説明

加熱剥離型粘着シート

【課題】粘着剤として、化石資源(石油資源を含む)を用いず、化石資源の枯渇や二酸化炭素排出の問題のない、地球環境にやさしい植物由来材料を用いた加熱剥離型粘着シートを提供することを課題とする。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に、植物由来のジカルボン酸と植物由来のジオールとを縮合重合させて得られるポリエステル系ポリマーを用いた粘着層を有し、この粘着層中に発泡剤が含まれており、初期粘着力が2N/20mm以上、加熱発泡後(160℃,1分)の粘着力が0.3N/20mm以下であることを特徴とする加熱剥離型粘着シート、特に粘着層のゲル分率が40〜85%である上記構成の加熱剥離型粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球環境にやさしい植物由来材料を原料成分としたポリエステル系ポリマーを粘着剤の有効成分とする加熱剥離型粘着シートに関する。


【背景技術】
【0002】
加熱剥離型粘着シートは、被着体に貼り付けて使用されたのちは、加熱剥離されて廃棄処理される。これまで、この種の粘着シートには粘着剤として石油由来であるアクリル系の材料が主に用いられてきた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−179496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の加熱剥離型粘着シートは、石油由来材料のため、石油桔渇のおそれがあり、また使用後の廃棄処理に二酸化炭素を排出していた。つまり、石油桔渇や産廃時の二酸化炭素排出の点より地球環境への配慮はなされていなかった。

昨今、化石資源の枯渇や地球の温暖化対策として環境への配慮が求められ、再生可能な材料である植物由来材料の使用が推奨されている。


【0004】
本発明は、このような事情に照らし、粘着剤として、化石資源(石油資源を含む)を用いず、化石資源の枯渇や二酸化炭素排出の問題のない、地球環境にやさしい植物由来材料を用いた加熱剥離型粘着シートを提供することを課題とする。


【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に対し、鋭意検討した結果、植物由来材料を原料成分としたポリエステル系ポリマーを粘着剤の有効成分とし、これに発泡剤を含ませて加熱発泡可能な粘着層構成とすることにより、この粘着層のゲル分率を架橋などにて適正範囲に設定したときに、使用時は良好な粘着力を発揮し、使用後廃棄する際は加熱発泡により容易に剥離でき、この廃棄物は上記植物由来材料により二酸化炭素排出の問題のない、地球環境にやさしいものであることを知り、本発明を完成するに至った。


【0006】
すなわち、本発明は、基材の少なくとも一方の面に、植物由来のジカルボン酸と植物由来のジオールとを縮合重合させて得られるポリエステル系ポリマーを用いた粘着層を有し、この粘着層中に発泡剤が含まれており、初期粘着力が2N/20mm以上、加熱発泡後(160℃,1分)の粘着力が0.3N/20mm以下であることを特徴とする加熱剥離型粘着シートに係るものである。

また、本発明は、粘着層のゲル分率が40〜85%である上記構成の加熱剥離型粘着シート、発泡剤が熱膨張性微粒子である上記構成の加熱剥離型粘着シート、粘着層中に、ポリエステル系ポリマー100重量部あたり、発泡剤が5〜60重量部含まれている上記構成の加熱剥離型粘着シート、をそれぞれ提供できものである。


【発明の効果】
【0007】
このように、本発明においては、植物由来材料を原料成分としたポリエステル系ポリマーを粘着剤の有効成分として、発泡剤の使用により加熱剥離可能な粘着シートとしたことにより、化石資源の枯渇に影響されず、使用後廃棄処理する場合に植物由来材料を用いているため二酸化炭素を排出してもカーボンニュートラルを実現できる、地球環境にやさしい加熱剥離型粘着シートを提供することができる。

また、この加熱剥離型粘着シートは、上記ポリマーを有効成分とした粘着剤の調製に際し、D相乳化〔水と多価アルコールを含んだ界面活性剤相(D相)に油成分としての上記ポリマーを分散させてO/D型のゲルエマルションとし、このゲルエマルションに水を加えてO/W型のエマルションとする〕などによりエマルション化することが可能であり、これによりVOC(Voratile Organic Compounds)対策も可能で、脱有機溶剤化にも寄与することができる。


【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明におけるポリエステル系ポリマーは、原料成分(モノマー成分)として植物由来のジカルボン酸と植物由来のジオールとを用い、これらの原料成分を縮合重合させることにより得られるものである。重量平均分子量(Mw)は通常0.5万〜15万である。

上記の縮合重合は、常法により、有機溶剤を使用して行ってもよいし、減圧下無溶剤で行ってもよい。ジカルボン酸とジオールとは等モル反応が好ましいが、場合によりどちらかが多いモル数として反応させてもよい。反応に際し、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、三酸化アンチモン、ブチルスズオキシドなどの金属化合物などの適宜の触媒を用いて行うことができる。


【0009】
植物由来のジカルボン酸としては、植物由来であれば特に限定されないが、ヒマシ油由来のセバシン酸やオレイン酸などからつくられるダイマー酸などが挙げられる。このようなジカルボン酸は2種以上を併用することもできる。

また、植物由来のジオールとしては、植物由来であれば特に限定されないが、ヒマシ油から誘導される脂肪酸エステルや、オレイン酸などからつくられるダイマージオールなどが挙げられる。このようなジオールは2種以上を併用することもできる。

なお、植物由来のジカルボン酸と植物由来のジオールとは別に、植物由来でないジカルボン酸やジオールを併用することもできる。ただし、これら植物由来でないジカルボン酸やジオールは、原料成分全体の30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下であるのがよい。


【0010】
本発明においては、上記のポリエステル系ポリマーを粘着剤の有効成分として、これに発泡剤とさらに通常は架橋剤を配合して、粘着剤を調製する。

粘着剤の調製は、有機溶剤を用いて行ってもよいし、無溶剤下で行ってもよい。また、水に乳化分散させたエマルション型の粘着剤としてもよく、乳化分散を容易とするため、D相乳化によるエマルション化を利用してもよい。

D相乳化では、水と多価アルコールを含んだ界面活性剤相(D相)に油成分として上記ポリマーを分散させてO/D型のゲルエマルションとし、このゲルエマルションに水を加えてO/W型のエマルションとする。発泡剤や架橋剤は上記ポリマーと一緒に添加してもよいし、上記エマルションを得たのちに配合してもよい。D相乳化によれば、VOC対策が可能となり、脱有機溶剤化に寄与することができる。


【0011】
発泡剤には、熱膨張性微粒子、特に熱膨張性微小球が好適に用いられる。この熱膨張性微小球としては、公知の熱膨張性微小球から適宜選択できるが、混合操作が容易である点などから、マイクロカプセル化されている発泡剤が好適に用いられる。

このような熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質を弾性を有する殻内に内包させた微小球などが挙げられる。上記の殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。


【0012】
熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えばコアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。熱膨張性微小球には、例えば、商品名「マツモトマイクロスフェア」〔松本油脂製薬(株)製〕などの市販品を使用してもよい。

加熱処理により、熱膨張性粘着層の粘着力を効率良くかつ安定して低下させるために、体積膨張率が5倍以上、なかでも7倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有する熱膨張性徴小球が好ましい。

熱膨張性微小球の粒径は、粘着層の厚さなどに応じて適宜選択できる。熱膨張性微小球の平均粒子径としては、例えば、100μm以下、好ましくは80μm以下、さらに好ましくは10〜50μm、特に1〜30μmの範囲から選択することができる。熱膨張性微小球の粒径の調整は、熱膨張性微小球の生成過程で行われてもよく、生成後、分級などの手投により行われてもよい。


【0013】
なお、本発明においては、上記の熱膨張性微小球と共に、または熱膨張性微小球の代わりに、熱膨張性微小球以外の発泡剤を用いることもできる。

このような発泡剤としては、種々の無機系発泡剤や有機系発泡剤など各種発泡剤を適宜選択して使用することができる。

無機系発泡剤の代表的な例としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類などを挙げることができる。


【0014】
有機系発泡剤の代表的な例としては、例えば、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどの塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホニルヒドラジド、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物;p−トルイレンスルホニリレセミカルバジド、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物;5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物;N,N′−ジニトロソペンタメテレンテロラミン、N,N′−ジニトロソテレフタルアミドなどのN−ニトロソ系化合物などが挙げられる。


【0015】
発泡剤の量は、ポリエステル系ポリマー100重量部に対し、5〜60重量部,好ましくは5〜40重量部、さらには5〜15重量部が好ましい。

発泡剤が多すぎると、加熱発泡させた際に被着体と粘着層界面が剥離するだけでなく基材との間にも剥離が起きてしまう。また、発泡剤が少なすぎると、加熱発泡後も粘着力の低下が起きず、被着体から容易に剥がすことができない。


【0016】
架橋剤には、ポリエステル系ポリマーの分子内に含まれる官能基(カルボキシル基、水酸基など)と反応して上記ポリマーを架橋構造化しうる多官能性化合物が用いられる。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。

ポリイソシアネート化合物としては、ブチレンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類、トリメテロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物やヘキサメチレンシジイソシアネート付加物などのイソシアネート付加物などが挙げられる。これらの架橋剤は、2種以上を併用してもよい。


【0017】
架橋剤の種類および配合量は任意であるが、粘着層のゲル分率が40〜85%、好ましくは50〜75%となるように配合するのが好ましい。

ゲル分率が低すぎると、加熱発泡後も粘着力が高く剥離が困難となる。また、ゲル分率が高すぎると、初期粘着力が低く加熱前に剥がれが発生しやすくなる。


【0018】
本発明においては、上記のように調製される粘着剤を基材上に塗布し、必要により乾燥させることにより、基材の少なくとも一方の面に粘着層を有し、この粘着層中に発泡剤が含まれている加熱剥離型粘着シートとする。

粘着層の厚さは、適宜設定できるが、通常10〜50μm、好ましくは20〜40μmの範囲とするのがよい。なお、この粘着層を加熱発泡する際に粘着層と基材層の間で剥離してしまうことがあるため、必要に応じて基材と発泡剤を含む粘着層との間に発泡剤を含まない別の粘着層を設けるようにしてもよい。


【0019】
基材としては、例えば、紙などの紙系基材;織布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体〔特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルムまたはシート同士の積層体など〕などの適宜の薄葉体が用いられる。

これらの中でも、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。また、粘着層の加熱処理温度で溶融しない耐熱性に優れるものが、加熱後の取扱性などの点より好ましい。


【0020】
プラスチック系基材における素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンープロピレン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)などのα−オレフインをモノマー成分とするオレフイン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフイド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)などのアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。

なお、このようなプラスチック系基材を使用する場合、延伸処理などにより伸び率などの変形性を適宜制御しておくことができる。


【0021】
基材の厚さは、基材の強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択することができる。一般的には、1,000μm以下(例えば、1〜1,000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm、特に好ましくは5〜250μm程度であるが、これらに限定されない。

基材の表面は、基材上に形成される粘着層との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的方法による酸化処理などが施されていてもよく、また下塗り剤によるコーティング処理などが施されていてもよい。


【0022】
本発明の加熱剥離型粘着シートは、基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着層中に発泡剤が含まれており、粘着層のゲル分率が前記の範囲内に設定されていることにより、被着体に対する初期粘着力が2N/20mm以上という良好な粘着力を示すと共に、加熱により上記発泡剤が発泡し膨張して被着体に対する粘着力が大きく低下する、つまり加熱発泡後(160℃,1分)の粘着力が0.3N/20mm以下にまで低下する性質を有し、これにより被着体から容易に剥離除去することができる。

また、このように剥離除去された粘着シートは、粘着層が植物由来材料からなるため、これを廃棄処理した場合に二酸化炭素を排出してもカーボンニュートラルを実現でき地球環境に悪影響を及ぼすおそれの少ないものである。


【実施例】
【0023】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味するものとする。

また、ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量、粘着層のゲル分率および加熱剥離型粘着シートの粘着力は、下記の方法により、評価したものである。


【0024】
<重量平均分子量>
ポリエステル系ポリマー0.01gを秤量し、テトラヒドロフラン(THF)10gに添加後、24時間放置し溶解した。この溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製のHLC−8220GPC)により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。測定条件は、下記のとおりである。

カラム:G6000H6
カラムサイズ:7.5mm 7ID×30.0cmL
溶離液:THF
流量:0.300ml/分
検出器:RI
カラム温度:40℃
注入量:20μl


【0025】
<ゲル分率>
測定片として発泡剤を配合せずにその他は各実施例および比較例と同様のサンプルを作製した厚さ50μmのシートを5cm×5cm角に切り出した。

切り出したサンプルを、重さがわかっているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートで包み重量を秤量し、トルエン中に23℃で7日間放置して、サンプル中のゾル分を抽出した。その後、130℃で2時間乾燥し、乾燥後の重量を秤量した。ゲル分率は、下記の式にて算出した。

ゲル分率(%)=〔(乾燥後の重量−PTFEシート重量)/(乾燥前の重量−PTFEシート重量)〕×100


【0026】
<粘着力>
加熱剥離型粘着シート(幅20mmにカット)の粘着面に厚さ25μmのポリエステルフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS−10」)を2kgローラー1往復にて貼着させ、引張圧縮試験機(ミネベア社製「TG−1kN」)にて、発泡前および発泡後の180°ピール接着力(粘着力)(N/20mm)(剥離速度:300mm/分、温度:23±2℃、湿度:65±5%RH、ポリエステルフィルムを剥離する)を測定した。なお、発泡時の加熱処理は、160℃のホットプレートで1分間行った。


【0027】
実施例1
三つ口セパラブルフラスコに撹拌機、温度計、真空ポンプを付し、これにダイマー酸(商品名「プリポール1009」Mw567 ユニケマ社製)108g、ダイマージオール(商品名「プリポール2033」Mw537 ユニケマ社製)105.6g、触媒としてジ−n−ブチルスズオキシド(キシダ化学社製)0.46gを仕込み、減圧雰囲気で撹拌しながら180℃まで昇温し、この温度を保持した。約12時間反応を続けてポリエステル系ポリマーを得た。重量平均分子量Mwは3.6万であった。


【0028】
このポリエステル系ポリマー100部に、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「TPA−100」、旭化成ケミカルズ社製)2.5部、発泡剤(商品名「マツモトマイクロスフェアー F−80SD」、松本油脂社製)10部を配合し、粘着剤を調製した。これをポリエチレンテレフタレート(PET)シート基材に塗布し、100℃で3分乾燥させた。乾燥後、剥離処理を施したPETシートの剥離処理面を貼り合わせ、エージングを50℃で5日間実施し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この粘着シートに関し、エージング終了後、粘着層のゲル分率を測定したところ、ゲル分率は40%であった。未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は5.7N/20mmであった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.05N/20mmであった。


【0029】
実施例2
架橋剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し4部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートに関し、エージング終了後、粘着層のゲル分率を測定したところ、ゲル分率は75%であった。未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は3.9N/20mmであった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.02N/20mmであった。


【0030】
実施例3
架橋剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し6部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートに関し、エージング終了後、粘着層のゲル分率を測定したところ、ゲル分率は85%であった。未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は2.2N/20mmであった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.05N/20mmであった。


【0031】
実施例4
発泡剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し5部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートの未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は3.8N/20mmであった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.02N/20mmであった。


【0032】
実施例5
発泡剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し30部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートの未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は3.0N/20mmであった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.02N/20mmであった。


【0033】
実施例6
発泡剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し50部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートの未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は2.25N/20mmであった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.02N/20mmであった。


【0034】
比較例1
架橋剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し2部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートに関し、エージング終了後、粘着層のゲル分率を測定したところ、ゲル分率は35%であった。未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は7.5N/20mmであった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.6N/20mmであった。加熱発泡後の粘着力が高く、剥離が難しかった。


【0035】
比較例2
架橋剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し8部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートに関し、エージング終了後、粘着層のゲル分率を測定したところ、ゲル分率は90%であった。未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は0.7N/20mmであった。初期の粘着力が低すぎ、被着体を保持することが困難であった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.02N/20mmであった。


【0036】
比較例3
発泡剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し3部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートの未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は3.8N/20mmであった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.6N/20mmであった。加熱発泡後の粘着力が高く、剥離が難しかった。


【0037】
比較例4
発泡剤の配合量をポリエステル系ポリマー100部に対し70部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、加熱剥離型粘着シートを作製した。

この加熱剥離型粘着シートの未加熱未発泡状態での初期の180°ピール粘着力は1.8N/20mmであった。初期の粘着力が低すぎ、被着体を保持することが困難であった。また、160℃のホットプレートで1分加熱後の発泡状態での180°ピール粘着力は0.02N/20mmであった。


【0038】
以上の実施例1〜6および比較例1〜4の各加熱剥離型粘着シートに関して、粘着層のゲル分率および発泡剤量(ポリエステル系ポリマー100部あたりの部数)と共に、加熱前粘着力(初期粘着力)および加熱後粘着力(加熱発泡後の粘着力)を、下記の表1にまとめて示した。


【0039】
【表1】

【0040】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜6の各加熱剥離型粘着シートは、初期粘着力が高く、かつ加熱発泡後の粘着力が低く容易に剥離することができる。これに対して、比較例1〜4の各加熱剥離型粘着シートは、初期粘着力が低すぎるか、加熱発泡後の粘着力が高すぎ、両特性を共に満足させることができない。

また、実施例1〜6の各加熱剥離型粘着シートは、上記優れた特性に加えて、粘着層が植物由来であるため、焼却処理してもCO2 の増加の抑制を期待できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に、植物由来のジカルボン酸と植物由来のジオールとを縮合重合させて得られるポリエステル系ポリマーを用いた粘着層を有し、この粘着層中に発泡剤が含まれており、初期粘着力が2N/20mm以上、加熱発泡後(160℃,1分)の粘着力が0.3N/20mm以下であることを特徴とする加熱剥離型粘着シート。


【請求項2】
粘着層のゲル分率が40〜85%である請求項1に記載の加熱剥離型粘着シート。


【請求項3】
発泡剤が熱膨張性微粒子である請求項1または2に記載の加熱剥離型粘着シート。


【請求項4】
粘着層中に、ポリエステル系ポリマー100重量部あたり、発泡剤が5〜60重量部含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の加熱剥離型粘着シート。




【公開番号】特開2009−256522(P2009−256522A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109680(P2008−109680)
【出願日】平成20年4月19日(2008.4.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】