説明

動力伝達装置

【課題】
より大きな力をプレッシャ部材に伝達することができ、圧接アシスト用カム又はバックトルクリミッタ用カムによる十分なカム作用を生じさせることができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】
クラッチハウジング2と、クラッチ部材4と、プレッシャ部材5と、圧接アシスト用カム又はバックトルクリミッタ用カムとを有し、駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7との圧接又は離間により、入力部材に入力された回転力を出力部材に伝達し又は遮断し得る動力伝達装置において、少なくともプレッシャ部材5に最も近い被動側クラッチ板に代えて配設され、当該プレッシャ部材5側に延設された折り曲げ部12aaを有するとともに、該折り曲げ部12aaの端部がプレッシャ部材5の挿通孔5bに挿通されて係合された係合部材12aを具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意に入力部材の回転力を出力部材に伝達させ又は遮断させ得る動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動二輪車が具備する動力伝達装置は、エンジンの駆動力のミッション及び駆動輪への伝達又は遮断を任意に行わせるためのもので、エンジン側と連結された入力部材と、ミッション及び駆動輪側と連結された出力部材と、出力部材と連結されたクラッチ部材とを有しており、複数形成された駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板とを圧接させることにより動力の伝達を行い、離間(圧接力の解放)させることにより当該動力の伝達を遮断するよう構成されている。
【0003】
然るに、動力伝達時の両クラッチ板の圧接力を向上させる圧接アシスト機能、及び出力部材の回転が入力部材の回転数を上回って所謂バックトルクが生じた際に両クラッチ板を離間させるバックトルクリミッタ機能を付加すべく、例えば特許文献1にて開示されているように、カムを用いたものが開示されている。かかる文献における動力伝達装置によれば、プレッシャプレートとクラッチセンタとにそれぞれ勾配面を形成して2つのカムを形成し、通常の動力伝達時には、一方のカム(圧接アシスト用カム)によって駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板とが強く圧接する方向にプレッシャプレートを移動させる一方、バックトルクが生じた際には、他方のカム(バックトルクリミッタ用カム)によって両クラッチ板の圧接が開放される方向にプレッシャプレートを移動させ当該バックトルクを吸収し得るようになっている。
【特許文献1】特開平2−150517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の動力伝達装置においては、駆動側クラッチ板のうち最もプレッシャ部材(プレッシャプレート)に近い位置のものの一面のみが当該プレッシャ部材と接することにより、圧接アシスト用カムやバックトルクリミッタ用カムによるカム作用を生じさせていたため、両クラッチ板における圧接のアシスト力や伝達力を開放させる力(リリース力)が小さ過ぎる場合があるという問題があった。
【0005】
即ち、従来の動力伝達装置における圧接アシスト用カムやバックトルクリミッタ用カムによるカム作用は、駆動側クラッチ板を介してプレッシャ部材に力が伝達されることにより当該プレッシャ部材を所定方向に回転させて得られるのであり、その力の伝達は、プレッシャ部材の表面と該プレッシャ部材に隣接した駆動側クラッチ板の一面とのみが接触(押圧)することにより得られていたのである。然るに、従来のものでは、駆動側クラッチ板のプレッシャ部材との接触面積に限りがあるため、十分なカム作用を生じさせるのが困難な場合があったのである。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、より大きな力をプレッシャ部材に伝達することができ、圧接アシスト用カム又はバックトルクリミッタ用カムによる十分なカム作用を生じさせることができる動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、入力部材の回転と共に回転し複数の駆動側クラッチ板が形成されたクラッチハウジングと、前記クラッチハウジングの駆動側クラッチ板と交互に形成された被動側クラッチ板を複数有し、出力部材と連結されたクラッチ部材と、前記クラッチ部材の軸方向に移動が可能とされつつ当該クラッチ部材に取り付けられ、クラッチ部材に対する軸方向への移動に伴い前記駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板とを圧接又は離間させ得るプレッシャ部材と、前記クラッチ部材に形成された勾配面とプレッシャ部材に形成された勾配面とで構成され、前記入力部材に入力された回転力が出力部材に伝達され得る状態となったときに前記駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板との圧接力を増加させるための圧接アシスト用カム又は前記出力部材の回転が入力部材の回転数を上回ったときに前記駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板との離間を行わせるバックトルクリミッタ用カムとを有し、前記駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板との圧接又は離間により、入力部材に入力された回転力を出力部材に伝達し又は遮断し得る動力伝達装置において、少なくとも前記プレッシャ部材に最も近い前記被動側クラッチ板に代えて配設され、当該プレッシャ部材側に延設された折り曲げ部を有するとともに、該折り曲げ部の端部がプレッシャ部材と係合された係合部材を具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置において、前記プレッシャ部材の所定箇所に挿通孔を設けるとともに、前記係合部材における折り曲げ部の端部を前記挿通孔に挿通させることにより、当該端部とプレッシャ部材とを係合させたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の動力伝達装置において、前記被動側クラッチ板に代えて配設され、前記プレッシャ部材側に延設された第2の折り曲げ部を有するとともに、該第2の折り曲げ部が前記係合部材の折り曲げ部に係合された第2の係合部材を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、少なくともプレッシャ部材に最も近い被動側クラッチ板に代えて配設され、当該プレッシャ部材側に延設された折り曲げ部を有するとともに、該折り曲げ部の端部がプレッシャ部材と係合された係合部材を具備したので、プレッシャ部材には、該プレッシャ部材に最も近い駆動側クラッチ板の一面に加え、係合部材の両面からも力の伝達がなされることとなる。従って、より大きな力をプレッシャ部材に伝達することができ、圧接アシスト用カム又はバックトルクリミッタ用カムによる十分なカム作用を生じさせることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、係合部材における折り曲げ部の端部をプレッシャ部材の挿通孔に挿通させることにより、当該端部とプレッシャ部材とを係合させたので、簡単な構成で折り曲げ部をプレッシャ部材に係合させることができるとともに、駆動力の伝達及び遮断を行わせるべく係合部材の軸方向への移動を許容させることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、プレッシャ部材側に延設された第2の折り曲げ部を有するとともに、該第2の折り曲げ部が係合部材の折り曲げ部に係合された第2の係合部材を具備したので、プレッシャ部材には、該プレッシャ部材に最も近い駆動側クラッチ板の一面及び係合部材の両面に加え、第2の係合部材の両面からも力の伝達がなされることとなる。
【0013】
従って、更に大きな力をプレッシャ部材に伝達することができ、より十分な圧接アシスト用カム又はバックトルクリミッタ用カムによるカム作用を生じさせることができる。また、第2の係合部材の数を任意に設定することにより、プレッシャ部材に伝達させる力(即ちカム作用を生じさせる力)を容易に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る動力伝達装置は、二輪車等の車両に配設されて任意にエンジンの駆動力をミッションや駆動輪側へ伝達し又は遮断するためのもので、図1に示すように、入力部材としてのギア1が形成されたクラッチハウジング2と、出力部材としてのシャフト3と連結されたクラッチ部材4と、該クラッチ部材4の同図中右端側に取り付けられたプレッシャ部材5と、クラッチハウジング2側に連結された駆動側クラッチ板6及びクラッチ部材4側に連結された被動側クラッチ板7、及び係合部材12a及び第2の係合部材12bとから主に構成されている。
【0015】
ギア1は、エンジンから伝達された駆動力(回転力)が入力されるとシャフト3を中心として回転可能とされたもので、リベット8等によりクラッチハウジング2と連結されている。該クラッチハウジング2は、同図右端側が開口した円筒状のケース部材から成り、その内周壁からは複数の駆動側クラッチ板6が形成されている。かかる駆動側クラッチ板6のそれぞれは、略円環状に形成された板材から成るとともにクラッチハウジング2の回転と共に回転し、且つ、軸方向(同図中左右方向)に摺動し得るよう構成されている。
【0016】
クラッチ部材4は、クラッチハウジング2内に配設された同図中右端側が開口した円筒状のケース部材から成るものである。かかるクラッチ部材4の略中央にはシャフト3が貫通しつつスプライン嵌合により連結されており、クラッチ部材4が回転するとシャフト3も回転するよう構成されている。また、クラッチ部材4の外周側面には、その軸方向(同図中左右方向)に延びるスプライン10が形成されており、該スプライン10に被動側クラッチ板7(折り曲げ形成された被動側クラッチ板12a、12bを除く)が嵌め込まれて形成されている。
【0017】
より具体的には、クラッチ部材4に形成されたスプライン10は、図2に示すように、その外周側面における略全周に亘って一体的に形成された凹凸形状にて構成されており、スプライン10を構成する凹溝に被動側クラッチ板7が嵌合することにより、被動側クラッチ板7のクラッチ部材4に対する軸方向の移動を許容しつつ回転方向の移動が規制され、当該クラッチ部材4と共に回転し得るよう構成されているのである。
【0018】
かかる被動側クラッチ板7は、駆動側クラッチ板6と交互に積層形成されており、隣接する各クラッチ板6、7が圧接又は離間可能なようになっている。即ち、両クラッチ板6、7は、クラッチ部材4の軸方向への摺動が許容されており、プレッシャ部材5にて同図中左方向へ押圧されると圧接され、クラッチハウジング2の回転力がクラッチ部材4及びシャフト3に伝達される状態となり、プレッシャ部材5による押圧を解除すると離間してクラッチ部材4がクラッチハウジング2の回転に追従しなくなって停止し、シャフト3への回転力の伝達がなされなくなるのである。
【0019】
尚、ここでいう両クラッチ板6、7の離間とは、当該両クラッチ板6、7間にクリアランスを生じた状態である必要はなく、物理的なクリアランスが生じていなくても、圧接力が解除されてクラッチ部材4がクラッチハウジング2の回転に追従しなくなった状態(即ち、駆動側クラッチ板6が被動側クラッチ板7上を摺動する状態)をも含むものとする。
【0020】
プレッシャ部材5は、クラッチ部材4の開口(同図中右端)を塞ぐ如く略円板状に形成されたもので、クラッチスプリングSにより同図中左方向へ常時付勢されている。即ち、クラッチ部材4にはプレッシャ部材5側へ延びて貫通したボス部4bが形成されており、該ボス部4bにクラッチボルトBを挿通させるとともに、かかるクラッチボルトBの頭部側とプレッシャ部材5との間にクラッチスプリングSを介装することにより、当該プレッシャ部材5が常時左方向へ付勢されているのである。
【0021】
一方、プレッシャ部材5の縁部の面5aは、積層状態の駆動側クラッチ板6のうちプレッシャ部材5に最も近いもの(同図中最右部のもの)と当接しており、クラッチスプリングSの付勢力を得た当該プレッシャ部材5が最右部の駆動側クラッチ板6を押圧することにより、両クラッチ板6と7とが圧接するようになっている。従って、クラッチハウジング2とクラッチ部材4とは常時連結された状態となり、ギア1に回転力が入力されるとシャフト3を回転させ得るようになっている。
【0022】
然るに、シャフト3の内部には、その軸方向に延びるプッシュロッド9が配設されており、運転者が図示しない操作手段を操作することにより当該プッシュロッド9を同図中右方向へ突出させ、プレッシャ部材5をクラッチスプリングSの付勢力に抗して右方向へ移動させることができるようになっている。プレッシャ部材5が右方向へ移動すると、駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7との圧接力が解かれ、離間状態となってギア1及びクラッチハウジング2へ入力された回転力がクラッチ部材4及びシャフト3へ伝達されず遮断されることとなる。プレッシャ部材5は、クラッチ部材4に対する軸方向への移動に伴い駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7とを圧接又は離間させることができるよう構成されているのである。
【0023】
ここで、本実施形態に係るクラッチ部材4のスプライン10は、図2に示すように、プレッシャ部材5の取り付け端(開口端)までは形成されておらず、スプライン10が形成されていない部位に係合部材12a及び第2の係合部材12bが駆動側クラッチ板6を挟んで配設されている。即ち、従来におけるプレッシャ部材5に最も近い被動側クラッチ板及びそれと隣接(1枚の駆動側クラッチ板6を介している)する被動側クラッチ板に代えて、係合部材12a及び第2の係合部材12bがそれぞれ配設されているのである。
【0024】
係合部材12aは、図3に示すように、クラッチ部材4の外周に嵌め込まれ得る円環状板材から成り、その内周縁から複数の折り曲げ部12aaが延設されている。また、第2の係合部材12bは、係合部材12aに対して1枚の駆動側クラッチ板6を挟んだ位置に配設され、係合部材12aと同様、クラッチ部材4の外周に嵌め込まれ得る円環状板材から成るとともに、その内周縁からは折り曲げ部12baと略同一方向に延びる複数の第2の折り曲げ部12baが延設されている。
【0025】
係合部材12aの折り曲げ部12aa及び第2の係合部材12bの折り曲げ部12baは、それぞれ矩形状に形成されており、第2の折り曲げ部12baの側縁が折り曲げ部12aaの側縁と当接し得るよう構成されている。一方、図4に示すように、プレッシャ部材5における折り曲げ部12aaと対応する位置には、当該プレッシャ部材5の表裏面を貫通する挿通孔5bが複数形成されており、これら挿通孔5bに折り曲げ部12aaの端部(先端部)がそれぞれ挿通されるようになっている。
【0026】
すなわち、係合部材12aは、その折り曲げ部12aaがプレッシャ部材5側に延設されるとともに、当該折り曲げ部12aaの端部がプレッシャ部材5の挿通孔5bに挿通されることによりプレッシャ部材5と係合されているのである。これにより、係合部材12aは、軸方向への移動が許容されているものの、プレッシャ部材5の回転方向には係合して力を伝達させ得るようになっている。
【0027】
また、第2の係合部材12bの折り曲げ部12baは、既述の如く係合部材12aの折り曲げ部12aaの側縁と当接しているため、軸方向への移動が許容されつつ、係合部材12aの回転方向には係合して力を伝達し得るようになっている。従って、プレッシャ部材5には、該プレッシャ部材5に最も近い駆動側クラッチ板6の一面(面5aと対峙する面)及び係合部材12aの両面(駆動側クラッチ板6と対峙する両面)に加え、第2の係合部材12bの両面(同)からも力の伝達がなされることとなる。
【0028】
ところで、クラッチ部材4における開口側縁部には、勾配面11a及び11bが形成されるとともに(図2参照)、プレッシャ部材5には、これら勾配面11a及び11bと対峙する勾配面11c、11d(図5及び図6参照)が形成されている。即ち、勾配面11bと勾配面11dとが当接して圧接アシスト用カムを成すとともに、勾配面11aと勾配面11cとが当接してバックトルクリミッタ用カムを成しているのである。
【0029】
そして、ギア1及びクラッチハウジング2に入力された回転力が、クラッチ部材4を介してシャフト3に伝達され得る状態となったときに、プレッシャ部材5には図5中a方向の回転力が付与されるため、圧接アシスト用カムの作用により、当該プレッシャ部材5には同図中c方向への力が発生し、駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7(係合部材12a及び第2の係合部材12b含む)との圧接力を増加させるようになっている。
【0030】
一方、シャフト3の回転がギア1及びクラッチハウジング2の回転数を上回って、図6中b方向のバックトルクが生じた際には、バックトルクリミッタ用カムの作用により、プレッシャ部材5を同図中d方向へ移動させて駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7(係合部材12a及び第2の係合部材12b含む)との離間を行わせるようになっている。これにより、バックトルクによる動力伝達装置や動力源(エンジン側)に対する不具合を回避することができる。
【0031】
上記動力伝達装置によれば、プレッシャ部材5には、該プレッシャ部材5に最も近い駆動側クラッチ板6の一面(面5aと対峙する面)及び係合部材12aの両面(駆動側クラッチ板6と対峙する両面)に加え、第2の係合部材12bの両面(同)からも力の伝達がなされるので、より大きな力をプレッシャ部材5に伝達することができ、圧接アシスト用カム又はバックトルクリミッタ用カムによる十分なカム作用を生じさせることができる。
【0032】
また、係合部材12aにおける折り曲げ部12aaの端部をプレッシャ部材5の挿通孔5aに挿通させることにより、当該端部とプレッシャ部材5とを係合させたので、簡単な構成で折り曲げ部12aaをプレッシャ部材5に係合させることができるとともに、駆動力の伝達及び遮断を行わせるべく係合部材12aの軸方向への移動を許容させることができる。
【0033】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図7に示すように、係合部材12aを具備しつつ第2の係合部材12bを具備しないものとしてもよい。この場合であっても、プレッシャ部材5に最も近い駆動側クラッチ板6の一面(面5aと対峙する面)に加え、係合部材12aの両面(駆動側クラッチ板6と対峙する両面)からもプレッシャ部材5に力の伝達がなされるので、より大きな力をプレッシャ部材5に伝達することができ、圧接アシスト用カム又はバックトルクリミッタ用カムによる十分なカム作用を生じさせることができる。
【0034】
また、本実施形態においては、第2の係合部材12bが1枚とされているが、複数枚としてもよく、この場合、クラッチ部材4におけるスプライン10が形成されていない部分を大きくするとともに、その形成されない部分において他の被動側クラッチ板7に代えた第2の係合部材12bを配設し、当該第2の係合部材12bが互いの折り曲げ部12baを当接させつつ積層状に複数形成されることとなる。このように、第2の係合部材12bの有無、或いは枚数を任意に設定することにより、プレッシャ部材5に伝達させる力(即ちカム作用を生じさせる力)を容易に調節することができる。
【0035】
更に、クラッチ部材とプレッシャ部材との間に、圧接アシスト用カム或いはバックトルクリミッタ用カムの何れか一方のみが形成されているものに適用してもよい。尚、本発明の動力伝達装置は、二輪車の他、自動車、3輪又は4輪バギー、或いは汎用機等種々の多板クラッチ型の動力伝達装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
少なくともプレッシャ部材に最も近い被動側クラッチ板に代えて配設され、当該プレッシャ部材側に延設された折り曲げ部を有するとともに、該折り曲げ部の端部がプレッシャ部材と係合された係合部材を具備した動力伝達装置であれば、他の機能を付加したもの、或いは外観形状等が異なるものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る動力伝達装置を示す縦断面図
【図2】同動力伝達装置におけるクラッチ部材及びプレッシャ部材を示す斜視図
【図3】同動力伝達装置における係合部材及び第2の係合部材を駆動側クラッチ板を介して積層させた状態を示す(a)外側から見た一部側面図及び(b)平面図
【図4】同動力伝達装置におけるプレッシャ部材を示す正面図
【図5】同動力伝達装置におけるクラッチ部材の正転時における圧接アシスト用カムの作用を示す模式図
【図6】同動力伝達装置におけるクラッチ部材の逆転時(バックトルクが付与された状態)におけるバックトルクリミッタ用カムの作用を示す模式図
【図7】本発明の他の実施形態に係る動力伝達装置を示す縦断面図
【符号の説明】
【0038】
1 ギア(入力部材)
2 クラッチハウジング
3 シャフト(出力部材)
4 クラッチ部材
5 プレッシャ部材
5b 挿通孔
6 駆動側クラッチ板
7 被動側クラッチ板
8 リベット
9 プッシュロッド
10 スプライン
11 (圧接アシスト用或いはバックトルクリミッタ用)カム
11a、11c 勾配面(バックトルクリミッタ用カム)
11b、11d 勾配面(圧接アシスト用カム)
12a 係合部材
12aa 折り曲げ部
12b 第2の係合部材
12ba 折り曲げ部
S クラッチスプリング
B クラッチボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材の回転と共に回転し複数の駆動側クラッチ板が形成されたクラッチハウジングと、
前記クラッチハウジングの駆動側クラッチ板と交互に形成された被動側クラッチ板を複数有し、出力部材と連結されたクラッチ部材と、
前記クラッチ部材の軸方向に移動が可能とされつつ当該クラッチ部材に取り付けられ、クラッチ部材に対する軸方向への移動に伴い前記駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板とを圧接又は離間させ得るプレッシャ部材と、
前記クラッチ部材に形成された勾配面とプレッシャ部材に形成された勾配面とで構成され、前記入力部材に入力された回転力が出力部材に伝達され得る状態となったときに前記駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板との圧接力を増加させるための圧接アシスト用カム又は前記出力部材の回転が入力部材の回転数を上回ったときに前記駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板との離間を行わせるバックトルクリミッタ用カムと、
を有し、前記駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板との圧接又は離間により、入力部材に入力された回転力を出力部材に伝達し又は遮断し得る動力伝達装置において、
少なくとも前記プレッシャ部材に最も近い前記被動側クラッチ板に代えて配設され、当該プレッシャ部材側に延設された折り曲げ部を有するとともに、該折り曲げ部の端部がプレッシャ部材と係合された係合部材を具備したことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記プレッシャ部材の所定箇所に挿通孔を設けるとともに、前記係合部材における折り曲げ部の端部を前記挿通孔に挿通させることにより、当該端部とプレッシャ部材とを係合させたことを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記被動側クラッチ板に代えて配設され、前記プレッシャ部材側に延設された第2の折り曲げ部を有するとともに、該第2の折り曲げ部が前記係合部材の折り曲げ部に係合された第2の係合部材を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−78088(P2007−78088A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267471(P2005−267471)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000128175)株式会社エフ・シー・シー (109)
【Fターム(参考)】