説明

加熱調理器

【課題】調理容器を目標温度に的確に加熱できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】調理容器を加熱する加熱手段Bと、調理容器の温度を検出する温度検出手段S3と、温度検出手段S3の検出温度が設定目標温度になるように、加熱手段Bの単位時間当たりの加熱量を調整する運転制御手段Hとが設けられ、運転制御手段Hが、加熱手段Bにより調理容器を加熱しているときに、温度検出手段S3の検出温度の時間経過伴う変化に基づいて予測される収束温度が設定目標温度になる単位時間当たりの目標加熱量を求めて、加熱手段Bの単位時間当たりの加熱量を目標加熱量に調整する加熱量調整処理を実行するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器を加熱する加熱手段と、調理容器の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出温度が設定目標温度になるように、前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を調整する運転制御手段とが設けられた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる加熱調理器は、調理容器の温度が設定目標温度になるように加熱制御できるものであるため、例えば、天ぷら油を収納した調理容器を加熱して、揚げもの調理を行う際に便利に使用できるものである。
【0003】
このような加熱調理器の一例であるガスコンロの従来例として、運転制御手段としての制御回路が、加熱手段としてのガスバーナの点火後に油もの調理であるか否かを判定し、油もの調理であると判定したときには、温度検出手段としての温度センサの検出温度が設定目標温度としての維持温度(250℃)になるように、ガスバーナの火力(単位時間当たりの加熱量)を調整するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
説明を加えると、油もの調理であると判定されると、ガスバーナの火力が大火力に調整され、温度センサの検出温度が予備判定領域の下限温度(200℃)になると、温度センサの検出温度が下限温度から予備判定領域の上限温度(230℃)に上昇するまでに要する時間の計時が開始され、温度センサの検出温度が予備判定領域の上限温度に達すると、温度センサの検出温度が下限温度から上限温度に上昇するまでに要した上昇必要時間が第1規定時間(60秒)以下であるか否かを判定される。
そして、上昇必要時間が規定時間を超えているときには、温度上昇が遅いため、ガスバーナの火力が大火力に維持され、上昇必要時間が規定時間以下ときには、温度上昇が速いため、ガスバーナの火力が小火力に変更される。
【0005】
その後、230℃〜245℃の間の熱量制御領域において、温度センサの検出温度が設定温度(5℃)上昇するたびに、その上昇に要した所要時間が計測されて、所要時間が第2規定時間(15秒)以上であれば、ガスバーナの火力が大火力に調整され、逆に、所要時間が第2規定時間(15秒)よりも短ければ、ガスバーナの火力が小火力に調整されることになる。
【0006】
温度センサの検出温度が熱量制御領域の上限温度(245℃)に上昇したときに、温度センサの検出温度が設定温度上昇するのに要した所要時間に応じて、ガスバーナの火力が大火力あるいは小火力に調整されることになるが、いずれにしても、その後、温度センサの検出温度が維持温度に上昇することになる。
そして、温度センサの検出温度が維持温度に上昇すると、ガスバーナの火力が大火力であるときには、小火力に調整されることになる。
【0007】
また、温度センサの検出温度が維持温度に上昇したのち、温度センサの検出温度が、維持温度よりも2℃低い248℃まで低下すると、ガスバーナの火力が大火力に調整されることになり、その後、温度センサの検出温度が維持温度に再び上昇すると、ガスバーナの火力が小火力に調整されることになり、このようにガスバーナの火力を大火力と小火力とに切換えることを繰り返すことにより、温度センサの検出温度が維持温度付近に保たれることになる。
【0008】
さらに、温度センサの検出温度が維持温度に上昇したのち、温度センサの検出温度がさらに上昇して停止温度(270℃)に達すると、ガスバーナが消火されることになる。
つまり、例えば、油もの調理として炒めもの調理を行うような場合においては、ガスバーナの火力を小火力に調整しても、温度センサの検出温度が維持温度を超えて上昇し続けることになり、このような場合において、温度センサの検出温度が停止温度になると、ガスバーナが消火されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−270854号公報(第6頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の加熱調理器においては、オーバーシュートやアンダーシュートの発生により、調理容器を目標温度に的確に加熱できない虞があり、改善が望まれるものである。
すなわち、調理容器の温度が上昇されるときには、ガスバーナの火力が大火力に調整され、そして、温度センサの検出温度が目標温度に達すると、ガスバーナの火力が小火力に調整されることにより、調理容器の温度上昇を抑えることになるが、温度センサの検出温度が目標温度に達して、ガスバーナの火力を小火力に調整しても、その後、残熱等の影響により、調理容器の温度は上昇する傾向にあるため、オーバーシュートを発生する傾向にある。
【0011】
また、温度センサの検出温度が維持温度よりも設定温度低くなると、ガスバーナの火力が大火力に調整されて、調理容器の温度を上昇されることがなるが、ガスバーナの火力を大火力に調整するには時間が掛かること等に起因して、温度センサの検出温度が維持温度よりも設定温度低い温度よりもさらに低くなる、いわゆるアンダーシュートを発生する傾向にある。
しかも、ガスバーナの火力が大火力に調整されるのは、温度センサの検出温度が維持温度よりも設定温度低くなってからであり、本来的に、調理容器を目標温度に的確に維持できないものである。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、調理容器を目標温度に的確に加熱できる加熱調理器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の加熱調理器は、調理容器を加熱する加熱手段と、
調理容器の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出温度が設定目標温度になるように、前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を調整する運転制御手段とが設けられたものであって、その第1特徴構成は、
前記運転制御手段が、前記加熱手段により調理容器を加熱しているときに、前記温度検出手段の検出温度の時間経過伴う変化に基づいて予測される収束温度が前記設定目標温度になる単位時間当たりの目標加熱量を求めて、前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を前記目標加熱量に調整する加熱量調整処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0014】
すなわち、運転制御手段が、加熱量調整処理を実行することにより、温度検出手段の検出温度、つまり、調理容器の温度が設定目標温度になるように加熱されることになる。
【0015】
そして、加熱量調整処理は、加熱手段により調理容器を加熱しているときに、温度検出手段の検出温度の時間経過伴う変化に基づいて予測される収束温度が設定目標温度になる単位時間当たりの目標加熱量を求めて、加熱手段の単位時間当たりの加熱量を目標加熱量に調整するものであり、温度検出手段の検出温度が設定目標温度から外れている状態において、予測される収束温度が設定目標温度になる単位時間当たり目標加熱量を求めて、加熱手段の単位時間当たりの加熱量を目標加熱量に調整するものであるから、オーバーシュートやアンダーシュートの発生を回避した状態で、温度検出手段の検出温度、つまり、調理容器の温度が設定目標温度に加熱されることになる。
【0016】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、調理容器を目標温度に的確に加熱できる加熱調理器を提供できる。
【0017】
本発明の第2特徴構成は、上記した第1特徴構成に加えて、
前記運転制御手段が、前記加熱量調整処理として、
前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を一定に維持した状態において、前記温度検出手段の応答を一次遅れ系で近似し且つ前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を同じ加熱量に維持する条件にて定めた、前記温度検出手段にて検出される検出温度の設定時間おきの3つの検出値と前記収束温度との関係を示す演算式に基づいて、前記収束温度を求める収束温度演算処理、
前記収束温度演算処理にて求めた前記収束温度、その収束温度を求めたときの前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量、及び、前記設定目標温度に基づいて、前記目標加熱量を求める目標加熱量演算処理、及び、
前記目標加熱量演算処理にて求めた前記目標加熱量に前記加熱手段を操作する加熱手段操作処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0018】
すなわち、運転制御手段は、加熱量調整処理として、収束温度を求める収束温度演算処理を行い、次に、その収束温度演算処理にて求めた収束温度、その収束温度を求めたときの加熱手段の単位時間当たりの加熱量、及び、設定目標温度に基づいて、目標加熱量を求める目標加熱量演算処理、及び、目標加熱量演算処理にて求めた前記目標加熱量に前記加熱手段を操作する加熱手段操作処理を行うことになる。
【0019】
そして、収束温度演算処理は、加熱手段の単位時間当たりの加熱量を一定に維持した状態において、温度検出手段の応答を一次遅れ系で近似し且つ加熱手段の単位時間当たりの加熱量を同じ加熱量に維持する条件にて定めた、温度検出手段にて検出される検出温度の設定時間おきの3つの検出値と収束温度との関係を示す演算式に基づいて、収束温度を求めるものであり、温度検出手段の応答を一次遅れ系で近似した演算式を用いるものであるから、温度検出手段の応答を二次遅れ系等の高次遅れ系で近似した演算式を用いるようにする場合に比べて、四則演算により簡単に収束温度を求めることができる。
【0020】
つまり、例えば、温度検出手段の応答を二次遅れ系で近似した演算式を用いるようにすると、運転制御手段としては、複雑な演算を行う必要があるが、温度検出手段の応答を一次遅れ系で近似した演算式を用いることにより、運転制御手段として、四則演算を行えるものを用いて、四則演算により簡単に収束温度を求めることができるのである。
【0021】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記した第1特徴構成による作用効果に加えて、運転制御手段として、四則演算を行えるものを用いて、四則演算により簡単に収束温度を求めることができる加熱調理器を提供できる。
【0022】
本発明の第3特徴構成は、上記した第1又は第2特徴構成に加えて、
前記運転制御手段が、前記加熱量調整処理を実行したのち、設定時間が経過すると、再度前記加熱量調整処理を実行する形態で、前記加熱量調整処理を繰り返し実行するように構成されている点を特徴とする。
【0023】
すなわち、運転制御手段が、設定時間が経過するごとに、加熱量調整処理を繰り返し実行することになる。
そして、このように、加熱量調整処理が繰り返し実行されるから、設定目標温度が変更された場合や、調理容器に調理物が追加された場合等、調理条件が変化した場合においても、調理容器を設定目標温度に適切に加熱できることになる。
【0024】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第1又は第2特徴構成による作用効果に加えて、調理条件が変化した場合においても、調理容器を設定目標温度に適切に加熱できる加熱調理器を提供できる。
【0025】
本発明の第4特徴構成は、上記した第1〜第3特徴構成のいずれかに加えて、
前記運転制御手段が、加熱停止状態において、前記設定目標温度に加熱する加熱開始が指令されると、前記加熱手段の加熱力を最大加熱力に設定した状態で前記加熱手段の加熱を開始し、その後、前記温度設定手段の検出温度が制御開始温度に達すると、前記加熱量調整処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0026】
すなわち、運転制御手段が、加熱停止状態において、設定目標温度に加熱する加熱開始が指令されると、先ず、加熱手段の加熱力を最大加熱力に設定した状態で加熱手段の加熱を開始することになり、その後、温度設定手段の検出温度が制御開始温度に達すると、加熱量調整処理を実行することになる。
【0027】
このように、加熱停止状態において、設定目標温度に加熱する加熱開始が指令された際には、一旦、加熱手段の加熱力を最大加熱力に設定した状態で、温度設定手段の検出温度が制御開始温度に達するまで調理容器を加熱し、その後、加熱量調整処理を実行するものであるから、温度設定手段の検出温度が制御開始温度に達して、調理容器の温度上昇状態が安定したときに、加熱量調整処理を行うことにより、収束温度を適正に予測しながら目標加熱量を適正に求めることができ、調理容器を設定目標温度に的確に加熱することができる。
【0028】
また、設定目標温度に加熱する加熱開始が指令されてから、温度設定手段の検出温度が制御開始温度に達するまでの間は、加熱手段の加熱力が最大加熱力に設定されるから、調理容器を制御開始温度に迅速に加熱させることができ、調理時間が長くなることを回避できる。
【0029】
要するに、本発明の第4特徴構成によれば、上記第1〜第3特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、収束温度を適正に予測しながら目標加熱量を適正に求めて、調理容器を設定目標温度に的確に加熱することができながらも、調理時間が長くなることを回避できる加熱調理器を提供できる。
【0030】
本発明の第5特徴構成は、上記第1〜第4特徴構成のいずれかに加えて、
前記加熱手段が、加熱力を連続的に変更調整自在に構成され、
前記運転制御手段が、前記加熱量調整処理において、前記加熱手段の加熱力を、前記単位時間当たりの前記目標加熱量に対応する加熱力に調整するように構成されている点を特徴とする。
【0031】
すなわち、運転制御手段が、加熱量調整処理において、加熱力を連続的に変更調整自在な加熱手段の加熱力を、単位時間当たりの目標加熱量に対応する加熱量に調整することになる。
このように、加熱量調整処理において、加熱力を連続的に変更調整自在な加熱手段の加熱力が、単位時間当たりの目標加熱量に対応する加熱力に調整されるものであるから、加熱手段の加熱力を頻繁に変更することなく、単位時間当たりの目標加熱量にて調理容器を適切に加熱できる。
【0032】
要するに、本発明の第5特徴構成によれば、上記第1〜第4特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、加熱手段の加熱力を頻繁に変更することなく、単位時間当たりの目標加熱量にて調理容器を適切に加熱できる加熱調理器を提供できる。
【0033】
本発明の第6特徴構成は、上記第1〜第4特徴構成のいずれかに加えて、
前記加熱手段が、加熱力を複数段階に変更調整自在に構成され、
前記運転制御手段が、前記加熱量調整処理において、前記加熱手段の加熱力を、前記目標加熱量より大きい加熱量である大加熱力と前記目標加熱量より小さい加熱量である小加熱力とに繰り返し切換え、且つ、大加熱力にする大加熱力時間と小加熱力にする小加熱力時間との比を、前記単位時間当たりの前記目標加熱量に対応する比に調整するように構成されている点を特徴とする。
【0034】
すなわち、運転制御手段が、加熱量調整処理において、加熱力を複数段階に変更調整自在な加熱手段の加熱力を、目標加熱量より大きい加熱量である大加熱力と目標加熱量より小さい加熱量である小加熱力とに繰り返し切換え、且つ、大加熱力にする大加熱力時間と小加熱力にする小加熱力時間との比を、単位時間当たりの目標加熱量に対応する比に調整することになる。
【0035】
このように、加熱量調整処理において、加熱力を複数段階に変更調整自在な加熱手段の加熱力が、目標加熱量より大きい加熱量である大加熱力と目標加熱量より小さい加熱量である小加熱力とに繰り返し切換えられ、且つ、大加熱力にする大加熱力時間と小加熱力にする小加熱力時間との比が、単位時間当たりの目標加熱量に対応する比に調整されることにより、単位時間当たりの目標加熱量にて調理容器を加熱できるものであるから、加熱力を複数段階に変更調整自在な加熱手段を用いながらも、単位時間当たりの目標加熱量にて調理容器を適切に加熱できるものとなる。
【0036】
要するに、本発明の第6特徴構成によれば、上記第1〜第4特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、加熱力を複数段階に変更調整自在な加熱手段を用いながらも、単位時間当たりの目標加熱量にて調理容器を適切に加熱できる加熱調理器を提供できる。
【0037】
本発明の第7特徴構成は、上記第1〜第6特徴構成のいずれかに加えて、
前記運転制御手段が、前記加熱手段により調理容器を加熱しているときに、前記温度検出手段の検出温度の時間経過伴う変化に基づいて、調理容器の温度が時間経過に伴って変化する経時的温度変化を予測して、その予測した経時的温度変化及び前記収束温度を表す温度変化予測線を線図グラフにて表示手段に表示する表示処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0038】
すなわち、運転制御手段が、加熱手段により調理容器を加熱しているときに、表示処理を実行することにより、調理容器の温度が時間経過に伴って変化する経時的温度変化を予測して、その予測した経時的温度変化及び収束温度を表す温度変化予測線を線図グラフにて表示手段に表示することになる。
【0039】
このように、加熱手段により調理容器を加熱しているときに、温度変化予測線が線図グラフにて表示手段に表示されるから、調理容器の温度が時間経過に伴ってどのように変化するかが理解できるため、例えば揚げもの調理において、収束温度に達する以前から収束温度に近い温度が続く場合には、収束温度に達する前から具材を投入しても良いことが分かる等、調理を適切に行うための情報を認識することができ、調理を良好に行うことができる。
【0040】
要するに、本発明の第7特徴構成によれば、上記第1〜第6特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、調理を適切に行うための情報を認識して、調理を良好に行うことができる加熱調理器を提供できる。
【0041】
本発明の第8特徴構成は、上記第7特徴構成に加えて、
前記運転制御手段が、前記表示処理として、時間経過に伴う前記温度検出手段の検出温度の経時的な変化の履歴線を、前記温度変化予測線に重ねる状態で表示する処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0042】
すなわち、運転制御手段が、温度変化予測線を線図グラフにて表示手段に表示することに加えて、時間経過に伴う温度検出手段の検出温度の経時的な変化の履歴線を、温度変化予測線に重ねる状態で表示することになる。
【0043】
このように、温度変化予測線に加えて、履歴線が表示されるので、調理容器の加熱の進み具合を認識できるものとなり、例えば揚げもの調理において、具材を投入するタイミングを判断できる等、調理を適切に行うためのタイミングを認識して、調理を良好に行うことができる。
【0044】
要するに、本発明の第8特徴構成によれば、上記第7特徴構成による作用効果に加えて、調理を適切に行うためのタイミングを認識して、調理を良好に行うことができる加熱調理器を提供できる。
【0045】
本発明の第9特徴構成は、上記第7又は第8特徴構成に加えて、
前記運転制御手段が、前記温度検出手段の検出温度が加熱停止温度になると、前記加熱手段の加熱を強制停止するように構成され、且つ、前記表示処理として、前記加熱停止温度を、前記温度変化予測線に対応付ける状態で表示する処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0046】
すなわち、運転制御手段が、温度検出手段の検出温度が加熱停止温度になると、加熱手段の加熱を強制停止することになり、そして、加熱手段により調理容器を加熱しているときに、加熱停止温度を、温度変化予測線に対応付ける状態で表示することになる。
【0047】
このように、加熱手段により調理容器を加熱しているときに、加熱停止温度が、温度変化予測線に対応付ける状態で表示されるから、収束温度と加熱温度との差異を認識して、例えば、収束温度と加熱温度との差が小さい場合には、調理対象物の量を減少させるような処置をしてはいけないことが認識できる等、調理を適切に進めることができるものとなる。
【0048】
すなわち、調理対象物の負荷が異常に少ないときには、加熱手段の加熱力を最小加熱力に調整しても、調理容器の温度が設定目標温度を超えて上昇することがあるため、運転制御手段が加熱量調整処理を実行しても、調理容器の温度が設定目標温度を超える虞あり、場合によっては、調理容器の温度が加熱停止温度になる事態が考えられるが、このような事態が発生しないように、例えば揚げもの調理において、調理容器に十分な天ぷら油をいれておく等、調理を適切に進めることができるのである。
【0049】
要するに、本発明の第9特徴構成によれば、上記第7又は第8特徴構成による作用効果に加えて、調理を適切に進めることができる加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ガスコンロの斜視図
【図2】ガス燃料の流路構成を示す概略図
【図3】コンロバーナを示す縦断側面図
【図4】制御構成を示すブロック図
【図5】調理入力部を示す正面図
【図6】収束温度演算を説明する図
【図7】制御動作を示すフローチャート
【図8】制御作動を示すフローチャート
【図9】制御作動を示すフローチャート
【図10】制御作動を示すフローチャート
【図11】表示パネルの表示状態を示す説明図
【図12】表示パネルの表示状態を示す説明図
【図13】表示パネルの表示状態を示す説明図
【図14】別の実施形態のガス燃料の流路構成を示す概略図
【図15】別の実施形態の表示パネルの表示状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0051】
〔実施形態〕
本発明の実施形態を、加熱調理器の一例としてのガスコンロに本発明を適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、例示するガスコンロは、コンロ本体の上面部に装備の3つのコンロバーナ1A、1B、1C、及び、グリル部Gに装備のグリルバーナ2(図2参照)を備える状態に構成され、そして、キッチンカウンターに組み込まれるビルトインタイプに構成されている。
本実施形態においては、3つのコンロバーナ1A、1B、1Cが、鍋等の調理容器を加熱する加熱手段Bに相当する。
【0052】
3つのコンロバーナ1A〜1Cは、左側に配設される高火力バーナ1A、右側に配設される標準バーナ1B、及び、横幅方向の中央の奥側箇所に配設される小火力バーナ1Cから構成されている。
【0053】
ガスコンロの上面は、ガラス製のトッププレート3にて覆われ、ガスコンロの上面の後部側には、グリル部Gの燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成されている。
また、トッププレート3の上部には、3つのコンロバーナ1A〜1Cの夫々にて加熱される鍋等の調理容器を載置するための五徳5が設けられている。
さらに、トッププレート3の手前側箇所には、後述の如く、加熱状況を示す温度情報等を表示する表示手段としての液晶式の表示パネルPが設けられている。
【0054】
ガスコンロの前面部の右側側箇所には、3つのコンロバーナ1A〜1Cに対する操作部Jが設けられ、その操作部Jには、左側から右側に向けて、高火力バーナ1Aに対する高火力用操作具6A、小火力バーナ1Cに対する小火力用操作具6C、及び、標準バーナ1Bに対する標準用操作具6Bが配設されている。
尚、以下の記載において、高火力用操作具6A、小火力用操作具1C、及び、標準用操作具6Bを区別して記載する必要がないときには、操作具6A〜6Cと記載する。
【0055】
各操作具6A〜6Cは、対応するコンロバーナ1A〜1Cに対して点火及び消火を指令し且つ対応するコンロバーナ1A〜1Cの夫々についての目標火力(以下、手動設定火力と呼称する)を設定するために使用されるものであって、具体的には、前方側に押し込み操作されるごとに、点火指令と消火指令とを交互に指令し、また、前後方向軸心周りで正逆に回動操作されることにより、火力を5段階に変更設定するように構成されている。
尚、操作具6A〜6Cにて設定される5段階の火力を、手動設定火力と呼称する。
【0056】
そして、図4に示すように、各操作具6A〜6Cの夫々の回動位置を検出する回動位置検出センサ7A、7B、7C、及び、各操作具6A〜6Cの押し込みを検出する前後位置検出センサ8A、8B、8Cが設けられている。
これらの回動位置検出センサ7A〜7C及び前後位置検出センサ8A〜8Cの検出情報が、運転制御手段としての運転制御部Hに入力されている。
【0057】
また、操作部Jの下方側箇所には、調理メニュー等の情報を入力するコンロ用設定操作部Dが設けられている。
そして、図4に示すように、このコンロ用設定操作部Dの設定情報が、運転制御部Hに入力されている。
【0058】
運転制御部Hは、マイクロコンピュータを主要部として構成されて、ガスコンロの運転を制御するものであり、回動位置検出センサ7A〜7C及び前後位置検出センサ8A〜8Cの検出情報に基づいて、コンロバーナ1A〜1Cの夫々についての、消火指令、点火指令、及び、手動設定火力を判別して、コンロバーナ1A〜1Cの燃焼を制御するように構成され、また、コンロ用設定操作部Dの設定情報に基づいて、設定された調理メニューを実行すべく、コンロバーナ1A〜1Cの燃焼を制御されるように構成されており、その詳細は後述する。
【0059】
コンロ用設定操作部Dの上方箇所には、電源スイッチ11が設けられており、運転制御部Hは、電源スイッチ11が入り操作されたときに、運転制御を実行するための電力が供給されるように構成されている。
【0060】
ガスコンロの前面の左側箇所、つまり、中央側に位置するグリルGの左側箇所には、グリルバーナ2に対するグリル用設定操作部Eが配設されている。
そして、このグリル用設定操作部E設定情報に基づいて、運転制御部Hが、グリルバーナ2の燃焼を制御されるように構成されているが、本実施形態では、グリルバーナ2の燃焼制御についての詳細な説明は省略する。
【0061】
図2に示すように、都市ガス等のガス燃料が供給される元ガス供給路15に、3つのコンロバーナ1A〜1Cに対する3つのコンロ用分岐路16A、16B、16C、及び、グリルバーナ2に対するグリル用分岐路17が接続されている。
尚、グリルバーナ2は、一般に、被加熱物を上方から加熱する上バーナと被加熱物を下方から加熱する下バーナとを備えさせることになるが、本実施形態では、上バーナのみが備えられるものとして説明する。
【0062】
そして、元ガス供給路15には、閉じ付勢された電磁式の元ガス弁18が配設され、3つのコンロ用分岐路16A〜16Cの夫々には、3つのコンロバーナ1A〜1Cに供給するガス燃料の供給量を調節するコンロ用流量調節弁19A、19B、19Cが配設され、さらに、グリル用分岐路17には、グリルバーナ2に供給するガス燃料の供給量を調節するグリル用流量調節弁20が配設されている。
【0063】
コンロ用流量調節弁19A〜19Cは、コンロ用のステッピングモータ21A、21B、21Cにて操作されるように構成され、同様に、グリル用流量調節弁20が、グリル用のステッピングモータ22にて操作されるように構成されている。
ちなみに、本実施形態においては、コンロ用流量調節弁19A〜19Cが、加熱手段Bとしての3つのコンロバーナ1A〜1Cの燃料供給量調節手段Nに相当する。
【0064】
図2及び図3に示すように、3つのコンロバーナ1A〜1C及びグリルバーナ2の夫々に対して、点火用の点火プラグP、熱電対等を用いて構成される着火状態検出用の着火センサFが装備されている。
尚、グリルバーナ2として、上バーナと下バーナとを備えさせる場合には、夫々のバーナに対して、点火プラグP及び着火センサFが装備されることになる。
ちなみに、図3は、3つのコンロバーナ1A〜1Cのうちの、標準バーナ1Bを代表として例示するものである。
【0065】
また、3つのコンロバーナ1A〜1Cの夫々に対して、鍋等の調理容器の存否を検出し且つその温度を検出する被加熱物検出センサSが装備されている。
この被加熱物検出センサSは、上下方向に伸縮自在でかつ上方に復帰付勢された伸縮体S1を備えて、この伸縮体S1が被加熱物に押されて下方に移動したことを伸縮検知部S2にて検出することにより被加熱物の存在を検出するように構成され、また、伸縮体S1の上端部に設けた温度検知部S3が、調理容器に接触してその温度を検出するように構成されている。
尚、本実施形態においては、温度検知部S3が、調理容器としての鍋等の温度を検出する温度検出手段に相当する。
【0066】
運転制御部Hは、コンロバーナ1A〜1Cに対する基本的な処理として、点火処理、消火処理、火力の調節を行う加熱量変更処理、火力制限処理、高温強制停止処理、コンロ用の自動運転処理、及び、表示パネルPに加熱状況を示す温度情報等を表示する表示処理を実行するように構成されている。
ちなみに、運転制御部Hは、コンロバーナ1A〜1Cの加熱を開始したのちにおいて、温度検知部S3の検出温度THが100℃の前後で平衡する状態になるか否かを判定し、平衡する場合には調理対象物が煮物類であるとし、平衡しない場合には調理対象物が油物類であると判定する調理物判定処理を実行し、この調理物判定処理の判別結果を用いて、上記した火力制限処理、及び、高温強制停止処理が実行されることになり、詳細は後述する。
【0067】
点火処理は、コンロ用操作具6A〜6Cの点火指令に基づいて、コンロバーナ1A〜1Cに対して点火用流量にてガス燃料を供給すべく、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作したのち、コンロバーナ1A〜1Cに対する点火プラグPを作動させ且つ着火センサFにて着火を検出する処理である。
尚、運転制御部Hは、点火処理を行うときに、元ガス弁18が閉じているときには、この元ガス弁18を開き操作することになる。
【0068】
消火処理は、コンロ用操作具6A〜6Cの消火指令に基づいて、コンロバーナ1A〜1Cに対するガス燃料の供給を停止すべく、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作する処理である。また、この消火処理は、設定された調理メニューが終了した際にも実行されることになる。
尚、運転制御部Hは、消火処理を行うときに、3つのコンロバーナ1A〜1C及びグリルバーナ2の全てが消火される状態になるときには、元ガス弁18を閉じ操作することになる。
【0069】
加熱量変更処理は、コンロバーナ1A〜1Cの火力がコンロ用操作具6A〜6Cにて設定される手動設定火力になるように、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作する処理であるが、後述の如く、コンロ用設定操作部Dにて、調理メニューとして、揚げものが設定された場合には、演算して求めた目標火力になるように、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作する処理をも行うことになる。
【0070】
ちなみに、運転制御部Hは、コンロ用操作具6A〜6Cにて指令される5段階の手動設定火力にてコンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作する際には、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを、予め設定された5段階の火力に対応する状態に操作することになるが、後述の如く、調理メニューとして、揚げものが設定された場合において演算して求めた目標火力になるように、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作する際には、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを無段階に操作することになる。
【0071】
高温強制停止処理は、コンロバーナ1A〜1Cの燃焼中において、被加熱物が高温になって被加熱物検出センサSの温度検知部S3が加熱停止温度を検出すると、コンロバーナ1A〜1Cに対するガス燃料の供給を停止すべく、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作する処理である。
加熱停止温度は、調理物判定処理にて油物類が判定されたときや、後述の如くコンロ用設定操作部Dにて揚げもの運転が指令されたときには、例えば280℃が設定され、調理物判定処理にて煮物類が判定されたときには、調理物の焦げ付きを回避する温度が適宜設定されることになる。
【0072】
火力制限処理は、コンロバーナ1A〜1Cの燃焼中において、被加熱物が高温になって被加熱物検出センサSの温度検知部S3が加熱抑制温度を検出すると、コンロバーナ1A〜1Cの火力を最小火力にすべく、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作する処理である。
加熱抑制温度は、調理物判定処理にて油物類が判定されたときや、後述の如くコンロ用設定操作部Dにて揚げもの運転が指令されたときには、例えば260℃が設定され、調理物判定処理にて煮物類が判定されたときには、調理物の焦げ付きを回避する温度が適宜設定されることになる。
【0073】
自動運転処理は、コンロ用設定操作部Dの設定情報や被加熱物検出センサSの検出情報等に基づいて、コンロ用流量調節弁19A〜19Cを操作して、3つのコンロバーナ1A〜1Cに対するガス燃料供給量の調節やコンロバーナ1A〜1Cへの燃料供給を停止する処理である。
【0074】
運転制御部Hが実行する自動運転処理としては、変更設定された設定時間が経過すると自動的に消火するタイマー運転処理、被加熱物検出センサSにて検出される温度を変更設定される設定目標温度tSになるように火力を調整する揚げもの運転処理、被加熱物検出センサSにて検出される温度が沸騰を検出すると消火する湯わかし運転処理、及び、運転開始からの時間経過に伴って火力を設定パターンにて変更させる炊飯運転処理等がある。
【0075】
コンロ用の自動運転処理について説明を加える。
コンロ用設定操作部Dには、図5に示す如く、3つのコンロバーナ1A〜1Cに対する調理時間を入力するためのタイマー入力部D1、高火力バーナ1Aに対する調理入力部D2、及び、標準バーナ1Bに対する調理入力部D3と設けられている。
【0076】
高火力バーナ1Aに対する調理入力部D2と、標準バーナ1Bに対する調理入力部D3とは同様に構成されるものであって、標準バーナ1Bに対する調理入力部D3を代表として説明すると、この調理入力部D3は、揚げもの、炊飯、湯わかしの調理メニューを設定するように構成されている。
【0077】
つまり、調理入力部D3には、調理メニュー選択するスイッチとして、揚げものを指令する揚げものスイッチ26A、炊飯を指令する炊飯スイッチ26B、及び、湯わかしを指令する湯わかしスイッチ26Cが設けられ、さらに、設定を取り消すためのとりけしスイッチ26Dが設けられている。
【0078】
揚げものスイッチ26Cは、押し操作されるごとに、200℃、180℃、160℃といった複数種の設定目標温度tSを順次選択して設定できるように構成され、そして、調理入力部D3には、設定された温度の揚げもの調理を点灯により表示する温度表示部27A、27B、27Cが設けられている。
【0079】
炊飯スイッチ26Bは、押し操作されるごとに、ごはんの処理とおかゆの処理との異なる炊飯調理を選択して設定できるように構成され、設定された炊飯調理がごはんの処理であることを点灯により表示するごはん表示部28Aと、設定された炊飯調理がおかゆの処理であることを点灯により表示するおかゆ表示部28Bが、調理入力部D3に設けられている。
【0080】
湯わかしスイッチ26Cは、押し操作されるごとに、自動消火モード(沸騰検出するまでは最大ガス消費量で加熱した後、沸騰検出後に直ちに消火するモード)と、5分保温モード(沸騰検出するまでは最大火力で加熱した後、沸騰検出後に最小火力に減少させ、その後5分間加熱した後に消火するモード)とを選択して設定できるように構成され、設定されたモードが自動消火モードであることを点灯にて表示する自動消火表示部29Aと、設定されたモードが5分保温モードであることを点灯にて表示する5分保温表示部29Bとが、調理入力部D3に設けられている。
【0081】
したがって、運転制御部Hは、調理入力部D2、D3にて揚げもの運転、炊飯運転、及び、湯沸し運転が設定されると、操作具6A、6Bの点火指令により、高火力バーナ1A又は標準バーナ1Bを点火して燃焼させた状態において、調理入力部D2、D3の設定情報に基づいて、揚げもの運転処理、湯わかし運転処理、及び、炊飯運転処理を行うことになり、そして、揚げもの運転処理や湯わかし運転処理においては、高火力バーナ1Aや標準バーナ1Bの火力を調整すべく、コンロ用流量調節弁19A、19Bを操作する処理を行うことになる。
【0082】
運転制御部Hは、上述の如く、揚げもの運転処理においては、被加熱物検出センサSの温度検知部S3にて検出される温度が変更設定される設定目標温度tSになるように、高火力バーナ1Aや標準バーナ1Bの火力(単位時間当たりの加熱量)を調整することになるが、そのための具体的な処理として、高火力バーナ1Aや標準バーナ1Bにより調理容器を加熱しているときに、温度検知部S3の検出温度THの時間経過伴う変化に基づいて予測される収束温度yUが設定目標温度tSになる目標火力IW(単位時間当たりの目標加熱量)を求めて、高火力バーナ1Aや標準バーナ1Bの火力を目標火力IWに調整する加熱量調整処理を実行するように構成されている。
【0083】
以下、加熱量調整処理について説明を加えるが、この説明においては、標準バーナ1Bが実行する場合を例示する。
運転制御部Hが、加熱量調整処理として、収束温度演算処理、目標加熱量演算処理、及び、火力操作処理を実行するように構成されている。
ちなみに、本実施形態においては、火力操作処理が、本発明の加熱手段操作処理に相当する。
【0084】
収束温度演算処理は、標準バーナ1Bの火力(単位時間当たりの加熱量)を一定に維持した状態において、温度検知部S3の応答を一次遅れ系で近似し且つ標準バーナ1Bの火力(単位時間当たりの加熱量)を同じ火力(加熱量)に維持する条件にて定めた、温度検知部S3にて検出される検出温度THの設定時間おきの3つの検出値y0、y1、y2と収束温度yUとの関係を示す演算式(式1)に基づいて、収束温度yUを求める処理である。
yU=(y1・y1−y0・y2)/(2・y1−y0−y2)−−−−−−−−(式1)
尚、本実施形態では、温度検知部S3の3つの検出値y0、y1、y2は、設定時間としての10秒おきの検出値である。
【0085】
目標加熱量演算処理は、収束温度演算処理にて求めた収束温度yU、その収束温度yUを求めたときの標準バーナ1Bの火力(単位時間当たりの加熱量)、及び、設定目標温度tSに基づいて、目標火力IW(単位時間当たりの目標加熱量)を求める処理であり、具体的には、下記の式2に基づいて、目標火力IWを求める処理である。
IW=Sd(tS−t0)/(yU−t0)[kw]−−−−−−−−(式2)
t0は、基準温度であり、点火直後に記憶した温度検知部S3の検出温度である。
Sdは、一定に維持されることになる標準バーナ1Bの火力である。
【0086】
火力操作処理は、目標加熱量演算処理にて求めた目標火力IW(単位時間当たりの目標加熱量)に標準バーナ1Bを操作する処理であって、具体的には、標準バーナ1Bに対するコンロ用流量調節弁19B(燃料供給量調節手段N)を目標火力IW(単位時間当たりの目標加熱量)に対応する状態に操作すべく、コンロ用のステッピングモータ21Bを作動させる処理である。
【0087】
また、運転制御部Hが、加熱量調整処理を実行したのち、設定時間(例えば20秒)が経過すると、再度加熱量調整処理を実行する形態で、加熱量調整処理を繰り返し実行するように構成されており、このように加熱量調整処理を繰り返すことにより、調理容器を設定目標温度tSに的確に加熱できるようになっている。
【0088】
さらに、運転制御部Hが、加熱停止状態において、設定目標温度tSに加熱する加熱開始が指令されると、つまり、揚げもの運転が指令されると、標準バーナ1Bの火力(加熱力)を最大火力(最大加熱力)に設定した状態で標準バーナ1Bの加熱を開始し、その後、温度検知部S3にて検出される検出温度THが制御開始温度(例えば、70℃)に達すると、加熱量調整処理を実行するように構成されている。
【0089】
ちなみに、本実施形態においては、標準バーナ1Bが、火力(加熱力)を連続的に変更調整自在に構成されているから、運転制御部Hが、上述の如く、加熱量調整処理において、標準バーナ1Bの火力(加熱力)を、単位時間当たりの目標加熱量に対応する目標火力IWに調整するように構成されている。
【0090】
次に、収束温度yUを3つの検出値y0、y1、y2にて求める式1の導出について説明を加える。
温度検知部S3の応答を一次遅れ系で近似した場合において、現時点から時刻tが経過したのちにおいて現在温度から上昇することが予測される温度である予測上昇温度yは、式3にて表すことができる。
y=C・(1−exp(−t/τ))−−−−−−−−(式3)
Cは、無限大時間経過した時点における、時刻0時点の温度に対する上昇温度である。
τは、応答の時定数である。
【0091】
図6に示すように、温度検知部S3にて検出される検出温度THが制御開始温度に達した時点の温度y0、その時点から設定時間Δtが経過したときの温度y1、及び、さらにその時点から設定時間Δtが経過したときの温度y2に基づいて、上記式3を用いて、下記の式4及び式5が得られる。尚、図6は、設定目標温度tSが180℃の場合を例示している。
Y1=A・(1−exp(−Δt/τ))−−−−−−−−(式4)
Y2=A・(1−exp(−2Δt/τ))−−−−−−−−(式5)
ただし、Y1=y1−y0、Y2=y2−y0である。
また、Aは、収束温度yUと制御開始温度に達した時点の温度y0との差であり、上記式3のCに対応する。
【0092】
式5を変形すると、式6となる。
Y2=A・(1−exp(−Δt/τ)・exp(−Δt/τ))−−−−−−−−(式6)
式4及び式6を用いてAを消去すると、式7となる。
exp(−Δt/τ)=(Y2−Y1)/Y1−−−−−−−−(式7)
【0093】
式7を式4に代入すると、式8となる。
Y1=A・(2・Y1−Y2)/Y1−−−−−−−−(式8)
式8を整理すると、式9となる。
A=(Y1・Y1)/(2・Y1−Y2)−−−−−−−−(式9)
【0094】
収束温度yUは、A+y0であるから、式9を代入して、
yU=((Y1・Y1)/(2・Y1−Y2))+y0となり、この式を整理すると、
yU=(y1・y1−y0・y2)/(2・y1−y0−y2)の式1となる。
【0095】
以上の通り、温度検知部S3による検出温度THが制御開始温度(例えば70℃)になると、その温度をy0とし、以後設定時間Δt経過するごとの温度検知部S3による検出温度THをy1、y2として求め、そして、温度検知部S3による検出温度が制御開始温度y0に達してから後の温度検知部S3による検出温度THの応答を一次遅れ系で近似し、且つ、設定時間おきに求められる3つの温度y0、y1、y2との関係を定めた式1を用いて、その火力により加熱を継続した場合の収束温度yUを求めることができる。
【0096】
そして、式1により求めた収束温度yUが設定目標温度tS(例えば、180℃)より高い場合は、標準バーナ1Bの火力を最大火力に維持した状態を継続したときには調理容器(つまり調理容器の中の天ぷら油)の温度が設定目標温度tS(例えば、180℃)を超えることになるが、式2を用いて目標火力IWを求めて、標準バーナ1Bの火力を目標火力IWに調整できることになる。
【0097】
その結果、標準バーナ1Bの火力を最大火力に維持した場合には設定目標温度tS(例えば、180℃)を超えることになる収束温度yUは、式2を用いて求められた目標火力IWに標準バーナ1Bの火力が調整されることにより、設定目標温度tS(例えば、180℃)に近い温度となるのである。尚、図6においては、補正前の二点鎖線と補正後の実線とで示す。
【0098】
このように、加熱量調整処理を行うことによって、収束温度yUを設定目標温度tSに近づけることできるが、収束温度演算処理は、温度検知部S3による検出温度THの応答を一次遅れ系で近似することにより行うものであり、実際の温度検知部S3による検出温度THの応答は一次遅れ系とは多少異なるものであるから、標準バーナ1Bの火力を求めた目標火力IWに調整しても、その目標火力IWによる収束温度yUが設定目標温度tSに一致するとは限らないものとなる。
【0099】
そのため、標準バーナ1Bの火力を求めた目標火力IWに調整した後、つまり、加熱量調整処理を実行した後において、設定経過時間(例えば、20秒)経過すると、再び、加熱量調整処理を実行することを繰り返すことになる。
すなわち、加熱量調整処理を実行した後において、設定経過時間(例えば、20秒)が経過すると、再び、上記のy0、y1、y2を求めて、式1を用いて新たな収束温度yUを求め、その求めた収束温度yU及び式2を用いて、目標火力IWを求めて、標準バーナ1Bの火力を求めた目標火力IWに調整することになる。
【0100】
このように、加熱量調整処理を繰り返し行うことにより、例えば、調理容器中の天ぷら油に食材が投入される等により、調理容器の状態が変化したときにも、標準バーナ1Bの火力が、収束温度yUが設定目標温度tS(例えば、180℃)に一致する火力に調整されることになる。
【0101】
ところで、上述の如く、式2において、基準温度t0は、点火直後に記憶した温度検知部S3の検出温度であるが、点火直後において既に調理容器が一旦加熱されていた場合においては、点火直後に記憶した温度検知部S3の検出温度を、基準温度t0とすると、誤差が大きくなる。
このため、本実施形態においては、点火前の温度検知部S3の検出温度THの1分間の下降量が1℃以上のときには、設定値tE(例えば、15℃)を、基準温度t0とし、点火前の温度検知部S3の検出温度THの1分間の下降量が1℃未満であるときには、加熱開始時の温度として、点火直後に温度検知部S3にて検出して記憶した初期温度t1を、基準温度t0とするように構成されている。
【0102】
運転制御部Hは、上述の如く、トッププレート3に設けた表示パネルPに加熱状況を示す温度情報等を表示する表示処理を行うように構成されており、具体的には、高火力バーナ1Aや標準バーナ1Bを燃焼させた場合において、この表示処理を実行するように構成され、かつ、表示処理として、揚げもの運転を行う場合の揚げもの運転用表示処理と、それ以外の通常表示処理を行うように構成されている。
【0103】
ちなみに、高火力バーナ1Aと標準バーナ1Bとのいずれか一方が燃焼する場合には、その燃焼するバーナの加熱状況を示す温度情報が表示され、高火力バーナ1Aと標準バーナ1Bとが同時に燃焼する場合であって、一方が揚げもの運転を行う場合には、その揚げもの運転を行うバーナの加熱状況を示す温度情報が表示され、高火力バーナ1Aと標準バーナ1Bとが同時に燃焼する場合であって、いずれも揚げもの運転を行わない場合には、標準バーナ1Bの加熱状況を示す温度情報が表示されるようになっている。
【0104】
揚げもの用表示処理は、加熱を開始してから加熱量調整処理において収束温度yUを求める収束温度演算処理が終了するまでの間において、温度検知部S3の検出温度THの変化を示す履歴線Lを線図グラフにて表示する第1表示状態(図11参照)での表示、加熱量調整処理における収束温度演算処理が終了したのちにおいて、現在の火力を継続した場合において予測される経時的温度変化及び収束温度を表す温度変化予測線L2を線図グラフにて表示する第2表示状態(図12参照)の表示、及び、加熱量調整処理における火力操作処理(加熱手段操作処理)が行われた後において、収束温度yUが設定目標温度tS(例えば、180℃)に収束することを温度変化予測線L2にて表示する第3表示状態(図13参照)の表示にて、高火力バーナ1A又は標準バーナ1Bにて加熱される調理容器の温度の変化を表示する処理を行うように構成されている。
【0105】
すなわち、揚げもの用表示処理の第1〜第3表示状態においては、縦軸が温度を示し、横軸が時間経過を示すものとする状態で、設定目標温度tSを、例えば180℃が設定されている場合には、「設定温度=180℃」と表示し、加熱停止温度を、「加熱停止温度=280℃」と表示し、加熱抑制温度を、「加熱抑制温度=260℃」と表示し、また、設定目標温度に相当する横方向の直線M1(実線)、加熱停止温度に相当する横方向の直線K2(破線)、及び、加熱抑制温度に相当する横方向の直線K1(破線)を表示することになる。
【0106】
さらに、時間の経過を示す情報として、5分ごとの縦方向の直線(破線)R1、R2、R3が表示され、それらの直線R1、R2、R3に対応して、時間情報の内容を表すコメントが表示される。コメントの内容は、5分、10分、15分の言葉と、実測、現在、予測との組み合わせからなり、その時間と現在時刻と一致する場合には、現在が表示され、経過済みの場合には、実測が表示され、その時間に達していない場合には、予測が表示されるようになっている。
また、現在の調理メニューが揚げものであることや、現在の火力が、手動設定火力における5段階の火力のうちのいずれに近い火力であるかが、現在の火力として表示されるように構成されている。
【0107】
また、第2表示状態および第3表示状態においては、温度予測線(一点鎖線)L2と履歴線(実線)L1とが重ね合わされた状態で表示されるように構成されて、調理容器の温度の推移を、温度予測線L2と履歴線L1とから認識できるものとなる。
ちなみに、収束温度yUは、第2表示状態においては、設定温度、加熱停止温度及び加熱抑制温度と比較することにより、その値を読み取ることができ、また、第3表示状態においては、設定温度として読み取ることができる。
【0108】
したがって、例えば、設定目標温度tSを180℃として、揚げものを指令して、高火力バーナ1A又は標準バーナ1Bの点火を行うと、第1表示状態が表示される。
第1表示状態においては、温度検知部S3の検出温度THが時間経過に伴って履歴線L1にて表示されることになる。つまり、温度検知部S3の検出温度THが線図にてグラフ表示されることになる。
【0109】
第2表示状態においては、温度検知部S3の検出温度THが時間経過に伴って履歴線L1にて表示されることに加えて、現在の火力を継続した場合における温度変化の予測を示す温度変化予測線L2が表示されることになる。つまり、現在の火力を継続した場合における調理容器の温度変化の予測を示す温度変化予測線L2が、線図にてグラフ表示されることになる。
【0110】
第3表示状態においては、温度検知部S3の検出温度THが時間経過に伴って履歴線L1実線にて表示されることに加えて、調理容器の温度変化の予測を示す温度変化予測線L2が表示され、その温度変化予測線L2の収束温度yUが設定目標温度tS(例えば、180℃)に一致する。つまり、標準バーナ1Bの火力を求めた目標火力IWに調整した状態における調理容器の温度変化の予測を示す温度変化予測線L2が、線図にてグラフ表示されることになる。
【0111】
ちなみに、第2表示状態及び第3表示状態においては、加熱量調整処理が繰り返されるごとに、その加熱量調整処理の結果に基づいて、調理容器の温度変化が予測され、その予測にされた結果が表示されることになる。
【0112】
調理容器の予測温度は、加熱量調整処理を開始するときの温度(現在の温度)と、上述の式3に基づいて求められる予測上昇温度とを加えた値で求めることができる。
説明を加えると、式3にて予測上昇温度を求めるには、応答の時定数τ及び時刻0時点の温度に対する上昇温度であるCを必要とするが、Cは、式9におけるAに相当するものであり、式9を用いて求めることができ、また、応答の時定数τは、式4から導かれる式10により求めることができる。
τ=−Δt/ln((A―Y1)/A)−−−−−−−−(式10)
【0113】
式4から式10を導くことについて説明すると、式4は、
Y1=A−A・exp(−Δt/τ)と変形できる。この式を変形すると、
exp(−Δt/τ)=(A―Y1)/Aであるから、
−Δt/τ=ln((A―Y1)/A)となり、式10を導くことができる。
【0114】
尚、ln(1+x)の値は、xの絶対値が1未満であるときには、テイラー展開によってその近似値を有限級数によって求めることが出来るものであり、また、AおよびY1の定義からは式10における(A―Y1)/Aの値は0より大きく1より小さい正の値であることは明らかである。
従って、(A―Y1)/A=1+xとしたときのXの絶対値は1未満となるから、応答の時定数τは、その近似値を、式11に示すテイラー展開によって求めることができる。
【数1】

【0115】
また、上昇予測温度を式3にて求めるにあたり、exp(x)の値はテイラー展開によって式12に求めることができる。
【数2】

【0116】
したがって、運転制御部Hを構成するマイクロコンピュータが自然対数を求める関数としての命令を持たない場合にも、応答の時定数τの近似値を求め、また、上昇予測温度を求めて、調理容器の予測温度を求めることができる。
【0117】
運転制御部Hが実行する通常表示処理は、揚げもの表示処理における第1表示状態及び第2表示状態にて、高火力バーナ1A又は標準バーナ1Bにて加熱される調理容器の温度の変化を表示する処理であるが、揚げもの表示処理とは異なる点は、調理対象物が煮物類である場合には、加熱停止温度及び加熱抑制温度として、焦げ付きを回避する温度を定めて、表示する点である。
【0118】
つまり、運転制御部Hが、調理メニューが設定されない場合には、上述した調理物判定処理を実行して、調理対象物が油物類であるか、煮物類であるかを判定して、調理対象物に合わせた加熱停止温度及び加熱抑制温度を表示することになる。
【0119】
すなわち、運転制御部Hが、高火力バーナ1A又は標準バーナ1Bにより調理容器を加熱しているときに、温度検知部S3の検出温度THの時間経過伴う変化に基づいて、調理容器の温度が時間経過に伴って変化する経時的温度変化を予測して、その予測した経時的な温度変化及び収束温度yUを表す温度変化予測線L1を線図グラフにて表示パネルPに表示する表示処理を実行するように構成されている。
【0120】
また、運転制御部Hが、表示処理として、時間経過に伴う温度検知部S3の検出温度THの経時的な変化の履歴線L1を、温度変化予測線L2に重ねる状態で表示する処理を実行するように構成されている。
【0121】
さらに、運転制御部Hが、温度検知部S3の検出温度が加熱停止温度になると、コンロバーナ1A〜1Cの加熱を強制停止するように構成され、且つ、表示処理として、加熱停止温度を、温度変化予測線L2に対応付ける状態で表示する処理を実行するように構成されている。
【0122】
以下、運転制御部Hの制御作動についてフローチャートを参照にして説明するが、この説明においては、標準バーナ1Bについてのみ燃焼制御を行うものとして説明する。
【0123】
図7に示すように、運転制御部Hは、先ず、入力される各種の情報を読み取る情報読取処理(#1)を行う。
次に、標準バーナ1Bの加熱中であるか否かを判別し(#2)、加熱中である場合は、操作具6Bにて消火指令が指令されたか否かを判別し(#3)、消火指令が指令されていると、標準バーナ1Bを消火させる消火処理を実行する(#4)。
ステップ#3にて、消火指令が指令されていない場合には、後述するステップ#8に移行する。
【0124】
ステップ#2にて、加熱中でないと判別したときには、操作具6Bにて点火指令が指令されたか否かを判別し(#5)、点火指令が指令されていると、標準バーナ1Bを点火させる点火処理を実行し(#6)、点火指令が指令されていないときには、ステップ#1に移行する。
ステップ#6にて点火処理を実行したときには、そのときの温度検知部S3の検出温度THを、初期温度t1として記憶する。
【0125】
次に、温度検知部S3の検出温度THが70℃以上で、且つ、火力変更後15秒経過しているか否かを判別し(#8、9)、両条件が満たされていないときには、後述するステップ#14に移行する。
【0126】
温度検知部S3の検出温度THが70℃以上で、且つ、火力変更後15秒経過している条件が満たされているときには、コンロ用設定操作部Dにて調理メニューが設定されているか否かを判別し(#10)、調理メニューが設定されていないときには、被調理物が油物類であるか、煮物類であるかを、温度検知部S3の検出温度THに基づいて判定する調理物判定処理を実行する(#11)。
【0127】
ステップ#10にて調理メニューが設定されていると判別したとき、及び、ステップ#11の調理物判定処理を実行したあとは、収束温度演算処理(#12)、及び、目標加熱量演算処理(#13)を順次実行することになる。
【0128】
その後、温度検知部S3の検出温度THが加熱停止温度を超えているか否かを判別し(#14)、超えている場合には消火処理(#15)を実行して、ステップ#1に移行することになる。
【0129】
ステップ#14にて、温度検知部S3の検出温度THが加熱停止温度を超えていないと判別した場合には、次に、温度検知部S3の検出温度THが加熱抑制温度を超えているか否かを判別し(#16)、超えている場合には、標準バーナ1Bの火力を最小火力に強制設定する最小火力強制設定を行う(#17)。
【0130】
ステップ#16にて、温度検知部S3の検出温度THが加熱抑制温度を超えていないと判別した場合、及び、ステップ#17の最小火力強制設定を行ったのちは、加熱量変更処理(#18)、及び、表示処理(#19)を順次実行することになる。
【0131】
図8に基づいて、収束温度演算処理について説明する。
先ず、標準バーナ1Bの加熱を開始してから現在までの間に、収束温度yUを演算した実績があるか否かを判別し(#30)、収束温度設定済である場合には、収束温度変更タイミングであるか否かを判別する(#31)。
ちなみに、収束温度変更タイミングとは、本実施形態においては、加熱量調整処理を前回行ってからの経過時間が20秒経過した時点である。
【0132】
ステップ#31にて、収束温度変更タイミングでないと判別したときには、目標加熱量演算処理(#13)に移行し、収束温度変更タイミングであると判別したときには、タイマカウント中であるか否かを判別する(#32)
【0133】
ステップ#32にて、タイマカウント中でないと判別したときには、その時点の温度検知部S3の検出温度THを、収束温度yUを求めるための第1の検出温度y0として記憶し(#33)、タイマカウントを開始する(#34)。
【0134】
ステップ#32にて、タイマカウント中であると判別したときや、ステップ#34にてタイマカウントを開始したのちは、タイマカウントのカウント値が10秒であるか否かを判別し(#35)、カウント値が10秒であると判別したときには、その時点の温度検知部S3の検出温度THを、収束温度yUを求めるための第2の検出温度y1として記憶する(#36)。
【0135】
ステップ#35にて、カウント値が10秒でないと判別したときや、ステップ#36にて、収束温度yUを求めるための第2の検出温度y1を記憶する処理を実行したのちは、タイマカウントのカウント値が20秒であるか否かを判別する(#37)。
カウント値が20秒であると判別したときには、その時点の温度検知部S3の検出温度THを、収束温度yUを求めるための第3の検出温度y2として記憶し(#38)、タイマカウントを停止し、且つ、カウント値をクリアし(#39)、さらに、式1を用いて収束温度yUを求める(#40)。
【0136】
ステップ#37にて、カウント値が20秒でないと判別したときや、ステップ#40にて、式1を用いて収束温度yUを求めたのちは、目標加熱量演算処理(#13)に移行する。
【0137】
図9に基づいて、目標加熱量演算処理について説明する。
先ず、標準バーナ1Bの加熱を開始して現在迄の間に、収束温度yUを演算済みであるか否かを判別する(#50)。
そして、収束温度yUを演算済みでないと判別したときには、ステップ#14に移行する。
【0138】
ステップ#50にて、収束温度yUを演算済みであると判別したときには、設定目標温度tSがあるか否か、つまり、揚げもの運転であるか否かを判別し(#51)、揚げもの運転でないときには、ステップ#14に移行する。
【0139】
ステップ#51にて、設定目標温度tSがある、つまり、揚げもの運転であると判別したときには、標準バーナ1Bを点火させる前の温度検知部S3の検出温度THの1分間の下降量が1℃未満であるか否かを判別する(#52)。
そして、下降量が1℃未満であると判別したときには、ステップ#6にて記憶した初期温度t1を、式2における基準温度t0に設定し(#53)、また、下降量が1℃未満でないとき、つまり、点火前の温度検知部S3の検出温度THの1分間の下降量が1℃以上のときには、設定値tE(例えば、15℃)を、式2における基準温度t0に設定する。
【0140】
ステップ#53及び#54にて、基準温度t0を設定したのちは、式2を用いて目標火力IWを求め(#55)、目標火力IWを求めた後は、ステップ#14に移行する。
【0141】
図10に基づいて、加熱量変更処理について説明する。
先ず、ステップ#17において最小火力強制設定が行われたか否かを判別し(#60)し、最小火力強制設定が行われているときには、最小火力を設定火力に設定し(#61)し、次に、火力操作処理(加熱手段操作処理に相当)を実行する(#66)。
【0142】
火力操作処理(#66)は、標準バーナ1Bの火力が設定火力になるように、コンロ用流量調節弁19Bを操作する処理であり、具体的には、コンロ用流量調節弁19Bを設定火力に対応する位置に調節すべくステッピングモータ21Bを作動させることになる。
そして、火力操作処理を実行したのちは、表示処理#19に移行することになる。
【0143】
ステップ#60にて、最小火力強制設定が行われていないと判別したときは、設定目標温度tSがあるか否か、つまり、揚げもの運転であるか否かを判別し(#62)、揚げもの運転であると判別したときには、ステップ#13の目標加熱量演算処理にて目標火力IWが演算されたか否か、つまり、目標火力IWの演算済みであるか否かを判別する(#63)。
【0144】
ステップ#63にて、目標火力IWの演算済みでないと判別したときには、最大火力を設定火力に設定し(#64)、目標火力IWの演算済みで判別したときには、目標火力IWを設定火力に設定する(#65)。
このように、設定火力の設定を行った後は、ステップ#66の火力操作処理を実行することになる。
【0145】
ステップ#62にて、揚げもの運転でないと判別したときには、揚げもの以外の調理メニューが設定されているか否かを判別し(#67)、揚げもの以外の調理メニューが設定されていないときには、コンロ用操作具6Bにて設定される手動設定火力を設定火力に設定し(#68)、その後、火力操作処理(#66)に移行する。
【0146】
ステップ#67にて、揚げもの以外の調理メニューが設定されていると判別したときには、自動調理用処理(#69)を実行する。
この自動調理用処理(#69)は、タイマー運転処理、湯わかし運転処理、及び、炊飯運転処理を行うものであって、その詳細な説明は省略する。
【0147】
以上の通り、本実施形態においては、揚げもの運転を指令すると、収束温度yUがその揚げもの運転にて指令された設定目標温度tSになる目標火力IWが求められて、高火力バーナ1A又は標準バーナ1Bの火力が目標火力IWに調節されることになるので、オーバーシュートやアンダーシュートの発生を抑制した状態で、調理容器を設定目標温度tSに加熱できることになる。
【0148】
また、表示パネルPには、加熱される調理容器についての加熱を開始してからの温度変化の経過や、今後の温度変化の予測線が表示されるので、具材の投入時期の判断等を適切に行えるものとなる。
【0149】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
【0150】
(1)上記実施形態では、ステッピングモータにて駆動される流量調整弁にて、火力を最大火力と最小火力の間の任意の火力に連続的に調整できる場合を示したが、図14に示すように、手動により直接弁体を操作する手動式ガス流量調節弁41及びその手動式ガス流量調節弁41と直列にガス流量を制限するための電磁弁40を備えるメイン流路42と、オリフィス43を備えるサブ流路44とが並列状に設けられて、コンロバーナ45に対する火力調整が、電磁弁40の開閉により、最大火力(大火)、および、最小火力(小火)の2値にしか調整できない場合にも、本願発明は適用可能である。
【0151】
すなわち、目標加熱量演算処理にて目標火力IWを求めた後、ガス流量を制限するための電磁弁40をON/OFFするデューティ制御を次のように行う。
つまり、電磁弁40をデューティ制御するためのON/OFF周期における大火の比率を次式により求めたxに設定し、ON/OFF周期における小火の比率を(1−x)に設定する。
x=(IW−Imin)/(Imax−Imin)−−−−−−−−(式13)
ちなみに、電磁弁40をデューティ制御するためのON/OFF周期は、上述の式10により求まる時定数τに比べて短くすることにより、電磁弁40のON/OFFによる調理容器(例えば調理容器の中の天ぷら油)の温度変化を小さい値に抑えることができるものとなる。
尚、前記ON/OFF周期は時定数τに比べて十分短いこと(例えば、時定数τの50分の1程度以下)が望ましく、このようにすれば、調理容器の温度変化は、大火を継続した場合の収束温度と小火を継続した場合の収束温度との差の2%程度に抑えられる。
【0152】
要するに、加熱手段が、加熱力を複数段階に変更調整自在に構成される場合には、運転制御手段が、加熱量調整処理において、加熱手段の加熱力を、目標加熱量より大きい加熱量である大加熱力と前記目標加熱量より小さい加熱量である小加熱力とに繰り返し切換え、且つ、大加熱力にする大加熱力時間と小加熱力にする小加熱力時間との比を、単位時間当たりの目標加熱量に対応する比に調整することにより、調理容器を設定目標温度に加熱できるものとなる。
【0153】
(2)上記実施形態においては、表示パネルPに、加熱される調理容器についての加熱を開始してからの温度変化の経過や、今後の温度変化の予測線を表示させるようにしたが、現時点から収束温度yUより設定温度(例えば3℃)低い温度に達するまでの残時間を表示させるように運転制御部Hを構成してもよい。
つまり、図15に示すように、例えば、上記第3表示状態において、収束温度yUより設定温度(例えば3℃)低い温度に対応する下限線M2を横線として表示し、現時点からその温度に達するまでの残時間を数値表示させるように構成してもよい。
【0154】
ちなみに、残時間は式14にて求めることができる。
すなわち、収束温度yU(設定目標温度tS)より設定温度(例えば3℃)低い設定温度下限温度をT1とし、現在温度をT0としたとき、時定数がτで到達温度T2(収束温度yU)である一次遅れ系により温度変化を近似した場合、温度がT0からT1に達するのに要する時間である残時間txは、式14にて求めることができる。
tx=−τ・ln(1−T1/(T2−T0))−−−−−−−−(式14)
式14の導出について説明すると、上述の式3より、下記式を求めることができる。
T1=(T2−T0)(1−EXP(−tx/τ))
したがって、この式を変形することにより、式14を求めることができる。
【0155】
(3)上記実施形態では、加熱調理器として、3つのコンロバーナを備えるガスコンロを例示したが、本発明は、2つや4つのコンロバーナを備えるガスコンロにも適用できるものである。
【0156】
(4)上記実施形態では、加熱調理器として、3つのコンロバーナを備えるガスコンロを例示したが、本発明は、電磁調理機等の種々の加熱調理器に適用できるものである。
【0157】
(5)上記実施形態では、設定目標温度が設定される調理として、揚げもの運転を例示したが、本発明は、設定目標温度が設定される調理であれば、揚げもの運転以外にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0158】
B 加熱手段
H 運転制御手段
P 表示手段
S3 温度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を加熱する加熱手段と、
調理容器の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出温度が設定目標温度になるように、前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を調整する運転制御手段とが設けられた加熱調理器であって、
前記運転制御手段が、前記加熱手段により調理容器を加熱しているときに、前記温度検出手段の検出温度の時間経過伴う変化に基づいて予測される収束温度が前記設定目標温度になる単位時間当たりの目標加熱量を求めて、前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を前記目標加熱量に調整する加熱量調整処理を実行するように構成されている加熱調理器。
【請求項2】
前記運転制御手段が、前記加熱量調整処理として、
前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を一定に維持した状態において、前記温度検出手段の応答を一次遅れ系で近似し且つ前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量を同じ加熱量に維持する条件にて定めた、前記温度検出手段にて検出される検出温度の設定時間おきの3つの検出値と前記収束温度との関係を示す演算式に基づいて、前記収束温度を求める収束温度演算処理、
前記収束温度演算処理にて求めた前記収束温度、その収束温度を求めたときの前記加熱手段の単位時間当たりの加熱量、及び、前記設定目標温度に基づいて、前記目標加熱量を求める目標加熱量演算処理、及び、
前記目標加熱量演算処理にて求めた前記目標加熱量に前記加熱手段を操作する加熱手段操作処理を実行するように構成されている請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記運転制御手段が、前記加熱量調整処理を実行したのち、設定時間が経過すると、再度前記加熱量調整処理を実行する形態で、前記加熱量調整処理を繰り返し実行するように構成されている請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記運転制御手段が、加熱停止状態において、前記設定目標温度に加熱する加熱開始が指令されると、前記加熱手段の加熱力を最大加熱力に設定した状態で前記加熱手段の加熱を開始し、その後、前記温度設定手段の検出温度が制御開始温度に達すると、前記加熱量調整処理を実行するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱手段が、加熱力を連続的に変更調整自在に構成され、
前記運転制御手段が、前記加熱量調整処理において、前記加熱手段の加熱力を、前記単位時間当たりの前記目標加熱量に対応する加熱力に調整するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記加熱手段が、加熱力を複数段階に変更調整自在に構成され、
前記運転制御手段が、前記加熱量調整処理において、前記加熱手段の加熱力を、前記目標加熱量より大きい加熱量である大加熱力と前記目標加熱量より小さい加熱量である小加熱力とに繰り返し切換え、且つ、大加熱力にする大加熱力時間と小加熱力にする小加熱力時間との比を、前記単位時間当たりの前記目標加熱量に対応する比に調整するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記運転制御手段が、前記加熱手段により調理容器を加熱しているときに、前記温度検出手段の検出温度の時間経過伴う変化に基づいて、調理容器の温度が時間経過に伴って変化する経時的温度変化を予測して、その予測した経時的温度変化及び前記収束温度を表す温度変化予測線を線図グラフにて表示手段に表示する表示処理を実行するように構成されている請求項1〜6のいずれか1記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記運転制御手段が、前記表示処理として、時間経過に伴う前記温度検出手段の検出温度の経時的な変化の履歴線を、前記温度変化予測線に重ねる状態で表示する処理を実行するように構成されている請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記運転制御手段が、前記温度検出手段の検出温度が加熱停止温度になると、前記加熱手段の加熱を強制停止するように構成され、且つ、前記表示処理として、前記加熱停止温度を、前記温度変化予測線に対応付ける状態で表示する処理を実行するように構成されている請求項7又は8記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−127837(P2011−127837A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286723(P2009−286723)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】