説明

加飾シートおよび成形同時加飾成形品の製造方法

【課題】 外観が優れ位置精度よく加飾することができる、上記判断の容易な加飾シート及び成形同時加飾成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】 着色顔料を含む樹脂フィルムであってCIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)L*a*b*表色 系における明度Lが50以下の色を呈するものを基体シート2とし、その一面に少なくとも図柄層3が形成されている。。つまり、暗い色を呈する着色フィルムを図柄層が設けられる基体シートとすることで、予備成形時にマイクロクラックが発生しているかどうかの判断が容易になり、シートの軟化が充分であるかどうかを見極めることができる。結果として成形同時加飾前に加飾シートが最適な形状に予備成形されているかを判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に加飾シートが一体化された三次元形状の表面を有する成形同時加飾成形品を製造する方法に関し、特に、自動車内装用部品、家電製品装飾用部品、表示パネル、操作パネル、アミューズメント機器用操作部品および筐体、通信機器用操作部品および筐体などの装飾に用いられ、図柄が任意の位置に精度よく配置されていることが必要な成形同時加飾成形品を得るのに好適な加飾シート及び成形同時加飾成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品の表面を装飾する方法として、基体シート上に図柄層などが形成された加飾シートを成形用金型内に挟み込み、該金型内に溶融樹脂を射出し、樹脂成形品を得るのと同時に成形品表面に加飾シートを接着して装飾を行う成形同時加飾法がある。成形同時加飾法は、印刷法によって直接図柄を形成することが困難な形状の成形品であっても図柄を形成することができるという特徴を有する。
【0003】
成形同時加飾法において、三次元表面を有する成形品を加飾シートで装飾する場合、加飾シートを成形用金型内に供給する前又は供給した後に、真空成形や真空・圧空成形等の予備成形にて成形用金型の可動型のキャビティ形成面に沿うように立体形状に加工しておき、型締め後、射出成形と同時に成形品表面に加飾シートを一体化する方法がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−18894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加飾シートが軟化不足の状態で予備成形すると成形金型と同じ形状にならず、成形同時加飾時に金型に沿わない部分が生じることとなり、その部位が射出樹脂圧で無理に伸ばされることにより印刷層が割れてしまい外観上の不具合が生じる。また、軟化し過ぎると絵柄層の歪みや、印刷層の劣化を助長することもある。つまり、予備成形においては適度に軟化させる必要がある。
【0005】
しかしながら、軟化させる手段である機械の条件を一度見い出しても、加工の際の雰囲気温度や季節によって加工毎のシートにかかる熱量が変化することがある。しかも軟化不足となると、その異常が成形同時加飾をしないと判明しないために良品率、生産効率に悪影響を及ぼしてしまうことがあり、成形同時加飾前の段階におけるシートの良否判断は難しい。
【0006】
したがって、安定した三次元形状の加飾シートを作成するに当たり、予備成形時にシートを軟化させるに充分な熱量が加わっているかどうかを判断することがポイントであり、本発明は、上記したような問題点を解消し、外観が優れ位置精度よく加飾することができる、上記判断の容易な加飾シート及び成形同時加飾成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の加飾シートは、着色顔料を含む樹脂フィルムであってCIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)L*a*b*表色 系における明度Lが50以下の色を呈するものを基体シートとし、その一面に少なくとも図柄層が形成されているように構成した。
【0008】
また、上記構成において、上記着色顔料が黒色顔料であるようにした。
【0009】
また、本発明の成形同時加飾成形品の製造方法は、上記の加飾シートを用い、該加飾シートを成形用金型内に供給する前又は供給した後に熱圧を加えて成形品の外形に近似する形状に予備成形し、次いで加飾シートの延伸部分に白化が発生していないか検査を行ない、次いで検査で問題のなかった加飾シートを成形用金型のキャビティ形成面に沿わせた状態で型締め後、加飾シートの図柄層側の面に溶融樹脂が接するように金型内に溶融樹脂を射出し、加飾シートと樹脂とが一体化した成形品を得るように構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前記した構成からなるので、次のような効果を有する。
【0011】
すなわち、基体シートの軟化が不十分な状態で伸ばされた部分はマイクロクラックが発生するが、本発明の加飾シートにおいては、基体シートがCIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)L*a*b*表色 系における明度Lが50以下の暗い色を呈するため、基体シートにマイクロクラックが生じている場合には、このマイクロクラックが白化として視覚することが出来る(図2参照)。つまり、暗い色を呈する着色フィルムを図柄層が設けられる基体シートとすることで、予備成形時にマイクロクラックが発生しているかどうかの判断が容易になり、シートの軟化が充分であるかどうかを見極めることができる。結果として成形同時加飾前に加飾シートが最適な形状に予備成形されているかを判断することができる。
【0012】
そして、本発明の成形同時加飾成形品の製造方法は、成形同時加飾前に加飾シートが最適な形状に予備成形されているかを判断することができるのであるから、問題のなかった加飾シートを用いて加飾シートと樹脂とが一体化した成形品を得ることができ、この成形同時加飾成形品は、外観が優れ位置精度よく加飾されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0014】
図1は本発明の加飾シートの一実施例を示す断面図、図2は本発明の加飾シートを予備成形した際に、軟化不十分により発生したマイクロクラックによる白化の様子をします断面図、図3〜7は予備成形を行なう成形同時加飾成形品の製造方法の一工程を示す断面図である。図中、1は加飾シート、2は基体シート、3は図柄層、4は黒色顔料、5は可動型、6は固定型、7はキャビティ形成面、8はクランプ部材、9は真空吸引孔、10はゲート部、11は加熱板、12は溶融樹脂、13は樹脂成形品、14は白化部である。
【0015】
本発明の加飾シートは、着色顔料を含む樹脂フィルムであってCIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)L*a*b*表色 系における明度Lが50以下の色を呈するものを基体シートとし、その一面に少なくとも図柄層が形成された加飾シートであり(図1参照)、本発明の成形同時加飾成形品の製造方法は、上記加飾シートを成形用金型内に供給する前又は供給した後に熱圧を加えて成形品の外形に近似する形状に予備成形し、次いで加飾シートの延伸部分に白化(図2参照)が発生していないか検査を行ない、次いで検査で問題のなかった加飾シートを成形用金型のキャビティ形成面に沿わせた状態で型締め後、加飾シートの図柄層側の面に溶融樹脂が接するように金型内に溶融樹脂を射出し、加飾シートと樹脂とが一体化した成形品を得るものである。
【0016】
基体シートの樹脂としては、ポリカーボネート(PC)樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ナイロン樹脂などのフィルムまたはこれらの混合物、アロイフィルム、積層フィルムがある。基体シートの厚さは、成形性、印刷適性、経済性などを考慮して選択すればよく、一般的には50〜500μm程度のものが好適である。
【0017】
L値の測定は、基体シートに色差計の測定ヘッド先端部を置き測定すればよい。その際、色差計はできるだけ測定径が小さい小面積測定が可能で照明光学系がJIS Z8722定義の45−0法に準拠した設計(測定試料に対して45゜方向から照明し垂直方向の反射光を受光する設計)のものを使用するのが好ましい。このような色差計として市販されているものとして、ミノルタ株式会社製色彩色差計CR−321がある。
【0018】
本発明では、基体シートの明度Lが50以下の暗い領域にあることが重要である。この条件を満たすことによって、予備成形時にマイクロクラックが発生しているかどうかの判断が容易になり、シートの軟化が充分であるかどうかを見極めることができる。この見極めの結果、最適な形状に予備成形されている問題のないもののみを選択して成形同時加飾すれば、外観が優れ位置精度のよい加飾を確実に施すことができる。
【0019】
上記着色顔料としては、例えば、カーボンブラックやアニリンブラックなどの黒色顔料を用いることができる。
【0020】
図柄層は、基体シートの上に、通常は印刷層として形成する。印刷層は、表現したい図柄に応じて、全面的に設ける場合や部分的に設ける場合がある。印刷層は、成形可能な柔軟性を有していることが必要である。印刷層の材質としては、ウレタン樹脂、PC樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂など、特にウレタン系樹脂、さらにはそのエラストマーをバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することができる。また、図柄層と基体シートとの密着力が不足する場合、基体シートの表面にあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理などを行い、密着力を向上させるとよい。
【0021】
また、図柄層は、金属薄膜層からなるもの、あるいは印刷層と金属薄膜層との組み合わせからなるものでもよい。金属薄膜層は、図柄層として金属光沢を表現するためのものであり、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成する。表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウ21ム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金または化合物を使用する。金属薄膜層は部分的に形成してもよい。また、金属薄膜層を設ける際に、他の層と金属薄膜層との密着性を向上させるために、前アンカー層や後アンカー層を設けてもよい。
【0022】
また、加飾シートには、接着層を設けてもよい。接着層は、加飾シートを溶融樹脂からなる成形品に密着させて一体化させるためのものである。接着層としては、成形品の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。たとえば、成形品の材質がアクリル系樹脂の場合はアクリル系樹脂を用いるとよい。また、成形品の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、成形品の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレンー酢酸ビニル共重合体樹脂、深化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層4の形成方法としては、グラビアコード法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。また上記材質よりなる接着性を持つシートをラミネート法などにより貼り合せて接着層とすることも可能である。
【0023】
このようにして、加飾シートを得ることができる。なお、加飾シートの構成は、上記した態様に限定されるものではない。たとえば、基体シートに、剥離層、図柄層、接着層等を順次形成した成形同時転写材としてもよい。また、剥離層を設けないでインサート成形に用いるインサート材としてもよい。また、接着層が無くても十分に成形品との一体化が可能な場合には、接着層を省略することができる。
【0024】
上記転写材においては、基体シートからの転写層の剥離性が良い場合には、基体シート上に転写層を直接設ければよい。基体シートからの転写層の剥離性を改善するためには、基体シート上に転写層を設ける前に、離型層を全面的に形成してもよい。離型層の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤およびこれらの複合型離型剤などを用いることができる。離型層の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0025】
上記剥離層は、基体シート又は離型層上に全面的または部分的に形成される。剥離層は、成形同時転写後に基体シートを剥離した際に、基体シートまたは離型層から剥離して被転写物の最外面となる層である。剥離層の材質としては、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。剥離層に硬度が要求される場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いるとよい。剥離層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0026】
また、金属薄膜3(絶縁性のものも含む)を設ける際に、他の層と金属薄膜3との密着性を向上させるために、前アンカー層や後アンカー層を設けてもよい。前アンカー層および後アンカー層の材質としては、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂樹脂などを使用するとよい。前アンカー層および後アンカー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0027】
次ぎに、成形同時加飾成形品の製造方法を説明する。
【0028】
まず、加飾シート1を成形用の金型である可動型の表面にクランプ部材によりセットする(図3参照)。
【0029】
可動型へのセットの仕方の具体例としては、ロール軸に長尺の加飾シート1を一旦巻き取ってロール状巻物とし、このロール状巻物を成形用の可動型の上部に可動型と一体的に移動可能に載置し、ロール状巻物から加飾シート1を巻き出しながら、退避した可動型と固定型との間を通過させ、成形用の可動型の下部に可動型と一体的に移動可能に設置したフィルム巻き取り手段のロール軸により加飾シート1を巻き取るようにすればよい。別の例としては、枚葉の加飾シート1を用いて、ロボットや人手により可動型の表面にセットしてもよい。加飾シート1の可動型の表面へのセットに際しては、加飾シート1を可動型の表面に配置した後、可動型の表面に対する加飾シート1の位置を位置決めセンサーなどにより決定し、加飾シート1を成形用の可動型12の表面にクランプ部材によって押さえ付けるとよい。
【0030】
次いで、加飾シート1を成形用の可動型の表面にセットした後に、成形用の可動型に形成された真空吸引孔を利用して、加飾シート1を可動型のキャビティ形成面に沿わせるように真空吸引することにより、成形用の可動型の凹部形状、すなわち熱圧を加えて成形品の外形に近似する形状に予備成形する(図4参照)。具体例としては、可動型と固定型との間に挿入した加熱板などのヒーターで、可動型12の表面にセットした加飾シート1を加熱して軟化させ、成形用の可動型12の凹部と加飾シート1との間の空間を密閉して真空吸引孔から排気して真空吸引し、成形用の可動型の凹部内面(キャビティ形成面)に加飾シート1を密着させる方法がある。予備成形を行なう際、あるいはクランプ部材で加飾シート1を押さえ付けて固定する際に、加飾シート1の不要部分の打抜き加工をしてもよい。
【0031】
予備成形の加熱は、通常、基体シートの軟化点付近の温度で行う。このような加熱温度で予備成形を行うことにより、加飾シートの伸びが均一となり、図柄層のパターンの変形が再現性の高いものとなる。したがって、図柄層のパターンを事前に補正することによって成形品との位置合わせ精度を高めることができる。ただし、軟化させる手段である機械の条件を一度見い出しても、加工の際の雰囲気温度や季節によって加工毎のシートにかかる熱量が変化するため、本発明は、成形同時加飾前に加飾シートが最適な形状に予備成形されているかを判断できるように、加飾シートについて上記した構成とするのである。
【0032】
また、予備成形の成形圧力は、1013hPa以上であるのが好ましい。この範囲であると予備成形用金型7を用いて成形品形状に近似した形状に加飾シートを成形することができるようになる。1013hPaに満たないと、加飾シートの反発力により予備成形が不十分になるおそれがある。
【0033】
また、予備成形は、上記方法に代えて、加飾シート1を成形用の可動型の表面にセットする前に、成形用の可動型と固定型とは別の立体加工成形用型を用いて加飾シート1をあらかじめ所望の立体形状に予備成形し、また所望の形状に打抜き加工したのち、成形用の可動型の凹部内に、予備成形された加飾シート1をはめ込むようにしてもよい(図5参照)。所望の立体形状としては、成形用の可動型または固定型のキャビティ形成面に合致する形状などがある。立体形状に加工する方法としては、真空成形法や圧空成形法、熱せられたゴムを押しつける押圧成形法などがある。所望の形状に打抜き加工する方法としては、トムソン打抜き法、金型によるプレス法などがある。打抜き形状としては、所定形状の外周に沿った線や所定形状の孔などがある。なお、立体形状に加工する際に同時に打抜き加工をしてもよい。
【0034】
次いで、加飾シートの延伸部分に白化14が発生していないか検査を行なう。この検査は全品検査でも、抜き取り検査でもよい。着色顔料を含む樹脂フィルムであってCIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)L*a*b*表色 系における明度Lが50以下の色を呈するものを図柄層を設ける基体シートとすることで、予備成形時にマイクロクラックが発生しているかどうかの判断が容易になっているため(図2参照)、シートの軟化が充分であるかどうかを見極めることができる。
【0035】
次いで、検査で問題のなかった加飾シートを成形用金型のキャビティ形成面に沿わせた状態で固定型に対して可動型を型閉め後、加飾シートの図柄層側の面に溶融樹脂が接するように金型内に溶融樹脂を射出し、加飾シートと樹脂とが一体化した成形品を得る(図6参照)。
【0036】
その後、樹脂成形品を可動型から取り出したのち、樹脂成形品に接着した加飾シート1のうち不要な部分を除去する(図7参照)。なお、上記したようにあらかじめ所望の形状に打ち抜き加工していた場合には、加飾シート1の不要な部分を除去する作業は不要である。
【0037】
成形用の金型としての可動型と固定型は、上記した実施形態に特に限定されることはなく、溶融樹脂を射出するゲート部を有する固定型と可動型から構成され、固定型と可動型とが型閉めされることによって、固定型および可動型のキャビティ形成面によって囲まれた単数あるいは複数のキャビティが形成されるものを使用すればよい。成形用の可動型と固定型とにより形成されるキャビティ内にセットされた加飾シート1は、キャビティ形成面を覆うことになる。キャビティは樹脂成形品に孔部を形成するものであってもよい。キャビティを形成する凹部は固定型あるいは可動型のいずれかに形成されていてもよい。可動型または固定型は、凹部の周囲で加飾シート1を押さえ付けて固定するクランプ部材1を有してもよい。クランプ部材は固定型あるいは可動型に設置されてもよい。
【0038】
溶融樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂や、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用できる。
【0039】
次いで、型開きして加飾シート1が一体化して接着された樹脂成形品を取り出す(図7参照)。加飾シート1が成形同時転写材の場合は、基体シートを剥離する。このようにして、成形同時加飾成形品を得ることができる。
【0040】
なお、横型射出成形機の場合には、上記のとおりであるが、縦型射出成形機の場合には、固定型と可動型の関係が横型射出成形機の場合と逆になる。また、射出成形機の金型は2枚型の場合だけでなく、3枚型の場合にも同様に適用することができる。
【実施例】
【0041】
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体と重量比40%のカーボンブラックからなる厚さ100μmの黒色フィルム(CIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)L*a*b*表色 系における明度Lの値が15)を基体シートとし、その片面に2軸延伸PETフィルム/アクリル樹脂からなる図柄層/塩化ビニル酢酸ビニル共重合体からなる接着層の構成からなる転写材を用いて熱転写を行ない、2軸延伸PETフィルムを剥離することにより黒色フィルムと図柄層とが一体化された加飾シートを得た。
【0042】
上記加飾シートを、表面温度が80℃になるまで加熱を行ない、5000hPaの圧力で圧空成形を行い、三次元形状に予備成形した。
【0043】
次いで、予備成形したシートの延伸部分が白く見えていないか随時抜き取り検査を行なった。
【0044】
次いで、前記検査で問題ない加飾シートを成形用金型に装着し、型締めの後、ABS樹脂を射出し、成形同時加飾成形品を得た。検査で問題ない加飾シートを成形用金型に装着しているので、予備成形段階で金型に沿わなかった部分を射出樹脂圧で無理に伸ばすということがない。
【0045】
このようにして得た成形同時加飾成形品は、印刷層に割れが無く、また絵柄層の歪みや、印刷層の劣化等の外観不良がない美麗なものであった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の加飾シートを予備成形した際に、軟化不十分により発生したマイクロクラックによる白化の様子をします断面図である。
【図3】予備成形を行なう成形同時加飾成形品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図4】予備成形を行なう成形同時加飾成形品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】予備成形を行なう成形同時加飾成形品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】予備成形を行なう成形同時加飾成形品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図7】予備成形を行なう成形同時加飾成形品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 加飾シート
2 基体シート
3 図柄層
4 黒色顔料
5 可動型
6 固定型
7 キャビティ形成面
8 クランプ部材
9 真空吸引孔
10 ゲート部
11 加熱板
12 溶融樹脂
13 樹脂成形品
14 白化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色顔料を含む樹脂フィルムであってCIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)L*a*b*表色 系における明度Lが50以下の色を呈するものを基体シートとし、その一面に少なくとも図柄層が形成されていることを特徴とする加飾シート。
【請求項2】
上記着色顔料が黒色顔料である請求項1記載の加飾シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の加飾シートを用い、該加飾シートを成形用金型内に供給する前又は供給した後に熱圧を加えて成形品の外形に近似する形状に予備成形し、次いで加飾シートの延伸部分に白化が発生していないか検査を行ない、次いで検査で問題のなかった加飾シートを成形用金型のキャビティ形成面に沿わせた状態で型締め後、加飾シートの図柄層側の面に溶融樹脂が接するように金型内に溶融樹脂を射出し、加飾シートと樹脂とが一体化した成形品を得ることを特徴とする成形同時加飾成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−240033(P2006−240033A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58279(P2005−58279)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】