説明

加熱定着装置

【課題】効率よく記録媒体を加熱する。
【解決手段】加熱定着装置1は、加熱ベルト10と、加圧ローラ20と、放射指向性をもつグラファイトヒータ31及びガラス管32を含む発熱ユニット30と、反射鏡40とを有する。加熱ベルト10のニップ部を形成する領域を含む第1領域A1が、グラファイトヒータ31の放射面31bからの赤外線放射によって加熱される。ニップ部を形成する領域を含む第1領域A1よりも上流にある第2領域B1が、グラファイトヒータ31の放射面31aからの赤外線放射によって加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイトヒータなどの炭素系抵抗発熱体を用いた加熱定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱定着装置として、従来より内部にヒータを備えた熱ローラを用いる定着ローラ方式のものが広く用いられている。しかしこの定着ローラ方式の加熱定着装置は、熱容量の大きな定着ローラを加熱する必要があるため、省エネルギーの観点で問題があり、また立ち上がりに時間がかかるという問題があった。
以上のような観点から、装置のクイックスタートを実現するため、熱源にハロゲンヒータを用いた加熱定着装置が提案され実用化されているが、ハロゲンヒータは、冷却状態では低抵抗の為、装置の起動時の突入電流が大きく、装置の電源設計が複雑化する等の問題があった。
上記のような状況を踏まえ、複写機、プリンタなどの画像形成装置において、トナーを加熱により紙などの記録材に定着させる加熱定着装置の熱源として、従来より暖房装置の熱源として用いられている、グラファイトヒータ又はカーボンヒータなどの炭素系抵抗発熱体を用いる試みがなされている。
【0003】
炭素系抵抗発熱体は一般的に発熱体の長手方向に直行する断面が長方形で、2方向への放射指向性を有している。そのため、放射強度のピーク方向をトナーの定着が行われるニップ部に合わせることにより、放射指向性を有しないものと比べて優れた加熱効率を得ることができる。特に特許文献1に開示された画像定着装置は、放射指向性を有する板状の炭素系抵抗発熱体と、炭素系抵抗発熱体からの赤外線放射を反射させる反射部とを組み合わせて用い、紙と接触してこれを加熱する回転体の狭い範囲に赤外線放射を集中させることによって、回転体を介した紙の加熱効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−33240号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、発熱体の一方の面から放射された赤外線をダイレクトにトナーの定着が行われるニップ部に向かうようにするとともに、発熱体の他方の面から放射された赤外線を上記のニップ部に局所限定して反射させる反射部が設けられている。そのため、反射部によって反射される赤外線の一部が発熱体自身に照射されることになり、放射される赤外線を効率よく利用できない。
【0006】
本発明の目的は、記録材上に形成された未定着像を効率よく加熱定着することが可能な、放射指向性を有する板状の炭素系抵抗発熱体を用いた加熱定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱定着装置は、記録材に形成された未定着像を定着するための少なくとも2方向に高い放射強度を有する第1及び第2の放射面をもつ炭素系抵抗発熱体を備えた加熱体と、前記加熱体とニップ部を形成して前記未定着像を記録材に押圧する加圧体と、前記加熱体に内包され、前記炭素系抵抗発熱体からの赤外線放射の少なくとも一部を前記加熱体の内面に向けて反射する反射部とを備えており、前記加熱体の前記ニップ部を形成する領域を含む第1領域が、前記炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱され、前記加熱体の前記炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱される部分以外の所定の第2領域が、前記炭素系抵抗発熱体の第2の放射面から放射され、前記反射部で反射された赤外線によって加熱されるように、なされている。また、本発明の加熱定着装置は、第1回転体と、前記第1回転体とは逆方向に回転可能で、前記第1回転体との間に記録材のニップ部を形成する第2回転体と、少なくとも2方向に高い放射強度を有する第1及び第2の放射面をもつ炭素系抵抗発熱体、及び、前記炭素系抵抗発熱体を内包する被覆体を含み、前記第1回転体の回転軸方向に延在した直線形状を有すると共に、前記第1回転体に内包された発熱ユニットと、前記第1回転体に内包され、前記炭素系抵抗発熱体からの赤外線放射の少なくとも一部を前記第1回転体の内面に向けて反射する反射部とを備えており、前記第1回転体のニップ部を形成する領域を含む第1領域が、前記炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱され、前記第1回転体の前記炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱される第1領域以外の所定の第2領域が、前記炭素系抵抗発熱体の第2の放射面からの赤外線放射によって加熱されるように、前記発熱ユニット及び前記反射部が設けられている。
【0008】
本発明によると、ニップ部を形成する領域を含む第1領域が炭素系抵抗発熱体の第1面からの赤外線放射によって加熱され、ニップ部を形成する領域を含む第1領域以外の第2領域が炭素系抵抗発熱体の第2面からの赤外線放射によって加熱される。そして、第2面からの赤外線放射を反射部により反射させて効率よく第2領域の温度上昇を促進することができ、記録材がニップ部を通過する際にはニップ部の温度を十分に上昇させることができて、効率よく記録材を加熱することが可能となる。その結果、加熱定着装置の省電力駆動が可能となる。
【0009】
なお、第1領域及び第2領域は加熱体あるいは第1回転体及び加圧体あるいは第2回転体の外に固定された固定座標系において加熱体あるいは第1回転体と共に回転するのではなく、固定座標系において加熱体あるいは第1回転体上の固定された位置にある領域を意味している。
【0010】
前記第2領域は、前記回転方向に関して前記第1領域よりも上流に位置していることが好ましい。これによって、下流側の第1領域を効率的に加熱することが可能となって、より効率よく記録材を加熱することが可能となる。
【0011】
前記第2領域が前記第1領域と連続していることが好ましい。これによって、より効率よく記録材を加熱することが可能となる。
【0012】
前記炭素系抵抗発熱体の前記第1面からの赤外線放射が前記反射鏡に向けて出射され前記反射鏡で反射して前記ニップ部を形成する領域を含む第1領域に向かい、前記第2面からの赤外線放射が前記反射鏡に向けて出射され前記反射鏡で反射して前記ニップ部を形成する領域を含む第1領域以外の第2領域に向かってもよい。
【0013】
前記第1回転体に内包され且つ少なくとも前記第1領域に接触又は近接しており、前記炭素系抵抗発熱体からの赤外線放射が照射される、前記第1回転体よりも熱容量が大きい定着補助部材をさらに備えていることが好ましい。これによって、より効率よく記録材を加熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、少なくとも2方向に高い放射強度を有する第1及び第2の放射面をもつ炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱体のニップ部を形成する領域を含む第1領域を加熱するとともに、第2の放射面からの赤外線放射によって上記の第1領域より上流側の第2領域を加熱することにより、記録材がニップ部を通過する際にはニップ部の温度を十分に上昇させることができて、効率よく記録材を加熱することが可能となる。その結果、加熱定着装置の省電力駆動が可能となる。また本発明の加熱定着装置は、例えばオンデマンド高速カラープリンタなどに搭載可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加熱定着装置の平面図である。
【図2】図1に示す加熱定着装置の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る加熱定着装置の断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る加熱定着装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る加熱定着装置は、記録材としての用紙Pに未定着像を形成する画像形成装置に含まれている。図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る加熱定着装置1は、加熱体あるいは第1回転体としての可撓性を有する円筒形の加熱ベルト10と、加熱ベルト10の下方に配置された加圧体あるいは第2回転体としての加圧ローラ20と、加熱ベルト10に内包された発熱体ユニット30とを含んでいる。また、後述するように、加熱ベルト10には、発熱体ユニット30のほかに、凹面を有する反射部40と、定着補助部材(吸熱部材)としての弧状片50とが内包されている。加熱定着装置1内の部材は、どれも用紙Pの幅よりも長く形成されている。なお、図1において、加熱ベルト10内にあって実際には見えない発熱体ユニット30を実線で示している。
【0018】
加熱ベルト10は、樹脂薄層または金属薄層あるいはその積層体層からなる。加圧ローラ20の表面は、耐熱性ゴムからなる。加圧ローラ20は、モータ及びギア類を含む図示しない駆動機構によって、シャフト21の周りを図2において反時計回りに回転駆動させられる。加熱ベルト10の最下点が加圧ローラ20の最上点と接触することによって、画像が形成される用紙Pの定着領域(ニップ部、中心点X)(図2の紙面に直交する方向)が形成されている。加圧ローラ20は、ニップ部において用紙Pに適切な圧力が加えられるように、弾性部材を含む図示しない付勢機構によって上方に付勢されている。そのため、加圧ローラ20からの回転力を受けた加熱ベルト10は時計回りに従動回転する。本実施の形態に係る加熱定着装置1は、加熱ベルト10と加圧ローラ20との接触圧、及び、発熱体ユニット30からの熱によって、用紙Pにトナーを定着させるものである。
【0019】
用紙Pは、図示しない搬送機構によって、図1中、左方へと搬送される。ニップ部に到達する前において、用紙Pの上面には、図示しない感光体ドラムから転写されたトナーの画像パターンが未定着の状態で付着している。
【0020】
加熱ベルト10に内包された発熱体ユニット30は、シート状の両面に高い放射強度を有する第1及び第2の放射面を持つ炭素系抵抗発熱体であるグラファイトヒータ31、及び、グラファイトヒータ31を内包する被覆体である筒状で透明のガラス管32を含んでいる。発熱体ユニット30は、加熱ベルト10の回転軸方向、すなわち図1紙面における上下方向(図2紙面に直交する方向)に延在した直線形状を有する。ガラス管32の中心軸は、加熱ベルト10の中心つまり回転軸よりもやや下方にある。
【0021】
グラファイトヒータ31は、通電時に赤外線を放射する。グラファイトヒータ31は、その中心がガラス管32の中心軸を通過するように水平に延在している。したがって、グラファイトヒータ31の両方の放射面31a、31bが水平面であり、一方の放射面(第2の放射面)31aが上方を向いており、他方の放射面(第1の放射面)31bが下方を向いている。このように、発熱体ユニット30は、加熱ベルト10の中心を通過する鉛直面に対して線対称に配置されている。
【0022】
グラファイトヒータ31の放射面31aから放射される赤外線は、指向性を有している。具体的には、放射される赤外線の強度は、グラファイトヒータ31の中心から真上に向かう方向で最も強く、そこから左右に離れるに連れて弱くなっており、グラファイトヒータ31から水平方向に放射される赤外線強度は非常に弱くなっている。グラファイトヒータ31の放射面31bから放射される赤外線についても、これと同様の指向性を有している。グラファイトヒータ31は、放射面31a及び放射面31bから互いに同じ量の赤外線を放射する。
【0023】
本実施の形態において、ニップ部の中心点Xを含む加熱ベルト10の第1領域A1が、グラファイトヒータ31の放射面(第1の放射面)31bから放射される赤外線によってニップ部を形成する領域を含む第1領域A1に対応して設けられた定着補助部材(吸熱部材)である弧状片50を介して加熱される。
【0024】
弧状片50は、加熱ベルト10の内面に沿うように、ニップ部を形成する領域を含む第1領域A1と略同じ領域範囲に形成されている。そして、弧状片50の外周面は、加熱ベルト10の回転を妨げることが無い程度の当接圧で第1領域A1に接触(又は加熱ベルト10と熱的に結合されるように近接)している。したがって、弧状片50には放射面(第1の放射面)31bから放射される赤外線が照射され、それによって弧状片50が蓄熱される。弧状片50は、加熱ベルト10よりも熱容量が大きい材料からなる。そのため、弧状片50を設けることにより、ニップ部を形成する領域を含む第1領域A1における蓄熱量を比較的大きくしやすい。
【0025】
本実施の形態において、放射面31bから放射される赤外線の大部分が実質的にニップ部を形成する領域を含む第1領域A1に設けられた弧状片50に照射される。
【0026】
反射部40は、グラファイトヒータ31の一方の放射面(第2の放射面)31aからの赤外線放射の大部分を実質的に加熱ベルト10の内面一側方に向けて反射することができるような形状を有している。反射部40で反射した赤外線は、予備加熱領域(第2領域)B1に照射される。予備加熱領域(第2領域)B1は、加熱ベルト10の回転方向に関してニップ部を形成する領域を含む第1領域A1よりも上流にあって第1領域A1と連続している。
【0027】
本実施の形態において、予備加熱領域(第2領域)B1の上流端は、加熱ベルト10の回転方向に関して、加熱ベルト10においてニップ部の中心点Xに対向する対向点Yよりも下流で且つ加熱ベルト10の中心を基準として回転方向に関して対向点Yから90°の位置にある中間点Zよりも上流にある。
【0028】
なお、第1領域A1の上流側と、予備加熱領域(第2領域)B1の下流側とが重なるように成してもよい。
【0029】
上述したように、グラファイトヒータ31に通電が行われることで加熱ベルト10のニップ部を形成する領域を含む第1領域A1が放射面31bからの赤外線放射によって加熱されると共に第1領域A1の上流側の予備加熱領域(第2領域)B1が放射面31aからの赤外線放射によって加熱される。このとき、放射面31aから放射され反射部によって反射される赤外線の全てが第1領域A1の上流側の予備加熱領域(第2領域)B1に照射されることになり、放射面31aから放射される赤外線を効率よく利用することができる。したがって、放射面31aからの赤外線放射を集中させて予備加熱領域(第2領域)B1の温度上昇を促進することができる。さらに、加熱ベルト10の或る部位に着目した場合、その部位は予備加熱領域(第2領域)B1となってから加熱ベルト10の回転に伴って次にニップ部を形成する領域を含む第1領域A1となるので、用紙Pがニップ部を通過する際にはニップ部の温度を十分に上昇させることができる。このように、放射面31bからの赤外線放射と放射面31aからの赤外線放射とでニップ部を形成する領域を含む第1領域A1及び予備加熱領域(第2領域)B1をそれぞれ個別に加熱することによって、用紙Pがニップ部を形成する領域に進入したときに効率よく用紙Pを加熱してトナーを用紙Pに定着させることが可能となる。その結果、加熱定着装置1の省電力駆動が可能となる。
【0030】
また、本実施の形態では、予備加熱領域(第2領域)B1の上流端が対向点Yよりも下流にあってしかも対向点Yよりも中間点Zよりも上流に達しているので、予備加熱領域(第2領域)が中間点Zの上流に達していない場合と比較して予備加熱領域(第2領域)B1を十分に加熱することが可能となって、効率よく用紙Pを加熱することが可能となっている。尚、加熱ベルト10の熱吸収・放伝達特性により、予備加熱領域(第2領域)B1の上流端が中間点Zよりも下流側に位置するように成して、狭い領域とした予備加熱領域(第2領域)B1を放射面31aからの赤外線放射で集中的に加熱するようにしてもよい。
【0031】
また、グラファイトヒータ31は、2つの放射面31a、31bから互いに同じ量の赤外線を放射するので、発熱体ユニット30の取り付け作業時に作業員は2つの放射面31a、31bの違いを意識せずに済む。したがって、発熱体ユニット30の取り付け作業を容易にすることができる。
【0032】
さらに、予備加熱領域(第2領域)B1がニップ部を含む第1領域A1と連続しているので、グラファイトヒータ31によって一旦昇温した加熱ベルト10の個所が加熱されない期間が設けられなくなって、より効率よく用紙Pを加熱することが可能となっている。
【0033】
加えて、加熱定着装置1がニップ部を形成する領域を含む第1領域A1に接触し且つ加熱ベルト10よりも熱容量が大きい弧状片50を含んでいるために、稼動開始からある程度の時間が経過した後には用紙Pへの熱供給が安定して行われるようになる。その結果、より効率よく用紙Pを加熱することが可能となる。
【0034】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る加熱定着装置101を、主に第1の実施の形態との相違点について図3を参照して説明する。本実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付けてその説明を省略する。
【0035】
図3に描かれているように、本実施の形態の加熱定着装置101において、加熱ベルト10に内包された発熱体ユニット130は、そのガラス管132の中心軸が加熱ベルト10の中心の右斜め下に位置するように配置されている。そして、第1の実施の形態におけるグラファイトヒータ31と同じ形状を有するグラファイトヒータ131は、その中心がガラス管132の中心軸を通過するように且つ上端が下端よりも内側に位置するように斜めに延在している。したがって、グラファイトヒータ131の両方の放射面131a、131bが傾斜面であり、一方の放射面131aが外向きに斜め上方を向いており、他方の放射面131bが内向きに斜め下方を向いており、一方の放射面131aの赤外線放射方向が対向点Yよりも下流側となり、他方の放射面131bの赤外線放射方向がニップ部の中心点Xより下流側となるように構成している。
【0036】
反射部140は、グラファイトヒータ131の放射面131aからの赤外線放射の一部を加熱ベルト10の内面に向けて反射することができるような形状の凹部140aと、放射面131bからの赤外線放射の一部を加熱ベルト10の内面に向けて反射することができるような形状の凹部140bとを有している。2つの凹部140a、140b同士は、互いに接続されている。凹部140aで反射した赤外線は予備加熱領域(第2領域)B2に照射され、凹部140bで反射した赤外線はニップ部を形成する領域を含む第1領域A2に位置する弧状片50に照射される。
【0037】
本実施の形態において、ニップ部の中心点Xを含む加熱ベルト10の第1領域A2が、グラファイトヒータ131の放射面131bから放射される赤外線によって弧状片50を介して加熱される。ニップ部を形成する領域を含む領域A2は、第1の実施の形態におけるニップ部を形成する領域を含む領域A1と同様の範囲に相当する。本実施の形態において、放射面131bから放射される赤外線の大部分がダイレクトに又放射面131bから放射される赤外線の残りの分が凹部140bで反射して共に弧状片50に照射される。
【0038】
予備加熱領域(第2領域)B2は、加熱ベルト10の回転方向に関してニップ部を含む第1領域A2よりも上流にあって第1領域A2と連続している。本実施の形態において、放射面131aから放射される赤外線の大部分がダイレクトに又放射面131aから放射される赤外線の残りの分が凹部140aで反射して共に予備加熱領域(第2領域)B2に照射される。予備加熱領域(第2領域)B2の上流端は、加熱ベルト10の回転方向に関して、対向点Yよりも下流で且つ中間点Zよりも上流にある。
【0039】
上述したように、グラファイトヒータ131に通電が行われることで加熱ベルト10のニップ部を形成する領域を含む第1領域A2が放射面131bからの赤外線放射によって加熱されると共に予備加熱領域(第2領域)B2が放射面131aからの赤外線放射によって加熱される。このとき、放射面131aから放射される赤外線の全てが第1領域A2の上流側の予備加熱領域(第2領域)B2に照射されることになり、放射面131bから放射される赤外線を効率よく利用することができる。したがって、放射面131aからの赤外線放射を集中させて予備加熱領域(第2領域)B2の温度上昇を促進することができる。さらに、加熱ベルト10の或る部位に着目した場合、その部位は予備加熱領域(第2領域)B2となってから加熱ベルト10の回転に伴って次にニップ部を形成する領域を含む第1領域A2となるので、用紙Pがニップ部を通過する際にはニップ部の温度を十分に上昇させることができる。このように、加熱ベルト10に予備加熱領域(第2領域)B2を設けると共に放射面131bからの赤外線放射と放射面131aからの赤外線放射とでニップ部を含む第1領域A2及び予備加熱領域(第2領域)B2をそれぞれ個別に加熱することによって、用紙Pがニップ部に進入したときに効率よく用紙Pを加熱してトナーを用紙Pに定着させることが可能となる。その結果、加熱定着装置101の省電力駆動が可能となる。更に、一方の放射面131aの赤外線放射方向が対向点Yより下流側となり、他方の放射面131bの赤外線放射方向がニップ部の中心点Xよりも下流側となるように構成しているため、第1の実施の形態に比して、予備加熱領域(第2領域)B2をより効果良く加熱することが出来る。その他、本実施の形態によると、第1の実施の形態と同様の技術的効果を得ることができる。その他、本実施の形態によると、第1の実施の形態と同様の技術的効果を得ることができる。
【0040】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る加熱定着装置201を、主に第1の実施の形態との相違点について図4を参照して説明する。本実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付けてその説明を省略する。
【0041】
図4に描かれているように、本実施の形態の加熱定着装置201において、加熱ベルト10に内包された発熱体ユニット230は、第2の実施の形態と同様にそのガラス管232の中心軸が加熱ベルト10の中心の右斜め下に位置するように配置されている。そして、第1の実施の形態におけるグラファイトヒータ131と同じ形状を有するグラファイトヒータ231は、その中心がガラス管232の中心軸を通過するように且つ上端が下端よりも内側に位置するように斜めに延在している。したがって、グラファイトヒータ231の両方の放射面231a、231bが傾斜面であり、一方の放射面231aが外向きに斜め上方を向いており、他方の放射面231bが内向きに斜め下方を向いており、一方の放射面231aの赤外線放射方向が対向点Yより下流側となり、他方の放射面231bの赤外線放射方向がニップ部の中心点Xよりも下流側となるように構成している。
【0042】
反射鏡240は、グラファイトヒータ231の放射面231aからの赤外線放射の一部を加熱ベルト10の内面に向けて反射することができるような形状の凹部140aと、放射面231bからの赤外線放射の一部を加熱ベルト10の内面に向けて反射することができるような形状の凹部240bとを有している。2つの凹部240a、240b同士は、分離して別体となっている。凹部240aで反射した赤外線及び凹部240bで反射した赤外線は、共に弧状片250に照射される。本実施の形態において、弧状片250は、後述するニップ部を形成する領域を含む第1領域A3と予備加熱領域(第2領域)B3とを合わせたのと同じ範囲に、加熱ベルト10の内面に沿って配置されている。
【0043】
本実施の形態において、ニップ部の中心点Xを含む加熱ベルト10の第1領域A3が、グラファイトヒータ231の放射面231bから放射される赤外線によって弧状片250を介して加熱される。ニップ領域A3は、第1の実施の形態におけるニップ領域A1と同様の範囲に相当する。本実施の形態において、放射面231bから放射される赤外線の大部分がダイレクトに又放射面231bから放射される赤外線の残りの分が凹部240bで反射して共に弧状片250の下流領域に照射される。
【0044】
加熱ベルト10の回転方向に関してニップ部を形成する領域を含む第1領域A3よりも上流にあって第1領域A3と連続した予備加熱領域(第2領域)B3は、グラファイトヒータ231の放射面231aから放射される赤外線によって弧状片250を介して加熱される。本実施の形態において、放射面231aから放射される赤外線の大部分がダイレクトに又放射面231aから放射される赤外線の残りの分が凹部240aで反射して共に弧状片250の上流領域に照射される。予備加熱領域(第2領域)B3の上流端は、加熱ベルト10の回転方向に関して、対向点Yよりも下流で且つ中間点Zよりも上流にある。
【0045】
上述したように、グラファイトヒータ231に通電が行われることで加熱ベルト10のニップ部を形成する領域を含む第1領域A3が放射面231bからの赤外線放射によって加熱されると共に予備加熱領域(第2領域)B3が放射面231aからの赤外線放射によって加熱される。このとき、放射面231aから照射されると共に反射部240aによって反射される赤外線の全てがニップ部を含む第1領域A3の上流側の予備加熱領域(第2領域)B3に照射されることになり、放射面231aから出射される赤外線を効率よく利用することができる。したがって、放射面231aからの赤外線放射を集中させて予備加熱領域(第2領域)B3の温度上昇を促進することができる。さらに、加熱ベルト10の或る部位に着目した場合、その部位は予備加熱領域(第2領域)B3となってから加熱ベルト10の回転に伴って次にニップ部となるので、用紙Pがニップ部を通過する際にはニップ部の温度を十分に上昇させることができる。このように、加熱ベルト10に予備加熱領域(第2領域)B3を設けると共に放射面231bからの赤外線放射と放射面231aからの赤外線放射とでニップ部を含む第1領域A3及び予備加熱領域(第2領域)B3をそれぞれ個別に加熱することによって、用紙Pがニップ部の中心点Xに進入したときに効率よく用紙Pを加熱してトナーを用紙Pに定着させることが可能となる。その結果、加熱定着装置201の省電力駆動が可能となる。更に、一方の放射面231aの赤外線放射方向が対向点Yより下流側となり、他方の放射面231bの赤外線放射方向がニップ部の中心点Xよりも下流側となるように構成しているため、第1の実施の形態に比して、予備加熱領域(第2領域)B3をより効果良く加熱することが出来る。その他、本実施の形態によると、第1の実施の形態と同様の技術的効果を得ることができる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更を上述の実施の形態に施すことが可能である。例えば、上述した実施の形態では炭素系抵抗発熱体としてグラファイトヒータを用いているが、カーボンヒータなどのそのほかの炭素系抵抗発熱体を用いることも可能である。また、上述した実施の形態では炭素系抵抗発熱体としてシート形状を有するものを用いているが、本発明において炭素系抵抗発熱体として少なくとも2方向に高い照射強度を有する第1及び第2の放射面をもつ任意の形状を有するものを用いてもよい。
【0047】
第1回転体としては、上述した実施の形態のような加熱ベルトに限らず、ローラ型のものを用いてもよい。上述した実施の形態では定着補助部材である弧状片を用いているが、これを用いなくてもよい。また、発熱体ユニットが複数の炭素系抵抗発熱体を有していてもよい。この場合、複数の炭素系抵抗発熱体の少なくとも1つの面がニップ部を含む第1領域を加熱し、他の少なくとも1つの面がその上流側の予備加熱領域(第2領域)を加熱すればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 加熱定着装置
10 加熱ベルト(加熱体、第1回転体)
20 加圧ローラ(加圧体、第2回転体)
21 シャフト
30 発熱体ユニット
31 グラファイトヒータ
31a、31b 放射面
32 ガラス管
40 反射鏡
50 弧状片(定着補助部材)
X ニップ部中心点
A1 ニップ部を含む第1領域
B1 予備加熱領域(第2領域)
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に形成された未定着像を定着するための少なくとも2方向に高い放射強度を有する第1及び第2の放射面をもつ炭素系抵抗発熱体を備えた加熱体と、
前記加熱体とニップ部を形成して前記未定着像を記録材に押圧する加圧体と、
前記加熱体に内包され、前記炭素系抵抗発熱体からの赤外線放射の少なくとも一部を前記加熱体の内面に向けて反射する反射部とを備えており、
前記加熱体の前記ニップ部を形成する領域を含む第1領域が、前記炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱され、
前記加熱体の前記炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱される部分以外の所定の第2領域が、前記炭素系抵抗発熱体の第2の放射面からの赤外線放射によって加熱されるように、前記反射部が設けられていることを特徴とする加熱定着装置。
【請求項2】
第1回転体と、
前記第1回転体とは逆方向に回転可能で、前記第1回転体との間に記録材のニップ部を形成する第2回転体と、
少なくとも2方向に高い放射強度を有する第1及び第2の放射面をもつ炭素系抵抗発熱体、及び、前記炭素系抵抗発熱体を内包する被覆体を含み、前記第1回転体の回転軸方向に延在した直線形状を有すると共に、前記第1回転体に内包された発熱ユニットと、
前記第1回転体に内包され、前記炭素系抵抗発熱体からの赤外線放射の少なくとも一部を前記第1回転体の内面に向けて反射する反射部とを備えており、
前記第1回転体のニップ部を形成する領域を含む第1領域が、前記炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱され、
前記第1回転体の前記炭素系抵抗発熱体の第1の放射面からの赤外線放射によって加熱される第1領域以外の所定の第2領域が、前記炭素系抵抗発熱体の第2の放射面からの赤外線放射によって加熱されるように、前記発熱ユニット及び前記反射部が設けられていることを特徴とする加熱定着装置。
【請求項3】
前記第1領域が前記第2領域の下流側に位置していることを特徴とする請求項2に記載の加熱定着装置。
【請求項4】
前記第1領域が前記第2領域と連続していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱定着装置。
【請求項5】
前記炭素系抵抗発熱体の前記第1面からの赤外線放射が前記反射部に向けて出射され前記反射部で反射して前記第1領域に向かい、前記第2面からの赤外線放射が前記反射部に向けて出射され前記反射部で反射して前記第2領域に向かうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱定着装置。
【請求項6】
前記第1回転体に内包され且つ少なくとも前記第1領域に接触又は近接しており、前記炭素系抵抗発熱体からの赤外線放射が照射される、前記第1回転体よりも熱容量が大きい定着補助部材をさらに備えていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の加熱定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−48214(P2011−48214A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197623(P2009−197623)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(593122789)ユーテック株式会社 (118)
【Fターム(参考)】