説明

助手席用エアバッグ装置

【課題】車両上下方向に小型化でき、インストルメントパネルへ容易に搭載できる助手席用エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】助手席用エアバッグ装置10において、エアバッグ28にガスを供給するためのインフレータ30は、シリンダ状に形成され、車両幅方向を軸方向として配置されている。また、インフレータ30は、軸心部30Aがケース26に形成された底壁部46における車両前後方向の中央部46Aよりも車両前側にオフセットされた状態で、底壁部46に取り付けられている。一方、エアバッグ28に設けられたベントホール66を開閉するためのアクチュエータ32は、インフレータ30よりも車両後側において底壁部46に取り付けられている。従って、インフレータ30及びアクチュエータ32が車両前後方向にずれて配置されているので、助手席用エアバッグ装置10を車両上下方向に小型化でき、インストルメントパネル12へ容易に搭載できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、助手席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグにガスを供給するインフレータと、このインフレータと車両上下方向に並んで配置され、エアバッグに設けられたテザーを保持した状態から解放可能な移動部材とを備えた車両用エアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6513835号明細書
【特許文献2】特開平9−142245号公報
【特許文献3】特開2004−155420号公報
【特許文献4】特開2009−227047号公報
【特許文献5】特開2009−190626号公報
【特許文献6】特開2010−83175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように、インフレータと移動部材とが車両上下方向に並んで配置されていると、車両用エアバッグ装置の車両上下方向の寸法が大きくなり、この装置のインストルメントパネルへの搭載が困難になる虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、車両上下方向に小型化でき、インストルメントパネルへ容易に搭載することができる助手席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネルにおける助手席の前方部位に設けられたエアバッグドアの裏側に配置されると共に、前記エアバッグドアと対向する底壁部を有し前記エアバッグドア側に開口する箱状に形成されたケースと、前記ケースに折畳状態で収容されたエアバッグと、前記エアバッグに設けられ、前記エアバッグの内部と外部とを連通するためのベントホールを形成するチューブ状のチューブベントと、一端側が前記エアバッグの内部を通って前記チューブベントの先端部に連結されたテザーと、シリンダ状に形成されて車両幅方向を軸方向として配置されると共に、軸心部が前記底壁部における車両前後方向の中央部よりも車両前側にオフセットされた状態で前記底壁部に取り付けられ、前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記テザーの他端側を保持し前記エアバッグの展開時に前記テザーを介して前記チューブベントの先端部を前記エアバッグの内側に引き込んで前記ベントホールを閉状態とする第一作動状態と、前記テザーの他端側を解放して前記エアバッグの展開時に前記チューブベントを前記エアバッグの外側に突出させて前記ベントホールを開状態とする第二作動状態とを取り得ると共に、前記インフレータよりも車両後側において前記底壁部に取り付けられたアクチュエータと、を備えている。
【0007】
この助手席用エアバッグ装置によれば、インフレータは、シリンダ状に形成されており、車両幅方向を軸方向として配置されている。また、このインフレータは、その軸心部がケースに形成された底壁部における車両前後方向の中央部よりも車両前側にオフセットされた状態で、この底壁部に取り付けられている。一方、アクチュエータは、インフレータよりも車両後側において底壁部に取り付けられている。従って、インフレータ及びアクチュエータが車両前後方向にずれて配置されているので、助手席用エアバッグ装置を車両上下方向に小型化でき、インストルメントパネルへ容易に搭載することができる。
【0008】
請求項2に記載の助手席用エアバッグ装置は、請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置において、前記チューブベントが、前記エアバッグの展開状態における側壁部に設けられ、前記アクチュエータが、前記底壁部における車両幅方向両側の端部のうち前記チューブベントと対応する側の端部に配置された構成とされている。
【0009】
この助手席用エアバッグ装置によれば、アクチュエータは、底壁部における車両幅方向両側の端部のうちチューブベントと対応する側の端部に配置されている。これにより、テザーの長さを短縮することができると共に、ベントホールの開閉を迅速に行うことが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の助手席用エアバッグ装置は、請求項1又は請求項2に記載の助手席用エアバッグ装置において、前記アクチュエータが、前記底壁部の車両下側に設けられ、少なくとも軸方向一端部が前記底壁部の下面に当接するアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体の軸方向一端部に設けられた保持部と、前記アクチュエータ本体の軸方向他端部を前記底壁部に固定するブラケットと、を有し、前記テザーの他端側が、前記保持部の車両上側から前記底壁部を貫通して前記保持部に保持された構成とされている。
【0011】
この助手席用エアバッグ装置によれば、テザーの他端側を保持する保持部は、アクチュエータ本体の軸方向一端部に設けられている。従って、エアバッグの展開時にテザーを介してチューブベントの先端部が引き込まれたときには、アクチュエータ本体の軸方向一端部に対して車両上側に荷重が作用する。ところが、このアクチュエータ本体の少なくとも軸方向一端部は、底壁部の下面に当接されている。従って、アクチュエータ本体の軸方向一端部を底壁部に固定する必要が無く、アクチュエータ本体の軸方向他端部を底壁部に固定すれば足りるので、ブラケットを小型化することができる。また、ブラケットを小型化することにより、助手席用エアバッグ装置を軽量化及び低コスト化することができる。
【0012】
請求項4に記載の助手席用エアバッグ装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置において、前記アクチュエータが、車両前後方向を軸方向として配置され、前記底壁部に固定されたアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体の後部に車両前後方向を挿抜方向として固定されたコネクタと、を有する構成とされている。
【0013】
この助手席用エアバッグ装置によれば、アクチュエータに設けられたコネクタは、車両前後方向を軸方向として配置されたアクチュエータ本体の後部に車両前後方向を挿抜方向として固定されている。従って、コネクタをケースの後端部により近い位置で挿抜することができるので、コネクタの挿抜時の作業性を向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の助手席用エアバッグ装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置において、前記チューブベントが、前記エアバッグの展開状態における側壁部に設けられ、前記アクチュエータが、車両幅方向を軸方向として配置され、前記底壁部に固定されたアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体における軸方向両側の端部のうち前記チューブベントと対応する側の端部に設けられ、前記テザーの他端側を保持する保持部と、を有する構成とされている。
【0015】
この助手席用エアバッグ装置によれば、テザーの他端側を保持する保持部は、アクチュエータ本体における軸方向両側の端部のうちチューブベントと対応する側の端部に設けられている。これにより、テザーの長さを短縮することができると共に、ベントホールの開閉を迅速に行うことが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の助手席用エアバッグ装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置において、前記アクチュエータが、前記底壁部における車両幅方向一方側の端部に配置され、前記底壁部に固定されたアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体における車両幅方向一方側の端部に車両幅方向を挿抜方向として固定されたコネクタと、を有する構成とされている。
【0017】
この助手席用エアバッグ装置によれば、アクチュエータ本体は、ケースの底壁部における車両幅方向一方側の端部に配置され、コネクタは、アクチュエータ本体における車両幅方向一方側の端部に車両幅方向を挿抜方向として固定されている。従って、コネクタをケースの側端部により近い位置で挿抜することができるので、コネクタの挿抜時の作業性を向上させることができる。
【0018】
請求項7に記載の助手席用エアバッグ装置は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置において、前記チューブベントが、前記エアバッグの展開状態における車両幅方向内側の側壁部に設けられた構成とされている。
【0019】
この助手席用エアバッグ装置によれば、チューブベントは、エアバッグの展開状態における車両幅方向内側(つまり、運転席側であって、車室の側面部と反対側)の側壁部に設けられている。従って、エアバッグの展開時にテザーの他端側が解放されてチューブベントがエアバッグの側壁部から外側に突出された場合でも、このチューブベントが例えばサイドウィンドウガラスやフロントピラーなどの車室の側面部と干渉することを回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、本発明によれば、助手席用エアバッグ装置を車両上下方向に小型化でき、インストルメントパネルへ容易に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る助手席用エアバッグ装置が適用されたインストルメントパネルの側面断面図である。
【図2】図1に示されるエアバッグが展開され、且つ、ベントホールが閉じられた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示されるエアバッグが展開され、且つ、ベントホールが開けられた状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示されるケース、インフレータ、及び、アクチュエータの斜視図である。
【図5】図1に示されるケース、インフレータ、及び、アクチュエータの平面図である。
【図6】図1の要部拡大図であって、アクチュエータのロッドが突出位置から後退位置に変位される様子を説明する図である。
【図7】図5に示されるアクチュエータの配置の第一変形例を示す平面図である。
【図8】図5に示されるアクチュエータの配置の第二変形例を示す平面図である。
【図9】図6に示されるアクチュエータの変形例を示す図であって、アクチュエータのカッタが退避位置から切断位置に変位される様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、及び、矢印RHは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、及び、車両幅方向外側(右側)をそれぞれ示している。
【0024】
図1に示されるインストルメントパネル12は、本発明の一実施形態に係る助手席用エアバッグ装置10が適用されたものであり、一例として、左ハンドル車用とされている。このインストルメントパネル12における助手席の前方部位には、その上部14と下部16との間に車両上側且つ後側に凸を成すように湾曲する上下方向中間部18が形成されている。この上下方向中間部18には、車両前後方向に並ぶ一対のエアバッグドア20が形成されており、この一対のエアバッグドア20における互いの開放端部の間には、車両幅方向に延びる薄肉状のティアライン22が形成されている。
【0025】
そして、助手席用エアバッグ装置10は、より具体的には、この一対のエアバッグドア20が形成された上下方向中間部18に設けられている。つまり、この助手席用エアバッグ装置10は、上下方向中間部18に設けられたミッドマウント式の助手席用エアバッグ装置とされている。この助手席用エアバッグ装置10は、リテーナ24、ケース26、エアバッグ28、インフレータ30、及び、アクチュエータ32を備えている。
【0026】
リテーナ24は、一対のエアバッグドア20の裏側に設けられており、フランジ部34と、枠部36と、一対のドア補強部38と、一対のヒンジ部40とを有して構成されている。フランジ部34は、一対のエアバッグドア20の周囲に形成されており、インストルメントパネル12の裏面12Aに例えば溶着等により接合されている。
【0027】
枠部36は、フランジ部34の内側に沿って枠状に形成されると共に、このフランジ部34から車両前側且つ車両下側に向けて突出されている(つまり、枠部36の中心軸は、車両下側に向かうに従って車両前側に向かうように車両上下方向に対して傾斜されている)。この枠部36における前壁部36A及び後壁部36Bには、その厚さ方向に貫通する係止孔42,44がそれぞれ形成されている。
【0028】
一対のドア補強部38は、一対のエアバッグドア20の各々の裏面20Aに例えば溶着等により接合されている。また、この一対のドア補強部38は、それぞれ枠部36における前壁部36A及び後壁部36Bにヒンジ部40を介して連結されている。ヒンジ部40は、それぞれ車両前後方向に沿って切断した断面形状がV字状を成すように形成されている。
【0029】
ケース26は、一対のエアバッグドア20の裏側に配置され、枠部36の内側に収容されている。このケース26は、一対のエアバッグドア20と対向する底壁部46と、この底壁部46の周囲に形成された周壁部48とを有し、一対のエアバッグドア20側に開口する箱状に形成されている。
【0030】
底壁部46の前部には、車両下側に凹む断面半円状の凹部50が形成されている。この凹部50は、車両幅方向に延びており、底壁部46における車両幅方向の全体に亘って形成されている(図4も参照)。また、周壁部48の前壁部48Aには、車両前側に延びる係止片52が形成されており、周壁部48の後壁部48Bには、車両後側に延びる係止片54が形成されている。係止片52は、係止孔42に係止されており、係止片54は、係止孔44に係止されている。
【0031】
エアバッグ28は、後述するインフレータ30からガスの供給を受けることにより、一対のエアバッグドア20を押圧して開放し、インストルメントパネル12の表側に展開される。
【0032】
このエアバッグ28は、図2,図3に示されるように、展開状態にて車両幅方向両側に位置される一対の側方基布56,58と、この一対の側方基布56,58の各々の外周縁部を繋ぐ外周基布60とを有する袋状に形成されている。外周基布60のうちエアバッグ28の基端部28Aを構成する部分には、開口部62が形成されている。なお、側方基布56,58は、本発明における「エアバッグの展開状態における側壁部」に相当する。
【0033】
また、このエアバッグ28は、図1に示されるように、ケース26に折畳状態で収容されており、基端部28Aにおける開口部62(図2,図3参照)の周囲部は、底壁部46に固定されている。また、このエアバッグ28の展開状態における後部28B(助手席の乗員の上体を受け止める部分)は、図1に示される如く、車両幅方向を中心としてロール状に巻回されており、後述するインフレータ30の車両後側に収容されている。
【0034】
また、図2,図3に示されるように、このエアバッグ28を構成する一対の側方基布56,58のうち、車両幅方向内側の側方基布56には、チューブ状のチューブベント64が設けられている。このチューブベント64の内側に形成された孔部は、後述する如く、エアバッグ28の内部と外部とを連通するためのベントホール66とされている。
【0035】
また、このエアバッグ28は、細帯状のテザー68を有している。このテザー68の一端側68Aは、エアバッグ28の内部を通ってチューブベント64の先端部64Aに連結されている。一方、テザー68の他端側68Bには、輪部70が形成されている。このテザー68の他端側68Bは、上述の開口部62を通じて車両下側へ延びている。
【0036】
図4,図5に示されるように、インフレータ30は、シリンダ状に形成されて車両幅方向を軸方向として配置されている。このインフレータ30は、上述の凹部50に収容されることにより、その全体が底壁部46における車両前後方向の中央部46Aよりも車両前側にオフセットされている。また、このインフレータ30は、この凹部50に収容された状態で図示しないブラケット等により底壁部46に取り付けられており、上述のエアバッグ28の基端部28Aに形成された開口部62(図2,図3参照)の内側に配置されている。また、このインフレータ30は、信号線を介して制御ユニット(いずれも不図示)と接続されている。
【0037】
アクチュエータ32は、インフレータ30よりも車両後側において底壁部46に取り付けられている。このアクチュエータ32は、図4,図5に示されるように、より具体的には、底壁部46における車両幅方向両側の端部46B,46Cのうち上述のチューブベント64(図2,図3参照)と対応する側(つまり、車両幅方向内側)の端部46Bに配置されている。
【0038】
このアクチュエータ32は、図6に示されるように、アクチュエータ本体74と、ブラケット76と、コネクタ78と、ロッド80とを有している。アクチュエータ本体74は、車両前後方向を軸方向として配置されている。このアクチュエータ本体74は、底壁部46の車両下側に設けられており、その前部74Aを含む全体が底壁部46の下面46Dに当接している。
【0039】
ブラケット76は、アクチュエータ本体74の後部74Bと軸方向にオーバラップする長さ(つまり、オーバラップ長L)で構成されており、アクチュエータ本体74の後部74Bを底壁部46に固定している。コネクタ78は、アクチュエータ本体74の後部74Bに車両前後方向を挿抜方向として固定されており、信号線82を介して上述の図示しない制御ユニットに接続されている。
【0040】
ロッド80は、底壁部46に沿って車両前後方向に延びており、アクチュエータ本体74の前部74Aに設けられている。このロッド80は、図6の上図に示される如く、アクチュエータ本体74から車両前側に突出した突出位置から、図6の下図に示される如く、アクチュエータ本体74側に後退した後退位置に変位可能とされている。このロッド80の変位は、例えば、アクチュエータ本体74の内部で発生されたガスによって行われる。
【0041】
また、上述の底壁部46には、突出位置にあるロッド80の車両上側に貫通孔84が形成されており、上述のテザー68の他端側68Bは、車両上側から貫通孔84に挿通されている。また、輪部70は、上述の突出位置とされたロッド80に輪部70が係止されており、これにより、テザー68の他端側68Bは、ロッド80に保持されている。
【0042】
そして、このアクチュエータ32は、上述の図示しない制御ユニットから出力された信号に応じて、図6の上図に示されるように、ロッド80を突出位置に維持するか、又は、図6の下図に示されるように、ロッド80を突出位置から後退位置に変位させるように作動する。
【0043】
また、図6の上図に示されるように、ロッド80が突出位置に維持された状態では、ロッド80に輪部70が係止されることにより、テザー68の他端側68Bがロッド80に保持された状態に維持される。一方、図6の下図に示されるように、ロッド80が後退位置に変位された状態では、輪部70からロッド80が抜けて、テザー68の他端側68Bがロッド80から解放される。
【0044】
なお、ロッド80が突出位置に維持されたときのアクチュエータ32の作動状態が、本発明における「アクチュエータの第一作動状態」に相当し、ロッド80が後退位置に変位されたときのアクチュエータ32の作動状態が、本発明における「アクチュエータの第二作動状態」に相当する。また、アクチュエータ74の前部74Aは、本発明における「アクチュエータの軸方向一端部」に相当し、アクチュエータ74の後部74Bは、本発明における「アクチュエータの軸方向他端部」に相当する。また、ロッド80は、本発明における「保持部」に相当する。
【0045】
次に、本発明の一実施形態に係る助手席用エアバッグ装置10の動作について説明する。
【0046】
本発明の一実施形態に係る助手席用エアバッグ装置10では、車両が急減速状態になったことが加速度センサ等の検出器によって検出され、この検出器から出力された検出信号が制御ユニット(いずれも不図示)に入力されると、図1に示されるインフレータ30が作動される。インフレータ30が作動すると、インフレータ30から瞬時に多量のガスが発生する。
【0047】
このようにしてインフレータ30にて発生したガスは、エアバッグ28に供給され、これにより、エアバッグ28が膨張する。エアバッグ28は、膨張すると、インストルメントパネル12の裏側から一対のエアバッグドア20を押圧する。すると、ティアライン22に破断が生じ、各ヒンジ部40を支点として一対のエアバッグドア20が車両前側及び車両後側にそれぞれ回動される。
【0048】
これにより、インストルメントパネル12の上下方向中間部18に開口部が形成され、エアバッグ28は、この開口部を通じてインストルメントパネル12の表側、つまり、助手席の前方で展開される。この結果、この展開したエアバッグ28により助手席の乗員の上体が受け止められる。
【0049】
ここで、このようにエアバッグ28が展開される際に、例えば、助手席に設けられた荷重センサ等の検出器からの信号に基づき、図示しない制御ユニットにおいて、助手席に着座している乗員の体格が小さくないと判定されている場合には、図6の上図に示される如く、ロッド80が突出位置に維持される。これにより、ロッド80に輪部70が係止されることにより、テザー68の他端側68Bがロッド80に保持された状態に維持される。
【0050】
従って、この状態で、上述の如くエアバッグ28が膨張展開されると、図2に示される如く、テザー68を介してチューブベント64の先端部64Aがエアバッグ28の内側に引き込まれる。そして、エアバッグ28の内圧によりチューブベント64が潰されるので、ベントホール66が閉状態とされる。これにより、エアバッグ28が展開した状態でのエアバッグ28の内圧が維持され、比較的大柄の乗員の上体であっても、展開したエアバッグ28が効果的に受け止める。
【0051】
一方、上述の荷重センサ等の検出器からの信号に基づき、図示しない制御ユニットにおいて、助手席に着座している乗員の体格が小さいと判定されている場合には、この制御ユニットからアクチュエータ32に作動信号が出力される。そして、例えば、アクチュエータ本体74の内部でガスが発生され、図6の下図に示される如く、このガスによりロッド80が突出位置から後退位置に変位される。これにより、輪部70からロッド80が抜けて、テザー68の他端側68Bがロッド80から解放される。
【0052】
従って、この状態で、上述の如くエアバッグ28が膨張展開されると、図3に示される如く、エアバッグ28の内圧によりチューブベント64が漸次反転しながらエアバッグ28の外側に押し出される。そして、チューブベント64がエアバッグ28の外側に突出されて、ベントホール66が開状態とされる。これにより、エアバッグ28の内部のガスがベントホール66を通じて放出されることで、エアバッグ28の内圧が低減され、比較的小柄の乗員に対するエアバッグ28からの衝撃が低減される。
【0053】
次に、本発明の一実施形態に係る助手席用エアバッグ装置10の作用及び効果について説明する。
【0054】
本発明の一実施形態に係る助手席用エアバッグ装置10によれば、図4,図5に示されるように、インフレータ30は、シリンダ状に形成されており、車両幅方向を軸方向として配置されている。また、このインフレータ30は、その全体がケース26に形成された底壁部46における車両前後方向の中央部46Aよりも車両前側にオフセットされた状態で、この底壁部46に取り付けられている。一方、アクチュエータ32は、インフレータ30よりも車両後側において底壁部46に取り付けられている。従って、インフレータ30及びアクチュエータ32が車両前後方向にずれて配置されているので、助手席用エアバッグ装置10を車両上下方向に小型化でき、インストルメントパネル12へ容易に搭載することができる。
【0055】
特に、図1に示される如く、搭載スペースの少ない上下方向中間部18であっても、この助手席用エアバッグ装置10を容易に搭載することができる。
【0056】
また、アクチュエータ32は、図4,図5に示されるように、底壁部46における車両幅方向両側の端部46B,46Cのうちチューブベント64(図2,図3参照)と対応する側の端部46Bに配置されている。これにより、テザー68の長さを短縮することができると共に、ベントホール66の開閉を迅速に行うことが可能となる。
【0057】
また、チューブベント64は、図3に示されるように、エアバッグ28の展開状態における車両幅方向内側(つまり、運転席側であって、車室の側面部と反対側)の側方基布56に設けられている。従って、エアバッグ28の展開時にテザー68の他端側68Bが解放されてチューブベント64がエアバッグ28の側方基布56から外側に突出された場合でも、このチューブベント64が例えばサイドウィンドウガラスやフロントピラーなどの車室の側面部と干渉することを回避することができる。
【0058】
また、図6に示されるように、テザー68の他端側68Bを保持するロッド80は、アクチュエータ本体74の前部74Aに設けられている。従って、エアバッグ28の展開時にテザー68を介してチューブベント64の先端部64Aが引き込まれたときには、アクチュエータ本体74の前部74Aに対して車両上側に荷重Fが作用する。
【0059】
ところが、このアクチュエータ本体74における前部74Aを含む全体は、底壁部46の下面46Dに当接されている。従って、アクチュエータ本体74の前部74Aを底壁部46に固定する必要が無く、アクチュエータ本体74の後部74Bを底壁部46に固定すれば足りるので、ブラケット76を小型化することができる。また、ブラケット76を小型化することにより、助手席用エアバッグ装置10を軽量化及び低コスト化することができる。
【0060】
また、コネクタ78は、車両前後方向を軸方向として配置されたアクチュエータ本体74の後部74Bに車両前後方向を挿抜方向として固定されている。従って、コネクタ78をケース26の後端部により近い位置で挿抜することができるので、コネクタ78の挿抜時の作業性を向上させることができる。
【0061】
次に、本発明の一実施形態に係る助手席用エアバッグ装置10の変形例について説明する。
【0062】
上述の本発明の一実施形態において、インフレータ30は、図1に示されるように、底壁部46における車両前後方向の中央部46Aに対する車両前側へのオフセット量が確保されることにより、その全体が底壁部46の中央部46Aよりも車両前側にオフセットされていた。しかしながら、インフレータ30は、その軸心部30Aが底壁部46の中央部46Aよりも車両前側にオフセットされていれば、その後端部30Bが底壁部46の中央部46Aよりも車両後側に位置されていても良い。
【0063】
また、図6に示されるように、アクチュエータ本体74は、その前部74Aを含む全体が底壁部46の下面46Dに当接されていたが、アクチュエータ本体74の前部74Aのみが底壁部46の下面46Dに当接されていても良い。
【0064】
また、図5に示されるように、アクチュエータ本体74は、車両前後方向を軸方向として配置されていたが、次のように配置されていても良い。
【0065】
すなわち、図7に示される変形例において、アクチュエータ本体74は、車両幅方向を軸方向として配置されている。また、テザー68の他端側68Bを保持するロッド80は、アクチュエータ本体74における軸方向両側の端部のうち上述のチューブベント64(図2,図3参照)と対応する側(車両幅方向内側)の端部に設けられている。
【0066】
このように構成されていると、テザー68の長さをより一層短縮することができると共に、ベントホール66の開閉をより一層迅速に行うことが可能となる。
【0067】
また、図8に示される変形例において、アクチュエータ本体74は、車両幅方向を軸方向として配置されており、コネクタ78は、アクチュエータ本体74における車両幅方向内側(車両幅方向一方側)の端部に車両幅方向を挿抜方向として固定されている。
【0068】
このように構成されていると、コネクタ78をケース26の側端部により近い位置で挿抜することができるので、コネクタ78の挿抜時の作業性を向上させることができる。また、コネクタ78の挿抜時にコネクタ78が車室の側面部と干渉することを回避することができるので、コネクタ78の挿抜時の作業性を向上させることができる。
【0069】
また、図6に示されるように、アクチュエータ32は、テザー68の他端側68Bに形成された輪部70と係止されたロッド80を有する構成とされていたが、次のように構成されていても良い。
【0070】
つまり、図9に示される変形例において、アクチュエータ32は、車両上下方向に延びるアクチュエータ本体174と、このアクチュエータ本体174に内蔵されたカッタ186とを有している。
【0071】
アクチュエータ本体174の前部174Aには、車両上下方向に貫通し貫通孔84と連通する保持孔180が形成されている。一方、テザー68の他端側68Bは、車両上側から貫通孔84及び保持孔180に挿通されており、このテザー68の他端側68Bの先端部には、片結びによる結び目170が形成されている。この結び目170は、保持孔180よりも大径とされており、これにより、テザー68の他端側68Bは、保持孔180に抜止された状態で保持されている。
【0072】
カッタ186は、図9の上図に示される如く、保持孔180よりも車両後側の退避位置から、図9の下図に示される如く、先端が保持孔180を通過してテザー68の他端側68Bを切断する切断位置に変位可能とされている。このカッタ186の変位は、例えば、アクチュエータ本体174の内部で発生されたガスによって行われる。
【0073】
そして、このアクチュエータ32は、上述の図示しない制御ユニットから出力された信号に応じて、図9の上図に示されるように、カッタ186を退避位置に維持するか、又は、図9の下図に示されるように、カッタ186を退避位置から切断位置に変位させるように作動する。
【0074】
また、図9の上図に示されるように、カッタ186が退避位置に維持された状態では、テザー68の他端側68Bが保持孔180に保持された状態に維持される。一方、図9の下図に示されるように、カッタ186が切断位置に変位された状態では、テザー68の他端側68Bがカッタ186により切断されて保持孔180から解放される。
【0075】
なお、カッタ186が退避位置に維持されたときのアクチュエータ32の作動状態が、本発明における「アクチュエータの第一作動状態」に相当し、カッタ186が切断位置に変位されたときのアクチュエータ32の作動状態が、本発明における「アクチュエータの第二作動状態」に相当する。また、保持孔180は、本発明における「保持部」に相当する。
【0076】
このように構成されていても、上述の本発明の一実施形態と同様に、ベントホール66を開閉することができる。
【0077】
なお、この図9に示される変形例においても、上述のアクチュエータ本体74(図6参照)と同様に、アクチュエータ本体174は、底壁部46の車両下側に設けられ、少なくとも前部174A(軸方向一端部)が底壁部46の下面46Dに当接されている。また、アクチュエータ本体174の後部174B(軸方向他端部)は、ブラケット76により底壁部46に固定されており、コネクタ78は、アクチュエータ本体174の後部174Bに車両前後方向を挿抜方向として固定されている。
【0078】
また、図9に示されるアクチュエータ32を用いた上で、このアクチュエータ32が図7,図8に示される如く配置されても良い。
【0079】
また、図2,図3に示されるように、エアバッグ28は、一対の側方基布56,58と、外周基布60とを有する構成とされていたが、これ以外の基布により構成されていても良い。
【0080】
また、上述の助手席用エアバッグ装置10は、左ハンドル車用のインストルメントパネル12に適用されていたが、右ハンドル車用のインストルメントパネルに適用されていても良い。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
10 助手席用エアバッグ装置
12 インストルメントパネル
20 エアバッグドア
26 ケース
28 エアバッグ
30 インフレータ
30A 軸心部
32 アクチュエータ
46 底壁部
46A 車両前後方向の中央部
46B,46C 車両幅方向両側の端部
46D 下面
56,58 側方基布(側壁部)
64 チューブベント
64A 先端部
66 ベントホール
68 テザー
68A 一端側
68B 他端側
74,174 アクチュエータ本体
74A,174A 前部(軸方向一端部)
74B,174B 後部(軸方向他端部)
76 ブラケット
78 コネクタ
80 ロッド(保持部)
180 保持孔(保持部)
186 カッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルにおける助手席の前方部位に設けられたエアバッグドアの裏側に配置されると共に、前記エアバッグドアと対向する底壁部を有し前記エアバッグドア側に開口する箱状に形成されたケースと、
前記ケースに折畳状態で収容されたエアバッグと、
前記エアバッグに設けられ、前記エアバッグの内部と外部とを連通するためのベントホールを形成するチューブ状のチューブベントと、
一端側が前記エアバッグの内部を通って前記チューブベントの先端部に連結されたテザーと、
シリンダ状に形成されて車両幅方向を軸方向として配置されると共に、軸心部が前記底壁部における車両前後方向の中央部よりも車両前側にオフセットされた状態で前記底壁部に取り付けられ、前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
前記テザーの他端側を保持し前記エアバッグの展開時に前記テザーを介して前記チューブベントの先端部を前記エアバッグの内側に引き込んで前記ベントホールを閉状態とする第一作動状態と、前記テザーの他端側を解放して前記エアバッグの展開時に前記チューブベントを前記エアバッグの外側に突出させて前記ベントホールを開状態とする第二作動状態とを取り得ると共に、前記インフレータよりも車両後側において前記底壁部に取り付けられたアクチュエータと、
を備えた助手席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記チューブベントは、前記エアバッグの展開状態における側壁部に設けられ、
前記アクチュエータは、前記底壁部における車両幅方向両側の端部のうち前記チューブベントと対応する側の端部に配置されている、
請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、
前記底壁部の車両下側に設けられ、少なくとも軸方向一端部が前記底壁部の下面に当接するアクチュエータ本体と、
前記アクチュエータ本体の軸方向一端部に設けられた保持部と、
前記アクチュエータ本体の軸方向他端部を前記底壁部に固定するブラケットと、
を有し、
前記テザーの他端側は、前記保持部の車両上側から前記底壁部を貫通して前記保持部に保持されている、
請求項1又は請求項2に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、
車両前後方向を軸方向として配置され、前記底壁部に固定されたアクチュエータ本体と、
前記アクチュエータ本体の後部に車両前後方向を挿抜方向として固定されたコネクタと、
を有している、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記チューブベントは、前記エアバッグの展開状態における側壁部に設けられ、
前記アクチュエータは、
車両幅方向を軸方向として配置され、前記底壁部に固定されたアクチュエータ本体と、
前記アクチュエータ本体における軸方向両側の端部のうち前記チューブベントと対応する側の端部に設けられ、前記テザーの他端側を保持する保持部と、
を有している、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、
前記底壁部における車両幅方向一方側の端部に配置され、前記底壁部に固定されたアクチュエータ本体と、
前記アクチュエータ本体における車両幅方向一方側の端部に車両幅方向を挿抜方向として固定されたコネクタと、
を有している、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項7】
前記チューブベントは、前記エアバッグの展開状態における車両幅方向内側の側壁部に設けられている、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の助手席用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−49322(P2013−49322A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187642(P2011−187642)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】