説明

加熱処理用ロータリーキルン及びこれを用いた加熱処理方法

【課題】粒度の比較的小さい被処理物の微粉末が熱風に舞い上げられて飛散する現象を抑制し、ロータリーキルンによる加熱効率を向上させ、回収率を向上させる加熱処理用ロータリーキルン及びこれを用いた加熱処理方法の提供。
【解決手段】回転自在に配置されている円筒状ドラム2の内周壁に、当該円筒状ドラム2に対して被処理物が供給される側から、当該円筒状ドラム2から加熱処理を受けた被処理物が排出される側に向けて、連続する螺旋状の溝が形成されている加熱処理用ロータリーキルン1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥や廃石膏などの加熱処理装置及び加熱処理方法に関し、特に、汚泥や廃石膏などの加熱処理用のロータリーキルン及びこれを用いた加熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の解体などに伴って多量に発生する廃石膏ボードについては、これを破砕・分別処理して二水石膏(CaSO・2HO)の状態にある廃石膏とし、これをロータリーキルンを用いて加熱処理することにより半水石膏(CaSO・1/2HO)や、無水石膏(CaSO)に転位させて再利用することが行われている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
また、従来から、加熱処理用ロータリーキルンを用いて下水汚泥、排水汚泥、汚染土壌、汚染廃棄物などを加熱処理することが知られている(特許文献3)。
【0004】
このような加熱処理に用いられるロータリーキルンは、例えば、加熱対象である被処理物の供給方向と熱風の供給方向とが同一となる並流加熱方式のものの場合、次のようなものであった。
【0005】
多数の掻き上げ羽根が内周壁に周設されている円筒状ドラムが回転自在に配置され、この円筒状のドラムの被処理物供給側に熱風供給用のバーナを、排出側に排ガス導出用の排気ダクトを連結する。熱風供給用のバーナで熱風を円筒状ドラム内に供給しつつ、駆動用モータにより円筒状ドラムを所定の速度で回転させ、被処理物供給側から被処理物を円筒状ドラム内に供給する。円筒状ドラム内に供給された被処理物は掻き上げ羽根によって掻き上げられながら加熱処理による乾燥を受けて加熱処理される。
【0006】
ここで、被処理物が廃石膏の場合には、前記熱風の温度に応じて、二水石膏から半水石膏へ、あるいは、半水石膏から無水石膏へと転位させられ、円筒状ドラムの排出側から排出されていく。
【特許文献1】特開2005−104759号公報
【特許文献2】特開2008−24563号公報
【特許文献3】特開2006−43660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の加熱処理用のロータリーキルン及びこれを用いた加熱処理方法においては、粒度の比較的小さい被処理物の微粉末が熱風に舞い上げられて飛散するので、この飛散を効果的に抑えることが求められていた。また、ロータリーキルンによる加熱効率を向上させ、回収率を向上させることが求められていた。
【0008】
そこで、この発明は、廃石膏や汚泥(例えば、下水汚泥や、排水汚泥など)、汚染土壌、汚染廃棄物などの加熱処理に用いられる加熱処理用ロータリーキルン及びこれを用いた加熱処理方法において、粒度の比較的小さい被処理物の微粉末が熱風に舞い上げられて飛散する現象を抑制し、ロータリーキルンによる加熱効率を向上させ、回収率を向上させることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
加熱処理に用いられるロータリーキルンであって、
回転自在に配置されている円筒状ドラムの内周壁に、当該円筒状ドラムに対して被処理物が供給される側から、当該円筒状ドラムから加熱処理を受けた被処理物が排出される側に向けて、連続する螺旋状の溝が形成されている
ことを特徴とする加熱処理用ロータリーキルンである。
【0010】
請求項2記載の発明は、
前記螺旋状の溝には、当該溝が延びる方向に所定の間隔を空けて、前記円筒状ドラムの内周壁から前記円筒状ドラムの中心方向に向かって突出する複数の突起部が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の加熱処理用ロータリーキルンである。
【0011】
請求項3記載の発明は、
請求項1又は2記載の加熱処理用ロータリーキルンを用い、前記円筒状ドラム内に熱風供給用のバーナで熱風を供給しつつ、前記円筒状ドラムを所定の速度で回転させ、前記円筒状ドラムの被処理物が供給される側から被処理物を円筒状ドラム内に供給し、前記被処理物を加熱処理して前記円筒状ドラムの排出側から排出させていく
ことを特徴とする加熱処理方法である。
【0012】
請求項4記載の発明は、
被処理物が廃石膏ボードを破砕・分別処理して二水石膏の状態にある廃石膏であって、当該廃石膏をロータリーキルンを用いて加熱処理することにより半水石膏あるいは無水石膏に転位させることを特徴とする請求項3記載の加熱処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、廃石膏や汚泥(例えば、下水汚泥や、排水汚泥など)、汚染土壌、汚染廃棄物などの加熱処理に用いられる加熱処理用ロータリーキルン及びこれを用いた加熱処理方法において、粒度の比較的小さい被処理物の微粉末が熱風に舞い上げられて飛散する現象を抑制し、ロータリーキルンによる加熱効率を向上させ、回収率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の加熱処理用ロータリーキルンが廃石膏の加熱処理に用いられる場合について添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0015】
本発明による加熱処理用ロータリーキルン1は、従来、この技術分野で用いられているものと同じく、円筒状ドラム2が駆動モータ3などによって回転自在に配置されているものである。
【0016】
この円筒状ドラム2には、その内周壁2aに、図1、図3(a)、図4(a)図示のように、円筒状ドラム2に対して被処理物である廃石膏が供給される側(図1中、左側)から、円筒状ドラム2から加熱処理を受けた被処理物(この実施例の場合、加熱処理を受けた廃石膏)が排出される側(図1中、右側)に向けて、連続する螺旋状の溝4が形成されている。
【0017】
この螺旋状の溝4には、図4(a)図示のように、溝4が延びる方向に所定の間隔を空けて、円筒状ドラム2の内周壁aから円筒状ドラム2の中心方向に向かって突出する複数の突起部5、5が形成されている。
【0018】
突起部5、5を含めた円筒状ドラム2の内周壁2aは、1600℃程度の高温に耐え得るセラミック部材などの耐火材で形成されている。
【0019】
本発明による加熱処理用ロータリーキルン1を用いて廃石膏の加熱処理が行なわれる工程についてその一例を図1、図2を用いて説明する。
【0020】
建築物の解体などに伴って多量に発生する廃石膏ボードは、破砕機11によって破砕される。
【0021】
こうして、廃石膏ボードを破砕・分別処理して二水石膏の状態にある廃石膏が、スクリューコンベアあるいはバケットコンベア12によって、加熱処理用ロータリーキルン1を構成する円筒状ドラム2の廃石膏が供給される側(図1中、左側)に矢印14で示すように供給される。
【0022】
ここで、円筒状ドラム2内には熱風供給用のバーナ13によって熱風が矢印15方向に供給されており、円筒状ドラム2は駆動モータ3によって所定の回転数で矢印16方向(図3(a)、(b))に回転している。
【0023】
円筒状ドラム2内に供給された廃石膏ボード17は円筒状ドラム2の矢印16方向への回転につれて、円筒状ドラム2の内壁2aに形成されている螺旋状の溝4内を案内されて矢印42(図3(a))で示すように、廃石膏が排出される側(図1中、右側)に向けて移動していく。
【0024】
この際、廃石膏ボード17は円筒状ドラム2の断面図を表わす図3(b)の右側において、円筒状ドラム2の回転につれて、溝4内を矢印16で示すように上昇しようとする。しかし、自らの重量のために、上昇することができず、円筒状ドラム2の下側の領域において、図3(a)、(b)に示すように溝4内に常に留まりつつ、順次、矢印42方向へ移動させられていく。
【0025】
このように、本発明の加熱処理用ロータリーキルン1では、円筒状ドラム2に供給された廃石膏ボード17は、常に、円筒状ドラム2の内周壁2aに円筒状ドラム2に対して廃石膏が供給される側から円筒状ドラム2から廃石膏が排出される側に向けて連続して形成されている螺旋状の溝4内に留まりつつ、排出側に向けて移動していく。そこで、粒度の比較的小さい石膏微粉末が熱風に舞い上げられて飛散する現象を効果的に抑制することができる。
【0026】
また、廃石膏ボード17は、円筒状ドラム2の断面図を表わす図3(b)の右側において、円筒状ドラム2の回転につれて、溝4内を矢印16で示すように上昇しようとし、自らの重量のために、図3(b)中、下側に戻るという動作を円筒状ドラム2内で繰り返す。そこで、円筒状ドラム2を通過していく廃石膏ボード17が均一に加熱されることになる。これによって、加熱効率を向上させ、回収率を向上させることができる。
【0027】
特に、螺旋状の溝4に、図4(a)図示のように、溝4が延びる方向に所定の間隔を空けて、円筒状ドラム2の内周壁aから円筒状ドラム2の中心方向に向かって突出する複数の突起部5、5が形成されているので、円筒状ドラム2の断面図を表わす図3(b)の右側において、円筒状ドラム2の回転につれて、溝4内を矢印16で示すように上昇しようとし、自らの重量のために、図3(b)中、下側に戻るという現象が生じる際に、溝4内において、突起部5、5の存在により、廃石膏ボード17が効果的に混合され、廃石膏ボード17の均一な加熱がより効果的に行われる。これによって、一層、加熱効率を向上させ、回収率を向上させることができる。
【0028】
こうして、円筒状ドラム2内に熱風供給用のバーナ13から供給される熱風の温度(例えば、130℃以上、あるいは180℃以上)に応じて、廃石膏ボード17は、二水石膏の状態から半水石膏に、あるいは、半水石膏から無水石膏へと転位されて、円筒状ドラム2の排出側(図1中、右側)から排出されていく。
【0029】
加熱処理用ロータリーキルン1の下流側には、図2図示のように、従来公知の廃石膏ボードの加熱処理装置・方法と同様に、煙突24にダンパー25を介して誘引排風機26が接続されており、円筒状ドラム2の排出側(図1中、右側)に配備されているホッパー22内に円筒状ドラム2の排出側から排出された処理済みの石膏が搬送される。
【0030】
ホッパー22には不図示のフィルタなどが配備されており、処理済みの石膏は矢印19、20のようにホッパー21内に回収される。
【0031】
ホッパー21に回収されなかった処理済みの石膏や排ガスなどは、ホッパー22に接続されているダクト28を介して、矢印18、23で示すように、冷却ホッパー29に送られる。
【0032】
冷却ホッパー29で分離された処理済みの石膏はロータリーバルブ30を介して矢印31のように回収される。
【0033】
残りの処理済みの石膏や排ガスなどは、ダクト32内を矢印33方向に搬送されて集塵サイクロン34に入る。塵サイクロン34で分離された処理済みの石膏は集塵サイクロン34の下側に配備されているロータリーバルブを介して矢印41のように回収される。
【0034】
残りの処理済みの石膏や排ガスなどは、ダクト35内を矢印36方向に搬送されてバグフィルター(不図示)を備えているホッパー38に入る。ホッパー38へはコンプレッサー37から圧縮空気が送り込まれている。バグフィルター(不図示)を備えているホッパー38で分離された処理済みの石膏はホッパー38の下側に配備されているロータリーバルブを介して矢印39のように回収される。
【0035】
残りの排ガスなどは、誘引排風機26によって吸引され、矢印40、27のように煙突24から排出されていく。
【0036】
ダクト28、ダクト32、ダクト35には不図示のスクリューコンベアあるいはバケットコンベアを配備して搬送用に用いることができる。
【0037】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態、実施例を説明したが、本発明は前述した実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【0038】
例えば、前記では、被処理物が、廃石膏ボードを破砕・分別処理して二水石膏の状態にある廃石膏の場合について説明したが、被処理物が、汚泥(例えば、下水汚泥や、排水汚泥など)、汚染土壌、汚染廃棄物などであっても同様である。
【0039】
円筒状ドラム2内に供給された汚泥(例えば、下水汚泥や、排水汚泥など)、汚染土壌、汚染廃棄物などの被処理物は、円筒状ドラム2の矢印16方向への回転につれて、円筒状ドラム2の内壁2aに形成されている螺旋状の溝4内を案内されて矢印42で示すように、排出される側(図1中、右側)に向けて移動していく。
【0040】
この際、被処理物は円筒状ドラム2の断面図を表わす図3(b)の右側において、円筒状ドラム2の回転につれて、溝4内を矢印16で示すように上昇しようとする。しかし、自らの重量のために、上昇することができず、円筒状ドラム2の下側の領域において溝4内に常に留まりつつ、順次、矢印42方向へ移動させられていく。
【0041】
円筒状ドラム2に供給された被処理物は、常に、円筒状ドラム2の内周壁2aに円筒状ドラム2に対して被処理物が供給される側から円筒状ドラム2から加熱処理を受けた被処理物が排出される側に向けて連続して形成されている螺旋状の溝4内に留まりつつ、排出側に向けて移動していく。そこで、粒度の比較的小さい被処理物の微粉末が熱風に舞い上げられて飛散する現象を効果的に抑制できる。
【0042】
また、被処理物は、円筒状ドラム2の断面図を表わす図3(b)の右側において、円筒状ドラム2の回転につれて、溝4内を矢印16で示すように上昇しようとし、自らの重量のために、図3(b)中、下側に戻るという動作を円筒状ドラム2内で繰り返す。そこで、円筒状ドラム2を通過していく被処理物が均一に加熱されることになる。これによって加熱効率を向上させ、回収率を向上させることができる。
【0043】
特に、螺旋状の溝4に、図4(a)図示のように、溝4が延びる方向に所定の間隔を空けて、円筒状ドラム2の内周壁aから円筒状ドラム2の中心方向に向かって突出する複数の突起部5、5が形成されているので、円筒状ドラム2の断面図を表わす図3(b)の右側において、円筒状ドラム2の回転につれて、溝4内を矢印16で示すように上昇しようとし、自らの重量のために、図3(b)中、下側に戻るという現象が生じる際に、溝4内において、突起部5、5の存在により、被処理物が効果的に混合され、被処理物の均一な加熱がより効果的に行われる。これによって、一層、加熱効率を向上させ、回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の加熱処理方法が実施される加熱処理装置が廃石膏の加熱処理装置として構成されている場合において、本発明による加熱処理用ロータリーキルンが配備されている箇所までの概略構成の一例を説明する図である。本発明による加熱処理用ロータリーキルンを構成する円筒状ドラムは破切され、その内周壁が表わされている。
【図2】本発明の加熱処理方法が実施される加熱処理装置が廃石膏の加熱処理装置として構成されている場合において、本発明による加熱処理用ロータリーキルンが配備されている箇所以降の概略構成の一例を説明する図。
【図3】(b)本発明による加熱処理用ロータリーキルンを構成する円筒状ドラムの内周壁を表わす図であって、当該内周壁に形成されている螺旋状溝を説明する一部を省略した内周壁の正面図、(b)図3(a)のD−D線端面の状態を概説する図。
【図4】(a)図3(a)の一部を拡大して表わした図、(b)図4(a)のB−B断面図、(c)図4(a)のC−C断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱処理用ロータリーキルン
2 円筒状ドラム
2a 円筒状ドラムの内周壁
3 駆動モータ
4 螺旋状の溝
5 突起部
13 熱風供給用のバーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理に用いられるロータリーキルンであって、
回転自在に配置されている円筒状ドラムの内周壁に、当該円筒状ドラムに対して被処理物が供給される側から、当該円筒状ドラムから加熱処理を受けた被処理物が排出される側に向けて、連続する螺旋状の溝が形成されている
ことを特徴とする加熱処理用ロータリーキルン。
【請求項2】
前記螺旋状の溝には、当該溝が延びる方向に所定の間隔を空けて、前記円筒状ドラムの内周壁から前記円筒状ドラムの中心方向に向かって突出する複数の突起部が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の加熱処理用ロータリーキルン。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加熱処理用ロータリーキルンを用い、前記円筒状ドラム内に熱風供給用のバーナで熱風を供給しつつ、前記円筒状ドラムを所定の速度で回転させ、前記円筒状ドラムの被処理物が供給される側から被処理物を円筒状ドラム内に供給し、前記被処理物を加熱処理して前記円筒状ドラムの排出側から排出させていく
ことを特徴とする加熱処理方法。
【請求項4】
被処理物が廃石膏ボードを破砕・分別処理して二水石膏の状態にある廃石膏であって、当該廃石膏をロータリーキルンを用いて加熱処理することにより半水石膏あるいは無水石膏に転位させることを特徴とする請求項3記載の加熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−48488(P2010−48488A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214346(P2008−214346)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(505036010)株式会社憲翔技研工業 (4)
【Fターム(参考)】