒径を約10〜約23ミクロンのP98にまで低減することを包含する、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流の粒径を約13〜約15ミクロンのP98にまで低減することを包含する、項目27に記載の方法。
(項目31)
前記浸出工程が、約140℃〜約180℃の温度および約50psi〜約750psiの全動作圧力にて、加圧浸出容器中で前記供給流の少なくとも一部分を浸出することを包含する、項目23に記載の方法。
(項目32)
前記浸出工程がさらに、前記加圧浸出容器中の酸素分圧を約50psi〜約250psiに維持するために前記加圧浸出容器内に酸素を注入することを包含する、項目23に記載の方法。
(項目33)
前記コンディショニング工程が前記生成物スラリーの少なくとも一部分を固液分離に付すことを包含し、前記固液分離において、前記金属含有溶液の少なくとも一部分が前記残渣から分離される、項目23に記載の方法。
(項目34)
前記コンディショニング工程がさらに、前記金属含有溶液の少なくとも一部分を一つ以上の金属含有流の少なくとも一部分と混合することにより、前記金属含有溶液中約15グラム/リットル〜約80グラム/リットルの銅濃度を達成することを包含する、項目33に記載の方法。
(項目35)
さらに、工程(d)の前に前記生成物スラリーを液体成分および固体成分に分離することを包含し、前記再循環工程(d)が浸出工程(c)に前記固体成分を再循環させることを包含する、項目23に記載の方法。
(項目36)
前記コンディショニング工程が、前記生成物スラリー中の前記金属含有溶液から前記残渣の少なくとも一部分を分離することを包含し、前記方法が、さらに浸出工程(c)においてシーディング剤として前記残渣の少なくとも一部分を使用することを包含する、項目23に記載の方法。
(項目37)
金属含有物質から銅を回収する方法であって、
(a)金属含有物質を含む供給流を提供する工程;
(b)前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す工程;
(c)高温高圧下の酸化環境内で導入流の少なくとも一部分を浸出することにより、金属含有溶液を含む生成物スラリーおよび残渣を得る工程;
(d)溶媒/溶液抽出技法を使用することなく前記生成物スラリーをコンディショニングすることにより、電解採取に適した金属含有溶液を得る工程;
(e)前記生成物スラリーの少なくとも一部分を前記浸出工程に再循環させる工程;
(f)前記金属含有溶液から銅を電解採取することにより、カソード銅および金属含有希薄電解質流を得る工程;
(g)前記希薄電解質流の一部分を前記浸出工程に再循環させる工程;および
(h)溶媒/溶液抽出技法を使用して前記希薄電解質流の一部分を処理する工程を包含する方法。
(項目38)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、銅含有硫化物の鉱石、濃縮物または沈殿物を含む供給流を提供することを包含する、項目37に記載の方法。
(項目39)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、金属含有物質を含む供給流ならびに銅および酸を含む溶液流を提供することを包含する、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流中の粒子の実質的に全てが加圧浸出の間に実質的に完全に反応するように前記供給流の粒径を低減することを包含する、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す前記工程が、前記供給流の粒径を約25ミクロン未満のP98にまで低減することを包含する、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記浸出工程が、約140℃〜約180℃の温度および約50psi〜約750psiの全動作圧力にて、加圧浸出容器中で前記供給流の少なくとも一部分を浸出に付すことを包含する、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記コンディショニング工程が前記生成物スラリーの少なくとも一部分を固液分離に付すことを包含し、前記固液分離において、前記金属含有溶液の少なくとも一部分が前記残渣から分離される、項目39に記載の方法。
(項目44)
前記コンディショニング工程がさらに、前記金属含有溶液の少なくとも一部分を一つ以上の金属含有流の少なくとも一部分と混合することにより、前記金属含有溶液中約15グラム/リットル〜約80グラム/リットルの銅濃度を達成することを包含する、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記コンディショニング工程が、前記生成物スラリー中の前記金含有溶液から前記残渣の少なくとも一部分を分離することを包含し、前記方法が、さらに浸出工程(c)においてシーディング剤として前記残渣の少なくとも一部分を使用することを包含する、項目39に記載の方法。
(項目46)
金属含有物質から銅を回収する方法であって、
(a)金属含有物質を含む供給流を提供する工程;
(b)前記供給流の少なくとも一部分を制御下の超微粉砕に付す工程;
(c)高温高圧下の酸化環境内で導入流の少なくとも一部分を浸出することにより、金属含有溶液を含む生成物スラリーおよび残渣を得る工程;
(d)溶媒/溶液抽出技法を使用することなく前記生成物スラリーをコンディショニングすることにより、電解採取に適した銅含有溶液を得る工程;
(e)前記金属含有溶液から銅を電解採取することにより、カソード銅および金属含有希薄電解質流を得る工程;および
(f)溶媒/溶液抽出技法を使用して前記希薄電解質流の一部分を処理する工程を包含する方法。
(項目47)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、銅含有硫化物の鉱石、濃縮物または沈殿物を含む供給流を提供することを包含する、項目46に記載の方法。
(項目48)
金属含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、金属含有物質を含む供給流ならびに銅および酸を含む溶液流を提供することを包含する、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記浸出工程が、約140℃〜約180℃の温度および約50psi〜約750psiの全動作圧力にて、加圧浸出容器中で前記供給流の少なくとも一部分を浸出に付すことを包含する、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記コンディショニング工程が前記生成物スラリーの少なくとも一部分を固液分離に付すことを包含し、前記固液分離において、前記金属含有溶液の少なくとも一部分が前記残渣から分離される、項目48に記載の方法。
(項目51)
前記コンディショニング工程がさらに、前記金属含有溶液の少なくとも一部分を一つ以上の金属含有流の少なくとも一部分と混合することにより、前記金属含有溶液中約15グラム/リットル〜約80グラム/リットルの銅濃度を達成することを包含する、項目48に記載の方法。
(項目52)
さらに、前記電解採取工程(e)による前記希薄電解質流の一部分、または前記浸出工程(c)による前記生成物スラリーの一部分を、前記浸出工程(c)に再循環させる工程を包含する、項目48に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本発明の一つの例示的実施形態による銅回収プロセスの流れ図を示す。
【図1A】図1Aは本発明の例示的実施形態の一局面の流れ図を示す。
【図2】図2は本発明の例示的実施形態による銅回収プロセスの種々の局面の流れ図を示す。
【図3】図3は加圧浸出残渣中の銅の濃度を酸添加の関数としてプロットした、本発明の例示的実施形態の種々の局面によるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の主題は、明細書の結論部分に具体的に示され、明確に請求されている。しかし、本発明のより完全な理解は、同じ番号が同じ要素を示す図面と関連させて検討される場合に、詳細な説明を参照することにより、最も良く得られる。
【0011】
(例示的実施形態の詳細な説明)
本発明の種々の実施形態は、特に銅の回収およびプロセスの効率に関して、従来技術のプロセスよりも優れた有意な進歩を示す。本発明の一つの例示的実施形態によれば、銅含有物質から銅を回収するプロセスには、以下の工程、すなわち:(i)銅含有物質を含む供給流を提供する工程;(ii)制御下の微粉砕に銅含有供給流の少なくとも一部分を付す工程;(iii)銅含有供給流を加圧浸出することにより、銅を含有する溶液を得る工程;(iv)電解採取により、銅を含有する溶液からカソード銅を回収する工程;(v)溶媒/溶液抽出とその後の電解採取作業によって、銅回収工程による希薄電解質流の少なくとも一部分を処理する工程;および(vi)希薄電解質流の少なくとも一部分を加圧浸出工程に再循環させる工程が含まれる。
【0012】
本発明の種々の実施形態は、特に銅の回収およびプロセスの効率に関して、従来技術のプロセスよりも優れた有意な進歩を示す。本発明の別の例示的実施形態によれば、金属含有物質から銅を回収するプロセスには、以下の工程、すなわち:(i)銅含有物質を含む供給流を提供する工程;(ii)制御下の微粉砕に銅含有供給流の少なくとも一部分を付す工程;(iii)銅含有供給流を加圧浸出することにより、銅を含有する溶液を得る工程;(iv)電解採取によって銅を含有する溶液からカソード銅を回収する工程;(v)溶媒/溶液抽出とその後の電解採取作業によって、銅回収工程による希薄電解質流の少なくとも一部分を処理する工程;および(vi)場合により希薄電解質流の少なくとも一部分を加圧浸出工程に再循環させる工程が含まれる。
【0013】
別の例示的実施形態によれば、銅を回収するプロセスには、以下の工程、すなわち:(i)銅を含有する物質を含む供給流を提供する工程;(ii)銅を含有する供給流を常圧浸出または加圧浸出に付すことにより、銅含有溶液を得る工程;(iii)一つ以上の化学的または物理的コンディショニング工程により銅を含有する溶液をコンディショニングする工程;および(iv)銅を含有する溶液を溶媒抽出に付すことなく、銅を含有する溶液から直接銅を電解採取する工程が含まれる。本明細書において、「加圧浸出」という用語は、高温高圧の条件下で材料を酸性の溶液および酸素に接触させる金属回収プロセスを指す。
【0014】
従来の常圧または加圧浸出、溶媒/溶液抽出および電解採取プロセス工程を利用している既存の銅回収プロセスは、多くの場合、本発明が提供する多くの商業的利益を活用するために簡単に改良することができる。黄銅鉱の中温または高温加圧浸出プロセスは、一般的に約120℃から約190℃または最高220℃までの温度にて行うプロセスと考えられている。
【0015】
最初に図1を参照すると、本発明の種々の局面によれば、金属含有物質101が処理のために提供される。金属含有物質101は、鉱石、濃縮物、沈殿物、あるいは銅および/またはその他の金属バリューを回収することができる他の任意の物質であり得る。金属バリュー(例えば、銅、金、銀、白金族の金属、ニッケル、コバルト、モリブデン、レニウム、ウラン、希土類など)は、本発明の種々の実施形態により、金属含有物質から回収することができる。しかし、本発明の種々の局面および実施形態は、銅含有硫化物の鉱石、例えば黄銅鉱(CuFeS)、輝銅鉱(CuS)、斑銅鉱(CuFeS)、銅藍(CuS)、硫砒銅鉱(CuAsS)、方輝銅鉱(Cu)およびこれらの混合物を含有する鉱石および/または濃縮物および/または沈殿物からの銅回収において特に好都合であることが証明されている。すなわち、金属含有物質101は、銅鉱石、濃縮物または沈殿物であることが好ましく、銅含有硫化物の鉱石、濃縮物または沈殿物であることがより好ましい。本発明のさらに別の局面によれば、金属含有物質101は、浮遊選鉱濃縮物でもその沈殿物でもない濃縮物を含み得る。考察を容易にするため、以降、本発明の種々の例示的実施形態の説明では、一般的に黄銅鉱を含有する鉱石または濃縮物からの所望の金属バリューの回収に焦点を置くが、適切な金属含有物質であればいずれも利用することができる。
【0016】
本発明の例示的実施形態によれば、銅は硫化銅濃縮物のような金属含有物質から回収される金属である。前記例示的実施形態の一局面は、泡沫浮遊選鉱により生成される硫化銅濃縮物の使用を伴う。泡沫浮遊選鉱のための準備においては、脈石物質から鉱物含有粒子を遊離させるために適した粒径まで金属含有物質供給流を粉砕する。しかし、前述の通り、他の濃縮物を利用することもできる。
【0017】
金属含有物質101は、選択した処理プロセスに金属含有物質101の条件を適合させることができるような何らかの方法で、金属回収処理のために調製することができるが、その理由は当該条件が処理作業の全体的な有効性および効率に影響を及ぼすことがあるからである。例えば粒径、組成および成分濃度などの供給流の条件は、下流の処理作業(例えば常圧浸出または加圧浸出)の全体的な有効性および効率に影響を及ぼし得る。所望の組成および成分濃度のパラメータは、種々の化学的および/または物理的な処理段階により達成することができるが、その処理段階の選択は、選択した処理法、設備費用および材料の仕様という動作パラメータによって異なる。
【0018】
湿式冶金プロセス、特に加圧浸出プロセスは、粒径の影響を受けやすいことが一般的に公知である。すなわち、抽出湿式冶金の分野においては、鉱物種を細密に分割、粉砕および/または摩砕して粒径を低減した後に、加圧浸出による処理に付すことが一般的な慣行となっている。鉱物種、例えば硫化銅などの粒径を低減すると、極端な圧力および温度ではない条件下における加圧浸出でも、より高い温度および圧力の条件下で達成されるのと同じ金属抽出が達成できることが、一般的に分かっている。粒径分布もまた、他の浸出条件、例えば酸濃度および酸素過圧に影響を及ぼし得る。
【0019】
金属含有物質の粒径を低減する種々の許容される技法および装置、例えばボールミル、タワーミル、超微粉砕ミル、アトリションミル、攪拌ミル、水平ミルなどが現在使用可能であり、処理する物質の表面積を増大させることの望ましい結果を達成し得るさらなる技法も後に開発され得る。
【0020】
例えば金属含有物質101は、制御下の微粉砕によって金属回収処理のために調製され得る。好ましくは、処理流中の金属含有物質粒子のサイズを低減するだけでなく、最も粗い粒子の重量比率が最小限になるようにすることも好都合である。処理効率および銅回収における顕著な利点は、実質的に全ての粒子が実質的に完全に反応できるようにすることにより達成される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、ならびに図1および図1Aを参照すると、制御下の微粉砕は現在知られているまたは後に考案されるいずれかの方法を利用することができるものの、一般的に粉砕工程1010には、制御下の微粉砕工程1010A、任意のサイズ分類工程1010Bおよび固液分離工程1010Cが含まれる。好ましくは、本発明のこの局面による粉砕は、段階方式または閉回路方式にて進行する。すなわち、好ましくは金属含有物質101の最も粗い粒子を所望の水準にまで適切に粉砕し、既に所望の水準以下に小さい粒子は追加の粉砕にほとんどまたは全く付さないものとする。これにより、粉砕作業に伴う費用の節減が可能となり、同時に最も粗い粒子のサイズと重量の比率を制限できるようになる。しかし、開回路粉砕もまた許容される生成物をもたらし得る。
【0022】
引き続き図1Aを参照すると、好ましくはサイクロン技術、例えばサイクロンまたはミニサイクロンを利用して、比較的微細な物質から比較的粗い物質を分離することにより、サイズ分類工程1010Bを容易にし得る。すなわち、物質110を制御下の微粉砕工程1010Aにて粉砕した後、微細な物質12から粗い物質10を適切に分離し、これによって粗い物質10を図1Aに示す通りに流動体11中でさらに粉砕することができる。同様に、選択した粉砕方法および装置が、超微粉砕段階1010における粉砕を容易にするために液体処理剤(例えばプロセス水)を利用する、本発明の例示的実施形態の一局面によれば、任意の固液分離段階1010Cを利用することで、加圧浸出の前に過剰な処理液13を処理流102から除去し、好ましくは過剰な処理液13を超微粉砕段階1010Aに再循環させて再使用に付すことができる。粉砕装置の構成によっては、固液分離段階1010Cが必要な場合と、必要でない場合がある。しかし、超微粉砕1010の前または最中に処理液を銅を含有する物質101に添加する場合は、スラリーの密度を最適化するために、加圧浸出作業1030の前に銅を含有する物質流102から、添加した処理液の少なくとも一部分を除去することが望ましくあり得る。
【0023】
粉砕工程1010は、好ましくは微細に粉砕された物質110をもたらし、これによりほとんど全ての粒子が加圧浸出時にほとんど完全に反応できるほどに小さくなるように、処理された物質の粒径が低減される。
【0024】
種々の粒径および粒径分布は、本発明の種々の局面により好都合に使用することができる。例えば本発明の一局面によれば、粉砕工程1010は約25ミクロン未満のP80、好ましくは約13〜約20ミクロンのP80にまで微細に粉砕される物質110をもたらす。
【0025】
本発明の別の局面によれば、銅含有物質は約250ミクロン未満のP80、好ましくは約75〜約150ミクロンのP80、より好ましくは約5〜約75ミクロンのP80を有する。
【0026】
本発明のさらに別の局面によれば、約98パーセントが約25ミクロンを通過する粒径分布が好ましく、約98パーセントが約10〜約23ミクロン、最適には約13〜約15ミクロンを通過する粒径分布を金属含有物質流が有するのがより好ましい。
【0027】
記載の通り、粉砕工程1010は任意の方法で実施することができるが、満足できる制御下の微粉砕は、微粉砕装置、例えばバッフル付きの攪拌水平軸ミルまたはバッフル無しの垂直攪拌ミルを使用して達成することができる。かかる例示の装置には、Mount Isa Mines(MIN)(オーストラリア)およびNetzsch Feinmahltechnik(ドイツ)により共同開発されたIsamill、およびMetso
Minerals(フィンランド)により製造されたSMDまたはDetritorミルが含まれる。好ましくは、水平ミルを使用する場合、粉砕媒体は、Oglebay Norton Industrial Sands Inc.(米国コロラド州コロラドスプリング)より入手可能な1.2/2.4mmまたは2.4/4.8mmのコロラド砂である。しかし、所望の粒径分布を達成できるいかなる粉砕媒体も使用することができるが、その種類およびサイズは、選択した用途、所望の生成物のサイズ、粉砕器具の製造元の仕様などにより異なり得る。例示の媒体には、例えば砂、シリカ、金属ビーズ、セラミックビーズおよびセラミックボールが含まれる。
【0028】
微粉砕された金属含有物質は、反応処理段階1030(後述)に入る前に液体と組み合わせることができる。好ましくは、前記液体を使用する場合、前記液体には水が含まれるが、適切な液体、例えばラフィネート、浸出貴液または希薄電解質などであればいずれも使用することができる。例えば直接電解採取プロセス(例えば流動体119)による希薄電解質の一部分は、微粉砕された金属含有物質と組み合わせることで、金属含有物質流103を形成し、反応処理段階1030に送達することができる。このように酸を処理流に再循環させることで、反応処理段階1030の酸の要求を満足することに寄与する。
【0029】
このような金属含有物質と液体の組み合わせは、種々の技法および装置(例えばインラインブレンディングまたは混合槽もしくはその他の適切な容器の使用)のいずれか一つ以上を使用して達成することができる。本発明の実施形態の例示的局面によれば、物質流中の固体の金属含有物質の濃度(すなわち、スラリー密度)は、流動体の約50重量%、好ましくは流動体の約40重量%未満である。しかし、輸送およびその後の処理に適したその他のスラリー密度も使用することができる。
【0030】
本発明の一局面によれば、電解採取による希薄電解質の再循環流中の銅を酸から分離させ、さらに、金属回収プロセスに付される流動体の一部分中の夾雑物の量を低減することが望ましい。当該分離プロセスにおいて、再循環希薄電解質流から除去された酸は、処理回路から脱離し、それと共に金属夾雑物の少なくとも一部分およびその他の可溶性不純物が銅を含有する供給流および再循環希薄電解質流から取り出される。従来のまたは今後考案される分離プロセスおよび技法のいずれも、供給流中の酸からの銅分離を達成する上で有用であり得る。例えば沈殿、低温加圧浸出、酸溶媒抽出/イオン交換、膜分離、浸炭、加圧還元、硫化および/または遊離セルの使用などの分離プロセスおよび/または技法が、この目的に有用となり得る。
【0031】
本発明の好ましい実施形態の分離の局面は、浸出、pH制御またはその他の用途に使用可能な、銅の比較的小さな画分を含有する生成酸流をもたらすことに寄与する。さらに、本発明のこの局面による分離プロセスの利用は、未精錬の銅を含有する物質流の夾雑物をこの銅を含有する物質流から除去し、生成される酸流中に取り込ませることができるという点で特に好都合となり得る。生成される酸流は金属回収プロセスから完全に除去され、関連性が薄い作業で利用されるか、あるいは廃棄されるか、中和されることが好ましいので、その中に含有される夾雑物は同様に金属回収プロセスから除去され、これにより処理流中における蓄積が防止される。このような夾雑物、特に金属夾雑物は一般的に所望の金属回収プロセスの有効性および効率に有害な作用を及ぼすことから、これが大きな利点となり得る。例えば処理流中の金属夾雑物およびその他の不純物は、慎重に制御および/または抑制されないと、電解採取により生成されるカソード銅の物理的および/または化学的特性が劣化する原因となり得、これにより銅生成物の品質が低下し、その商品価値を低下させ得る。
【0032】
再度図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態の一局面によれば、銅を含有する物質流101は例えば沈殿工程のような分離に付されるが、この工程は、この例示のプロセスにおいて、可溶化された銅を再循環希薄電解質流から銅を含有する物質流中の固体粒子表面上に沈殿させる働きを有する。先に詳述した通り、この局面は、希薄電解質流からの銅回収を可能にする点で、重要な利点を備える。この銅は、その他のプロセスでは失われているか、または回収に追加の処理が必要なものであるため、この局面は、多大な経済的便益をもたらし得る。
【0033】
本発明のこの好ましい局面では、前記沈殿工程に、銅を含有する物質流を二酸化硫黄(SO)流109および希薄電解質流108と適切な処理容器内で組み合わせる工程が含まれる。例えば図1に示す実施形態では、希薄電解質流108は、電解採取作業で生成される再循環酸性硫酸銅流が含み得る。しかし、その他の流動体、好ましくは銅リッチ流動体も使用され得る。好ましくは、希薄電解質由来の銅が少なくとも部分的に、例えばCuSなどの硫化銅の形態で、流動体101内の未反応の銅含有物質粒子の表面上に沈殿するように、沈殿が行われる。
【0034】
本発明の好ましい局面によれば、銅分離段階1010は、僅かに上昇した温度、例えば約70℃〜約180℃、好ましくは約80℃〜約100℃、最も好ましくは約90℃の温度にて行われる。必要に応じて加熱は、いずれかの従来の手段、例えば電気加熱コイル、熱ブランケット、処理流体の熱交換、ならびに現在知られているまたは後に開発されるその他の方法により行うことができる。例示のプロセスにおいては、蒸気が別のプロセス領域にて生成され、そして銅分離段階1010にて処理容器に向けられ、沈殿プロセスを向上させるために望ましい熱を供給し得る。銅沈殿プロセスの滞留時間は、処理容器の使用温度や銅含有物質の組成などの要因により変動し得るが、一般的には約30分〜約6時間の範囲である。好ましくは、大量の銅が沈殿するような条件が選択される。例えば銅の約98%の沈殿という沈殿率は、約90℃にて約4時間維持された処理容器内にて達成されている。
【0035】
図1を参照すると、金属含有物質流103は、制御下の微粉砕、液体添加、および場合によりその他の物理的および/または化学的コンディショニングプロセスによって処理のために適切に調製された後、反応処理工程1030、例えば加圧浸出を介した金属抽出に付される。本発明の一実施形態によれば、反応処理工程1030は加圧浸出を包含する。好ましくは、反応処理工程1030が、約140℃〜約230℃の範囲の温度にて行う中温加圧浸出プロセスとなる。一実施形態によれば、加圧浸出は、好ましくは約140℃〜約180℃の範囲、一般的には約160℃より高温、より好ましくは約160℃〜約170℃の範囲にて行われる。別の実施形態によれば、加圧浸出は、180℃より高温、好ましくは約180℃〜約220℃の範囲、より好ましくは約190℃〜約210℃の範囲の温度にて行われる。
【0036】
本発明の種々の局面によれば、作業のために選択される最適な温度範囲は、銅およびその他の金属の抽出を最大限にし、硫黄元素(S)の生成を最適にし、新しい酸の消費を最小限にし、これによって補給酸の必要量を最小限にするような傾向を有する。酸および硫黄は、以下の反応に従って硫化物の酸化により形成される。
【0037】
4CuFeS+17O+4HO → 2Fe+4Cu2++8H+8SO2− (1)
4CuFeS+8H+5O → 2Fe+4Cu2++8S+4HO (2)
好ましくは、本発明によれば、加圧浸出工程の条件(温度、酸濃度)は、反応(1)と(2)の間の好都合な均衡を達成するように適切に選択されるが、銅の抽出を著しく犠牲にしない範囲で、新たな補給酸の消費、すなわち酸補給に伴う費用を低減または不要にする傾向を有する。
【0038】
加圧浸出容器に投入される酸の量は、種々の反応パラメータ、特に反応温度、鉄の溶解、銅の抽出および硫化物の酸化により変動する。補給酸は、新しい酸の形態で加圧浸出容器内に投入されても、同じ回収プロセスもしくは別のプロセスによる再循環された酸の形態で加圧浸出容器内に投入されてもよい。特定の場合、補給酸は濃縮物1トン当たり約300〜約650キログラム以下で投入されるが;より高温になるほど必要となる補給酸が少なくなる。
【0039】
本発明者らは、本発明の金属回収プロセスの動作パラメータを最適化することにより、いかなる経済的、加工性または製造上の目的も達成できることを発見した。一般的には、例えば酸再循環率が一定の場合、加圧浸出段階の温度が上昇するにつれて、酸素の消費量が多くなるとともに、酸の生成量が多くなり、元素態硫黄の生成量が少なくなる。鉄の溶解は、流動体119から再循環される酸を低減することにより、より高温にて制御し得る。さらに、その他全てのパラメータを一定に維持すれば、加圧浸出段階の温度が上昇するにつれて、銅の回収量が最大となり得る。すなわち、温度が上昇し、酸再循環率が一定の場合は、加圧浸出の間に生成される酸(すなわち、消費されなければならない過剰な酸)の量が多くなり、消費される酸素の量が多くなり得るが、より高い銅の回収が可能になり得る。低温(例えば140〜150℃)においては、加圧浸出作業にはより多くの再循環酸が必要となり得、銅の回収率が低下し得るが、必要となる酸素の量は減少し、過剰な酸を消費する費用が低減される。しかし、約150℃〜約170℃の温度範囲では、酸の自生プロセスが可能となり得る。すなわち、加圧浸出作業が必要な酸を概ね生成する場合がある。かかる場合は、許容される銅の回収率および中程度の酸素消費量を達成しつつ、補給酸の費用および酸の減衰を低減または不要にすることが可能となり得る。しかし、本発明の他の実施形態によれば、より高い温度が利用され得る。例えば、約200℃〜約210℃の温度が、銅の回収率を増大させる傾向を有し得る。
【0040】
但し、前述の局面のいずれも特定の状況下では望ましくあり得ることに留意のこと。すなわち、加圧浸出作業をより低温で行う方が経済的に最も望ましいのか(例えば、酸減衰の費用が酸購入の費用よりも高い場合、酸素の価格が高い場合、電力費用が高い場合、および/または銅の価格が安い場合)、あるいはより高温で行う方が経済的に最も望ましいのか(例えば、酸減衰の費用が酸購入の費用よりも安い場合、酸が他の場所で有利に使用できる場合、酸素の価格が安い場合、電力費用が安い場合、および/または銅の価格が安い場合)については、外的な要因、例えば電力および原材料の費用または銅および/またはその他の回収可能な金属バリューの市場価格などによって決定される場合がある。
【0041】
中温条件下(すなわち、約140℃〜約180℃)では、溶液中の鉄(III)イオンが以下の反応により加圧浸出容器内で加水分解して、赤鉄鉱および硫酸を形成する。
【0042】
Fe(SO(aq)+3HO(l) → Fe(s)+3HO(aq)
加圧浸出容器内の鉄濃度が上昇するにつれて、リッチ電解質流(すなわち、加圧浸出廃棄液)中の鉄濃度も上昇する。加圧浸出廃棄物中のイオンの増加は、一般的にその後の電解採取作業において電流効率の望ましくない低下をもたらす。電解採取における電圧効率の低下は、電解採取により回収される銅の単位当たりの運転費用を増大させる。
【0043】
加圧浸出工程への酸の総添加量(溶液中の遊離酸+溶液の鉄等価酸含有量)は、好ましくは、(残渣中の銅により示される)銅の抽出、ならびに直接電解採取のためのリッチ電解質中の鉄が最適になるように制御される。一般的に、残渣銅含有量は加圧浸出工程への酸の総添加量が増大するにつれて減少するが、溶液中の鉄の量は酸の総添加量が増大するにつれて増大する傾向を有する。
【0044】
本発明の例示的実施形態によれば、銅含有物質からの銅回収プロセスは、それより高くなっても残渣銅含有量に対する利益がそれより大きくはほとんどまたは全く見込まれないような、最も高値に加圧浸出容器への酸の総添加量がなるように行う。本発明の一実施形態によれば、加圧浸出容器への酸の総添加量は約400〜約500kg/トンの範囲である。
【0045】
再度図1を参照すると、反応処理工程1030は、必要な加圧浸出滞留時間に所望される温度および圧力条件にて加圧浸出混合物を含有するために適切に設計されたいずれかの加圧浸出容器にて行われ得る。本発明の例示的実施形態の一局面によれば、処理工程1030で使用される加圧浸出容器は、攪拌式のマルチコンパートメントタイプの水平加圧浸出容器である。しかし、銅回収のために金属含有物質流103を適切に調製することができるいかなる加圧浸出容器も本発明の範囲内で利用できることが分かるはずである。
【0046】
反応処理工程1030では、銅および/またはその他の金属バリューを、後の回収プロセスのための準備において可溶化するか、またはその他の方法で遊離させ得る。金属バリューを可溶化する、すなわち遊離させ、それによって金属含有物質から金属バリューを放出させる上で役立ついずれの物質も使用することができる。例えば回収される金属が銅である場合は、銅が後の回収工程のために遊離され得るように、硫酸などの酸を銅含有物質に接触させ得る。しかし、後の金属回収工程のための準備において金属バリューを遊離させるいかなる適切な方法も本発明の範囲内で利用できることが分かるはずである。
【0047】
銅の可溶化に役立ち得るいずれの薬剤、例えば硫酸も、反応処理工程1030、例えば中温加圧浸出の間に種々の方法で提供される場合がある。例えば当該酸は、電解採取段階1070からの希薄電解質119の再循環により提供される冷却流中で提供され得る。しかし、銅の可溶化をもたらすいずれの方法も本発明の範囲内に含まれることが分かるはずである。加圧浸出の間に添加される酸の量は、好ましくは銅の抽出を最適化するため、ならびに希望に応じて実質的に酸が自生するプロセスを達成するために必要な酸に応じて、調整される。
【0048】
本発明の種々の局面によれば、銅の実質的に完全な可溶化を促進するために適切に設計された方法で加圧浸出プロセスが行われ、加圧浸出プロセスを増強するために追加の物質を投入することが望ましくあり得る。本発明の一局面によれば、加圧浸出容器における加圧浸出の間に、十分な酸素105を容器に注入することにより、酸素分圧を約50〜約250psig、好ましくは約75〜約220psig、最も好ましくは約150〜約200psigに維持する。さらに、中温加圧浸出の性質に起因して、加圧浸出容器の総動作圧力(酸素分圧を含む)は、一般的に大気圧より高圧、好ましくは約100〜約750psig、より好ましくは約250〜400psig、最も好ましくは約270〜約350psigである。
【0049】
加圧浸出の滞留時間は、例えば銅含有物質の特性ならびに加圧浸出容器の動作圧力および温度などの要因に応じて変動し得る。本発明の例示的実施形態の一局面によれば、黄銅鉱の中温加圧浸出の滞留時間は、約30〜約180分、より好ましくは約60〜約150分、最も好ましくは約80〜約120分の範囲である。
【0050】
加圧浸出プロセスの制御、例えば加圧浸出容器の温度の制御は、従来のまたは今後考案されるいずれかの方法により達成することができる。例えば温度制御に関しては、好ましくは加圧浸出容器にフィードバック温度制御特性が含まれる。例えば、本発明の一局面によれば、加圧浸出容器の温度は、約140℃〜約180℃、より好ましくは約150℃〜約175℃の範囲の温度に維持される。本発明の別の局面によれば、温度は、約180℃より高温、より好ましくは約180℃〜約220℃の範囲で適切に選択され得る。従って、広範な温度が本発明の種々の局面に関連して有用となり得る。
【0051】
金属硫化物の加圧浸出の発熱性により、中温加圧浸出によって生成される熱は、一般的に所望の動作温度にまで供給流を加熱する上で必要な量よりも多くなっている。すなわち、好ましい加圧浸出温度を維持するためには、加圧浸出の間に冷却液106を加圧浸出容器に投入し得る。本発明の実施形態の一局面によれば、冷却液106は、好ましくは加圧浸出の間に加圧浸出容器内の供給流に接触させられる。冷却液106は補給水を含み得るが、プロセス内または外部の供給源からの任意の適切な冷却液、例えば生成物スラリーに由来する再循環水、希薄電解質、または冷却液混合物であり得る。冷却液106は供給スラリーと同じ注入口より、あるいは供給スラリーの冷却を行ういずれかの方法で、加圧浸出容器に投入することができる。加圧浸出の間に供給スラリーに添加される冷却液106の量は、液の銅および酸の濃度、供給スラリー中の硫化無機物の量、および供給スラリーのパルプ密度、ならびに加圧浸出プロセスのその他のパラメータに応じて変動し得る。本発明の前記実施形態の例示的局面では、十分な量の冷却液を加圧浸出容器に添加することにより、生成物流108中の固体含有量を約50重量%固体未満、より好ましくは約3〜約35重量%固体の範囲、最も好ましくは約6〜約15重量%固体の範囲にする。本発明の一実施形態によれば、冷却液は、廃棄物スラリー中の酸、鉄および銅の濃度を効果的に制御する希薄電解質として添加される。
【0052】
本発明の例示的局面によれば、流動体103の加圧浸出が分散剤126の存在下で実施される。本発明のこの局面により有用である適切な分散剤としては、例えばリグニン誘導体(例えばリグノスルホン酸カルシウムおよびリグノスルホン酸ナトリウム)、タンニン化合物(例えばケブラチョ)、オルトフェニレンジアミン(OPD)、アルキルスルホネート(例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)および上記の組み合わせなどの有機化合物が挙げられる。分散剤126は、中温加圧浸出プロセスの間に生成される元素態硫黄を分散されるために充分な期間にわたって中温加圧浸出(すなわち、約140℃〜約180℃)の温度範囲における分解に耐性を示し、かつ銅抽出を低下させる銅バリューの不動態化を元素態硫黄が起こさないように防止する所望の結果を達成する、いずれかの化合物であり得る。分散剤126は、所望の結果を達成できるだけの十分な量および/または濃度で、加圧浸出容器に投入することができる。本発明の例示的実施形態の一局面では、黄銅鉱の加圧浸出の間に、黄銅鉱濃縮物1トン当たり約2〜約20キログラム、より好ましくは1トン当たり約4〜約12キログラム、より好ましくは1トン当たり約6〜約10キログラムの量のリグノスルホン酸カルシウムを使用して、好都合な結果を達成することが可能となる。
【0053】
本発明の別の例示的実施形態によれば、シーディング剤を反応処理工程1030に投入することができる。適切なシーディング剤は、固体物質種の結晶化および/または成長のための核形成部位を形成することができるいずれかの物質を含むことができる。従って、シーディング剤は、粒子の蓄積および/または沈殿の部位として機能するいずれかの粒子であり得、金属回収プロセスのその他の段階による再循環物質を起源としても、金属回収プロセスとは無関係の物質の添加により提供されてもよい。場合により、シーディング剤は、放置すれば所望の金属バリューを部分的または完全に封入して、所望の金属バリュー(例えば銅および金)が一般的に得られなくしたり、浸出溶液と接触しにくくしたりする傾向がある望ましくない物質(例えば銅回収の好ましい場合、赤鉄鉱、脈石など)の結晶化、沈殿および/または成長を促進するいずれかの物質を含む。
【0054】
前記例示的実施形態の局面により有用となる適切なシーディング剤の一つの供給源は、加圧浸出容器の廃棄物中に見出され得る物質であり、当該物質はシーディングのために再循環させることができる。再循環される加圧浸出容器廃棄物の使用が経済的な理由から望ましくあり得、そして加圧浸出プロセスのスラリー中の望ましくない粒子と同様または同一であるシーディング剤の使用が、望ましくない物質の蓄積を促進する傾向を有し得る。例えば赤鉄鉱などの望ましくない物質が金属含有物質中に存在するか、または副生成物として生成されるような金属回収プロセスにおいては、先行する加圧浸出プロセスから再循環された赤鉄鉱を含有する残渣の投入がおそらく、新しく形成されるまたは遊離される赤鉄鉱に好適な核形成部位を与える傾向を有する。この核形成部位の非存在下では、非反応性粒子が金属バリューの表面に沈殿することにより、可溶化することが望ましい金属バリューを封鎖し、金属バリューを回収不能とする場合がある。従って、シーディング剤を投入して当該封鎖を防止することがより良好な金属回収を行う上で役立つ場合がある。図1に示す例示的実施形態によれば、固液分離工程1040による固体残渣流110の一部分が、反応処理工程1030に適切なシーディング物質をもたらす。
【0055】
金属含有物質流103が反応処理工程1030に付された後、この反応過程により利用可能にされた銅および/またはその他の金属バリューは、種々の金属回収プロセスの一つ以上を受ける。図1を参照すると、金属回収プロセス1070(以下で考察)は、銅および/またはその他の金属バリューを回収するプロセスであり、そして任意の数の調製工程またはコンディショニング工程を含み得る。例えば銅含有溶液は、一つ以上の化学処理工程および/または物理処理工程によって金属回収のために準備され、コンディショニングされ得る。反応処理工程1030による生成物流は、組成、成分濃度、固体含有量、容量、温度、圧力ならびに/あるいはその他の物理的パラメータおよび/または化学的パラメータを所望の値に調整し、これにより適切な銅含有溶液を形成するためにコンディショニングされ得る。一般的に、適切にコンディショニングされた銅含有溶液は、例えば酸性硫酸塩溶液中に比較的高濃度の可溶性銅を含有し、好ましくは不純物をほとんど含有しない。しかし、本発明の例示的実施形態の一局面によれば、コンディショニングされた銅含有溶液中の不純物は、最終的には別個の溶媒/溶液抽出段階を使用することで低減することができ、図2に示す実施形態との関連において考察される。さらに、銅含有溶液の条件は、好ましくは最終的に回収される銅生成物の品質および均一性を増強させるために実質的に一定に維持される。
【0056】
本発明の例示的実施形態の一局面では、電解採取回路において銅回収のために行う金属含有溶液のコンディショニングは、反応処理工程による生成物スラリーの特定の物理的パラメータを調整することにより開始される。本発明の前記実施形態の例示的局面では、およそ周囲条件にまで生成物スラリーの温度および圧力を低下させることが望ましくあり得る。中温加圧浸出段階による金属含有生成物スラリーの温度および圧力の特性をこのように調整する例示の方法とは、常圧フラッシング(例えば図1に示す常圧フラッシング段階1035)である。さらに、フラッシングされたガス、固体、溶液および蒸気は、場合により、例えばベンチュリスクラバーを使用することで適切に処理することができ、この場合、水は回収され得、有害物質は環境に流入することを防止される。
【0057】
前記の好ましい実施形態の別の局面によれば、生成物スラリーが例えばフラッシュ槽を使用して常圧フラッシングに付され、圧力および温度の周囲条件を概ね達成した後、生成物スラリーは後の金属バリュー回収工程のための調製においてさらにコンディショニングされ得る。例えば一つ以上の固液相分離段階(例えば図1に示す固液分離段階1040)を使用することで、固体粒子から可溶化金属溶液を分離することができる。これは、いずれかの従来の方法により、例えば濾過システム、向流デカンテーション(CCD)回路、沈降濃縮機などを使用して達成され得る。図1に示す通り、本発明の一実施形態によれば、金属回収のために行う生成物スラリーのコンディショニングは、固液分離工程1040および任意の電解質処理工程1050を包含し、これによってさらに、例えば濾過により生成液111をコンディショニングすることで、微細な固体粒子ならびにコロイド状物質、例えばシリカおよび/またはシリカ含有物質を除去することができる。種々の要因、例えばプロセスの物質収支、環境規制、残渣の組成、経済的観点などが、CCD回路を使用するかどうか、一つの沈降濃縮機を使用するのか複数の沈降濃縮機を使用するのか、一つのフィルターを使用するのか複数のフィルターを使用するのか、および/またはその他いずれかの適切な装置または装置の組み合わせを、固液分離装置内で使用するかどうか決定するに当たって影響を及ぼし得る。しかし、後の金属バリュー回収のために生成物スラリーをコンディショニングするいかなる技法も本発明の範囲内にあることが分かるはずである。
【0058】
後に詳述する通り、分離した固体は、さらに後の処理工程、例えば、シアン化またはその他の技法による貴金属またはその他の金属バリューの回収、例えば金、銀、白金族の金属、モリブデン、亜鉛、ニッケル、コバルト、ウラン、レニウム、希土類などの回収に付され得る。後の処理工程にはまた、分離された固体からのその他の鉱物成分を除去または回収する処理プロセスが含まれ得る。あるいは、分離された固体が埋没または廃棄に付されるも場合もあれば、前述の通り、分離された固体の一部分がシーディング剤として反応処理段階に投入される場合もある。
【0059】
すなわち、図1に示す実施形態の例示的局面によれば、反応処理工程1030による生成物スラリー107は、一つ以上の常圧フラッシュ槽またはその他いずれかの適切な常圧システムにて常圧フラッシング1035に付されることで、圧力を解放し、蒸気の放出により生成物スラリー107を蒸発冷却し、フラッシュされた生成物スラリー108を形成する。フラッシュされた生成物スラリーは、好ましくは約90℃〜約101℃の範囲の温度、約40〜約120グラム/リットルの銅濃度、および約16〜約50グラム/リットルの酸濃度を有する。本発明の例示的実施形態の局面によれば、フラッシュされた生成物スラリー108の一部分(図1の流動体123)は加圧浸出段階1030に再循環される。
【0060】
フラッシュされた生成物スラリー108はまた、例えば、加圧浸出の酸化鉄副生成物、元素態硫黄およびその他の副生成物、貴金属、ならびに電解採取回路への供給流にとって望ましくないその他の成分を含有する粒状の固体残渣を含有し得る。すなわち、前述の同じ原理によれば、フラッシュされた生成物スラリーを固液分離プロセスに付して、スラリーの液体部分、すなわち所望の銅を含有する溶液を、スラリーの固体部分、すなわち望ましくない残渣から分離することが望ましくあり得る。
【0061】
図1をなお参照すると、本発明の説明した実施形態では、フラッシュされた生成物スラリー108が固液分離段階1040、例えばCCD回路に向けられる。本発明の別の実施形態では、固液分離段階1040が、例えば沈降濃縮機または一つ以上のフィルターを備え得る。本発明の例示的実施形態の一局面では、CCD回路が洗浄水109による残渣流の従来の向流洗浄を使用して、浸出された銅を、銅を含有する溶液生成物中に回収し、貴金属の回収プロセスまたは残渣の廃棄のいずれかに投入される可溶性銅の量を最小限にしている。好ましくは、大きな洗浄比および/または数回のCCD段階を使用することで、固液分離段階1040の有効性を向上させる。すなわち、比較的大量の洗浄水109をCCD回路内の残渣に添加し、および/または数回のCCD段階を使用する。好ましくは、残渣スラリー流の溶液部分をCCD回路中の洗浄水109で希釈して、残渣流110の溶液部分中の銅濃度を約5〜約200ppmにする。本発明の例示的実施形態の別の局面によれば、固液分離段階1040への化学試薬の添加は、処理流から有害な成分を除去する上で望ましくあり得る。例えばポリエチレンオキシドを添加することで、沈殿によりシリカの除去を行っても、その他の凝集剤および/または凝固剤を利用して他の望ましくない物質種を処理流から除去してもよい。かかる適切な化学試薬の一つは、Dow Chemicalから入手可能なPOLYOXTM WSR−301である。
【0062】
組成に応じて、固液分離段階1040による残渣流110は、中和、埋没、廃棄または別の処理、例えば貴金属回収、その他の金属バリュー回収の処理、問題の金属を減衰または軽減する処理、またはその他の鉱物成分を流動体から回収もしくは除去するその他の処理に付され得る。例えば、残渣流110が経済的に有意な量の金、銀および/またはその他の貴金属を含有する場合は、この金画分をシアン化プロセスまたはその他の適切な回収プロセスにより回収することが望ましくあり得る。金またはその他の貴金属がシアン化技法により残渣流110から回収される場合は、流動体中の夾雑物、例えば元素態硫黄、非晶質鉄沈殿物、未反応銅鉱物および溶存銅の含有量は、好ましくは最小限にされる。当該物質はシアン化プロセスにおいて大量の試薬の消費を誘発するため、貴金属回収作業の費用の増大を招き得る。従って前述の通り、後の貴金属回収の条件を最適に維持するには、固液分離プロセスにおいて大量の洗浄水またはその他の希釈剤もしくは数段階の工程を使用することにより、固体含有残渣流中の銅および酸の濃度を低く維持することが好ましい。
【0063】
場合によっては、本発明の一つの例示的実施形態として図1に示す通り、一つ以上の追加の電解質処理段階1050を使用することで、例えば濾過、濃厚化、向流デカンテーションなどを介して、固液分離段階1040による処理流111をさらにコンディショニングおよび/または精錬することができる。さらに、処理流111の一部分(図1における流動体122)は、直接、または希薄電解質再循環流119(図示)および/または加圧浸出作業に流入するその他の適切な処理流を組み合わせて、加圧浸出段階1030に再循環させることができる。例示的実施形態によれば、電解質処理段階1050による残渣流114は更なる処理1080に付され、ここで、残渣流114の条件に応じて、流動体の全てまたは一部分が中和、埋没、廃棄または前述の別の処理に付され得る。次に電解質処理段階1050による銅を含有する溶液流113が好ましくは銅回収に付されるが;銅を含有する溶液流113の一部分(図1の流動体120)を加圧浸出段階1030に再循環させ得る。
【0064】
再度図1を参照すると、本発明の実施形態の一局面によれば、電解質処理段階1050による銅を含有する溶液流113は、電解質再循環槽1060に送られる。電解質再循環槽1060は、以下で詳述する通り、電解採取回路1070のためのプロセス制御を適切に容易にする。銅を含有する溶液流113は、好ましくは生成物流115を得るために適した比率で電解質再循環槽1060にて希薄電解質流121と混合され、その条件は電解採取回路1070の得られる生成物を最適化するように選択され得る。
【0065】
引き続き図1を参照すると、生成物流115からの銅は適切に電解採取されて、純粋なカソード銅生成物(流動体116)を生成する。本発明の種々の局面によれば、銅を含有する溶液の適切なコンディショニングにより、電解採取回路に流入する前に、銅を含有する溶液を溶媒/溶液抽出プロセスに付すことなく、高品質かつ均質に鍍金されたカソード銅生成物116が実現できるようなプロセスが提供される。
【0066】
当業者の知る通り、種々の方法および装置が銅およびその他の金属バリューの電解採取のために使用可能であり、そのいずれも本発明に従って使用する上で適切であり得るが、但し、選択される方法または装置に必要不可欠なプロセスパラメータが満足されなければならない。便宜上、および本発明の理解を深めるため、本発明の種々の実施形態との関連において有用な電解採取回路は、従来の様式で行うように構築および構成された電解採取回路を備え得る。電解採取回路には、槽の長軸に直行するように配列された鉛合金のフラットアノードと交互になった銅の懸垂平行フラットカソードを含有する細長い長方形の槽として構築された電解採取セルが含まれ得る。平行するアノードとカソードの平面に対して垂直に(全体的流動パターンを指す)流れるように銅含有浸出溶液が槽内の例えば一端に供給され得、電流を印加することで銅がカソードに付着して、水が電気分解され、アノードに酸素とプロトンが形成され得る。その他の電解質分布および流動プロファイルが使用され得る。
【0067】
酸溶液からの銅の電解採取についての主要な電気化学的反応は、以下の通りと考えられる:
2CuSO+2HO → 2Cu+2HSO+O
カソード半反応:Cu2++2e → Cu
アノード半反応:2HO → 4H+O+4e
再度図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態では、生成物流115が電解質再循環槽1060から一つ以上の従来の電解採取セルを備える電解採取回路1070に向けられる。しかし、前述の反応またはその他に従った、酸溶液からの銅の電解採取に適した、現在知られているまたは後に考案されるいかなる方法および/または装置も本発明の範囲内に含まれることが理解されるはずである。
【0068】
本発明の好ましい局面によれば、電解採取回路1070は、カソード銅生成物116、場合によりオフガス流(図示なし)、ならびに比較的大容量の、銅を含有する酸溶液(すなわち本明細書で希薄電解質流117と呼ばれる)を生成する。前述の通り、本発明の説明した実施形態では、希薄電解質流117の一部分(図1における希薄電解質再循環流119)が、好ましくは加圧浸出段階1030および/または電解質再循環槽1060に再循環される。場合により、電解質処理段階1050による銅含有溶液流113の一部分(図1における流動体120)は、希薄電解質再循環流119と組み合わさって、加圧浸出段階1030に再循環させられる。さらに、本発明の例示的実施形態の一局面によれば、希薄電解質流117の一部分(図1における希薄電解質抽出流118)は、例えば図2に示すもののような不純物および酸の除去ならびに/または残留銅の回収作業のため、プロセス100から除去される。
【0069】
好ましくは、希薄電解質再循環流119は、希薄電解質流117の少なくとも約50重量パーセント、より好ましくは希薄電解質流117の約60〜約95重量パーセント、さらに好ましくは希薄電解質流117の約80〜約90重量パーセントを構成する。好ましくは、希薄電解質抽出流118は、希薄電解質流117の約50重量パーセント未満、より好ましくは希薄電解質流117の約5〜約40重量パーセント、さらに好ましくは希薄電解質流117の約10〜約20重量パーセントを構成する。
【0070】
金属含有生成物流115の銅バリューは、電解採取工程1070の間に除去され、純粋なカソード銅生成物を生成する。本発明の種々の局面によれば、金属含有溶液の適切なコンディショニングにより、電解採取回路に流入する前に銅含有溶液を溶媒/溶液抽出に付すことなく、高品質かつ均一に鍍金されたカソード銅生成物が実現できるようなプロセスが本発明の範囲内に含まれることが分かるはずである。前述の通り、電解採取回路に流入する金属含有溶液の条件の慎重な制御、特に流動体の実質的に一定な銅組成の維持は、とりわけカソード上の銅の均一な鍍金および銅生成物を劣化させその経済的価値を減少させ得るカソード銅内の表面細孔の回避を可能にすることにより、電解採取された銅品質を向上させ得る。本発明のこの局面によれば、当該プロセス制御は、選択したシステムおよび/または方法が電解採取回路への十分一定した供給流を維持する限りにおいて、種々の技法および機器構成のいずれかを使用して達成され得る。当業者の知る通り、種々の方法および装置が銅およびその他の金属バリューの電解採取のために使用可能であり、そのいずれも本発明に従って使用する上で適切であり得るが、但し、選択される方法または装置に必要不可欠なプロセスパラメータが満足されなければならない。
【0071】
図2に示す本発明の例示的実施形態によれば、電解採取ユニット1070(図1)からの希薄電解質抽出流118は、溶媒/溶液抽出段階2010に送られる。本発明の一実施形態によれば、溶媒/溶液抽出段階2010は、常圧および/または加圧浸出作業2020による物質ならびに希薄電解質抽出流118を処理するために構成される。浸出作業2020は、従来のまたは今後開発される常圧または加圧浸出方法のいずれか、例えば野積み浸出、備蓄浸出(時々、当該分野において「ダンプ浸出」とも称される)、バット浸出、槽浸出、攪拌槽浸出、インサイチュでの浸出、加圧浸出またはその他のプロセスを使用し得る。本発明の好ましい実施形態の一局面によれば、浸出作業2020は従来の酸消費野積み浸出作業であり、この場合、低等級の鉱石201は、酸含有流202、および場合によりその他の処理流、例えば溶媒/溶液抽出ユニット2010由来のラフィネート流205と接触させられる。浸出作業2020において、酸は鉱石野積みを介して下方にパーコレーションされ、銅を含有する鉱石中の銅を硫酸銅の形態で可溶化し、銅リッチ浸出貴液(PLS)流203を形成する。本発明の好ましい実施形態の一局面によれば、野積み浸出作業2020によるPLS203は、処理流204として溶媒/溶液抽出段階2010に流入する前に希薄電解質抽出流118と混合される。
【0072】
本発明の前記実施形態のさらなる局面によれば、前述において概説した通り、希薄電解質抽出流118は、プロセス、例えば電解採取プロセスから不純物を好都合に除去し得る。当該不純物としては、例えば鉄、アルミニウム、シリカ、セレン、マグネシウム、マンガン、ナトリウム、カリウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。除去しないと、当該不純物は有害な水準にまで蓄積し、それにより生産効率および生成物(例えば銅カソード)の品質に悪影響を及ぼし得る。希薄電解質抽出流118中に当該不純物が存在しても、一般的には希薄電解質抽出流118の上記の取扱いに悪影響を及ぼすことはない。
【0073】
以下で詳述する通り、本発明のさらなる実施形態では、沈殿またはその他の工程などの適切ないずれかの手段による加圧浸出の前に、不純物を除去することもできる。
【0074】
さらに図2を参照すると、溶媒/溶液抽出段階2010および溶液剥離段階2015では、多段階を包含し得る抽出作業とそれに続く剥離作業という二つのユニットからなる作業にて銅含有処理流204が精製される。抽出段階では、銅選択試薬(すなわち、抽出剤)が添加混合されている希釈剤からなる有機相と処理流204を接触させる。溶液を接触させると、有機抽出剤は流動体204から銅を化学的に除去し、銅の欠乏した水性のラフィネート流が形成される。ラフィネートおよび有機流はその後沈降槽内で分離される。沈降槽中における有機相および水相の分離の後、水相の一部(流動体205)は、一般的に常圧浸出中の鉱石に由来する銅が再投入される一つ以上の浸出作業に戻されてPLSを形成するか、あるいはその他のプロセス領域に再循環され得るか、または適切に廃棄され得る。有機流は、溶媒/溶液抽出プロセスの二つ目のユニットの作業、すなわち剥離作業に送られる。剥離作業では、有機流を強酸性の電解質と接触させる。この酸性溶液が抽出剤から銅を「剥離」し、銅がほとんど欠乏した有機相だけが残る。投入した剥離溶液の水相の少なくとも一部分(流動体206)は、銅「リッチ」溶液として電解採取プラント2030に流入する。水性流206は電解採取プラント2030にて処理され、カソード銅207および銅を含有する希薄電解質流208をもたらし、これは、本発明の好ましい実施形態の一局面では、溶媒/溶液抽出ユニット2010および/または加圧浸出段階1030(図1への流動体209)および/またはその他のプロセス領域に部分的に再循環され得る。
【0075】
本発明の一つの代替の局面によれば、水性流206は溶媒/溶液抽出ユニットを離れた直後に電解採取に付されないかもしれず、その他の銅を含有する処理流と混合された後、生成された流動体が電解採取回路に送られ得る。例えば、水性流206の全部または一部分を、銅を含有する溶液流(図示なし)および電解質再循環槽1060(図1)中の希薄電解質流(図示なし)と混合して、電解採取回路における電解採取に適した生成物流を形成し得る。かかる場合、溶媒/溶液抽出2010にて使用される剥離溶液は、おそらく、電解採取回路1070(図1から)由来の使用済み電解質からなる。
【0076】
不純物の除去は、前述の分離および/または沈殿工程など、加圧浸出の前に行う適切な処理によりさらに促進され得る。前記した通り本発明の前記のさらなる局面によれば、不純物はプロセス、例えば電解採取プロセスから好都合に除去され得る。当該不純物としては、硫酸塩として存在する場合が多い鉄、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。除去しないと、当該不純物は有害な水準にまで蓄積し、それにより生産効率および生成物(例えば銅カソード)の品質に悪影響を及ぼし得る。
【0077】
以下に示す実施例は、本発明の好ましい実施形態の種々の局面を説明するものである。これに反映されるプロセスの条件およびパラメータは、本発明の種々の局面を例示することを意図しており、請求された本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
銅を、本発明の例示的実施形態に従って、連続中温加圧浸出および直接電解採取により黄銅鉱含有濃縮物から回収した。以下の表1には、使用したプロセス条件および動作パラメータを示す。
【0079】
【表1】

【0080】
従来の処理技法よりも低費用で高い銅回収率を可能にする金属含有物質からの銅の回収、特に黄銅鉱などの硫化銅からの銅の回収のための有効かつ効率的な方法を本明細書に提示した。本発明によれば、中温加圧浸出の種々の重要な経済的利益を実現し、中温加圧浸出に歴史的に付随していた処理上の問題を克服すると同時に、約96〜約98パーセントを超える銅回収率が達成可能であることが示されている。さらに、本発明は、常圧浸出、溶媒/溶液抽出および電解採取の工程と組み合わせて加圧浸出および直接電解採取を使用して、黄銅鉱を含有する鉱石から銅を回収する、実質的に酸が自生するプロセスを提供する。
【0081】
本発明は、幾つかの例示的実施形態および実施例を参照しながら、前述の通り説明した。本明細書に示し説明した具体的な実施形態は、本発明およびその最良の様式を明示したものであり、本発明の範囲を制限することは全く意図していないことが分かるはずである。また、本明細書の開示内容を理解した当業者が認識する通り、前記の例示的実施形態には、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更および修正がなされ得る。さらに、本発明の特定の好ましい局面は例示的実施形態の観点から本明細書に記載されているが、本発明の当該局面は、現在知られているかまたは今後考案される多数の適切な手段によって達成され得る。従って、これらおよびその他の変更または修正は本発明の範囲に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−117087(P2011−117087A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−63407(P2011−63407)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【分割の表示】特願2007−538881(P2007−538881)の分割
【原出願日】平成16年12月18日(2004.12.18)
【出願人】(503036221)フェルプス ドッジ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】