説明

加飾成形体及び加飾成形体の製造方法

【課題】 カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置によってプリントして得たカラーデザイン画像を成形体12に設けた加飾成形体とその製造方法について、高解像度でカラフルなカラーデザイン画像を有しながら、色調の変色や印画のにじみが生じないこと、さらには、フルカラーが鮮明に再現できること。
【解決手段】 カラーデザイン画像を形成する加飾層15と、該加飾層15の外部への露出面を全て覆う被覆層16とを設けた。さらには、前記出力装置に備えられたプリンタ用インクでは再現できない色、特に白色の着色層を設けたり、被覆層16とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、携帯情報端末、AV機器等の各種電子機器に用いられ、文字や記号、模様などの彩色が施された加飾成形体に関し、特にカラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置によってプリントし、得られたカラーデザイン画像を用いて加飾を施した加飾成形体と加飾成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の各種電子機器の部品として用いられる押釦スイッチ、液晶ディスプレイ用カバー部材、携帯電話機の筐体などの表面には、文字や記号、模様や色彩などを施した加飾がなされているが、近年の電子機器の小型化やデザインの多様化に伴い、これらの部品に対しても小型化、デザインの多様化の要求があり、限られたスペース内に多くの文字や細かな模様をカラフルで鮮明に施す必要が生じてきた。
【0003】
この要求に応えるため、カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力するインクジェットプリンタに代表されるデジタルプリンタが、低コストで高解像度の画像を表示できることに着目し、これらの出力装置によってプリントして得たカラーデザイン画像を利用して、成形体に加飾を施すことが検討されてきた。例えば、樹脂シートにプリンタを用いてグラフィック印画した印画シートを樹脂成形体に貼り合わせた加飾成形体が、特開2000−231849号公報(特許文献1)に開示されている。また、プリンタによって基材シート上に印刷し、得られたカラーデザイン画像を樹脂成形体に転写した加飾成形体が、特開2004−178906号公報(特許文献2)に開示されている。
【特許文献1】特開2000−231849号公報
【特許文献2】特開2004−178906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリンタによって得られた画像を利用して加飾すると、例えば、図8に示した携帯電話機1のキーシート2に備わったキートップ3や液晶ディスプレイ用カバー部材4では、色調の変色や印画のにじみ5が起こるという問題点がある。また、プリンタ出力を印画する記録媒体が透明な樹脂シートである場合には、フルカラーが鮮明に再現できない問題も生じている。
【0005】
そこで本発明は、高解像度でカラフルなカラーデザイン画像を有しながら、色調の変色や印画のにじみが生じない加飾成形体とその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、フルカラーが鮮明に再現できる加飾成形体とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置によってプリントして得たカラーデザイン画像を成形体に設けた加飾成形体であって、カラーデザイン画像を形成する加飾層と、該加飾層の外部への露出面を全て覆う被覆層とを設けた加飾成形体を提供する。
【0008】
カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置によってプリントして得たカラーデザイン画像を成形体に設けたため、解像度に優れ、カラフルで鮮明な画質を有する加飾層を得ることができる。また、印画が簡単で、カラーデザイン画像の設計、変更などの処理も容易である。そして、加飾層の外部への露出面を全て覆う被覆層を設けたため、加飾層が外部に露出した部分が皆無となる。そのため、加飾層へ水分や油分が侵入することがなく、加飾層の色調の変色や印画のにじみなどが生じない加飾成形体を得ることができる。
【0009】
この加飾層は、前記記録媒体上にプリントしたカラーデザイン画像を、前記成形体に転写して得られたものであることが好ましい。記録媒体は、プリンタ印画の安定性、記録媒体の保存性などの観点から所定の厚みを有するため、カラーデザイン画像が描かれた記録媒体ごと成形体と一体化したのでは、厚みが厚くなりすぎて小型化、薄型化の要請に応えることが困難になる場合があるからである。一方、転写によれば、カラーデザイン画像を構成する部分のみを加飾層とすることができ、薄膜化を図ることができるからである。
【0010】
記録媒体上にプリントされたカラーデザイン画像を形成する加飾層を記録媒体ごと成形体に固着して設けることができる。記録媒体上にプリントされたカラーデザイン画像を形成する加飾層を該記録媒体ごと成形体に固着して設けることとすれば、記録媒体上に印画された状態のままのカラーデザイン画像を成形体が有することができ、プリント時の画質の劣化が無い加飾成形体とすることができる。
【0011】
出力装置がインクジェットプリンタであれば、得られるカラーデザイン画像が高解像度かつ鮮やかな色調を有する高品質なものとすることができ、小型化、薄型化、高品質化という要請に沿ったものとなる。
【0012】
被覆層は、加飾層の側面を覆うものとすることが好ましい。加飾層への水分などの侵入はその側面からも起こるからであり、加飾層の側面を覆わなければ水分等を有効に排除することができないからである。
【0013】
また、カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置に備えられたプリンタ用インクでは再現できない色の被覆層を設けたり、被覆層とは別の該色の着色層を設けたりすることができる。ここで、プリンタ用インクでは再現できない色とは、例えば、白色や金属調の光沢色などが挙げられる。また、ここでいう着色層は、被覆層以外であれば良く、加飾層と成形体とを固着する接着層や、プリントされた記録媒体のカラーデザイン画像以外の樹脂フィルムの部分を色付きの部材として着色層としても良いし、別途別の層を形成して着色層としても良い。
【0014】
出力装置に備えられたプリンタ用インクでは再現できない色が白色である被覆層や着色層を設けることは好ましい態様である。通常、紙へのプリントの場合には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックからなるプリンタ用インクでは表現できない白色を記録媒体である紙の色で補い、再現性の高いフルカラー画像の形成が可能である。しかし、記録媒体からカラーデザイン画像を転写するなどして白色の下地が欠如してしまえば、鮮やかなフルカラーの再現ができないからである。一方、被覆層を白色とすれば、プリンタ用インクに無い白色を補うことが可能となるし、被覆層を透明層としておき別途白色の着色層を設けても、被覆層を白色とした場合と同様の効果を奏することができる。
【0015】
成形体を押釦スイッチ用の樹脂キートップとすることができる。成形体を押釦スイッチ用の樹脂キートップとすれば、装飾性に優れた樹脂キートップや、その樹脂キートップを備えたキーシートとすることができる。また、成形体を液晶ディスプレイ用カバー部材などとすることもできる。
【0016】
また、本発明は、カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置によってプリントして得たカラーデザイン画像を成形体に設ける加飾成形体の製造方法であって、成形体に前記カラーデザイン画像を形成する加飾層を設け、次に、加飾層と、加飾層と成形体の境界を共に覆う被覆層を設けて、加飾層の外部への露出面を全て覆う加飾成形体の製造方法を提供する。
【0017】
カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置によってプリントして得たカラーデザイン画像を成形体に設ける工程を有するため、解像度に優れ、カラフルで鮮明な画質を有する加飾層を得ることができる。そして、加飾層の外部への露出面を全て覆う被覆層を設ける工程を有するため、加飾層が外部に露出した部分が皆無となる。そのため、加飾層に水分等が侵入することがなく、加飾層の色調の変色や印画のにじみなどが生じない加飾成形体を得ることができる。特に、加飾層と、加飾層と成形体の境界を共に覆う被覆層を設け、加飾層の外部への露出面を全て覆うこととしているため、被覆層の形成が容易であり、また、露出面を完全に覆うことができる。
【0018】
そして、前記加飾成形体の製造は、成形体の少なくとも一面に、その縁を除いて加飾層を設けることとすることができる。成形体の少なくとも一面に、その縁を除いて加飾層を設けることとしたため、被覆層の形成過程で、加飾層の側面から成形体に被覆層用インキが垂れることがあっても該インキは成形体の縁から外にはみ出すことがなく、バリなどを発生することがない。また、成形体の一面の縁まで被覆層を設ければ、確実に加飾層を被覆することができる。
【0019】
また、被覆層の形成にタンポ印刷を用い、加飾層の表面への被覆層の印刷と同時に加飾層の側面にも被覆層を形成することができる。被覆層の形成にタンポ印刷を用い、加飾層の表面への被覆層の印刷と同時に加飾層の側面にも被覆層を形成することとしたため、加飾層の表面(裏面)と加飾層の側面を別々に印刷することなく、一度の工程で加飾層の全体を被覆することが可能となる。そのため、被覆層の形成が容易で、安価に加飾成形体を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明の加飾成形体およびその製造方法によれば、解像度に優れ、カラフルで鮮明な画質を有する加飾成形体を得ることができる。
【0021】
また、本発明の加飾成形体およびその製造方法によれば、色調の変化や印画のにじみを生じない加飾成形体を得ることができる。
【0022】
また、本発明の加飾成形体およびその製造方法によれば、生産性が向上し低コストで高品質な加飾成形体を得ることができる。
【0023】
さらに、白色の被覆層を形成した本発明の加飾成形体およびその製造方法によれば、フルカラーの再現性に優れた高品質の加飾成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の具体的な実施形態を図面を用いて詳細に説明する。第1実施形態から第3実施形態の加飾成形体は、携帯電話機に用いられる押釦スイッチ用のキーシートであり、第4実施形態の加飾成形体は、携帯電話機の液晶ディスプレイ用カバー部材である。なお、各実施形態で共通する構成については重複説明を省略する。
【0025】
第1実施形態; 第1実施形態として示す本発明の押釦スイッチ用のキーシート(以下「キーシート」と記す)11は、従来の図8で示したキーシート2に代わるもので、図1で示す外観を有し、図2の断面図で示すように、透明な硬質樹脂でなる樹脂キートップ12と、ゴム状弾性体でなるベースシート13とで構成され、それらの部材間に接着層14、加飾層15、被覆層16が設けられて加飾されている。そして、樹脂キートップ12を押圧すれば、ベースシート13が撓み、キーシート11の下方にあるプリント基板(図示せず)の接点電極を押圧してスイッチが入り、押圧を解けば、ベースシート13が元の状態に復元して、スイッチが切れるようになっている。
【0026】
図3にキーシート11のSA−SA線断面における一つの樹脂キートップ12の拡大断面図を、また、図4にキーシート11のSB−SB線断面における一つの樹脂キートップ12の拡大断面図をそれぞれ示すが、樹脂キートップ12は、鍔部12aが形成された断面が略ハット形状をしており、加飾層15は、その樹脂キートップの裏面12bの縁12cを除く中央部分に接着層14を介して固着されている。そして、被覆層16が加飾層15の裏面15bだけでなく、その側面15dまでも覆うように形成されて、加飾層15の全ての面が外部への露出部分が無いように覆われている。
【0027】
成形体としての樹脂キートップ12は、携帯電話機1の表面に表出し、指で押圧される部位であり、透明なポリカーボネート樹脂やABS樹脂、アクリル樹脂などに例示される硬質樹脂で成形されている。ベースシート13には、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムなどに例示されるゴム状弾性体が用いられている。
【0028】
加飾層15は、予めコンピュータ上で文字や記号、彩色などをデザインした原画を作成しておき、これらの原画をインクジェットプリンタで印画して得たカラーデザイン画像から形成されている。即ち、記録媒体である所定の基材シート(図示せず)にインクジェットプリンタで印画し、得られたカラーデザイン画像に対して接着剤を塗布して樹脂キートップ12の裏面12bに固着している。
【0029】
この場合、樹脂フィルムからなる基材シートは、カラーデザイン画像を表示する加飾層15を形成する基材となる役割を果たし、加飾層15が樹脂キートップ12に固着した後は、原則として引き剥がされる。そのため、基材シート自体がキーシート11の構成要素になるものではない。
【0030】
基材シートの表面には、プリンタからのインクが付着し担持されるインク受容層が形成されている。このインク受容層は、無機微粒子や有機微粒子をバインダー樹脂で結合して結合相とした多孔質材などから形成されており、プリンタ用インクとともにカラーデザイン画像を形成し、成形体表面に固着される。従って、基材シートの表面に形成されているインク受容層は樹脂フィルムからはがれ加飾層15の一部となる。なお、基材シートには、インク受容層の他にも、カラーデザイン画像が基材シートから剥離し易くする剥離層などが付着したものであっても良い。
【0031】
加飾層15は、樹脂キートップ12の裏面12bの縁12cには形成されていないが、鍔部12aは携帯電話機1の筐体1aの下側に隠れて配置されるため、携帯電話機1の使用者は縁12cを視認することがない。そのため、樹脂キートップ12の品質を損なうこともない。
【0032】
カラーデザイン画像の上に塗布される接着剤には、溶剤揮発型接着剤の他、二液硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、ホットメルト接着剤など、種々の接着剤を用いることができるが、ホットメルト接着剤を用いることが好ましい。ホットメルト接着剤には、例えばアクリル系、塩ビ系、ポリエステル系、ウレタン系などの接着剤を挙げることができる。これらのホットメルト接着剤の中でもガラス転移温度が50〜100℃となる接着剤が、転写性に優れる点で好ましい。これらの接着剤が接着層14を形成する。内部光源から発光して樹脂キートップ12を照光させるいわゆる照光式キートップとする場合には、接着層14を光が透過する必要があることから、透明または半透明の接着剤を用いることが好ましい。ホットメルト接着剤は、プリントされたカラーデザイン画像の表面に塗布されて、樹脂キートップ裏面12bにカラーデザイン画像を転写する。
【0033】
被覆層16は、加飾層15を覆い、加飾層15が外部へ露出する部分を消失させる機能を有している。被覆層16の形成には、タンポ印刷やパッド印刷、スクリーン印刷などを用いることができるが、加飾層15の側面15dにも被覆層16を施すため、表面に凹凸があったり、曲面であっても印刷が可能で正確に印刷できるタンポ印刷を用いることが好ましい。また、被覆層16が加飾層15を完全に覆う必要があるため、レベリング性が良い樹脂インキを用いて被覆層16を形成することが好ましい。
【0034】
本実施形態では、加飾層15が樹脂キートップ12の裏面12bの縁12cには設けられていないため、被覆層16を樹脂キートップ12の裏面12b全体に塗布するだけで加飾層15の裏面15bだけでなく、その側面15dも簡単に被覆することができる。また、加飾層15の側面15dから樹脂キートップ裏面12bに被覆層用インキが垂れることがあっても該インキは樹脂キートップ裏面12bの縁12cから外にはみ出すことがなく、バリなどを発生することがないし、樹脂キートップ12の裏面12b全面に被覆層16を設ければ、加飾層15と樹脂キートップ12との境界を確実に被覆することができる。
【0035】
被覆層16の色調は特に限定するものではないが、フルカラーの再現性を良くするためには白色にすることが好ましい。白色の被覆層16が無ければプリンタ用インクだけでは白色を表現できないため、白色を欠いた画像となるからである。
【0036】
樹脂キートップ12とベースシート13との接着は、一般的な接着剤を用いることができるが、加飾層15が設けられた樹脂キートップ12を金型に載置して、ベースシート13となるゴム状弾性体を射出成形するなどして、樹脂キートップ12とベースシート13とを固着しても良い。
【0037】
本実施形態のキーシート11は、カラフルで画質が良く加飾層15の変色やにじみ5が生じない。また、加飾層15が樹脂キートップ裏面12bの縁12cを除いて形成されているため、樹脂キートップ裏面12bの全体に被覆層16を施せば加飾層15が被覆されるため、生産性が向上し低コストでの製造が可能となる。
【0038】
第2実施形態; 第2実施形態に示すキーシート21の平面は、第1実施形態におけるキーシート11を示す図1と同様に表れる。図5には本実施形態のキーシート21で用いられる樹脂キートップ22の図3相当の拡大断面図を示す。樹脂キートップ22は、その裏面22b全面に、接着層24を介して加飾層25が施され、被覆層26が、加飾層25の裏面25b全体と加飾層25の側面25dを覆っている。本実施形態では、加飾層25を外部から完全に覆うため、被覆層26が樹脂キートップ22の側面22d側にも塗布されている。また、被覆層26は白色層とすることが好ましい。各部材の材料、形成方法はキーシート11と同様である。
【0039】
本実施形態のキーシート21は、カラフルで画質が良く、フルカラーの再現性も良い。また加飾層25の変色やにじみが生じない。また、本実施形態では加飾層25の側面25dへ被覆層26を形成する場合、加飾層25の縁25cを印刷する際に、縁25cから外にインキがはみ出すようにタンポ印刷等で印刷すれば、余分なインキが加飾層25の側面25dを伝わって付着するため、加飾層25の側面25dをも被覆することができ、被覆層26の形成が容易である。そのため、生産性は高く低コストでの製造が可能である。
【0040】
第3実施形態; 第3実施形態に示すキーシート31の平面は、第1実施形態におけるキーシート11を示す図1と同様に表れる。図6には本実施形態のキーシート31で用いられる樹脂キートップ32の図3相当の拡大断面図を示す。第1実施形態では加飾層15を基材シートから転写して形成していたのに対し、本実施形態における樹脂キートップ32では、基材シート38ごと樹脂キートップ32の裏面32bに固着した点で相違する。この樹脂キートップ32では、加飾層35の裏面35bが基材シート38で覆われているため、加飾層35の側面35d側だけに被覆層36が設けられており、加飾層35の裏面35bには被覆層36が設けられていない。プリンタ用インクの白色を補うため、基材シートを白色としたり、別途白色層を設けても良い。
【0041】
被覆層36の形成には、樹脂キートップ32の側面32dに透明な樹脂インキを塗布することにより行える。また、基材シート38を含めて樹脂液に浸けて樹脂キートップ33の下側全体を被覆層36で覆うことも可能である。
【0042】
本実施形態のキーシート31は、カラフルで画質が良く加飾層35の変色やにじみ5が生じない。また、基材シート38の付いた記録媒体をそのまま樹脂キートップ32に固着しているため、プリンタで印画したカラーデザイン画像の画質のままの加飾層35を得ることができるし、加飾層35の裏面に被覆層36を形成する必要がない。
【0043】
第4実施形態; 第4実施形態として示す本発明の液晶ディスプレー用カバー部材41は、図8で示した従来の液晶ディスプレイ用カバー部材4に代わるもので、図7の断面模式図で示すように、透明な平板状の硬質樹脂でなる液晶保護カバー42の裏面42bに接着層44、加飾層45、被覆層46が設けられて加飾が施されている。そして、液晶パネル(図示せず)の上に配置して、液晶パネルを外部から遮断し、液晶パネルの周りを加飾するものである。
【0044】
加飾層45は、液晶保護カバー42の裏面42bの中央部42e以外の周囲に形成されており、被覆層46はこれを覆うように形成されている。液晶表示部分となる中央部42eに被覆層46を設けると、被覆層46を通じて液晶表示が視認されるため視認性に少なからず影響を及ぼすことになる。そのため、中央部42eには被覆層46を設けずに液晶表示の見易さを損なわないこととしたのである。被覆層46は原画のフルカラーの再現性を良くするため白色であることが好ましい。
【0045】
本実施形態の液晶ディスプレイ用カバー部材41は、カラフルで画質が良く加飾層45の変色やにじみ5が生じない。また、液晶ディスプレイ用カバー部材41の中央部42eに加飾層45や被覆層46を設けていないため、液晶表示パネルに示された表示画像を再現性良く表示することができる。
【0046】
実施形態の変更例; 上記実施形態で示したキーシート11,21,31や液晶ディスプレー用カバー部材41には種々の変更が可能である。
【0047】
上記実施形態で示した成形体の形状や加飾層の形状の組合せに限定される趣旨ではなく、種々の組合せが可能である。例えば、第1実施形態で示した加飾層15と被覆層16を第3実施形態で示した樹脂キートップ32に施すことができる。また、各層間には実施形態で具体的に示した以外の層を設けることを排除する趣旨ではなく、別層を設けても良い。
【0048】
成形体に加飾を加えるのは、加飾層15,25,35,45だけである必要はない。金属調の彩色とするために、加飾層15,25,35,45とともに蒸着などで金属薄膜からなる金属層を別途設けても良いし、金属層とは別の印刷層を形成して加飾の役割を担わせても良い。
【0049】
コンピュータ上で作成した原画の色再現性を良くするために設ける白色層は、被覆層16,26,36,46を白色とする以外に、被覆層16,26,36,46以外の別層を白色層として形成しても良いし、第3実施形態の場合では基材シート38を白色の樹脂フィルムを用いたものとすることもできる。
【0050】
上記キーシート11,21,31では、加飾層15,25,35を樹脂キートップ12,22,32のそれぞれの裏面12b,22b,32bに設けたが、樹脂キートップ12,22,32の上面に形成しても良い。但し、文字や記号などを表す加飾層を形成する場合は、樹脂キートップの上面に転写すると文字や記号が反対に写るため、別部材に仮転写してから、樹脂キートップに再度転写したり、あるいは、基材シートを樹脂キートップの上面に接着するなどの変更が必要となる。この場合もプリントして得たカラーデザイン画像が外部への露出面を全て覆う被覆層を樹脂キートップの上面側に設ける必要がある。
【0051】
加飾成形体は樹脂キートップ11,21,31や液晶ディスプレー用カバー部材41以外の種々の部材であってもよい。また、成形体は樹脂であるものについて説明したが、樹脂以外の材質であっても良く、例えば、金属製、木製の成形体であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態によるキーシート(加飾成形体)の平面図。
【図2】図1のSA−SA線断面図。
【図3】図1のSA−SA線断面における一つの樹脂キートップの拡大断面模式図。
【図4】図1のSB−SB線断面における一つの樹脂キートップの拡大断面模式図。
【図5】第2実施形態における一つの樹脂キートップの図3相当の拡大断面模式図。
【図6】第3実施形態における一つの樹脂キートップの図3相当の拡大断面模式図。
【図7】第4実施形態による液晶ディスプレー用カバー部材(加飾成形体)の断面模式図。
【図8】携帯電話機の外観平面図。
【符号の説明】
【0053】
1 携帯電話機
1a 筐体
2 キーシート
3 樹脂キートップ
4 液晶ディスプレー用カバー部材
5 変色箇所またはにじみ箇所
11,21,31 キーシート
12,22,32 樹脂キートップ
12a,22a,32a 鍔部
12b,22b,32b 裏面
12c,22c,32c 縁
22d 側面
13 ベースシート
14,24,34 接着層
15,25,35 加飾層
15b,25b,35b 裏面
15d,25d,35d 側面
16,26,36 被覆層
38 基材シート
41 液晶ディスプレイ用カバー部材
42 液晶保護カバー
42e 中央部
44 接着層
45 加飾層
46 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置によってプリントして得たカラーデザイン画像を成形体に設けた加飾成形体であって、
カラーデザイン画像を形成する加飾層と、該加飾層の外部への露出面を全て覆う被覆層とを設けた加飾成形体。
【請求項2】
加飾層が、前記記録媒体上にプリントされたカラーデザイン画像を、前記成形体に転写して得られたものである請求項1記載の加飾成形体。
【請求項3】
前記記録媒体上にプリントされたカラーデザイン画像を形成する加飾層を該記録媒体ごと成形体に固着して設けた請求項1記載の加飾成形体。
【請求項4】
前記出力装置がインクジェットプリンタである請求項1〜請求項3何れか1項記載の加飾成形体。
【請求項5】
被覆層が、加飾層の側面を覆うものである請求項1〜請求項4何れか1項記載の加飾成形体。
【請求項6】
前記出力装置に備えられたプリンタ用インクでは再現できない色の被覆層を設けた請求項1〜請求項5何れか1項記載の加飾成形体。
【請求項7】
前記出力装置に備えられたプリンタ用インクでは再現できない色の着色層を被覆層とは別途設けた請求項1〜請求項5何れか1項記載の加飾成形体。
【請求項8】
前記出力装置に備えられたプリンタ用インクでは再現できない色が白色である請求項6または請求項7記載の加飾成形体。
【請求項9】
成形体が、押釦スイッチ用の樹脂キートップである請求項1〜請求項8何れか1項記載の加飾成形体。
【請求項10】
カラーデザインデータを記録媒体上に一括出力する出力装置によってプリントして得たカラーデザイン画像を成形体に設ける加飾成形体の製造方法であって、
成形体に前記カラーデザイン画像を形成する加飾層を設け、次に、加飾層と、加飾層と成形体の境界を共に覆う被覆層を設けて、加飾層の外部への露出面を全て覆う加飾成形体の製造方法。
【請求項11】
成形体の少なくとも一面に、その縁を除いて加飾層を設ける請求項10記載の加飾成形体の製造方法。
【請求項12】
被覆層の形成にタンポ印刷を用い、加飾層の表面への被覆層の印刷と同時に加飾層の側面にも被覆層を形成する請求項10または請求項11記載の加飾成形体の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−142747(P2006−142747A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338686(P2004−338686)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】