加熱調理器用の赤外線強度検出装置
【課題】光学フィルターの温度が上昇することを回避して、赤外線強度を検出するときの誤差を少なくすることが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供する。
【解決手段】加熱手段にて加熱される調理用容器から放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を通過させる光学フィルター41a,41bと、その光学フィルター41a,41bを通過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段42a,42bとが赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線の通過を許容する光透過部材Tが、調理用容器側に位置して赤外線放射方向に間隔を隔てて光学フィルター41a,41bと並ぶ状態で備えられ、光学フィルター41a,41bが、基材を光透過部材Tの透過可能波長領域と同じ透過可能波長領域を備える材質にて形成する状態で特定波長域の赤外線を透過させるように構成される。
【解決手段】加熱手段にて加熱される調理用容器から放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を通過させる光学フィルター41a,41bと、その光学フィルター41a,41bを通過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段42a,42bとが赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線の通過を許容する光透過部材Tが、調理用容器側に位置して赤外線放射方向に間隔を隔てて光学フィルター41a,41bと並ぶ状態で備えられ、光学フィルター41a,41bが、基材を光透過部材Tの透過可能波長領域と同じ透過可能波長領域を備える材質にて形成する状態で特定波長域の赤外線を透過させるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段にて加熱される調理用容器から放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を透過させる光学フィルターと、その光学フィルターを透過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段とが、赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、前記光学フィルターが、前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる材質からなる基材の表面に前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる反射膜を備えて構成されている加熱調理器用の赤外線強度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記加熱調理器用の赤外線強度検出装置は、加熱手段により加熱される鍋等の調理用容器から放射された赤外線の強度を検出するようにしたものであり、その検出した赤外線の強度に基づいて、例えば、調理用容器の温度を検出して調理用容器の温度を設定温度に維持するように加熱手段の加熱量を調整する制御を行ったり、調理用容器の過度の温度上昇を回避させるために加熱手段の加熱作動を停止させる制御を行えるようにしたものであるが、このような加熱調理器用の赤外線強度検出装置において、従来では、次のように構成されたものがあった。
【0003】
すなわち、調理用容器から放射された赤外線を透過させる光透過部材としてのカバー部材が前記光学フィルターよりも調理用容器に近い側に位置して光学フィルターに近接させた状態で備えられ、調理用容器から溢れ出した煮汁等の外物が光学フィルターに降りかかることを防止するようになっていた。そして、前記光透過部材及び前記光学フィルターの基材は、必要とする特定波長域の赤外線を通過させるような特性を満足するものであればよく、それら両者の材質については特に考慮されていないものであった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ちなみに、特許文献1に記載されるものは、前記光学フィルターとして、異なる2つの特定波長域の赤外線を通過させる2つの光学フィルターが備えられ、且つ、それら2つの光学フィルターに対応させる状態で2つの赤外線受光手段が備えられ、調理用容器から放射される赤外線のうちの異なる2つの波長域での赤外線強度を検出する構成として、それらの2つの赤外線強度の比に基づいて調理用容器の温度を検出することができるようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2006−207961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来構成では、前記光透過部材が前記光学フィルターに近接させた状態で備えられる構成となっており、しかも、前記光透過部材及び前記光学フィルターの基材の材質については特に考慮されていないものであることから、赤外線の強度検出の精度が低下するおそれがあった。以下、そのことについて説明を加える。
【0007】
先ず、前記光学フィルターの構成について説明する。
前記光学フィルターは、特定波長域の赤外線だけを透過させることを目的とするものであり、前記基材の表面に光透過部材を通過した赤外線のうちの一部の波長域の赤外線を反射させる反射膜を備えて前記特定波長域の赤外線を通過させるように構成されるものである。すなわち、前記光学フィルターは、基材の表面に例えば誘電体薄膜を蒸着処理によって多層状に形成することにより前記反射膜が構成されるものであるが、このような光学フィルターでは、入射する赤外線のうちで前記反射膜により反射させる対象となる赤外線の波長領域が広くなると、形成すべき薄膜の層の数が多くなるものであるから、それだけ作成の手間が多くコストも高くなる。そこで、光学フィルターの基材として、赤外線の全波長領域のうちで一部の波長域では赤外線を透過させるが他の一部の波長域では赤外線を透過させない性質を有する材質からなる基材を用いることで、基材自身により一部の波長領域の赤外線の透過を阻止することで、反射膜を構成するときに形成すべき薄膜の数を減らした状態で作成することがある。
【0008】
そして、前記光透過部材及び前記光学フィルターの基材として使用可能な材質としては、例えば、サファイヤ、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等、種々のものが考えられるが、このような材質は全ての波長を透過するのではなく一部の波長領域の赤外線の通過を阻止するという性質を有する。
例えば、図8に、ラインL1にてサファイヤ、及び、ラインL2にてシリコン(Si)の夫々について、波長の変化に対する赤外線透過率の変化を示す波長対透過率特性を示している。図8から判るように、サファイヤは、約8μmよりも短波長側の赤外線を透過させるが、約8μmよりも長波長側の赤外線を透過させないので、透過可能波長領域が狭くなる性質を有している。一方、シリコンは、透過率の変動はあるものの透過可能波長領域がサファイヤよりも広くなる性質を有している。又、シリコンは、赤外線透過率がサファイヤの赤外線透過率よりも小さいという性質も有している。ちなみに、サファイヤの赤外線透過率は約90%程度であり、シリコンの赤外線透過率は50%〜60%程度である。
【0009】
上記従来構成の加熱調理器用の赤外線強度検出装置において、例えば、光学フィルターの基材としてサファイヤを用い、光透過部材としてシリコンを用いる構成にすることが考えられる。そして、この場合には、光学フィルターの反射膜としては、サファイヤが通過を許容する約8μmよりも短波長側の波長領域のうちで前記特定波長域を除く他の波長域の赤外線を反射させる反射膜を形成することになる。
【0010】
この構成では、シリコンにて構成される光透過部材は広い波長範囲にわたり赤外線を透過させるが、基材がサファイヤにて構成される光学フィルターにおいては、光透過部材を透過した赤外線のうち約8μmよりも長波長側の赤外線は光学フィルターの基材を透過せずに、基材に吸収されて熱エネルギーに変換されることになる。そうすると、基材に赤外線が吸収されることにより光学フィルターの温度が上昇することになる。
【0011】
又、シリコンにて構成される光透過部材は、サファイヤに比べて広い波長範囲にわたり赤外線を透過させるものの赤外線透過率は50%〜60%程度であるから、入射してくる赤外線のうちの50%〜60%程度の赤外線が透過するが、透過しない赤外線はその内部に吸収されて熱エネルギーに変換されることになるので、この光透過部材についても赤外線を吸収することによって温度が上昇することになる。又、上記従来構成では、光透過部材は光学フィルターに近接する状態で設けられているので、光透過部材の熱が光学フィルターに伝えられて光学フィルターの温度を上昇させるおそれがある。
【0012】
上述の説明では、光学フィルターの基材としてサファイヤを用い、光透過部材としてシリコンを用いる構成を例示したが、このような構成に限らず、前記光透過部材及び前記光学フィルターの基材の材質が適切でない場合であれば、そのことが原因で光学フィルターの温度を上昇させるおそれがある。又、そのことに加えて、光透過部材が光学フィルターに近接する状態で設けられる構成であれば、光透過部材の熱により光学フィルターの温度を上昇させるおそれがある。
【0013】
その結果、従来構成においては、光学フィルターの温度が上昇して、その熱に基づく赤外線が光学フィルターの近くに配備される赤外線受光手段に入射されることになる。そして、赤外線受光手段の検出する赤外線強度が上昇することに起因して検出誤差が大きくなるおそれがある。
【0014】
本発明の目的は、光学フィルターの温度が上昇することを抑制して検出誤差を少なくすることが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る加熱調理器用の赤外線強度検出装置は、加熱手段にて加熱される調理用容器から放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を透過させる光学フィルターと、その光学フィルターを透過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段とが、赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、
前記光学フィルターが、前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる材質からなる基材の表面に前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる反射膜を備えて構成されているものであって、
その第1特徴構成は、前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる光透過部材が、前記光学フィルターよりも前記調理用容器に近い側に位置して、前記赤外線放射方向に沿って前記光学フィルターと間隔を隔てて並ぶ状態で設けられ、
前記光学フィルターが、前記基材を前記光透過部材の前記透過可能波長領域と同じ又はそれよりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成する状態で、且つ、前記反射膜にて前記光透過部材を透過した赤外線のうちの前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる状態で構成されている点にある。
【0016】
第1特徴構成によれば、調理用容器から放射された赤外線が光透過部材を通過したのちに、光学フィルターに向けて照射されるが、光透過部材を透過した赤外線のうち特定波長域を除く他の波長領域の赤外線が光学フィルターにおける前記反射膜にて反射されて、前記特定波長域の赤外線だけが光学フィルターを透過して前記赤外線受光手段に向けて照射されることになる。
【0017】
そして、前記光学フィルターの基材が前記光透過部材の前記透過可能波長領域と同じ又はそれよりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成されているので、基材における透過可能波長領域のうちで前記光透過部材を透過しない波長領域の赤外線については、光学フィルターに至るまでの間に光透過部材の内部で吸収され、光学フィルターに向けて照射されることがない。又、基材における透過可能波長領域のうちで前記光透過部材を透過する波長領域の赤外線については、上述したようにその波長領域のうちの特定波長域を除く他の波長領域の赤外線は反射膜にて反射されるから基材にまで到達することがない。つまり、基材は特定波長域の赤外線だけが透過することになるから、基材に赤外線が吸収されることによる温度上昇のおそれが少なく、光学フィルター自身が赤外線の吸収によって温度上昇することが抑制される。
【0018】
上述したように調理用容器から放射された赤外線のうち光透過部材の透過可能波長領域以外の波長領域の赤外線は光透過部材に吸収されることになり、光透過部材の温度が上昇することがあるが、この光透過部材は、赤外線放射方向に沿って光学フィルターとは間隔を隔てる状態で備えられるので、光透過部材が温度上昇することがあっても、その熱が光学フィルターに伝わるおそれが少ない。
【0019】
その結果、光学フィルターは、基材に赤外線が吸収されることによる温度上昇が抑制され且つ光透過部材から熱が伝わるおそれも少ないので、光学フィルターの温度上昇による熱に基づく赤外線が光学フィルターの近くに配備される赤外線受光手段に入射されることがなく、そのことに起因して赤外線受光手段の検出する赤外線強度が上昇することが抑制されることになる。
又、前記光透過部材を、前記特定波長域以外の波長域のうちのできるだけ広い波長域の赤外線を透過させない材質にて構成することにより、光学フィルターの製作の容易化を図ることができる。
【0020】
従って、第1特徴構成によれば、光学フィルターの温度が上昇することを抑制して検出誤差を少なくすることが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供できるに至った。
【0021】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記光学フィルターにおける前記基材が、前記光透過部材の前記透過可能波長領域に対応する波長領域における赤外線透過率が前記光透過部材の赤外線透過率よりも大きい材質にて形成されている点にある。
【0022】
第2特徴構成によれば、前記光透過部材の前記透過可能波長領域に対応する波長領域、言い換えると、光透過部材を透過することが可能な波長領域において、光学フィルターにおける基材の赤外線透過率が光透過部材の赤外線透過率よりも大きいものとなる。
【0023】
説明を加えると、物質の赤外線透過率は0%〜100%の範囲内で規定され、一般的に用いられる材質のものでは、前記透過可能波長領域においても赤外線透過率が100%よりも小さい値であり、前記透過可能波長領域であっても赤外線透過率が100%よりも小さい分だけ赤外線の一部が物質の内部で吸収されることになる。
【0024】
つまり、赤外線が光透過部材を透過するとき、及び、赤外線が光学フィルターの基材を通過するときのいずれの場合にも赤外線の一部が吸収されることになるが、光透過部材を透過することが可能な波長領域において、光学フィルターの基材の赤外線透過率が光透過部材の赤外線透過率よりも大きいので、光学フィルターの基材においては、透過可能波長領域を透過する赤外線のうちで吸収されることになる赤外線の割合が少ないものになって、光学フィルターが温度上昇することを一層抑制し易いものになる。
【0025】
従って、第2特徴構成によれば、光学フィルターの温度上昇をより一層抑制し易いものになり、赤外線強度を精度よく検出することが可能となる。
【0026】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記光学フィルターにおける前記基材が前記光透過部材と同じ材質にて構成され、且つ、前記光透過部材の厚みが前記光学フィルターにおける前記基材の厚みよりも大となるように構成されている点にある。
【0027】
第3特徴構成によれば、光学フィルターにおける基材が光透過部材と同じ材質にて構成されるから、光透過部材を透過した赤外線は略そのまま光学フィルターの基材を透過することになるが、赤外線を透過する一般的な材質においては、同じ材質であれば、厚みが大であるほど赤外線を透過し難い特性であることから、光学フィルターの温度上昇をより的確に回避し易いものになるのである。
【0028】
具体例で説明すると、図10に、厚みを種々変化させた場合におけるサファイヤの波長の変化に対する赤外線透過率の変化を示す波長対透過率特性を示しており、図11には、厚みを種々変化させた場合のシリコンの波長の変化に対する赤外線透過率の変化を示す波長対透過率特性を示している。図10から判るように、サファイヤでは厚みが大きいほど、赤外線を透過させる領域と透過させない領域との境界が短波長側に位置が変化する性質を備えており、図11から判るように、シリコンでは、所定の波長領域においては、厚みが大きいほど赤外線透過率が減少するという性質を備えている。このように赤外線を透過する材質においては同じ材質であれば厚みが大であるほど赤外線を透過し難い特性を備えている。又、サファイアやシリコンに限らず、他の材質においても、これらと同様な性質を有している。
【0029】
そこで、同じ材質にて構成される光透過部材と光学フィルターの基材について、光透過部材の厚みが光学フィルターの厚みよりも大となるように構成されているから、光透過部材を透過した赤外線が光学フィルターの基材によって吸収されることが少なく、光学フィルターが赤外線を吸収することにより、温度上昇することをより一層的確に回避し易いものとなる。
【0030】
従って、第3特徴構成によれば、光学フィルターの温度上昇をより的確に回避し易いものとなって赤外線強度を精度よく検出することが可能となる。
【0031】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記調理用容器から放射された赤外線を前記赤外線受光手段に案内する筒状の案内部材が備えられ、この案内部材の内部に、前記赤外線放射方向に沿って間隔を隔てて並べる状態で、前記光透過部材、前記光学フィルター及び前記赤外線受光手段が組み付けられている点にある。
【0032】
第4特徴構成によれば、筒状の案内部材の内部に、赤外線放射方向に沿って間隔を隔てて並べる状態で光透過部材、光学フィルター及び赤外線受光手段が組み付けられているから、加熱調理器用の赤外線強度検出装置を加熱調理器に設置するときには、各部材が組み付けられている状態でそのまま設置させることで対応できるから、前記各部材を各別に加熱調理器に設置する場合に比べて設置作業を容易に行うことができる。
【0033】
従って、第4特徴構成によれば、加熱調理器に設置するときにおいて、設置作業を容易に行うことが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供できるに至った。
【0034】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成に加えて、前記赤外線受光手段が前記赤外線放射方向と交差する方向に並ぶ状態で複数備えられ、且つ、前記光透過部材を透過した赤外線のうちの異なる波長域の赤外線を透過させる形態で複数の赤外線受光手段に対応させて各別に前記光学フィルターが備えられている点にある。
【0035】
第5特徴構成によれば、光透過部材を通過した赤外線のうちで異なる波長域の赤外線が複数の光学フィルターを各別に通過して、赤外線放射方向と交差する方向に並ぶ状態で備えられた複数の赤外線受光手段にて受光されることになる。つまり、調理用容器から放射された赤外線のうちの複数の波長域の赤外線の強度を複数の赤外線受光手段にて各別に検出することができる。
【0036】
そして、光透過部材、複数の光学フィルター及び複数の赤外線受光手段が、筒状の案内部材の内部に組み付けられるので、調理用容器から放射された赤外線のうちの複数の波長域の赤外線の強度を検出することが可能なものでありながら、加熱調理器用の赤外線強度検出装置を加熱調理器に設置するときに、前記各部材を各別に加熱調理器に設置する場合に比べて設置作業を容易に行うことができる。
【0037】
従って、第5特徴構成によれば、調理用容器から放射された赤外線のうちの複数の波長域の赤外線の強度を検出することが可能なものでありながら、加熱調理器に設置するときにおいて、設置作業を容易に行うことが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面に基づいて、本発明に係る加熱調理器用の赤外線強度検出装置の実施形態を加熱調理器としてのコンロに適用した場合について説明する。
図1に示すように、コンロは、円形の加熱用の開口1aを有する平板状の天板1、開口1aの上方に離間させて鍋等の調理用容器Nを載置可能な五徳2、その五徳2上に載置される調理用容器Nを加熱する加熱手段としてのバーナ30、そのバーナ30の作動を制御する燃焼制御部3等を備えて構成されている。
【0039】
前記バーナ30は、ブンゼン燃焼式の内炎式バーナであり、燃料供給路5を通じて供給される燃料ガスGを噴出するガスノズル31、そのガスノズル31から燃料ガスGが噴出されると共に、その燃料ガスGの噴出に伴う吸引作用により燃焼用空気Aが供給される混合管32、及び、内周部に混合気を噴出する複数の炎口33を備えて、前記混合管32から混合気が供給される環状のバーナ本体34等を備えて構成され、前記バーナ30は、前記開口1aの下方に位置させて設けている。
【0040】
このバーナ30においては、混合管32からバーナ本体34内に供給された燃料ガスGと空気Aとの混合気が炎口33からバーナ本体34の中心に向けて略水平方向に噴出され、その噴出された燃料ガスGと空気Aとの混合気が燃焼して、火炎Fが前記開口1aを通って上向きに形成される。
【0041】
燃料供給路5には、ガスノズル31への燃料ガスGの供給を断続する燃料供給断続弁6と、ガスノズル31への燃料ガスGの供給量を調節する燃料供給量調節弁7とが設けられ、バーナ30のバーナ本体34内の下方には、開口1aを介して落下した煮零れ等を受けるための汁受皿8が設けられる。
【0042】
さらに、このコンロには、天板1の下方側に位置し且つ汁受皿8の中央部に位置して調理用容器Nから放射された赤外線の強度を検出する赤外線強度検出装置としての赤外線強度検出部40と、その赤外線強度検出部40により検出された赤外線の強度に基づいて調理用容器Nの温度を検出する温度検出手段としての温度検出部50とが設けられている。
【0043】
前記赤外線強度検出部40は、調理用容器Nから放射される赤外線における異なる2つの特定波長域夫々についての赤外線強度を検出するように構成され、前記温度検出部50が、赤外線強度検出部40にて検出される2つの特定波長域夫々についての赤外線強度の比に基づいて調理用容器Nの温度を検出するように構成されている。
さらに、赤外線強度検出部40は、赤外線の波長範囲のうちのバーナ30の火炎からの放射強度が少ない範囲内に設定された波長域の赤外線強度を検出するように構成されている。
【0044】
図2に示すように、前記赤外線強度検出部40は、調理用容器Nから放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を通過させる光学フィルター41a,41bと、その光学フィルター41a,41bを通過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段としての赤外線受光素子42a,42bとが赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線の通過を許容する光透過部材Tとしての窓部材46が、光学フィルター41a,41bよりも調理用容器N側に位置して赤外線放射方向に間隔を隔てて光学フィルター41a,41bと並ぶ状態で備えられる構成となっている。
【0045】
又、調理用容器Nから放射された赤外線を赤外線受光素子42a,42bに案内する筒状の案内部材47が備えられ、この案内部材47の内部に、赤外線放射方向に沿って間隔を隔てて並べる状態で前記窓部材46、前記光学フィルター41a,41b及び前記赤外線受光素子42a,42bが組み付けられている。しかも、前記赤外線受光素子42a,42bが前記赤外線放射方向と交差する方向に並ぶ状態で2つ備えられ、且つ、窓部材46を通過した赤外線のうちで異なる波長域の赤外線を通過させる形態で2つの赤外線受光素子42a,42bに対応させて各別に光学フィルター41a,41bが備えられている。
【0046】
説明を加えると、図2に示すように、光入射用の開口部44を備え且つその開口部44以外は周囲を囲うように遮光性の部材にて構成されるケーシング43内に、前記開口部44を通じて入射する赤外線を検出可能なように、前記2個の赤外線検出素子42a,42bが台座48上に並べて設けられ、一方の赤外線検出素子42aに対して赤外線が入射する部分に一方の光学フィルター41aが設けられ、他方の赤外線検出素子42bに対して赤外線が入射する部分に他方の光学フィルター41bが設けられている。又、ケーシング43内には、前記2個の赤外線検出素子42a,42bの出力信号を処理する信号処理部45が設けられている。
【0047】
そして、ケーシング43における開口部44の上方側を囲うように、遮光性部材にて中空の筒状に形成された外側筒部材47Aが設けられ、この外側筒部材47Aの内部及びケーシング43における開口部44に嵌り合うとともに、前記2個の赤外線検出素子42a,42bに向けて赤外線を各別に案内するための2つの案内路Q1、Q2を形成する内側筒部材47Bが設けられている。そして、外側筒部材47Aと内側筒部材47Bとで前記案内部材47が構成されている。
【0048】
前記外側筒部材47Aの上端部にその外側筒部材47Aの筒内部を覆う状態で窓部材46が設けられている。この窓部材46は、調理用容器Nから放射された赤外線を外側筒部材47Aの内部に透過させるように構成されている。又、煮汁やその他の他物が光学フィルター41a,41bに降りかかることを防止して保護する機能も備えている。
【0049】
前記外側筒部材47Aは、調理用容器Nから放射されて窓部材46を透過した赤外線をケーシング43内部に導入し、横外側方から光が入り込まないようにケーシング43の開口部44に対して接続される構成となっている。そして、調理用容器N以外の他物、すなわち、五徳2やバーナ本体34から放射される赤外線がケーシング43内部に向けて導入され難いように上下方向に沿って長尺状に設けられている。
【0050】
前記内側筒部材47Bは、その上部水平面部分に左右一対の光導入口49が形成されており、前記外側筒部材47Aを通して案内される赤外線を一方の赤外線検出素子42aに向けて案内するための第1の案内路Q1が形成され、その第1の案内路Q1に位置させて一方の光学フィルター41aを内装する状態で支持する構成となっている。又、前記外側筒部材47Aを通して案内される赤外線を他方の赤外線検出素子42bに向けて案内するための第2の案内路Q2が形成され、その第2の案内路Q2に位置させて他方の光学フィルター41bを内装する状態で支持する構成となっている。
【0051】
前記外側筒部材47A及び前記内側筒部材47Bは、遮光性部材にて構成され、外部からの赤外線の進入が阻止される構成となっているが、窓部材46を透過した赤外線を吸収してそのことにより温度上昇することがないように、外側筒部材47Aの内周面並びに内側筒部材47Bにおける光導入口49が形成される上部水平面部分等は、赤外線を反射させるように高反射率の面となるように構成されている。
【0052】
この赤外線強度検出部40は、前記ケーシング43に対して、前記外側筒部材47A、前記内側筒部材47B、前記窓部材46、前記各光学フィルター41a,41b、及び、前記各赤外線受光素子42a,42bの夫々が組み付けられて構成されており、この赤外線強度検出部40をコンロに設置するときは、前記各物品が予めユニット状に組み付けられた状態で設置されることになる。
【0053】
図1に示すように、この赤外線強度検出部40は汁受皿8に形成された開口を通して上下方向に挿通する状態で設けられるが、汁受皿8からの熱が伝わり難くなるように、汁受皿に対して断熱材Dを介して装着される構成となっている。尚、前記各赤外線受光素子42a,42bが温度上昇しないように冷却ファン等の温度上昇抑制手段を設けるようにしてもよい。
【0054】
そして、前記光学フィルター41a,41bが、前記基材Kを前記窓部材46の透過可能波長領域と同じ透過可能波長領域を備える材質にて形成する状態で特定波長域の赤外線を透過させるように構成されている。具体的には、光学フィルター41a,41bの基材Kが窓部材46と同じ材質にて構成され、且つ、図2に示すように、窓部材46の厚みが光学フィルター41a,41bにおける基材Kの厚みよりも大となるように構成されている。
【0055】
そして、この実施形態では、前記各赤外線受光素子42a,42bにて検出される特定波長域の1つとして、8.0μm以上且つ12.0μm以下の範囲内の波長域を検出対象とする構成としており、光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46の材質として、シリコン(Si)を用いるようにしている。このようにシリコンを用いるようにしたのは、シリコンであれば、8.0μm以上且つ12.0μm以下の範囲内の波長域の赤外線を透過させるからである。
【0056】
そして、光学フィルター41a,41bの基材Kとして、シリコンを用いる場合、シリコンは、図11の波長対透過率特性に示すように、所定の波長領域においては、厚みが大きいほど赤外線透過率が減少するという性質を備えている。従って、光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46の材質としてシリコンを用いる場合、光透過部材Tの厚みを基材Kの厚みより大にすると、窓部材46を透過した赤外線が光学フィルター41a,41bの基材Kによって吸収されるおそれが少なく、光学フィルター41a,41bが赤外線を吸収することにより温度上昇することを的確に回避し易いものとなる。
【0057】
そこで、光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46の材質として、シリコンを用い、且つ、窓部材46の厚みを基材Kの厚みより大に設定する構成としている。
【0058】
又、前記光学フィルター41a,41bは、図7に示すように、上述したようにして選択された材質からなる特定波長域の赤外線を通過させる材質からなる基材Kの表面に、窓部材46を通過した赤外線のうちの特定波長域以外の赤外線を反射させる反射膜hを備えて特定波長域の赤外線を通過させるように構成されている。前記反射膜hは、例えば誘電体薄膜を蒸着処理によって多層状に形成して所定の波長域の赤外線を反射するものである。そして、このような構成の光学フィルター41a,41bは、例えば、図9に示すように、特定波長域の赤外線だけを透過させる構成となる。
【0059】
前記各赤外線受光素子42a,42bにて検出される特定波長域の1つとして、8.0μmよりも短波長側の波長域、例えば、2.0μm以上且つ2.4μm以下の範囲、及び、3.1μm以上且つ4.2μm以下の範囲内に設定するような場合であれば、光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46の材質として、サファイアを用いることも可能である。
【0060】
サファイヤを用いる場合であれば、サファイヤは、シリコンと同様に図10の波長対透過率特性に示すように厚みが大きいほど、赤外線を透過させる領域と透過させない領域との境界が短波長側に位置が変化する性質を備えているから、シリコンの場合と同様に、窓部材46の厚みを基材Kの厚みより大に設定する構成とすることで、窓部材46を透過した赤外線が光学フィルター41a,41bの基材Kによって吸収されるおそれが少なく、光学フィルター41a,41bが赤外線を吸収することにより温度上昇することを的確に回避し易いものにすることができる。
【0061】
尚、前記光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46として使用可能な材質としては、シリコンやサファイヤ以外にも、例えば、ゲルマニウム(Ge)、CaF2(フッ化カルシウム)、MgF2(フッ化マグネシウム)、ZnSe(セレン化亜鉛)、Y2O3(酸化イットリウム)、SiO2(合成石英)等の種々の材質を用いることが可能である。
【0062】
次に、前記2つの波長域の設定の仕方について説明する。
図3には、金属の表面に黒色塗装した標準的な調理用容器Nについて、常温(25℃)から300℃程度の範囲で加熱したときに、温度が変化したときの赤外線放射強度の分光スペクトルデータを示している。この図から明らかなように、バーナ30が燃焼しているときの温度、例えば、常温〜300℃程度において、1.5μm以上且つ数十μm以下の範囲内の波長領域において赤外線が放射しており、例えば、3.5μm以上且つ15μm以下の範囲内において各種の赤外線センサにて検出可能な充分な放射強度を有している。
【0063】
図4には、実際のバーナ30にて形成される火炎から放射される赤外線の放射強度スペクトル分布を示す。この図から明らかなように、赤外線の波長範囲のうち、1.5μm以上且つ1.8μm以下の範囲、2.0μm以上且つ2.4μm以下の範囲、3.1μm以上且つ4.2μm以下の範囲、及び、8.0μm以上且つ12.0μm以下の範囲では、火炎からの赤外線の放射が少ない。
従って、前記2つの波長域を、赤外線の波長範囲のうちの前記バーナ30の火炎からの赤外線の放射が少ない範囲内に設定すると、火炎からの赤外線による影響が少ない状態で調理用容器Nから放射される赤外線の強度を精度よく検出することができる。
【0064】
上記のような波長域の赤外線強度を検出する2個の赤外線検出素子42a,42bとしては、Ge若しくはInGaAsを赤外線セルとして用いたもの、PbS若しくはPbSeを赤外線セルとして用いたもの、また、HgCdTeを赤外線セルとして用いたもの等、種々のものを利用することができる。また、上記の材料以外にも昇電素子やサーモパイル等を用いることもできる。
【0065】
次に、前記温度検出部50により調理用容器Nの温度を求める処理について説明する。尚、以下の説明では、前記2つの波長域をλ1,λ2にて示す。ちなみに、波長域λ2の方が波長域λ1よりも長波長側になる。
図5に、予め実験により求めた被加熱物(調理用容器N)の温度と前記赤外線強度検出部40における前記2つの波長域λ1,λ2夫々についての出力値(赤外線強度に対応する)との関係を示す。ちなみに、この図4に示す関係は、放射率(輻射率)が0.92の被加熱物を用いて得たものである。
【0066】
又、図6に、被加熱物(調理用容器N)の温度と赤外線強度検出部40における波長域λ1に対応する出力値と波長域λ2に対応する出力値との比である出力比(前記赤外線強度比に対応する)との関係(以下、温度対赤外線強度比の関係と記載する場合がある)を示す。ちなみに、この図6に示す温度対赤外線強度比の関係は、以下のようにして求めたものである。
【0067】
即ち、放射率の異なる複数の調理用容器夫々について、調理用容器の温度を複数の温度に異ならせて、複数の温度夫々について前記出力比を得る。そして、そのように放射率εの異なる複数の調理用容器について得たデータに基づいて、温度と出力比との関係の近似式を求めて、その求めた近似式を温度対赤外線強度比の関係としている。
従って、放射率εが種々に異なる調理用容器N夫々の温度対赤外線強度比の関係を、共通の1つの温度対赤外線強度比の関係とすることができるのである。又、上述のように求めた図6に示す如き温度対赤外線強度比の関係が温度検出部50の記憶部(図示省略)に記憶されることになる。
【0068】
そして、前記温度検出部50は、赤外線強度検出部40における波長域λ1に対応する出力値と波長域λ2に対応する出力値との出力比(前記赤外線強度比に対応する)を求め、記憶している温度対赤外線強度比の関係から調理用容器Nの温度を求める。このような出力値の比をとることで調理用容器Nの温度をその調理用容器Nの放射率に依存することなく正確に検出することができる。
【0069】
前記温度検出部50にて求められた温度の情報は前記燃焼制御部3に出力され、燃焼制御部3は、この温度検出部50にて求められる温度に基づいて、前記燃料供給断続弁6、前記燃料供給量調節弁7等を制御することにより、例えば調理用容器Nの温度を設定温度に維持するようにバーナ30の燃焼量を調整すべく燃料供給量調節弁7を制御したり、調理用容器Nの過度の温度上昇を回避させるためにバーナ30の加熱作動を停止させるべく燃料供給断続弁6を作動させる等の処理を行うことになる。
【0070】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
【0071】
(1)上記実施形態では、前記光学フィルターにおける前記基材が前記光透過部材と同じ材質にて構成され、且つ、前記光透過部材の厚みが前記光学フィルターの前記基材の厚みよりも大となるように構成されているものを例示したが、このような構成に限らず、前記光学フィルターが、前記基材を前記光透過部材の前記透過可能波長領域よりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成するものでもよい。
【0072】
このように前記光学フィルターの基材を光透過部材の透過可能波長領域よりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成する構成とする場合、図12に示すように、前記光学フィルターにおける前記基材が、前記光透過部材の前記透過可能波長領域に対応する波長領域における赤外線透過率が前記光透過部材の赤外線透過率よりも大きい材質にて構成されるものでもよい。つまり、図12のラインL3で示す波長対透過率特性を備える光透過部材に対して、図12のラインL4で示す波長対透過率特性を備える基材にて構成されるものである。
【0073】
(2)上記実施形態では、前記光透過部材Tとして、赤外線をそのまま透過させる窓部材46にて構成するものを示したが、このような構成に代えて、図13に示すように、調理用容器から放射される赤外線を集光して前記各赤外線受光素子に向けて案内する集光レンズ60にて前記光透過部材Tを構成するものでもよい。
【0074】
(3)上記実施形態では、前記温度検出手段により温度を求める処理として、調理用容器の温度を2つの波長域夫々についての赤外線強度の比に基づいて求める構成としたが、このような構成に代えて次のように構成してもよい。
例えば、予め、放射率の異なる複数の調理用容器を用いて、調理用容器の温度を複数の温度に異ならせて、複数の温度夫々について、前記複数の波長域夫々についての赤外線強度を得て、そのように得た前記複数の波長域夫々についての赤外線強度を、前記複数の温度夫々に対応させた状態でマップデータにして記憶させておく。そして、前記マップデータから、前記赤外線強度検出手段にて検出される前記複数の波長域夫々についての赤外線強度の関係に一致する又は類似する赤外線強度の関係を求めると共に、その求めた赤外線強度の関係に対応する温度を求め、その求めた温度を調理用容器の温度とするように構成する。ちなみに、この場合は、前記複数の波長域としては、上記の各実施形態のように2つの波長域でも良いし、3つ以上の波長域でも良い。
【0075】
又、前記波長域として1つの波長域を設定して、その波長域についての赤外線強度を複数の温度に対応させた状態でマップデータにて記憶させておき、このマップデータと前記波長域での赤外線強度の検出値とから調理用容器の温度を求める構成としてもよい。
【0076】
(4)上記実施形態では、赤外線強度検出手段が、2個の光学フィルター41a,41bを通過した赤外線を各別に検出する2個の赤外線検出素子42a,42bを備えて、調理用容器Nから放射される赤外線における互いに異なる2つの波長域夫々についての赤外線強度を検出するように構成したが、このような構成に代えて、1つの赤外線検出素子に対して2個の光学フィルターが交互に作用するように位置を切り換えて、その切り換えた状態の夫々における赤外線検出素子の検出値を用いて、互いに異なる波長域の赤外線強度を検出する構成としてもよい。又、赤外線検出素子及び光学フィルターを3個以上並べて備える構成として、3つ以上の異なる特定波長域の赤外線を各別に検出して、それらの検出情報に基づいて調理用容器の温度を検出する構成としてもよい。
【0077】
(5)上記実施形態では、前記加熱手段として、混合気を環状のバーナ本体から内向きに噴出させて燃焼させる内炎式バーナにて構成するものを示したが、混合気を外向き上方に噴出させるブンゼン燃焼式のバーナを備えたコンロとして構成してもよい。
つまり、図14に示すように、バーナ30が、天板1に形成された開口部1aの下方に、混合気を外向き上方に噴出させて燃焼させる炎口33を備える状態で設けられ、そのバーナ30の外周部には環状の汁受皿8が設けられ、汁受皿8の外側の上方に傾斜した部位に第1実施形態と同様な構成の赤外線強度検出部40が断熱材Dを介して設けられる構成としてもよい。
【0078】
(6)上記実施形態では、前記赤外線強度検出手段が、前記天板に形成された加熱用の開口を通して調理用容器から放射された赤外線の強度を検出するように構成されるものを例示したが、このような構成に限らず、前記加熱用の開口の横側方において前記天板に光透過用の窓部を形成して、前記赤外線強度検出手段がこの光透過用の窓部を通して調理用容器から放射されて光学フィルターを透過した赤外線の強度を検出するように構成としてもよい。従って、この構成では、天板に形成される光透過用の窓部が光透過部材に対応するものとなる。
【0079】
(7)上記実施形態では、前記加熱手段としてガス燃焼式のバーナにて構成したが、加熱手段はバーナに限定されるものではなく、例えば赤熱発光するハロゲンランプを用いたもの、電気抵抗線を内蔵したシーズヒータを用いたもの、又は、電磁誘導加熱(通常、「IH」と呼ばれる)を行う磁界発生コイルを用いたもの等、電気式加熱部にて構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】コンロの概略構成図
【図2】赤外線強度検出手段の縦断面図
【図3】調理用容器から放射される赤外線放射強度の分光スペクトルデータを示す図
【図4】火炎から放射される赤外線の放射強度スペクトル分布を示す図
【図5】被加熱物の温度と赤外線強度検出部の出力との関係を示す図
【図6】被加熱物の温度と赤外線強度検出部の出力比との関係を示す図
【図7】光学フィルターの断面図
【図8】サファイヤとシリコンの波長対透過率特性を示す図
【図9】光学フィルターの波長対透過率特性を示す図
【図10】サファイヤの波長対透過率特性を示す図
【図11】シリコンの波長対透過率特性を示す図
【図12】別実施形態の波長対透過率特性を示す図
【図13】別実施形態の赤外線強度検出手段の縦断面図
【図14】別実施形態のコンロの概略構成図
【符号の説明】
【0081】
41a,41b 光学フィルター
42a,42b 赤外線受光手段
47 案内部材
N 調理用容器
T 光透過部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段にて加熱される調理用容器から放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を透過させる光学フィルターと、その光学フィルターを透過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段とが、赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、前記光学フィルターが、前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる材質からなる基材の表面に前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる反射膜を備えて構成されている加熱調理器用の赤外線強度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記加熱調理器用の赤外線強度検出装置は、加熱手段により加熱される鍋等の調理用容器から放射された赤外線の強度を検出するようにしたものであり、その検出した赤外線の強度に基づいて、例えば、調理用容器の温度を検出して調理用容器の温度を設定温度に維持するように加熱手段の加熱量を調整する制御を行ったり、調理用容器の過度の温度上昇を回避させるために加熱手段の加熱作動を停止させる制御を行えるようにしたものであるが、このような加熱調理器用の赤外線強度検出装置において、従来では、次のように構成されたものがあった。
【0003】
すなわち、調理用容器から放射された赤外線を透過させる光透過部材としてのカバー部材が前記光学フィルターよりも調理用容器に近い側に位置して光学フィルターに近接させた状態で備えられ、調理用容器から溢れ出した煮汁等の外物が光学フィルターに降りかかることを防止するようになっていた。そして、前記光透過部材及び前記光学フィルターの基材は、必要とする特定波長域の赤外線を通過させるような特性を満足するものであればよく、それら両者の材質については特に考慮されていないものであった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ちなみに、特許文献1に記載されるものは、前記光学フィルターとして、異なる2つの特定波長域の赤外線を通過させる2つの光学フィルターが備えられ、且つ、それら2つの光学フィルターに対応させる状態で2つの赤外線受光手段が備えられ、調理用容器から放射される赤外線のうちの異なる2つの波長域での赤外線強度を検出する構成として、それらの2つの赤外線強度の比に基づいて調理用容器の温度を検出することができるようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2006−207961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来構成では、前記光透過部材が前記光学フィルターに近接させた状態で備えられる構成となっており、しかも、前記光透過部材及び前記光学フィルターの基材の材質については特に考慮されていないものであることから、赤外線の強度検出の精度が低下するおそれがあった。以下、そのことについて説明を加える。
【0007】
先ず、前記光学フィルターの構成について説明する。
前記光学フィルターは、特定波長域の赤外線だけを透過させることを目的とするものであり、前記基材の表面に光透過部材を通過した赤外線のうちの一部の波長域の赤外線を反射させる反射膜を備えて前記特定波長域の赤外線を通過させるように構成されるものである。すなわち、前記光学フィルターは、基材の表面に例えば誘電体薄膜を蒸着処理によって多層状に形成することにより前記反射膜が構成されるものであるが、このような光学フィルターでは、入射する赤外線のうちで前記反射膜により反射させる対象となる赤外線の波長領域が広くなると、形成すべき薄膜の層の数が多くなるものであるから、それだけ作成の手間が多くコストも高くなる。そこで、光学フィルターの基材として、赤外線の全波長領域のうちで一部の波長域では赤外線を透過させるが他の一部の波長域では赤外線を透過させない性質を有する材質からなる基材を用いることで、基材自身により一部の波長領域の赤外線の透過を阻止することで、反射膜を構成するときに形成すべき薄膜の数を減らした状態で作成することがある。
【0008】
そして、前記光透過部材及び前記光学フィルターの基材として使用可能な材質としては、例えば、サファイヤ、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等、種々のものが考えられるが、このような材質は全ての波長を透過するのではなく一部の波長領域の赤外線の通過を阻止するという性質を有する。
例えば、図8に、ラインL1にてサファイヤ、及び、ラインL2にてシリコン(Si)の夫々について、波長の変化に対する赤外線透過率の変化を示す波長対透過率特性を示している。図8から判るように、サファイヤは、約8μmよりも短波長側の赤外線を透過させるが、約8μmよりも長波長側の赤外線を透過させないので、透過可能波長領域が狭くなる性質を有している。一方、シリコンは、透過率の変動はあるものの透過可能波長領域がサファイヤよりも広くなる性質を有している。又、シリコンは、赤外線透過率がサファイヤの赤外線透過率よりも小さいという性質も有している。ちなみに、サファイヤの赤外線透過率は約90%程度であり、シリコンの赤外線透過率は50%〜60%程度である。
【0009】
上記従来構成の加熱調理器用の赤外線強度検出装置において、例えば、光学フィルターの基材としてサファイヤを用い、光透過部材としてシリコンを用いる構成にすることが考えられる。そして、この場合には、光学フィルターの反射膜としては、サファイヤが通過を許容する約8μmよりも短波長側の波長領域のうちで前記特定波長域を除く他の波長域の赤外線を反射させる反射膜を形成することになる。
【0010】
この構成では、シリコンにて構成される光透過部材は広い波長範囲にわたり赤外線を透過させるが、基材がサファイヤにて構成される光学フィルターにおいては、光透過部材を透過した赤外線のうち約8μmよりも長波長側の赤外線は光学フィルターの基材を透過せずに、基材に吸収されて熱エネルギーに変換されることになる。そうすると、基材に赤外線が吸収されることにより光学フィルターの温度が上昇することになる。
【0011】
又、シリコンにて構成される光透過部材は、サファイヤに比べて広い波長範囲にわたり赤外線を透過させるものの赤外線透過率は50%〜60%程度であるから、入射してくる赤外線のうちの50%〜60%程度の赤外線が透過するが、透過しない赤外線はその内部に吸収されて熱エネルギーに変換されることになるので、この光透過部材についても赤外線を吸収することによって温度が上昇することになる。又、上記従来構成では、光透過部材は光学フィルターに近接する状態で設けられているので、光透過部材の熱が光学フィルターに伝えられて光学フィルターの温度を上昇させるおそれがある。
【0012】
上述の説明では、光学フィルターの基材としてサファイヤを用い、光透過部材としてシリコンを用いる構成を例示したが、このような構成に限らず、前記光透過部材及び前記光学フィルターの基材の材質が適切でない場合であれば、そのことが原因で光学フィルターの温度を上昇させるおそれがある。又、そのことに加えて、光透過部材が光学フィルターに近接する状態で設けられる構成であれば、光透過部材の熱により光学フィルターの温度を上昇させるおそれがある。
【0013】
その結果、従来構成においては、光学フィルターの温度が上昇して、その熱に基づく赤外線が光学フィルターの近くに配備される赤外線受光手段に入射されることになる。そして、赤外線受光手段の検出する赤外線強度が上昇することに起因して検出誤差が大きくなるおそれがある。
【0014】
本発明の目的は、光学フィルターの温度が上昇することを抑制して検出誤差を少なくすることが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る加熱調理器用の赤外線強度検出装置は、加熱手段にて加熱される調理用容器から放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を透過させる光学フィルターと、その光学フィルターを透過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段とが、赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、
前記光学フィルターが、前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる材質からなる基材の表面に前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる反射膜を備えて構成されているものであって、
その第1特徴構成は、前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる光透過部材が、前記光学フィルターよりも前記調理用容器に近い側に位置して、前記赤外線放射方向に沿って前記光学フィルターと間隔を隔てて並ぶ状態で設けられ、
前記光学フィルターが、前記基材を前記光透過部材の前記透過可能波長領域と同じ又はそれよりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成する状態で、且つ、前記反射膜にて前記光透過部材を透過した赤外線のうちの前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる状態で構成されている点にある。
【0016】
第1特徴構成によれば、調理用容器から放射された赤外線が光透過部材を通過したのちに、光学フィルターに向けて照射されるが、光透過部材を透過した赤外線のうち特定波長域を除く他の波長領域の赤外線が光学フィルターにおける前記反射膜にて反射されて、前記特定波長域の赤外線だけが光学フィルターを透過して前記赤外線受光手段に向けて照射されることになる。
【0017】
そして、前記光学フィルターの基材が前記光透過部材の前記透過可能波長領域と同じ又はそれよりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成されているので、基材における透過可能波長領域のうちで前記光透過部材を透過しない波長領域の赤外線については、光学フィルターに至るまでの間に光透過部材の内部で吸収され、光学フィルターに向けて照射されることがない。又、基材における透過可能波長領域のうちで前記光透過部材を透過する波長領域の赤外線については、上述したようにその波長領域のうちの特定波長域を除く他の波長領域の赤外線は反射膜にて反射されるから基材にまで到達することがない。つまり、基材は特定波長域の赤外線だけが透過することになるから、基材に赤外線が吸収されることによる温度上昇のおそれが少なく、光学フィルター自身が赤外線の吸収によって温度上昇することが抑制される。
【0018】
上述したように調理用容器から放射された赤外線のうち光透過部材の透過可能波長領域以外の波長領域の赤外線は光透過部材に吸収されることになり、光透過部材の温度が上昇することがあるが、この光透過部材は、赤外線放射方向に沿って光学フィルターとは間隔を隔てる状態で備えられるので、光透過部材が温度上昇することがあっても、その熱が光学フィルターに伝わるおそれが少ない。
【0019】
その結果、光学フィルターは、基材に赤外線が吸収されることによる温度上昇が抑制され且つ光透過部材から熱が伝わるおそれも少ないので、光学フィルターの温度上昇による熱に基づく赤外線が光学フィルターの近くに配備される赤外線受光手段に入射されることがなく、そのことに起因して赤外線受光手段の検出する赤外線強度が上昇することが抑制されることになる。
又、前記光透過部材を、前記特定波長域以外の波長域のうちのできるだけ広い波長域の赤外線を透過させない材質にて構成することにより、光学フィルターの製作の容易化を図ることができる。
【0020】
従って、第1特徴構成によれば、光学フィルターの温度が上昇することを抑制して検出誤差を少なくすることが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供できるに至った。
【0021】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記光学フィルターにおける前記基材が、前記光透過部材の前記透過可能波長領域に対応する波長領域における赤外線透過率が前記光透過部材の赤外線透過率よりも大きい材質にて形成されている点にある。
【0022】
第2特徴構成によれば、前記光透過部材の前記透過可能波長領域に対応する波長領域、言い換えると、光透過部材を透過することが可能な波長領域において、光学フィルターにおける基材の赤外線透過率が光透過部材の赤外線透過率よりも大きいものとなる。
【0023】
説明を加えると、物質の赤外線透過率は0%〜100%の範囲内で規定され、一般的に用いられる材質のものでは、前記透過可能波長領域においても赤外線透過率が100%よりも小さい値であり、前記透過可能波長領域であっても赤外線透過率が100%よりも小さい分だけ赤外線の一部が物質の内部で吸収されることになる。
【0024】
つまり、赤外線が光透過部材を透過するとき、及び、赤外線が光学フィルターの基材を通過するときのいずれの場合にも赤外線の一部が吸収されることになるが、光透過部材を透過することが可能な波長領域において、光学フィルターの基材の赤外線透過率が光透過部材の赤外線透過率よりも大きいので、光学フィルターの基材においては、透過可能波長領域を透過する赤外線のうちで吸収されることになる赤外線の割合が少ないものになって、光学フィルターが温度上昇することを一層抑制し易いものになる。
【0025】
従って、第2特徴構成によれば、光学フィルターの温度上昇をより一層抑制し易いものになり、赤外線強度を精度よく検出することが可能となる。
【0026】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記光学フィルターにおける前記基材が前記光透過部材と同じ材質にて構成され、且つ、前記光透過部材の厚みが前記光学フィルターにおける前記基材の厚みよりも大となるように構成されている点にある。
【0027】
第3特徴構成によれば、光学フィルターにおける基材が光透過部材と同じ材質にて構成されるから、光透過部材を透過した赤外線は略そのまま光学フィルターの基材を透過することになるが、赤外線を透過する一般的な材質においては、同じ材質であれば、厚みが大であるほど赤外線を透過し難い特性であることから、光学フィルターの温度上昇をより的確に回避し易いものになるのである。
【0028】
具体例で説明すると、図10に、厚みを種々変化させた場合におけるサファイヤの波長の変化に対する赤外線透過率の変化を示す波長対透過率特性を示しており、図11には、厚みを種々変化させた場合のシリコンの波長の変化に対する赤外線透過率の変化を示す波長対透過率特性を示している。図10から判るように、サファイヤでは厚みが大きいほど、赤外線を透過させる領域と透過させない領域との境界が短波長側に位置が変化する性質を備えており、図11から判るように、シリコンでは、所定の波長領域においては、厚みが大きいほど赤外線透過率が減少するという性質を備えている。このように赤外線を透過する材質においては同じ材質であれば厚みが大であるほど赤外線を透過し難い特性を備えている。又、サファイアやシリコンに限らず、他の材質においても、これらと同様な性質を有している。
【0029】
そこで、同じ材質にて構成される光透過部材と光学フィルターの基材について、光透過部材の厚みが光学フィルターの厚みよりも大となるように構成されているから、光透過部材を透過した赤外線が光学フィルターの基材によって吸収されることが少なく、光学フィルターが赤外線を吸収することにより、温度上昇することをより一層的確に回避し易いものとなる。
【0030】
従って、第3特徴構成によれば、光学フィルターの温度上昇をより的確に回避し易いものとなって赤外線強度を精度よく検出することが可能となる。
【0031】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記調理用容器から放射された赤外線を前記赤外線受光手段に案内する筒状の案内部材が備えられ、この案内部材の内部に、前記赤外線放射方向に沿って間隔を隔てて並べる状態で、前記光透過部材、前記光学フィルター及び前記赤外線受光手段が組み付けられている点にある。
【0032】
第4特徴構成によれば、筒状の案内部材の内部に、赤外線放射方向に沿って間隔を隔てて並べる状態で光透過部材、光学フィルター及び赤外線受光手段が組み付けられているから、加熱調理器用の赤外線強度検出装置を加熱調理器に設置するときには、各部材が組み付けられている状態でそのまま設置させることで対応できるから、前記各部材を各別に加熱調理器に設置する場合に比べて設置作業を容易に行うことができる。
【0033】
従って、第4特徴構成によれば、加熱調理器に設置するときにおいて、設置作業を容易に行うことが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供できるに至った。
【0034】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成に加えて、前記赤外線受光手段が前記赤外線放射方向と交差する方向に並ぶ状態で複数備えられ、且つ、前記光透過部材を透過した赤外線のうちの異なる波長域の赤外線を透過させる形態で複数の赤外線受光手段に対応させて各別に前記光学フィルターが備えられている点にある。
【0035】
第5特徴構成によれば、光透過部材を通過した赤外線のうちで異なる波長域の赤外線が複数の光学フィルターを各別に通過して、赤外線放射方向と交差する方向に並ぶ状態で備えられた複数の赤外線受光手段にて受光されることになる。つまり、調理用容器から放射された赤外線のうちの複数の波長域の赤外線の強度を複数の赤外線受光手段にて各別に検出することができる。
【0036】
そして、光透過部材、複数の光学フィルター及び複数の赤外線受光手段が、筒状の案内部材の内部に組み付けられるので、調理用容器から放射された赤外線のうちの複数の波長域の赤外線の強度を検出することが可能なものでありながら、加熱調理器用の赤外線強度検出装置を加熱調理器に設置するときに、前記各部材を各別に加熱調理器に設置する場合に比べて設置作業を容易に行うことができる。
【0037】
従って、第5特徴構成によれば、調理用容器から放射された赤外線のうちの複数の波長域の赤外線の強度を検出することが可能なものでありながら、加熱調理器に設置するときにおいて、設置作業を容易に行うことが可能となる加熱調理器用の赤外線強度検出装置を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面に基づいて、本発明に係る加熱調理器用の赤外線強度検出装置の実施形態を加熱調理器としてのコンロに適用した場合について説明する。
図1に示すように、コンロは、円形の加熱用の開口1aを有する平板状の天板1、開口1aの上方に離間させて鍋等の調理用容器Nを載置可能な五徳2、その五徳2上に載置される調理用容器Nを加熱する加熱手段としてのバーナ30、そのバーナ30の作動を制御する燃焼制御部3等を備えて構成されている。
【0039】
前記バーナ30は、ブンゼン燃焼式の内炎式バーナであり、燃料供給路5を通じて供給される燃料ガスGを噴出するガスノズル31、そのガスノズル31から燃料ガスGが噴出されると共に、その燃料ガスGの噴出に伴う吸引作用により燃焼用空気Aが供給される混合管32、及び、内周部に混合気を噴出する複数の炎口33を備えて、前記混合管32から混合気が供給される環状のバーナ本体34等を備えて構成され、前記バーナ30は、前記開口1aの下方に位置させて設けている。
【0040】
このバーナ30においては、混合管32からバーナ本体34内に供給された燃料ガスGと空気Aとの混合気が炎口33からバーナ本体34の中心に向けて略水平方向に噴出され、その噴出された燃料ガスGと空気Aとの混合気が燃焼して、火炎Fが前記開口1aを通って上向きに形成される。
【0041】
燃料供給路5には、ガスノズル31への燃料ガスGの供給を断続する燃料供給断続弁6と、ガスノズル31への燃料ガスGの供給量を調節する燃料供給量調節弁7とが設けられ、バーナ30のバーナ本体34内の下方には、開口1aを介して落下した煮零れ等を受けるための汁受皿8が設けられる。
【0042】
さらに、このコンロには、天板1の下方側に位置し且つ汁受皿8の中央部に位置して調理用容器Nから放射された赤外線の強度を検出する赤外線強度検出装置としての赤外線強度検出部40と、その赤外線強度検出部40により検出された赤外線の強度に基づいて調理用容器Nの温度を検出する温度検出手段としての温度検出部50とが設けられている。
【0043】
前記赤外線強度検出部40は、調理用容器Nから放射される赤外線における異なる2つの特定波長域夫々についての赤外線強度を検出するように構成され、前記温度検出部50が、赤外線強度検出部40にて検出される2つの特定波長域夫々についての赤外線強度の比に基づいて調理用容器Nの温度を検出するように構成されている。
さらに、赤外線強度検出部40は、赤外線の波長範囲のうちのバーナ30の火炎からの放射強度が少ない範囲内に設定された波長域の赤外線強度を検出するように構成されている。
【0044】
図2に示すように、前記赤外線強度検出部40は、調理用容器Nから放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を通過させる光学フィルター41a,41bと、その光学フィルター41a,41bを通過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段としての赤外線受光素子42a,42bとが赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線の通過を許容する光透過部材Tとしての窓部材46が、光学フィルター41a,41bよりも調理用容器N側に位置して赤外線放射方向に間隔を隔てて光学フィルター41a,41bと並ぶ状態で備えられる構成となっている。
【0045】
又、調理用容器Nから放射された赤外線を赤外線受光素子42a,42bに案内する筒状の案内部材47が備えられ、この案内部材47の内部に、赤外線放射方向に沿って間隔を隔てて並べる状態で前記窓部材46、前記光学フィルター41a,41b及び前記赤外線受光素子42a,42bが組み付けられている。しかも、前記赤外線受光素子42a,42bが前記赤外線放射方向と交差する方向に並ぶ状態で2つ備えられ、且つ、窓部材46を通過した赤外線のうちで異なる波長域の赤外線を通過させる形態で2つの赤外線受光素子42a,42bに対応させて各別に光学フィルター41a,41bが備えられている。
【0046】
説明を加えると、図2に示すように、光入射用の開口部44を備え且つその開口部44以外は周囲を囲うように遮光性の部材にて構成されるケーシング43内に、前記開口部44を通じて入射する赤外線を検出可能なように、前記2個の赤外線検出素子42a,42bが台座48上に並べて設けられ、一方の赤外線検出素子42aに対して赤外線が入射する部分に一方の光学フィルター41aが設けられ、他方の赤外線検出素子42bに対して赤外線が入射する部分に他方の光学フィルター41bが設けられている。又、ケーシング43内には、前記2個の赤外線検出素子42a,42bの出力信号を処理する信号処理部45が設けられている。
【0047】
そして、ケーシング43における開口部44の上方側を囲うように、遮光性部材にて中空の筒状に形成された外側筒部材47Aが設けられ、この外側筒部材47Aの内部及びケーシング43における開口部44に嵌り合うとともに、前記2個の赤外線検出素子42a,42bに向けて赤外線を各別に案内するための2つの案内路Q1、Q2を形成する内側筒部材47Bが設けられている。そして、外側筒部材47Aと内側筒部材47Bとで前記案内部材47が構成されている。
【0048】
前記外側筒部材47Aの上端部にその外側筒部材47Aの筒内部を覆う状態で窓部材46が設けられている。この窓部材46は、調理用容器Nから放射された赤外線を外側筒部材47Aの内部に透過させるように構成されている。又、煮汁やその他の他物が光学フィルター41a,41bに降りかかることを防止して保護する機能も備えている。
【0049】
前記外側筒部材47Aは、調理用容器Nから放射されて窓部材46を透過した赤外線をケーシング43内部に導入し、横外側方から光が入り込まないようにケーシング43の開口部44に対して接続される構成となっている。そして、調理用容器N以外の他物、すなわち、五徳2やバーナ本体34から放射される赤外線がケーシング43内部に向けて導入され難いように上下方向に沿って長尺状に設けられている。
【0050】
前記内側筒部材47Bは、その上部水平面部分に左右一対の光導入口49が形成されており、前記外側筒部材47Aを通して案内される赤外線を一方の赤外線検出素子42aに向けて案内するための第1の案内路Q1が形成され、その第1の案内路Q1に位置させて一方の光学フィルター41aを内装する状態で支持する構成となっている。又、前記外側筒部材47Aを通して案内される赤外線を他方の赤外線検出素子42bに向けて案内するための第2の案内路Q2が形成され、その第2の案内路Q2に位置させて他方の光学フィルター41bを内装する状態で支持する構成となっている。
【0051】
前記外側筒部材47A及び前記内側筒部材47Bは、遮光性部材にて構成され、外部からの赤外線の進入が阻止される構成となっているが、窓部材46を透過した赤外線を吸収してそのことにより温度上昇することがないように、外側筒部材47Aの内周面並びに内側筒部材47Bにおける光導入口49が形成される上部水平面部分等は、赤外線を反射させるように高反射率の面となるように構成されている。
【0052】
この赤外線強度検出部40は、前記ケーシング43に対して、前記外側筒部材47A、前記内側筒部材47B、前記窓部材46、前記各光学フィルター41a,41b、及び、前記各赤外線受光素子42a,42bの夫々が組み付けられて構成されており、この赤外線強度検出部40をコンロに設置するときは、前記各物品が予めユニット状に組み付けられた状態で設置されることになる。
【0053】
図1に示すように、この赤外線強度検出部40は汁受皿8に形成された開口を通して上下方向に挿通する状態で設けられるが、汁受皿8からの熱が伝わり難くなるように、汁受皿に対して断熱材Dを介して装着される構成となっている。尚、前記各赤外線受光素子42a,42bが温度上昇しないように冷却ファン等の温度上昇抑制手段を設けるようにしてもよい。
【0054】
そして、前記光学フィルター41a,41bが、前記基材Kを前記窓部材46の透過可能波長領域と同じ透過可能波長領域を備える材質にて形成する状態で特定波長域の赤外線を透過させるように構成されている。具体的には、光学フィルター41a,41bの基材Kが窓部材46と同じ材質にて構成され、且つ、図2に示すように、窓部材46の厚みが光学フィルター41a,41bにおける基材Kの厚みよりも大となるように構成されている。
【0055】
そして、この実施形態では、前記各赤外線受光素子42a,42bにて検出される特定波長域の1つとして、8.0μm以上且つ12.0μm以下の範囲内の波長域を検出対象とする構成としており、光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46の材質として、シリコン(Si)を用いるようにしている。このようにシリコンを用いるようにしたのは、シリコンであれば、8.0μm以上且つ12.0μm以下の範囲内の波長域の赤外線を透過させるからである。
【0056】
そして、光学フィルター41a,41bの基材Kとして、シリコンを用いる場合、シリコンは、図11の波長対透過率特性に示すように、所定の波長領域においては、厚みが大きいほど赤外線透過率が減少するという性質を備えている。従って、光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46の材質としてシリコンを用いる場合、光透過部材Tの厚みを基材Kの厚みより大にすると、窓部材46を透過した赤外線が光学フィルター41a,41bの基材Kによって吸収されるおそれが少なく、光学フィルター41a,41bが赤外線を吸収することにより温度上昇することを的確に回避し易いものとなる。
【0057】
そこで、光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46の材質として、シリコンを用い、且つ、窓部材46の厚みを基材Kの厚みより大に設定する構成としている。
【0058】
又、前記光学フィルター41a,41bは、図7に示すように、上述したようにして選択された材質からなる特定波長域の赤外線を通過させる材質からなる基材Kの表面に、窓部材46を通過した赤外線のうちの特定波長域以外の赤外線を反射させる反射膜hを備えて特定波長域の赤外線を通過させるように構成されている。前記反射膜hは、例えば誘電体薄膜を蒸着処理によって多層状に形成して所定の波長域の赤外線を反射するものである。そして、このような構成の光学フィルター41a,41bは、例えば、図9に示すように、特定波長域の赤外線だけを透過させる構成となる。
【0059】
前記各赤外線受光素子42a,42bにて検出される特定波長域の1つとして、8.0μmよりも短波長側の波長域、例えば、2.0μm以上且つ2.4μm以下の範囲、及び、3.1μm以上且つ4.2μm以下の範囲内に設定するような場合であれば、光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46の材質として、サファイアを用いることも可能である。
【0060】
サファイヤを用いる場合であれば、サファイヤは、シリコンと同様に図10の波長対透過率特性に示すように厚みが大きいほど、赤外線を透過させる領域と透過させない領域との境界が短波長側に位置が変化する性質を備えているから、シリコンの場合と同様に、窓部材46の厚みを基材Kの厚みより大に設定する構成とすることで、窓部材46を透過した赤外線が光学フィルター41a,41bの基材Kによって吸収されるおそれが少なく、光学フィルター41a,41bが赤外線を吸収することにより温度上昇することを的確に回避し易いものにすることができる。
【0061】
尚、前記光学フィルター41a,41bの基材K及び窓部材46として使用可能な材質としては、シリコンやサファイヤ以外にも、例えば、ゲルマニウム(Ge)、CaF2(フッ化カルシウム)、MgF2(フッ化マグネシウム)、ZnSe(セレン化亜鉛)、Y2O3(酸化イットリウム)、SiO2(合成石英)等の種々の材質を用いることが可能である。
【0062】
次に、前記2つの波長域の設定の仕方について説明する。
図3には、金属の表面に黒色塗装した標準的な調理用容器Nについて、常温(25℃)から300℃程度の範囲で加熱したときに、温度が変化したときの赤外線放射強度の分光スペクトルデータを示している。この図から明らかなように、バーナ30が燃焼しているときの温度、例えば、常温〜300℃程度において、1.5μm以上且つ数十μm以下の範囲内の波長領域において赤外線が放射しており、例えば、3.5μm以上且つ15μm以下の範囲内において各種の赤外線センサにて検出可能な充分な放射強度を有している。
【0063】
図4には、実際のバーナ30にて形成される火炎から放射される赤外線の放射強度スペクトル分布を示す。この図から明らかなように、赤外線の波長範囲のうち、1.5μm以上且つ1.8μm以下の範囲、2.0μm以上且つ2.4μm以下の範囲、3.1μm以上且つ4.2μm以下の範囲、及び、8.0μm以上且つ12.0μm以下の範囲では、火炎からの赤外線の放射が少ない。
従って、前記2つの波長域を、赤外線の波長範囲のうちの前記バーナ30の火炎からの赤外線の放射が少ない範囲内に設定すると、火炎からの赤外線による影響が少ない状態で調理用容器Nから放射される赤外線の強度を精度よく検出することができる。
【0064】
上記のような波長域の赤外線強度を検出する2個の赤外線検出素子42a,42bとしては、Ge若しくはInGaAsを赤外線セルとして用いたもの、PbS若しくはPbSeを赤外線セルとして用いたもの、また、HgCdTeを赤外線セルとして用いたもの等、種々のものを利用することができる。また、上記の材料以外にも昇電素子やサーモパイル等を用いることもできる。
【0065】
次に、前記温度検出部50により調理用容器Nの温度を求める処理について説明する。尚、以下の説明では、前記2つの波長域をλ1,λ2にて示す。ちなみに、波長域λ2の方が波長域λ1よりも長波長側になる。
図5に、予め実験により求めた被加熱物(調理用容器N)の温度と前記赤外線強度検出部40における前記2つの波長域λ1,λ2夫々についての出力値(赤外線強度に対応する)との関係を示す。ちなみに、この図4に示す関係は、放射率(輻射率)が0.92の被加熱物を用いて得たものである。
【0066】
又、図6に、被加熱物(調理用容器N)の温度と赤外線強度検出部40における波長域λ1に対応する出力値と波長域λ2に対応する出力値との比である出力比(前記赤外線強度比に対応する)との関係(以下、温度対赤外線強度比の関係と記載する場合がある)を示す。ちなみに、この図6に示す温度対赤外線強度比の関係は、以下のようにして求めたものである。
【0067】
即ち、放射率の異なる複数の調理用容器夫々について、調理用容器の温度を複数の温度に異ならせて、複数の温度夫々について前記出力比を得る。そして、そのように放射率εの異なる複数の調理用容器について得たデータに基づいて、温度と出力比との関係の近似式を求めて、その求めた近似式を温度対赤外線強度比の関係としている。
従って、放射率εが種々に異なる調理用容器N夫々の温度対赤外線強度比の関係を、共通の1つの温度対赤外線強度比の関係とすることができるのである。又、上述のように求めた図6に示す如き温度対赤外線強度比の関係が温度検出部50の記憶部(図示省略)に記憶されることになる。
【0068】
そして、前記温度検出部50は、赤外線強度検出部40における波長域λ1に対応する出力値と波長域λ2に対応する出力値との出力比(前記赤外線強度比に対応する)を求め、記憶している温度対赤外線強度比の関係から調理用容器Nの温度を求める。このような出力値の比をとることで調理用容器Nの温度をその調理用容器Nの放射率に依存することなく正確に検出することができる。
【0069】
前記温度検出部50にて求められた温度の情報は前記燃焼制御部3に出力され、燃焼制御部3は、この温度検出部50にて求められる温度に基づいて、前記燃料供給断続弁6、前記燃料供給量調節弁7等を制御することにより、例えば調理用容器Nの温度を設定温度に維持するようにバーナ30の燃焼量を調整すべく燃料供給量調節弁7を制御したり、調理用容器Nの過度の温度上昇を回避させるためにバーナ30の加熱作動を停止させるべく燃料供給断続弁6を作動させる等の処理を行うことになる。
【0070】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
【0071】
(1)上記実施形態では、前記光学フィルターにおける前記基材が前記光透過部材と同じ材質にて構成され、且つ、前記光透過部材の厚みが前記光学フィルターの前記基材の厚みよりも大となるように構成されているものを例示したが、このような構成に限らず、前記光学フィルターが、前記基材を前記光透過部材の前記透過可能波長領域よりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成するものでもよい。
【0072】
このように前記光学フィルターの基材を光透過部材の透過可能波長領域よりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成する構成とする場合、図12に示すように、前記光学フィルターにおける前記基材が、前記光透過部材の前記透過可能波長領域に対応する波長領域における赤外線透過率が前記光透過部材の赤外線透過率よりも大きい材質にて構成されるものでもよい。つまり、図12のラインL3で示す波長対透過率特性を備える光透過部材に対して、図12のラインL4で示す波長対透過率特性を備える基材にて構成されるものである。
【0073】
(2)上記実施形態では、前記光透過部材Tとして、赤外線をそのまま透過させる窓部材46にて構成するものを示したが、このような構成に代えて、図13に示すように、調理用容器から放射される赤外線を集光して前記各赤外線受光素子に向けて案内する集光レンズ60にて前記光透過部材Tを構成するものでもよい。
【0074】
(3)上記実施形態では、前記温度検出手段により温度を求める処理として、調理用容器の温度を2つの波長域夫々についての赤外線強度の比に基づいて求める構成としたが、このような構成に代えて次のように構成してもよい。
例えば、予め、放射率の異なる複数の調理用容器を用いて、調理用容器の温度を複数の温度に異ならせて、複数の温度夫々について、前記複数の波長域夫々についての赤外線強度を得て、そのように得た前記複数の波長域夫々についての赤外線強度を、前記複数の温度夫々に対応させた状態でマップデータにして記憶させておく。そして、前記マップデータから、前記赤外線強度検出手段にて検出される前記複数の波長域夫々についての赤外線強度の関係に一致する又は類似する赤外線強度の関係を求めると共に、その求めた赤外線強度の関係に対応する温度を求め、その求めた温度を調理用容器の温度とするように構成する。ちなみに、この場合は、前記複数の波長域としては、上記の各実施形態のように2つの波長域でも良いし、3つ以上の波長域でも良い。
【0075】
又、前記波長域として1つの波長域を設定して、その波長域についての赤外線強度を複数の温度に対応させた状態でマップデータにて記憶させておき、このマップデータと前記波長域での赤外線強度の検出値とから調理用容器の温度を求める構成としてもよい。
【0076】
(4)上記実施形態では、赤外線強度検出手段が、2個の光学フィルター41a,41bを通過した赤外線を各別に検出する2個の赤外線検出素子42a,42bを備えて、調理用容器Nから放射される赤外線における互いに異なる2つの波長域夫々についての赤外線強度を検出するように構成したが、このような構成に代えて、1つの赤外線検出素子に対して2個の光学フィルターが交互に作用するように位置を切り換えて、その切り換えた状態の夫々における赤外線検出素子の検出値を用いて、互いに異なる波長域の赤外線強度を検出する構成としてもよい。又、赤外線検出素子及び光学フィルターを3個以上並べて備える構成として、3つ以上の異なる特定波長域の赤外線を各別に検出して、それらの検出情報に基づいて調理用容器の温度を検出する構成としてもよい。
【0077】
(5)上記実施形態では、前記加熱手段として、混合気を環状のバーナ本体から内向きに噴出させて燃焼させる内炎式バーナにて構成するものを示したが、混合気を外向き上方に噴出させるブンゼン燃焼式のバーナを備えたコンロとして構成してもよい。
つまり、図14に示すように、バーナ30が、天板1に形成された開口部1aの下方に、混合気を外向き上方に噴出させて燃焼させる炎口33を備える状態で設けられ、そのバーナ30の外周部には環状の汁受皿8が設けられ、汁受皿8の外側の上方に傾斜した部位に第1実施形態と同様な構成の赤外線強度検出部40が断熱材Dを介して設けられる構成としてもよい。
【0078】
(6)上記実施形態では、前記赤外線強度検出手段が、前記天板に形成された加熱用の開口を通して調理用容器から放射された赤外線の強度を検出するように構成されるものを例示したが、このような構成に限らず、前記加熱用の開口の横側方において前記天板に光透過用の窓部を形成して、前記赤外線強度検出手段がこの光透過用の窓部を通して調理用容器から放射されて光学フィルターを透過した赤外線の強度を検出するように構成としてもよい。従って、この構成では、天板に形成される光透過用の窓部が光透過部材に対応するものとなる。
【0079】
(7)上記実施形態では、前記加熱手段としてガス燃焼式のバーナにて構成したが、加熱手段はバーナに限定されるものではなく、例えば赤熱発光するハロゲンランプを用いたもの、電気抵抗線を内蔵したシーズヒータを用いたもの、又は、電磁誘導加熱(通常、「IH」と呼ばれる)を行う磁界発生コイルを用いたもの等、電気式加熱部にて構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】コンロの概略構成図
【図2】赤外線強度検出手段の縦断面図
【図3】調理用容器から放射される赤外線放射強度の分光スペクトルデータを示す図
【図4】火炎から放射される赤外線の放射強度スペクトル分布を示す図
【図5】被加熱物の温度と赤外線強度検出部の出力との関係を示す図
【図6】被加熱物の温度と赤外線強度検出部の出力比との関係を示す図
【図7】光学フィルターの断面図
【図8】サファイヤとシリコンの波長対透過率特性を示す図
【図9】光学フィルターの波長対透過率特性を示す図
【図10】サファイヤの波長対透過率特性を示す図
【図11】シリコンの波長対透過率特性を示す図
【図12】別実施形態の波長対透過率特性を示す図
【図13】別実施形態の赤外線強度検出手段の縦断面図
【図14】別実施形態のコンロの概略構成図
【符号の説明】
【0081】
41a,41b 光学フィルター
42a,42b 赤外線受光手段
47 案内部材
N 調理用容器
T 光透過部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段にて加熱される調理用容器から放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を透過させる光学フィルターと、その光学フィルターを透過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段とが、赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、
前記光学フィルターが、前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる材質からなる基材の表面に前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる反射膜を備えて構成されている加熱調理器用の赤外線強度検出装置であって、
前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる光透過部材が、前記光学フィルターよりも前記調理用容器に近い側に位置して、前記赤外線放射方向に沿って前記光学フィルターと間隔を隔てて並ぶ状態で設けられ、
前記光学フィルターが、前記基材を前記光透過部材の前記透過可能波長領域と同じ又はそれよりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成する状態で、且つ、前記反射膜にて前記光透過部材を透過した赤外線のうちの前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる状態で構成されている加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項2】
前記光学フィルターにおける前記基材が、前記光透過部材の前記透過可能波長領域に対応する波長領域における赤外線透過率が前記光透過部材の赤外線透過率よりも大きい材質にて形成されている請求項1記載の加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項3】
前記光学フィルターにおける前記基材が前記光透過部材と同じ材質にて構成され、且つ、前記光透過部材の厚みが前記光学フィルターにおける前記基材の厚みよりも大となるように構成されている請求項1又は2記載の加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項4】
前記調理用容器から放射された赤外線を前記赤外線受光手段に案内する筒状の案内部材が備えられ、この案内部材の内部に、前記赤外線放射方向に沿って間隔を隔てて並べる状態で、前記光透過部材、前記光学フィルター及び前記赤外線受光手段が組み付けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項5】
前記赤外線受光手段が前記赤外線放射方向と交差する方向に並ぶ状態で複数備えられ、且つ、前記光透過部材を透過した赤外線のうちの異なる波長域の赤外線を透過させる形態で複数の赤外線受光手段に対応させて各別に前記光学フィルターが備えられている請求項4記載の加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項1】
加熱手段にて加熱される調理用容器から放射された赤外線のうちの特定波長域の赤外線を透過させる光学フィルターと、その光学フィルターを透過した赤外線の強度を検出する赤外線受光手段とが、赤外線放射方向に間隔を隔てて並ぶ状態で備えられ、
前記光学フィルターが、前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる材質からなる基材の表面に前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる反射膜を備えて構成されている加熱調理器用の赤外線強度検出装置であって、
前記特定波長域を含む透過可能波長領域の赤外線を透過させる光透過部材が、前記光学フィルターよりも前記調理用容器に近い側に位置して、前記赤外線放射方向に沿って前記光学フィルターと間隔を隔てて並ぶ状態で設けられ、
前記光学フィルターが、前記基材を前記光透過部材の前記透過可能波長領域と同じ又はそれよりも広い透過可能波長領域を備える材質にて形成する状態で、且つ、前記反射膜にて前記光透過部材を透過した赤外線のうちの前記特定波長域以外の波長域の赤外線を反射させる状態で構成されている加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項2】
前記光学フィルターにおける前記基材が、前記光透過部材の前記透過可能波長領域に対応する波長領域における赤外線透過率が前記光透過部材の赤外線透過率よりも大きい材質にて形成されている請求項1記載の加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項3】
前記光学フィルターにおける前記基材が前記光透過部材と同じ材質にて構成され、且つ、前記光透過部材の厚みが前記光学フィルターにおける前記基材の厚みよりも大となるように構成されている請求項1又は2記載の加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項4】
前記調理用容器から放射された赤外線を前記赤外線受光手段に案内する筒状の案内部材が備えられ、この案内部材の内部に、前記赤外線放射方向に沿って間隔を隔てて並べる状態で、前記光透過部材、前記光学フィルター及び前記赤外線受光手段が組み付けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【請求項5】
前記赤外線受光手段が前記赤外線放射方向と交差する方向に並ぶ状態で複数備えられ、且つ、前記光透過部材を透過した赤外線のうちの異なる波長域の赤外線を透過させる形態で複数の赤外線受光手段に対応させて各別に前記光学フィルターが備えられている請求項4記載の加熱調理器用の赤外線強度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−241617(P2008−241617A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85565(P2007−85565)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】
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