説明

加飾印刷層付き粘着シートとその製造方法、および携帯端末機器

【課題】携帯端末機器の製造現場において、工程での歩留まり向上、工程数の削減、製造設備の簡素化、携帯端末機器の情報表示部表面の平坦化などに対応することができる加飾印刷層付き粘着シートとその製造方法、および携帯端末機器を提供する。
【解決手段】加飾印刷層付き粘着シート1は、少なくとも一方の面3aの側にハードコート層2が設けられた基材フィルム3と、前記基材フィルム3の他方の面3bの側に部分的に設けられた加飾印刷層4と、粘着剤層5とがこの順に積層されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やモバイル機器などの携帯端末機器の表面保護シートとして用いられる加飾印刷層付き粘着シートとその製造方法、およびそれを用いた携帯端末機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末機器は薄型化、軽量化が求められている。従来、携帯端末機器の情報表示部の表面は機器内部の電気回路などを隠蔽するために、ベゼルカバーなどで周縁部を覆っていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし近年の携帯端末機器類は、よりデザイン性を活かした構成が採用されている。薄型化、情報量の増加に伴った大画面化、特にタッチパネルの普及により、ベゼルカバーを有しない表面がフラットなデザインが好まれるようになってきた。
【0004】
このような携帯端末機器の軽薄短小化は、光源と表示パネルとの位置を接近させることになるため、光源からの光がパネルとの間に挟みこまれる粘着層を通って外部に漏れやすくなっており、特に画像端部から光が漏れるとパネルの表示面が見えにくくなるといった不都合が生じていた。
このため内部構成部材に加飾印刷層を施すことが行われている。加飾印刷とは一般に隠蔽性や意匠性を付与するために行われる印刷であるが、特に携帯端末機器の内部構成部材として用いられる場合、加飾印刷層には意匠性のみならず機器内部の電気回路などを隠蔽すると同時に、漏れる光に対して遮光性を持つことが要請されている。
【0005】
上記課題を解決するため、遮光性に優れた両面粘着テープが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−106417号公報
【特許文献2】特開2008−274163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に係る両面粘着テープは、額縁状に打ち抜かれたものであるため、粘着剤層と加飾印刷層を厚み方向に重畳する必要があり、無駄にエアギャップが生じ、携帯端末機器類の軽薄化という点においては改良の余地を残している。
【0008】
また、加飾印刷層を施すためには、印刷されたシートの構成部材が必要となるほか、印刷工程が必要となる。加えて、粘着剤でエアギャップを埋め薄膜化を図るには、加飾印刷が施された部分と施されていない部分の境界に生じた微小の段差に追従するように、粘着層に段差追従性能を付与する必要がある。通常、段差に追従させるためにはオートクレーブ処理が行われ、更に工程数が増える上、大掛かりな製造設備が必要となる。また、粘着剤層の貯蔵弾性率によっては気泡が混入するという問題があり、歩留まりが悪くなる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、携帯端末機器の製造現場において、工程での歩留まり向上、工程数の削減、製造設備の簡素化、携帯端末機器の情報表示部表面の平坦化などに対応することができる加飾印刷層付き粘着シートとその製造方法、および携帯端末機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートは、少なくとも一方の面の側にハードコート層が設けられた基材フィルムと、前記基材フィルムの他方の面の側に部分的に設けられた加飾印刷層と、粘着剤層とがこの順に積層されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートは、前記基材フィルムの他方の面の側にハードコート層を介して部分的に加飾印刷層が設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートは、前記基材フィルムと、前記加飾印刷層と、前記粘着剤層と、剥離シートとがこの順に積層されていることが好ましい。
【0013】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートは、前記ハードコート層、前記基材フィルム及び前記粘着剤層が、剥離シートを残して被着体の形状に合わせて抜き加工されていることが好ましい。
【0014】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートは、前記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリカーボネートフィルムであることが好ましい。
【0015】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートは、粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.01〜0.3MPaであることが好ましい。
【0016】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートは、携帯端末機器の表面保護シートとして用いられることが好ましい。
【0017】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートの製造方法は、前記基材フィルムの一方の面に加飾印刷層を部分的に施し、更に、前記粘着剤層と前記剥離シートが積層された基材レス粘着シートの粘着剤面を前記基材フィルムの加飾印刷層を有する面と貼り合わせることにより、基材フィルム、加飾印刷層、粘着剤層及び剥離シートをこの順に積層することを特徴とする。
【0018】
本発明の携帯端末機器は、前記加飾印刷層付き粘着シートにより、部分的な遮光性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートによれば、携帯端末機器の製造現場において、工程での歩留まり向上、工程数の削減、製造設備の簡素化、携帯端末機器の情報表示部表面の平坦化などに対応することができる。
【0020】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートの製造方法によれば、薄膜化された加飾印刷層付き粘着シートが得られる。
【0021】
本発明の携帯端末機器によれば、その製造現場において、工程での歩留まり向上、工程数の削減、製造設備の簡素化、携帯端末機器の情報表示部表面の平坦化などに対応することができ、さらに携帯端末機器の軽薄化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第一の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第二の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第二の実施形態を示す概略平面図である。
【図4】本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第二の実施形態において抜き加工されたものを示す概略断面図である。
【図5】本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第二の実施形態において抜き加工されたものを示す概略平面図である。
【図6】本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第三の実施形態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第三の実施形態において抜き加工されたものを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の加飾印刷層付き粘着シートの実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0024】
(1) 第一の実施形態
図1は、本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第一の実施形態を示す概略断面図である。この実施形態の加飾印刷層付き粘着シート1は、一方の面3aの側にハードコート層2が塗工された基材フィルム3と前記基材フィルム3の他方の面3bの側に部分的に設けられた加飾印刷層4と粘着剤層5とがこの順に積層されている。図1においては額縁状とした印刷パターンを示すが、本発明の加飾印刷層付き粘着シートはこれに限定されず、例えば意匠性を有する印刷パターンであってもよい。
この加飾印刷層付き粘着シート1は、携帯電話やモバイル機器などの携帯端末機器の表面保護シートに適用されるものである。
【0025】
基材フィルム3としては、種々のプラスチックシート、フィルムが使用できる。基材フィルムの具体例としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂などの各種合成樹脂のフィルムが挙げられ、特に飛散防止効果を付与できるポリエチレンテレフタレート樹脂もしくはポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0026】
基材フィルム3の厚さは、50μm〜300μmが好ましく、60μm〜250μmがより好ましく、70μm〜200μmが特に好ましい。
【0027】
本発明の第一の実施形態においては、基材フィルム3の一方の面3aの側にハードコート層2が塗工されている。ハードコート層2の性能は特に限定されないが、耐指紋付着性、耐光性などの性能を付与されているものが好ましい。
【0028】
ハードコート層2の形成方法は特に限定されるものではないが、電離放射線硬化型化合物を含有する硬化性組成物を塗布して電離放射線を照射して硬化させて積層することもでき、または、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂溶液を塗布、乾燥することにより積層することもできるが、電離放射線硬化型化合物を含有する硬化性組成物を塗布して電離放射線を照射して硬化させて積層することが好ましい。
【0029】
電離放射線硬化型化合物は、電離放射線を照射することにより硬化されるものであり、紫外線硬化型化合物、電子線硬化型化合物などが好ましいが、紫外線硬化型化合物が特に好ましい。
電離放射線硬化型化合物としては、不飽和モノマー、オリゴマー、樹脂又はそれらを含む組成物などが好ましいが、その具体例としては、多官能アクリレート、ウレタンアクリレートやポリエステルアクリレート等の2官能基以上を有する多官能の電離放射線硬化型のアクリル系化合物がより好ましく、ウレタンアクリレートやポリエステルアクリレートが特に好ましい。
【0030】
多官能アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリアリル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
ウレタンアクリレートは、例えばポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーの水酸基と(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得られる。
ポリエステルアクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、又は多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。
電離放射線硬化型化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
電離放射線としては、紫外線、電子線、α線、β線などが挙げられる。紫外線を使用する場合は、硬化性組成物には、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系などの公知の光重合開始剤を用いることができ、また、オリゴマー型光重合開始剤を用いることもできる。
光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電離放射線硬化型化合物と光重合開始剤の配合割合は、通常電離放射線硬化型化合物100質量部に対し光重合開始剤が0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。
【0033】
また、硬化性組成物には、シリカ(コロイド状シリカを含む)、シリコンパウダー、マイカ、ガラスビーズ、アクリル系微粉末、中空粒子等のフィラーを含ませてもよいが、含ませないほうが好ましい。
また、硬化性組成物には、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、着色剤、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤、表面改質剤等の添加成分を含ませることは任意である。
【0034】
また、硬化性組成物には、塗布し易くするために希釈剤を含有させてもよい。希釈剤としては、イソブタノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン等が挙げられる。希釈剤の配合量は、要求される粘度になるように適宜選定すればよい。
【0035】
本発明においては、上記硬化性組成物は、基材フィルム3の面3aの側に塗布され、希釈剤を含む場合は乾燥した後に電離放射線を照射されて硬化され、ハードコート層2として積層される。希釈剤を含まない場合は乾燥工程を経ずに電離線放射線を照射されて硬化される。上記硬化性組成物の基材フィルム3への塗布方法は、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンコート法などの従来公知の方法が挙げられる。
【0036】
照射される電離放射線は、種々の電離放射線発生装置から発生する電離放射線が用いられる。例えば、紫外線は、通常は紫外線ランプから輻射される紫外線が用いられる。この紫外線ランプとしては、通常波長300〜400nmの領域にスペクトル分布を有する紫外線を発光する、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプ等の紫外線ランプが用いられ、照射量は通常50〜3000mJ/cmが好ましい。
【0037】
ハードコート層2の厚さは、特に限定されないが、1μm〜20μmが好ましく、2μm〜15μmがより好ましく、5μm〜10μmが特に好ましい。
【0038】
本発明においては、基材フィルム3の面3aの側に、ハードコート層2が積層されており、基材フィルム3の他方の面3bの側に部分的に設けられた加飾印刷層4が積層されている。加飾印刷層4を構成するための印刷方法として、特に制限はなく、グラビア印刷、スクリーン印刷などが使用できる。印刷としては額縁状の電極隠蔽用印刷のみならず、意匠性を付与した印刷を行っても良い。
加飾印刷層が積層される面は、基材フィルムのハードコート層が塗工された面でもハードコートが塗工されていない面でもどちらでもよい。また基材フィルムのハードコートは片面のみに施されていても、両面に施されていてもよい。
【0039】
加飾印刷層4を構成するための塗料としては、特に制限なく、公知の塗料を使用でき、例えば、紫外線硬化型インキ、酸化重合型インキなどが使用できる。
【0040】
加飾印刷層4の厚さは、5μm〜30μmが好ましく、7μm〜28μmがより好ましく、10μm〜25μmが特に好ましい。加飾印刷層4の厚さが5μm以上であれば、十分な隠蔽性が得られ、30μm未満であれば、粘着剤層も厚くする必要がなく、総厚が厚くならないためである。
【0041】
本発明においては、基材フィルム3のハードコート層側の面3aとは他方の面3bの側に、粘着剤層5が積層されている。粘着剤層5を構成するための粘着剤としては、特に制限なく、公知の粘着剤を使用でき、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが使用できる。
【0042】
粘着剤層5の厚さは、10μm〜200μmが好ましく、15μm〜150μmがより好ましく、20μm〜100μmが特に好ましい。粘着剤層の厚さが10μm以上であれば、加飾印刷層を施すことにより生じた基材フィルムの凹凸面への段差追従性が得られ、200μm未満であれば、粘着剤の染み出しなどによる加工適性が低下しないためである。
【0043】
基材フィルム3の面3bの側に、粘着剤層5を塗工する方法としては、別途、剥離シート6に粘着剤含有組成物を塗布し、乾燥させて作製した粘着剤層と剥離シートのみからなる基材レス粘着シートを押し付けて積層する方法が挙げられる。上記粘着剤含有組成物の塗布方法は、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンコート法などの従来公知の方法が挙げられる。また粘着剤層5を積層する方法としては、上記粘着剤含有組成物を基材フィルム3の面3bの側に、直接塗布し、乾燥する方法も挙げられる。
【0044】
粘着剤層5の23℃における貯蔵弾性率は、0.01MPa〜0.3MPaが好ましく、0.03MPa〜0.25MPaがより好ましく、0.05MPa〜0.2MPaが特に好ましい。粘着剤層5の貯蔵弾性率が0.01MPa以上であれば、粘着剤層の形状安定性が得られ、0.3MPa未満であれば、気泡が混入しにくくなるためである。
【0045】
この加飾印刷層付き粘着シート1によれば、面3aの側にハードコート層2が塗工された基材フィルム3と加飾印刷層4と粘着剤層5とがこの順に積層されているので、携帯端末機器の製造において、この加飾印刷層付き粘着シート1を用いることにより、工程での歩留まり向上、工程数削減、携帯端末機器の情報表示部表面の平坦化などに対応することができる。
【0046】
(2) 第二の実施形態
図2は、本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第二の実施形態を示す概略断面図であり、図3はその概略平面図である。
この実施形態の加飾印刷層付き粘着シート1’は、ハードコート層2と基材フィルム3と前記基材フィルム3に部分的に設けられた加飾印刷層4と粘着剤層5と剥離シート6とがこの順に積層されている。図2および図3において、加飾印刷層4は額縁状とした印刷パターンを示すが、本発明の加飾印刷層付き粘着シートはこれに限定されず、例えば意匠性を有する印刷パターンであってもよい。
この加飾印刷層付き粘着シート1’は、第一の実施形態と同様に、携帯電話やモバイル機器などの携帯端末機器の表面保護シートに適用されるものである。
【0047】
図4は、本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第二の実施形態において抜き加工されたものを示す概略断面図であり、図5はその概略平面図である。
図4において、図2に示した加飾印刷層付き粘着シート1’と同じ構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。本発明の加飾印刷層付き粘着シート7は、少なくともハードコート層2、基材フィルム3及び粘着剤層5が、剥離シート6を残して被着体の形状に合わせて抜き加工された状態、すなわち剥離シート6のみが切断されずに他の層が完全に打ち抜かれた状態となっている。加飾印刷層が抜き加工されるかは、印刷される範囲による。図4および図5においては額縁状とした加飾印刷層4の部分が抜き加工された例を示す。
抜き加工をすることにより、本発明の加飾印刷層付き粘着シート7を被着体に容易に貼り付けることができる。
【0048】
第二の実施形態については、以下、図2を用いて説明する。加飾印刷層付き粘着シート1’においては、第一の実施形態の加飾印刷層付き粘着シート1の構造に加えて、粘着剤層5の面5aの側に剥離シート6がさらに積層されている。
【0049】
粘着剤層5の面5aの側には、剥離シート6が積層されていることが好ましい。剥離シート6は、種々の剥離シートを使用できるが、代表的に剥離性を表面に有するシート材から構成される。シート材としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などのフィルムや、これらのフィルムに填料などの充填剤を配合したフィルムや合成紙などが挙げられる。また、グラシン紙、クレーコート紙、上質紙などの紙基材が挙げられる。
シート材の表面に剥離性を持たせるには、その表面に熱硬化性シリコーン樹脂や、紫外線硬化型シリコーン樹脂等の剥離剤を塗布により付着させる。剥離剤の塗布量は0.03〜3.0g/mが好ましい。
剥離シート6は、剥離剤を有する表面を粘着剤層5に接して積層される。積層されたハードコート層2、基材フィルム3及び粘着剤層5が剥離シート6を残して、被着体の形状に合わせて抜き加工されていることが特に好ましい。
【0050】
抜き加工に用いる刃や加工機としては、特に制限なく公知のものを使用でき、例えば、トムソン刃、エッチング刃、彫刻刃等の刃や、ダイカットロール、レーザ装置等の加工機が使用できる。
【0051】
この加飾印刷層付き粘着シート1’によれば、第一の実施形態と同様、携帯端末機器の製造において、工程での歩留まり向上、工程数削減、携帯端末機器の情報表示部表面の平坦化などに対応することができる。更に、この加飾印刷層付き粘着シート1’は、第一の実施形態の加飾印刷層付き粘着シート1の構造に加えて、粘着剤層5の面5aの側に剥離シート6がさらに積層されているため、利便性の面で優れている。
また、加飾印刷層付き粘着シート7によれば、被着体の形状に合わせて抜き加工することにより、飛散防止用粘着シート1’の利便性をさらに向上させている。
【0052】
次に、図2を参照して、加飾印刷層付き粘着シート1’の製造方法について説明する。
【0053】
基材フィルム3の面3aの側に、例えば、マイヤーバーのような塗工手段で、硬化性組成物を含有する塗布剤を塗布、必要に応じ乾燥し、電離放射線、例えば紫外線を照射して硬化させ、ハードコート層2を積層する(工程A)。
【0054】
次いで、印刷機を用いて、基材フィルム3の面3bの側に印刷を施し、加飾印刷層4を積層する(工程B)。
【0055】
次いで、粘着剤層5を積層する方法としては、粘着剤層5からなる基材レス粘着シートを押し付けて積層する方法が挙げられる(工程C)。この基材レス粘着シートは、別途、剥離シート6に粘着剤含有組成物を塗布し、乾燥させて作製したものである。工程Cにより、加飾印刷層付き粘着シート1’を得る。
【0056】
また、基材フィルム3の面3bの側に、例えば、ナイフコーターのような塗工手段で、上記粘着剤含有組成物を含有する塗布剤を塗布し、乾燥し、粘着剤層5を積層する方法も挙げられる(工程C’)。
【0057】
工程C’に次いで、粘着剤層5に剥離シート6を積層し、加飾印刷層付き粘着シート1’を得る。
【0058】
本発明の加飾印刷層付き粘着シート1’の製造方法によれば、基材フィルム3の面3bの側に印刷し、更に、段差追従性能を付与された粘着剤層5からなる基材レス粘着シートを押し付けることにより、空気溜まりが最小限に抑えられ、薄膜化された加飾印刷層付き粘着シート1が得られる。
【0059】
なお、図4に示されるように、例えばダイカットロールを用いて、所定の形状に抜き加工をしてもよい。
【0060】
(3)第三の実施形態
図6は、本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第三の実施形態を示す概略断面図である。図6において、図1に示した加飾印刷層付き粘着シート1と同じ構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
この加飾印刷層付き粘着シート8は、第一の実施形態と同様に、携帯電話やモバイル機器などの携帯端末機器の表面保護シートに適用される。
【0061】
加飾印刷層付き粘着シート8においては、第二の実施形態の加飾印刷層付き粘着シート1’の構造に加えて、基材フィルム3の面3bの側にハードコート層9が積層されている。
更に、基材フィルムの他方の面3bの側にハードコート層9を介して部分的に加飾印刷層4が設けられている。
【0062】
図7は、本発明の加飾印刷層付き粘着シートの第三の実施形態において抜き加工されたものを示す概略断面図である。
第二の実施形態と同様に、抜き加工をすることにより、加飾印刷層付き粘着シート10を被着体に容易に貼り付けることができる。
【0063】
ハードコート層9の性能は特に限定されないが、加飾印刷層4及び粘着剤層5と密着性が良いものが好ましい。
【0064】
この加飾印刷層付き粘着シート8によれば、第二の実施形態の加飾印刷層付き粘着シート1’に加えて、基材フィルム3の面3bの側にハードコート層9をさらに積層することにより、加飾印刷層付き粘着シート1’の効果に加えて、後述するハードコート層積層工程(工程D)後から粘着剤層積層工程(工程F)までにおける耐カール性を向上させ、最終的に加飾印刷層付き粘着シート8の製造工程における歩留まりを向上させることができる。したがって、加飾印刷層付き粘着シート8の製造工程における歩留まりを向上させるためには、ハードコート層9が、基材フィルム3の面3bの側に設けられることが好ましい。
【0065】
次に、図6を参照して、加飾印刷層付き粘着シート8の製造方法について説明する。
【0066】
第二の実施形態における工程Aに次いで、基材フィルム3の面3bの側に例えばマイヤーバーのような塗工手段で、硬化性組成物を含有する塗布剤を塗布し、必要に応じて乾燥させ、電離放射線、例えば紫外線を照射して硬化させ、ハードコート層9を積層する(工程D)。
【0067】
次いで、印刷機を用いて、ハードコート層9の面9aの側に印刷を施し、加飾印刷層4を形成する(工程E)。
【0068】
工程Eに次いで、ハードコート層9の面9aの側に、粘着剤層5が塗工された剥離シート6からなる基材レス粘着シートを押し付けて、加飾印刷層付き粘着シート8を得る(工程F)。
【0069】
また、ハードコート層9の面9aの側に、例えばナイフコーターにより上記粘着剤含有組成物を含有する塗布剤を塗布し、乾燥させ、粘着剤層5を積層する方法も挙げられる(工程F’)。
【0070】
工程F’に次いで、粘着剤層5に剥離シート6を積層し、加飾印刷層付き粘着シート8を得る。
【0071】
本発明の加飾印刷層付き粘着シート8の製造方法によれば、第二の実施形態の加飾印刷層付き粘着シート1’の製造方法に加えて、基材フィルム3の面3bの側にハードコート層9をさらに積層する工程を加えることにより、加飾印刷層付き粘着シート1’の製造方法による効果に加えて、加飾印刷層付き粘着シート8の歩留まりを向上させることができる。
【0072】
なお、図7に示されるように、例えばダイカットロールを用いて、所定の形状に抜き加工をしてもよい。
【0073】
本発明の携帯端末機器は、本発明の加飾印刷層付き粘着シートを表面保護シートとして用いたものである。
近年の携帯端末機器の軽薄短小化は、光源と表示パネルとの位置を接近させることになるため、光源からの光がパネルとの間に挟みこまれる粘着層を通って外部に漏れやすくなっており、特に画像端部から光が漏れるとパネルの表示面が見えにくくなるといった不都合を生じさせている。
本発明の加飾印刷層付き粘着シートを表面保護シートとして用いることで、本発明の携帯端末機器は、外部に光が漏れやすい部分に加飾印刷層を設けることにより、部分的な遮光性を有し、上記不都合を解消することができる。
【0074】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
(各種構成部材の作成)
ハードコートフィルム1の作製
紫外線硬化型樹脂(荒川化学工業社製、製品名「ビームセット575CB」、濃度100%、光重合開始剤入り)100重量部に、レベリング剤(ビックケミージャパン社製、製品名「BYK−355」、濃度52%)0.1重量部を加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈して40%濃度の塗布液を調製した。次いで、両面易接着PETフィルム(東洋紡績社製、製品名「コスモシャイン100A4300」、膜厚100μm)の一方の面に、マイヤーバー#12を用いて乾燥後の膜厚が5μmになるように塗布剤を塗布、乾燥し、紫外線を照射(照度230mW/cm、光量230mJ/cm)して硬化させ、ハードコートフィルム1を得た。
【0076】
基材レス粘着シート1の作製
アクリル酸n−ブチル79重量%、アクリル酸メチル20重量%、アクリル酸ヒドロキシエチル1重量%を共重合して得たアクリル酸エステル共重合体(分子量80万、濃度35重量%)100重量部に、トルエン及びキシリレンジイソシアネート系3官能性アダクト体(綜研化学社製、製品名:TD−75、濃度75重量%)を0.1重量部添加し、撹拌して、粘着剤塗布液を調製した。重剥離シート(リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」、膜厚38μm)の剥離処理面に、ナイフコーターを用いて乾燥後の膜厚が60μmになるように塗布し、乾燥後、軽剥離シート(リンテック社製、製品名「SP−PET381031H」、膜厚38μm)と貼り合わせして、基材レス粘着シート1を得た。
【0077】
基材レス粘着シート2の作製
アクリル酸n−ブチル77重量%、アクリル酸エチル20重量%、アクリル酸3重量%を共重合して得たアクリル酸エステル共重合体(分子量100万、濃度30重量%)100重量部に、トルエン及び金属キレート系硬化剤(綜研化学社製、製品名「M−5A」、濃度4.95%)を4重量部添加し、撹拌して、粘着剤塗布液を調製した。重剥離シート(リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」、膜厚38μm)の剥離処理面に、ナイフコーターを用いて乾燥後の膜厚が60μmになるように塗布し、乾燥後、軽剥離シート(リンテック社製、製品名「SP−PET381031H」、膜厚38μm)と貼り合わせして、基材レス粘着シート2を得た。
【0078】
(実施例1)
印刷機(リンテック社製、装置名LPM−300)を用いて、ハードコートフィルム1の非コート面にフレキソ印刷方式によるパターン印刷(印刷液:帝国インキ製造社製、製品名:UVFILスクリーンインキ(黒色))を施した。その際、7μmの印刷を3回行い、約21μmの加飾印刷層とした。その上に、軽剥離側剥離シートを剥離した基材レス粘着シート1の粘着面を貼合した。さらに、ダイカットロールを用いて、所定の形状に抜き加工をし、図4に相当する加飾印刷層付き粘着シートを得た。
【0079】
(実施例2)
基材レス粘着シートとして基材レス粘着シート2を用いた以外は実施例1と同様の方法にて加飾印刷層付き粘着シートを得た。
【0080】
実施例1及び実施例2の加飾印刷層付き粘着シートの性状を、以下の試験方法で測定し、結果を表1に示した。
(1) 全光線透過率
実施例で得られた加飾印刷層付き粘着シートの重剥離シートを取り除き、ヘイズメーター(日本電色工(株)製、商品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7361−1に準拠して非印刷部分の全光線透過率を測定した。
【0081】
(2) ヘイズ
実施例で得られた加飾印刷層付き粘着シートの重剥離シートを取り除き、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、商品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7136に準拠して非印刷部分のヘイズを測定した。
【0082】
(3) 貯蔵弾性率
実施例で得られた基材レス粘着シートの剥離シートを取り除いて複数枚重ね合わせ、厚さ2.0mmのシートサンプルを形成した。形成したシートサンプルを粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製、商品名「RDAII」)を使用し、測定周波数1Hzにて、23℃における貯蔵弾性率を測定した。
【0083】
(4) 外観
加飾印刷層のエッジ部に気泡がないかを目視確認した。気泡が生じていない場合には○、気泡が生じている場合には×と判定した。外観としては問題ないが、気泡が若干生じている場合は△とした。
【0084】
【表1】

【0085】
表1に示すとおり、基材フィルムの他方の面の側に印刷し、更に、段差追従性能を付与された粘着剤層が塗工された剥離シートからなる基材レス粘着シートを押し付けることにより、エアギャップが埋められ、薄膜化された加飾印刷層付き粘着シートが得られた。特に貯蔵弾性率が0.28MPaである実施例2では気泡が若干生じたのに対し、貯蔵弾性率が0.08MPaである実施例1では気泡が全く生じなかった。
【符号の説明】
【0086】
1、1’、 7、8、10 加飾印刷層付き粘着シート
2、9 ハードコート層
3 基材フィルム
4 加飾印刷層
5 粘着剤層
6 剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面の側にハードコート層が設けられた基材フィルムと、前記基材フィルムの他方の面の側に部分的に設けられた加飾印刷層と、粘着剤層とがこの順に積層されていることを特徴とする加飾印刷層付き粘着シート。
【請求項2】
前記基材フィルムの他方の面の側にハードコート層を介して部分的に加飾印刷層が設けられている請求項1に記載の加飾印刷層付き粘着シート。
【請求項3】
前記基材フィルムと、前記加飾印刷層と、前記粘着剤層と、剥離シートとがこの順に積層されている請求項1又は2に記載の加飾印刷層付き粘着シート。
【請求項4】
前記剥離シートを残して、前記ハードコート層、前記基材フィルム及び前記粘着剤層が、被着体の形状に合わせて抜き加工されている請求項3に記載の加飾印刷層付き粘着シート。
【請求項5】
前記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリカーボネートフィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の加飾印刷層付き粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.01〜0.3MPaである請求項1〜5のいずれかに記載の加飾印刷層付き粘着シート。
【請求項7】
携帯端末機器の表面保護シートとして用いられる請求項1〜6のいずれかに記載の加飾印刷層付き粘着シート。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載の加飾印刷層付き粘着シートの製造方法であって、前記基材フィルムの一方の面に部分的に加飾印刷し、更に、前記粘着剤層と前記剥離シートが積層された基材レス粘着シートの粘着剤面を前記基材フィルムの加飾印刷層を有する面と貼り合わせることにより、基材フィルム、加飾印刷層、粘着剤層及び剥離シートをこの順に積層することを特徴とする加飾印刷層付き粘着シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の加飾印刷層付き粘着シートにより、部分的な遮光性を有することを特徴とする携帯端末機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−93977(P2011−93977A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247547(P2009−247547)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】