説明

加工食品用原料

【課題】 加熱した野菜類、豆類、種実類を裏ごしして得られる裏ごし残渣を利用した加工食品用原料を提供する。
【解決手段】 加熱した野菜類、豆類、種実類からなる群より選択される少なくとも1種を裏ごしして得られる残渣を利用した、加工食品用原料を提供する。また、この加工食品用原料を用いた加工食品を提供する。本発明によって得られる加工食品用原料は、他の食品への添加が容易であり、食物繊維を豊富に含み、さらに機能性成分も豊富に含む。また嗜好性が高く、そのまま摂取することも可能である。このため、これらの機能性を目的として、様々な食品に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱した野菜類、豆類、種実類からなる群より選択される少なくとも1種を裏ごしして得られる残渣からなる、加工食品用原料に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜類、豆類、種実類は様々な食品に利用されているが、その利用形態の一つとして裏ごし物がある。アズキ餡やサツマイモ餡に代表されるように、裏ごし物は、素材に含まれる余計な食物繊維等が取り除かれた口当たりのよい加工食品が得られるため、またそのまま加工食品に用いても乾燥して用いてもよいことから、よく利用されている。
【0003】
しかし、これらの裏ごし工程で発生する裏ごし残渣は、適当な処理方法や利用方法が少なく、動物飼料やキノコの培養基へ適用されている程度で食品への利用はなく、その有効利用が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−295920号公報
【特許文献2】特開2002−204685号公報
【特許文献3】特開2004−041090号公報
【特許文献4】特開2005−052140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、加熱した野菜類、豆類、種実類からなる群より選択される少なくとも1種を裏ごしして得られる残渣の有効利用方法が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、加熱した野菜類、豆類、種実類からなる群より選択される少なくとも1種を裏ごしして得られる残渣を用いた加工食品用原料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題を鑑み、加熱した野菜類、豆類、種実類の裏ごしして得られる残渣(裏ごし残渣)の利用方法について鋭意検討を行った。その結果、この裏ごし残渣は、食物繊維ならびに機能性成分を高含有しており、かつ嗜好性の高い加工食品用原料として利用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、野菜類、豆類、種実類からなる群より選択される少なくとも1種を裏ごしして得られる残渣からなる、加工食品用原料に関する。
【0009】
好ましくは、本発明は、前記野菜類の使用部位が塊根部である、前記加工食品用原料に関する。
【0010】
さらに好ましくは、本発明は、前記野菜類が甘藷である、前記加工食品用原料に関する。
【0011】
また、本発明は、前記加工食品用原料を用いた加工食品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による加工食品により、従来廃棄していた裏ごし残渣の有効利用が可能となる。さらに、本発明の加工食品は、食物繊維ならびに機能性成分を豊富に含むため、様々な形態に用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の利用方法について説明する。なお、本発明は、以下の説明で限定的に解釈されるものではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内において、種々の改変が可能である。なお、加熱した野菜類、豆類、種実類からなる群より選択される少なくとも1種を裏ごしして得られる残渣を、以下適宜裏ごし残渣ということがある。
【0014】
(野菜類、豆類、種実類)
本発明に用いる野菜類、豆類、種実類は、加熱して裏ごしできる素材であればよい。例えば、野菜類としては、甘藷、カボチャ、ジャガイモ、ヤマイモ、長芋、里芋等のイモ類、ニンジン、カブ、ユリ根、タマネギ、長ネギ、カリフラワー、ブロッコリーなど、豆類としては、アズキ、空豆、枝豆、インゲン等、種実類としては、ギンナン、落花生、カシューナッツ等が挙げられる。本発明では、これら素材の使用部位は塊根部であることが好ましい。さらに好ましくは甘藷の塊根部である。
【0015】
甘藷はヒルガオ科の多年草で、その葉は茶に利用されたり、塊根部は生でも加熱した状態でも様々に加工され、用いられている。本発明に用いる甘藷は食経験がある品種であればよく、例えば、ジョイントホワイト、コガネセンガン、シロユタカ、サツマスターチ、アヤムラサキ等の品種が挙げられが、特に好ましくはアヤムラサキ、パープルスイートロード、山川紫、種子島紫をはじめとする、いわゆる紫芋と呼ばれる甘藷である。紫芋は、紫色の色素で、ポリフェノールの一種であるアントシアニンを多く含み、本発明の加工食品に用いた場合、食物繊維や機能性成分が高含有となるだけではなく、天然色素として利用することも可能となる。また、コガネセンガンもカロテノイドを豊富に含むことから、好適に用いられる。
【0016】
本発明の加工食品用原料は、例えば甘藷の場合、以下のようにして得られる。まず生の甘藷の塊根部を水などで洗浄する。その際、皮を取除いたり、加工しやすいようにカットしてもよい。次いで殺菌工程も兼ねて加熱を行う。加熱は80℃以上で行い、高圧殺菌機、加熱殺菌機、加圧蒸気殺菌機などを用いることができる。次いで、加熱した甘藷をつぶし、裏ごしをしてその際の残渣を回収する。裏ごしは、篩による分離でもよく、その場合は、篩上の残渣を回収すればよい。裏ごし器や篩のメッシュの大きさは、通常用いられる大きさのものであればよく、例えば、9メッシュから65メッシュ程度のものが挙げられる。
【0017】
上記のようにして得られた裏ごし残渣は、必要に応じて乾燥ならびに粉砕してもよい。乾燥は、熱風乾燥機、高圧蒸気乾燥機、電磁波乾燥機、凍結乾燥機、減圧濃縮機などの当業者が通常用いる任意の方法を用いればよく、直火式加熱機や回転式通風乾燥機などを用いてもよい。この中でも、乾燥粉末を得るためには、製造上のコストや乾燥の効率の面からは、熱風乾燥機、直火式加熱機、回転式通風乾燥機を用いることが好ましい。なお、乾燥にかける温度は、常圧では60℃〜150℃程度で行うことで、風味が良く、色鮮やかな裏ごし残渣の乾燥物を得ることができ、減圧下では60℃以下、好ましくは裏ごし残渣が凍結する温度以上、60℃以下で行うことで、栄養成分の損失を少なくしつつ乾燥を行うことが可能である。
【0018】
粉砕は、乾燥した裏ごし残渣をカッター、スライサー、ダイサーなどの当業者に公知の任意の機械または道具によりおこなえばよい。さらに細かく粉砕する場合は、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの当業者が通常用いる任意の機械または道具を用いて行われる。微粉砕することにより食感がよくなることは周知であり、好ましくは、粗粉砕および微粉砕の工程を順に経ることにより、さらに食感がよくなるだけでなく、食品へ添加した場合に均一に混ざりやすくなる。また、粗粉はそのまま食してもよいし、型により成型して食してもよい。
【0019】
本発明の加工食品には、必要に応じて、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、他の食品原料、調味料、医薬品原料などを添加してもよい。さらに、本発明の加工食品は、用途に応じて、顆粒、錠剤などの形態に成形されてもよい。また、本発明の加工食品の剤形については、必要に応じてハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいは粉末状、顆粒状、茶状、ティーバッグ状、もしくは飴状などの形態に成形したり、そのまま飲料として用いたりすることができる。これらの形状または好みに応じて、そのまま食してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良い。また、粉末化してティーバッグ状などの場合、成分を浸出させてから飲んでも良い。
【0020】
本発明の加工食品に添加可能な食品原料としては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、B群、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、α−リポ酸、セレン、キチン・キトサン、レシチン、ポリフェノール(カテキン類、アントシアニン類、ガロタンニン等の加水分解型タンニン、プロアントシアニジン類、イソフラボン類、フラボノイド類、これらの誘導体等)、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、サポニン(ジンセサノイド、グリチルリチン酸等)、キサンチン誘導体(カフェイン等)、脂肪酸、アミノ酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ケタラン、これらの塩等)、アミノ糖(グルコサミン、アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、アセチルノイラミン酸、ヘキソサミン、それらの塩等)、食物繊維(難消化性デキストリン、アルギン酸、グアガム、ペクチン、グルコマンナン等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)リン脂質とスフィンゴ脂質及びそれらの誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、キノン類(コエンザイムQ10等)、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、麦若葉末等のイネ科植物の緑葉、ケール等のアブラナ科植物の緑葉などが挙げられる。
【0021】
さらに、例えば、植物発酵ジュース、野菜ジュース(例えば、人参ジュース)、植物抽出物、果汁などに本発明の加工食品を添加して、飲料という形態として利用することも可能である。このような形態によれば、嗜好性を良くすることが可能であるだけでなく、機能性または栄養価の高い飲料とすることもできる。
【0022】
上記のほかにも調味料として、例えば、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、および香料が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例によって制限されない。
【0024】
(実施例1)
サツマイモ100gを水で洗浄した後、電子レンジで6分加熱し、12メッシュの裏ごし器で裏ごしした。その際に得られた裏ごし残渣は96gであり、裏ごし物は4gであった。
【0025】
(実施例2)
アヤムラサキ100gを水で洗浄した後、皮を取り除き、3cm角のダイス状にカットした。カットしたアヤムラサキを15分間蒸かし、12メッシュの裏ごし器で裏ごしした。その際に発生した裏ごし残渣を乾燥、粉砕し、1.5gの裏ごし残渣乾燥粉末を得た。また、裏ごし物を乾燥、粉砕したものは30gであった。得られた裏ごし残渣乾燥粉末と裏ごし物のアントシアニン量と食物繊維量を測定したところ、裏ごし残渣乾燥粉末の方が、食物繊維が豊富に含まれ、またアントシアニンも豊富に含まれていることがわかった。従って裏ごし残渣乾燥粉末を、アントシアニン色素を目的として利用することも可能であることがわかった。
【0026】
(実施例3)
実施例2で得た裏ごし残渣乾燥粉末2gを10人のモニターに食してもらい、感じる味覚を以下のアンケートに回答してもらった(複数回答不可)。結果を表1に示す。
<評価項目1>
(a)甘味を感じない。
(b)ほのかに甘味を感じる。
(c)甘味を感じる。
<評価項目2>
(a)食し難い。
(b)どちらかというと食しやすい。
(c)食しやすい。
【0027】
【表1】

【0028】
表1より、モニターの多くが裏ごし残渣の乾燥粉末は甘味を感じ、食しやすいと回答していることがわかる。従って、本発明の加工食品用原料は、そのまま食してもよいことがわかる。
【0029】
(製造例1)
実施例2で得た裏ごし残渣の乾燥粉末を用いて、表2の配合量でクッキーを製造した。
【0030】
【表2】

【0031】
(製造例2)
実施例2で得た裏ごし残渣の乾燥粉末を用いて、表3の配合量で青汁(顆粒品)を製造した。
【0032】
【表3】

【0033】
(製造例3)
実施例2で得た裏ごし残渣の乾燥粉末を用いて、表4の配合量で錠剤を製造した。
【0034】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、加熱した野菜類、豆類、種実類からなる群より選択される少なくとも1種を裏ごしして得られる残渣を有効利用することができ、かつ機能性成分や食物繊維を豊富に含み、嗜好性も高い加工食品原料を得ることができるため、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した野菜類、豆類、種実類からなる群より選択される少なくとも1種を裏ごしして得られる残渣からなる、加工食品用原料。
【請求項2】
前記野菜類の使用部位が塊根部である、請求項1に記載の加工食品用原料。
【請求項3】
前記野菜類が甘藷である、請求項1または2に記載の加工食品用原料。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の加工食品用原料を用いることを特徴とする、加工食品。

【公開番号】特開2007−20465(P2007−20465A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206965(P2005−206965)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】