説明

加熱調理器

【課題】可動ヒーターの有効活用が図れ、加熱効率がよく、加熱室底面の固定ヒーターを不要とすることができるようにする。
【解決手段】加熱室1内の両側に揺動中心が下方に位置する揺動機構8a,8bを介して可動ヒーター9a,9bを取り付けることで、加熱室内の側面に近設する垂直姿勢に配置されて使用される側面ヒーターモード、レール4a,4bに載置される角皿2や網3の底面に近設する傾斜姿勢に配置されて使用される中間ヒーターモード、及び加熱室内の底面に近設する水平姿勢に配置されて使用される底面ヒーターモード、の3加熱モードで使用できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱室内で数段階傾倒可能な可動ヒーターを備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、加熱室内でそれぞれ独立して動く可動ヒーターおよび可動式反射板と、この可動式反射板を常に可動ヒーターに対向するように付勢するばねなどの付勢手段と、被加熱物を載置するオーブン皿とを備え、可動ヒーターと可動式反射板はいずれも非使用時は加熱室壁に対向するように配置し、使用時はいずれも被加熱物に対向する位置、つまり被加熱物の上方に可動ヒーターと可動式反射板が水平に配置される加熱室高さ方向の中間位置に移動するとともに、オーブン皿使用時には、可動式反射板がオーブン皿に規制されて動きが拘束され、可動ヒーターのみが傾倒してオーブン皿下方(前記中間位置)に水平配置されるようにしている。また、加熱室内の上部と底部に固定式のヒーター(上部ヒーターおよび底部ヒーター)を設置し、調理によってこれら固定ヒーターと可動ヒーターおよび可動式反射板を組み合わせて使用するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3800715号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可動ヒーター(又は可動ヒーターと可動式反射板)が加熱室高さ方向の中間位置でのみ使用されるものにあっては、可動ヒーターが効率良く活用されておらず、さらに各種の調理に対応できるようにするために、加熱室の上部と底部にそれぞれ固定ヒーターが必要であった。
【0005】
また、可動ヒーターを被加熱物上方に配置する調理モード時には、反射板(可動式反射板)が必要であるだけでなく、加熱室における反射板(可動式反射板)上方にデッドスペースが形成され、対流成分が上方に逃げ、被加熱物を効率よく加熱できないという難点があった。
【0006】
本発明の技術的課題は、可動ヒーターの有効活用が図れ、加熱効率がよく、加熱室底面の固定ヒーターを不要とすることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、加熱室と、加熱室内の両側面の中間部に設けられて角皿や網を載置可能なレールと、加熱室内の上部に配置された上部ヒーターと、加熱室内の両側に揺動中心が下方に位置する揺動機構を介して取り付けられ、互いに連動して加熱室内で数段階傾倒可能な複数の可動ヒーターとを備え、可動ヒーターは、加熱室内の側面に近設する垂直姿勢に配置されて使用される側面ヒーターモード、レールに載置される角皿や網の底面に近設する傾斜姿勢に配置されて使用される中間ヒーターモード、及び加熱室内の底面に近設する水平姿勢に配置されて使用される底面ヒーターモード、にそれぞれ対応して、揺動機構により傾倒姿勢の切り替えが可能であるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱調理器によれば、可動ヒーターを、加熱室内の側面に近設する垂直姿勢に配置されて使用される側面ヒーターモード、レールに載置される角皿や網の底面に近設する傾斜姿勢に配置されて使用される中間ヒーターモード、及び加熱室内の底面に近設する水平姿勢に配置されて使用される底面ヒーターモード、の3加熱モードで使用するので、可動ヒーターの有効活用が図れる。さらに、中間ヒーターモード時や底面ヒーターモード時は、可動ヒーターが被加熱物の下方に配置されるので、加熱効率が向上する。また、加熱室底面の固定ヒーターを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の可動ヒーターによる側面ヒーターモード状態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の可動ヒーターによる中間ヒーターモード状態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の可動ヒーターによる底面ヒーターモード状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示実施の形態により本発明を説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る加熱調理器の可動ヒーターによる側面ヒーターモード状態を示す概略構成図、図2はその可動ヒーターによる中間ヒーターモード状態を示す概略構成図、図3はその可動ヒーターによる底面ヒーターモード状態を示す概略構成図である。
【0011】
本実施の形態の加熱調理器は、図1乃至図3のように加熱室1内の両側面の中間部に、電波が通過する素材で構成された角皿2(図3)や網3(図2)を載置可能なレール4a,4bが設けられている。また、加熱室1内の後部には、コンベクションファン5が配置されている。さらに、加熱室1内の上部には、上部ヒーター(例えばランプヒーター)6が複数配置されているとともに、加熱室1内の正面から見て左右両側に、揺動中心7a,7bが下方に位置する揺動機構8a,8bを介して可動ヒーター(例えばシーズヒーター)9a,9bが取り付けられている。可動ヒーター9a,9bは、揺動機構8a,8bにより互いに連動し、加熱室1内で数段階傾倒可能に構成されている。
【0012】
すなわち、可動ヒーター9a,9bは、揺動機構8a,8bにより、加熱室1内の側面に近設する垂直姿勢に配置されて使用される側面ヒーターモード(図1)、レール4a,4bに載置される網3(又は角皿2)の下面に近設する傾斜姿勢に配置されて使用される中間ヒーターモード(図2)、及び加熱室1内の底面に近設する水平姿勢に配置されて使用される底面ヒーターモード(図3)、にそれぞれ対応して、揺動機構により傾倒姿勢の切り替えが可能となっており、従来必要であった加熱室底面の固定ヒーターを不要とすることができるようになっている。なお、揺動機構8a,8bは、モータ駆動方式としてもよいし、手動により操作する方式としてもよいものである。また、左右の揺動機構8a,8bを連動させる手法としては、例えばギヤ機構やベルト連結方式等、採用可能である。
【0013】
これを更に詳述する。可動ヒーター9a,9bは、揺動機構8a,8b側のへの字状に屈曲された軸部材11a,11bに、碍子12a,12bを介して取り付けられ、電気的に絶縁されている。碍子12a,12bは、底面ヒーターモード時に、図3のように加熱室1の底面に当接して可動ヒーターを水平姿勢に保持するとともに、角皿2や網3の置台として機能するようになっている。
【0014】
レール4a,4bは、加熱室1内への突出量が側面ヒーターモード(図1)時の可動ヒーター9a,9bよりも小さく設定されているとともに、可動ヒーター9a,9bが傾倒動作時に角皿2や網3の載置部を横切るように構成されている。これにより、側面ヒーターモード時の状態、つまり可動ヒーター9a,9bが傾倒動作前の状態では、角皿2や網3をレール4a,4b上に載置できない構造になっていて、誤使用を防止できるようになっている。
【0015】
コンベクションファン5は、ヒーター調理後、連続して一定時間回転するように設定されている。これにより、加熱室1内の冷却と臭いの緩和をすることができるようになっている。
【0016】
角皿2や網3は、電波が通過する素材(例えばセラミック等)で構成されている。また、加熱室1内に導波管13を介して高周波を照射する高周波発生装置14が設けられている。これにより、フライ等の温めを、中はレンジでふっくら、外は高火力の上部ヒーター6や可動ヒーター9a,9bでカリッと仕上げることができるようになっている。
【0017】
本実施の形態の加熱調理器は、以上のように構成されているので、可動ヒーター9a,9bを加熱室1内の側面に近設する垂直姿勢に配置して使用する側面ヒーターモード(図1)による調理では、各上部ヒーター6と可動ヒーター9a,9bで包み込む加熱ができ、じっくりと煮込む料理等に適した調理ができる。
【0018】
また、可動ヒーター9a,9bをレール4a,4bに載置される網3(又は角皿2)の下面に近設する傾斜姿勢に配置して使用する中間ヒーターモード(図2)による調理(例えばトースト)では、各上部ヒーター6と可動ヒーター9a,9bの距離を短くでき、焼色を早く付けることができる。
【0019】
また、可動ヒーター9a,9bを加熱室1内の底面に近設する水平姿勢に配置して、碍子12a,12b上に角皿2(又は網3)を載置して行う底面ヒーターモード(図3)による調理(例えばスポンジケーキ)では、各上部ヒーター6と可動ヒーター9a,9bの距離を長くでき、中までしっかりと火を通すことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 加熱室、2 角皿、3 網、4a,4b レール、5 コンベクションファン、6 上部ヒーター、7a,7b 揺動中心、8a,8b 揺動機構、9a,9b 可動ヒーター、11a,11b 軸部材、12a,12b 碍子、13 導波管、14 高周波発生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱室と、
前記加熱室内の両側面の中間部に設けられて角皿や網を載置可能なレールと、
前記加熱室内の上部に配置された上部ヒーターと、
前記加熱室内の両側に揺動中心が下方に位置する揺動機構を介して取り付けられ、互いに連動して加熱室内で数段階傾倒可能な複数の可動ヒーターとを備え、
前記可動ヒーターは、
前記加熱室内の側面に近設する垂直姿勢に配置されて使用される側面ヒーターモード、
前記レールに載置される角皿や網の下面に近設する傾斜姿勢に配置されて使用される中間ヒーターモード、及び
前記加熱室内の底面に近設する水平姿勢に配置されて使用される底面ヒーターモード、
にそれぞれ対応して、前記揺動機構により傾倒姿勢の切り替えが可能であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記レールは、前記加熱室内への突出量が前記側面ヒーターモード時の前記可動ヒーターよりも小さく設定され、前記可動ヒーターが傾倒動作時に前記角皿や網の載置部を横切るように構成されていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱室内の後部にコンベクションファンを備え、
前記コンベクションファンは、ヒーター調理後、連続して一定時間回転するように設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記可動ヒーターは、前記揺動機構に碍子を介して取り付けられており、前記碍子は、前記底面ヒーターモード時に、前記加熱室の底面に当接して前記可動ヒーターを水平姿勢に保持するとともに、前記角皿や網の置台として機能することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記角皿や網を電波が通過する素材で構成するとともに、前記加熱室内に高周波を照射する高周波発生装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−158184(P2011−158184A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20211(P2010−20211)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】