説明

加工装置

【課題】 撮像手段の光量を適切な光量に調整可能な加工装置を提供することである。
【解決手段】 被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物を撮像する撮像手段と、該チャックテーブルと該加工手段とを相対的に加工送りする加工送り手段とを備えた加工装置であって、該撮像手段は、被加工物を照明する光源と、照明された被加工物を撮像するカメラと、該光源から照射される光の光量を調整する光量調整器とを含み、該光量調整器は、回転軸を有する回転板と、該光源から照射される光を透過する該回転板に形成された開口部と、該回転軸の回転角度に応じて該開口部を透過する光量を最大値と最小値の間で変化させる遮光板とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物に加工を施す切削装置、レーザ加工装置等の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されてその表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置(切削装置)又はレーザ加工装置によって分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
ダイシング装置又はレーザ加工装置等の加工装置は、半導体ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段と、チャックテーブルに保持された被加工物を撮像する撮像手段と、チャックテーブルと加工手段とを相対的に加工送りする加工送り手段とを少なくとも備えている。
【0004】
撮像手段は、一般的に、被加工物を撮像するカメラとカメラで撮像された像を拡大する顕微鏡を含んでおり、加工すべき領域である分割予定ラインを検出して高精度に切削ブレード又はレーザ加工ヘッドを加工すべき分割予定ラインに位置付けることができる。
【0005】
従来の加工装置では、撮像手段で加工すべき分割予定ラインを検出してアライメントを遂行するために、チャックテーブルを停止して撮像手段で切削すべき領域を撮像するようにしていたため、アライメントの遂行に比較的時間がかかり、生産性が悪いという問題がある。
【0006】
そこで、本願の出願人は、光源にストロボ光を採用し、撮像手段のCCDカメラがストロボ光の照射に同期してウエーハの撮像領域を撮像するようにした撮像手段を特開2010−76053号公報で提案した。この撮像手段を具備した切削装置によると、ウエーハが未だ移動中であっても静止画像を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−76053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示された撮像手段を有する切削装置では、ストロボ光源が発するストロボ光の光量を調整する手段が設けられていない。ストロボ光の光量を調整せずに撮像を行うと、適正な撮像画像を得られない場合があるという問題があった。特に、ストロボ光源としてキセノンフラッシュを採用した場合には、ストロボ撮像が殆ど不可能に近いという問題がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ストロボ光源の光量を調整可能な機構を有する撮像手段を備えた加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物を撮像する撮像手段と、該チャックテーブルと該加工手段とを相対的に加工送りする加工送り手段とを備えた加工装置であって、該撮像手段は、被加工物を照明する光源と、照明された被加工物を撮像するカメラと、該光源から照射される光の光量を調整する光量調整器とを含み、該光量調整器は、回転軸を有する回転板と、該光源から照射される光を透過する該回転板に形成された開口部と、該回転軸の回転角度に応じて該開口部を透過する光量を最大値と最小値の間で変化させる遮光板とを含むことを特徴とする加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加工装置は光源からの透過光量を変化させる遮光板を含む光量調整器を有する撮像手段を備えているので、光源からの光量を被加工物の撮像に適した光量に調整して被加工物の加工すべき領域を撮像することができる。特に、キセノンフラッシュの如く光の強さを調整できない光源を用いてストロボ撮像する場合には好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明実施形態の切削装置の概略構成図である。
【図2】ダイシングテープを介して環状フレームに支持された半導体ウエーハの斜視図である。
【図3】分割予定ライン検出時の本発明実施形態の撮像ユニットの構成及びその作用を説明する模式図である。
【図4】光量調整器の斜視図である。
【図5】切削溝の状態確認時の本発明実施形態の撮像ユニットの作用を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明実施形態に係る切削装置2を図面を参照して詳細に説明する。図1は、切削装置2の概略構成図を示している。切削装置2は、静止基台4上に搭載されたX軸方向に伸長する一対のガイドレール6を含んでいる。
【0014】
X軸移動ブロック8は、ボール螺子10及びパルスモータ12とから構成されるX軸送り機構(X軸送り手段)14により加工送り方向、即ちX軸方向に移動される。X軸移動ブロック8上には円筒状支持部材22を介してチャックテーブル20が搭載されている。
【0015】
チャックテーブル20は多孔性セラミックス等から形成された吸着部(吸着チャック)24を有している。チャックテーブル20には図2に示す環状フレームFをクランプする複数(本実施形態では4個)のクランパ26が配設されている。
【0016】
図2に示すように、切削装置2の加工対象である半導体ウエーハWの表面においては、第1のストリートS1と第2のストリートS2とが直交して形成されており、第1のストリートS1と第2のストリートS2とによって区画された領域に多数のデバイスDが形成されている。
【0017】
ウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周部は環状フレームFに貼着されている。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、図1に示すクランパ26により環状フレームFをクランプすることにより、チャックテーブル20上に支持固定される。
【0018】
X軸送り機構14は、ガイドレール6に沿って静止基台4上に配設されたスケール16と、スケール16のX座標値を読みとるX軸移動ブロック8の下面に配設された読み取りヘッド18とを含んでいる。読み取りヘッド18は切削装置2のコントローラに接続されている。
【0019】
静止基台4上には更に、Y軸方向に伸長する一対のガイドレール28が固定されている。Y軸移動ブロック30は、ボール螺子32及びパルスモータ34とから構成されるY軸送り機構(割り出し送り機構)36によりY軸方向に移動される。
【0020】
Y軸移動ブロック30にはZ軸方向に伸長する一対の(一本のみ図示)ガイドレール38が形成されている。Z軸移動ブロック40は、図示しないボール螺子とパルスモータ42から構成されるZ軸送り機構44によりZ軸方向に移動される。
【0021】
46は切削ユニット(切削手段)であり、切削ユニット46のスピンドルハウジング48がZ軸移動ブロック40中に挿入されて支持されている。スピンドルハウジング48中にはスピンドルが収容されて、エアベアリングにより回転可能に支持されている。スピンドルはスピンドルハウジング48中に収容された図示しないモータにより回転駆動され、スピンドルの先端部には切削ブレード50が着脱可能に装着されている。
【0022】
スピンドルハウジング48にはアライメントユニット(アライメント手段)52が搭載されている。アライメントユニット52はチャックテーブル20に保持されたウエーハWを撮像する撮像ユニット(撮像手段)54を有している。切削ブレード50と撮像ユニット54はX軸方向に整列して配置されている。
【0023】
次に、図3を参照して、本発明実施形態に係る撮像ユニット54の構成について詳細に説明する。撮像ユニット54は撮像領域に対面する対物レンズ68を収容する枠体56を有しており、枠体56の先端部近傍には光透過窓59を有する隔壁58が取り付けられている。
【0024】
枠体56の先端部と、隔壁58と、チャックテーブル20に保持されたウエーハWにより仕切られた空間内に水充填室60が画成される。枠体56の先端56aとチャックテーブル20に保持されたウエーハWとの間の間隔は約0.5〜1mm程度であるのが好ましい。ウエーハWのカーフチェック時には、水充填室60内には開閉弁66及び水供給口62を介して水源64からの水が供給されて充填される。
【0025】
本実施形態の撮像ユニット54はストロボ光源の一種であるキセノンフラッシュ70を備えている。キセノンフラッシュ70から出射されたストロボ光の一部はビームスプリッタ72により反射されて、対物レンズ68及び光透過窓59を介してチャックテーブル20に保持されたウエーハWに照射される。
【0026】
対物レンズ68の光軸上にはストロボ光で照射されたウエーハWを撮像するCCDカメラ74が配設されている。CCDカメラ74で撮像された画像はモニタ76上に表示される。
【0027】
キセノンフラッシュ70とビームスプリッタ72との間には、キセノンフラッシュ70から発せられた光の光量を調整する光量調整器82が配設されている。光量調整器82は、図4に示されるように、パルスモータ84と、パルスモータ84に連結された回転軸86と、回転軸86の先端に固定された回転板88と、キセノンフラッシュ70から照射される光を透過する回転板88に形成された開口部90と、回転軸86の回転角度に応じて開口部90を透過する光量を最大値と最小値の間で変化させる開口部90に配設された遮光板92とを含んでいる。
【0028】
遮光板92は、セグメント92a〜92jを有しており、各セグメント92a〜92jを透過する光量が最大値と最小値の間で段階的に小さくなるように構成されている。遮光板92の他の実施形態として、遮光板92を透過する光量が最大値と最小値の間で連続的に変化するように構成してもよい。
【0029】
再び図3を参照すると、CCDカメラ74はキセノンフラッシュ70の発光に同期してチャックテーブル20に保持されたウエーハWの撮像領域を撮像し、撮像された画像はモニタ76上に表示される。キセノンフラッシュ70、CCDカメラ74及びパルスモータ84は制御手段80に接続されており、制御手段80により制御される。
【0030】
上述のように構成された撮像ユニット54の作用について以下に説明する。まず、切削加工の対象となるウエーハWをチャックテーブル20により吸引保持し、X軸送り機構14を駆動して撮像ユニット54の直下にウエーハWを位置付ける。
【0031】
本実施形態の撮像ユニット54では、CCDカメラ74がキセノンフラッシュ70からのストロボ光の照射に同期してウエーハWの撮像領域を撮像するため、ウエーハWが未だ移動中であっても明瞭な静止画像を取得することができる。
【0032】
撮像ユニット54でウエーハWの撮像領域を撮像する場合には、まず光量調整器82のパルスモータ84を駆動して回転板88に装着された遮光板92を回転し、キセノンフラッシュ70からのストロボ光の光量が最適位置となる遮光板92のセグメント92a〜92jを選択し、選択されたセグメントがキセノンフラッシュ70から発せられたストロボ光の光路を遮る位置でパルスモータ84の駆動を停止する。
【0033】
遮光板92のセグメント92a〜92jの選択は、パルスモータ84により遮光板92を回転させながらCCDカメラ74でウエーハWを撮像し、その撮像画像をモニタ76で観察することにより決定する。
【0034】
遮光板92の最適セグメント92a〜92jを選択した後、アライメント工程を実施する。本実施形態のアライメント工程では、X軸送り機構14でチャックテーブル20に保持されたウエーハWをX軸方向に移動させながら、ウエーハWのある点(これをA点とする)が撮像ユニット54の直下にきた時点でキセノンフラッシュ70を発光させてウエーハWの撮像領域を照明する。
【0035】
キセノンフラッシュ70の発光と同期してCCDカメラ74でA点でのデバイスDを撮像し、アライメントユニット52に予め記憶されているターゲットパターンの画像と一致するターゲットパターンを検出し、A点でのターゲットパターンの座標値をアライメントユニット52のメモリに格納する。
【0036】
次いで、チャックテーブル20を移動してA点から離れたB点でA点で撮像したストリートS1と同一のストリートS1に隣接するデバイスDを撮像し、同様な操作によりターゲットパターンを検出して、B点でのターゲットパターンの座標値をアライメントユニット52のメモリに格納する。
【0037】
次いで、A点でのターゲットパターンの座標値とB点でのターゲットパターンの座標値を結んだ直線が、X軸方向と平行となる様にチャックテーブル20を回転する。次いで、ターゲットパターンとストリートS1の中心線との距離分だけ切削ユニット46をY軸方向に移動することにより、切削ブレード50を切削すべきストリートS1に整列させるアライメントが達成される。
【0038】
第1のストリートS1のアライメント実施後、チャックテーブル24を90度回転してから、ストリートS2についても同様な操作を実行して、第2のストリートS2のアライメントを遂行する。
【0039】
アライメント遂行時には、チャックテーブル20に保持されたウエーハWには切削水又は切削屑等が付着していないので、水充填室60内に水を供給する必要はない。本実施形態の撮像ユニット54でのアライメント時の撮像では、キセノンフラッシュ70からの照射に同期してCCDカメラ74でウエーハWの切削すべき領域が撮像されるため、チャックテーブル20に保持されたウエーハWが撮像ユニット54の下を移動中にも静止画像を撮像することができる。その結果、迅速にウエーハWの撮像を行うことができ、アライメントにかかる時間を短縮することができる。
【0040】
アライメントが終了すると、チャックテーブル20をX軸送り機構14でX軸方向に加工送りしながら高速回転する切削ブレード50を、ウエーハWを通してダイシングテープTまで所定量切り込ませることにより第1のストリートS1を切削する。
【0041】
Y軸送り機構36を駆動して切削ブレード50を割り出し送りしながら同一方向の全ての第1のストリートS1を切削する。次いで、チャックテーブル20を90度回転させて第1のストリートS1に直交する第2のストリートS2を切削する。
【0042】
ウエーハWの切削途中で切削溝の状態を確認したい場合、即ちカーフチェックを行いたい場合には、X軸送り機構14を駆動してチャックテーブル20に保持されたウエーハWを撮像ユニット54の直下に位置付ける。
【0043】
図5に示すように、開閉弁66を開いて水充填室60内に水を供給して、ウエーハWに付着している切削屑及び/又は切削水を綺麗な水で洗い流す。水充填室60内に常に水を供給しながらキセノンフラッシュ70を発光してウエーハWの撮像領域をストロボ光で照明する。
【0044】
キセノンフラッシュ70の発光に同期してCCDカメラ74で撮像されるため、チャックテーブル20が未だ移動中であってもCCDカメラ74で綺麗な静止画像を撮像することができる。
【0045】
CCDカメラ74の出力はモニタ76に入力され、モニタ76上には撮像した切削溝94が表示される。オペレータはモニタ76上の画像を見ながら切削溝94に発生するチッピング96等を観察することができ、切削溝94の状態を確認可能である。
【0046】
切削溝94の両側に形成されたチッピング96の発生割合が多くなった場合には、切削ブレード50に目詰まり等が生じていると判断し、オペレータは切削ブレード50を新たな切削ブレードに交換する等の処置を実施する。
【0047】
本実施形態の撮像ユニット54でのアライメント時の撮像では、キセノンフラッシュ70からのストロボ光の照射に同期してCCDカメラ74で適切な光量で照射された切削すべき領域を撮像するため、チャックテーブル20に保持されたウエーハWが撮像ユニット54の下を移動中にも静止画像を撮像することができる。その結果、迅速にウエーハWの撮像を行うことができ、アライメントにかかる時間を短縮することができる。
【0048】
また、カーフチェックを行う場合には、水充填室60内に水を供給しながらキセノンフラッシュ70の発光に同期してCCDカメラ74で適切な光量で照射された撮像領域を撮像するため、チャックテーブル20が未だ移動中であってもCCDカメラ74で静止画像を撮像することができる。よって、カーフチェックを迅速に行うことができ、カーフチェックを行っても生産性を低下させることが抑制される。
【0049】
上述した実施形態では、本発明の撮像ユニット54を切削装置2に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の切削ユニット54はレーザ加工装置等の他の加工装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
2 切削装置
14 X軸送り機構
20 チャックテーブル
36 Y軸送り機構
44 Z軸送り機構
46 切削ユニット
50 切削ブレード
52 アライメントユニット
54 撮像ユニット
60 水充填室
68 対物レンズ
70 キセノンフラッシュ
74 CCDカメラ
76 モニタ
82 光量調整器
84 パルスモータ
92 遮光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物を撮像する撮像手段と、該チャックテーブルと該加工手段とを相対的に加工送りする加工送り手段とを備えた加工装置であって、
該撮像手段は、被加工物を照明する光源と、照明された被加工物を撮像するカメラと、該光源から照射される光の光量を調整する光量調整器とを含み、
該光量調整器は、回転軸を有する回転板と、該光源から照射される光を透過する該回転板に形成された開口部と、該回転軸の回転角度に応じて該開口部を透過する光量を最大値と最小値の間で変化させる遮光板とを含むことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該遮光板は、透過する光量を連続的に又は段階的に変化させる請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該光量調整器は、該回転軸に連結されたパルスモータを更に含む請求項1又は2記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253296(P2012−253296A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127004(P2011−127004)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】