説明

動作を特徴付ける装置と方法

本発明は、物体(特に、少なくとも1つの加速度計を備えた人間の一肢)により行なわれる動作を特徴付ける装置と方法を提案する。本発明は、人間のステップの方向、線、長さを決定するのに特に有用である。本発明は、センサから出力される信号と閾値とを比較することにより、前記一肢の持ち上げと着地とを識別することによりステップを分割し、歩行面にほぼ平行な2つの軸に沿った信号の値の最大値を比較することによりステップの方向と線を決定し、ステップの方向に従って信号を二重積分することによりステップの長さを計算できるようにする、センサからの信号を処理するアルゴリズムを使用する。本発明はまた、上記ステップのものと同様な傾向特性を有する手の動作に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動作捕獲(motion capture)の分野に適用する。より具体的には、本発明は、ゲームまたは訓練目的のために人間がダンス、歩行、または走行を行うことにより実行されるステップの検出を対象とする。
【背景技術】
【0002】
本発明の典型的アプリケーションは、ゲームセンター内であるいは操作卓またはPCにより行われるゲーム「Dance Dance Revolution」(DDR)である。このゲームの現在の実施形態では、プレーヤは画面上に指示される一連のダンスステップを実行しなければならず、一連のステップは音楽により歩調合せされる。プレーヤは、長方形または正方形に整列配置されかつその数が4〜6個またはさらには9個であり得る可変のセルを含む軟性または硬性マット上に立つ。各セルはプレーヤの存在を検出する装置を備える。ダンスステップ順序に関係する設定点は、プレーヤが動かなければならない方向のセルを指示する矢印により与えられてもよい。こうしてシステムは、実行された順序と理想的順序とを比較しプレーヤに得点を割り当てることができる。しかしながらこの実施形態は、検出マットを必要とし、このマットは硬いとかさばりかつ高価となり、軟らかいと壊れやすく不正確になるという欠点を呈する。さらにマットは有り得る動作の到達範囲を制限する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
これらの欠点を是正するために、本発明では、マットの存在検出器をなくして、プレーヤの少なくとも一方の足の上に装着された動作捕獲装置に替え、この装置は仮想マット(必要とされる程度でよいセルの大きさおよび/または数を有する)または実際のマットのセルに対するプレーヤの位置を計測器無しでも検出できるようにする処理能力を備える。
【0004】
この目的を達成するために、本発明は物体の動作を特徴付ける装置を提供する。本装置は、物体に固定された少なくとも1つの加速度計と、計算モジュールとを含み、計算モジュールは動作を第1の位置と第2の位置の間の個々の動作に分割する少なくとも1つの機能と、個々の動作毎に、物体に関連付けられた少なくとも1つの軸に対する個々の動作の移動の方向と線を決定する少なくとも1つの機能とを実行するために少なくとも1つの加速度計の出力を使用することができる。
【0005】
有利には、第1と第2の位置は物体が実質的に不動の時点あるいは衝撃により影響を受けた時点に対応する。
【0006】
有利には、計算モジュールはまた、動作方向の個々の動作の長さを計算する少なくとも1つの機能を実行することができる。
【0007】
有利には、物体は人間の足または手である。
【0008】
有利には、計算モジュールはまた、予め記録された動作の順序に対する物体の動作の整合性を評価する機能を実行することができる。
【0009】
有利には、計算モジュールはまた、計算モジュールに接続されたディスプレイ上に実際の動作中の物体を表す仮想物体の移動を制御する機能を実行することができ、その移動は動作に論理的かつ定量的に対応する。
【0010】
有利には、本発明の装置はまた、物体に固定された少なくとも1つの磁力計を含み、計算モジュールはまた、少なくとも1つの面内の物体の配向を決定する機能を実行するために少なくとも1つの加速度計のおよび少なくとも1つの磁力計の出力を使用することができる。
【0011】
装置を動作させるために、本発明はまた、物体に固定された少なくとも1つの加速度計からの出力信号を捕捉する少なくとも1つの工程と、プロセッサによる計算工程と、を含む物体の動作を特徴付ける方法を提供する。ここでは、計算工程中、少なくとも1つの加速度計からの出力信号を捕捉する工程からの出力は、動作を第1の位置と第2の位置の間の個々の動作に分割する少なくとも1つの機能と、個々の動作毎に、物体に関連付けられた少なくとも1つの軸に対する個々の動作の移動の方向と線を決定する少なくとも1つの機能と、を実行するために使用される。
【0012】
有利には、計算工程中、動作方向の個々の動作の長さを計算する少なくとも1つの機能も実行される。
【0013】
有利には、計算工程はまた、物体上の加速度計の仰角が20°より実質的に大きい場合、加速度計からの出力信号を捕捉する工程からの測定出力を較正する工程を含む。
【0014】
有利には、個々の動作分割機能は、加速度計の少なくとも1つの軸から出力される測定結果の平均値を中心に置く工程を含む。
【0015】
有利には、個々の動作分割機能はまた、中心に置かれた測定結果の少なくとも1つの移動平均の計算に基づくフィルタリング工程を含む。
【0016】
有利には、個々の動作分割機能は、加速度計から出力された少なくとも1つの測定値または計算値のノルムを計算し、次にノルムと所定の閾値とを比較して個々の動作の開始と終了をそこから導き出す工程を含む。
【0017】
有利には、個々の動作分割機能は所定値より大きな時間枠を越える測定結果だけを処理する。
【0018】
有利には、個々の動作分割機能は、個々の動作の開始に続く第1の選択された時限の終わりに始まり個々の動作の終了に先行する第2の選択された時限の始めに終了する測定結果だけを処理する。
【0019】
有利には、個々の動作の方向を決定する機能は、個々の動作分割機能の出力において決定された信号サンプル上の個々の動作の面にほぼ平行な2つの軸のそれぞれに沿った測定結果の積分の絶対値の最大値を計算する工程と、軸の一方に沿った最大値と他方の軸上の最大値とを比較する工程であって、個々の動作の方向が最大値の軸のものとして決定される工程と、を含む。
【0020】
有利には、個々の動作の方向を決定する機能は、個々の動作分割機能の出力において決定された信号サンプル上の個々の動作の面にほぼ平行な2つの軸のそれぞれに沿った測定結果の積分の絶対値の最大値を計算する工程と、2つの軸に沿った最大値の比を計算する工程であって、個々の動作の方向は、その最大値が比の分母である軸とその正接が比に等しい角度をなすように決定される工程と、を含む。
【0021】
有利には、個々の動作の線を決定する機能は、個々の動作の方向を決定する工程の出力において、2つの軸に沿った最大値の符号であって所定方向における個々の動作の線を決定する符号を決定する工程を含む。
【0022】
有利には、個々の動作の長さを計算する機能は、個々の動作の方向と線を決定する機能の出力において決定された個々の動作の方向に沿って測定結果の絶対値を二重積分する工程を含む。
【0023】
本発明はまた、物体の動作を評価するシステムであって、物体により実行される基準動作のマスタシナリオと、物体の基準動作の制御インタフェースと、物体に固定された少なくとも1つの第1の均一磁場センサと、第1のセンサの出力から実行することができる計算モジュールと、動作を第1の位置と第2の位置の間の個々の動作に分割する少なくとも1つの機能と、個々の動作毎に、物体に関連付けられた少なくとも1つの軸に対する個々の動作であって基準動作に応じて実行される動作の移動の方向と線を決定する少なくとも1つの機能と、を含むシステムを開示する。
【0024】
本発明の装置は、ますます低価格になりそのため製造コストが低くなっているMEMSを使用する。本発明の装置はかさばらなく軽量である。本発明の装置は、他のアプリケーション(例えば、準静的散策または歩行シミュレーションゲーム等のプレーヤの足の移動方向と配向を検出することも必要な他のゲームまたは訓練システム)に使用することができるという利点がある。同装置は、手の上に装着され、音楽を演奏するために使用される手の垂直および水平動作を検出するために、あるいは装着者の筆跡をも認識するために使用することができる。特に訓練のために、具体的には下肢と上肢の運動の整合が学習プロセスの基本要素であるスポーツまたはゲームのために、上肢と下肢の運動順序と予め記録された理想運動順序とを比較できるようにする本発明の装置の組み合わせもまた片方または両方の上肢と片方または両方の下肢上に装着することができる。そのため本発明はその多用性により、DDRゲームから派生する分野にそのアプリケーションを限定しない著しい利点を提供する。
【0025】
本発明は多くの例示的実施形態の以下の説明と添付図面からさらに良く理解され、その様々な特徴部と利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1a−1b】多くの実施形態における本発明による装置の配置の例を表す。
【図2a−2b】実施形態の1つにおける本発明を実施するセンサと処理装置の例を表す。
【図3a−3c】実施形態の1つにおける本発明の装置により検出される上から見た3つのタイプのダンサーステップを表す。
【図4】実施形態の1つにおける本発明の装置により検出される側面図で表された同じ3つのタイプのダンサーステップを表す。
【図5】実施形態の1つにおける本発明の装置により行なわれる処理演算のフロー図である。
【図6a−6f】実施形態の1つにおける本発明の装置により検出される歩行者の靴の6つの異なる位置に対応する歩行者の6つのタイプの移動を表す。
【図7】図6a〜6fの移動を検出するために実行される処理演算を簡略的に表す。
【図8】装置が手に装着された本発明の実施形態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1a〜1bは、多くの実施形態における本発明による装置の配置の例を表す。
【0028】
従来技術のDDR装置の実施形態とは異なり、プレーヤは足下の搭載マット無しに動き回ることができる。図1aでは、プレーヤは下肢のそれぞれに(好ましくは靴に)センサを装着する。センサは靴底に組み込まれるか、あるいは靴の上部に弾性腕輪により固定されるか、あるいは可能性として弾性腕輪により足首のそれぞれに固定されてもよい。使用可能なセンサのタイプは図2a内の注記として示される。センサが固定される場所に依存して、図5の注記に説明するように較正が必要または有用かもしれない。同一の装置は、DDR以外のゲーム、特に歩行シミュレーションゲーム、楽器(例えば、打楽器)を使用するゲームを行うために使用することができる。
【0029】
すべての場合、動作捕獲装置はプレーヤから離れた計算装置に接続されゲーム制御装置と表示装置に接続される。例えば図1bに表す他のゲームシナリオでは、プレーヤは一方または両方の手の上に動作捕獲装置を装着することができ、その手の動作はガイドシナリオと比較するために、あるいは計算モジュールに接続されたシステムに対する命令を生成するために解析される。
【0030】
図2a〜2bは、実施形態の1つにおける本発明を実施するセンサと処理装置の例を表す。
【0031】
DDRタイプシナリオまたは他のゲームシナリオでは、プレーヤは司法上選択される位置(靴、くるぶし、手首等の下またはその上)にMotionPod(商標)である図2aに代表されるタイプの装置200を装着することになる。但し、このタイプの装置により提示されるすべての可能性が本発明との関連で想定された実施形態において十分に活用されるとは限らない。それ自体従来技術装置であるMotionPodは加速度計210と磁力計230を含む。2つのセンサは3軸センサである。単軸または2軸加速度計は、いくつかのアプリケーション(ダンスステップを行うために設けられたすべてのセルが単一方向に位置するDDR)の場合十分と考えられる。この場合、1つの軸が移動を検出するために使用され第2の可能な軸が運動の開始を検出するために使用される。但し大抵の場合、移動方向を決定するためには3軸加速度計が必要になる。磁力計は、図6cの注記に見られるように、特に足の配向(ヨーとピッチ)を決定するために加速度計と組み合わせて使用される。ヨー測定結果を提供する加速度計を越える利点を提供する磁力計の他の用途もまた可能である。MotionPodはまた、センサからの信号を事前フォーマット化できるようにする前処理能力と、信号の処理モジュール自体への送信のための高周波送信モジュールと、バッテリーと、を含む。この運動センサは「3A3M」(3つの加速度計軸と3つの磁力計軸:three accelerometer axes and three magnetometer axes)と呼ばれる。加速度計と磁力計は、かさばらなく低消費電力で低コストの市場標準マイクロセンサ、例えばKionix(商標)社の3チャネル加速度計(KXPA4 3628)、HMC1041Zタイプ(1つの垂直チャンネル)と2つの水平チャネルのHMC1042LタイプのHoneywell(商標)磁力計である。他のサプライヤがあり、2〜3の例を挙げると、磁力計についてはMemsic(商標)またはAsahi Kasei(商標)、加速度計についてはSTM(商標)、Freescale(商標)、Analog Device(商標)が挙げられる。MotionPodでは、6つの信号チャネルに対し、1つのアナログフィルタ処理段だけが存在し、アナログディジタル変換(12ビット)後、未加工信号はこの種のアプリケーションにおける消費電力が最適化されたBluetooth(商標)帯(2.4GHz)における高周波プロトコルにより送信される。そのためデータは、図2bの計算モジュール220に接続された制御装置において未加工で到達する。この制御装置は、それぞれが靴の1つに配置された一組のセンサ(例えば、2つのセンサ)からデータを受信してもよい。データは制御装置により読み取られ、ソフトウェアが利用できるようにされる。サンプリングレートは調整可能であり、初期設定では200Hzに設定される。それにもかかわらず、例えば衝撃の検出時の高精度を可能にする高い値(最大3000Hz、あるいはそれ以上)を想定することができる。
【0032】
本発明を実施可能にし、図5の注記として示される処理演算は、市場標準のPC、ゲーム機、またはゲームセンタータイプコンピュータシステムの中央処理装置上に存在してよい計算モジュール220上に配置される。計算モジュールのディスプレイは、適切な場合はプレーヤがモデルのものと比較して自分の分身像(avatar)の動作に追随するように、かついかなる場合にも自分のパフォーマンスレベルが通知されるように、ゲームシナリオを実行するプレーヤに与えられる設定点をプレーヤが見られるようにする。
【0033】
図3a〜3cは、実施形態の1つにおける本発明の装置により検出される上から見た3つのタイプのダンサーステップを表す。
【0034】
3つの図3a、3b、3cに示すように、DDRゲームの基本的なシナリオはダンサーによる前方(3a)、側方(3b)、後方(3c)へのステップに依存する。正方形に配置された9個のセルを有する仮想ダンスマット上で、ここでは表されない対角線ステップを想定することも可能である。セルの形状またはその大きさを変えることによりセルの数を増加させることにより利用可能グラウンド領域全体までマットを拡大することを想定することも可能である。
【0035】
図3aに表されるように、左足は、持ち上げられることにより、最初に置かれた位置310aを離れ再度降下され位置320aに達する。軌道310a、320aは飛行段階のステップの足特徴を表す。弧線330aはステップの方向を表す(この場合は、前方線)。矢印340aは同方向のステップの線を表す。量350aは足の昇降間のステップの長さを表す。
【0036】
従来技術のDDR装置では、足320aの新しい位置の下に配置されたセンサ上のプレーヤの圧力が、マットのセルの1つの上に足が置かれた瞬間にステップの長さを突きとめ、したがってなされたステップを導き出せるようにする。一方、3つの図3a、3b、3cにより示唆されるように本発明によるダンスゲーム装置では、足の持ち上げおよび/またはその配置を検出することにより、および移動の方向、線、長さを決定することによりプレーヤの足に装着されたセンサが足の軌道を追跡できるようにする。
【0037】
図4は、実施形態の1つにおける本発明の装置により検出される側面図で表された同じ3つのタイプのダンサーステップを表す。
【0038】
図4は、ステップの開始と終了を決定するプレーヤの足の持ち上げと降下を分解する。これらは同図の3つの場合における加速度計210により検出可能な2つの時点であり、他の場合も同様である。これら2つの時点は実際は、本明細書内で以下に説明される本発明による処理演算により分離される加速度計の読み取りにおける不連続点の瞬間である。この処理は、動作を分割ししたがってステップを決定するために使用される。
【0039】
図5は、実施形態の1つにおける本発明の装置により行なわれる処理演算のフロー図である。
【0040】
センサは靴上では任意の配向状態でよいが、特に加速度計の座標系が水平面と20°より実質的に大きな角度をなす場合、処理演算における計算工程に先立って較正工程を含むことが必要かもしれない。例示的な較正は、同じ出願人に属する欧州特許第1985233号明細書に解剖学的較正またはモジュール較正(このとき、モジュールは靴である)として記載される。20°未満では、この処理はこの配向欠陥に対し頑強である。20°以上では、較正工程は、靴上のセンサの配向を読み取り、靴に関連付けられた方向の仮想軸に切り替えることができるようにする。以下の工程では、測定結果は、垂直軸に沿って、前方向の水平軸に沿って(靴の踵からつま先に)、および踵−つま先軸に垂直な別の水平軸であって靴を履いた人の左方向の別の水平軸に沿って、入手可能である。
【0041】
このときステップを決定する工程は、
− ステップを分割する工程と、
− ステップの方向と線を決定する工程と、
− 必要に応じてステップの長さを決定する工程と、
を含む。
【0042】
1.ステップ分割
図4に示すように、最初の工程は足の昇降または単に降下の瞬間を決定する工程である。アプリケーションシナリオに従って、加速度計の1つの軸だけ、2つの軸、または3つの軸からの測定結果を使用することができる。これらの測定結果は、計算の工程に依存して絶対値として未加工形式で、可能性としてそれらのドリフトと共に使用される。第1の実施形態では、着地(降下)に関連する衝撃だけが分割に使用される。次に、方向検出計算は過去の衝撃(直前の衝撃まで)に対し実行される。
【0043】
加速度計210からの出力として受信されたデータA、A、Aの少なくとも1つが計算モジュール220により処理される。
【0044】
足の降下工程が加速ノルムに基づく衝撃検出の対象であり、1つの軸(例えば垂直軸A)上の加速度測定結果の絶対値またはノルムが設定により決定された閾値を越えると衝撃が検出される。2つの衝撃の間、信号は保存され、SA、SA、SAと呼ばれる一系列の値A、A、Aが得られる。
【0045】
この実施形態の変形では、偽りの跳ね返り発生を回避するために、運動を行なう最小時間に対応する多くの測定結果を有する、一連の値(2つの衝撃間の)だけを処理することが可能である。同様に、並進(translation)の検出を改善するために提供される補足的変形では、衝撃の開始と終了の信号の一部は、並進の測定結果ではなく、足/地面衝撃の測定結果を含むことがあるので可能性として除去されてもよい。第2の実施形態では、ステップを分割するために閾値化により足の離着陸を検知することも可能である。
【0046】
この実施形態では、1つ、2つ、または3つの軸に沿った加速の組み合わせとこれらの値のドリフトとが使用され、設定により決定された閾値と比較される。この組み合わせが十分に長い継続時間の間閾値を越えると、ステップの開始が検出される。十分に長い継続時間の間閾値を下回ると、ステップの終了が検出される。
【0047】
この実施形態の変形では、値の低域フィルタリングが、その継続時間もまた設定により決定される移動時間窓(sliding time window)にわたって実行される。
【0048】
この工程の終わりに、ステップを含む開始と終了により境界が定められる時間窓が利用可能である。
【0049】
2.ステップの方向と線の検出
先の工程の2つの実施形態では、手順は同じである。最初にSAとSAは、センサの固有加速(specific acceleration)を発見するためにSAとSAからそれぞれの平均値を除去する。
【0050】
//平均を除去するためのコードの例
avg=0;
for(int i=0;i<SA.size();i++) avg+=SA(i);
avg=avg/SA.size();
for(int i=0;i<SA.size();i++)
SA(i)−=avg;
【0051】
実際には、測定された加速はセンサの固有加速に加算される重力の加速度を含む。センサの純粋並進(回転の無い)の場合、重力の加速度の寄与は一定である。さらに、速度は出発および到着時に零であるので固有加速は2つの衝撃間で零の平均値を有する。そのため、
【0052】
任意の瞬間において:A(i)=AXP(i)+Axg(i)
ここで、AXP=固有加速、AxG=重力による加速度、A=加速、integは時間窓全体にわたる積分を表す。
【0053】
このとき、integ(A)=integ(AXP)+integ(AXG
【0054】
そのため、intake(AXP)=0(物体は速度が0である2点間で移動されるので、降下に先行する減速度は上昇に続く加速を厳密に相殺しなければならない)ので、intake(A)=intake(AXG
【0055】
回転が無い(単純ステップ仮定)場合、AXGは一定であり、次のように書くことができる。iにかかわらず、integ(AXG)=avg(AXGnbpoints)=AXG(i)nbpoints。次式が得られる。AXG(i)=avg(AXG
【0056】
ここから次式が導き出される。AXP(i)=A(i)−AXG(i)=A(i)−avg(AXG
【0057】
次に残るのは、瞬時速度(依然として回転の無いことを仮定する)を発見するためにAXPを0からiまで積分することだけである。
【0058】
このため、累積和はSAとSAに対して計算され、センサのVAとVAの瞬時速度を与える。
【0059】
//SAとSAのコードの例
VA(0)=SA(0);
for(int i=1;i<SA.size();i++)
VA(i)=VA(i−1)+SA(i);
【0060】
次に、VAの最大値が、Max_VAで表される絶対値として求められる。
【0061】
//コードの例
Max_VA=VA(0)
for(int i=1;i<SA.size();i++)
if(abs(Max_VA)<abs(SA(i))
Max_VA=SA(i);
【0062】
同じ手順は次にVAに対して適用され、絶対値としてのVAの最大値はMax_VAで表される。コードの例は、VAに対し与えられたものから容易に変形可能である。
【0063】
次に、並進方向(ステップの方向)がMax_VAとMax_VAの最大値に関連するものであると判断される。
【0064】
次に各方向のピッチの線はMax_VAとMax_VAの符号により決定される。
【0065】
//ステップの線を決定するためのコードの例
if(abs(Max_VA)>abs(Max_VA))

if(Max_VA>0)line=0(X軸の正の線);
else line=1(X軸の負の線);

else

if(Max_VA>0) line=2(Y軸の正の線);
else line=3(Y軸の負の線);

【0066】
有利な変形実施形態では、ステップの対角線方向を決定するために2系列のVA、VAまたは2つの値Max_VA、Max_VAを使用することが可能である。第1の場合(系列を処理する)では、ステップの方向を与える2つの系列間の相関直線を発見するために主構成要素分析(main components analysis)を行うことが可能である。第2の場合、2つの最大値の比を計算することが可能である。第一近似では、比Max_VA/Max_VAは、X軸とステップの方向の角度θの正接である。次に、ステップの線を、上記とほぼ同じやり方で決定することができる。この場合、線は、X、Yの両方の上で決定され(例えば、X軸上で正かつY軸上で負)、角度方向は与えられるが、分類はなされない(セル内ではなされない)。θが計算されると、それがXに沿った、Yに沿った、またはXY(対角線)に沿った移動かどうかを判断することが可能であり、三角法円(trigonometrical circle)は各方向を囲む部分に分割され得る。if θ<π/8 and θ>−π/8 then it is X;if θ>π/8 and θ<3π/8 then it is XY;if θ>3π/8 and θ<5π/8 then it is Y.
【0067】
第3の変形では、Max_VAとMax_VAに直接働きかけることが可能である。If |Max_VA|>s|Max_VA| then it is X,|Max_VA|>s|Max_VA| then it is Y;if |Max_VA|<s|Max_VA| with |Max_VA|<s|Max_VA| then it is XY.
【0068】
別の変形実施形態では、任意の時点Xa、Xaの位置を与えるVa,Vaを積分することが可能であり、このとき、選択された並進軸は最大の移動を有する軸である(先の説明では、Va、Vaは移動Xa、Xaで置換される)。
【0069】
同様に、Va(とVa)をSa(とSa)で置換することが可能であり、|Sa|(と|Sa|)の累積和は、cumsum(|Sa|)(と cumsum(|Sa|))である。
【0070】
これらの3つの場合、Max_VaはMax_XaまたはMax_Saまたは、Max(cumsum(|Sa|))で置換され、Max_VaはMax_XaまたはMax_SaまたはMax(cumsum(|Sa|))で置換される。
【0071】
3.ステップの長さの随意的計算
方向が決定されると、本発明の装置と方法を使用したDDRゲームの場合、距離を計算し、足が到達する仮想セルを選択するために二重積分をこの方向に実行する。
【0072】
図5の処理演算は、DDRゲームの例示的実施形態において説明されたが、少なくとも1つの加速度計が設けられたセンサの移動の方向、線、長さを決定することが必要な任意の状況においても使用可能である。この処理演算は、センサを装着した物体の動作をセグメント(動作が、物体の速度がほぼ零である比較的短い休止時間を取り込む瞬間により分離されたセグメント、あるいは動作が、測定可能衝撃を取り込む瞬間により分離されたセグメント)に分解可能なすべての場合に特に有利になる。実際には、ステップの検出では、衝撃を検出することによりステップ間を分割するか、あるいは不動の期間または動作の期間を区別することにより分割するかのいずれかが可能であり、このときステップは2つの不動期間の間の動作である。
【0073】
図6a〜6fは、実施形態の1つにおける本発明の装置により検出される歩行者の靴の6つの異なる位置に対応する歩行者の6つのタイプの移動を表す。
【0074】
同図では、本発明による2つの装置(例えば、それぞれが加速度計と磁力計を含む2つのMotionPod)を靴上に装着する歩行者の足の位置は、山岳シーンにおけるいわゆる「ハイキング」旅行中の歩行者の進行を制御するために使用される。ゲームシナリオは仮想カメラを介しプレーヤが見るシーン内で自分が動き回るという印象を与えるように構成され、シーン内の前進動作は、6つの図において表されるように仮想カメラを介し表され、センサを備えたプレーヤの足により制御される。
− 図6aでは、右(北東)への両足の動きが歩行者の右への方向転換を命令する。
− 図6bでは、左(北西)への両足の動きが歩行者の左への方向転換を命令する。
− 図6cでは、両足の扇状分離が歩行者の後方(南)への移動を命令する。
− 図6dでは、歩行者は両足を平行に保ち、初期方向では前方(北)に移動する。
− 図6eでは、歩行者は所定値より大きくなければならないピッチ角(有利には、同図に示すように20°〜30°に選択される)だけ一方の踵を持ち上げ、歩行者の速度が増す。
− 図6fでは、歩行者は上に示された所定値未満のピッチ角だけ一方の踵を持ち上げ、歩行者の速度が低下する。
【0075】
明らかに、進行の動きの方向と速度を併せて決定するために、図6a、6b、6cまたは6dのヨー動作と図6e、6fのピッチ動作は組み合わされる。プレーヤが両踵に関する動きをしなければプレーヤはシーン内で進まないが、シーンの画角は足の配向に従って変更される。
【0076】
図6cは、考慮すべき命令に対し到達するかまたは越えなければならない角度610cを表す。同様に、図7の注記に説明される処理演算が考慮すべき他の図の命令に対し、閾値が設定される。
【0077】
図7は、図6a〜6fの移動を検出するために実行される処理演算を簡略的に表す。
【0078】
足の配向は、加速度計のものと組み合わせて磁力計の測定結果を使用することにより計算される。この組み合わせは、本出願の出願人の1人により出願された国際公開第2009/127561号パンフレットの主題である本発明の方法を使用することにより姿勢計算を可能にする。この方法は、2つのセンサの測定結果とそれらのベクトル積から構成された伝達行列を計算することにより加速度計と磁力計の出力から空中の物体の配向を推定できるようにする。別の可能性は、本出願の出願人の1人により出願された欧州特許第1 985 233号明細書に記載された方法を使用することである。この方法は、3つの異なる時点における少なくとも1つのセンサの3つの軸上の物理的測定結果を獲得することにより移動物体の回転軸を推定できるようにする。
【0079】
この方法をより有効にするためには、磁力計の較正を行うことが必要かもしれない。
【0080】
図8は、装置が手に装着された本発明の実施形態を表す。
【0081】
この実施形態では、分割のための処理演算と動きの方向、線、および長さを決定するための処理演算とが手の動作に適用される。この処理演算は、セグメントによる自在画の場合あるいは打楽器を演奏するあるいはオーケストラを指揮する場合のように、手がほぼ不動のままである比較的短い休止により動作がセグメントに分解される場合に有効となる。
【0082】
特に、四肢の整合が重要な要素であるゲーム、シミュレーションまたは訓練シナリオでは、足の上および脚部上のセンサを組み合わせることが可能である。このような例として、ゴルフ、テニスまたはスキー訓練が挙げられる。このような場合、本発明により提供される特定タイプの運動を特徴付けるようにする処理演算を、これらの特徴を発揮しない運動のタイプを認識できるようにする他の処理演算により補足することが必要かもしれない。このような運動認識処理演算は、特にHMM(隠れマルコフモデル:Hidden Markov Model)、DTW(動的時間伸縮:Dynamic Time Warping)またはLTW(線形時間伸縮:Linear Time Warping)タイプのアルゴリズムを使用してもよい。本出願の出願人により出願された特に仏国特許出願第09/52690号明細書、仏国特許出願第FR09/56717号明細書により開示された実施形態では、これらのアルゴリズムは、本発明の処理演算としてMotionPodに組み込まれたセンサからの同じ出力信号を使用することができることという利点がある。
【0083】
上記例は本発明の実施形態を示すために与えられた。これらは以下の特許請求範囲により定義される本発明の範囲を決して制限しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の動作を特徴付ける装置であって、前記装置が、
前記物体に固定された少なくとも1つの加速度計と、
計算モジュールと、
を含み、前記計算モジュールが、
− 前記動作を第1の位置と第2の位置の間の個々の動作に分割する少なくとも1つの機能と、
− 個々の動作毎に、前記物体に関連付けられた少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を決定する少なくとも1つの機能と、
を実行するために、前記少なくとも1つの加速度計の出力を使用することができる、装置。
【請求項2】
前記第1と第2の位置は、前記物体が実質的に不動である時点あるいは衝撃により影響を受けた時点に対応する、請求項1に記載の物体の動作を特徴付ける装置。
【請求項3】
前記計算モジュールはまた、前記動作方向の前記個々の動作の長さを計算する少なくとも1つの機能を実行することもできる、請求項1に記載の物体の動作を特徴付ける装置。
【請求項4】
前記物体は人間の足または手である、請求項1に記載の物体の動作を特徴付ける装置。
【請求項5】
前記計算モジュールはまた、少なくとも1系列の予め記録された動作に対する前記物体の動作の整合性を評価する機能を実行することもできる、請求項1に記載の物体の動作を特徴付ける装置。
【請求項6】
前記計算モジュールはまた、前記計算モジュールに接続されたディスプレイ上に実際の動作中の前記物体を表す仮想物体の動作に論理的かつ定量的に対応する移動を制御する機能を実行することもできる、請求項1に記載の物体の動作を特徴付ける装置。
【請求項7】
前記物体に固定された少なくとも1つの磁力計をさらに含む、請求項1に記載の物体の動作を特徴付ける装置であって、
前記計算モジュールはまた、少なくとも1つの面内の前記物体の配向を決定する機能を実行するために、少なくとも1つの加速度計の出力および少なくとも1つの磁力計の出力を使用することもできる、装置。
【請求項8】
物体の動作を特徴付ける方法であって、
前記物体に固定された少なくとも1つの加速度計からの出力信号を捕捉する少なくとも1つの工程と、プロセッサによる計算工程と、を含み、
前記計算工程中、前記少なくとも1つの加速度計からの出力信号を捕捉する前記工程からの出力は、前記動作を第1の位置と第2の位置の間の個々の動作に分割する少なくとも1つの機能と、個々の動作毎に、前記物体に関連付けられた少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を決定する少なくとも1つの機能と、を行うために使用される、方法。
【請求項9】
前記計算工程中、前記動作方向の前記個々の動作の長さを計算する少なくとも1つの機能も実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記計算工程はまた、前記物体上の前記加速度計の仰角が20°より実質的に大きい場合、前記加速度計からの前記出力信号を捕捉する前記工程からの測定出力を較正する工程も含む、請求項8に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項11】
前記個々の動作分割機能は、前記加速度計の少なくとも1つの軸から出力される測定結果の平均値を中心に置く工程を含む、請求項8に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項12】
前記個々の動作分割機能はまた、前記中心に置かれた測定結果の少なくとも1つの移動平均の計算に基づくフィルタリング工程も含む、請求項11に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項13】
前記個々の動作分割機能は、前記加速度計から出力された少なくとも1つの測定値または計算値のノルムを計算し次に前記ノルムと所定の閾値とを比較して前記個々の動作の開始と終了をそこから導き出す工程を含む、請求項8に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項14】
前記ステップ分割機能は所定値より大きな時間枠を越える測定結果だけを処理する、請求項13に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項15】
前記個々の動作分割機能は、個々の動作の開始に続く第1の選択された時限の終わりに始まり前記個々の動作の終了に先行する第2の選択された時限の始めに終了する測定結果だけを処理する、請求項14に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項16】
前記個々の動作の方向を決定する前記機能は、前記個々の動作分割機能の前記出力において決定された信号サンプル上の個々の動作の面にほぼ平行な2つの軸のそれぞれに沿った測定結果の積分の絶対値の最大値を計算する工程と、
前記軸の一方に沿った最大値と他方の軸上の最大値とを比較する工程であって、前記個々の動作の方向が前記最大値の軸のものと決定される工程と、
を含む、請求項13に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項17】
前記個々の動作の方向を決定する前記機能は、前記個々の動作分割機能の出力において決定された信号サンプル上の個々の動作の面にほぼ平行な2つの軸のそれぞれに沿った測定結果の積分の絶対値の最大値を計算する工程と、
次に前記2つの軸に沿った最大値の比を計算する工程であって、前記個々の動作の前記方向は、その最大値が前記比の分母である軸とその正接が前記比に等しい角度をなすように決定される工程と、
を含む、請求項13に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項18】
前記個々の動作の線を決定する前記機能は、前記個々の動作の方向を決定する前記工程の前記出力において、前記2つの軸に沿った最大値の符号であって前記所定方向における前記個々の動作の線を決定する符号を決定する工程を含む、請求項16に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項19】
前記個々の動作の長さを計算する前記機能は、前記個々の動作の前記方向と線を決定する前記機能の前記出力において決定された前記個々の動作の前記方向に従って前記測定結果の絶対値を二重積分する工程を含む、請求項16に記載の物体の動作を特徴付ける方法。
【請求項20】
物体の動作を評価するシステムであって、前記システムは、
− 前記物体により実行される基準動作のマスタシナリオと、
− 前記物体の前記基準動作の制御インタフェースと、
− 前記物体に固定された少なくとも1つの第1の均一磁場センサと、
− 計算モジュールと、
を含み、前記モジュールが、
前記動作を第1の位置と第2の位置の間の個々の動作に分割する少なくとも1つの機能と、
個々の動作毎に、前記物体に関連付けられた少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を決定する少なくとも1つの機能と、
を前記第1のセンサの出力から実行することができ、
− 前記物体の前記動作は前記基準動作に応じて実行される、システム。

【図1a−1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a−3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6a−6f】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−520493(P2012−520493A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544043(P2011−544043)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067973
【国際公開番号】WO2010/076313
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511163126)
【出願人】(510074896)
【Fターム(参考)】