説明

加工装置

【課題】 メイン操作パネルから離れた場所でメンテナンス作業を行う場合の便宜性を図った加工装置を提供することである。
【解決手段】 制御手段に接続された操作キーを有する操作パネルによって操作され、側面及び/又は背面にオペレータがメンテナンス作業を行う作業領域を備えた加工装置であって、該操作パネルは加工装置の正面に設けられたメイン操作パネルと、該作業領域近傍に設けられたメンテナンス操作パネルとからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン操作パネルが配設された装置正面以外の側面や背面に、装置メンテナンスのための作業領域を有する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の製造に寄与する加工装置には様々な種類があるが、特に一つの装置内で複数の工程を順次実施するタイプの加工装置は、工数の増大や被加工物のサイズアップ等のために大型化し易く、装置正面に配設された操作パネルから離れた場所で、装置のメンテナンス等を行うためにオペレータが様々な作業を実施する必要がある場合が多い。
【0003】
例えば、半導体ウエーハ等の研削に用いられる研削装置においても、装置正面に配設された操作パネルから離れた装置の側方や背面に、オペレータが装置のメンテナンスのために作業する領域があり、メンテナンス作業を実施する際は、従来は持ち運び可能なハンディ操作パネル(例えば、特開平11−48059号公報参照)を使用して、操作パネルと作業領域が離間している不都合を解消していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−48059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ハンディ操作パネルを利用する場合、実際の操作では、ハンディ操作パネルを加工装置の制御手段に繋げるための電気信号のやりとり(ハンディ操作パネルの接続準備や接続の検知等)に時間がかかり、オペレータに待機時間が発生するという課題があった。
【0006】
更には、メンテナンス作業(例えば、研削ホイールの交換、セットアップ、ドレッシングやチャックテーブルの交換等)は基本的に決まった作業領域で行うため、メンテナンス作業実施の度に同じ場所にハンディ操作パネルを着脱するが、着脱の必要性があるのか疑問が残るというのが実情であった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作パネルから離れた作業領域でメンテナンス作業を行う場合に、操作パネルと作業領域が離間している不都合を解消した加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、制御手段に接続された操作キーを有する操作パネルによって操作され、側面及び/又は背面にオペレータがメンテナンス作業を行う作業領域を備えた加工装置であって、該操作パネルは加工装置の正面に設けられたメイン操作パネルと、該作業領域近傍に設けられたメンテナンス操作パネルとからなることを特徴とする加工装置が提供される。
【0009】
好ましくは、加工装置は、前記メイン操作パネル及び前記メンテナンス操作パネルのうち何れか一方の操作パネルの前記操作キーを操作可能状態にした場合には、他方の操作パネルの前記操作キーは操作不可能状態にする操作禁止手段を具備している。
【0010】
好ましくは、加工装置の全ての操作パネルにおいて、全ての操作パネルの操作キーの操作可能/不可能状態を確認可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加工装置によれば、メイン操作パネルから離れたメンテナンス等を行う作業領域の近傍に、メンテナンス操作パネルが予め設置されているため、従来のハンディ操作パネルのように接続に時間を要することがなく、オペレータはメンテナンス操作パネルを使用してメンテナンス作業を行うことができ、メイン操作パネルと作業領域が離間している不都合を解消することができる。
【0012】
また、一方の操作パネルの操作キーが操作可能状態の場合には、他方の操作パネルの操作キーを操作不可能状態にする操作禁止手段が設けられているので、メンテナンス作業中にメイン操作パネルから誤って操作が実行される等の誤操作を防止できる。全ての操作パネルにおいて、どの操作パネルが操作可能な状態になっているかを視認できるようになっているため、オペレータの作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の研削装置の平面図である。
【図2】第1実施形態の研削装置の斜視図である。
【図3】半導体ウエーハの表面側斜視図である。
【図4】表面に保護テープが貼着された状態の半導体ウエーハの裏面側斜視図である。
【図5】図5(A)は操作パネルの第1実施形態を示す図、図5(B)は操作パネルの第2実施形態を示す図である。
【図6】メイン操作パネル及び第1及び第2メンテナンス操作パネルの操作可否状態を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態の研削装置の斜視図である。
【図8】第3実施形態の研削装置の斜視図である。
【図9】第4実施形態の研削装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明第1実施形態に係る研削装置2の平面図が示されている。図2はその斜視図である。4は研削装置2のベースであり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール8が固定されている。
【0015】
この一対のガイドレール8に沿って、ボールねじ12とパルスモータ14とから構成される研削ユニット送り機構16により、研削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。パルスモータ14を駆動すると、ボールねじ12が回転し、研削ユニット10が上下方向に移動される。
【0016】
ベース4上にはターンテーブル18が回転可能に装着されている。ターンテーブル18上には2個のチャックテーブル20が周方向に180度離間して搭載されており、各チャックテーブル20は、ターンテーブル18を回転することによりウエーハを搬入又は搬出する搬入・搬出領域と、チャックテーブル20に吸引保持されたウエーハを研削する研削領域との間で順次移動される。
【0017】
ベース4の前方部分には、研削前のウエーハを収容した第1のウエーハカセット22と、研削後のウエーハを収容する第2のウエーハカセット24と、ウエーハ搬送ロボット26と、ウエーハ仮置きテーブル28と、ウエーハ搬入手段(ローディングアーム)30と、ウエーハ搬出手段(アンローディングアーム)32と、スピンナ洗浄装置34が配設されている。
【0018】
図3を参照すると、所定の厚さに研削加工される前の半導体ウエーハの斜視図が示されている。半導体ウエーハ11は、例えば厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面11aに複数のストリート13が格子状に形成されているとともに、複数のストリート13によって区画された各領域にIC,LSI等のデバイス15が形成されている。
【0019】
このように構成された半導体ウエーハ11は、デバイス15が形成されているデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19を備えている。半導体ウエーハ11の外周には、シリコンウエーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチ21が形成されている。
【0020】
半導体ウエーハ11の裏面11bを研削する際には、ウエーハ11の表面11aに、保護テープ貼着工程により保護テープ23が貼着される。従って、半導体ウエーハ11の表面11aは保護テープ23によって保護され、図4に示すように裏面11bが露出する形態となり、この状態で第1のウエーハカセット22中に収容される。
【0021】
図2を再び参照すると、研削装置2は外装カバー36で覆われており、図1に示す作業領域42,44にアクセス可能なように二つの扉38,40が外装カバー36に取り付けられている。
【0022】
装置前面側の外装カバー36には、研削装置2のコントローラに接続されたメイン操作パネル46が配設されている。作業領域42,44近傍の外装カバー36の側面には、それぞれ研削装置2のコントローラに接続された第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50が配設されている。
【0023】
図5(A)を参照すると、メイン操作パネル46の第1実施形態が示されている。このメイン操作パネル46はタッチパネルタイプであり、表示画面52には研削装置2の画像が表示されている。
【0024】
更に、表示画面52上には、メイン操作パネル46の作動状態アイコン54aと、第1メンテナンス操作パネル48の作動状態アイコン54bと、第2メンテナンス操作パネル50の作動状態アイコン54cが表示されている。
【0025】
ここで、太線外枠で囲まれたアイコン54a及び54bはメイン操作パネル46及び第1メンテナンス操作パネル48が作動中であること、即ち画面が表示されていることを示している。一方、アイコン54は第2メンテナンス操作パネル50が非作動中であること、即ち第2メンテナンス操作パネル50が消灯中であることを示している。ここで、太線外枠は、例えば緑色等で表示される。
【0026】
更に、アイコン54aでは○印が点灯しているため、メイン操作パネル46は操作可能状態であることを示している。一方、アイコン54bには×印が表示されているため、第1メンテナンス操作パネル48は作動中ではあるが操作不可能状態であることを示している。
【0027】
表示画面52上には、タッチパネル式の複数の操作キー56が配設されている。よって、本実施形態のメイン操作パネル46では、タッチパネル式の操作キー56をタッチすることにより、必要なコマンドを入力することができる。
【0028】
58はメイン操作パネル46の電源スイッチである。研削装置2の主電源がONされると、メイン操作パネル46の電源スイッチ56も自動的にONとなり、メイン操作パネル46の画面が表示される。
【0029】
第1メンテナンス操作パネル48及び第2メンテナンス操作パネル50もメイン操作パネル46と同様にタッチパネル式の操作パネルを採用することができ、これらの第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50にはメイン操作パネル46と同様な内容が表示される。
【0030】
よって、オペレータが作業領域42で作業を行いたい場合には、オペレータはまずメイン操作パネル46のアイコン54aを×印に切り替えてから、第1メンテナンス操作パネル48のアイコン54bを○印に切換える。
【0031】
これにより、メイン操作パネル46は操作不能となり、第1メンテナンス操作パネル48が操作可能状態となるため、オペレータは第1メンテナンス操作パネル48を操作しながらメンテナンス作業を行うことができる。
【0032】
メイン操作パネル46及び第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50の同時操作を防止するため、本実施形態では、メイン操作パネル46のアイコン54aに○印を表示したまま、第1メンテナンス操作パネル48のアイコン54bを○印に切換えることができない。まず、メイン操作パネル46のアイコン54aを×印に切り替えてから、第1メンテナンス操作パネル48のアイコン54bを○印に切換える。
【0033】
作業領域44に隣接する第2メンテナンス操作パネル50を使用したい場合には、まずメイン操作パネル46のアイコン54aを×印に切り替えてから、第2メンテナンス操作パネル50のアイコン54cの太線外枠を点灯して、第2メンテナンス操作パネル50を作動状態にしてから、アイコン54cを○印に切換えて第2メンテナンス操作パネル50を操作可能状態にする。
【0034】
尚、上述した実施形態では、第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50はメイン操作パネル46と同様な内容を表示しているが、第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50にはメンテナンスに必要な画面のみを表示するようにしてもよい。この場合にも、アイコン54a,54b,54cは全て表示する必要がある。
【0035】
図5(B)を参照すると、本発明第2実施形態のメイン操作パネル46Aが示されている。本実施形態のメイン操作パネル46Aでは、操作キー56Aはタッチパネル式ではなく、押しボタン式操作キーとなっている。操作キー56Aを除いて、他の表示画面52は図5(A)に示したメイン操作パネル46と同様である。
【0036】
次に、図6のフローチャートを参照して、本発明実施形態のメイン操作パネル46及び第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50の操作可能ロジックについて説明する。まず、ステップS10で装置の電源をONすると、メイン操作パネル46の電源が自動的にONとなり、メイン操作パネル46のアイコン54aの太線外枠が表示されてメイン操作パネル46は作動状態になるとともに、アイコン54aに○印が表示されてメイン操作パネル46が操作可能状態となる。
【0037】
よって、この場合にはステップS11の判定が肯定判定であるため、ステップS12で第1メンテナンス操作パネル48の操作が禁止され、ステップS13で第2メンテナンス操作パネル50の操作が禁止される。即ち、メイン操作パネル46の操作が可能な場合には、第1及び第2メンテナンス操作パネル48,46の操作はインヒビット(禁止)される。
【0038】
オペレータがメイン操作パネル46の操作キー56を操作してメイン操作パネル46を操作不能状態に切り替えると、アイコン54aに×印が表示される。よって、この場合には、ステップS11の判定は否定判定となり、ステップS14へ進んで第1メンテナンス操作パネル48が操作可能か否かを判定する。
【0039】
肯定判定の場合には、ステップS15でメイン操作パネル46の操作を禁止し、ステップS16で第2メンテナンス操作パネル50の操作を禁止する。即ち、第1メンテナンス操作パネル48の操作が可能な場合には、メイン操作パネル46及び第2メンテナンス操作パネル50の操作をインヒビットする。
【0040】
ステップS14が否定判定の場合には、ステップS17へ進んで第2メンテナンス操作パネル50の操作が可能か否かを判定する。肯定判定の場合には、ステップS18でメイン操作パネル46の操作を禁止し、ステップS19で第1メンテナンス操作パネル48の操作を禁止する。
【0041】
即ち、第2メンテナンス操作パネル50の操作が可能な場合には、メイン操作パネル46及び第1メンテナンス操作パネル48の操作をインヒビットする。ステップS17の判定が否定判定の場合には本処理を終了する。
【0042】
図7を参照すると、本発明第2実施形態の研削装置2Aの斜視図が示されている。本実施形態の研削装置2Aでは、扉38の内側に第1メンテナンス操作パネル48を配設し、扉40の内側に図示しない第2メンテナンス操作パネル50を配設している。本実施形態でも、メイン操作パネル46及び第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50の制御は上述した第1実施形態と同様である。
【0043】
図8を参照すると、本発明第3実施形態の研削装置2Bの斜視図が示されている。本実施形態では、外装パネル36の側面にブラケット60を取り付け、このブラケット60に対して第1メンテナンス操作パネル48をヒンジで回動可能に取り付けている。同様に、外装カバー36の反対側側面にブラケット62を取り付け、このブラケット62に対して第2メンテナンス操作パネル50をヒンジで回動可能に取り付けている。
【0044】
本実施形態では、第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50の表示画面は装置の内側を向いている。これにより、オペレータはメンテナンス作業中に第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50の画面が見易くなっている。
【0045】
本実施形態のメイン操作パネル46及び第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50の制御は、同時に二つの操作パネルの操作を禁止するため、上述した第1実施形態と同様である。
【0046】
図9を参照すると、本発明第4実施形態の研削装置2Cの斜視図が示されている。本実施形態では、外装カバー36の側面に取り付けたブラケット60に第1メンテナンス操作パネル48を着脱可能に装着している。第1メンテナンス操作パネル48は伸縮コード64を介して研削装置2Cのコントローラに接続されている。
【0047】
よって、本実施形態によると、オペレータは第1メンテナンス操作パネル48をブラケット60から引き出して、メンテナンス作業に便利な場所に第1メンテナンス操作パネル48を置いて、メンテナンス作業を行うことができる。
【0048】
外装カバー36の反対側の側面にもブラケット62が取り付けられており、このブラケット62に対して伸縮コードを有する第2メンテナンス操作パネル50が着脱可能に装着されている。
【0049】
本実施形態のメイン操作パネル46及び第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50の制御も、同時に二つの操作パネルの操作を禁止するために、上述した第1実施形態の制御と同様である。
【0050】
上述した実施形態では、メイン操作パネル46及び第1及び第2メンテナンス操作パネル48,50を研削装置に配設した実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、切削装置、研磨装置等の他の加工装置にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
2,2A〜2C 研削装置
10 研削ユニット
18 ターンテーブル
20 チャックテーブル
36 外装カバー
38,40 扉
42,44 作業領域
46 メイン操作パネル
48 第1メンテナンス操作パネル
50 第2メンテナンス操作パネル
54a,54b,54c アイコン
56,56A 操作キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御手段に接続された操作キーを有する操作パネルによって操作され、側面及び/又は背面にオペレータがメンテナンス作業を行う作業領域を備えた加工装置であって、
該操作パネルは加工装置の正面に設けられたメイン操作パネルと、該作業領域近傍に設けられたメンテナンス操作パネルとからなることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記メイン操作パネル及び前記メンテナンス操作パネルのうち何れか一方の操作パネルの前記操作キーを操作可能状態にした場合には、他方の操作パネルの前記操作キーを操作不可能状態にする操作禁止手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
全ての前記操作パネルにおいて、全ての該操作パネルの前記操作キーの操作可能/不可能状態を確認可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−218450(P2011−218450A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86631(P2010−86631)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】