説明

加熱装置

【課題】簡素な構造で、取り扱いも容易であり、被加熱物全体をムラなく均等に加熱することができ、加熱効率も良好である加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱装置10は、断熱材11aで形成されたケーシング11内に、被加熱物Wを収容する円筒状の収容部材12と、収容部材12の外周面12aから隙間Vを隔てて配置された円筒状発熱体13と、収容部材12内にその軸心12c方向に沿った一定方向の気体流Rを発生させる送風ファン14と、を備えている。収容部材12はステンレス鋼管で形成されている。円筒状発熱体13は収容部材12の外周面12aを囲繞するような状態で、且つ、収容部材12の軸心12cと、円筒状発熱体13との軸心13cとが同軸をなすように配置されている。収容部材12の後方開口部12rに臨む領域に配置された送風ファン14の回転軸14aも軸心12c,13cと同軸をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験用の供試体の加熱あるいは電気・電子部品や機械部品などの加熱処理などに使用される加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料試験用の供試体の加熱あるいは電気・電子部品や機械部品などの加熱処理などに使用される加熱装置に関しては、従来、様々な技術が提案されているが、本発明に関連する加熱装置として、例えば、特許文献1記載の「熱風循環炉」や特許文献2記載の「クリーンオーブン」などがある。
【0003】
特許文献1記載の「熱風循環炉」においては、炉本体の炉室内に設けられた循環通路の途中に、被処理物を収容する加熱室と、熱源と、送風機とが設けられ、送風機の吸込口が加熱室の出口に臨むような状態で、送風機が加熱室の出口に近接して設けられている。
【0004】
特許文献2記載の「クリーンオーブン」においては、断熱材で囲まれたオーブン内に、被処理物を収容する処理室、加熱手段、送風手段及び送風路が設けられ、オーブン内の気体を加熱しながら処理室に循環供給する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−322476号公報
【特許文献2】特開2005−249276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2記載の加熱装置はいずれも、加熱手段で昇温させた気体を送風機によってケーシング内で循環させながら被加熱物を加熱する方式、即ち、加熱手段で昇温させた気体流を介して被加熱物を加熱する方式であるため、加熱効率が悪い。また、被加熱物の収容場所である加熱領域の温度分布を均一化するのが困難であるため、被加熱物全体をムラなく均等に加熱することができない。
【0007】
さらに、加熱手段、送風機及び被加熱物の収容場所などがケーシング内に形成される気体流の循環方向に従って配置されているので、構造が複雑であり、清掃その他のメンテナンスにも手間を要している。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、簡素な構造でメンテナンスも容易であり、被加熱物全体をムラなく均等に加熱することができ、加熱効率も良好である加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の加熱装置は、断熱材で形成されたケーシング内に、被加熱物を収容する筒状の収容部材と、前記収容部材の外周面から隙間を隔てて配置された発熱手段と、前記収容部材内にその軸心方向に沿った一定方向の気体流を発生させる送風手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、収容部材内に収容された被加熱物は、発熱手段によって昇温した収容部材からの輻射熱と、収容部材内を軸心方向に沿って一定方向に流動する高温の気体流と、によって加熱されるので、収容部材内の一定温度領域を広く確保することができるようになる結果、収容部材内に収容された被加熱物全体をムラなく均等に加熱することができ、加熱効率も良好となる。また、ケーシング内に、被加熱物を収容する収容部材と、その外周面から隙間を隔てて配置された発熱手段と、前記収容部材内の軸心方向の気体流を発生させる送風手段と、を配置した構成であるため、構造は簡素であり、清掃その他のメンテナンスも容易である。
【0011】
ここで、前記発熱手段として、前記収容部材の外周面を囲繞する筒状発熱体を配置することが望ましい。このような構成とすれば、収容部材全体を均等に加熱することが可能となるため、収容部材内の一定温度領域が広がり、収容部材内に収容された被加熱物に対する均等加熱機能が向上する。
【0012】
この場合、前記収容部材の軸心と、前記筒状発熱体との軸心とが同軸をなすように配置することが望ましい。このような構成とすれば、収容部材の外周面のどの位置においても当該外周面と筒状発熱体の内周面との距離が常に一定となるため、収容部材に対する均等加熱機能が高まり、収容部材内の被加熱物に対する均等加熱機能がさらに向上する。
【0013】
ここで、前記送風手段として、電動機によって回転駆動される送風ファンを設けることが望ましい。このような構成とすれば、前記収容部材内にその軸心方向に沿った一定方向の気体流を容易に発生させることが可能となり、均等加熱機能の向上に有効である。また、電動機の回転数を変化させて送風ファンの回転数を増減させることにより、収容部材内を流動する気体流の流速や流量なども調節可能となるので、被加熱物に応じた加熱条件を設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、簡素な構造で、メンテナンスも容易であり、被加熱物全体をムラなく均等に加熱することができ、加熱効率も良好である加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である加熱装置を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。図1,図2に示すように、本実施形態の加熱装置10は、ロックウール及びセラミックスウールを内包する断熱材11aで形成されたケーシング11内に、被加熱物Wを収容する円筒状の収容部材12と、収容部材12の外周面12aから隙間Vを隔てて配置された発熱手段である円筒状発熱体13と、収容部材12内にその軸心12c方向に沿った一定方向の気体流Rを発生させる送風手段である送風ファン14と、を備えている。収容部材12はステンレス鋼管で形成されている。
【0017】
円筒状発熱体13は収容部材12の外周面12aを囲繞するような状態で、且つ、収容部材12の軸心12cと、円筒状発熱体13との軸心13cとが同軸をなすように配置されている。円筒状発熱体13内の収容部材12は、その外周と円筒状発熱体13の内周との間に、円筒状発熱体13の半径方向に配置された複数の支柱(図示せず)によって同軸上に保持されている。また、ケーシング11の後壁部11w側に位置する、収容部材12の後方開口部12rに臨む領域に配置された送風ファン14の回転軸14aも軸心12c,13cと同軸をなしている。
【0018】
送風ファン14の回転軸14aはケーシング11の後壁部11wを貫通して延設され、ケーシング11外に配置された電動機15の駆動軸15aに連結されている。電動機15の駆動軸15aの回転数及び回転方向は変更可能であるため、駆動軸15a及び回転軸14aによって回転する送風ファン14の回転数及び回転方向も変更可能である。
【0019】
ケーシング11の後壁部11wと反対側の開口部11bは扉11dよって開閉可能に閉塞され、この開口部11bを経由して収容部材12内に対する被加熱物Wの出し入れを行う。扉11dから外部への熱放散によって収容部材12内の温度が低下するのを防止するため、扉11dの内面側に、円板状をした金属製の壁板16がスペーサ16aを介して扉11dと略平行に取り付けられている。扉11dの内面と壁板16との間にはスペーサ16aの長さ分の隙間が設けられている。円筒状発熱体13は、耐熱材で形成された円筒体13a内に線状の電気ヒータ13hが螺旋状に配設されている。
【0020】
図1に示すように、加熱装置10の収容部材12内に収容された被加熱物Wは、円筒状発熱体13によって昇温した収容部材12からの輻射熱と、収容部材12内を軸心12c方向に沿って一定方向(後壁部11wから扉11dの内面側の壁板16に向かう方向)に流動する高温の気体流Rと、によって加熱される。これにより、収容部材12内の一定温度領域を広く確保することができるため、収容部材12内に収容された被加熱物W全体をムラなく均等に加熱することができ、加熱効率も良好である。
【0021】
図1に示すように、収容部材12内を軸心12c方向に沿って後壁部11wから扉11dに向かって流動する高温の気体流Rは、収容部材12の前方開口部12fを出て扉11dの内面側にある壁板16dに当接して軸心12cを中心に放射状にUターンした後、収容部材12の外周面12aと円筒状発熱体13の内周面13bとの隙間Vに流入する。隙間Vに流入した気体流Pは隙間Vに沿って後壁部11wに向かって流動しながら円筒状発熱体13によって加熱され、後壁部11wに当接する。後壁部11wに当接した気体流Pは送風ファン14の回転軸14aに向かって集合するようにUターンした後、送風ファン14の回転によって後方開口部12rから再び収容部材12内へ送り込まれる。
【0022】
このように、送風ファン14により、収容部材12内を後方開口部12rから前方開口部12fに向かって流動する気体流Rと、扉11dの内面側の壁板16から後壁部11wに向かって隙間V内を流動する気体流Pと、からなる循環気体流がケーシング11内に形成されるため、被加熱物W全体を均一加熱する上で有効に作用する。
【0023】
また、ケーシング11内に、被加熱物Wを収容する収容部材12と、その外周面12aから隙間Vを隔てて配置された円筒状発熱体13と、収容部材12内の軸心12c方向の気体流Rを発生させる送風ファン14と、を配置した構成であるため、構造は簡素であり、清掃その他のメンテナンスも容易である。
【0024】
また、発熱手段として、収容部材12の外周面12aを囲繞する円筒状発熱体13を配置したことにより、収容部材12全体を均等加熱することができるため、収容部材12内の一定温度領域が広がり、収容部材12内に収容された被加熱物Wに対する均等加熱機能が向上する。
【0025】
この場合、収容部材12の軸心12cと、円筒状発熱体13との軸心13cとが同軸をなすように配置したことにより、図2に示すように、収容部材12の外周面12aのどの位置においても当該外周面12aと円筒状発熱体13の内周面13bとの隙間Vが常に一定となるため、収容部材12に対する均等加熱機能が高まり、収容部材12内の被加熱物Wに対する均等加熱機能がさらに向上する。
【0026】
一方、送風手段として、電動機15によって回転駆動される送風ファン14を設けたことにより、収容部材12内にその軸心12c方向に沿った一定方向の気体流Rを容易かつ安定的に発生させることができるため、均等加熱機能の向上に有効である。また、電動機15の回転数を変化させて送風ファン14の回転数を増減させることにより、収容部材12内を流動する気体流Rの流速や流量なども調節できるので、被加熱物Wに応じた加熱条件を設定することができる。また、必要であれば、電動機15の回転方向を変更させることにより、送風ファン14を逆転させることもできる。
【0027】
前述したように、加熱装置10は、収容部材12内に温度分布が一定な領域を広く確保することができるので、収容部材12内に収容された被加熱物W全体をムラなく均等に加熱することができ、材料試験に使用される供試体の加熱手段などとしても好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の加熱装置は、材料試験用の供試体や各種機械部品などを加熱する手段として、工業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 加熱装置
11 ケーシング
11a 断熱材
11b 開口部
11d 扉
11w 後壁部
12 収容部材
12a 外周面
12c,13c 軸心
12f 前方開口部
12r 後方開口部
13 円筒状発熱体
13a 円筒体
13b 内周面
13h 電気ヒータ
14 送風ファン
14a 回転軸
15 電動機
15a 駆動軸
16 壁板
16a スペーサ
V 隙間
P,R 気体流
W 被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材で形成されたケーシング内に、被加熱物を収容する筒状の収容部材と、前記収容部材の外周面から隙間を隔てて配置された発熱手段と、前記収容部材内にその軸心方向に沿った一定方向の気体流を発生させる送風手段と、を備えたことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記発熱手段として、前記収容部材の外周面を囲繞する筒状発熱体を配置した請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記収容部材の軸心と、前記筒状発熱体との軸心とが同軸をなすように配置した請求項2記載の加熱装置。
【請求項4】
前記送風手段として、電動機によって回転駆動される送風ファンを設けた請求項1〜3のいずれかに記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−220649(P2011−220649A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93016(P2010−93016)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(594067195)株式会社九州日昌 (8)
【Fターム(参考)】