加飾合成樹脂成形品
【課題】 本発明は、インサートラベルによる加飾法に多様な質感、さらには深みのある立体的な視覚効果を付与することを技術課題とするものであり、インサートラベルにより高度にアイキャッチ効果が発揮される合成樹脂成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】 インサート材としてインサートラベルを成形金型のキャビティ面に配設した状態でインサート成形され、このインサートラベルにより表面を加飾した合成樹脂成形品において、インサートラベルは合成樹脂製フィルムを基材層としたものとし、この基材層の表面側に、キャビティ面の中に粗面化加工により形成され粗面化領域の微細な凹凸構造が、インサート成形と同時に転写された粗面転写領域を有する構成とする。
【解決手段】 インサート材としてインサートラベルを成形金型のキャビティ面に配設した状態でインサート成形され、このインサートラベルにより表面を加飾した合成樹脂成形品において、インサートラベルは合成樹脂製フィルムを基材層としたものとし、この基材層の表面側に、キャビティ面の中に粗面化加工により形成され粗面化領域の微細な凹凸構造が、インサート成形と同時に転写された粗面転写領域を有する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、表面をインサートラベルにより加飾した合成樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【０００２】
パケージにおける装飾が商品力の大きな部分を占める化粧料用等の容器においては、塗装、印刷等によりさまざまな加飾性を発揮させて商品イメージを大きく向上させることが望まれている。
このような加飾性を付与する方法の一つとして、インサートラベルをインサート材として予め金型内にセットし、成形品の成形と同時にこの成形品の表面に貼着する方法がある。
【０００３】
このインサートラベル（以下、単にラベルと記す場合がある。）による加飾法は、成形品の成形と同時にラベルの貼着が達成され、専用の別工程の貼着作業を必要としないこと、成形品の表面とラベルとの間に段差が生じないので成形品とラベルを一体化したように見せることができること、成形品に対するラベルの強固で安定した貼着を確実に得ることができること、と云う優れた作用効果が発揮される。
例えば、特許文献１には、インサートラベルに関する発明が記載されている。
【０００４】
図６は、従来から一般的に使用されているインサートラベルの層構成の一例を示す縦断面図である。
このラベル１１１は、合成紙からなる不透明な基材層１１２の表面に印刷層１１３を形成し、この印刷層１１３を静電気の帯電を防止するための帯電防止剤を含有したニスコートによる保護層１１６で被覆しており、また裏面にはインサート成形により合成樹脂成形品の表面に接着固定する接着層１１５を積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平１０−６３１８９
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ここで、この種のインサートラベルによる加飾方法は、上記したように外観体裁が良い、生産性が高い等の利点を有する一方で、その加飾態様が平坦状であるため、深みのある、さらには立体的な視覚効果が十分に現出できない等、所謂、アイキャッチ効果が乏しいと云う問題がある。
【０００７】
そこで本発明は、インサートラベルによる加飾法に多様な質感、さらには深みのある立体的な視覚効果を付与することを技術課題とするものであり、インサートラベルにより高度にアイキャッチ効果が発揮される合成樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記技術的課題を解決する手段に係る本発明の主たる構成は、
インサート材としてインサートラベルを成形金型のキャビティ面に配設した状態でインサート成形され、このインサートラベルにより表面を加飾した合成樹脂成形品において、
インサートラベルは合成樹脂製フィルムを基材層としたものとし、
この基材層の表面側に、キャビティ面の中に粗面化加工により形成された粗面化領域の微細な凹凸構造がインサート成形と同時に転写された粗面転写領域を有する、と云うものである。
【０００９】
インサート成形では、成形品を形成する高温の溶融樹脂あるいは高温で軟化した樹脂が成形圧力により、ラベルを成形金型のキャビティ面に押し付ける力が作用するが、本願発明者らはラベルの基材層を比較的、柔軟で軟化温度の低い合成樹脂製フィルムから成るものとすることにより、
キャビティ面に予めシボ加工や、ヘアーライン加工等の粗面化加工で微細な凹凸を形成しておくと、インサート成形によりこのキャビティ面の微細な凹凸が、基材層に転写されることを発見し、以下に説明する本発明に至った。
【００１０】
なお、上記構成また以下の説明でたとえば「基材層の裏面側」と云うように、ラベル全体あるいはラベルを構成する各層の積層方向を明確にするために便宜上「表面側」また「裏面側」と云う用語を使用するが、ここで「裏面側」は合成樹脂成形品との貼着面側、「表面側」はその反対側を示す。
また、ラベルの基材層の裏面側には通常、全面に亘って接着層が積層される。また必要に応じて加飾や表示の目的で所定の領域に印刷層等の加飾層が積層される。
【００１１】
そして、上記構成の加飾成形品は、
粗面化加工により所定の領域に所定の形状をした粗面化領域を配設した金型のキャビティ面に、ラベルをインサート材としてセットし、成形品を成形することにより容易に成形することができる。
すなわち、インサート成形時の高温の溶融樹脂あるいは高温で軟化した樹脂の成形圧力により、上記キャビティ面の粗面化領域の微細な凹凸形状が、このキャビティ面に押付けられるラベルの基材層の表面側に転写し、基材層の表面側の所定の領域に、所定の形状をした微細な凹凸形状による粗面転写領域が形成される。
【００１２】
このように、基材層の表面側の所定領域に、所定の形状の微細な凹凸形状による粗面転写領域を配設することにより、成形品表面の光の反射様式をさまざまに変化させることができ、またインサート成形によりラベルが成形品の表面で段差もなく成形品の表面に一体化して貼着することと相俟って、成形品の表面自体がさまざまな質感を有するような視覚効果を発揮させることができる。
【００１３】
また、粗面転写領域とその他の領域（以下、非粗面化領域とする場合がある。）を組み合わせて、絵柄、模様、文字、図案等のさまざまな図柄を構成することができ、両者の光の反射態様の違いにより深みのある、さらには立体的な視覚効果を付与することができる。
【００１４】
そして、粗面転写領域はキャビティ面を粗面化加工するだけで容易に、再現良く形成することができる。
さらに、ラベルが密着する部分でキャビティ面を取替え可能な部材で構成にしておけば、この部材を取り替えるだけで、さまざまな図柄の粗面転写領域を有する成形品を得ることができる。
【００１５】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、インサートラベルは、基材層が透明な合成樹脂製フィルムから成り、基材層の裏面側の所定の領域に加飾層を積層する、と云うものである。
【００１６】
ここで、加飾層はその加飾目的に合せて、印刷層、金属薄膜層、塗膜層、さらには印刷層と金属薄膜層を積層したもの等から適宜選択することができ、上記構成によれば、透明な基材層の表面側に配設される粗面転写領域と、裏面側に積層される加飾層の組み合わせにより、さらに透明な基材層によって加飾層が浮き上がるような視覚効果が発揮され、多様で、深みのある高度な加飾効果を現出させることができる。
【００１７】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、加飾層を金属薄膜層とする、と云うものである。
【００１８】
上記構成によれば、透明な基材層の表面側に配設される粗面転写領域と、裏面側に積層される金属薄膜層を組み合わせて、粗面転写領域と非転写領域により金属調の光沢を変化させて、金属調の外観にさまざまな質感を付与することができる。
さらに、非粗面化領域による鏡面状部分と、粗面転写領域による鈍く光る部分を組み合わせることにより陰影的な視覚効果を発揮させて、立体的な視覚効果を現出させることもできる。
【００１９】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、成形品は表面に所定の形状の凸部を突出形成したものであり、インサートラベルがこの凸部の形状に沿って貼着されている構成とする、と云うものである。
【００２０】
上記構成の加飾成形品は、
成形品の凸部を形成する凹部を刻設したキャビティ面に、インサートラベルを、凹部を橋渡し状に覆うようにセットし、成形品を成形することにより成形することができる。インサートラベルの基材層フィルムは、高温の溶融樹脂に接触して軟化し、さらに溶融樹脂の成形圧力により延伸変形して凹部の形状に沿うように変形することができ、その結果ラベルは、成形品の凸部も含めた表面の形状に沿って、接着層を介して積層することができる。
【００２１】
そして上記構成によれば、成形品の凸部と基材層の粗面転写領域そして非転写領域を組み合わせて、たとえば凸部を、この凸部の形状に形成された粗面転写領域で被覆する等、これらの相対的な配設位置を調節することにより、凸部の陰影を強調することもでき、より立体的な加飾効果を現出させることができる。
【００２２】
ここで、凸部の形状は加飾目的に応じて、絵柄、模様、文字、図案等の図柄から適宜選択することができるものであるが、加飾効果の他にもインサート成形における、キャビティ面に形成された凹部に沿うようなラベルの延伸変形性を考慮する必要があり、凸部の突出高さは最大で０．６ｍｍとするのが好ましい。０．６ｍｍを超えると、凸部の形状が再現できなくなったり、皺が発生したりしてしまう。
【００２３】
また、基材層の肉厚が厚すぎると上述したような、キャビティ面の凹部に沿っての延伸変形性が損なわれ、また薄すぎると透明体による光学的な効果が十分に発揮されないので、基材層フィルムの肉厚は０．０７５〜０．２ｍｍの範囲とするのが好ましい。
【００２４】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、インサートラベルの基材層を、ポリスチレン系樹脂製のフィルムから成るものとする、と云うものである。
【００２５】
上記構成で、スチレン系樹脂としてはポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合（ＡＳ）樹脂、ＡＢＳ樹脂等が含まれる。
これらポリスチレン系樹脂製のフィルムは、ＡＢＳ樹脂を除いて透明性を有し、透明性のフィルムの中では軟化温度が低く、インサート成形と同時に、キャビティ面の粗面化領域の微細な凹凸形状を、容易にまた高精度に転写することができ、微細な凹凸形状による粗面転写領域を高品位に形成することができる。
【００２６】
さらに、インサート成形における延伸変形性も良好で、成形品の表面に凸部を形成する際にも、キャビティ面に刻設した凹部の形状に沿うように容易に延伸変形することができ、その結果ラベルは、成形品の凸部も含めた表面の形状に沿って、成形品の表面に積層することができる。
【００２７】
ここで、本発明の加飾成形品にインサート材として使用するインサートラベルの基材層はポリスチレン系樹脂フィルムに限定されるものではなく、成形品に使用する合成樹脂、射出成形、ブロー成形、熱成形等の成形方法、成形品の形状、凸部の形状、そして成形樹脂温度や成形圧力を考慮し、
インサート成形に際し高温の溶融樹脂により軟化し、さらに成形圧力により粗面化領域の微細な凹凸形状を転写可能な、さらにはキャビティ面の凹部の形状に沿うように延伸変形して成形品の凸部を被覆可能な易延伸性を有する合成樹脂フィルムを選択することができる。
上記した、ポリスチレン系樹脂製のフィルムの他にも、たとえば、モノマー成分であるエチレングリコールやテレフタル酸にシクロヘキサンジメタノール（ＣＨＤＭ）等の共重合成分を加えて柔軟化して易延伸性を増したポリエステル系フィルムを使用する等、目的に応じて、共重合やゴム成分を微分散させる等の手段で、透明性を損なうことなく易延伸化したフィルムを使用することができる。
【発明の効果】
【００２８】
本発明の加飾合成樹脂成形品は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有するものにあっては、基材層の表面側の所定位置に所定の形状の微細な凹凸形状による粗面転写領域を配設することにより、
成形品表面の光の反射様式をさまざまに変化させることができ、またラベルが段差もなく成形品の表面に一体化して貼着していることと相俟って、成形品の表面自体がさまざまな質感を有するような視覚効果を発揮させることができる。
【００２９】
さらに、基材層の表面の粗面転写領域と、成形品の表面に形成した凸部、印刷層や金属薄膜層等の加飾層、そして透明性の基材層とする等の付加的な構成要素の作用効果が相俟って、今までにない、高品位で、多様で、深みのある、さらには立体的な加飾効果を現出させることができる。
【００３０】
また、基材層の表面の粗面転写領域は、キャビティ面に粗面化加工により形成した粗面化領域をインサート成形と同時に転写したものであり、容易に、また高い生産性で形成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】本発明の加飾成形品の第１実施例を示す斜視図である。
【図２】図１中に示すＡ−Ａ線に沿って部分的に示す断面図である。
【図３】図１の加飾成形品に使用するインサートラベルの層構成を示す断面図である。
【図４】図１の加飾成形品をインサート成形するための金型構成の概略説明図である。
【図５】本発明の加飾成形品の第２実施例を示す平面図である。
【図６】従来のインサートラベルの層構成の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００３２】
以下、本発明の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図１、２は本発明の加飾合成樹脂成形品の第１実施例を示すもので、図１は斜視図、図２は図１中のＡ−Ａ線に沿って示す部分的な断面図である。
この成形品１は矩形薄皿状のコンパクト容器の蓋材で、黒色に着色されたＡＢＳ樹脂製の射出成形品である。
【００３３】
また、平坦状の頂壁４には平面形状が図案化した文字である、「Ａ」、「Ｂ」、「Ｃ」、「Ｄ」、「Ｅ」、「Ｆ」、「Ｇ」、「Ｈ」の計８ケの凸部２が突出形成されている。この凸部２の突出高さは最大で０．４ｍｍとしている。
また、頂壁４のこれら凸部２を含む矩形状の領域には、ラベル１１が、このラベル１１をインサート材としたインサート成形により貼着されており、図２にみられるようにラベル１１は凸部２の表面形状に沿うように貼着されている。
【００３４】
図３はこの実施例で使用したラベル１１の層構成を示す断面図であり、ポリスチレン系樹脂であるＡＳ樹脂製の無色透明なフィルムから成る基材層１２の裏面側の全域に亘り加飾層１３として金属薄膜層１３ａが積層されており、さらに成形品１の表面に貼着するための接着層１５が積層されている。
ここで、基材層１２の層厚は０．１２５ｍｍで、その他の層の層厚はそれぞれ数ミクロン程度である。
【００３５】
また接着層１５には耐熱性の観点からエチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂製とし、真空蒸着法やスパッタリング法等で形成される金属薄膜層１３ａは例えばポリエチレンイミン、ポリエーテルポリオール・ポリイソシアネート、ポリエステルポリオール・ポリイソシアネート等を水や有機溶剤で希釈したアンカー層を介して基材層１２に密着状に積層している。
【００３６】
ラベル１１を上記のような層構成とすることにより、成形品１の項壁４のラベル１１が貼着された矩形の領域では、金属薄膜層１３ａにより透明な基材層１２を透して凸部１２を含めて全体的にメタリック調の光沢が現出している。
さらに、本実施例では基材層１２の表面側の、それぞれの凸部２を被覆する領域を、この凸部２の形状に合せた形状の粗面転写領域Ｒとしており（図１、図２参照）、表面には後述するように金型のキャビティ面に粗面化加工により形成されたヘアーライン状の微細な凹凸が転写されており、周辺の鏡面状の光沢を有する非転写領域ＮＲとは対照的に、鈍い光沢により金属の地肌を感じさせる今までにない質感が現出されている。
【００３７】
また、粗面転写領域Ｒと周辺の非転写領域ＮＲの光沢の差により、凸部２に陰影をつけるような視覚効果が発揮され、凸部２の立体的な形状をより強調し、突出高が０．４ｍｍ程度の凸部２によっても十分に立体的な視覚効果を発揮させることができる。
そして、上記した、凸部２、金属箔膜層１３ａ、粗面転写領域Ｒによる視覚効果を透明な基材層１２を透して発揮させることにより、深みのある、そして立体的な加飾効果が高品位に発揮される。
【００３８】
次に、図４は図１、２に示される加飾成形品をインサート成形するための金型構成の概略説明図である。
金型３１はキャビティ金型３３とコア金型３２から構成され、キャビティ金型３３のキャビティ面３３ｓには、成形品１の表面に凸部２を形成するための、図案化した文字「Ａ」〜「Ｈ」の図柄に相当する凹部３３ａが形成されている。
また、この凹部３３ａの表面はそれぞれ粗面化領域Ｒｍとしており、粗面化加工（本実施例ではヘアーライン加工）により微細な凹凸構造が形成されている。
【００３９】
上記のような金型３１を使用し、バキュームにより吸着する方法により、図中に示されるようにキャビティ面３３ｓにラベル１１を密着状にセットした状態でキャビティ３４に成形品１を形成する溶融樹脂（本実施例ではＡＢＳ樹脂）を射出、充填する。
そして、凹部３３ａが位置する部分では、凹部３３ａに橋架け状に位置するラベル１１部分、特にＡＳ樹脂製の基材層１２部分が高温の溶融樹脂によりその柔軟性が増した状態で、溶融樹脂の充填圧力により、深絞り状に凹部３３ａの形状に沿って延伸変形し、ラベル１１を図２に示したように凸部２の形状に沿って積層することができる。
ここで、金属薄膜層１３ａは、基材層１２と接着層１５で裏表から密着状にサンドイッチされた状態で延伸変形するので均一に延伸され、クラックや皺の発生はみられなかた。
【００４０】
そしてまた、上記インサート成形と同時に、インサート成形時の高温の溶融樹脂の充填圧力により、キャビティ面３３ｓの粗面化領域Ｒｍのヘアーライン状の微細な凹凸形状が、このキャビティ面３３ｓに押付けられるラベル１１の基材層１２の表面側に転写し、この基材層１２の表面側に図１、２に示されるように粗面転写領域Ｒが形成される。
【００４１】
次に、図５は本発明の加飾合成樹脂成形品の第２実施例を示す平面図である。
この成形品１の形状は矩形状の板片で着色されたＡＢＳ樹脂製の射出成形品である。この成形品１の平坦な表面の、周縁部を除いた略全面に亘って、第１実施例の加飾成形品に使用したインサートラベル（図２参照）と同じ構成のラベル１１をインサート成形により貼着している。
【００４２】
そして、ラベル１１の表面側、すなわち透明なＡＳ樹脂製のフィルムから成る基材層１２の表面側には、図５中に見られるように、「星形」あるいは「雪の結晶」の形状とした図柄が現出されている。
本実施例ではこれら「星形」あるいは「雪の結晶」の図柄部分を非転写領域ＮＲ、これら図案の周辺の領域を粗面転写領域Ｒとしており、鈍い金属光沢が現出する粗面転写領域Ｒの中で、鏡面状の光沢を有する、「星形」や「雪の結晶」が透明な基材層１２の中に浮かぶように、きらきらと光るような今までにない加飾効果が発揮される。
そして、この実施例のように成形品１の表面に第１実施例の成形品のような凸部がない場合でも、粗面転写領域Ｒと非転写領域ＮＲのコントラストを利用して高度な加飾効果を発揮させることができた。
【００４３】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果を説明したが、本発明の加飾合成樹脂成形品は、これまでも随所で説明したように、これら実施例に限定されるものではなく、使用目的や加飾目的に応じて次のように様々なバリエーションとすることができる。
（１）上記実施例では成形品を射出成形品としたが、インサート成形が適用可能なブロー成形や熱成形品とすることもでき、使用する合成樹脂もなんら限定されるものではない。
（２）成形品の凸部の形状は、基材層フィルムが延伸変形できる範囲でさまざまな形状とすることができる。
（３）インサートラベルの層構成は、少なくとも粗面転写領域で基材層が表面に露出していると云う範疇のなかで、加飾目的に応じてさまざまな層構成とすることができる。たとえば、
・実施例１、２では、ラベルは透明な基材層の裏面側に加飾層として金属薄膜層を積層するものとしたが、ここで基材層１２は有色透明や半透明のものとすることもでき、また金属薄膜層の替わりに印刷層等、他の加飾層とすることもできる。
・また、基材層は着色して不透明なものとすることもできる、この場合にも粗面転写領域の形状や、非転写領域との組合せによりにより、容易に高度な加飾効果を得ることができる。
・また、加飾目的に応じてさらに加飾層を積層、追加することができ、基材層の表面側の粗面転写領域を除く領域に加飾層を積層することもできる。
（４）実施例１では、成形品の平坦部と凸部を含めた広い領域に金属薄膜層を全体的に積層し、凸部を粗面転写領域とする構成としたが、ラベルを加飾層が所定の領域だけに積層するものとし、凸部だけに加飾層が積層する構成、あるいは凸部には加飾層が積層しない構成、凸部の一部だけに加飾層が積層する構成と云うように、これら凸部と加飾層と粗面転写領域の位置関係もさまざまな態様で組み合せることができる。
（５）異なる微細な凹凸形状を有する複数の粗面転写領域を組み合わせて配設することもできる。
【産業上の利用可能性】
【００４４】
以上説明したように、本発明の加飾合成樹脂成形品は、インサート成形と同時にインサートラベルの基材層に金型のキャビティ面の粗面化加工による微細な凹凸構造を転写することにより、表面にさまざまな態様で今までにない質感を付与し、高度な加飾効果を現出するものであり、化粧料容器分野等での幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【００４５】
１ ；成形品
２ ；凸部
４ ；頂壁
１１；（インサート）ラベル
１２；基材層
１３；加飾層
１３ａ；金属薄膜層
１５；接着層
３１；金型
３２；コア金型
３３；キャビティ金型
３３ａ；凹部
３４；キャビティ
１１１；インサートラベル
１１２；基材層
１１３；印刷層
１１５；接着層
１１６；保護層
Ｒ；粗面転写領域
ＮＲ；非転写領域
Ｒｍ；粗面化領域
【技術分野】
【０００１】
本発明は、表面をインサートラベルにより加飾した合成樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【０００２】
パケージにおける装飾が商品力の大きな部分を占める化粧料用等の容器においては、塗装、印刷等によりさまざまな加飾性を発揮させて商品イメージを大きく向上させることが望まれている。
このような加飾性を付与する方法の一つとして、インサートラベルをインサート材として予め金型内にセットし、成形品の成形と同時にこの成形品の表面に貼着する方法がある。
【０００３】
このインサートラベル（以下、単にラベルと記す場合がある。）による加飾法は、成形品の成形と同時にラベルの貼着が達成され、専用の別工程の貼着作業を必要としないこと、成形品の表面とラベルとの間に段差が生じないので成形品とラベルを一体化したように見せることができること、成形品に対するラベルの強固で安定した貼着を確実に得ることができること、と云う優れた作用効果が発揮される。
例えば、特許文献１には、インサートラベルに関する発明が記載されている。
【０００４】
図６は、従来から一般的に使用されているインサートラベルの層構成の一例を示す縦断面図である。
このラベル１１１は、合成紙からなる不透明な基材層１１２の表面に印刷層１１３を形成し、この印刷層１１３を静電気の帯電を防止するための帯電防止剤を含有したニスコートによる保護層１１６で被覆しており、また裏面にはインサート成形により合成樹脂成形品の表面に接着固定する接着層１１５を積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平１０−６３１８９
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ここで、この種のインサートラベルによる加飾方法は、上記したように外観体裁が良い、生産性が高い等の利点を有する一方で、その加飾態様が平坦状であるため、深みのある、さらには立体的な視覚効果が十分に現出できない等、所謂、アイキャッチ効果が乏しいと云う問題がある。
【０００７】
そこで本発明は、インサートラベルによる加飾法に多様な質感、さらには深みのある立体的な視覚効果を付与することを技術課題とするものであり、インサートラベルにより高度にアイキャッチ効果が発揮される合成樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記技術的課題を解決する手段に係る本発明の主たる構成は、
インサート材としてインサートラベルを成形金型のキャビティ面に配設した状態でインサート成形され、このインサートラベルにより表面を加飾した合成樹脂成形品において、
インサートラベルは合成樹脂製フィルムを基材層としたものとし、
この基材層の表面側に、キャビティ面の中に粗面化加工により形成された粗面化領域の微細な凹凸構造がインサート成形と同時に転写された粗面転写領域を有する、と云うものである。
【０００９】
インサート成形では、成形品を形成する高温の溶融樹脂あるいは高温で軟化した樹脂が成形圧力により、ラベルを成形金型のキャビティ面に押し付ける力が作用するが、本願発明者らはラベルの基材層を比較的、柔軟で軟化温度の低い合成樹脂製フィルムから成るものとすることにより、
キャビティ面に予めシボ加工や、ヘアーライン加工等の粗面化加工で微細な凹凸を形成しておくと、インサート成形によりこのキャビティ面の微細な凹凸が、基材層に転写されることを発見し、以下に説明する本発明に至った。
【００１０】
なお、上記構成また以下の説明でたとえば「基材層の裏面側」と云うように、ラベル全体あるいはラベルを構成する各層の積層方向を明確にするために便宜上「表面側」また「裏面側」と云う用語を使用するが、ここで「裏面側」は合成樹脂成形品との貼着面側、「表面側」はその反対側を示す。
また、ラベルの基材層の裏面側には通常、全面に亘って接着層が積層される。また必要に応じて加飾や表示の目的で所定の領域に印刷層等の加飾層が積層される。
【００１１】
そして、上記構成の加飾成形品は、
粗面化加工により所定の領域に所定の形状をした粗面化領域を配設した金型のキャビティ面に、ラベルをインサート材としてセットし、成形品を成形することにより容易に成形することができる。
すなわち、インサート成形時の高温の溶融樹脂あるいは高温で軟化した樹脂の成形圧力により、上記キャビティ面の粗面化領域の微細な凹凸形状が、このキャビティ面に押付けられるラベルの基材層の表面側に転写し、基材層の表面側の所定の領域に、所定の形状をした微細な凹凸形状による粗面転写領域が形成される。
【００１２】
このように、基材層の表面側の所定領域に、所定の形状の微細な凹凸形状による粗面転写領域を配設することにより、成形品表面の光の反射様式をさまざまに変化させることができ、またインサート成形によりラベルが成形品の表面で段差もなく成形品の表面に一体化して貼着することと相俟って、成形品の表面自体がさまざまな質感を有するような視覚効果を発揮させることができる。
【００１３】
また、粗面転写領域とその他の領域（以下、非粗面化領域とする場合がある。）を組み合わせて、絵柄、模様、文字、図案等のさまざまな図柄を構成することができ、両者の光の反射態様の違いにより深みのある、さらには立体的な視覚効果を付与することができる。
【００１４】
そして、粗面転写領域はキャビティ面を粗面化加工するだけで容易に、再現良く形成することができる。
さらに、ラベルが密着する部分でキャビティ面を取替え可能な部材で構成にしておけば、この部材を取り替えるだけで、さまざまな図柄の粗面転写領域を有する成形品を得ることができる。
【００１５】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、インサートラベルは、基材層が透明な合成樹脂製フィルムから成り、基材層の裏面側の所定の領域に加飾層を積層する、と云うものである。
【００１６】
ここで、加飾層はその加飾目的に合せて、印刷層、金属薄膜層、塗膜層、さらには印刷層と金属薄膜層を積層したもの等から適宜選択することができ、上記構成によれば、透明な基材層の表面側に配設される粗面転写領域と、裏面側に積層される加飾層の組み合わせにより、さらに透明な基材層によって加飾層が浮き上がるような視覚効果が発揮され、多様で、深みのある高度な加飾効果を現出させることができる。
【００１７】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、加飾層を金属薄膜層とする、と云うものである。
【００１８】
上記構成によれば、透明な基材層の表面側に配設される粗面転写領域と、裏面側に積層される金属薄膜層を組み合わせて、粗面転写領域と非転写領域により金属調の光沢を変化させて、金属調の外観にさまざまな質感を付与することができる。
さらに、非粗面化領域による鏡面状部分と、粗面転写領域による鈍く光る部分を組み合わせることにより陰影的な視覚効果を発揮させて、立体的な視覚効果を現出させることもできる。
【００１９】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、成形品は表面に所定の形状の凸部を突出形成したものであり、インサートラベルがこの凸部の形状に沿って貼着されている構成とする、と云うものである。
【００２０】
上記構成の加飾成形品は、
成形品の凸部を形成する凹部を刻設したキャビティ面に、インサートラベルを、凹部を橋渡し状に覆うようにセットし、成形品を成形することにより成形することができる。インサートラベルの基材層フィルムは、高温の溶融樹脂に接触して軟化し、さらに溶融樹脂の成形圧力により延伸変形して凹部の形状に沿うように変形することができ、その結果ラベルは、成形品の凸部も含めた表面の形状に沿って、接着層を介して積層することができる。
【００２１】
そして上記構成によれば、成形品の凸部と基材層の粗面転写領域そして非転写領域を組み合わせて、たとえば凸部を、この凸部の形状に形成された粗面転写領域で被覆する等、これらの相対的な配設位置を調節することにより、凸部の陰影を強調することもでき、より立体的な加飾効果を現出させることができる。
【００２２】
ここで、凸部の形状は加飾目的に応じて、絵柄、模様、文字、図案等の図柄から適宜選択することができるものであるが、加飾効果の他にもインサート成形における、キャビティ面に形成された凹部に沿うようなラベルの延伸変形性を考慮する必要があり、凸部の突出高さは最大で０．６ｍｍとするのが好ましい。０．６ｍｍを超えると、凸部の形状が再現できなくなったり、皺が発生したりしてしまう。
【００２３】
また、基材層の肉厚が厚すぎると上述したような、キャビティ面の凹部に沿っての延伸変形性が損なわれ、また薄すぎると透明体による光学的な効果が十分に発揮されないので、基材層フィルムの肉厚は０．０７５〜０．２ｍｍの範囲とするのが好ましい。
【００２４】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、インサートラベルの基材層を、ポリスチレン系樹脂製のフィルムから成るものとする、と云うものである。
【００２５】
上記構成で、スチレン系樹脂としてはポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合（ＡＳ）樹脂、ＡＢＳ樹脂等が含まれる。
これらポリスチレン系樹脂製のフィルムは、ＡＢＳ樹脂を除いて透明性を有し、透明性のフィルムの中では軟化温度が低く、インサート成形と同時に、キャビティ面の粗面化領域の微細な凹凸形状を、容易にまた高精度に転写することができ、微細な凹凸形状による粗面転写領域を高品位に形成することができる。
【００２６】
さらに、インサート成形における延伸変形性も良好で、成形品の表面に凸部を形成する際にも、キャビティ面に刻設した凹部の形状に沿うように容易に延伸変形することができ、その結果ラベルは、成形品の凸部も含めた表面の形状に沿って、成形品の表面に積層することができる。
【００２７】
ここで、本発明の加飾成形品にインサート材として使用するインサートラベルの基材層はポリスチレン系樹脂フィルムに限定されるものではなく、成形品に使用する合成樹脂、射出成形、ブロー成形、熱成形等の成形方法、成形品の形状、凸部の形状、そして成形樹脂温度や成形圧力を考慮し、
インサート成形に際し高温の溶融樹脂により軟化し、さらに成形圧力により粗面化領域の微細な凹凸形状を転写可能な、さらにはキャビティ面の凹部の形状に沿うように延伸変形して成形品の凸部を被覆可能な易延伸性を有する合成樹脂フィルムを選択することができる。
上記した、ポリスチレン系樹脂製のフィルムの他にも、たとえば、モノマー成分であるエチレングリコールやテレフタル酸にシクロヘキサンジメタノール（ＣＨＤＭ）等の共重合成分を加えて柔軟化して易延伸性を増したポリエステル系フィルムを使用する等、目的に応じて、共重合やゴム成分を微分散させる等の手段で、透明性を損なうことなく易延伸化したフィルムを使用することができる。
【発明の効果】
【００２８】
本発明の加飾合成樹脂成形品は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有するものにあっては、基材層の表面側の所定位置に所定の形状の微細な凹凸形状による粗面転写領域を配設することにより、
成形品表面の光の反射様式をさまざまに変化させることができ、またラベルが段差もなく成形品の表面に一体化して貼着していることと相俟って、成形品の表面自体がさまざまな質感を有するような視覚効果を発揮させることができる。
【００２９】
さらに、基材層の表面の粗面転写領域と、成形品の表面に形成した凸部、印刷層や金属薄膜層等の加飾層、そして透明性の基材層とする等の付加的な構成要素の作用効果が相俟って、今までにない、高品位で、多様で、深みのある、さらには立体的な加飾効果を現出させることができる。
【００３０】
また、基材層の表面の粗面転写領域は、キャビティ面に粗面化加工により形成した粗面化領域をインサート成形と同時に転写したものであり、容易に、また高い生産性で形成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】本発明の加飾成形品の第１実施例を示す斜視図である。
【図２】図１中に示すＡ−Ａ線に沿って部分的に示す断面図である。
【図３】図１の加飾成形品に使用するインサートラベルの層構成を示す断面図である。
【図４】図１の加飾成形品をインサート成形するための金型構成の概略説明図である。
【図５】本発明の加飾成形品の第２実施例を示す平面図である。
【図６】従来のインサートラベルの層構成の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００３２】
以下、本発明の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図１、２は本発明の加飾合成樹脂成形品の第１実施例を示すもので、図１は斜視図、図２は図１中のＡ−Ａ線に沿って示す部分的な断面図である。
この成形品１は矩形薄皿状のコンパクト容器の蓋材で、黒色に着色されたＡＢＳ樹脂製の射出成形品である。
【００３３】
また、平坦状の頂壁４には平面形状が図案化した文字である、「Ａ」、「Ｂ」、「Ｃ」、「Ｄ」、「Ｅ」、「Ｆ」、「Ｇ」、「Ｈ」の計８ケの凸部２が突出形成されている。この凸部２の突出高さは最大で０．４ｍｍとしている。
また、頂壁４のこれら凸部２を含む矩形状の領域には、ラベル１１が、このラベル１１をインサート材としたインサート成形により貼着されており、図２にみられるようにラベル１１は凸部２の表面形状に沿うように貼着されている。
【００３４】
図３はこの実施例で使用したラベル１１の層構成を示す断面図であり、ポリスチレン系樹脂であるＡＳ樹脂製の無色透明なフィルムから成る基材層１２の裏面側の全域に亘り加飾層１３として金属薄膜層１３ａが積層されており、さらに成形品１の表面に貼着するための接着層１５が積層されている。
ここで、基材層１２の層厚は０．１２５ｍｍで、その他の層の層厚はそれぞれ数ミクロン程度である。
【００３５】
また接着層１５には耐熱性の観点からエチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂製とし、真空蒸着法やスパッタリング法等で形成される金属薄膜層１３ａは例えばポリエチレンイミン、ポリエーテルポリオール・ポリイソシアネート、ポリエステルポリオール・ポリイソシアネート等を水や有機溶剤で希釈したアンカー層を介して基材層１２に密着状に積層している。
【００３６】
ラベル１１を上記のような層構成とすることにより、成形品１の項壁４のラベル１１が貼着された矩形の領域では、金属薄膜層１３ａにより透明な基材層１２を透して凸部１２を含めて全体的にメタリック調の光沢が現出している。
さらに、本実施例では基材層１２の表面側の、それぞれの凸部２を被覆する領域を、この凸部２の形状に合せた形状の粗面転写領域Ｒとしており（図１、図２参照）、表面には後述するように金型のキャビティ面に粗面化加工により形成されたヘアーライン状の微細な凹凸が転写されており、周辺の鏡面状の光沢を有する非転写領域ＮＲとは対照的に、鈍い光沢により金属の地肌を感じさせる今までにない質感が現出されている。
【００３７】
また、粗面転写領域Ｒと周辺の非転写領域ＮＲの光沢の差により、凸部２に陰影をつけるような視覚効果が発揮され、凸部２の立体的な形状をより強調し、突出高が０．４ｍｍ程度の凸部２によっても十分に立体的な視覚効果を発揮させることができる。
そして、上記した、凸部２、金属箔膜層１３ａ、粗面転写領域Ｒによる視覚効果を透明な基材層１２を透して発揮させることにより、深みのある、そして立体的な加飾効果が高品位に発揮される。
【００３８】
次に、図４は図１、２に示される加飾成形品をインサート成形するための金型構成の概略説明図である。
金型３１はキャビティ金型３３とコア金型３２から構成され、キャビティ金型３３のキャビティ面３３ｓには、成形品１の表面に凸部２を形成するための、図案化した文字「Ａ」〜「Ｈ」の図柄に相当する凹部３３ａが形成されている。
また、この凹部３３ａの表面はそれぞれ粗面化領域Ｒｍとしており、粗面化加工（本実施例ではヘアーライン加工）により微細な凹凸構造が形成されている。
【００３９】
上記のような金型３１を使用し、バキュームにより吸着する方法により、図中に示されるようにキャビティ面３３ｓにラベル１１を密着状にセットした状態でキャビティ３４に成形品１を形成する溶融樹脂（本実施例ではＡＢＳ樹脂）を射出、充填する。
そして、凹部３３ａが位置する部分では、凹部３３ａに橋架け状に位置するラベル１１部分、特にＡＳ樹脂製の基材層１２部分が高温の溶融樹脂によりその柔軟性が増した状態で、溶融樹脂の充填圧力により、深絞り状に凹部３３ａの形状に沿って延伸変形し、ラベル１１を図２に示したように凸部２の形状に沿って積層することができる。
ここで、金属薄膜層１３ａは、基材層１２と接着層１５で裏表から密着状にサンドイッチされた状態で延伸変形するので均一に延伸され、クラックや皺の発生はみられなかた。
【００４０】
そしてまた、上記インサート成形と同時に、インサート成形時の高温の溶融樹脂の充填圧力により、キャビティ面３３ｓの粗面化領域Ｒｍのヘアーライン状の微細な凹凸形状が、このキャビティ面３３ｓに押付けられるラベル１１の基材層１２の表面側に転写し、この基材層１２の表面側に図１、２に示されるように粗面転写領域Ｒが形成される。
【００４１】
次に、図５は本発明の加飾合成樹脂成形品の第２実施例を示す平面図である。
この成形品１の形状は矩形状の板片で着色されたＡＢＳ樹脂製の射出成形品である。この成形品１の平坦な表面の、周縁部を除いた略全面に亘って、第１実施例の加飾成形品に使用したインサートラベル（図２参照）と同じ構成のラベル１１をインサート成形により貼着している。
【００４２】
そして、ラベル１１の表面側、すなわち透明なＡＳ樹脂製のフィルムから成る基材層１２の表面側には、図５中に見られるように、「星形」あるいは「雪の結晶」の形状とした図柄が現出されている。
本実施例ではこれら「星形」あるいは「雪の結晶」の図柄部分を非転写領域ＮＲ、これら図案の周辺の領域を粗面転写領域Ｒとしており、鈍い金属光沢が現出する粗面転写領域Ｒの中で、鏡面状の光沢を有する、「星形」や「雪の結晶」が透明な基材層１２の中に浮かぶように、きらきらと光るような今までにない加飾効果が発揮される。
そして、この実施例のように成形品１の表面に第１実施例の成形品のような凸部がない場合でも、粗面転写領域Ｒと非転写領域ＮＲのコントラストを利用して高度な加飾効果を発揮させることができた。
【００４３】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果を説明したが、本発明の加飾合成樹脂成形品は、これまでも随所で説明したように、これら実施例に限定されるものではなく、使用目的や加飾目的に応じて次のように様々なバリエーションとすることができる。
（１）上記実施例では成形品を射出成形品としたが、インサート成形が適用可能なブロー成形や熱成形品とすることもでき、使用する合成樹脂もなんら限定されるものではない。
（２）成形品の凸部の形状は、基材層フィルムが延伸変形できる範囲でさまざまな形状とすることができる。
（３）インサートラベルの層構成は、少なくとも粗面転写領域で基材層が表面に露出していると云う範疇のなかで、加飾目的に応じてさまざまな層構成とすることができる。たとえば、
・実施例１、２では、ラベルは透明な基材層の裏面側に加飾層として金属薄膜層を積層するものとしたが、ここで基材層１２は有色透明や半透明のものとすることもでき、また金属薄膜層の替わりに印刷層等、他の加飾層とすることもできる。
・また、基材層は着色して不透明なものとすることもできる、この場合にも粗面転写領域の形状や、非転写領域との組合せによりにより、容易に高度な加飾効果を得ることができる。
・また、加飾目的に応じてさらに加飾層を積層、追加することができ、基材層の表面側の粗面転写領域を除く領域に加飾層を積層することもできる。
（４）実施例１では、成形品の平坦部と凸部を含めた広い領域に金属薄膜層を全体的に積層し、凸部を粗面転写領域とする構成としたが、ラベルを加飾層が所定の領域だけに積層するものとし、凸部だけに加飾層が積層する構成、あるいは凸部には加飾層が積層しない構成、凸部の一部だけに加飾層が積層する構成と云うように、これら凸部と加飾層と粗面転写領域の位置関係もさまざまな態様で組み合せることができる。
（５）異なる微細な凹凸形状を有する複数の粗面転写領域を組み合わせて配設することもできる。
【産業上の利用可能性】
【００４４】
以上説明したように、本発明の加飾合成樹脂成形品は、インサート成形と同時にインサートラベルの基材層に金型のキャビティ面の粗面化加工による微細な凹凸構造を転写することにより、表面にさまざまな態様で今までにない質感を付与し、高度な加飾効果を現出するものであり、化粧料容器分野等での幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【００４５】
１ ；成形品
２ ；凸部
４ ；頂壁
１１；（インサート）ラベル
１２；基材層
１３；加飾層
１３ａ；金属薄膜層
１５；接着層
３１；金型
３２；コア金型
３３；キャビティ金型
３３ａ；凹部
３４；キャビティ
１１１；インサートラベル
１１２；基材層
１１３；印刷層
１１５；接着層
１１６；保護層
Ｒ；粗面転写領域
ＮＲ；非転写領域
Ｒｍ；粗面化領域
【特許請求の範囲】
【請求項１】
インサート材としてインサートラベル(11)を成形金型のキャビティ面に配設した状態でインサート成形され、該インサートラベル(11)により表面を加飾した合成樹脂成形品であって、前記インサートラベル(11)は合成樹脂製フィルムを基材層(12)としたものであり、前記基材層(12)の表面側に、前記キャビティ面の中に粗面化加工により形成された粗面化領域の微細な凹凸構造がインサート成形と同時に転写された粗面転写領域(R)を有することを特徴とする加飾合成樹脂成形品。
【請求項２】
インサートラベル(11)は、基材層(12)が透明な合成樹脂製フィルムから成り、該基材層(12)の裏面側の所定の領域に加飾層(13)を積層したものとした請求項１記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項３】
加飾層(13)を金属薄膜層(13a)とした請求項２記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項４】
成形品(1)は表面に所定の形状の凸部(2)を突出形成したものであり、インサートラベル(11)が前記凸部(2)の形状に沿って貼着されている構成とした請求項１、２または３記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項５】
インサートラベル(11)の基材層(12)を、ポリスチレン系樹脂製のフィルムから成るものとした請求項１、２、３または４記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項１】
インサート材としてインサートラベル(11)を成形金型のキャビティ面に配設した状態でインサート成形され、該インサートラベル(11)により表面を加飾した合成樹脂成形品であって、前記インサートラベル(11)は合成樹脂製フィルムを基材層(12)としたものであり、前記基材層(12)の表面側に、前記キャビティ面の中に粗面化加工により形成された粗面化領域の微細な凹凸構造がインサート成形と同時に転写された粗面転写領域(R)を有することを特徴とする加飾合成樹脂成形品。
【請求項２】
インサートラベル(11)は、基材層(12)が透明な合成樹脂製フィルムから成り、該基材層(12)の裏面側の所定の領域に加飾層(13)を積層したものとした請求項１記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項３】
加飾層(13)を金属薄膜層(13a)とした請求項２記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項４】
成形品(1)は表面に所定の形状の凸部(2)を突出形成したものであり、インサートラベル(11)が前記凸部(2)の形状に沿って貼着されている構成とした請求項１、２または３記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項５】
インサートラベル(11)の基材層(12)を、ポリスチレン系樹脂製のフィルムから成るものとした請求項１、２、３または４記載の加飾合成樹脂成形品。
【図２】
【図３】
【図４】
【図６】
【図１】
【図５】
【図３】
【図４】
【図６】
【図１】
【図５】
【公開番号】特開２０１１−２１２９０４（Ｐ２０１１−２１２９０４Ａ）
【公開日】平成２３年１０月２７日（２０１１．１０．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−８１６９４（Ｐ２０１０−８１６９４）
【出願日】平成２２年３月３１日（２０１０．３．３１）
【出願人】（０００００６９０９）株式会社吉野工業所 (2,913)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１０月２７日（２０１１．１０．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年３月３１日（２０１０．３．３１）
【出願人】（０００００６９０９）株式会社吉野工業所 (2,913)
【Ｆターム（参考）】
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