説明

加飾成形体および加飾シート

【課題】本発明は、フィルムの裏面側に施された模様、色彩または文字等の視認性を十分に確保しながら適度な金属調の光沢を付与することのできる意匠性に優れた加飾シート、及び/または加飾成形体を提供することを課題とする。また、環境負荷が小さく、リサイクル性にも優れ、電磁波障害を起こさず、そりやWashOutなどのない成形体や反射体を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の加飾シートは(A)少なくとも樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を含んでなる積層数が200以上の積層フィルムであって、波長400〜700nmにおける平均反射率が5%以上30%以下、全光線透過率が70%以上95%以下、彩度が0以上15以下であることを特徴とする積層フィルムと(B)加飾層からなり、また、本発明の加飾成形体は、前記加飾シートが(C)基材上に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾成形体および加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車関係の装飾部品をはじめとして各種家電機器、建築部材などの製品や部材において、意匠性を高めるために木目調、布目調のほか、金属調に加飾されたものなどが用いられている。金属調の外観は高級感が引き出せるためニーズが高いが、金属で成形すると重くなってしまうため樹脂基材を金属調に加飾することが行われている。また、比較的軽量のアルミやマグネシウム合金製の基材でも更に光沢感や高級感ある金属調の加飾が求められている。
【0003】
基材を金属調に加飾する方法として、もっとも一般的に用いられる手法は塗装による方法である。塗装はさまざまな意匠や機能を製品に付与できる反面、有機溶剤などを使用することが多く、環境への負荷が大きい。また、塗膜の影響でリサイクルが容易にできないこともあり、昨今の環境問題の高まりのなかで塗装工程を省くことが希求されている。
【0004】
金属調に加飾する別の手法として、メッキや蒸着による方法がある。メッキや蒸着の場合も、基材が樹脂であると金属との複合材となるためにリサイクルが困難であったりする問題があるが、特にメッキの場合には重金属による環境負荷が大きいため、その代替えが強く求められている。
【0005】
また、単純な金属光沢だけでなく、模様、色彩または文字等のデザインを組み合わせて意匠性をさらに高めることが各種家電機器、建築部材などの製品に特に求められている。このような目的には、あらかじめ施された模様、色彩または文字等の上面に金属調の光沢を付与することが考えられるが、塗装やメッキによる方法では下地の模様や色彩、文字などのデザインを隠蔽してしまい、折角の意匠性が損なわれてしまうこととなる。
【0006】
一方、金属を用いずに金属光沢を有する材料として、屈折率の異なる樹脂層を交互に多層に積層し選択的に特定の波長の光を反射するフィルムが知られている(たとえば特許文献1及び2参照)。しかしながらこれらフィルムもまた非常に強い金属光沢を有するため下地がモノクロでなく、模様や色彩、文字が施されたものであるときはやはり隠蔽されてしまう。また、屈折率の異なる樹脂層を交互に多層に積層された玉虫色のフィルムも知られているが(特許文献3)、係るフィルムもまた一部の可視光域において高い金属光沢を有するものであるため、やはり下地が模様や色彩、文字が施されたものであるときは隠蔽されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/20861号パンフレット
【特許文献2】特開2009−164029号公報
【特許文献3】特開2009−78535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、フィルムの裏面側に施された模様、色彩または文字等の視認性を十分に確保しながら適度な金属調の光沢を付与することのできる意匠性に優れた加飾シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の加飾成形体は、基材上に設けられた加飾層上に波長400〜700nmにおける平均反射率が5%以上30%以下、全光線透過率が70%以上95%以下、彩度が0以上15以下である光学的性質が異なる少なくとも2種類の樹脂が厚み方向に合計200層以上積層された積層フィルムが載置されたものであり、本発明の加飾シートは、波長400〜700nmにおける平均反射率が5%以上30%以下、全光線透過率が70%以上95%以下、彩度が0以上15以下である、光学的性質が異なる少なくとも2種類の樹脂が厚み方向に合計200層以上積層された積層フィルムの一方または両面の面上に加飾層が形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、金属調の光沢を有したデザイン性の極めて高い加飾を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1〜5、比較例1〜4の設計層厚みを説明する図
【図2】実施例6の設計層厚みを説明する図
【図3】実施例7の設計層厚みを説明する図
【図4】実施例8の設計層厚みを説明する図
【図5】比較例5の設計層厚みを説明する図
【図6】層の折れ曲がり変形の一例
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の加飾成形体に用いる基材としては、有形の固体物であれば特に制限はないが、一般的には金属、無機物、あるいは、樹脂製の有形の物品である。
【0013】
本発明の加飾成形体において、前記基材上には、加飾層が設けられている。なお、加飾層と基材層との間には接着層など他の層が設けられていても差し支えない。本発明でいう加飾層とは着色された層をいい、平板な単一色(単彩)である場合のほか、同系色若しくは異色の模様や色彩、文字が施されたものやテクスチャー(粗い質感)が施されたものも含まれる。本発明は加飾層の視認性に非常に優れたものであるので、加飾層は模様や色彩、文字が施されたものやテクスチャー(粗い質感)が施されたものに特に適している。加飾層の付与は後述する加飾シートによって行う場合や転写シートによって基材上に転写する方法、直接基材上に印刷する方法などが挙げられる。
【0014】
本発明の加飾成形体において、加飾層の上には波長400〜700nmにおける平均反射率が5%以上30%以下、全光線透過率が70%以上95%以下、彩度が0以上15以下であり、光学的性質が異なる少なくとも2種類の樹脂が厚み方向に交互に合計200層以上積層された積層フィルムが載置されている。この積層フィルムは直接加飾層上に設けられていることが加飾層の視認性を高める上で望ましいが、加飾層の視認性を損なわなければ透明の接着層を設けることもできる。ここで、光学的性質が異なるとは、屈折率が異なることを意味する。望ましくは、前記2種類の樹脂は面内平均屈折率の差が、0.030以上0.060以下となるものを選択することが好ましい。より好ましくは0.033以上0.055以下である。屈折率差が0.03より小さい場合には、十分な反射率が得られない。屈折率差が0.060以上であると、透過率が低すぎるため、金属調の光沢と視認性を両立できない。また、厚み方向屈折率の差が0.030以下であると反射光強度の入射角依存性を低くすることができて広い用途に用いることができるので好ましい。
【0015】
前記2種類の樹脂は熱可塑性樹脂、硬化性樹脂のいずれであってもよく、共重合体や2種以上の樹脂が混合されたものであってもよい。中では、成形性が良好であるため、熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。また、各樹脂中には、本発明の目的を阻害しないかぎり、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
【0016】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチルサクシネート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂、などを用いることができる。この中で、強度、耐熱性、透明性の観点から、特にポリエステルを用いることがより好ましい。
【0017】
ポリエステルとしては、ジカルボン酸とジオール、あるいはそれらのエステル結合形成性誘導体を重縮合して得られるものが代表的なもので、本発明においては、共重合体であっても2種類のポリエステルが混合されたものであってもよい。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ、グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。また、具体的なポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどが代表的なものとして挙げられる。前記2種類SP値(Solubility Parameter:溶解パラメーター)の差の絶対値が、1.0以下であることが好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなる。より好ましくは、該2種類の樹脂の構造的類似性が高いことが望ましく、すなわち、同じ繰り返し単位をなるだけ多く有していることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンと共重合ポリエチレンといった関係である。該2種類の樹脂の構造的類似性が高いと、さらに層間での剥離が生じにくくなるものである。なお、SP値は、smallの計算法を用いることとする。smallの計算法については、「高分子データ・ハンドブック −基礎編−」(培風館発行、1986年)が詳しい。
【0018】
また、前記2種類の樹脂はそのガラス転移温度差が20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度差が20℃より大きい場合には積層フィルムを製膜する際の厚み均一性が不良となり、金属光沢の外観不良となることがある。また、積層フィルムを成形する際にも、過延伸が発生するなどの問題が生じやすい。
【0019】
本発明において前記積層フィルムは、前記2種類の樹脂が厚み方向に交互に合計200層以上積層されたものである。より好ましくは厚み方向に400層以上積層され、さらに好ましくは厚み方向に700層以上積層されている。層数が多いほど自然な光沢が呈せられるがあまりに多すぎても層数に見合うだけの効果は得られない。
【0020】
本発明に用いられる前記積層フィルムは、波長400〜700nmにおける平均反射率が5%以上30%以下である。さらに望ましくは、7.5%以上25%以下である。積層フィルムの平均反射率が5%未満であると、金属調の光沢が不十分となって金属調ニュアンスを認識しづらくなる。平均反射率が30%より高いと、金属調の光沢が強すぎる結果、積層フィルムの裏面にある加飾層の模様等を視認しにくくなる。
【0021】
本発明における積層フィルムは、全光線透過率が70%以上95%以下である。さらに望ましくは、75%以上90%以下である。全光線透過率が70%未満であると、積層フィルムの裏面にある加飾層まで透過光が十分に届かないために模様等を視認しづらくなる。一方、全光線透過率が95%以上の場合には反射率が低くすぎるために本発明の目的を遂行できなくなる。
【0022】
本発明における積層フィルムは、彩度が0以上15以下である。さらに望ましくは、0以上12以下である。彩度は、色の三属性の1つで、色の鮮やかさの尺度であり、彩度が15より大きいと色づきがあるために印刷した文字や図案が読みとりにくく、色彩的にも違和感が生じる。
【0023】
本発明の積層フィルムの好ましい層構成を示す1例を図1に示す。図1は、2種類の樹脂(樹脂Aと樹脂B)からなる層を交互に積層したフィルムの樹脂Aからなる層の層厚みを、各層順(以後、層番号と称する)に対してプロットしたものである。従って、図では、ライン状にも一見みえるが、整数の層番号のみに層厚みが対応しており、奇数の層番号の層が樹脂Aからなる層であり、偶数の層番号の層が樹脂Bからなる層となっている。この点については、図2〜図5についても同様である。一方、従来の技術(特許文献1)の層構成を満たす一例を、同様に図4に例示する。図1からも見てとれるように、前記の層構成となっている場合、フィルム断面の層厚み分布が表裏で対称もしくは対称に近いものとすることができるため、表裏の物性差を抑制することができ、また、加熱などによって発生するカールなども抑制できる。図4に示すように単調増加または単調減少した層構成の場合、少しでも積層不良あると特定波長の光の反射率の低下をもたらすため、色づきが発生しやすいが、図1に示すように、一方の表面から反対の表面に向かうにつれ、増加したのち、減少するような層構成の場合は、ごく一部に積層不良が生じ、設計値からはずれたとしても、他の部位に同程度の層厚みが存在しているため、彩度を0以上15以下にすることができる。
【0024】
なお、本発明では便宜上、図4のような層厚み構成を1段の傾斜構造と呼び、図2や図5のような層厚み構成を2段の傾斜構造と呼び、図1のような層厚み構成を3段の傾斜構造と呼び、図3のような層厚み構成を4段の傾斜構造と呼ぶこととする。1段の傾斜構造とは、層厚み分布を1本の単調増加曲線または単調減少曲線で近似できる構成のことを言う。一方、例えば、3段の傾斜構造では、3本の単調増加曲線及び/または単調減少曲線で近似できる構成のことを言う。本発明では、2段以上の傾斜構造であることが好ましく、3段以上の傾斜構造であるとさらに好ましい。3段以上の傾斜構造となると干渉縞がほとんど見えなくなり、色づきが発生しにくくなる。
【0025】
また、本発明における積層フィルムは、層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多いことが好ましい。このようにすることにより、色づきが発生しにくくなる。ここで、層対厚みとは、隣接する樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)のそれぞれの層厚みを足した厚みである。また、層対厚みは、A層のみについて一方の表面から数えたm番目のA層と、B層のみについて同表面から数えたm番目のB層の層厚みを足したものでなければならない。ここでmは整数を表している。例えば、一方の表面から反対側の表面にA1層/B1層/A2層/B2層/A3層/B3層・・・・の順番で並んでいた際、A1層とB1層が1番目の層対であり、A2層とB2層が2番目の層対であり、A3層とB3層が3番目の層対となる。層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層厚み220nm以上320nm以下の層の数と同数または少ないと、波長帯域400nm〜1100nmの反射帯域において低波長側ほど反射率が低下するため、赤味をおびた外観となるので好ましくない。これは、低波長側の反射を起こす層対の密度が薄くなるために起こるものである。従って、積層フィルムを構成する層の層対厚みの序列としては、単調に等差数列的に層対厚みが増加もしくは減少するのではなく、上記条件を満たしながら等比数列的に層対厚みが増加もしくは減少することが好ましい。より好ましくは、層対厚み120nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数の1.05倍以上2.5倍以下であることが好ましい。この場合、まったく色づきのない金属調とすることが可能である。
【0026】
また、本発明における積層フィルムは、ポリマーから構成されるため、電磁波を透過する金属調のフィルムとなる。ここで、電磁波とは、赤外線の一部と、周波数が3Hz〜3テラHzのものをいう。
【0027】
本発明における積層フィルムは、150℃における引張試験において、フィルム長手方向及び幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下であることが好ましい。このような場合、成形性に優れたものとなり、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形、絞り成形などの各種成形において、任意の形状に成形することが容易となる。より好ましくは、150℃における引張試験において、フィルム長手方向及び幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上50MPa以下である。このような場合、より高い絞り比でも成形可能となる。150℃における引張試験において、フィルム長手方向及び幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下とするためには、樹脂Aが結晶性樹脂であり、樹脂Bがシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ネオペンチルグリコールなどの嵩高い基を有する非晶性樹脂であることが好ましい。このような場合、二軸延伸後においても樹脂Bはほとんど配向及び結晶化していないため、引張応力が低くなるものである。
【0028】
本発明における積層フィルムの少なくとも片面の動摩擦係数は0.5以下であることが好ましい。積層フィルムの動摩擦係数が0.5以下である場合、成型に用いる金型との滑りが良くなるために、さらに成形性が向上する。
【0029】
本発明における積層フィルムでは、少なくとも片面に3μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とする層を有することが好ましい。より好ましくは、5μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とする層を有する。また、両面に3μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とする層を有するとさらに好ましい。3μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートからなる層がない場合には、表面に傷が入った場合などに、傷が非常に見えやすくなるため好ましくない。
【0030】
また、本発明における加飾シートは、積層フィルムと加飾層を含んでなることを特徴とする。ここで加飾層とは、印刷層、着色層、ホログラム層、色補正層、エンボス層、金属層など視角を通じて美観や多様性を生じさせ得る層をいうが、この他に易接着層、易滑層、ハードコート層、帯電防止層、反射防止層、耐摩耗性層、紫外線吸収層、透明導電層、ガスバリア層、剥離層、粘着層、接着層などの機能性層を含有してもよい。
【0031】
加飾シートは、積層フィルムの一方の表面、もしくは両面に接着層または粘着層を介して貼着されてもよいし、または塗液の塗布、蒸着などの通常用いられる方法にて積層フィルム表面に設けられることで、本発明の加飾シートを作製できる。
【0032】
また、本発明の加飾成形体は、積層フィルム、加飾層及び基材層を含んでなるものである。ここで基材層とは、基材を含む多層物品が最終の目的とする形態に加工処理することができることを条件とする材料である。
【0033】
基材の具体例としては、各種材質からなる平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等である。例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として用いられる木質板素材、鉄、アルミニウム等の板材、立体形状物品或いはシート等として用いられる金属素材、ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として用いられる窯業系素材、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品或いはシート等として用いられる樹脂素材、或いは、専らシートとして用いられる上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、ガラス、合成樹脂等の繊維からなる不織布または織布、或いは、これら2種以上の素材を複合した素材、例えば、板材や立体形状物品等として用いられる。
【0034】
加飾成形体はこれ以外に、エンボス層、耐候層(UVカット層)、着色層、接着層、基材樹脂層などのいずれかを含んでなることも好ましい。このよう成形体は、オールポリマーから構成することが可能であり、金属や重金属などを含まないため、環境負荷が小さく、リサイクル性にも優れ、電波透過性にも優れたものとなる。本発明の成形体では、特に着色層を有することが好ましい。本発明における積層フィルムでは、可視光線の一部が透過する場合があるため、着色層を設けることにより、成形体の色目を調整することが可能となる。また、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形、絞り成形などの各種成型法が適用できるため、低コストで成形体を得ることが可能である。このような成形体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、レイドーム、自動車内外装部品、建築材料、ゲーム機、アミューズメント機器、包装容器などに好ましく用いることができる。特に、本発明の成形体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、レイドームなどの車載部品、ゲーム機などの無線で情報通信を行う機能を有する機器(無線情報通信機器)の装飾部品として用いることが好ましい。本発明の成形体は、金属調の外観を有しながら、電波透過性に優れるので、従来の金属調装飾材料のように電磁波障害を引き起こさないものである。このため、本発明の成形体を情報通信機器の装飾部品として用いると、機器の小型化や薄型化が可能となったり、情報通信機器内部の回路設計の自由度が増すものである。
【0035】
次に、本発明の加飾シート、及び/または加飾成形体における積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。2種類の樹脂A及びBをペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。
【0036】
これらの2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された樹脂A及びBは、次に多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが好ましい。
【0037】
このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅、間隙)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となったものである。このため、本願の特徴である層構成を容易に達成できるようになったものである。一方、従来の装置では、300層以上の積層を達成するためには、スクエアーミキサーを併用することが一般的であったが、このような方法では積層流が相似形で変形・積層されるために、任意の層厚みを達成することが困難であった。
【0038】
本発明では、従来の多層積層フィルムに比較して、薄い層から厚い層への変化もしくは厚い層から薄い層への層厚みの変化が、非常に急になる。これは、従来の技術では、フィルム中の層厚みの変化が1段の傾斜構造となっているのに対し、本願は2段以上の傾斜構造となるためである。安易に層数を増やすことは積層精度の低下をまねくが、層数を維持しながら2段以上の傾斜構造を得ることは従来の技術では不可能であった。本発明では、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用い、各層の厚みに相当する各流量をスリットの間隙で調整することが、特に好ましく、この際、各スリット間隙の間隔精度は±10μm以下であると良い。このような特殊なフィードブロックを用いることにより、高精度でかつ2段以上の傾斜構造を形成することが可能となるものである。
【0039】
次に、本発明の特徴である波長帯域400nm〜700nmの相対反射率を5%以上30%以下とするためには、各層の層厚みを、下記式1に基づいて設計する必要がある。本発明における積層フィルムは、光を反射/透過することを可能とするが、その反射率については樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層の屈折率差と、層数にて制御する。
2×(na・da+nb・db)=λ 式1
na:樹脂Aからなる層の面内平均屈折率
nb:樹脂Bからなる層の面内平均屈折率
da:樹脂Aからなる層の層厚み(nm)
db:樹脂Bからなる層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
このようにして所望の層構成に形成した溶融積層体は、次にダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
【0040】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、必要に応じて二軸延伸することが好ましい。二軸延伸とは、長手方向及び幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向及び/または幅方向に再延伸を行ってもよい。特に本発明では、面内の配向差を抑制できる点や、表面傷を抑制する観点から、同時二軸延伸を用いることが好ましい。
【0041】
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
【0042】
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0043】
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸を言い、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0044】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
【0045】
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0046】
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時及び/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0047】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前及び/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向及び/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前及び/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
【0048】
次に、本発明の加飾シートの好ましい製造方法を以下に説明する。加飾シートの製造方法は特に特に限定されないが、例えば、積層フィルム上に、印刷、コート、転写、金属蒸着などの加飾層を設けることによって作製することができる。また、樹脂に着色剤を分散させたものをキャリアフィルム等にコートし、それを積層フィルム上に転写させる方法もある。好ましい加飾シートの製造方法としては、積層フィルム上にスクリーン印刷またはグラビア印刷によって厚み1〜25μmの加飾層を設けて作製するものである。
【0049】
次に、本発明の加飾成形体の好ましい製造法について以下に説明する。加飾成型体の製造方法は特に限定されないが、基材層の表面に加飾シートを設ける方法と、加飾層を設けた基材層の加飾総曲輪の表面に積層フィルムを設ける方法とがある。基材層の表面に加飾シートを設ける方法の場合、例えば、成形体基材の表面に接着剤を介して多層積層シートを貼り付ける方法や、加飾シートを金型内にインサートした状態で、該金型内に樹脂成形体基材を構成する溶融樹脂を充填した後に冷却する方法等が採用される。また、加飾シートの表面上で液状樹脂を硬化させる方法の採用可能である。一方、加飾層を設けた基材層の加飾層側の表面に積層フィルムを設ける方法の場合、例えば、まず基材層の表面に印刷、コート、転写、金属蒸着などの加飾層を設けることによって加飾層を設ける。その後、加飾層を設けた基材層の加飾層側の表面に、例えば、成形体基材の表面に接着剤を介して多層積層シートを貼り付ける方法や、加飾シートを金型内にインサートした状態で、該金型内に樹脂成形体基材を構成する溶融樹脂を充填した後に冷却する方法等が採用される。
【実施例】
【0050】
(物性値の評価法)
(1)層構成及び層厚み
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVでフィルムの断面を40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成及び、各層厚みを測定した。なお、本実施例では、コントラストを高く得るためにRuOを使用して染色した。
【0051】
積層構造の具体的な求め方を、説明する。約4万倍のTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をJPEG形式で保存し、次いで画像処理ソフトImage−Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このJPGファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。
【0052】
(2)平均相対反射率
多層フィルムのフィルム幅方向中央部から5cm四方のサンプルを切り出した。次いで、日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)を用いて、入射角度φ=10度における相対反射率を測定した。付属の積分球の内壁は、硫酸バリウムであり、標準板は、酸化アルミニウムである。測定波長は、250nm〜1200nm、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分で測定した。サンプル測定時は、サンプルの裏面からの反射による干渉をなくすために、サンプルの裏面を油性インキで黒塗りした。次いで、波長範囲400〜700nmの平均反射率Raveを算出した。平均反射率Raveの算出方法は、波長1nm毎の絶対反射率のデータを用いて、シンプソン法の公式を基づき、反射曲線と波長範囲で囲まれた面積を計算し、波長範囲の幅である300で除することにより、平均反射率Raveを求めた。シンプソン法について詳細な説明は、山内二郎他著書の「電子計算機のための数値計算法I」(培風館)(昭和40年)に記載されている。
【0053】
(3)明度、色度、彩度
コニカミノルタセンシング株式会社製 分光測色計CM−3600dを使用して、製品幅1mのフィルムについて、幅方向に10cmの間隔で各点における明度Lと色度(a、b)を測定した。得られた色度から彩度をもとめ、彩度の最大値と最小値の差を彩度の範囲とした。
【0054】
なお、測定の手順としては、分光測色計付属のゼロ構成ボックスで反射率のゼロ構成を行い、続いて付属の白色校正板を用いて100%校正を行った後、以下の条件でフィルムの明度L*及び色度(a、b)を計測した。
モード:反射、SCI/SCE同時測定
測定径:8mm
サンプル:非測定面側に黒インキを塗布
次に色度(a、b)から彩度Cを求めた。彩度の定義は以下の通りである。彩度が0に近いほど、色づきのないものとなる。
=((a+(b1/2
彩度の計算に用いた色度(a、b)はSCIの値を用いた。
【0055】
(4)面内平均屈折率
樹脂Aの層と、樹脂Bの層それぞれについて、厚さ0.5mmのフィルムに切り取り、幅5mm、長さ20mmの大きさの試験片を切り出し、アッベ屈折計(アタゴ製DR−M2)によって、23℃、589nm波長における屈折率を測定した。n=5で行い平均値を算出した。
【0056】
(5)全光線透過率
JIS K−7136(2000年版)に基づいてヘイズメーターHGM−2DP(スガ試験器株式会社)を用いて計5回測定し、その平均値をフィルムヘイズ値とした。
【0057】
(6)色差
株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U4100に、角度可変絶対反射率付属装置(20〜60°)を用いて、フィルム製品幅1mの幅方向中央位置の20°、30°、40°、50°、60°のそれぞれの絶対反射率を測定した。なお、測定条件は以下の通りとした。
検出速度:波長240〜850nmは600nm/min
波長850〜1750nmは750nm/min
サンプリング間隔:1.00nm
スリット:波長240〜850nmは2.00nm
波長850〜1750nmは自動制御
PbS感度:2
角度20°、40°、60°のそれぞれの分光反射曲線のP波とS波からこれらを平均化した分光反射曲線をもとめた。次に、各角度の平均分光反射曲線から、光源をD65とし、10°視野のL、a、bを算出し、以下の式から角度依存性色差ΔEabを求めた。
ΔEab(40°←20°)=((a*(40°)−a*(20°)+(b*(40°)−b*(20°)1/2
ΔEab(60°←40°)=((a*(60°)−a*(40°)+(b*(60°)−b*(40°)1/2
ΔEab=ΔEab(40°←20°)+ΔEab(60°←40°)
ここで、a(n) : 角度n°におけるa
(n) : 角度n°におけるb
(7)干渉縞
黒色台紙の上に縦500mm、横500mmサイズの積層フィルム、加飾シートあるいは成型体を置いて、3波長蛍光灯で照らし、目視観察により以下の基準で判断した。
×:干渉縞がはっきりと見える
△:干渉縞がわずかに見える
○:干渉縞がほとんど見えない。
【0058】
(8)剥離試験
積層フィルム、加飾シートあるいは加飾成型体について、JIS K5600(2002年版)に従って試験を行った。なお、各試料を硬い素地とみなし、2mm間隔で25個の格子状パターンを切り込んだ。また、約75mmの長さに切ったテープを格子の部分に接着し、テープを60°に近い角度で0.5〜1.0秒の時間で引き剥がした。ここで、テープにはセキスイ製セロテープ(登録商標)No.252(幅18mm)を用いた。評価結果は、格子1つ分が完全に剥離した格子の数で表した。
【0059】
(9)視認性
積層フィルム(A)の下にカラー写真を置き、積層フィルムを通して写真を見た場合の画像の鮮明度とムラを目視で観察した。○以上を良好と判断した。
判定基準
像が鮮明に見える : ◎
わずかに像がぼやけるがムラがない : ○
像がぼやける部分が混在する : △
全体に像がぼやける : ×
(10)光沢度
JIS−Z−8741(1997年版)に規定された方法に従って、スガ試験機製デジタル変角光沢度計UGV−5Dを用い、60°鏡面光沢度を測定した。測定数はn=5で行い、最大値と最小値を除いた3つの測定値の平均値を採用した。
【0060】
(11)電磁波シールド性
ASTM D4935に準拠して、キーコム株式会社の同軸管タイプ シールド効果測定システムにて、45M〜3GHzの電磁波透過性を測定した。実施例・比較例については、2.4GHzの損失を記載した。
【0061】
(実施例1)
1.樹脂Aの合成
テレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを64重量部用いる以外は前記と同様にして樹脂Aを重合した。樹脂Aは固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)であり、結晶性樹脂であった。
2.積層フィルムの作製方法
2種類の熱可塑性樹脂として、樹脂A、及び樹脂Aを60重量%、エチレングリコールに対しシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM・T)とされる EastarCoplyester6763を40重量%で混合してなる樹脂Bを準備した。樹脂A及び樹脂Bは、それぞれ別のベント付き二軸押出機にて280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプ及びフィルターを介して、301個のスリットを有する部材を別個に3個有する901層のフィードブロックにて合流させた。なお、両表層部分は樹脂Aとなり、樹脂Aと樹脂Bが交互に積層され、かつ隣接する樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層の層厚みは、ほぼ同じになるようにした。つづいて、T−ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。
【0062】
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
【0063】
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に7%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。この積層フィルムの設計層厚みは、図1のとおりであり、スリット間隙を調整することにより、各層の層厚みを制御した。この積層フィルムとしての構成及び特性は表1の通りである。
3.加飾シートの作製方法
上記に記述した積層フィルムの片面に、スクリーン印刷にて黒色の架橋性インキ層を形成した後、バインダー層を形成させた。印刷条件は以下の通り。架橋性インキ層の厚みは5μmであった。
<黒色の架橋性インキ>
着色顔料:三菱化学(株)製 カーボンブラック MA100 8重量部
ポリエステルポリオール樹脂:東洋紡(株)製 バイロン200 25重量部
溶剤:シクロヘキサン 35重量部
架橋剤:イソシアネート系架橋剤 日本ポリウレタン工業(株)製 コロネート2096 10重量部
スクリーンメッシュ:T−225
乾燥:80℃×10分(ボックス乾燥)
塗布回数:1回
<バインダー>
バインダー:帝国インキ製造株式会社製 IMB−003
スクリーンメッシュ:T−225
乾燥:90℃×60分(ボックス乾燥)
得られた加飾シートの特性を表1に示した。金属光沢を有する外観が得られ、同時にスクリーン印刷した図柄が明瞭に視認することができた。
【0064】
(実施例2)
樹脂Bとして、樹脂Aを47.5重量%、イーストマン製のエチレングリコールに対しシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM・T)とされる EastarCoplyester6763を52.5重量%で混合してなる樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られたシートの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
樹脂Aとして、固有粘度が0.67のポリエチレンナフタレート(PEN)を用い、樹脂Bとして、樹脂Aを35重量%、固有粘度が0.67のポリエチレンナフタレート(PEN)を65重量%で混合してなる樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られたシートの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。なお、実施例3の樹脂Aは、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部を用いる以外は、実施例1の樹脂Aと同様に重合した。
【0066】
(実施例4)
樹脂Bとして樹脂Aを25重量%、出光興産株式会社製のポリカーボネート樹脂(PC) タフロンLC1700を75重量%用いた以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
【0067】
(実施例5)
樹脂Aとして日本ポリエチレン株式会社製の高密度ポリエチレン(HDPE) ノバテックHF560を用い、樹脂Bとして日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE) ノバテックLF640MAを用いた以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られたフィルムの厚みは100μmであった。得られた結果を表1に示す。
【0068】
(実施例6〜8)
設計層厚みが図2〜図4になるようにフィードブロックのスリット形状等を変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られた結果を表1に示す。
【0069】
(実施例9)
実施例1にて得られた加飾シートを所定の寸法にカットし、金型にセットして、以下の条件でインサート成形して加飾成形体を作製した。得られた加飾成形体には、層の折れ曲がり変形は観察されず、ゲート部にWashOutと呼ばれる変色もなく、外観に優れるものであった。また、そりはほとんどなかった。
型締圧力:60ton
金型温度:60℃
成形樹脂:住友ダウ株式会社製 PC/ABSアロイ SDポリカ IM6011
成形樹脂温度:260℃
射出速度:50mm/s
成形品寸法(L×W×H):60×60×3mm
ゲート:φ2mmピンゲート。
【0070】
(実施例10)
加飾シートとして、実施例2にて得られた加飾シートを用いた以外は、実施例9と同様に加飾成型体を作製した。得られた加飾成形体には、層の折れ曲がり変形は観察されず、ゲート部にWashOutと呼ばれる変色もなく、外観に優れるものであった。また、そりはほとんどなかった。
【0071】
(比較例1)
樹脂Bとして、樹脂Aを30重量%、イーストマン製のエチレングリコールに対しシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM・T)とされる EastarCoplyester6763を70重量%で混合してなる樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られたシートの厚みは、100μmであった。得られた結果を表2に示す。
【0072】
(比較例2)
樹脂Bとして、樹脂Aを20重量%、イーストマン製のエチレングリコールに対しシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM・T)とされる EastarCoplyester6763を80重量%で混合してなる樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られたシートの厚みは、100μmであった。得られた結果を表2に示す。
【0073】
(比較例3)
樹脂Bとして、イーストマン製のエチレングリコールに対しシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM・T)とされる EastarCoplyester6763を用いた以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られたシートの厚みは、100μmであった。得られた結果を表2に示す。
【0074】
(比較例4)
樹脂Bとして、樹脂Aを用いた以外は、実施例1と同様に加飾シートを作製した。得られたシートの厚みは、100μmであった。得られた結果を表2に示す。
【0075】
(比較例5)
設計層厚みが図5のようになるようにフィードブロックのスリット形状等を変更し、厚みを調整した以外は、実施例1と同様とした。得られた結果を表2に示す。
【0076】
(比較例6)
加飾シートとして、比較例5にて得られた加飾シートを用いた以外は、実施例9と同様に加飾成型体を作製した。得られた加飾成形体には、ゲート部付近でフィルムの変色が観察されるとともに、インキ流れも観察された。インキ流れが見られた部位のフィルム断面を観察してみると、層数が減少しフィルム厚みが薄くなっているとともに、層の折れ曲がり変形(図6参照)も認められた。また、高さ0.6mm程度のそりが発生していた。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の用途は特に限定されないが、自動車関係の装飾部品をはじめとして各種家電機器、建築部材などの製品(部品)などに特に好適に用いることができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた加飾層上に波長400〜700nmにおける平均反射率が5%以上30%以下、全光線透過率が70%以上95%以下、彩度が0以上15以下である光学的性質が異なる少なくとも2種類の樹脂が厚み方向に交互に合計200層以上積層された積層フィルムが載置された加飾成形体。
【請求項2】
前記積層フィルムの樹脂AからなるA層の面内平均屈折率と、樹脂BからなるB層の面内平均屈折率の差が0.030以上0.060以下である請求項1に記載の加飾成形体。
【請求項3】
波長400〜700nmにおける平均反射率が5%以上30%以下、全光線透過率が70%以上95%以下、彩度が0以上15以下である光学的性質が異なる少なくとも2種類の樹脂が厚み方向に合計200層以上積層された積層フィルムの一方または両面の面上に加飾層が形成された加飾シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−196901(P2012−196901A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62744(P2011−62744)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】