説明

加熱装置

【課題】複雑な制御を要することなく、被加熱物を所望の温度に高精度に維持することができ、さらには、移送配管が局部的に過度に加熱されることを防止する。
【解決手段】移送配管2の下流部と上流部とを連結する循環配管と、被加熱物を移送配管2の内部において上流部から下流部に移送するための定量ポンプ7と、被加熱物の一部を循環させるための強制循環ポンプ12とを有し、強制循環ポンプ12の単位時間当たり流量を定量ポンプ7の単位時間当たり流量よりも大きく設定する。そして、被加熱物の一部を、循環配管を介して移送配管2の下流部から上流部に還流させて、移送配管2および循環配管において循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱装置に係り、特に流動性を有する被加熱物を連続的に移送しながら加熱する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば調理や殺菌等の処理のために飲食材料等を加熱することを目的として、流動性を有する飲食材料等の被加熱物を移送配管内において連続的に移送しながらジュール熱により加熱する加熱装置が、エネルギー効率が高い等の観点から多用されている。
【0003】
図4は、従来の加熱装置の一例の要部を示す概略側面図であり、図5は、図4の加熱装置を示す等価回路図である。
【0004】
図4に示すように、このような加熱装置21の移送配管22は、絶縁性管体25a、25b(25)を備えており、絶縁性管体25のうち被加熱物の移送方向における上流側および下流側には、導電性管体26a、26b、26c(26)が配設されている。また、移送配管22の上流側には、移送配管22内に供給された被加熱物に圧力を付与することにより、移送配管22内において被加熱物を移送するための移送用ポンプ27が配設されている。
【0005】
そして、加熱装置21は、移送配管22の内部に供給された被加熱物に対して移送用ポンプ27によって所定の流量F1を付与するとともに、両導電性管体26に交流電圧を印加して移送配管22の内部において移送される被加熱物自体に通電することにより、被加熱物を移送配管22の内部において移送しながらジュール熱によって加熱するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−320402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図4に示す加熱装置21は、移送用ポンプ27による流量によって移送される被加熱物を、移送配管22の上流側から徐々に加熱して、移送配管22の出口部分において所望の温度とするため、絶縁性管体25の両端部に配置される一対の導電性管体26に対して、異なる電力源によってそれぞれ通電しなければならなかった。また、このため、加熱装置21においては、被加熱物の移送配管22における上流部の温度と下流部の温度とに大きな差が生じてしまっていた。
【0008】
さらに、従来の加熱装置21において電力供給の単純なON−OFF制御を想定した場合、被加熱物の移送配管22の上流部における温度t1、両絶縁性管体25a、25bの間における温度t2、移送配管22の下流部における温度t3が設定温度に達して交流AC1、AC2の電力供給が停止すると、移送配管22の上流部において温度t1が測定された被加熱物が移送配管22の下流部に到達するまで交流AC1、AC2を再起動することができなかった。これにより、前記従来の加熱装置21は、交流AC1、AC2を起動し、被加熱物の温度t1、t2、t3が設定温度に達すると交流AC1、AC2の出力を停止することを繰り返さなければならないので、さらにt1とt2との温度に大きな差が生じてしまうことがあった。
【0009】
また、移送配管22の下流部における被加熱物の昇温が急激に速くなり、被加熱物を高い精度によって所望の温度まで加熱することが困難であった。このため、被加熱物を所望の温度まで高い精度によって加熱するためには、例えば、特許文献1に記載の加熱装置21のように、複雑な制御体系によって被加熱物の温度を検出、制御する必要があった。また、従来の加熱装置21においては、移送配管22の下流部が局部的に過度に加熱されてしまうおそれがあるという問題があった。
【0010】
さらに、ここで、図5におけるインピーダンスZ1とZ2とは、定められた温度における被加熱物の体積抵抗率と、移送配管22の有効内径Dおよび有効長さL1、L2と、加熱中の被加熱物の温度tによって定まる。このうち、1つの加熱装置21において移送配管22の有効内径Dおよび有効長さL1、L2は不変であるため、インピーダンスZ1およびZ2を定めるにあたり影響がないが、被加熱物の温度tによりインピーダンスZ1、Z2は大きく変動する。
【0011】
このため、例えば、被加熱物の温度t1の目標温度を10℃、t2の目標温度を50℃、t3の目標温度を90℃とし、両絶縁性管体25a、25bの有効長さL1、L2を等しくした場合、インピーダンスZ1およびZ2の比は、3:1程度となる場合が多く、各導電性管体26への交流AC1、AC2の電源の共通化を図ることができなかった。
【0012】
また、各導電性管体26への交流AC1、AC2の出力電力を等しくすると、前記移送方向における上流側の絶縁性管体25aの長さL1よりも、下流側の絶縁性管体25bの有効長さL2を短くしたり、出力電圧を異ならせる必要があり、両絶縁性管体25の共通化や交流AC1、AC2の電源の共通化を図ることができなかった。
【0013】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、複雑な制御を要することなく、被加熱物を所望の温度に高精度に維持することができ、さらには、移送配管が局部的に過度に加熱されることを防止することが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る加熱装置の特徴は、流動性を有する被加熱物を連続的に移送する移送配管を有し、前記移送配管は少なくとも1つの絶縁性管体を備え、前記絶縁性管体のうち前記被加熱物の移送方向における上流側および下流側に一対の導電性管体が設けられており、前記両導電性管体の間に交流電圧を印加することにより、前記移送配管の内部において前記被加熱物を移送しながら加熱する加熱装置において、前記移送配管の下流部と上流部とを連結する循環配管を設け、前記被加熱物の一部を、前記循環配管を介して前記移送配管の下流部から上流部に還流させて、前記移送配管および前記循環配管において循環させる点にある。
【0015】
この請求項1に記載の発明によれば、被加熱物の一部を、移送配管および循環配管において循環させることにより、移送配管の移送方向における下流部において所定の温度まで昇温した被加熱物を、移送配管の上流部に還流させて、移送配管および循環配管において循環させるので、被加熱物の移送配管における単位時間あたりの流量を増加させることができる。このため、加熱装置は、被加熱物の移送配管における上流部での温度と移送配管における下流部での温度との差を小さくすることができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明に係る加熱装置の特徴は、請求項1に記載の加熱装置において、前記被加熱物を前記移送配管の内部において上流部から下流部に移送するための移送用ポンプと、前記被加熱物の一部を循環させるための循環用ポンプとを有し、前記循環用ポンプの単位時間当たり流量を前記移送用ポンプの単位時間当たり流量よりも大きく設定する点にある。
【0017】
この請求項2に記載の発明によれば、移送配管に供給された被加熱物を、移送用ポンプおよび循環ポンプの圧力によって移送することができるとともに、循環ポンプによって被加熱物の一部を、移送配管および循環配管において高速で循環させることができる。このため、加熱装置は、移送配管の移送方向における下流部において所定の温度まで昇温した被加熱物を、移送配管の上流部に還流させて、移送配管および循環配管において循環させるので、被加熱物の移送配管における上流部での温度を上昇させることができ、被加熱物の移送配管における上流部での温度および移送配管における下流部での温度の差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明に係る加熱装置によれば、被加熱物の移送配管における上流部の温度と下流部の温度との差を小さくすることができるので、複雑な温度検出等の制御を行うことなく、被加熱物を所望の温度に高精度に維持することができる。また、移送配管の下流部が局部的に過度に過熱されてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る加熱装置の一実施形態の要部を示す概略側面図
【図2】本発明に係る加熱装置の他の実施形態を示す等価回路図
【図3】本発明に係る加熱装置のさらに他の実施形態の要部を示す概略側面図
【図4】従来の加熱装置の一例の要部を示す概略側面図
【図5】図4の加熱装置を示す等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る加熱装置の一の実施形態を図1から図3を用いて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る加熱装置の要部を示す概略側面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る加熱装置1は、流動性を有する被加熱物を連続的に移送する移送配管2を有している。本発明において流動性を有する被加熱物としては、移送配管2の内部において移送可能な流動性の高い牛乳や流動性の低い魚肉、この他、海草、野菜、果実、でん粉、残飯、またはこれらの混合物等、人間が摂取する飲食物材料や動物の餌に用いられる非飲食物材料を例示として挙げることができる。
【0023】
移送配管2は、複数の絶縁性管体5a、5b(5)を備え、絶縁性管体5のうち被加熱物の移送方向における上流側および下流側の両端部には、導電性管体6a、6b、6c(6)が配設されており、1つの絶縁性管体5aの下流側に配置された導電性管体6bは、この絶縁性管体5aの下流側に隣位して配設される他の絶縁性管体5bの上流側の導電性管体6bと共用とされている。
【0024】
なお、図1においては、各絶縁性管体5の両端部に設けられた一対の導電性管体6を組として、それぞれ交流AC1、AC2の独立した電源によって通電されるようになっているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図2に示すように、2つの絶縁性管体5a、5bについてのそれぞれ一対の導電性管体6a、6b、6cに対して交流AC3の同一電源を用いることも可能である。
【0025】
移送配管2のうち前記移送方向における上流側には、被加熱物を貯留して移送配管2に供給する図示しないホッパと、ホッパから移送配管2の内部に供給された被加熱物を移送配管2の内部において移送するために、この被加熱物に流量を付与する移送用ポンプとして定量ポンプ7が配設されている。定量ポンプ7は、上流側接続管体8を介して移送配管2の最上流部に連結されており、移送配管2の内部に供給された被加熱物に所定の流量F1を付与することにより移送配管2の内部において被加熱物を所定の移送方向に移送するようになっている。本実施形態においては、定量ポンプ7は、200kg/hrの流量を付与するようになっている。
【0026】
そして、加熱装置1は、移送配管2の内部に供給された被加熱物に対して定量ポンプ7によって所定の流量F1を付与するとともに、両導電性管体6に交流電圧を印加して移送配管2内において移送される被加熱物自体に通電することにより、被加熱物を移送配管2の内部において移送しながらジュール熱によって加熱するようになっている。
【0027】
また、移送配管2の下流部に配設された下流側接続管体10には、循環配管11の一端部が連結されており、循環配管11の他端部は、上流側接続管体8に連結されている。これにより、循環配管11は、移送配管2の下流部と上流部とを連結するようになっている。
【0028】
さらに、加熱装置1には、移送配管2の内部に供給された被加熱物の一部を循環配管11を介して移送配管2の下流側から上流側に還流させて、移送配管2および循環配管11の内部において前記被加熱物の一部を循環させるために、被加熱物に所定の流量を付与する循環用ポンプとして強制循環ポンプ12が設けられている。強制循環ポンプ12は、移送配管2および循環配管11からなる循環経路のうち、定量ポンプ7によって被加熱物の移送が開始される位置よりも上流側の近傍の循環配管11に設けられている。強制循環ポンプ12の単位時間当たり流量は、定量ポンプ7の単位時間当たり流量よりも大きく設定されており、本実施形態においては、1800kg/hrに設定されている。
【0029】
なお、定量ポンプ7および強制循環ポンプ12の配設位置は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、図3に示すように、強制循環ポンプ12による単位時間当たり流量が定量ポンプ7による単位時間当たり流量よりも大きく設定されていれば、強制循環ポンプ12を、前記循環経路のうち定量ポンプ7によって被加熱物の移送が開始される位置よりも下流側の近傍に設けてもよい。また、図1においては、定量ポンプ7は移送配管2の最上流側に上流側接続管体8を介して連結されているが、例えば、図3に示すように、定量ポンプ7を循環配管11の途中に接続管体を介して連結してもよい。
【0030】
次に、本実施形態に係る加熱装置1の作用について説明する。
【0031】
本実施形態に係る加熱装置1は、ホッパに被加熱物が貯留された後、定量ポンプ7と強制循環ポンプ12の運転が開始されると、まず、ホッパから移送配管2に供給された被加熱物に対して定量ポンプ7による200kg/hrの移送方向への流量F1を付与するとともに、強制循環ポンプ12による1800kg/hrの循環方向への流量F2を付与し、あわせて2000kg/hrの流量F1+F2によって被加熱物を移送配管2の内部において移送する。そして、加熱装置1は、被加熱物が下流側接続管体10に到達すると、被加熱物の一部を、強制循環ポンプ12による循環方向への流量F2により循環配管11によって移送することにより、移送配管2および循環配管11を循環させ、一方、被加熱物の残りを、定量ポンプ7による移送方向への流量F1によって移送配管2の出口方向に移送する。
【0032】
このように、本実施形態によれば、移送配管2に供給された被加熱物を、定量ポンプ7および強制循環ポンプ12の流量F1+F2によって移送することができるとともに、強制循環ポンプ12によって被加熱物の一部を、移送配管2および循環配管11において高速で循環させることができる。このため、加熱装置1は、移送配管2の移送方向における下流部において所定の温度t3まで昇温した被加熱物を、移送配管2の上流部に還流させて、移送配管2および循環配管11において循環させるので、被加熱物の移送配管2における上流部での温度t1を上昇させることができ、被加熱物の移送配管2における上流部での温度t1および移送配管2における下流部での温度t3の差を小さくすることができる。例えば、定量ポンプ7による流量と強制循環ポンプ12による流量とを1:4に設定した場合、被加熱物の移送配管2における移送方向の上流部での温度t1は74℃、両絶縁性管体5a、5bの中間部での温度t2は82℃、移送配管2における移送方向の下流部での温度t3は90℃となる。
【0033】
したがって、加熱装置1は、被加熱物の移送配管2における上流部の温度t1と下流部の温度t3との差を小さくすることができるので、複雑な温度検出等の制御を行うことなく、被加熱物を所望の温度に高精度に維持することができる。また、移送配管2の下流部が局部的に過度に過熱されてしまうことを防止することができる。
【0034】
また、例えば被加熱物として魚肉を移送する場合、加熱装置1は、魚肉を移送配管2および循環配管11において高速循環させることにより、魚肉組織が融合・結着することを防止することができる。さらに、加熱装置1は、高速循環により魚肉を微細化することができるので、油分・水分・固形分を混合・均質化することができ、移送配管2の下流側に魚肉を油分・水分・固形分に分離する分離器を備えている場合には、分離器の分離能力を向上させることが可能となる。
【0035】
さらに、被加熱物の温度t1、t2、t3の温度の差を小さくすることができるので、両絶縁性管体5a、5bにおけるインピーダンスの差を小さくすることができ、これにより、絶縁性管体5a、5bの長さ寸法L1、L2を同一として部品の共用化を図ったり、さらには、図2に示すように、各導電性管体6a、6b、6cに通電するための交流の電源を同一にすることができ、加熱装置1の製品コストの低廉化を図ることができる。
【0036】
さらにまた、加熱装置1において、電力供給の単純なON−OFF制御を想定した場合であっても、被加熱物の温度t1、t2、t3が設定温度に達して交流AC1、AC2が停止した際、温度t1に加熱された被加熱物と、温度t3に加熱された被加熱物の混合物が高速循環によって移送配管2を移送されて移送配管2の出口部分に移送されるので、被加熱物の温度t1、t2、t3の差を小さくすることができる。これは、定量ポンプ7による流量F1と強制循環ポンプ12による流量F2の比をさらに大きく設定することにより、さらに被加熱物の温度t1、t2、t3の差を小さくすることが可能となる。
【0037】
また、加熱装置1のうち、定量ポンプ7による流量F1と強制循環ポンプ12による流量F2とが付与される部分、または強制循環ポンプ12による流量F2のみが付与される部分に温度検出器を装着することにより、被加熱物と温度検出端の相対速度が増加することにより、温度追随性を向上させることが可能となる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 加熱装置
2 移送配管
5(5a、5b) 絶縁性管体
6(6a、6b、6c) 導電性管体
7 定量ポンプ
8 上流側接続管体
10 下流側接続管体
11 循環配管
12 強制循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する被加熱物を連続的に移送する移送配管を有し、前記移送配管は少なくとも1つの絶縁性管体を備え、前記絶縁性管体のうち前記被加熱物の移送方向における上流側および下流側に一対の導電性管体が設けられており、前記両導電性管体の間に交流電圧を印加することにより、前記移送配管の内部において前記被加熱物を移送しながら加熱する加熱装置において、
前記移送配管の下流部と上流部とを連結する循環配管を設け、
前記被加熱物の一部を、前記循環配管を介して前記移送配管の下流部から上流部に還流させて、前記移送配管および前記循環配管において循環させることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記被加熱物を前記移送配管の内部において上流部から下流部に移送するための移送用ポンプと、
前記被加熱物の一部を循環させるための循環用ポンプとを有し、
前記循環用ポンプの単位時間当たり流量を前記移送用ポンプの単位時間当たり流量よりも大きく設定することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−167133(P2010−167133A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13200(P2009−13200)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】