説明

加熱保温器

【課題】固形の油が局部加熱されて酸化してしまうのを防止し且つ油を融解させる際のエネルギーの費用が掛かることのない加熱保温器を提供する。
【解決手段】内部に温水流路1が形成されるとともに上面に加熱容器2が載置される筐体30からなる加熱部3と、加熱部3に載置される加熱容器2を覆って保温するための保温部4と、で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に油を加熱により溶融させて保温する加熱保温器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばフライ等で用いる固形の油を溶融させる加熱器が知られている(例えば特許文献1参照)。フライヤーを用いてフライを作る場合、使用により劣化した油を交換する必要があるが、フライ用の植物油やラードは常温で固形であるため、加熱器にて固形の油を液状に溶融してフライヤーに供給する。
【0003】
劣化した油を排出して空となったフライヤーに新しい油を固形の状態のまま供給して加熱すると、空焚きに近い状態となって、フライヤーの耐久性が低下してしまい、また、新しい油を固形の状態のままでフライヤーで加熱すると、油が局部加熱されて激しく酸化されてしまい好ましくないものであった。
【0004】
このため、固形の油を徐々に加熱して溶融させていくいわゆるメルティングを行うのが好ましいが、従来のメルティング機器は高価であった。そこで、安価にメルティングを行う方法として、植物油やラード等の固形の油が流通する際に一般的に用いられている一斗缶に固形の油を入れた状態で、一斗缶を電熱器やグリドルで加熱して溶融させることが行われていた。
【0005】
しかしながら、この場合でも、一斗缶の底部が集中的に加熱されて、油の一斗缶の底部に接している部分のみが局部的に加熱されて激しく酸化されてしまうとともに、電熱器やグリドルでの加熱の際のエネルギーの費用が掛かるものであった。
【特許文献1】特開2000−312648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固形の油が局部加熱されて酸化してしまうのを防止し且つ油を融解させる際のエネルギーの費用が掛かることのない加熱保温器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明にあっては、内部に温水流路1が形成されるとともに上面に加熱容器2が載置される筐体30からなる加熱部3と、加熱部3に載置される加熱容器2を覆って保温するための保温部4と、で構成されて成ることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、固形の油を入れた加熱容器2を電熱器やグリドルで加熱して溶融させる従来の方法のように、油の局部加熱により酸化してしまうのを防止することが可能となるとともに、コジェネレーションシステムの排湯を用いれば、電熱器やグリドルといった機器で加熱する際のようにエネルギーに掛かる費用が削減できて経済的となる。
【0009】
また、請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、加熱部3の天板部33に、加熱容器2としての一斗缶2aの底面21の周縁リブ22で囲まれる範囲よりも若干小さくて一斗缶2aの底面21が上面に当接する台部5を設けて成ることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、一斗缶2aを安定性良く筐体30の天板部33上に載置することができるとともに、伝熱面が面接触することとなって伝熱性が向上するものである。
【0011】
また、請求項3に係る発明にあっては、請求項1又は2に係る発明において、保温部4として、反射性を有するとともに低熱伝導性部材を有する保温シート4bを用いて成ることを特徴とするものである。
【0012】
保温部4に保温シート4bを用いることで、安価に保温部4を構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、固形の油を入れた加熱容器を電熱器やグリドルで加熱して溶融させる従来の方法のように、油の局部加熱により酸化してしまうのを防止することが可能となり、また、コジェネレーションシステムの排湯を用いることで、電熱器やグリドルといった機器で加熱する際のようにエネルギーに掛かる費用が削減できて経済的となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の加熱保温器の一実施形態について説明する。
【0015】
本発明の加熱保温器は、図1に示すように加熱部3と保温部4とで主体が構成される。加熱部3は、図2、図3に示すように略矩形箱状をした筐体30で主体が構成され、内部には温水流路1が形成されるとともに上面に加熱容器2が載置される。図4(a)に加熱部の筐体の天板部を外した状態の斜視図を示し、図4(b)に筐体内の温水の流れの説明図を示す。温水流路1は本実施形態では、略矩形箱状をした筐体30の一側面の左右両端部にそれぞれ流入口31と流出口32とを開口形成し、筐体30の内部を整流板11によって仕切って流入口31から流出口32に至る蛇行した経路を形成してなるものである。整流板11は、流入口31および流出口32を設けた一側面からその対向面に向けて先端が該対向面の手前に位置する整流板11aと、前記対向面から流入口31および流出口32を設けた一側面に向けて先端が該一側面の手前に位置する整流板11bとを、前記流入口31および流出口32を設けた一側面とその対向面とに、前記流入口31から流出口32に至る方向に向けて千鳥状に互い違いに設けていくことで、蛇行した温水流路1を形成してある。なお温水流路1については、前記のものに限定されず、また流入口31と流出口32とを筐体30の別々の面に設けてあってもよく、特に限定されない。このように筐体30内に整流板11を設けて蛇行した温水流路1を形成したことで、筐体30内を温水が万遍なく行き渡って温度分布が均一化されて、熱効率が向上するものである。
【0016】
加熱部3の筐体30の流入口31と流出口32とには、温水を筐体30に搬送および筐体30から搬出するホース等の管(図示せず)がそれぞれ接続される管接続部31a、32aがそれぞれ突設してあり、管を容易に着脱することができる。
【0017】
温水流路1には、ホース等の管を介して流入口31から60〜80℃程度の温水が流入されて内部を流れ、流出口32から流出していくが、その間に加熱部3の筐体30を加熱し、筐体30の天板部33が加熱対象を加熱する部分となる。筐体30に供給する温水は、主にコジェネレーションシステム等の排湯を用いることを想定しており、これにより、廃熱を利用することで特に熱源を準備する必要がなく、熱源にて加熱を行うための燃料や電力等にエネルギーに掛かる費用が削減できて経済的なものとなる。なお、コジェネレーションシステムの排湯を用いようとすると排湯の圧力は高圧であり、コジェネレーションシステムからの排湯を直接筐体30に接続して温水を供給するのは困難であるため、筐体30に供給するまでに減圧弁等の減圧手段を設けて減圧を行う。
【0018】
加熱部3の筐体30の天板部33には、一般に流通している図5に示す一斗缶2aを加熱容器2として安定して載置可能なように、一斗缶2aの底面21の周縁リブ22で囲まれる範囲よりも若干小さくて一斗缶2aの底面21が上面に当接する台部5が設けてある。すなわち、図6に示すように一斗缶2aを加熱部3の天板部33の上面に載置するにあたり、一斗缶2aの底面21の周縁リブ22を筐体30の天板部33の台部5の上面に当たらないように外周に逃がして一斗缶2aの底面21を台部5の上面に載置することで、一斗缶2aの底面21が加熱部3の天板部33の台部5の上面に当接するとともに一斗缶2aの周縁リブ22が台部5に被嵌された状態となって、一斗缶2aを安定性良く筐体30の天板部33上に載置することができ、また、伝熱面が面接触することとなって伝熱性が向上する。このようにして、一斗缶2aの底面21を加熱部3の台部5の上面に当接させることで、温水流路1を流れる温水の熱が台部5の上面および一斗缶2aの底面21を介して一斗缶2a内の油に伝導して、固形の油が溶融する。
【0019】
このように台部5は熱伝導部材として機能するため、台部5を熱伝導性の高い材質で形成するのが好ましい。例えば銀、銅、金等の金属は熱伝導性が高くて好ましいものの高価であるため経済的な観点からは好ましくないが、アルミニウムといった金属が熱伝導性および経済的な観点から好ましい。なお金属であれば熱伝導性において概ね支障はないものである。
【0020】
この台部5は、筐体30の天板部33の平坦な上面に別部材の板状の台部5を取り付けて構成してもよいし、筐体30の天板部33と一体に形成してもよい。この場合、平板状の天板部33をプレスすることで天板部33の一部を台状に突出させて台部5を形成してもよいし、鋳造やダイカスト等により一体に形成しても勿論よい。
【0021】
また加熱部3は、本実施形態では正方形を二つ繋げた平面視長方形状の筐体30となっていて、筐体30の上面に二つの台部5を形成してあるが、特に限定されないものであり、加熱部3を平面視正方形状の筐体30として上面に一つの台部5を形成してあってもよく、様々な形態が考えられる。また本実施形態では、二つの台部5の間に各一斗缶2aの膨張を抑制する膨張抑制板35が設けてある。
【0022】
また、加熱部3の筐体30の下面には、四隅にキャスター34が設けてあり、これによって床面上の移動が容易となるものである。
【0023】
保温部4は、本実施形態では、加熱部3に載置された一斗缶2aを覆って、一斗缶2aからの放熱を防止するもので、図1に示す例では下方に開口する箱体4aで保温部4を構成してあり、図7に示す例では保温シート4bで保温部4を構成してある。保温シート4bとしては、アルミニウムを蒸着したPET等の樹脂フィルムやアルミニウム箔等の反射性を有するシートに、発泡ポリエチレンおよび/またはポリエチレン繊維布等の低熱伝導性部材を貼着したものが挙げられるが、特に限定されない。このような保温シート4bを用いることで、安価に保温部4を構成することができる。
【0024】
また箱体4aとしては、金属や反射性を有する材質や、あるいは前記材質の内面に低熱伝導性部材を貼着したもの等が挙げられるが、特に限定されない。いずれの保温部4も、加熱部3に載置された一斗缶2aを覆うか一斗缶2aおよび加熱部3の全体を覆うことで、一斗缶2aが外部に露出しないようにして一斗缶2aからの放熱を防止するものである。
【0025】
この加熱保温器の使用にあたっては、まず、加熱部3の流入口31にコジェネレーションシステム等の排湯の管を接続するとともに、流出口32に排出用の管を接続する。そして、固形の油を入れた一斗缶2aを加熱部3の筐体30の天板部33の台部5上に載置し、保温部4で一斗缶2aを覆い、60℃〜80℃程度の温水を管を介して流入口31より温水流路1内に流す。
【0026】
一斗缶2a内の固形の油は、40〜45℃で溶融し始めるもので、60℃〜80℃程度の温水を温水流路1内に流した場合、加熱部3の天板部33の台部5、一斗缶2aの底部を介して一斗缶2aの底部に接触している油に伝導し、徐々に溶融するいわゆるメルティングが行われる。油が全て溶融するには、一斗缶2a内に入れる油の量にもよるが、10〜20時間の加熱が必要となる。コジェネレーションシステム等の排湯を用いる場合、一日の稼働時間は6〜10時間程であるため、1〜3日程かかって油を全て溶融させることとなる。このように間欠的に加熱が行われるため、加熱を行っていない間に一斗缶2aから放熱して溶融した油が再び固化してしまうのを保温部4により防止するものである。
【0027】
以上のような加熱保温器にあっては、筐体30からなる加熱部3と、保温シート4bや箱体4aからなる保温部4とを容易に安価に構成することができて、従来のメルティング機器のような高価な機器を導入する必要がなくイニシャルコストの低減が可能となる。
【0028】
また、固形の油を入れた一斗缶2aを電熱器やグリドルで加熱して溶融させる従来の方法のように、油の局部加熱により酸化してしまうのを防止することが可能となる。
【0029】
また、コジェネレーションシステムの排湯を用いた加熱方法を採用することで、電熱器やグリドルといった機器で加熱する際のようにエネルギーに掛かる費用が削減できて、ランニングコストの低減が可能となって経済的なものとなる。また、排湯の温度が60〜80℃であるため、火傷の惧れが少なく、特に排湯の温度を60℃程度とすることでより一層火傷の惧れが低減する。
【0030】
また、コジェネレーションシステムの排湯を用いない場合でも、温水であればよく汎用性が高い。
【0031】
次に、他の実施形態について図8に基づいて説明する。なお、上実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0032】
本実施形態では、加熱部3を、内部に加熱容器2である一斗缶2aを収容可能な収容空間36を有する略矩形箱状をした筐体37で形成し、筐体37の天蓋部37bを筐体本体37aに対して開閉自在とするとともに、筐体本体37aの側壁内に温水流路1を形成したものである。
【0033】
これにより、加熱容器2の一斗缶2aの外面全面を加熱部3で覆うこととなって、加熱効率が向上するものであり、保温部4を別に設けなくても加熱部3自体が保温部4を兼ねることとなる。
【0034】
次に、更に他の実施形態について図9、図10に基づいて説明する。なお、上実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0035】
本実施形態では、温水流路1を有する加熱部3を、筐体ではなくパイプ38で構成したものである。パイプ38は、図9に示す例では、図9(a)に示すように平面視において渦巻き状となるように、流入口31及び流出口32から伸びるパイプ38を並べた状態で外側から内側に巻いていくもので、図9(b)に示すように側面視において一列に(平面状に)形成してある。また図10に示す例では、図10(a)に示すように平面視において流出口32から伸びるパイプ38を外側から内側に巻いていき、図10(b)に示すように側面視において中心部で下方に出して先端部の流入口31を流出口32と並べている。保温部4は図1に示すような箱体4aや図7に示す保温シート4b等で構成される。
【0036】
これにより、パイプ38を曲げるだけで加熱部3を構成することができて、筐体で構成するものと比較して容易に構成することができる。
【0037】
なお、加熱容器2は一斗缶2aに限定されず、天板部33の台部5上に載置可能な容器であれば特に限定されない。
【0038】
また、本実施形態では温水を加熱部3の筐体30内の温水流路1に流しているが、油や他の液体を筐体30内の流路に流してもよく、熱媒は特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態の斜視図である。
【図2】同上の実施形態の加熱部の斜視図である。
【図3】同上の加熱部を示し、(a)は平断面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図4】(a)は同上の実施形態の加熱部の筐体の天板部を外した状態の斜視図を示し、(b)は筐体内の温水の流れの説明図を示す。
【図5】一斗缶の下から見た斜視図である。
【図6】同上の実施形態の一斗缶を載置した加熱部の斜視図である。
【図7】保温部に保温シートを用いた例の斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態の斜視図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態の一例を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図10】同上の他例を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 温水流路
11 整流板
11a 整流板
11b 整流板
2 加熱容器
2a 一斗缶
21 底面
22 周縁リブ
3 加熱部
30 筐体
31 流入口
32 流出口
33 天板部
33a 上面
34 キャスター
4 保温部
4a 箱体
4b 保温シート
5 台部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に温水流路が形成されるとともに上面に加熱容器が載置される筐体からなる加熱部と、加熱部に載置される加熱容器を覆って保温するための保温部と、で構成されて成ることを特徴とする加熱保温器。
【請求項2】
加熱部の天板部に、加熱容器としての一斗缶の底面の周縁リブで囲まれる範囲よりも若干小さくて一斗缶の底面が上面に当接する台部を設けて成ることを特徴とする請求項1記載の加熱保温器。
【請求項3】
保温部として、反射性を有するとともに低熱伝導性部材を有する保温シートを用いて成ることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱保温器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−5750(P2009−5750A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167727(P2007−167727)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】