説明

加齢黄斑変性に対する保護および処置

加齢黄斑変性(AMD)に対する診断、保護および処置に関する方法および試薬。特に、対象をAMDの発症に対して強力に保護することが確定された遺伝子欠失に関する方法および試薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢黄斑変性(AMD)に対する診断、保護および処置に関する。特に本発明は、AMDの発症に対して強い保護をもたらす、共通の遺伝子欠失の同定、および、これらの遺伝子のサイレンシングためのインヒビターに関する。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性(AMD)は、高齢者における視力障害の最も一般的な原因であり、75歳以上の白人の約10%が重篤な疾患に罹患している。これは、遺伝的要因と環境要因とが感受性に寄与する複雑な疾患である。補体H因子(CFH)が、主要なAMD感受性遺伝子として最近確認され、Y402Hの多型が可能性のある原因因子として提案された。
【0003】
CFHと、密接に関連する遺伝子CFHL3、CFHL1、CFHL4、CFHL2およびCFHL5(CFHR1〜5としても知られる)とは、染色体1q23上にタンデムに配列しており、これらの遺伝子はそこで、RCA遺伝子クラスター近位端の355kbにわたって存在している。極めて高いレベルの相同性、特にCFHおよびCFHL1の3’エキソン間(98%)、および、CFHL3およびCFHL4のエキソン間(88〜99%)の相同性は、これらがゲノム重複によって生じたことを示唆する。遺伝子産物は、初期のAMDにおけるブルック膜と網膜色素上皮との間に生じるドルーゼンの形成に関わるカスケードである、補体活性の調整に関与している
【発明の概要】
【0004】
AMDの遺伝要素の証拠があるにもかかわらず、疾患感受性に関する検査に用いることができる、かつ/または、AMDを予防および/または処置する手段として用いることができる特異的な遺伝子マーカーは同定されていない。
本発明の第1の側面では、AMDの予防および/または処置のための医薬が提供され、この医薬は、遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを、完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターを含む。
【0005】
CFHR1のための参照配列はNM_002113.2である。
【表1】

【0006】
【表2】

【0007】
本明細書で用いる場合、用語「遺伝子」は、ポリペプチドまたは前駆体の産生のために必要なコード配列を含む核酸(例えばDNA)配列を指す。ポリペプチドは、全長または断片の所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持されるかぎり、全長コード配列によって、あるいは、コード配列の任意の部分によってコードされ得る。用語「遺伝子」は、cDNAおよび遺伝子のゲノム形態(genomic form)を含む。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断されるコード領域を含む。
【0008】
本明細書で用いる場合、用語「遺伝子サイレンシング」は、それによって遺伝子の機能が完全に、または部分的に阻害される現象を指す。本明細書全体にわたり、用語「サイレンシング」、「阻害」、「抑圧(quelling)」、「ノックアウト」および「抑制」は、遺伝子転写、タンパク質発現または発現タンパク質の機能の低減に関して用いる場合、互換可能に用いる。
AMDの予防は、より後の時点で、AMDを発症する対象のリスクを低減することとする。AMDの処置は、対象において、AMDの進行を遅延すること、および/またはAMDの症状を反転することである。
本発明の少なくとも1種のインヒビターは、RNAiを含んでもよい。
【0009】
RNAi
RNA干渉(RNAi)または転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)は、二本鎖RNAが、強力で特異的な遺伝子サイレンシングを誘発するプロセスである。RNAiは、サイレンシングトリガーと相同なmRNAを破壊する、配列特異的な多成分ヌクレアーゼであるRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって媒介される。RISCは、二本鎖RNAトリガーに由来する短鎖RNA(約22ヌクレオチド)を含むことが知られている。
【0010】
一側面において、本発明は、哺乳類、好ましくはヒト宿主において、標的遺伝子、CFHL1またはCFHL3の発現を調節する、好ましくは発現を低減するRNAi剤を利用する方法を提供する。発現を低減するとは、標的遺伝子またはコード配列の発現レベルを、対照に比べ、少なくとも約2倍、通常は少なくとも約5倍、例えば10倍、15倍、20倍、50倍、100倍またはそれ以上低減または阻害することを意味する。ある態様では、標的遺伝子の発現は、CFHL1またはCFHL3遺伝子/コード配列の発現が事実上阻害される程度まで低減される。標的遺伝子の発現を調節するとは、コード配列、例えばゲノムDNA、mRNAなどの、ポリペプチド、例えばタンパク質、産物などへの翻訳を変化させる、例えば低減することを意味する。
【0011】
発明の好ましい態様に利用することができるRNAi剤は、二重鎖構造で存在する低分子リボ核酸分子(本明細書中で干渉リボ核酸とも称する)、例えば、2つの異なるオリゴリボヌクレオチドが互いにハイブリダイズしたもの、または、小さなヘアピンを形成して二重鎖構造を生じる単一のリボオリゴヌクレオチドである。好ましいオリゴリボヌクレオチドは、長さ100nt以下、典型的には長さ75nt以下のリボ核酸である。RNA剤がsiRNAである場合、二重鎖構造の長さは、典型的には約15〜30bpの範囲、通常は約20〜29bpの範囲、最も好ましくは21bpである。RNA剤が、形成されたヘアピンに存在する単一RNAの二重鎖構造、すなわちshRNAである場合、ヘアピンのハイブリダイズした部分の長さは典型的には、siRNA型の剤について上記したのと同じか、または、それより4〜8ヌクレオチド長い。
【0012】
ある態様では、干渉リボ核酸、例えば上記のsiRNAまたはshRNAであるRNAi剤の代わりに、RNAi剤は、干渉リボ核酸をコードしてもよい。これらの態様において、RNAi剤は、典型的には、干渉リボ核酸をコードするDNAである。DNAは、ベクター内に存在してもよい。
RNAi剤は、当該技術分野で知られている任意の好適なプロトコルを用いて宿主に投与することができる。例えば、核酸は、組織または宿主細胞に、ウィルス感染、マイクロインジェクション、小胞の融合、粒子衝撃または流体力学的核酸投与(hydrodynamic nucleic acid administration)によって導入することができる。
【0013】
DNA媒介性RNA干渉(DNA directed RNA interference、ddRNAi)は、本発明の方法で用いることができるRNAi技法である。ddRNAiは、US 6,573,099およびGB 2353282に記載されている。ddRNAiはRNAiを誘発する方法であり、これは、細胞にDNA構築物を導入して二本鎖(dsRNA)の産生を誘発することを伴い、このdsRNAは、次いで、RNAiプロセスの一部として小分子干渉RNA(siRNA)に切断される。ddRNAi発現ベクターは、哺乳類細胞にトランスフェクトされたsiRNA標的配列の発現のために、一般にRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えばU6またはH1)を利用する。ddRNAi発現カセットシステムから生成されるsiRNA標的配列は、U6プロモーターを含まないベクターに直接クローニングすることができる。あるいは、ヘアピンsiRNA標的配列を含んでいる短い一本鎖DNAオリゴをアニールし、ベクターのpol IIIプロモーターの下流にクローニングすることができる。ddRNAi発現ベクターの主要な利点は、これらが長期にわたる干渉効果を可能にし、細胞における天然のインターフェロン反応を最小にすることである。
【0014】
本発明者によるAMDに関連する遺伝要素の新規で独創的な決定に従って、当業者が適用することのできるSiRNAの設計および使用に関する好適な方法論の例は、Soutschek J, Akinc A, Bramlage B, Charisse K, Constien R, Donoghue M, Elbashir S, Geick A, Hadwiger P, Harborth J, John M, Kesavan V, Lavine G, Pandey RK, Racie T, Rajeev KG, Rohl I, Toudjarska I, Wang G, Wuschko S, Bumcrot D, Koteliansky V, Limmer S, Manoharan M, Vornlocher HP (2004) Therapeutic silencing of an endogenous gene by systemic administration of modified siRNAs. Nature 432(7014):173-178によって提供される。この論文は、HepG2肝細胞における、マウスおよびヒトのapoBを標的とする84のsiRNAの、apoB mRNAおよびタンパク質レベルを低減する能力についてのスクリーニングを論じたものである。最も強力なsiRNAのうちの2つは、化学的に修飾され、コレステロールに結合しており、これがin vitroおよびin vivoにおいて、siRNAに改善された薬理学的性質を与えることが示された。これらのsiRNAは、マウスへの静脈内注射後に、肝臓および空腸(主要なapoB発現部位)でのapoB mRNAを低減し、apoBタンパク質の血漿濃度を低下させ、総コレステロールを低減した。apoB mRNAの切断は、RNAiの現行のモデルによって予測される部位である、siRNAアンチセンス鎖5’末端の10nt下流で特異的に生じることが示された。
【0015】
アンチセンスRNA
本発明に用いるCFHL1またはCFHL3インヒビターは、アンチセンス分子であっても、または、RNAとしてのかかるアンチセンス分子を発現する核酸構築物であってもよい。アンチセンス分子は天然物であっても、または合成物であってもよい。合成アンチセンス分子は、ネイティブな核酸に対して化学修飾を有し得る。アンチセンス配列は、標的とするCFHL1またはCFHL3遺伝子のmRNAと相補的であり、標的とする遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、種々のメカニズム、例えば、RNase Hの活性化または立体障害によって翻訳に利用可能なmRNAの量を減らすことなどにより、遺伝子発現を阻害する。アンチセンス分子の1つまたは組合せを投与することができ、ここで、組合せは複数の異なる配列を含んでもよい。
【0016】
アンチセンス分子は適切なベクターにおけるCFHL1遺伝子またはCFHL3遺伝子配列の全部または一部の発現によって産生することができ、ここで、転写の開始は、アンチセンス鎖がRNA分子として産生されるように方向付ける。あるいは、アンチセンス分子は、合成オリゴヌクレオチドであってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般に少なくとも約7ヌクレオチド、通常少なくとも約12ヌクレオチド、より普通には少なくとも約16ヌクレオチドの長さであり、通常約50ヌクレオチド以下、好ましくは約35ヌクレオチド以下の長さである。
内因性のCFHL1またはCFHL3センス鎖mRNA配列の特定の領域または複数の領域を選択し、アンチセンス配列による相補物とすることができる。
【0017】
特定の態様において、少なくとも1つのアンチセンス配列は、
【表3】

(ヌクレオチド塩基の違いを下線で示す)
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%および好ましくは少なくとも100%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列と相補的であってもよい。
【0018】
好適には、インヒビターの一態様は、CFHR1と相補的なアンチセンス配列、例えば、ttcaGctgattcacctgttctcAaat(配列番号5)であるか、またはこれを含むヌクレオチド配列、または、該配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列などである。
オリゴヌクレオチドのための特定の配列の選択は、実験的方法を用いることにより決定することができ、そこでは、いくつかの候補配列が、in vitroモデルまたは動物モデルにおいて、標的遺伝子の発現阻害について分析される。配列の組合せもまた用いることができ、そこでは、mRNA配列のいくつかの領域がアンチセンス相補化(complementation)のために選択される。
【0019】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当該技術分野で既知の方法によって化学的に合成することができる(上記Wagner et al. (1993)および上記Milligan et al.を参照)。好ましいオリゴヌクレオチドは、その細胞内の安定性および結合親和性を高めるために、ネイティブのリン酸ジエステル構造から化学的に修飾されている。主鎖、糖または複素環塩基の化学的性質を変化させる、複数のかかる修飾が文献に記載されている。主鎖の化学的性質の有用な変更としては、ホスホロジアミデート結合、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、非架橋酸素が両方とも硫黄で置換されているホスホロジチオエート、ホスホロアミダイト、アルキルホスホトリエステルおよびボラノホスフェートが挙げられる。アキラルなリン酸塩誘導体は、3’−O−5’−S−ホスホロチオエート、3’−S−5’−O−ホスホロチオエート、3’−CH2−5’−O−ホスホネートおよび3’−NH−5’−O−ホスホロアミデートを含む。ペプチド核酸は、リボースホスホジエステル主鎖の全体をペプチド結合と入れ替えてもよい。糖修飾もまた、安定性および親和性を強化するために用いることができる。
【0020】
本発明の第2の側面では、遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターの、医療における使用が提供される。
本発明の第3の側面では、遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターの、AMDの処置のための医薬の製造における使用が提供される。
本発明の第4の側面では、遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターを、それを必要とする患者に提供する工程を含む、AMDを処置する方法が提供される。
【0021】
本発明の第2、第3および第4の側面の特定の態様において、少なくとも1種のインヒビターは、本明細書で論じられるアンチセンス分子またはRNAiであってもよい。
本発明の第1、第2、第3および第4の側面の特定の態様では、遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターは、他の処置剤と組み合わせて提供することができる。
本発明の第1、第2、第3および第4の側面の特定の態様では、遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターは、抗VEGF処置剤と組み合わせて提供することができる。
【0022】
抗VEGF処置剤は、新生血管の形成を補助するタンパク質であるVEGF(血管内皮増殖因子)を標的とする。AMDでは、新生血管が不安定であり、網膜下に体液および血液を漏出する傾向があることが示唆された。これが、不可逆的な視力喪失の原因となる瘢痕化をもたらすと考えられている。AMDの場合、抗VEGF処置剤が新生血管の成長を阻害し、そうして瘢痕化のリスクを最小化すると考えられている。
抗VEGF処置剤は、例えば、マクゲン、アバスチン、ルセンティスなどを含む。
好適には、遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターは、患者が喫煙する可能性を最小化する薬物、例えば、チャンピックス、ブプロピオンなどと組み合わせて提供することができる。
【0023】
処置
「処置」は、ヒトまたは非ヒト動物の利益となり得る任意の方法を含む。処置は既存のAMD症状に関するものであっても、または予防的なもの(予防的処置)であってもよい。処置は、AMDに対する治癒的、緩和的または予防的作用を含み得る。
【0024】
投与
本発明の、および、本発明に用いられるCFHL1およびCFHL3インヒビターは、任意の好適な方法で投与することができる。さらに、これらは組み合せて、または、他の治療法と組み合わせて用いることができる。かかる態様において、本発明のインヒビターまたは組成物は、別の化学療法剤と同時に、別個に、または、連続して投与することができる。
別個に、または、連続して投与する場合、これらは互いに任意の好適な期間内、例えば、1、2、3、6、12、24、48または72時間以内に投与することができる。好ましい態様では、これらは互いに6時間以内、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、最も好ましくは20分以内に投与される。
【0025】
好ましい態様では、発明のインヒビターおよび/または組成物は、医薬組成物として投与され、これは通常、意図された投与ルートに応じて選択される好適な医薬賦形剤、希釈剤またはキャリアを含む。
発明のインヒビターおよび/または組成物は、処置が必要な患者に任意の好適なルートを介して投与することができる。
ターゲティングシステム、例えば抗体または細胞特異的リガンドなどの利用によって、活性剤を特定の種類の細胞により特異的に送達するためにターゲティング療法を用いることができる。ターゲティングは、例えば、剤が許容されないほど有毒である場合、または、ターゲティングしないと過度に高い投薬量が必要となる場合、または、ターゲティングしないと標的細胞に入ることができない場合などに、種々の理由から望ましいものであり得る。
【0026】
静脈内投与、注射、または、疾患部位への注射に関して、有効成分は、パイロジェンフリーの、好適なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容し得る水溶液の形態であることができる。当業者は、好適な溶液を、例えば、等張なビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などを用いて調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤および/または他の添加物が含まれていてもよい。したがって、本発明は、本発明の第1の側面の医薬を含む医薬組成物を包含する。
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の形態であってもよい。錠剤は、固体キャリア、例えばゼラチンまたはアジュバントを含んでもよい。液体医薬組成物は、一般に液体キャリア、例えば、水、石油、動物油または植物油、鉱油または合成油を含む。生理的食塩水、ブドウ糖もしくは他の糖溶液またはグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが含まれ得る。
【0027】
本発明のインヒビターおよび/または組成物はまた、ミクロスフェア、リポソーム、他の微粒子性送達システム、または、血液を包含する特定の組織に配置された徐放性製剤を通して投与され得る。徐放性キャリアの好適な例は、成型品、例えば坐薬またはマイクロカプセルの形態の半透性のポリマーマトリクスを含む。移植可能な、または、マイクロカプセルの徐放性マトリクスは、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号、EP-A-0058481)、L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー(Sidman et al, Biopolymers 22(1): 547-556, 1985)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、または、エチレン酢酸ビニル(Langer et al, J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277, 1981, and Langer, Chem. Tech. 12:98-105, 1982)を含む。ポリペプチドを含むリポソームは、よく知られた方法によって調製される:DE 3,218,121A、Epstein et al, PNAS USA, 82: 3688-3692, 1985、Hwang et al, PNAS USA, 77: 4030-4034, 1980、EP-A-0052522、E-A-0036676、EP-A-0088046、EP-A-0143949、EP-A-0142541、JP-A-83-11808、米国特許第4,485,045号および第4,544,545号。通常、リポソームは小さな(約200〜800オングストローム)単層のタイプであり、その脂質内容はコレステロールで約30モル%を超え、この選択された割合は、ポリペプチド漏出の最適な速度のために調節されている。
【0028】
上述の技法およびプロトコル、ならびに、本発明により用いることができるその他の技法およびプロトコルは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo, A. (ed), 1980に見出すことができる。
【0029】
医薬組成物
本発明の、および、本発明に用いられる医薬組成物は、有効成分に加えて、製薬的に許容し得る賦形剤、キャリア、バッファー、安定剤または当業者によく知られたその他の材料を含んでもよい。かかる材料は非毒性であるべきであり、有効成分の効力を妨げるべきではない。キャリアまたはその他の材料の正確な性質は投与のルートに依存し、これは経口投与、注射、例えば、静脈注射による投与であってもよい。
製剤は、液体、例えばpH6.8〜7.6の非リン酸バッファーを含有する生理食塩水、または凍結乾燥された粉末であってもよい。
【0030】
用量
本発明のインヒビターまたは組成物は、好ましくは「治療的有効量」で個体に投与され、これは個体に対して利益を示すのに十分なものである。実際に投与される量、ならびに投与の速度および時間経過は、処置するものの性質および重篤度に依存する。処置の処方、例えば投薬量などについての決定は、最終的には一般開業医およびその他の医師の責任の範囲内であるとともに、その裁量によるものであり、典型的には、処置する障害、個々の患者の状態、送達部位、投与の方法および医師に既知のその他の要因が考慮される。
【0031】
本発明者はAMDに関連する新しい遺伝子の多型を決定した。したがって、本発明の第5の側面は、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含む単離されたポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1種のプローブである:
【表4】

【0032】
好適には、少なくとも1種のプローブは、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含む単離されたポリヌクレオチド配列を含む。
【表5】

本明細書で用いる場合、用語「1種または2種以上の多型を含む単離されたポリヌクレオチド配列」は、本発明のSNPを含み、核酸の天然の給源に存在する他の核酸から分離されたものである。
単離されたポリヌクレオチド配列は、RNA、例えばmRNAなどの形態であっても、または、ゲノムDNAまたはcDNAなどのDNAの形態であってもよい。あるいは、ポリヌクレオチド配列は、化学合成法によって得ることができる。ポリヌクレオチド配列は二本鎖であっても、または、一本鎖であってもよい。
【0033】
AMDの疾患フェノタイプに対する特定のSNPsの貢献または関連性により、SNPsを、個体を後にAMDを発症する高い/低いリスクに置く、検出可能な特徴を発現する個体を特定することができる優れた診断検査を開発するのに用いることが可能となる。診断は、単一のSNPまたは一群のSNPsに基づいてもよい。複数のSNPsの組み合わされた検出は、典型的には正確な診断の可能性を高める。
AMDを診断し、AMDに対する感受性を予測し、または、対象をAMDについてモニターするための特定のSNPs/ハプロタイプの存在または欠如は、例えば、対象由来の試料からの核酸の酵素的増幅とこれに続くDNAの配列分析、プライマー伸長法または質量分析を含む、当業者に既知の方法を用いて決定することができる。
【0034】
疾患を有する患者および非罹患対照における関連性研究は、どの多型および/またはハプロタイプが、疾患に対する保護を与えるのか、または、疾患の増大したリスクを与えるのかを示すことができる。
当業者により理解されるとおり、本出願において特定のSNPsが例示された場合、代替的なSNPsを用いて、各々の遺伝子座のハプロタイプ構造を決定することができ、ここで、この代替的なSNPsは、決定されたSNPsと完全な連鎖不平衡にある。
【0035】
国際的なHapMap Projectおよび他のゲノムシーケンシング活動は、一般的なハプロタイプにおける多型のパターンを明らかにした。しばしば多型変異体の異なる組合せをタイピングし、個体における完全なハプロタイプ情報を得ることができる。これらのマーカーの組合せは、ハプロタイプタグ多型として知られている。
本発明の第6の側面においては、対象における加齢黄斑変性の診断および/またはモニタリングのための診断キットが提供され、該キットは、下記リスト
【0036】
【表6】

【0037】
から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列、または、下記リスト
【表7】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる分子に対して結合特異性を有する検出試薬を含む。
【0038】
ある態様では、前記キットは、下記リスト
【表8】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列に対して、または、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つによってコードされるポリペプチドに対して結合特異性を有する、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも10種、少なくとも15種の検出試薬を含む。
【0039】
好適には、少なくとも1種の検出試薬は、下記リスト
【表9】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列に対して結合特異性を有する。
【0040】
好適には、検出試薬は、本出願において特定された番号1〜30のSNPsの任意のものを含むポリヌクレオチド配列に対して、または、決定されたSNPsと完全な連鎖不平衡にあり、遺伝子マーカーのハプロタイプ構造を決定する代替的なSNPsに対して、相補的なヌクレオチド配列であってもよい。
「相補的な」とは、検出試薬がヌクレオチド配列である場合、これが番号1〜30のSNPsの任意のものを含むポリヌクレオチド配列と、少なくともストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを意味する。
理解されるとおり、特定のSNPsを参照する場合、核酸は二本鎖分子であり得るため、1つの鎖上のSNPへの参照により、相補鎖の対応する位置が参照される。オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、いずれかの鎖にハイブリダイズするように設計することができる。
【0041】
ある態様では、検出試薬はレポーターで標識されている。
ある態様では、レポーターは蛍光性である。
ある態様では、検出試薬は固体支持体に結合している。
特定の態様では、検出試薬は、紙、ナイロン、フィルターまたはメンブレン、チップ、ガラススライドを含む固体基材に、異なる分子のアレイとして結合している。ある態様では、検出試薬は、固体支持体上で合成される。アレイは、米国特許第5,837,832号および国際公開WO 95/1995に開示された方法に従って提供および使用することができる。
【0042】
ある態様では、検出試薬は、前記ポリヌクレオチド配列のアレイであり、ここで、前記ポリヌクレオチド配列は、コンピュータチップ上に固定され、試料からの核酸分子のアレイへのハイブリダイゼーションは、コンピュータ化技術によって検出することができる。
したがって、本発明の第7の側面は、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される少なくとも2種の遺伝子マーカーにハイブリダイズすることができる少なくとも2種のポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのアレイを提供する:
【0043】
【表10】

【0044】
好適には、アレイは下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される少なくとも2つの遺伝子マーカーにハイブリダイズすることができる少なくとも2つのポリヌクレオチド配列を含む:
【表11】

【0045】
前記アレイは、対象からの生物学的試料の遺伝子プロファイルを決定して、加齢黄斑疾患を診断するため、または、加齢黄斑の疾患の進行をモニターするための遺伝子マーカーの存在または欠如を決定することにより、加齢黄斑変性を診断するために用いることができる。
特定の態様では、少なくとも1つのアレイは、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される遺伝子マーカーにハイブリダイズすることができる3種または4種以上、例えば4種のポリヌクレオチド配列、5種のポリヌクレオチド配列、6種のポリヌクレオチド配列、10種のポリヌクレオチド配列、15種のポリヌクレオチド配列を含む:
【0046】
【表12】

【0047】
アレイへのハイブリダイゼーションは、適した程度のストリンジェンシーを提供するために選択される条件下で行うことができる。当業者は、特定の試料のための最も適した程度のストリンジェンシーを選択するためにハイブリダイゼーション条件を変更するための技法を熟知している。例えば、当業者は、ストリンジェントではない洗浄バッファーとストリンジェントな洗浄バッファーとを用いて、最適なハイブリダイゼーションを達成するために、それぞれの洗浄の回数(典型的には0〜20)、洗浄温度(典型的には15〜50℃)およびハイブリダイゼーション温度(典型的には15〜50℃)を変えることができる。ハイブリダイゼーション条件を最適化する方法は当業者によく知られている(例えば、LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 24: Hybridization With Nucleic Acid Probes, P. Tijssen, ed. Elsevier, N. Y., (1993)参照)。当業者は、所定のハイブリダイゼーション手順について最適のハイブリダイゼーションおよびシグナル生成を提供するため、および、異なる遺伝子間または異なる遺伝子位置間で、必要とされる分解能を提供するために、ハイブリダイゼーション条件を調節することができる。
【0048】
次に、生物学的試料中の転写物の、アレイ上の相補配列とのストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションまたは結合を検出することができる。ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、互いに少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上相同なヌクレオチド配列が、互いにハイブリダイズされたままである条件を表すこととする。かかるストリンジェントな条件は、当業者によく知られている。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989)参照。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定でき、一般的には、プローブの長さ、洗浄温度および塩濃度に依存している経験的な計算値である。一般的に、より長いプローブは適切なアニーリングのためにより高い温度を必要とする一方、より短いプローブは低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融解温度以下で環境に存在するときに再アニールする変性DNAの能力に依存する。より高いものは、プローブとハイブリダイズ可能な配列との間の所望の相同性の程度が高い程、用いることができる相対温度は高くなる。その結果、より高い相対温度は反応条件をよりストリンジェントにする傾向がある一方、より低い温度は反応条件をよりストリンジェントでなくする傾向があることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明については、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照。
【0049】
本明細書で定義する場合、「ストリンジェントな条件」は、(1)洗浄のために低いイオン強度および高い温度を用いるもの、例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを50℃で用いるもの、(2)ハイブリダイゼーション中に変性剤、例えば、ホルムアミドなどを用いるもの、例えば、50%の(v/v)ホルムアミドを、pH6.5の0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のフィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、および、750mMの塩化ナトリウムおよび75mMのクエン酸ナトリウムとともに42℃で用いるもの、または(3)50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精液DNA(50μg/ml)、0.1%のSDSおよび10%のデキストランを42℃で用い、42℃における、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%のホルムアミド中での55℃における洗浄、次いで55℃での0.1×SSCを含有するEDTAからなる高ストリンジェンシー洗浄を行うもの、として特定することができる。
【0050】
「中程度にストリンジェントな条件」は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されたように特定することができ、上述のものよりもよりストリンジェントではない洗浄液およびハイブリダイゼーション条件(例えば温度、イオン強度およびSDSの%)の使用を含む。中程度にストリンジェントな条件の例は、20%のホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストランおよび20mg/mlの変性され剪断されたサケ精液DNAを含む液中における37℃での1晩のインキュベーションと、これに続くフィルターの1×SSC中での約37〜50℃における洗浄である。当業者は、プローブ長などの因子に合わせるため、温度、イオン強度などを必要に応じてどのように調節するかを認識している。より高度にストリンジェントな条件は、上記に基づいてもよいが、フィルターを2×SSC中、約50℃で洗浄することが後に続く。極めて高度にストリンジェントな条件は、フィルターを6×SSC中、約65℃で洗浄することが後に続く。
【0051】
アレイに用いる核酸配列は、任意の種類の核酸または核酸アナログであってもよく、限定することなく、RNA、DNA、ペプチド核酸またはこれらの混合物および/または断片を含む。本明細書で用いる場合、用語「断片」は、配列、例えば、本明細書に記載されている配列の一部分であるヌクレオチド配列であって、該断片が、それが由来する全体配列に対する特異性および選択性を維持することを可能にするのに十分なヌクレオチド配列を保持しているものを指す。
【0052】
特定の態様では、大量のDNAが利用できる場合、ゲノムDNAを直接用いてもよい。あるいは、対象領域を好適なベクターにクローニングし、分析のため十分な量に増殖させることができる。ヌクレオチド配列は、慣用の技術、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saiki, et al. (1985) Science 239:487)などによって増幅してもよい。対象となるポリペプチドをコードしている配列を増幅するために、プライマーを用いることができる。任意に、検出可能な標識、例えば蛍光色素、ビオチンまたは放射性標識を、かかる増幅反応に用いることができる。標識は、プライマーの一方または両方に結合させることができる。あるいは、標識を増幅産物に取り込むために、増幅に用いるヌクレオチドのプールが標識される。
【0053】
試料核酸、例えば、増幅されたものまたはクローニングされたものは、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を用いて分析することができる。例えば、核酸はジデオキシ法または他の方法によってシーケンシングすることができ、塩基配列を欠失した配列と比較することができる。また、変異体配列によるハイブリダイゼーションを、サザンブロット、ドットブロットなどによってその存在を決定するのに用いることができる。WO 95/35505に記載された、固体支持体上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイへの対照配列および変異体配列のハイブリダイゼーションパターンを、配列の存在または欠如を検出する手段として用いることができる。
【0054】
あるいは、当該技術分野における標準的な技法を用いて、ポリペプチド、または、実際には、該ポリペプチドに特異的な抗体をコードしている核酸の存在を利用することができる。さらに、前記ポリペプチドに特異的な抗体の存在を、前記ポリペプチド対する免疫応答の存在を決定するのに用いることができる。
遺伝子の形態の細胞DNAがRNAに転写され、コードRNAがタンパク質に翻訳され、そして、RNAが任意にcDNAに逆転写されることは、当業者によって十分に理解されている。
特定の遺伝子マーカーの存在は、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、または、これに対する免疫応答を当該技術分野で既知の任意の手段を用いて検出することによって決定することができる:
【0055】
【表13】

【0056】
好適には、かかる手段は、例えば、ELISA法またはRIAを含む。
一態様では、試料中のポリペプチドの存在を決定することができる。代替的にまたは追加的に、前記ポリペプチドに特異的な抗体の存在を決定することができる。代替的にまたは追加的に、前記抗体または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の存在が決定される。
したがって、本発明のさらなる側面はポリペプチドアレイを提供し、前記ポリペプチドアレイは、
下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むいずれかのポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド:
【0057】
【表14】

または、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むいずれかのポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに対して結合特異性を有する少なくとも1種の抗体:
【0058】
【表15】

を含む。
【0059】
好適には、アレイは下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むいずれかのポリヌクレオチド配列によってコードされる少なくとも1種のポリペプチド:
【表16】

【0060】
または下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むいずれかのポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに対して結合特異性を有する少なくとも1種の抗体:
【表17】

を含む。
【0061】
本明細書で用いる場合、抗体は、当該技術分野における一貫した用語で定義され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、限定することなく、Fab、F(ab’)およびFv断片を含む、かかる抗体の断片を含む。
既知の標的ペプチドに対する抗体を生成および/または同定するために、多くの方法が知られている。当業者は、既存の技術、例えば、免疫応答を生成するための、単離されたペプチドの、ウサギ、ラットまたはマウスを含む哺乳生物への提供を、好適な抗体を提供するために容易に用いることができることを理解する。当業者によって理解されるとおり、モノクローナル抗体はハイブリドーマによって産生することができる。ハイブリドーマは不死化細胞系であり、これは2つの異なる細胞種を用いてin vitroで作出することができ、そのうちの1つは、特異的なモノクローナル抗体を分泌することができる細胞を作出するための腫瘍細胞である。
【0062】
ポリペプチドの存在または前記ポリペプチドへの免疫応答を検出する診断およびアッセイ手段は、当該技術分野で知られている。例えば、ポリペプチドの存在は、前記ポリペプチドに対して特異的な抗体の使用によって検出することができる。
利用することができる技法は、限定されずに、ELISA、免疫組織化学、電子顕微鏡法、ラテックス凝集、イムノブロット、イムノクロマトグラフィー、イプノチップ、ラテラルフローイムノアッセイおよびディップスティック免疫試験(Dip Stick Immuno testing)を含む。
【0063】
ELISA試験(酵素結合免疫酵素アッセイ)は、血清学的診断に多用される。この方法は、生物学的液体中の抗原または抗体の同定および定量を可能にする。慣用のELISAは、酵素活性(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)が結合した二次抗体(抗原と反応する抗体に対するもの)による抗体−抗原複合体の検出からなる。
ラテックス凝集アッセイでは、抗原調製物がラテックスビーズに取り付けられる。次いで、生物学的試料を、直接スライド上でラテックス粒子と共にインキュベートする。試料中のポリペプチドに対する抗体の存在を示す、架橋されたまたは凝集したラテックス粒子の存在について、短時間で反応を調査する。
【0064】
イムノチップは、本発明の特異的遺伝子マーカーの存在を決定するのに用いることができる。通常、抗原に対する特異抗体は、トランスデューサー、例えば、電極、熱量計、圧電結晶、表面プラズモン共鳴トランスデューサー、表面音響共鳴トランスデューサー(surface acoustic resonance transducer)または他の光検出デバイス上に固定される。生物学的試料中の抗原の、固定された特異抗体への結合は、電気信号の変化によって検出される。
免疫原性抗原の存在は、抗原をコードする、または抗原に対して産生された抗体をコードする核酸を検出することによって検出することができる。かかる技法は当該技術分野でよく知られている。
【0065】
発明者によるAMDに関連する多型の決定はまた、対象におけるAMDの診断に利用することができる。
したがって、本発明のさらなる側面は、対象における加齢黄斑変性の診断のための、または、加齢黄斑変性への感受性を予測するための方法を提供し、該方法は以下の工程:
前記対象からの生物学的試料を提供する工程、
生物学的試料において、少なくとも1種の遺伝子マーカー(ここで、遺伝子マーカーは、下記リスト:
【0066】
【表18】

【0067】
から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列、または、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つによってコードされるポリペプチドから選択される)の存在または欠如を決定する工程、
を含み、
ここで、遺伝子マーカーの存在および/または欠如は、対象が加齢黄斑変性(AMD)を発症するリスクの指標となる。
好適には、遺伝子マーカーは上記に特定した多型を用いて検出する。
【0068】
好適には、前記遺伝子マーカーは、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される:
【表19】

【0069】
対象における疾患の発病の予測は、早期の介入および疾病管理、例えば、患者サポートサービス、例えばカウンセリングなどの提供を可能にする。疾患の早期検出は、したがって、早い段階での患者の処置および管理を可能にする。
本発明は、AMDの発病を決定するのに用いることができる方法を提供する。この方法は、加齢黄斑変性の診断において一般的に用いる徴候の出現前に用いることができる。したがって、本発明の好ましい態様では、生物学的試料はAMDの身体的症状を有しない対象から提供することができる。
【0070】
任意の好適な生物学的試料を、本発明の方法で用いることができる。例えば、生物学的試料は、限定されずに、生物学的液体、例えば、痰、唾液、血漿、血液、尿など、または組織、例えば、組織の生検試料を含む群から選択することができる。
本発明の方法において、本発明者は、複数の遺伝子マーカー、例えば、少なくとも2種の遺伝子マーカー、少なくとも3種の遺伝子マーカー、少なくとも4種の遺伝子マーカー、少なくとも5種の遺伝子マーカー、少なくとも6種の遺伝子マーカー、少なくとも10種の遺伝子マーカー、少なくとも15種の遺伝子マーカーの存在を検査することによって、疾患の発病の診断または予測の方法の感度が改善されるとしている。
【0071】
本方法の好ましい態様において、該方法は以下の工程:
対象からの生物学的試料を提供する工程、
生物学的試料において、2種または3種以上の遺伝子マーカーの存在または欠如を決定する工程(ここで、遺伝子マーカーは、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列:
【0072】
【表20】

【0073】
または、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つによってコードされるポリペプチドから選択される)、
を含み、
ここで、遺伝子マーカーの存在および/または欠如は、対象が加齢黄斑変性(AMD)を発症するリスクの指標となる。
【0074】
好適には、前記遺伝子マーカーは、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される:
【表21】

【0075】
本発明のさらなる側面によると、第1の時点から、より後の時点までの加齢黄斑変性の進行をモニターする方法が提供され、前記方法は以下の工程:
第1の時点で得た第1の生物学的試料を提供する工程、
前記生物学的試料において、少なくとも1種の遺伝子マーカー(ここで、該遺伝子マーカーは、下記リスト:
【0076】
【表22】

【0077】
から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される)、または、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つによってコードされるポリペプチドの、存在または欠如を決定する工程、
より後の時点で得た第2の生物学的試料を提供する工程、
前記第2の生物学的試料において、少なくとも1種の遺伝子マーカー(ここで、該遺伝子マーカーは、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列:
【0078】
【表23】

【0079】
から選択される)、または、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つによってコードされるポリペプチドの、存在または欠如を決定する工程、
第2の試料における前記遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチドの欠如および/または存在を、第1の試料に関して比較する工程、
を含み、
ここで、第1の試料における前記遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチドの欠如および/または存在の、第2の試料に対する差異は、AMDを発症している対象のリスクの変化の指標となる。
【0080】
好適には、前記遺伝子マーカーは、下記リストから選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される:
【表24】

【0081】
本発明の方法の特定の態様において、該方法は、第1および第2の試料における、少なくとも3種の遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチド、少なくとも4種の遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチド、少なくとも5種の遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチド、少なくとも6種の遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチド、少なくとも10種の遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチド、少なくとも15種の遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチドの存在および/または欠如を決定することを含む。
好適には、本方法の特定の態様では、対象は、第1の生物学的試料の提供と第2の生物学的試料の提供との間の期間に可能な治療薬を提供されてもよく、それぞれの生物学的試料の遺伝子マーカー/ポリペプチドの検出を、その対象の、加齢黄斑変性についての可能な治療薬の有効性および応答性に関するデータと相関させることができる。
【0082】
好適には、これは、治療薬をスクリーニングおよび選択するための、およびまた、特定の治療薬に反応する可能性のある対象を特定するための方法を提供する。好適には、対象の薬理ゲノム学的な感受性を評価して、薬物に応じた遺伝的変異または薬物の異常作用の詳細を提供することができる。
本発明の各々の側面の好ましい特徴および態様には、他の側面のそれぞれと同様に、文脈が特に要求しなければ、必要に応じて変更が加えられる。
本発明の一態様を、一例としてのみ、以下の図面を参照して例示する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、CFHにおけるブロック構造およびハプロタイプ間の関係を示した図である。
【図2】図2は、CFH、CFHL3、CFHL1およびCFHL4の構成を示した図である。配列は、2つの遺伝子座から共増幅した産物のハプロタイプ5(下側の出力結果)および他の全てのハプロタイプを代表するもの(上側の出力結果)の分析を示す。遺伝子の下のPCR産物は、ハプロタイプ5における、CFHL3またはCFHL1ではなく、CFHおよびCFHL4の増幅(遺伝子特異的なプライマーを使用)を示す。
【0084】
本発明者は、染色体1q23上のCFHおよび5つのCFH様遺伝子のクラスターにわたる多型を、重篤な血管新生AMDを伴う172の症例およびAMDの徴候を有しない173名の高齢者対照において遺伝子タイピングした。全てのハプロタイプの詳細な分析は、対照の染色体の20%におけるCFHL1およびCFHL3の共通した欠失を明らかにし、これは、AMDの発症に対して強力に保護的であり、Y402Hより有意性が高かった。
【0085】
本研究のための患者は、眼科クリニックから採用し、より重篤な滲出性または湿潤性のAMDを伴う脈絡膜の血管新生を有した。年齢を一致させた対照は、加齢黄斑疾患の徴候を有しなかった。発明者は、CFH領域において24のSNPsをタイピングし、これは、最も一般的なcSNPsと、完全なハプロタイプ情報を確認するために選択した追加のイントロンおよび遺伝子間SNPsとを含んだ。データにより、CFHとAMDとの間の強い関連性2〜5が確認され、これはSNPsの個々の評価およびハプロタイプによる評価のいずれにおいても明白であった(表1a、b)。この領域全体にわたって、高い連鎖不平衡(LD)が認められた。rs1065489を除き、CFHにおいてタイピングされた全てのSNPsは、それぞれ45、19および84kbにわたる3つの大きなハプロタイプブロック内に位置していた(図1)。ブロック3のマーカーは、CFHのイントロン21からCFHL1にわたっていた。遺伝子タイピングにより、最終的なHapMapデータで見出された、1%を超える頻度の全てのハプロタイプを識別することができた。ブロック3におけるSNPsは、恐らくこの領域の反復的な性質の影響を受けた同一の遺伝子型の試料のより貧弱なクラスタリングを反映して、顕著に低いIllumina遺伝子タイピング品質スコアを返したが、これらのマーカーにおける遺伝子型は、ハーディワインバーグ平衡の範囲に収まるものであり、そのハプロタイプブロック内での完全なLD、および隣接するブロック2のハプロタイプとの強いLDを示した。
【0086】
各ブロック内で、ハプロタイプは、事実上AMDに関して極めて有害なものから高度に保護的なものに及んだ。ブロック1では、rs1061170(Y402H)がAMDの増大したリスクと関連する2つのハプロタイプのうちの1つを特徴づけた。しかしながら、AMD状態にとってより重要だったのは、全てのブロックにわたってLDのソリッドスパインに近いもの(near-solid spine of LD)を示した強力に保護的なハプロタイプであった。この共通のハプロタイプは対照の20%の染色体で見出され、ブロック3においてその最高限度に近い保護オッズ比3.06を与えた。それは、ブロック3におけるrs460897のCアレルまたはブロック2におけるrs6677604のAアレルによってユニークにタグ付けすることができた。単独では、ハプロタイプブロック2内のrs2274700が、症例状態の最良の単独予測因子であった(p=1.68×10−9)。rs2274700のGおよびAアレルのいずれも、コドン473でアラニンをコードしており、この多型はスプライシングに影響を及ぼす何らかの機能的な役割を有しているとは考えられないが、これは有害なハプロタイプのグループと有益なハプロタイプのグループとを最適に識別した。
【0087】
本発明者は、強力に保護的なハプロタイプ5(ブロック2:11112、ブロック3:22221)の遺伝子的基礎を特定しようとした。興味深かったのは、CFHの最終エキソン内のc.3572C>T(S1191L)をコードすることが報告されている、以前に確認された非同義SNPであるrs460897の研究における明らかに信頼できるタイピングであった。このエキソンの参照コード配列はCFHL1の最終エキソンと99%の相同性を共有しており、c.3572およびc.3590のみが異なる。rs460897の遺伝子タイピングは、タイピングの結果をもたらす欠失または変換によって、CFHのエキソン23およびCFHL1のエキソン6におけるアレルの貢献を明らかにする可能性がある。遺伝子特異的プライマーを、ブロック2の5つのハプロタイプの各々、およびまた、ブロック3の関連するハプロタイプについてのホモ接合個体からのDNAにおけるこれらのエキソンをシーケンシングするために選択した。これらは、CFHのエキソン23において、いずれのハプロタイプに関しても変化を示さなかった。
【0088】
CFHL1のエキソン6は、ホモ接合体において、保護的ハプロタイプ5について増幅することができなかった(図2)。他の全てのハプロタイプで、CFHL1のエキソン6は、予想部位においてCFHと異なっており、そしてまた、SNPs rs4320(c.906G>T)およびrs414628(c.942A>T)でハプロタイプ特異的な変異を示した。ハプロタイプ5を1コピー有するヘテロ接合個体からシーケンシングした全28試料は、全てのCFHL1エキソン6でホモ接合であるとみられ、そのうち10個は珍しいアレルであった。あらゆるヘテロ接合性の欠如は、ハプロタイプ5におけるCFHL1エキソン6の欠失についての強いサポートを提供した。欠失は、CFHとCFHL1との両方に共通の部位にアニールするプライマーを用いた共増幅によって、ハプロタイプ5ホモ接合体において確認された。PCR産物のシーケンシングは、ハプロタイプ5がCFHのみを増幅したが、他の全てのハプロタイプは両方の遺伝子を増幅したことを示し、CFHとCFHL1とで異なる部位における疑似SNPs(pseudoSNPs)を明らかにした(図2)。
【0089】
CFHL1イントロン4の欠失は、それぞれ324および380bpの産物を増幅するCFHイントロン21およびCFHL1イントロン4に共通のプライマーを用いた共通幅により、同様に示された(図2)。不完全な相同性を有する領域に隣接するCFHL3およびCFHL4の両方のエキソン6に特異的なプライマーによる、ホモ接合体におけるCFHL4配列のみの増幅が示すとおり、CFHL3もまた、ハプロタイプ5から欠失していた(図2)。欠失の正確な位置およびサイズは測定しなかったが、染色体の物理地図における2つの大きな重複セグメントの間の間隔に基づき、約80kbと予想される。それは、rs2274700を囲むCFHエキソンの11の不完全なコピーが挿入され、全てのハプロタイプで保持されているCFHL4までは広がっていない(図2)。この重複は、伸長のためにリバースプライマーを用いたrs2274700のタイピングに干渉しなかった。CFHイントロン15のみに位置するSNP rs1410996は、rs2274700と完全なLDにあった(データは示さない)。
【0090】
極めて複雑な重複領域でゲノムアセンブリを行うことは容易ではない。物理地図の基礎となる配列データは見直され、CFHおよび関連遺伝子の配置と一致させた。CFHの末端エキソンがCFHL1とアレルであり、CFHL3とCFHL4との間にも同様の関係がある代替的なセレラ社のビルドは、今回のデータによってサポートされず、また、CFHからのCFHL1の遺伝子変換でもない。発明者は、多重ライゲーション依存性プローブ増幅法(MLPA)を用いて、CFHエキソン23およびCFHL1エキソン6のコピー数を測定した。アッセイはCFH c.3572C/CFHL1 c.869Tに重点を置き、遺伝子特異的プローブのハイブリダイズする部分は、1つのキーとなる塩基のみが異なっていた。CFHエキソン23のコピー数は、0、1または2コピーのハプロタイプ5を有する個体からの男性および女性のDNA試料において、MORF4L1のエキソン9における常染色体マーカー、および、男性において性別について修正されたBCAP31のエキソン6におけるX連鎖マーカー(X-linked marker)を基準とした場合、一定のまま(1.00/1.04/1.06)であった。予想されたとおり、CFHL1のコピー数は、ハプロタイプ5のヘテロ接合体およびホモ接合体において、1からそれぞれ0.44および0まで低下した。
【0091】
CFHおよびCFHL1は補体活性のより重要なレギュレーターであり、他のCFH関連タンパク質より高レベルで発現され、それゆえ、CFHL1の欠失はCFHL3よりAMDに対する保護においてより重要であるとみなすことができる。CFHおよびCFHL1は循環中に高レベルで存在し、いずれも、C3bのI因子媒介性分解のためのコファクターとして作用する9,10。CFHL1の欠失がどれだけAMDに対して保護し得るかについてのいくらかの知見は、溶血性尿毒症(HUS、OMIM #235400)を引き起こすCFHにおける変異の研究に由来する。75%を超える既知のHUS変異は、CFHL1と相同性を共有するCFHのエキソンに密集している11〜13。より初期のエキソンの変異は、機能よりはむしろ、血漿中でのCFHタンパク質の安定性に影響を及ぼす傾向がある。エキソン23内に、c.3572C>T(S1191L)およびc.3590T>C(V1197A)が、別々に、または、一緒に見出される。
【0092】
両方の変異を有するHUS患者が、AMDから保護するものと同様だが、より初期のブレークポイントを有する欠失を有し得る可能性がある。これは、AMDから保護するCFHL3とCFHL1との除去の代わりに、CFHのCFHL1との変換およびCFHL3の除去をもたらす。これらのHUS変異は、C3b結合の減少および細胞表面で補体の活性化を制御する能力の低減を引き起こす。HUS患者において、最後のCFHエキソンをCFHL1のそれに置換する効果は、微小血管症による腎疾患をもたらし、これは、網膜における新生血管の出血に苦しむ我々の重篤なAMD患者と類似している。CFH遺伝子クラスターは、選択的スプライシングを受けた多数の転写物およびタンパク質に関与する。CFHL1の最終エキソンは、CFHに選択的にスプライシングされ得、そして、CFHL3およびCFHL1のエキソンはさらなる転写物に関与し得る。これらの遺伝子の複雑性をDNAレベルで解明するため、およびこの高度に重複した遺伝子クラスターから生じる転写物およびタンパク質の複雑性を解明するためには多くの労力が必要である。他の欠失または再構成が予想され得る。全体として、現在のデータは、CFHが健常な微小血管系を維持するのに必要であり、CFHL1が有害な干渉断片であると最もみなされているモデルを支持するものである。
【0093】
加齢黄斑変性の有病率は、人々の寿命の延長と平行して増大している。効果的な処置がなされないと、AMDは大きな障害となる。AMDに対する素因へのCFHおよび関連遺伝子の複雑な役割の解明を始めることで、その病因にいくらかの光を投じ、将来的に遺伝子サイレンシングのための有用な治療標的を提示することができる。
【0094】
方法
DNA抽出、遺伝子タイピングおよびシーケンシング
全ての参加者は、英国の北アイルランドで採用し、白人系であった。DNAは、標準的な方法で末梢血から抽出した。ハイスループットSNP遺伝子タイピングは、より大きなプロジェクトの一部として、多重PCRおよびプライマー伸長に基づくIlluminaビーズ技術(Illumina、San Diego、USA)により外注で行った。追加のSNPsは、多重PCRと、これに続く多重SNaPshot(ABI)技術を用いて、学内でタイピングした。プライマーはPrimer Detective(Clontech)を用いて設計した。CFHおよび関連遺伝子の特異的および非特異的増幅のためのプライマー配列は、オンラインで入手できる。シーケンシングは、ABI3100遺伝子分析器での分析を伴うABIダイターミネーター化学v3を用いて行った。我々は、Sequencherプログラム(Genecodes)を用いてDNAの配列を比較した。SNP遺伝子型は、AまたはTアレルを1で示し、CまたはGアレルを2で示して番号付けした。2つのA/T SNPs、rs2019727およびrs438781においては、フォワード方向のAアレルを1で示した。
【0095】
統計学的方法
遺伝子型データを、連鎖形式(linkage format)でHaploview14(www.broad.mit.edu/mpg/haploview/)に読み込み、症例および対照のアレルおよびハプロタイプの数と比率、ならびに、アレルまたはハプロタイプ頻度の関連性についてのカイ二乗検定に基づくP値を生成した。172の症例および173の対照からのデータを、我々の症例対照研究ケースに用いた。
【0096】
MLPA
これは、100ngのDNAに対して、MRC Hollandからのバッファー、酵素およびPCRプライマーを用い、そのプロトコルに従って行った。ハイブリダイゼーションプローブ配列X−CFH−1191CまたはX−CFHL1−1191Tを、共通のPHO標識オリゴCFH1191−Yと共に別々の反応に用いた。MORF4L1およびBCAP31を用いた対照を全ての反応に含めた。分析はピーク高さに基づいて行い、ピーク面積とよく相関した。全てのMLPAオリゴは、オンラインで入手できる。
【0097】
GenBankアクセッション番号
CFH NM000186、CFHL1 BC016755、CFHL2 BC022283、CFHL3 AK124051、CFHL4 BC074957。CFHエキソンは、この遺伝子のより短い転写物に選択的にスプライシングされるエキソン10を含むようにナンバリングした。転写物のナンバリングは、最初のTGから始まる。
【0098】
【表25】

【0099】
【表26】

【0100】
【表27】

表1a
P値は、172人のAMD患者および173の対照におけるアレル頻度の関連性についてのカイ二乗検定により生成した。
【0101】
【表28】

オッズ比は有害なハプロタイプを示し、正のものは保護的AMDハプロタイプを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AMDの予防および/または処置のための医薬であって、該医薬が、遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターを含む、前記医薬。
【請求項2】
少なくとも1種のインヒビターがRNAiを含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
少なくとも1種のインヒビターが、遺伝子CFHL1および遺伝子CFHL3の少なくとも1つのmRNAに対して相補的であり、それぞれの遺伝子産物を低減させるアンチセンス分子である、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
遺伝子CFHL1および遺伝子CFHL3の少なくとも1つのmRNAに対して、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で相補的であり、それぞれの遺伝子産物を低減させるアンチセンス分子である、請求項1または3に記載の医薬。
【請求項5】
少なくとも1種のインヒビターが、ttcaGctgattcacctgttctcAaat(配列番号5)との少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
少なくとも1種のインヒビターが、ttcaGctgattcacctgttctcAaat(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を含む、請求項4または5に記載の医薬。
【請求項7】
遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターの、医療における使用。
【請求項8】
遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターの、AMDの処置のための医薬の製造における使用。
【請求項9】
遺伝子CFHL1および/または遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターを、それを必要とする患者に提供する工程を含む、AMDを処置する方法。
【請求項10】
抗VEGF処置剤および対象の喫煙の可能性を最小にする薬物の少なくとも1つを提供する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗VEGF処置剤および対象の喫煙の可能性を最小にする薬物の少なくとも1つをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬。
【請求項12】
抗VEGF処置剤および対象の喫煙の可能性を最小にする薬物の少なくとも1つと組み合わされた、請求項7または8に記載の遺伝子CFHL1および遺伝子CFHL3の少なくとも1つを完全にまたは部分的にサイレンシングする少なくとも1種のインヒビターの使用。
【請求項13】
下記リスト:
【表1】

から選択される1種または2種以上の多型を含む単離されたポリヌクレオチド配列を含むプローブ。
【請求項14】
単離されたポリヌクレオチドが
【表2】

を含む、請求項13に記載のプローブ。
【請求項15】
対象における加齢黄斑変性の診断および/またはモニタリングのための診断キットであって、該キットが、下記リスト:
【表3】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列に対して、または、下記リスト
【表4】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに対して結合特異性を有する検出試薬を含む、前記キット。
【請求項16】
下記リスト:
【表5】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される少なくとも2種の遺伝子マーカーにハイブリダイズすることができる少なくとも2種のポリヌクレオチド配列を含むアレイ。
【請求項17】
ポリペプチドアレイであって、該ポリペプチドアレイが、下記リスト:
【表6】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、または、下記リスト:
【表7】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに対して結合特異性を有する少なくとも1種の抗体を含む、前記ポリペプチドアレイ。
【請求項18】
対象における加齢黄斑変性の診断、または、加齢黄斑変性に対する感受性の予測のための方法であって、該方法が以下の工程:
前記対象からの生物学的試料を提供する工程、
前記生物学的試料において、少なくとも1種の遺伝子マーカー(ここで、該遺伝子マーカーは、下記リスト:
【表8】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列または、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つによってコードされるポリペプチドから選択される)の存在または欠如を決定する工程、
を含み、
ここで、遺伝子マーカーの存在および/または欠如が、対象が加齢黄斑変性(AMD)を発症するリスクの指標となる、前記方法。
【請求項19】
第1の時点から、より後の時点までの加齢黄斑変性の進行をモニターする方法であって、該方法は以下の工程:
第1の時点で得た第1の生物学的試料を提供する工程、
前記生物学的試料において、少なくとも1種の遺伝子マーカー(ここで、該遺伝子マーカーは、下記リスト:
【表9】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される)、または、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つによってコードされるポリペプチドの存在または欠如を決定する工程
より後の時点で得た第2の生物学的試料を提供する工程、
前記第2の生物学的試料において、少なくとも1種の遺伝子マーカー(ここで、該遺伝子マーカーは、下記リスト:
【表10】

から選択される1種または2種以上の多型を含むポリヌクレオチド配列から選択される)、または、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つによってコードされるポリペプチドの存在または欠如を決定する工程、
第2の試料における前記遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチドの欠如および/または存在を、第1の試料に対して比較する工程、
を含み、
ここで、第1の試料における前記遺伝子マーカーおよび/またはポリペプチドの欠如および/または存在の、第2の試料に対する差異が、AMDを発症している対象のリスクの変化の指標となる、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−539960(P2009−539960A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514898(P2009−514898)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002207
【国際公開番号】WO2007/144621
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(502194159)ザ クイーンズ ユニバーシティ オブ ベルファスト (7)
【Fターム(参考)】