説明

加熱装置

【課題】均一加熱性及び耐久性に優れ、電気的短絡も発生しない加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱装置10は、密着状態に積層された複数の電気絶縁性基材11,12と、電気絶縁性基材11,12同士を接合するため電気絶縁性基材11の凹溝15内に充填された状態で融着された抵抗発熱材13と、を備え、抵抗発熱材13はケイ素若しくはケイ素化合物を含んでいる。抵抗発熱材13は、電気絶縁性基材11,12同士の接触領域14における一方の電気絶縁性基材11に形成された凹溝15内に隙間無く充填された状態で融着されている。電気絶縁性基材11,12は、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスで形成されている。また、電気絶縁性基材11,12同士の接触領域14の外周14aの一方の電気絶縁性基材11の全周に渡って形成された開先部11a内にも抵抗発熱材13aが充填された状態で融着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の部品や半導体材料などの熱処理に使用される電気抵抗発熱方式の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器部品や半導体材料などの熱処理に使用される加熱装置については、従来、様々な方式のものが提案されているが、本発明に関連するものとして、窒化アルミニウム製のヒータ基材上に設けられた発熱体埋設溝内に抵抗発熱材を配置し、その上面に窒化アルミニウム製のヒータカバーを重ね合わせた構造のセラミックスヒータがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−011769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のセラミックスヒータは、抵抗発熱材の表面や発熱体埋設溝が電気絶縁性物質の皮膜で被覆されているため、高温加熱時に抵抗発熱材間でリーク電流が生じない点においては優れている。しかしながら、基材及びヒータカバーと、抵抗発熱体との間に電気絶縁性物質の被膜が介在しているため、抵抗発熱体から基材及びヒータカバーへの熱伝導効率が悪く、加熱状態が不均一となることがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、均一加熱性及び耐久性に優れ、電気的短絡も発生しない加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱装置は、密着状態に積層された複数の電気絶縁性基材と、前記電気絶縁性基材同士の接触領域における少なくとも一方の面に形成された凹溝内に充填された状態で融着された抵抗発熱材と、を備え、前記抵抗発熱材がケイ素若しくはケイ素化合物を含むことを特徴とする。ここで、抵抗発熱材とは、電流を流すことによってジュール熱を発する性質を有する材料をいう。
【0007】
このような構成とすれば、電気絶縁性基材の凹溝内に充填された状態で融着された抵抗発熱材が、密着状態に積層された電気絶縁性基材同士を強く接合するため、抵抗発熱材の熱がムラ無く電気絶縁性基材へ伝達され、優れた均一加熱性が得られる。また、抵抗発熱材は、片方の電気絶縁性基材の凹溝と他方の電気絶縁性基材との間に隙間無く充填された状態で融着されているため、通電発熱中に抵抗加熱体にクラックが生じたり、割れたりすることがなく、耐久性にも優れている。さらに、抵抗発熱材は、電気絶縁性素材に予め形成された凹溝内に充填した状態で融着することができるため、予定位置に抵抗発熱体を正確に配置することができ、融着過程における抵抗発熱体のしみだしや拡散に起因する電気的短絡も発生しない。
【0008】
ここで、前記電気絶縁性基材は、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスで形成することが望ましい。このような構成とすれば、窒化アルミニウムは、ケイ素若しくはケイ素化合物を含む抵抗発熱材との密着性が良好で、熱伝導性も高いため、均一加熱性が高まり、エネルギ効率も向上する。
【0009】
一方、前記電気絶縁性基材同士の接触領域の外周の少なくとも一部に形成された開先部内にケイ素若しくはケイ素化合物を含む抵抗発熱材を充填した状態で融着させることができる。このような構成とすれば、電気絶縁性基材同士の接触領域の外周の少なくとも一部が抵抗発熱材で接合されるため、電気絶縁性基材同士の密着力が高まり、耐久性が向上する。
【0010】
また、前記電気絶縁性基材の外面から前記電気絶縁性基材同士の接触領域に至るように形成された貫通孔内にケイ素若しくはケイ素化合物を含む抵抗発熱材を充填した状態で融着させることもできる。このような構成とすれば、貫通孔内に充填された状態で融着した抵抗発熱材が、重なり合った電気絶縁性基材同士を接合する機能を発揮するので、電気絶縁性基材同士の密着力が高まり、耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、均一加熱性及び耐久性に優れ、電気的短絡も発生しない加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態である加熱装置を示す平面図、図2は図1に示す加熱装置の正面図、図3は図1におけるA−A線断面図、図4は図1におけるB−B線断面図、図5は図2におけるC−C線断面図である。
【0013】
図1〜図4に示すように、第1実施形態の加熱装置10は、密着状態に積層された複数の電気絶縁性基材11,12と、電気絶縁性基材11,12同士を接合するため電気絶縁性基材11の凹溝15内に充填された状態で融着された抵抗発熱材13と、を備え、抵抗発熱材13はケイ素若しくはケイ素化合物を含んでいる。抵抗発熱材13は、電気絶縁性基材11,12同士の接触領域14における一方の電気絶縁性基材11に形成された凹溝15と他方の電気絶縁性基材12の下面12cの一部とで囲まれた空間内に隙間無く充填された状態で融着されている。電気絶縁性基材11,12は、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスで形成されている。また、電気絶縁性基材11,12同士の接触領域14の外周14aの一方の電気絶縁性基材11の全周に渡って形成された開先部11a内に抵抗発熱材13aが充填された状態で融着されている。この抵抗発熱材13aは抵抗発熱材13と同じ組成である。
【0014】
図3,図5に示すように、電気絶縁性基材11,12同士の接触領域14である電気絶縁性基材11の上面11cに形成された凹溝15は交差する部分のない連続した曲線状をなし、その端部15a,15bは、開先部11aの内側に位置している。また、図4に示すように、電気絶縁性基材12における、凹溝15aの端部15a,15bと対向する位置には、それぞれ貫通孔12a,12bが開設され、これらの貫通孔12a,12bに棒状の通電部材16a,16bがそれぞれ差し込まれている。通電部材16a,16bの下端部は凹溝15の端部15a,15b内の抵抗発熱材13に接続されている。通電部材16a,16bの外周は抵抗発熱材13bによって被覆されている。抵抗発熱材13bは抵抗発熱材13と同じ組成である。
【0015】
電気絶縁性基材12から突出する通電部材15,16を通電端子として外部電源(図示せず)から給電すると抵抗発熱材13が発熱し、電気絶縁性基材11,12が昇温するので、上方の電気絶縁性基材12の上面12hに被加熱物(図示せず)を載置することによって当該被加熱物を熱処理することができる。加熱装置10においては、電気絶縁性基材11の凹溝15内に充填された状態で融着された抵抗発熱材13によって積層状態の電気絶縁性基材11,12同士が強く接合されているため、抵抗発熱材13の熱がムラ無く電気絶縁性基材11,12へ伝達され、電気絶縁性基材12の上面12hの温度分布が均一となる。従って、絶縁性基材12の上面12hに載置される被加熱物(図示せず)を均一に加熱することができる。
【0016】
また、片方の電気絶縁性基材11の上面11bの凹溝15と、他方の電気絶縁性基材12の下面12cの一部で囲まれた空間内に抵抗発熱材13が隙間無く充填された状態で融着されているため、通電発熱中に抵抗加熱体13にクラックが生じたり、割れたりすることがなく、耐久性にも優れている。さらに、電気絶縁性素材11に予め形成された凹溝15内に隙間無く充填した状態で抵抗発熱材13を融着することができるため、予定位置に抵抗発熱体13を正確に配置することができ、融着過程における抵抗発熱体13のしみだしや拡散に起因する電気的短絡も発生しない。
【0017】
電気絶縁性基材11,12は窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスで形成されているため、ケイ素若しくはケイ素化合物を含む抵抗発熱材13との密着性が良好で、熱伝導性も高いため、均一加熱性及びエネルギ効率を高める上で有効である。
【0018】
図3〜図5に示すように、電気絶縁性基材11,12同士の接触領域14の外周14aに沿って形成された開先部11a内に抵抗発熱材13aを充填した状態で融着させたことにより、電気絶縁性基材11,12同士の接触領域14の外周14a全体が抵抗発熱材13aで接合された状態となるため、電気絶縁性基材11,12同士が強く接合され、耐久性に優れている。また、電気絶縁性基材11,12同士の接触領域14は外部から気液が浸入できない密閉状態に保持されるため、加熱装置10を液体洗浄することもできる。さらに、図2に示すように、抵抗発熱材13aからアース17を配線すれば、電気絶縁性基材11,12などの帯電を回避することができる。
【0019】
次に、図6に基づいて、加熱装置10の製造工程について説明する。図6は図1に示す加熱装置の製造工程を示す模式図である。図6(a)に示すように、電気絶縁性基材11の上面11cに凹溝15を設けるとともに、外周11cの外周に沿って開先部11aを形成する。そして、図6(b)に示すように、加熱処理によって溶融、焼結して抵抗発熱材13(図3参照)となるペースト状の抵抗発熱素材13mを凹溝15内へ充填する。
【0020】
なお、抵抗発熱素材13mとしては、「Si−7%Ti−5%Mo合金組成(wt%)の金属粉末とPVP(ポリビニルピロリドン)のアルコール溶液とを混合して形成したペースト」、「Si−10%Ni合金組成(wt%)の金属粉末とPVP(ポリビニルピロリドン)のアルコール溶液とを混合して形成したペースト」あるいは「Si−7%Cr合金組成(wt%)の金属粉末とPVP(ポリビニルピロリドン)のアルコール溶液とを混合して形成したペースト」などが好適であるが、これらに限定するものではない。
【0021】
次に、図6(c)に示すように、電気絶縁性基材11の上面11cに電気絶縁性基材12を重ね合わせ、開先部11a内に抵抗発熱材素材13mを隙間無く充填した後、真空加熱炉18内に装入し、1300〜1400℃程度に加熱する。これにより、抵抗発熱素材13mが溶融、焼結され、抵抗発熱材13,13aとなって凹溝15内や開先部11a内に融着され、図1に示す加熱装置10が完成する。なお、開先部11aに抵抗発熱材素材13mを充填する段階において、図4に示す通電部材16a,16bを電気絶縁性基材12の貫通孔12a,12bに挿入すれば、図6(c)の過程を経ることにより、抵抗発熱材13と通電可能に接続される。
【0022】
次に、図7〜図13に基づいて、本発明のその他の実施形態について説明する。図7は本発明の第2実施形態である加熱装置を示す平面図、図8は図7に示す加熱装置の正面図、図9は図7におけるD−D線断面図、図10は図8におけるE−E線断面図である。また、図11は本発明の第3実施形態である加熱装置を示す平面図、図12は図11に示す加熱装置の正面図、図13は図12におけるF−F線断面図である。なお、図7〜図13において、図1〜図6と同じ符号を付している部分は加熱装置10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0023】
図7〜図10に示すように、第2実施形態の加熱装置20は、密着状態に積層された複数の電気絶縁性基材21,22と、電気絶縁性基材21,22同士を接合するため電気絶縁性基材21の凹溝15内に充填された状態で融着された抵抗発熱材13と、を備えている。また、電気絶縁性基材22の外面(上面21h)から電気絶縁性基材21,22同士の接触領域14に至る複数の貫通孔23が各コーナ付近に開設され、これらの貫通孔23とそれぞれ同軸をなす凹部24が電気絶縁性基材22の上面21cに形成されている。それぞれの貫通孔23及び凹部24内に抵抗発熱材13aが隙間無く充填された状態で融着されている。抵抗発熱材13aは、前述と同様、ケイ素若しくはケイ素化合物を含んでおり、抵抗発熱素材13m(図6参照)を焼結することによって形成されている。
【0024】
加熱装置20においては、電気絶縁性基材22の貫通孔23及び電気絶縁性基材21の凹部24内に充填された状態で融着された抵抗発熱材13aが、重なり合った電気絶縁性基材21,22同士を接合する機能を発揮するので、電気絶縁性基材21,22同士の密着力が高く、耐久性も優れている。また、貫通孔23内の抵抗発熱材13aからアース17を配線すれば、電気絶縁性基材21,22などの帯電を回避することができる。
【0025】
図11〜図13に示すように、第3実施形態の加熱装置30においては、密着状態に積層された複数の電気絶縁性基材31,32と、電気絶縁性基材31,32同士を接合するため電気絶縁性基材31の凹溝15内に充填された状態で融着された抵抗発熱材13と、を備えている。電気絶縁性基材31,32同士の接触領域14の外周縁14aにおいて両方の電気絶縁性基材31,32の全周に渡って形成された開先部31a,32a内に充填された状態で抵抗発熱材13aが融着されている。この抵抗発熱材13aは抵抗発熱材13と同じ組成である。
【0026】
図1に示す加熱装置10及び図7に示す加熱装置20はいずれも平面視形状が四角形であるのに対し、図11に示す加熱装置30の平面視形状は円形をなしている。従って、平面視形状が円形の被加熱物(図示せず)を電気絶縁性基材32の上面32hに載置して熱処理する場合などに好適である。なお、本発明に係る加熱装置を構成する電気絶縁性基材の平面視形状は四角形や円形に限定するものではないので、被加熱物の形状に適した形容とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の熱処理装置は、各種電子機器の部品や半導体材料などの熱処理手段として電子・電気産業分野あるいは機械部品産業などにおいて広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態である加熱装置を示す平面図である。
【図2】図1に示す加熱装置の正面図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図である。
【図4】図1におけるB−B線断面図である。
【図5】図2におけるC−C線断面図である。
【図6】図1に示す加熱装置の製造工程を示す模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態である加熱装置を示す平面図である。
【図8】図7に示す加熱装置の正面図である。
【図9】図7におけるD−D線断面図である。
【図10】図8におけるE−E線断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態である加熱装置を示す平面図である。
【図12】図11に示す加熱装置の正面図である。
【図13】図12におけるF−F線断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10,20,30 加熱装置
11,12,21,22,31,32 電気絶縁性基材
11a,31a,32a 開先部
11c,21c 上面
12a,12b,23 貫通孔
12c 下面
12h,22h,32h 上面
13,13a,13b 抵抗発熱材
13m 抵抗発熱素材
14 接触領域
14a 外周
15 凹溝
15a,15b 端部
16a,16b 通電部材
17 アース
18 真空加熱炉
24 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密着状態に積層された複数の電気絶縁性基材と、前記電気絶縁性基材同士の接触領域における少なくとも一方の面に形成された凹溝内に充填された状態で融着された抵抗発熱材と、を備え、前記抵抗発熱材がケイ素若しくはケイ素化合物を含むことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記電気絶縁性基材を、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスで形成した請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記電気絶縁性基材同士の接触領域の外周の少なくとも一部に形成された開先部内にケイ素若しくはケイ素化合物を含む抵抗発熱材を充填した状態で融着させた請求項1〜3のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項4】
前記電気絶縁性基材の外面から前記電気絶縁性基材同士の接触領域に至るように形成された貫通孔内にケイ素若しくはケイ素化合物を含む抵抗発熱材を充填した状態で融着させた請求項1〜3のいずれかに記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−129290(P2010−129290A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301172(P2008−301172)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(594067195)株式会社九州日昌 (8)
【Fターム(参考)】