説明

加硫用金型の異常検知装置及び異常検知方法

【課題】タイヤ加硫用金型のメンテナンスを適切に行って、無駄なコストを掛けずに前記加硫用金型の破損を事前に防止する。
【解決手段】 上部サイドモールド2と下部サイドモールド4、前記上・下部のサイドモールド間に配置されたセグメントからなるタイヤ加硫用金型の異常検知装置140であって、型開き時に上部サイドモールド2を引き上げるクレーン130に作用する負荷を検出する歪みセンサー110と、検出した負荷から前記加硫用金型の摺動抵抗に基づく負荷を演算し、演算した摺動抵抗負荷と、予め定めた基準値とを比較して、演算した摺動抵抗負荷が基準値を超えたとき、前記加硫用金型の異常を判断し、金型異常判断部が異常と判断したとき、当該加硫用金型のメンテナンスが必要であるとの情報をメッセージや音声などで表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫用金型のメンテナンスのタイミングを的確に知るためにその異常を検知する加硫用金型の異常検知装置及び異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの成形に加硫用金型が用いられているが、この加硫用金型は金型の異常がない限り予め定めた型付けの回数、又は使用年数まで使用し続けている。しかし、万一加硫用金型が破損すると、大きな生産阻害となる。
これを回避するためには、加硫用金型の適正なメンテナンスが必要となるが、加硫用金型の使用現場からの情報に応じてメンテナンスを行う場合、異音や、目視による異常、上部金型を引き上げるクレーンの操作状況など、現場からの情報は定量化し難いものが多いため、実際にメンテナンスを行うか否か判断に迷うことがある。
【0003】
従来は加硫用金型の適切なメンテナンス周期が不明であるために、破損する前に早期に整備を行う等などで加硫用金型の破損を回避しているが、実際にはメンテナンスが必要でない場合でも、例えば一定使用時間などに基づきメンテナンスを行っている。そのため不必要なコストが発生していることになる。
したがって、適正なタイミングで加硫用金型のメンテナンスを行うことが好ましいが、加硫用金型の異常についての定量化は困難であるため、メンテナンスを実施すべきか否かの判断は難しく、上記のようなコストが掛かる方法に頼らざるを得ないというのが現状である。
【0004】
なお、金型の異常を検知する装置として、プレス加工される材料を支承する金型の一部に歪みセンサ装置を取り付け、この歪みセンサ装置からの検出信号を入力し、取り出された波形が正常範囲から逸脱したとき異常信号を出力する歪みセンサ利用異常検知装置が知られている(特許文献1参照)。
しかし、この歪みセンサ利用異常検知装置は、金型のメンテナンスを目的とするものではなく、プレス装置の金型やパンチの破損を検知することを目的に金型に直接取り付けるものであるため、上部及び下部サイドモールドとセグメントから成るタイヤ加硫用金型のメンテナンスを実施すべきかどうかの判断にその装置を用いることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−218451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決するためなされたものであって、加硫用金型のメンテナンス実施の判断が容易にでき、生産中に金型が破損して金型を放置するのを事前に回避できる加硫用金型の異常検知装置及び異常検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、上部金型と下部金型、前記上・下部の金型間に配置され上部金型の上下動に伴って金型の半径方向に移動自在な複数のセグメントからなるタイヤ加硫用金型の異常検知装置であって、型開き時に上部金型を引き上げる引上装置に作用する負荷を検出する負荷検出手段と、検出した負荷から前記加硫用金型の摺動部の摺動抵抗に基づく負荷を演算する負荷演算部と、演算した摺動抵抗負荷と、予め定めた基準値とを比較して、演算した摺動抵抗負荷が基準値を超えたとき、前記加硫用金型の異常を判断する金型異常判断部と、金型異常判断部が異常と判断したとき、当該加硫用金型のメンテナンス情報を表示する表示手段と、を有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知装置において、前記負荷演算部は、負荷検出手段の出力から記憶手段に予め記憶した当該加硫用金型の質量及びタイヤ脱型力の基準値を減算して前記摺動抵抗負荷を得ることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知装置において、負荷検出手段は歪みセンサーであることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知装置において、前記引上装置はクレーンであって、前記歪みセンサーは引上装置の前記クレーンの歪みを検知することを特徴とする。
請求項5の発明は、上部金型と下部金型、前記上・下部の金型間に配置され上部金型の上下動に伴って金型の半径方向に移動自在な複数のセグメントからなるタイヤ加硫用金型の異常検知方法であって、型開き時に上部金型を引き上げる引上装置に作用する負荷を検出する負荷検出工程と、検出した負荷から前記加硫用金型の摺動部の摺動抵抗に基づく負荷を演算する負荷演算工程と、演算した摺動抵抗負荷と、予め定めた基準値とを比較して、演算した摺動抵抗負荷が基準値を超えたとき、前記加硫用金型の異常を判断する金型異常判断工程と、金型異常判断工程において異常と判断されたとき、当該加硫用金型のメンテナンス情報を表示する表示工程と、を有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知方法において、前記負荷演算工程は、負荷検出工程で得られた負荷検出手段の出力から記憶手段に予め記憶した当該加硫用金型の質量及びタイヤ脱型力の基準値を減算して前記摺動抵抗負荷を得る工程であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項5又は6に記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知方法において、負荷検出工程は歪みセンサーにより前記負荷を検出する工程であることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項5ないし7のいずれかに記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知方法において、前記引上装置はクレーンであって、前記負荷検出工程は前記クレーンの歪みを検知する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば以下の効果を得ることができる。即ち、
(1)加硫用金型の負荷状態が定量的に分かるため、メンテナンス時期を的確に把握することができ、適切なメンテナンスを行うことにより、金型の寿命を延ばすことができる。
(2)従来は生産阻害を回避するために常に予備金型を準備しておくことが必要であるが、金型のメンテナンスを必要なときに適宜行うことができるため、そのような予備金型は必要でなくなる。
(3)無駄なメンテナンスを行う必要がないことから上記によりメンテナンス費用を大幅に低減することができる。
(4)結果として、連続生産中での金型破損を未然に防止することできるため、生産阻害の発生を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態のタイヤ加硫用金型の開放状態の断面図である。
【図2】本発明の実施形態のタイヤ加硫用金型の閉止状態の断面図である。
【図3】本実施形態において、上部サイドモールドを引き上げるときにクレーンの走行クラブフレームに作用する負荷(クレーン負荷)の時間変化を示すグラフである。
【図4】本実施形態の金型の異常検知装置を概略的に示すブロック図である。
【図5】本実施形態の金型の異常検知装置の異常検知部の構造を示すブロック図である。
【図6】本実施形態の異常表示手段の異常表示方法を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、概略的にはゴムタイヤの加硫成形完了時においてタイヤ加硫用金型を開くときに上部金型を引き上げる引き上げ装置である例えばクレーンに掛かる負荷を検知し、検知した負荷に基づき金型異常を判断して、ユーザに表示や警報(一括して表示という)によりメンテナンスが必要である旨通知する加硫用金型の異常検知装置又は方法に関するものである。
本発明をその実施形態について説明するに先立って、まず、本発明の加硫用金型の異常検知装置及び同方法を適用する加硫用金型について、その一例を、本出願人の先の出願に係るタイヤ加硫用金型(特開2008−179046号公報参照)を例に採って説明する。
なお、本実施形態のタイヤ加硫用金型は、とくに、タイヤ加硫用金型において、金型を閉めるときにセグメントを前方へ倒そうとするモーメントを低減することで、金型のカジリや動作不良を防止するための特有の構成を備えたものであるが、本発明の異常検知装置及び同方法を適用する金型は、これに限定されるものではなく、上下動する上部金型と、下部金型と、これらの金型間に配置され、上部金型の上下動に伴い金型の半径方向に移動自在な複数のセグメントとを備えたものであれば適用可能である。
【0011】
図1は、上記加硫用金型の開放状態の断面図、図2は同加硫用金型の閉止状態の断面図である。
本発明の加硫用金型の異常検知装置及び同方法を適用する加硫用金型は、下部金型である下部サイドモールド4と、上下動して金型の開閉を可能にする上部金型である上部サイドモールド2と、半径方向に移動可能な複数のセグメント6を備えて構成されている。複数のセグメント6は周方向に組み合わさって環状をなしており、その内周面6aにはトレッド中央部に溝を形成するための突条が設けられている。また、上部サイドモールド2及び下部サイドモールド4は環状であり、それぞれの内周面2a及び4aには、トレッド両側部に溝を形成するための突条が設けられている。
さらに、上部サイドモールド2のアウターリング3の内周面はセグメント6の外周面に当接して、セグメント6を金型の中心に接近させる方向の力を加えることができる。セグメント6の外周面には段差部6bが形成されており、これによりアウターリング3の内周面は段差部6bより下方の位置に当接する。
【0012】
図1に示すように、セグメント6の外周面側には、内側プレート8a、中央プレート8b、及び外側プレート8cを有する開きプレート8が設けられている。開きプレート8の下端部はセグメント6の外周面の下部に固定されている。開きプレート8の中央より下の部分の外周面と、セグメント6の外周面の中央より下の部分との間は、上下の2本のボルト14、16が貫通している。また、ボルト14の高さと、ボルト16の高さの間の高さの位置には、左右一対のガイドピン18(図1では1本のみ示す)が、開きプレート8の中央より下の部分の外周面と、セグメント6の外周面の中央より下の部分との間を貫通している。つまり、開きプレート8は、下端がセグメント6の外周面の下部に一体に固定されるとともに、中央より下の部分がボルト14,16及びガイドピン18により、セグメント6の外周面に固定されている。ここで、ボルト14、16の外周には付勢手段であるスプリング20、22が嵌め込まれている。これらのスプリング20、22は、金型の半径方向外側端が開きプレート8の外側プレート8cの半径方向内面に当接し、半径方向内側端はブロック12の半径方向内側の内壁面に当接している。
【0013】
下部サイドモールド4にはTスロット10が設けられ、その上にはブロック12が設けられている。ブロック12の内部には半径方向に貫通する孔12a,12b,12cが形成されている。ここで、孔12a,12bには、それぞれボルト14,16が挿入され、かつ孔12a、12b内部で半径方向に進退自在に構成されており、一対の孔12cには、一対のガイドピン18が挿入され、かつ内部で半径方向に進退自在に構成されている。
【0014】
さらに、図1に示すように、アウターリング3に大きな切欠きを形成し、上部サイドモールド2を下降させて金型を閉めたときに、アウターリング3がブロック12、ボルト14,16、ガイドピン18、及びスプリング20,22と干渉しないようにしている。
【0015】
ここで、図1に示す状態から上部サイドモールド2が下降すると、アウターリング3の内周面が、セグメント6の外周面の段差部6bより下方の部分に当接して滑動する。セグメント6はアウターリング3の内周面から金型の中心方向(半径方向内向き)の力を受けるので、その方向へ移動する。このとき、ボルト14,16、及びガイドピン18は、ブロック12内の孔12a、12b、12c内を金型の中心方向へ移動する。また、ボルト14,16に嵌め込まれたスプリング20,22は、ボルト14,16の移動量に比例して縮むため、アウターリング3は、スプリング20,22による放射方向の力に抗して、セグメント6を金型の中心方向に押し込んでいく。
アウターリング3が下降し、所定の下端位置に到達すると、図2に示すように金型は閉止状態となる。
【0016】
次に、金型を図2に示す閉止状態から開くときは、上部サイドモールド2を例えばクレーン130で引き上げる。この引き上げの過程でアウターリング3の外周面は開きプレート8の内側プレート8aの内周面を押圧しつつ摺動し、セグメント6はスプリング20及び22による放射方向の付勢力と、アウターリング3の外周面からの放射方向への押圧力とにより、外周面側の開きプレート8により引き抜かれるように半径方向外方へ移動する。そして、ある程度移動すると、アウターリング3の外周面は内側プレート8aの内周面から離れ、図1に示す状態になり、以後、上部サイドモールド2をクレーンで引き上げ移動させて、金型内に収容された加硫済みタイヤを取り出す。
【0017】
次に、以上で説明した上記加硫用金型の異常を検知する異常検知装置及び方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
上記加硫用金型の構成において、金型の破損は、金型の摺動部(上部サイド金型2を引き上げに伴い金型内において摺動する部分を総称して摺動部という。本実施形態では、アウターリング3の外周面と開きプレート8の内側プレート8aの内周面間及びアウターリング3の内周面とセグメント6の外周面間、さらに、セグメント6と下部サイドモール4の摺動面間である)の摩耗、摺動部への異物の混入、摺動抵抗の増大など、摺動部で発生することから、摺動部における摺動抵抗から金型異常を判断することが適切である。
ここで、金型の摺動部における摺動抵抗は、上部サイドモールド2を引き上げるときにクレーン130の支持フレームである走行クラブフレーム132に作用する負荷から、金型の質量と、上部サイドモールド2とタイヤとの接触面の抵抗に抗して上部サイドモールド2を引き上げるに要する力、即ち脱型力とを差し引いた値として得ることができる。
【0018】
図3は、上部サイドモールド2を引き上げるときに、上部サイドモールド2をワイヤ134で吊り上げるクレーン130の走行クラブフレーム132に作用する負荷(クレーン負荷)の時間変化を示すグラフである。
図示のように、上部サイドモールド2の引き上げ初期の段階では、走行クラブフレーム132には、負荷として金型質量(上部サイドモールド2の質量)、タイヤ脱型力及び金型摺動部の摺動抵抗が作用し、その後、上記金型の摺動部を構成する摺動面が互いに離れると、金型摺動抵抗はゼロになり、続いて上部サイドモールド2がタイヤから外れると、タイヤ脱型力もゼロになる。その後は、金型質量(上部サイドモールド2の質量)のみが作用する。
そこで、本実施形態では、正常時における上記摺動抵抗に基づく負荷を基準負荷(例えば、複数のサンプルの上記摺動抵抗に基づく負荷の平均値を求め、それに変動幅を考慮した一定値又は一定割合を加えて基準負荷とする)として、上部サイドモールド2の引き上げ時にクレーン130の走行クラブフレーム132に作用する全負荷から当該金型摺動部の摺動抵抗による負荷を算出し、それが上記基準負荷を上回るときに、メンテナンス要の判断を行うようにしている。
以下、具体的にその構造を説明する。
【0019】
図4は、本実施形態に係る金型の異常検知装置を概略的に示すブロック図であり、図5は、異常検知部の構造を示すブロック図である。
加硫用金型の異常検知装置100は、金型開き時のクレーン130にかかる負荷を測定する例えば歪みセンサー110と、歪みセンサー110の出力を電流に変換する電流変換部120と、電流変換部120からの出力に基づき加硫用金型の異常を検知する異常検知装置140とからなっている。
異常検知装置140は、電流変換部120の出力と、上部サイドモールド2の質量と脱型力(上部サイドモールド2を引き上げる際に、上部サイドモールド2とタイヤとの接触面の抵抗に抗して上部サイドモールド2を引き上げるに要する力)に基づく負荷情報(生産情報)に基づき、金型のメンテナンスの要否を判断し、メンテナンス要と判断したときにその旨を表示する。
【0020】
ここで歪みセンサー110としては、周知のもの、例えば、半導体歪みセンサーや電気抵抗ひずみゲージ(ストレン・ゲージ)等が利用可能である。歪みセンサー110は、図4に示すように例えばクレーン130、具体的にはその走行クラブフレーム132に取り付けられ、上部サイドモールド2を引き上げた時の走行クラブフレーム132に作用する負荷を歪みとして出力する。ここでは、歪みセンサー110の出力を電流変換部120で電流に変換しかつその電流をA/D変換して異常検知装置140に入力して、加硫用金型の異常の有無を判断する。
【0021】
異常検知装置140は、図5に示すように、CPU142と、CPU142の制御プログラムなどを格納したROM143と、CPU142のワーク領域として処理に必要なデータ等を一時的に保存するRAM144とからなるコンピュータ141と、検知対象となる金型の上部サイドモールド2の質量と上部サイドモールド2を金型から離型するに要するタイヤ脱型力に基づく負荷(減算用基準値という)や摺動抵抗に基づく負荷の基準値を保存する記憶手段145と、上記コンピュータ141の機能実現手段として、歪みセンサー110の出力(電流値)から上記記憶手段145に保存した減算用基準値(電流値)を減算して、当該上部サイドモールド2を引き上げる際の上記摺動抵抗に基づく負荷(摺動抵抗負荷)を演算する摺動抵抗負荷演算部141aと、演算した摺動抵抗負荷(電流値)と上記記憶手段145に記憶された基準値(摺動抵抗負荷基準値:電流値)とを比較して、演算した摺動抵抗負荷が基準摺動抵抗負荷を上回るとき金型異常を判断する金型異常判断部141bと、金型異常判断部141bが金型異常と判断したとき、メンテナンスが必要である旨を例えば表示手段に表示するための処理を行う表示制御部141cと、キーボード(図示せず)などの入力手段146と、上記表示制御部141cで制御される例えばLCD(液晶表示手段)等からなる表示手段147とから成っている。
【0022】
ここで、上記タイヤ脱型力は、タイヤ製品の形状、材料により異なるため、上部サイドモールド2の質量に基づく負荷と共に、タイヤ製品の形状、材料毎に上記歪みセンサー110を用いて予め検出して、例えばそれぞれの平均値を記憶手段145に減算用基準値(電流値)として保存しておく。
【0023】
図6は、本実施形態の異常表示手段の異常表示の処理手順を説明するためのフロー図である。
生タイヤを、固定した下部サイドモールド4と上下動する上部サイドモールド2と、上下部サイドモールド間に配置された複数のセグメント6から成る加硫用金型で成形した後、上部サイドモールド2をクレーン130で引き上げると(S101)、その吊上走行クラブフレーム132には、上部サイドモールド2の質量と、上記タイヤ脱型力と、金型の摺動部における摺動摩擦力が作用し、それによって、上記クラブフレーム132に歪みが生じる。この歪みを歪みセンサー110で検知し(S102)、その出力を電流変換部120で電流に変換し、かつA/D変換して異常検知装置140に入力する(S103)。
異常検知装置140では、上記摺動抵抗負荷演算部141aが、入力された歪みセンサー110の出力(電流値)から、予め記憶手段145に記憶された当該金型の上部サイドモールド2の質量とタイヤ脱型力による減算用基準値(電流値)を減算して摺動抵抗に基づく負荷(摺動抵抗負荷:電流値)を得る(S104)。金型異常判断部141bは、上記演算により得られた上記摺動抵抗負荷と予め記憶手段145に記憶された当該金型の摺動抵抗についての基準値とを比較し(S105)、演算により得られた摺動抵抗負荷が基準値(摺動抵抗負荷基準値)に達したとき、金型の異常、即ちメンテナンスが必要であると判断し(S106、YES)、上記表示制御部141cは表示手段147に、その旨を表示する(S108)。
なお、表示方法は必ずしもメッセージの表示によるものに限らず、例えば警告音による警報として出力するか、ランプの点滅などによるものでもよい。
したがって、表示手段147はスピーカやランプなどであってもよい。
【0024】
以上の実施形態では、加硫用金型の引き上げ時に生じる金型同士の摺動抵抗を歪みセンサーを用いて検知しているが、本発明は、上記金型同士の摺動抵抗に基づき、メンテナンスの要不要を判断することに特徴を有するものであるため、摺動抵抗を検知する手段であれば必ずしも歪みセンサーでなくともよい。
【0025】
本発明は、加硫後において金型を開く際に金型の摺動部の摺動抵抗による負荷を検出して、その負荷が予め定めた基準値を超えたときには、自動的にメンテナンスが必要である旨を表示(又は報知)するため、金型が使用中に破損して作業を中断することがない。また、客観データに基づき金型のメンテナンスタイミングを自動的に決定できるため、従来と比較して結果的にメンテナンスの回数が低減でき、その分金型のランニングコストを低減することができる。出願人の比較結果によれば従来を100とした場合80に抑制することができることが分かった。また、本金型の異常検知装置及び以上検知方法は、大型のタイヤ加硫用金型に適用したとき特に有効である。
【符号の説明】
【0026】
2・・・上部サイドモールド、3・・・アウターリング、4・・・下部サイドモールド、6・・・セグメント、8・・・開きプレート、100・・・加硫用金型異常検知装置、110・・・歪みセンサー、120・・・電流変換部、130・・・クレーン、132・・・走行クラブフレーム、140・・・加硫用金型異常検知装置、141・・・コンピュータ、141a・・・摺動抵抗負荷演算部、141b・・・金型異常判断部、141c・・・表示制御部、142・・・CPU、143・・・ROM、144・・・RAM、145・・・記憶手段、146・・・入力手段、147・・・表示手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部金型と下部金型、前記上・下部の金型間に配置され上部金型の上下動に伴って金型の半径方向に移動自在な複数のセグメントからなるタイヤ加硫用金型の異常検知装置であって、
型開き時に上部金型を引き上げる引上装置に作用する負荷を検出する負荷検出手段と、
検出した負荷から前記加硫用金型の摺動部の摺動抵抗に基づく負荷を演算する負荷演算部と、
演算した摺動抵抗負荷と、予め定めた基準値とを比較して、演算した摺動抵抗負荷が基準値を超えたとき、前記加硫用金型の異常を判断する金型異常判断部と、
金型異常判断部が異常と判断したとき、当該加硫用金型のメンテナンス情報を表示する表示手段と、
を有することを特徴とするタイヤ加硫用金型の異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知装置において、
前記負荷演算部は、負荷検出手段の出力から記憶手段に予め記憶した当該加硫用金型の質量及びタイヤ脱型力の基準値を減算して前記摺動抵抗負荷を得ることを特徴とするタイヤ加硫用金型の異常検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知装置において、
負荷検出手段は歪みセンサーであることを特徴とするタイヤ加硫用金型の異常検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知装置において、
前記引上装置はクレーンであって、
前記歪みセンサーは引上装置の前記クレーンの歪みを検知することを特徴とするタイヤ加硫用金型の異常検知装置。
【請求項5】
上部金型と下部金型、前記上・下部の金型間に配置され上部金型の上下動に伴って金型の半径方向に移動自在な複数のセグメントからなるタイヤ加硫用金型の異常検知方法であって、型開き時に上部金型を引き上げる引上装置に作用する負荷を検出する負荷検出工程と、検出した負荷から前記加硫用金型の摺動部の摺動抵抗に基づく負荷を演算する負荷演算工程と、演算した摺動抵抗負荷と、予め定めた基準値とを比較して、演算した摺動抵抗負荷が基準値を超えたとき、前記加硫用金型の異常を判断する金型異常判断工程と、金型異常判断工程において異常と判断されたとき、当該加硫用金型のメンテナンス情報を表示する表示工程と、を有することを特徴とするタイヤ加硫用金型の異常検知方法。
【請求項6】
請求項5に記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知方法において、前記負荷演算工程は、負荷検出工程で得られた負荷検出手段の出力から記憶手段に予め記憶した当該加硫用金型の質量及びタイヤ脱型力の基準値を減算して前記摺動抵抗負荷を得る工程であることを特徴とするタイヤ加硫用金型の異常検知方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知方法において、
負荷検出工程は歪みセンサーにより前記負荷を検出する工程であることを特徴とするタイヤ加硫用金型の異常検知方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載されたタイヤ加硫用金型の異常検知方法において、
前記引上装置はクレーンであって、
前記負荷検出工程は前記クレーンの歪みを検知する工程であることを特徴とするタイヤ加硫用金型の異常検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−162702(P2010−162702A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4587(P2009−4587)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】