説明

加工搬送装置

【課題】可動アームの移動範囲を広くし、可動アームの動作の自由度を高めることによって、ワークの加工条件の制約を緩和することができる加工搬送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】加工搬送装置1は、可動アーム2の関節の回転軸5,6,7に対して垂直な回転軸14を中心として可動アーム2を回動させるべく可動アーム2の基端とベースプレート16との間に設けた第1の回動手段15と、該回動手段15の回転軸14と関節の回転軸5,6,7の双方に対して垂直な回転軸19を中心として可動アーム2を回動させるべく可動アーム2の基端側アーム片11に設けた第2の回動手段20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ワークの加工や搬送に用いる装置に関し、詳しくは、多間接式可動アームの先端にワークに対する加工又は保持手段を備えた加工搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置としては、例えば特許文献1,2に示すものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のものは、基台等に可動アームの基端を水平な回転軸回りに回動自在に支持するとともに、可動アームに垂直な回転軸回りに回動自在な関節を複数個設け、可動アームの先端に加工手段を設けてある。
【0004】
特許文献2に記載のものは、基台等に可動アームの基端を垂直な回転軸回りに回動自在に支持するとともに、可動アームに水平な回転軸回りに回動自在な関節を複数個設け、さらに、可動アームの先端に加工手段を垂直な回転軸回りに回動自在に取り付けてある。
【特許文献1】特開平5−23992号公報(図2)
【特許文献2】特開平2−24076号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれの従来例でも、可動アームの基台等に対する連結部が1軸方向にしか回動することができないため、可動アームの移動範囲が狭く、可動アームの動作の自由度も高くなく、ワークの大きさや形状等によっては加工が困難になる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、可動アームの移動範囲を広くし、可動アームの動作の自由度を高めることによって、ワークの加工条件の制約を緩和することができる加工搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、同一方向を向いた回転軸を中心として回動する間接を複数個有する可動アームと、該可動アームの先端に設けた加工又は保持手段とを備えた加工搬送装置において、上記間接の回転軸に対し平面的に見て交差する回転軸を中心として上記可動アームを回動させるべく上記可動アームの基端と被装着部との間に設けた第1の回動手段と、該回動手段の回転軸と上記関節の回転軸の双方に対して垂直な回転軸を中心として上記可動アームを回動させるべく上記可動アームの基端側アーム片に設けた第2の回動手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、可動アームの基端と被装着部との間に第1の回動手段が介装されるとともに、可動アームの基端側アーム片に第2の回動手段が設けられるので、可動アームの被装着部に対する連結部が2軸方向に回動可能になる。つまり、可動アーム全体が被装着部に対して2軸方向に回動可能になるため、可動アームの移動範囲が広くなるとともに、可動アームの動作の自由度が高くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可動アームの基端側アーム片に、その両端の回転軸に対して互いに垂直な回転軸が追加されて、可動アームの被装着部に対する連結部が2軸方向に回動可能になるので、可動アームの移動範囲が広くなるとともに、可動アームの動作の自由度が高くなる。
【0010】
このため、加工すべきワークの種類によって、加工位置が変化しても、第1及び第2の回動手段と可動アームの各関節とを適宜回動させることによって、可動アーム先端の加工手段をワークの加工位置にスムーズに移動させることができ、ワークの加工条件の制約を大幅に緩和することができる。
【0011】
可動アーム2がその各関節と第1及び第2の回動手段とによって3軸方向に回動可能になり、動作の自由度が大幅に向上するので、可動アームの動作がスムーズになり、各種ワークに対して複雑かつ精密な加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の加工搬送装置を示す斜視図、図2は図1をX軸方向から見た図である。
【0014】
この加工搬送装置1は、多間接式の可動アーム2を一対備え、これら可動アーム2を旋回装置3を介して基台4に据え付けてある。各可動アーム2は、同一の方向(図1のX軸方向)を向いた回転軸5,6,7を中心にして回動する関節を3個備えている。
【0015】
これら間接で連結されたアーム片(8〜11)のうち、先端側のアーム片8には、例えば、加工手段としてのボルト締結装置又は保持手段としてのワーク把持装置(図示せず)が各関節の回転軸5,6,7と垂直な回転軸12回りに回動自在に取り付けられる。先端側のアーム片8と隣接するアーム片9は長手方向に2分割され、その先端部分9aが長手方向の回転軸13を中心として回動可能に基端部分9bに連結されている。なお、以上の各回転軸5,6,7,12,13の駆動はモータ(図示せず)によって行なわれる。
【0016】
一方、可動アーム2の基端側アーム片11は、各関節の回転軸5,6,7に対して垂直な方向(図1のZ軸方向)の回転軸14を中心として回動すべく、第1の回動手段15を介して旋回装置3のベースプレート(被装着部)16に設置してある。この回動手段15は、ベースプレート16にモータ17を固定し、その出力を減速装置18を介して可動アーム2の基端に伝達している。各可動アーム2,2はベースプレート16の両端部にそれぞれ立設されるとともに、ベースプレート16の下面で可動アーム2,2の設置箇所には、モータ17がそれぞれ固設されている。
【0017】
基端側アーム片11の中間部には、第1の回動手段15の回転軸14と各関節の回転軸5,6,7の双方に対して垂直な方向(図1のY方向)を向いた回転軸19を中心として可動アーム2を回動させる第2の回動手段20を設けてある。この回動手段20は、基端側アーム片11の下方部分11aにモータ21を固定し、その出力を減速装置22を介して基端側アーム片11の上方部分11bに伝達している。
【0018】
旋回装置3は、可動アーム2を基台4に対して旋回させるリンク機構を構成している。すなわち、ベースプレート16の中央はZ軸方向を向いた回転軸23を中心として回動すべくL型アーム24の一端に支持される一方、L型アーム24の他端は回転軸23と平行な回転軸25を中心として回動すべく基台4に支持されている(図2参照)。なお、回転軸23は第1の回動手段15の各回転軸14,14を結ぶ線分の中点と直交するように配置されている。
【0019】
ベースプレート16の中央部上面にモータ26を固設するとともに、ベースプレート16の中央部とL型アーム24の上端との間に減速装置27を介設してある。そして、モータ26の出力を減速装置27を介してL型アーム24の上端に伝達することで、ベースプレート16をL型アーム24に対して旋回させるように構成してある。ベースプレート16の旋回にともなって、ベースプレート16の両端部下面に固設された各モータ17,17が減速装置27の回りを旋回することになる。
【0020】
さらに、L型アーム24の他端部上面にモータ28を固設するとともに、L型アーム24の他端部と基台4との間に減速装置29を介設してある。そして、モータ28の出力を減速装置29を介して基台4に伝達することで、L型アーム24を基台4に対して旋回させるように構成してある。
【0021】
次に、本実施形態の加工搬送装置1の動作について説明する。
【0022】
この加工搬送装置1は、例えば図3に示すように、自動車のサイドドアDの組立ラインに設置される。この場合、加工搬送装置1はサイドドアDの搬送方向に沿ったレールR上を走行する移動体Mに据え付けられる。
【0023】
サイドドアDの表面または裏面に対する加工を行う場合、同図に示すようにモータ28を作動させてL型アーム23の先端をワーク側に向け、モータ26を作動させてベースプレート16をワークに沿って配置し、左右の可動アーム2,2のアーム片10,10を起立させた状態で作業を行なう。ところで、種類の異なるサイドドアDが加工ステーションに搬送されてきて、サイドドアDの前後の端面dに対する加工が必要となる場合がある。その場合には、図4に示すように第2の回動手段20,20を作動させて、左右の可動アーム2,2を外側に倒し込めばよい。つまり、サイドドアDの前後の端面dに対する加工を1台の装置で同時に行うことができ、作業能率が格段に良くなる。
【0024】
さらに、サイドドアDの端面dと裏面に対する加工を同時に行う場合には、図5に示すように左右の可動アーム2,2を同じ方向に倒し込めばよい。また、可動アーム2は3軸方向に回動可能に構成してあるので、動作の自由度が高く、各種のサイドドアDに対して複雑かつ精密な加工を行うことができる。
【0025】
このように、本実施形態の加工搬送装置1では、可動アーム2の基端側アーム片11に、図1のY軸方向を向いた回転軸19を追加して、可動アーム2のベースプレート16に対する連結部が2軸方向に回動可能に構成してあるので、可動アーム2,2の移動範囲が広くなり、可動アーム2の移動範囲が広くなるとともに、可動アーム2の動作の自由度が高くなる。
【0026】
このため、加工すべきワークの種類によって、加工位置が変化しても、第1及び第2の回動手段15,20と可動アーム2の各関節とを適宜回動させることによって、可動アーム2先端の加工手段をワークの加工位置にスムーズに移動させることができ、ワークの加工条件の制約を大幅に緩和することができる。
【0027】
さらに、可動アーム2がその各関節と第1及び第2の回動手段15,20とによって3軸方向に回動可能になり、動作の自由度が大幅に向上するので、可動アーム2の動作がスムーズになり、各種ワークに対して複雑かつ精密な加工を行うことができる。
【0028】
この加工搬送装置1は、可動アーム2を旋回装置3を介して基台4に据え付けてあるが、この旋回装置3はベースプレート16とL型アーム24とを枢支結合してなるリンク機構で構成してあるので、可動アーム2の基台据付個所に対する移動範囲が広くなり、次のような利点がある。
【0029】
すなわち、サイドドアDの加工を行う際にはL型アーム24の先端をワーク側に向けておくが、加工を休止する場合には、図6に示すようにベースプレート16とL型アーム24をレールRに沿わせて折り畳み、左右の可動アーム2,2の先端をサイドドアDと反対側に向けておけばよい。つまり、可動アーム2,2をスッキドSから退避させておくことができるので、可動アーム2,2が作業者Wの作業の邪魔になることはない。なお、可動アーム2,2は移動体Mの回りに旋回するので、レールRの両側にワークを配置してもよい。
【0030】
旋回装置3は、ベースプレート16の中央部上面にモータ26を固設するとともに、ベースプレート16の中央部とL型アーム24の上端との間に減速装置27を介設し、ベースプレート16の両端部下面にモータ17をそれぞれ固設してある。このため、ベースプレート16の旋回にともなって、各モータ17,17が減速装置27の回りを旋回することになる。このように、ベースプレート16に対して3個のモータ17,17,26と減速装置27とを合理的に配置することによって、旋回装置3のコンパクト化を図っている。
【0031】
なお、以上の実施形態では、本発明の装置によって自動車のサイドドアDに対する加工を行う場合について説明したが、本発明は加工装置としての使用に限定されるものではなく、可動アーム2の先端に保持手段を設ければ、各種ワークの搬送装置としての使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の加工搬送装置を示す斜視図。
【図2】図1をX軸方向から見た図。
【図3】同加工搬送装置の使用態様を示す斜視図。
【図4】同加工搬送装置の使用態様を示す斜視図。
【図5】同加工搬送装置の使用態様を示す斜視図。
【図6】同加工搬送装置の使用態様を示す斜視図。
【符号の説明】
【0033】
1 加工搬送装置
2 可動アーム
3 旋回装置
4 基台
5,6,7 回転軸
8〜11 アーム片
14 回転軸
15 第1の回動手段
16 ベースプレート
17 モータ
18 減速装置
19 回転軸
20 第2の回動手段
21 モータ
22 減速装置
23 回転軸
24 L型アーム
25 回転軸
26 モータ
27 減速装置
27 減速装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向を向いた回転軸を中心として回動する間接を複数個有する可動アームと、該可動アームの先端に設けた加工又は保持手段とを備えた加工搬送装置において、上記間接の回転軸に対し平面的に見て交差する回転軸を中心として上記可動アームを回動させるべく上記可動アームの基端と被装着部との間に設けた第1の回動手段と、該回動手段の回転軸と上記関節の回転軸の双方に対して垂直な回転軸を中心として上記可動アームを回動させるべく上記可動アームの基端側アーム片に設けた第2の回動手段とを備えたことを特徴とする加工搬送装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向を向いた回転軸を中心として回動する関節を複数個有する可動アームと、該可動アームの先端に設けた加工又は保持手段とを備えた加工搬送装置において、上記関節の回転軸に対し平面的に見て交差する回転軸を中心として上記可動アームを回動させるべく上記可動アームの基端と被装着部との間に設けた第1の回動手段と、該回動手段の回転軸と上記関節の回転軸の双方に対して垂直な回転軸を中心として上記可動アームを回動させるべく上記可動アームの基端側アーム片に設けた第2の回動手段とを備えたことを特徴とする加工搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−102847(P2006−102847A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291048(P2004−291048)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】