説明

動力回収装置

【課題】昇圧ポンプが無くとも高濃度塩水に含まれるエネルギーを効率的に回収することが可能な動力回収装置を提供する。
【解決手段】シリンダ6311−1,6311−2内の空間をピストン6312−1,6312−2により、第1及び第2の空間に分割する。そして、シリンダ6311−1,6311−2の穴に、可動子6313−1,6313−2と、固定子6314−1,6314−2から成るシャフトモータを設置する。このとき、可動子6313−1,6313−2は、一端がシリンダ6311−1,6311−2の第2の空間からピストン6312−1,6312−2と接着し、他端が外部へ貫通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、逆浸透膜方式海水淡水化装置おいて淡水の生成と共に、排水される高濃度塩水が有する動力を回収する動力回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水淡水化装置は、逆浸透圧より高い圧力の海水を供給し、逆浸透膜(以下、RO膜という。)を通過させて海水中の塩分等を除去して淡水を取り出すと共に、残りの海水を高濃度塩水(ブライン)として排出する装置である。このとき、高濃度塩水は、高圧のまま排出されるため、高い圧力エネルギーを有している。近年では、省エネ化をはかるため、海水淡水化装置に動力回収装置が搭載されている(例えば、特許文献1及び2参照)。動力回収装置は、高圧の高濃度塩水を回収し、高濃度塩水に含まれる圧力エネルギーを海水の加圧に利用する装置である。
【0003】
ところで、従来の動力回収装置では、圧力エネルギーを利用して加圧した海水をさらに昇圧する昇圧ポンプが必要である。これは、圧力エネルギーを利用して加圧した海水の圧力を、RO膜へ注入する海水の圧力までさらに昇圧する必要があるからである。しかしながら、昇圧ポンプは、様々な問題を引き起こす要因となる。
【0004】
まず、昇圧ポンプは、非常に圧力の高い海水の昇圧を行うため、ポンプが内圧によって破壊しないように、厚肉の部材で構成する必要がある。これにより、ポンプ効率が極端に低下し,昇圧ポンプでの消費電力が増大するという問題がある。
【0005】
また、昇圧ポンプでは、内圧が高いため、内部流体の漏れ等の故障が多い。そのため、装置の稼働率が低下し,安定して浄水を供給できないという問題がある。
【0006】
また、海水淡水化プラントでは、送水ポンプ,高圧ポンプ及び昇圧ポンプ等が多数設置されている。ポンプは定期的なメンテナンスが必要な装置であるため、プラントに多数のポンプが存在するという事は、メンテナンスのコスト及び労力が増大する要因となる。
【0007】
さらに、昇圧ポンプは上述したように厚肉の部材で構成されているため、プラントの中でも高額部品である。そのため、プラント建設コストを増大させる要因となる。
【0008】
なお、上記特許文献1に記載の動力回収装置では、RO膜を二つ備え、一つ目のRO膜から排出された高濃度塩水を二つ目のRO膜で濾過することで、昇圧ポンプの設置を省略する技術が提案されている。しかしながら、RO膜は高額部品であるため、このような構成は、プラント建設コストを増大させる要因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−81913号公報
【特許文献2】特開2001−46842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、従来の動力回収装置における昇圧ポンプは、様々な問題の要因となっていた。
【0011】
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、昇圧ポンプが無くとも高濃度塩水に含まれるエネルギーを効率的に回収することが可能な動力回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、第1の圧力の海水を高圧ポンプにより第2の圧力に昇圧して逆浸透膜へ供給し、前記逆浸透膜から淡水を取り出すとともに、第3の圧力の濃縮水を排出する海水淡水化装置に用いられ、前記濃縮水が有するエネルギーを回収する動力回収装置において、前記逆浸透膜からの第3の圧力の濃縮水を第1の空間で受けることで可動部を動かし、前記可動部の移動により、第2の空間に充填された海水を押し出して前記第2の圧力で出力する圧力変換部であって、前記第2の空間から安定して前記第2の圧力の海水が出力されるように前記可動部を駆動する駆動機構を備える圧力変換部と、前記圧力変換部からの海水を前記高圧ポンプからの海水に合流させる海水供給部とを具備する。
【0013】
上記構成による動力回収装置では、第1の空間へ給水された第3の圧力の濃縮水により可動部を動かし、この可動部の変位を利用して、第2の空間の海水を第2の圧力で押し出すようにしている。また、第3の圧力が変動する場合であっても、駆動機構により可動部を駆動することで、第2の空間から第2の圧力の海水を安定して出力するようにしている。これにより、従来の動力回収装置に搭載されていた昇圧ポンプが不要となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、昇圧ポンプが無くとも高濃度塩水に含まれるエネルギーを効率的に回収することが可能な動力回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る動力回収装置を備えた海水淡水化プラントの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の動力回収装置の構成を示すと共に、動力回収装置の作動時の第1の状態を示す図である。
【図3】図1の動力回収装置の構成を示すと共に、動力回収装置の作動時の第2の状態を示す図である。
【図4】図2及び図3の変換器の構成を示す図である。
【図5】従来の動力回収装置の構成を示す図である。
【図6】数値シミュレーションで用いる海水淡水化装置の仕様を示す図である。
【図7】動力回収装置を具備していない海水淡水化装置における数値シミュレーションの結果を示す図である。
【図8】図1の動力回収装置を具備した海水淡水化装置における数値シミュレーションの結果を示す図である。
【図9】図5の動力回収装置を具備した海水淡水化装置における数値シミュレーションを示す図である。
【図10】図2の動力回収装置の第1の変形例を示す図である。
【図11】図2の動力回収装置の第2の変形例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係わる動力回収装置の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係わる動力回収装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図13のクランクシャフトを示す図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係わる動力回収装置の構成を示すブロック図である。
【図16】図15のロータリーアクチュエータの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る動力回収装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る動力回収装置60を備えた海水淡水化プラントの構成を示すブロック図である。図1における海水淡水化プラントでは、汲み上げられた海水は、前処理系10で薬品処理され、送水ポンプ20により、保安フィルタ30へ送水される。保安フィルタ30を通過した海水は、一方が高圧ポンプ40へ供給され、他方が動力回収装置60へ供給される。このとき、保安フィルタ30から出力された海水の圧力P3は、0.2MPa程度である。
【0018】
高圧ポンプ40は、供給された海水を昇圧し、高圧RO膜50へ出力する。このとき、昇圧後の圧力P4は、高圧RO膜50の種類によって異なるが、ここでは代表値として6.0MPaとする。
【0019】
高圧RO膜50は、供給された海水をろ過する。高圧RO膜50の回収率が40%の場合、高圧RO膜50からは、流入した流量の40%の淡水と、60%の高濃度塩水とが排出される。このとき、淡水の圧力は、0.2MPa程度(=P3)まで低下するが、高濃度塩水の圧力P6は5.8MPa程度である。高圧RO膜50からの淡水は低圧ポンプ80へ供給され、高濃度塩水は動力回収装置60へ供給される。
【0020】
高圧RO膜50からの淡水は、低圧ポンプ80で再加圧され、低圧RO膜90を通過することで、含有ホウ素の除去等が施される。そして、低圧RO膜90を通過した淡水は、浄水池100で薬品処理され、浄水として供給ポンプ110から家庭等へ供給される。
【0021】
動力回収装置60は、高濃度塩水に含まれる圧力エネルギーを利用し、保安フィルタ30からの海水を昇圧して出力する。動力回収装置60からの海水は、高圧ポンプ40からの海水と合流し、高圧RO膜50へ導入される。
【0022】
バルブ70の一端は、大気開放されている。バルブ70により、動力回収装置60で圧力エネルギーを回収された高濃度塩水の排出流量を制御する。
【0023】
図2及び図3は、本発明の第1の実施形態に係る動力回収装置60の構成を示すと共に、動力回収装置60の作動時の各状態を示す模式図である。
【0024】
まず、図2を用いて、動力回収装置60の構成について説明する。図2における動力回収装置60は、圧力計測器61、4ポート切換弁62、圧力変換部63、海水供給部64、棒位置検出部65−1〜65−4、切換制御部66及びモータ制御部67を具備する。
【0025】
圧力計測器61は、高圧RO膜50から流出される高濃度塩水の圧力を計測し、その計測結果をモータ制御部67へ通知する。
【0026】
4ポート切換弁62は、高濃度塩水の圧力変換部63への流入及び、圧力変換部63からの排出の方向を切り換えるものである。4ポート切換弁62は、切換制御部66からの切換指示に従って、高濃度塩水の流入及び排出の方向を切り換える。なお、4ポート切換弁を切り換える方法としては、空圧式,水圧式,油圧式及びソレノイドコイルによる方法等がある。水圧源として、高濃度塩水、送水ポンプ20から出た海水、ないしは、高圧ポンプ40から出た高圧塩水を用いてもよい。
【0027】
圧力変換部63は、変換器631−1,631−2を備える。図4は、変換器631−1,631−2の構成を示す概略図である。なお、変換器631−1,631−2はそれぞれ同様の構造をしているため、図4では、変換器631−1の説明を行う。図4における変換器631−1は、シリンダ6311−1、ピストン6312−1、シャフトモータ可動子6313−1及びシャフトモータ固定子6314−1を備える。
【0028】
シリンダ6311−1は、3個の穴を有し、密閉空間を形成する。
【0029】
ピストン6312−1は、シリンダ6311−1の内部に位置し、シリンダ6311−1との間にシール材を挟んでこの密閉空間を第1の空間と第2の空間とに分割する。第1の空間には高濃度塩水が供給され、第2の空間には海水が供給される。
【0030】
可動子6313−1は、パイプの中に磁石を多数配列させたもので、コイルから成る固定子6314−1と共にシャフトモータを構成する。可動子6313−1は、固定子6314−1に電流が供給されることにより、可動子6313−1の長手方向へ駆動される。なお、可動子6313−1と、固定子6314−1とは非接触であり、その間に摩擦は生じない。
【0031】
また、可動子6313−1は、一端が第2の空間側からピストン6312−1に接着され、他端がシリンダ6311−1の穴から外部へ突出している。なお、この穴の淵にはシール材が取り付けられている。可動子6313−1が第2の空間側からピストン6312−1に接着していることにより、ピストン6312−1が第1の空間に面する面積A1と、ピストン6312−1が第2の空間に面する面積A2とは異なることとなる。ここで、面積A1,A2の関係は、高圧RO膜50からの高濃度塩水の圧力P6、高圧ポンプ40からの海水の圧力P4、シリンダ6311−1とピストン6312−1との間の摩擦力、及び、シリンダ6311−1と可動子6313−1との間の摩擦力等に基づいて予め設定されている。
【0032】
固定子6314−1は、モータ制御部67により供給電流が制御される。
【0033】
海水供給部64は、逆止弁641−1〜641−4を備える。逆止弁641−1〜641−4は、周囲の圧力差に応じてそれぞれ独立して開閉する。これにより、動力回収装置60から外部へ又は、圧力変換部63へ、海水が供給されることとなる。
【0034】
検出部65−1,65−2は、変換器631−1から突出した可動子6313−1の位置を検出するものである。検出部65−1は、ピストン6312−1がシリンダ6311−1の左端に近接したときに可動子6313−1を検出できる位置に設置される。検出部65−2は、ピストン6312−1がシリンダ6311−1の右端に近接したときに可動子6313−1が非検出となる位置に設置される。検出部65−1は可動子6313−1を検出した場合に、また、検出部65−2は可動子6313−1が非検出となった場合に、それぞれ切換制御部66へ検出信号を出力する。これにより、シリンダ6311−1におけるピストン6312−1の位置を把握する事が可能となる。また、検出部65−3,65−4は、検出部65−1,65−2と同様の構成をしており、変換器631−2から突出した可動子6313−2の位置を検出するものである。検出部65−3は可動子6313−2を検出した場合に、また、検出部65−4は可動子6313−2が非検出となった場合に、切換制御部66へ検出信号を出力する。これにより、シリンダ6311−2におけるピストン6312−2の位置を把握する事が可能となる。なお、検出部65−1〜65−4における検出方式としては、機械式,電気式及び光学式等があり得る。また、本実施形態では、検出信号を切換制御部66へ出力するようにしているが、可動子の動きを機械的に4ポート切換弁62へ伝達するようにしても構わない。
【0035】
切換制御部66は、検出部65−1〜65−4からの検出信号に応じて、4ポート切換弁62に対して切換信号を出力する。すなわち、切換制御部66は、検出部65−1,65−4からの検出信号を受けた場合は、ピストン6312−1がシリンダ6311−1の左端近傍に位置し、ピストン6312−2がシリンダ6311−2の右端近傍に位置すると判断する。そして、切換制御部66は、変換器631−1から高濃度塩水を排水するように、また、変換器631−2へ高濃度塩水を給水するように、4ポート切換弁62に対して切換信号を出す。また、切換制御部66は、検出部65−2,65−3からの検出信号を受けた場合は、ピストン6312−1がシリンダ6311−1の右端近傍に位置し、ピストン6312−2がシリンダ6311−2の左端近傍に位置すると判断する。そして、切換制御部66は、変換器631−1へ高濃度塩水を給水するように、また、変換器631−2から高濃度塩水を排水するように、4ポート切換弁62に対して切換信号を出す。
【0036】
モータ制御部67は、圧力計測器61からの計測結果に基づいて、固定子6314−1,6314−2への供給電流を制御するものである。モータ制御部67は、固定子6314−1,6314−2への供給電流を制御することで、ピストン6312−1,6312−2に左方向又は右方向の力を加える。例えば、モータ制御部67は、圧力計測器61の計測結果が予め想定していた値よりも減少した場合、図2の状態ではピストン6312−1をその移動方向と同一方向へ可動子6313−1を駆動するように、固定子6314−1への供給電流を制御する。また、図3の状態では、ピストン6312−2をその移動方向と同一方向へ可動子6313−2を駆動するように、固定子6314−2への供給電流を制御する。なお、高圧水を作るピストンに設置されたシャフトモータだけを駆動し、高濃度塩水を排出するピストンに設置されたシャフトモータは駆動しない。
【0037】
次に、上記構成に動力回収装置60の動作を説明する。
【0038】
図2における動力回収装置60は、変換器631−1に高濃度塩水が給水され、変換器631−2から高濃度塩水が排水される状態となっている。
【0039】
保安フィルタ30からの海水は、0.2MPa(=P3)で高圧ポンプ40へ供給されると共に、逆止弁641−4を通過して変換器631−2の第2の空間へ供給される。
【0040】
高圧ポンプ40で6.0MPa(=P4)に昇圧された海水は、動力回収装置60からの海水と合流され、高圧RO膜50へ導入される。このとき、動力回収装置60からの海水は、変換器631−1の第2の空間から排出され、逆止弁641−2を通過したものである。高圧RO膜50は、淡水と高濃度塩水とを出力する。
【0041】
高圧RO膜50から排出された高濃度塩水は、圧力計測器61、4ポート切換弁62を通過し、変換器631−1の第1の空間へ流入する。このとき、変換器631−1の第2の空間には海水が充填されている。高濃度塩水は、シリンダ6311−1内にあるピストン6312−1を第2の空間方向へ移動させ、第2の空間内の海水を加圧しながら排出させる。
【0042】
ここで、可動子6313−1からピストン6312−1へ左側方向への力N1が与えられたとする。そして、ピストン6312−1が第1の空間に面する面積はA1であり、ピストン6312−1が第2の空間に面する面積はA2である。これらのことから、シリンダ6311−1の第2の空間から排出される海水の圧力P8は、4ポート切換弁62からの高濃度塩水の圧力P7を用いて、P8=(P7×A1+N1)/A2となる。これにより、圧力P8は、高圧RO膜50に導入される圧力P4と同等か少し高い圧力となる。ただし、モータの推力の方向の違いにより、N1は正の値にも負の値にもなりうる。
【0043】
ここで、図2における逆止弁641−1〜641−4の状態を以下に説明する。
【0044】
圧力P8>圧力P3であるため、逆止弁641−1は閉じている。また、圧力P8>圧力P14であるため、逆止弁641−2は開いている。ここで、圧力P8と圧力P14との圧力差は、逆止弁641−2を海水が通過するときの圧力損失と考えることができる。
【0045】
また、圧力P14>圧力P13であるため、逆止弁641−3は閉じている。また、バルブ70の一端は、大気開放されているため、シリンダ6311−2の第2の空間のゲージ圧力はほぼ零である。つまり、P13は小さな圧力である。そのため、P3>P13であり、逆止弁641−4は開いている。
【0046】
保安フィルタ30からの海水は、逆止弁641−4を通過して、変換器631−2の第2の空間へ流入する。このとき、変換器631−2の第1の空間には高濃度塩水が充填されている。ここで、バルブ70の一端は、大気開放されているため、変換器631−2の第1の空間のゲージ圧はほぼ零である。逆止弁641−4を通過した海水は、0.2MPaの圧力を有し、シリンダ6311−2内にあるピストン6312−2を第1の空間方向へ移動させる。ピストン6312−2は、第1の空間方向へ移動する事により、第1の空間内の高濃度塩水を、4ポート切換弁62及びバルブ70を介して排出させる。
【0047】
そして、上記の動作が持続された場合、ピストン6312−1はシリンダ6311−1内の左端へ近接し、ピストン6312−2はシリンダ6311−2内の右端へ近接することとなる。すると、検出部65−1は可動子6313−1が接触したことを検出し、検出部65−4は可動子6313−2が非接触となったことを検出する。これにより、検出部65−1,65−4から切換制御部66へ検出信号が出力される。切換制御部66は、検出部65−1,65−4からの検出信号を受信すると、高濃度塩水の流入及び排出の方向を切り換える様に4ポート切換弁62に対して切換指示を出す。高濃度塩水の流入及び排出が切り換わると、動力回収装置60は、図3に示す状態となる。
【0048】
図3における動力回収装置60では、変換器631−2に高濃度塩水が給水され、変換器631−1から高濃度塩水が排水される。
【0049】
高圧RO膜50から排出された高濃度塩水は、圧力計測器61、4ポート切換弁62を通過し、変換器631−2の第1の空間へ流入する。このとき、変換器631−2の第2の空間には海水が充填されている。高濃度塩水は、シリンダ6311−2内にあるピストン6312−2を第2の空間方向へ移動させ、第2の空間内の海水を加圧しながら排出させる。
【0050】
ここで、可動子6313−2からピストン6312−2へ左側方向への力N2が与えられたとする。そして、ピストン6312−2が第1の空間に面する面積がA1であり、ピストン6312−2が第2の空間に面する面積がA2である。これらのことから、シリンダ6311−2の第2の空間から排出される海水の圧力P13は、4ポート切換弁62からの高濃度塩水の圧力P7を用いて、P13=(P7×A1+N1)/A2となる。これにより、圧力P13は、高圧RO膜50に導入される圧力P4と同等か少し高い圧力となる。ただし、モータの推力方向の違いにより、N1は正の値にも負の値にもなりうる。
【0051】
ここで、図3における逆止弁641−1〜641−4の状態を以下に説明する。
【0052】
圧力P13>圧力P3であるため、逆止弁641−4は閉じている。また、圧力P13>圧力P14であるため、逆止弁641−3は開いている。ここで、圧力P13と圧力P14との圧力差は、逆止弁641−2を海水が通過するときの圧力損失と考えることができる。
【0053】
また、圧力P14>圧力P8であるため、逆止弁641−2は閉じている。また、ここで、バルブ70の一端は、大気開放されているため、シリンダ6311−1の第2の空間のゲージ圧力はほぼ零である。つまり、P8は小さな圧力である。そのため、P3>P8であり、逆止弁641−1は開いている。
【0054】
保安フィルタ30からの海水は、逆止弁641−1を通過して、変換器631−1の第2の空間へ流入する。このとき、変換器631−1の第1の空間には高濃度塩水が充填されている。ここで、バルブ70の一端は、大気開放されているため、変換器631−1の第1の空間のゲージ圧はほぼ零である。逆止弁641−1を通過した海水は、0.2MPaの圧力を有し、シリンダ6311−1内にあるピストン6312−1を第1の空間方向へ移動させる。ピストン6312−1は、第1の空間方向へ移動する事により、第1の空間内の高濃度塩水を、4ポート切換弁62及びバルブ70を介して排出させる。
【0055】
そして、上記の動作が持続された場合、ピストン6312−2はシリンダ6311−2内の左端へ近接し、ピストン6312−1はシリンダ6311−1内の右端へ近接することとなる。すると、検出部65−3は可動子6313−2が接触したことを検出し、検出部65−2は可動子6313−1が非接触となったことを検出する。これにより、検出部65−2,65−3から切換制御部66へ検出信号が出力される。切換制御部66は、検出部65−2,65−3からの検出信号を受信すると、高濃度塩水の流入及び排出の方向を切り換える様に4ポート切換弁62に対して切換指示を出す。高濃度塩水の流入及び排出が切り換わると、動力回収装置60は、再度図2に示す状態となる。
【0056】
なお、本実施形態では、バルブ70の開き具合を調整することで、ピストン6312−1の移動速度とピストン6312−2の移動速度とを等しくするようにしている。これにより、送水ポンプ20の流量は時間的に変動せず、安定した動作をするようになる。
【0057】
次に、数値シミュレーションを用いて、以下の三つの場合の海水淡水化装置において、1mの淡水を造水するときの消費電力、つまり造水コストを算出して比較する。三つの場合の海水淡水化装置とは、動力回収装置を具備していない海水淡水化装置、従来の動力回収装置120を具備した海水淡水化装置、及び、本発明に係る動力回収装置60を具備した海水淡水化装置のことである。なお、図5は、従来の動力回収装置120の構成を示す模式図である。
【0058】
図6は、数値シミュレーションで用いる海水淡水化装置の仕様を示す。なお、海水淡水化装置自体の各パラメータは、各海水淡水化装置の数値シミュレーションにおいて共通である。また、昇圧ポンプ121のポンプ効率は、昇圧ポンプの構造を加味した上で、低い値としている。
【0059】
図7は、動力回収装置を具備していない海水淡水化装置における数値シミュレーションの結果を示す。図7によれば、造水コストは5.08kWh/mである。
【0060】
また、図8は本実施形態に係る動力回収装置60を具備した海水淡水化装置における数値シミュレーションの結果を示し、図9は従来の動力回収装置120を具備した海水淡水化装置における数値シミュレーションを示す。
【0061】
図8及び図9において説明する。
【0062】
バルブ70は上述した理由からある程度の流体抵抗が必要である。バルブ70で発生する圧力損失は流量(m/s)の2乗に比例するとして、図8及び図9に示した抵抗係数が必要である。
【0063】
さらに、ピストンがシリンダ内を移動するとき摩擦抵抗が発生する。この数値シミュレーションでは、この摩擦抵抗も考慮している。図8及び図9において、ピストンとシリンダとの摩擦抵抗を16333Nとした。また、図8においては、棒とシリンダとの摩擦抵抗を1776Nとした。また、図8においては、ピストンの面積比(A2/A1)を0.9882としてシリンダを製作した場合、動力回収装置60は、意図した動作をする。
【0064】
数値シミュレーションの結果、つまり、図2及び図5における各部での圧力と流量とは図8及び図9に示した数値となる。
【0065】
ポンプが流体に与える動力Wは、流量Qと圧力Pとを掛け合わせることにより求まる。すなわち、図8における送水ポンプ20の動力は2.894×10 W、高圧ポンプ40の動力は3.416×10 Wと算出される。また、図9における送水ポンプ20の動力は2.894×10 W、高圧ポンプ40の動力は3.356×10 W、昇圧ポンプ121の動力は5.978×10 Wと算出される。
【0066】
また、必要動力Wpower recoveryは、
【0067】
【数1】

【0068】
により算出される。なお、ΔPはポンプの揚程(Pa)、Qは流量(m/s)、ηはポンプ効率を示す。数式(1)により、図8における必要動力は、452kWとなる。また、図9における必要動力は、460kWとなる。
【0069】
また、動力回収率は、
【0070】
【数2】

【0071】
により算出される。なお、Wは動力回収装置が具備されていない場合の必要動力(W)である。数式(2)により、図8における動力回収率は57.3%となり、図9における動力回収率は56.6%となる。
【0072】
また、単純造水コストは、
【0073】
【数3】

【0074】
により算出される。なお、Qは1時間あたりの淡水流量(m/h)である。数式(3)により、図8における単純造水コストは2.17kWh/mとなり、図9における単純造水コストは2.21kWh/mとなる。
【0075】
これにより、図7乃至図9を比較すると、動力回収装置60,120を具備した海水淡水化装置は、具備しない海水淡水化装置よりも電力節約効果が非常に高いことがわかる。
【0076】
また、本実施形態に係る動力回収装置60を具備した海水淡水化装置は、従来の動力回収装置120を具備した海水淡水化装置よりも、造水コストは低くなる。これにより、本実施形態に係る動力回収装置60は、昇圧ポンプ121を用いずとも、有効に高濃度塩水の圧力エネルギーを回収することが可能となることがわかる。また、動力回収装置60を具備した海水淡水化装置の方が造水コストが低い理由は、昇圧ポンプ121のポンプ効率の低さに起因する。
【0077】
以上のように、上記第1の実施形態では、シリンダ6311−1,6311−2の第2の空間に、外部へ貫通するように可動子6313−1,6313−2が設置されている。外部へ貫通している事により、可動子6313−1,6313−2の一端は大気圧と同じ圧力を受けることとなる。そのため、ピストン6312−1,6312−2が第2の空間と接する面積が、ピストン6312−1,6312−2が第1の空間と接する面積よりも、可動子6313−1,6313−2の長手方向に垂直な断面積分だけ小さくなる。つまり、面積A1>面積A2となる。これにより、動力回収装置60は、第1の空間へ給水された高濃度塩水の圧力を利用して、高圧ポンプ40から出力される海水の圧力と同等の圧力の海水を第2の空間から出力することが可能となる。
【0078】
また、上記第1の実施形態では、シリンダ6311−1,6311−2から突出した可動子6313−1,6313−2の位置を検出し、この検出結果に基づいて4ポート切換弁62を切り換えるようにしている。これにより、シリンダ6311−1,6311−2内部のピストン6312−1,6312−2の位置を、正確かつ容易に把握することが可能となる。
【0079】
また、上記第1の実施形態では、可動子6313−1,6313−2と、固定子6314−1,6314−2とにより、シャフトモータを構成する。そして、モータ制御部67により供給電流を制御することで、ピストン6312−1,6312−2に左方向又は右方向の力を加えるようにしている。高圧RO膜50からの高濃度塩水の圧力P6は、高圧RO膜50を長期間使用することによりRO膜が詰まり減少する。モータ制御部67は、シャフトモータで発生される力の大きさと方向を制御することで、第1の空間へ供給される高濃度塩水の圧力が減少した場合であっても、第2の空間から排出される海水の圧力を一定に保つようにしている。これにより、モータ制御部67は、圧力P6が変動する場合であっても、動力回収装置60から出力される海水の圧力P14を、高圧ポンプ40から出力される海水の圧力P4と常に等しくすることが可能となる。
【0080】
したがって、本発明に係る動力回収装置60は、昇圧ポンプが無くとも高濃度塩水に含まれる圧力エネルギーを回収することができる。
【0081】
このように、本発明に係る動力回収装置60では、昇圧ポンプが不要となるため、造水のための消費電力を低減する事ができる。また、プラントに設置されるポンプの総数が減少する事となるため、メンテナンスコスト及びプラント製造コストを削減することができる。
【0082】
また、動力回収装置60では、変換器631−1,631−2の第2の空間にシャフトモータ可動子を設置することで、上記効果を得ることが可能である。そのため、プラントの製造コストをより削減することができる。
【0083】
なお、この発明は上記第1の実施形態に限定されるものではない。例えば、動力回収装置60は、図10に示す構造をしていても同様に実施可能である。図10における動力回収装置60は、海水供給部64として、4ポート切換弁68を具備する。切換制御部66は、4ポート切換弁62を切り換えるのと同一タイミングで4ポート切換弁68を切り換える。
【0084】
また、上記第1の実施形態では、動力回収装置60が、4ポート切換弁62を具備する例を説明したが、図11に示しように、4ポート切換弁62の代替として5ポート切換弁69を使用しても構わない。
【0085】
また、上記第1の実施形態では、動力回収装置60に変換器631−1,631−2が2つ搭載される例について説明したが、2n個(nは自然数)の変換器を搭載するようにしても構わない。
【0086】
[第2の実施形態]
図12は、本発明の第2の実施形態に係わる動力回収装置130の構成を示すブロック図である。図12において図2と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0087】
動力回収装置130における圧力変換部131は、変換器1311−1,1311−2を備える。変換器1311−1,1311−2の構造はそれぞれ同様であるため、ここでは、変換器1311−1について説明する。
【0088】
変換器1311−1は、シリンダ13111−1,13112−1と、ピストン13113−1,13114−1と、シャフトモータ可動子13115−1と、シャフトモータ固定子13116−1とを備える。
【0089】
シリンダ13111−1は、一面が開放されており、他面に1個の穴を有する。また、シリンダ13111−1の長手方向に垂直な断面の内側の面積はA1である。また、シリンダ13112−1は、一面が開放されており、他面に1個の穴を有する。また、シリンダ13112−1の長手方向に垂直な断面の内側の面積はA2である。シリンダ13111−1,13112−1における開放面は、対向している。
【0090】
ピストン13113−1は、シリンダ13111−1の内部に位置し、シリンダ13111−1との間にシール材を挟んで第1の空間を形成する。ピストン13113−1の面積はA1である。また、ピストン13114−1は、シリンダ13112−1の内部に位置し、シリンダ13112−1との間にシール材を挟んで第2の空間を形成する。ピストン13114−1の面積はA2である。第1の空間には高濃度塩水が供給され、第2の空間には海水が供給される。ここで、面積A1,A2の関係は、高圧RO膜50からの高濃度塩水の圧力、高圧ポンプ40からの海水の圧力、シリンダ13111−1とピストン13113−1との間の摩擦力、及び、シリンダ13112−1とピストン13114−1との間の摩擦力等に基づいて予め設定されている。
【0091】
可動子13115−1は、パイプの中に多数の磁石をならべたもので、コイルから成る固定子13116−1と共にシャフトモータを構成する。可動子13115−1は、固定子13116−1に電流が供給されることにより、可動子13115−1の長手方向へ駆動される。固定子13116−1は、モータ制御部67により供給電流が制御される。なお、可動子13115−1と、固定子13116−1とは非接触であり、その間に摩擦は生じない。
【0092】
また、可動子13115−1は、ピストン13113−1と、ピストン13114−1とを連結する。また、所定の位置にはドグが形成されている。
【0093】
検出部132−1,132−2は、可動子13115−1におけるドグの位置を検出するものである。検出部132−1は、ピストン13114−1がシリンダ13112−1の左端に近接したときにドグが検出部に当たることを検出できる位置に設置される。検出部132−2は、ピストン13113−1がシリンダ13111−1の右端に近接したときにドグが検出部に当たることを検出できる位置に設置される。検出部132−1,132−2は、ドグを検出した場合、制御部133へ検出信号を出力する。これにより、変換器1311−1におけるピストン13113−1,13114−1の位置を把握する事が可能となる。また、検出部132−3,132−4は、検出部132−1,132−2と同様の構成をしており、可動子13115−2におけるドグの位置を検出するものである。検出部132−3,132−4は、可動子13115−2のドグを検出した場合、制御部133へ検出信号を出力する。これにより、変換器1311−2におけるピストン13113−2,13114−2の位置を把握する事が可能となる。
【0094】
制御部133は、検出部132−1〜132−4からの検出信号に応じて、4ポート切換弁62に対して切換信号を出力する。すなわち、制御部133は、検出部132−1,132−4からの検出信号を受けた場合は、ピストン13114−1がシリンダ13112−1の左端近傍に位置し、ピストン13113−2がシリンダ13111−2の右端近傍に位置すると判断する。そして、制御部133は、変換器1311−1から高濃度塩水を排水するように、また、変換器1311−2へ高濃度塩水を給水するように、4ポート切換弁62に対して切換信号を出す。また、制御部133は、検出部132−2,132−3からの検出信号を受けた場合は、ピストン13113−1がシリンダ13111−1の右端近傍に位置し、ピストン13114−2がシリンダ13112−2の左端近傍に位置すると判断する。そして、制御部133は、変換器1311−1へ高濃度塩水を給水するように、また、変換器1311−2から高濃度塩水を排水するように、4ポート切換弁62に対して切換信号を出す。
【0095】
以上の構成により、上記第2の実施形態に係る動力回収装置130は、第1の実施形態に係る動力回収装置60と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0096】
なお、上記第2の実施形態では、動力回収装置130に変換器1311−1,1311−2が2つ搭載される例について説明したが、2n個(nは自然数)の変換器を搭載するようにしてもかまわない。
【0097】
[第3の実施形態]
図13は、本発明の第3の実施形態に係わる動力回収装置140の構成を示すブロック図である。図13において図2と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0098】
動力回収装置140における圧力変換部141は、変換器1411−1,1411−2,1411−3と、クランクシャフト1412と、モータ1413とを備える。変換器1411−1,1411−2,1411−3は、それぞれがクランクシャフト1412に接続されている。クランクシャフト1412のアームは、それぞれが図14に示すように120度づつずれるように設計されている。
【0099】
また、クランクシャフト1412は、回転角検出器142を介してモータ1413と接続している。モータ1413は、モータ制御部144により供給電流が制御される。
【0100】
変換器1411−1は、シリンダ14111−1,14112−1と、ピストン14113−1,14114−1と、連結棒14115−1,14116−1とを備える。なお、変換器1411−1,1411−2,1411−3の構造はそれぞれ同様であるため、ここでは、変換器1411−1について説明する。
【0101】
シリンダ14111−1は、一面が開放されており、他面に1個の穴を有する。また、シリンダ14111−1の長手方向に垂直な断面の内側の面積はA1である。また、シリンダ14112−1は、一面が開放されており、他面に1個の穴を有する。また、シリンダ14112−1の長手方向に垂直な断面の内側の面積はA2である。シリンダ14111−1,14112−1における開放面は、対向している。
【0102】
ピストン14113−1は、シリンダ14111−1の内部に位置し、シリンダ14111−1との間にシール材を挟んで第1の空間を形成する。ピストン14113−1の面積はA1である。また、ピストン14114−1は、シリンダ14112−1の内部に位置し、シリンダ14112−1との間にシール材を挟んで第2の空間を形成する。ピストン13114−1の面積はA2である。第1の空間には高濃度塩水が供給され、第2の空間には海水が供給される。ここで、面積A1,A2の関係は、高圧RO膜50からの高濃度塩水の圧力、高圧ポンプ40からの海水の圧力、シリンダ14111−1とピストン14113−1との間の摩擦力、及び、シリンダ14112−1とピストン14114−1との間の摩擦力等に基づいて予め設定されている。
【0103】
連結棒14115−1は、ピストン14113−1と、クランクシャフト1412のピンとを連結する。連結棒14116−1は、ピストン14114−1と、クランクシャフト1412のピンとを連結する。
【0104】
図13の状態では、高濃度塩水が変換器1411−1の第1の空間へ流入され、この高濃度塩水によりピストン14113−1が左方向へ移動する。また、海水が変換器1411−2,1411−3の第2の空間へ流入され、この海水によりピストン14113−2,14113−3が右方向へ移動する。これにより、クランクシャフト1412は、図13の矢印方向に回転することとなる。
【0105】
回転角検出部142は、クランクシャフト1412の回転角を検出するものである。回転角検出部142は、所定の角度に達した場合、検出信号を切換制御部143へ出力する。例えば、回転角検出部142には、ピストン14113−1〜14113−3がシリンダ14111−1〜14111−3の右端に近接するときの角度、及び、ピストン14114−1〜14114−3がシリンダ14112−1〜14112−3の左端に近接するときの角度の計6個の角度が予め登録されており、その角度に達すると、検出信号を切換制御部143へ出力する。これにより、切換制御部143は、変換器におけるピストンの位置を把握する事が可能となる。
【0106】
切換制御部143は、回転角検出部142から検出信号を受けると、3ポート切換弁62−1〜62−3のうち、検出信号に対応した変換器と接続する3ポート切換弁に対して切換指示を与える。
【0107】
モータ制御部144は、圧力計測器61からの計測結果に基づいて、モータ1413への供給電流を制御するものである。モータ制御部144は、モータ1413への供給電流を制御することで、クランクシャフト1412に反時計方向又は時計方向のトルクを加える。例えば、モータ制御部144は、圧力計測器61の計測結果が予め想定していた値よりも減少した場合、クランクシャフト1412に対して反時計方向に回転に負荷を加えるように、モータ1413への供給電流を制御する。
【0108】
次に、上記構成に動力回収装置140の動作を説明する。
【0109】
図13における動力回収装置140は、変換器1411−1に高濃度塩水が給水され、変換器1411−2,1411−3から高濃度塩水が排水される状態となっている。
【0110】
保安フィルタ30からの海水は、0.2MPaで高圧ポンプ40へ供給されると共に、逆止弁641−4,641−6を通過して変換器1411−2,1411−3の第2の空間へ供給される。
【0111】
高圧ポンプ40で6.0MPaに昇圧された海水は、動力回収装置130からの海水と合流され、高圧RO膜50へ導入される。このとき、動力回収装置130からの海水は、変換器1411−1の第2の空間から排出され、逆止弁641−2を通過したものである。高圧RO膜50は、淡水と高濃度塩水とを出力する。
【0112】
高圧RO膜50から排出された高濃度塩水は、圧力計測器61、3ポート切換弁62−1を通過し、変換器1411−1の第1の空間へ流入する。このとき、変換器1411−1の第2の空間には海水が充填されている。高濃度塩水は、シリンダ14111−1内にあるピストン14113−1を左方向へ移動させ、シリンダ14112−1内にあるピストン14114−1を左方向へ移動させる。これにより、変換器1411−1の第2の空間内の海水が加圧されて排出される。このとき、ピストン14113−1が左方向へ移動する事により、クランクシャフト1412には、図13に示す方向の回転力が与えられる。
【0113】
ここで、モータ1413により時計方向のトルクが加えられることにより、ピストン14113−1,14114−1に与えられる力をN1とする。そして、ピストン14113−1の面積がA1であり、ピストン14114−1の面積がA2である。これらのことから、変換器1411−1の第2の空間から排出される海水の圧力は、3ポート切換弁62−1からの高濃度塩水の圧力Pを用いて、(P×A1+N1)/A2となる。これにより、変換器1411−1の第2の空間から排出される海水の圧力は、高圧RO膜50に導入される圧力と同等か少し高い圧力となる。ただし、モータの推力の方向の違いにより、N1は正の値にも負の値にもなりうる。
【0114】
クランクシャフト1412が図13の矢印方向に回転すると、クランクシャフト1412に接続された変換器1411−2,1411−3のピストン14113−2,14113−3,14114−2,14114−3は、右方向に移動する。これにより、逆止弁641−4,641−6から、変換器1411−2,1411−3の第2の空間へそれぞれ海水が流入されると共に、変換器1411−2,1411−3の第1の空間から高濃度塩水が3ポート切換弁62−2,62−3及びバルブ70を介してそれぞれ排出される。
【0115】
そして、上記の動作が持続された場合、クランクシャフト1412の回転角が所定の角度に達する度に、回転角検出部142から切換制御部143へ検出信号が出力される。切換制御部143は、回転角検出部142からの検出信号を受信すると、高濃度塩水の流入及び排出の方向を切り換える様に3ポート切換弁62−1〜62−3のうちいずれかの3ポート切換弁を順次切り換える。
【0116】
以上の構成により、上記第3の実施形態に係る動力回収装置140は、第1の実施形態に係る動力回収装置60と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0117】
また、上記第3の実施形態では、ピストンがクランクシャフト1412に接続されていることにより、シリンダの長手方向への変位が、サイン波形状に推移する。そして、3ポート切換弁62−1〜62−3が、シリンダ内のピストンの位置に応じて順次切り換わるようになっている。これにより、動力回収装置140は、3ポート切換弁62−1〜62−3の弁切り換え時に発生する脈動を低減することが可能となる。
【0118】
なお、上記第3の実施形態では、動力回収装置140に変換器14111−1〜14111−3が3つ搭載される例について説明したが、3n個(nは自然数)の変換器を搭載するようにしてもかまわない。
【0119】
また、面積A1と面積A2とが同一面積であっても構わない。
【0120】
[第4の実施形態]
図15は、本発明の第4の実施形態に係わる動力回収装置150の構成を示すブロック図である。図15において図2と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0121】
動力回収装置150における圧力変換部151は、ベーン型ロータリーアクチュエータ1511−1,1511−2と、回転軸1512と、モータ1513とを備える。ロータリーアクチュエータ1511−1と、ロータリーアクチュエータ1511−2とは、回転軸1512により結合されている。また、回転軸1512は、回転角検出部152を介してモータ1513と接続している。モータ1513は、モータ制御部154により供給電流が制御される。
【0122】
図16は、本発明の第4の実施形態に係るロータリーアクチュエータ1511−1,1511−2の構造を示す模式図である。図16において、ロータリーアクチュエータ1511−1は、筐体15111−1及びベーン15112−1を備える。
【0123】
筐体15111−1は、密閉空間を形成し、半径r1の円筒形をしている。筐体15111−1の中心軸には、回転軸1512が貫通するように配置されている。筐体15111−1の内壁面から回転軸1512までには、衝立部15113−1が形成される。衝立部15113−1は、筐体15111−1内で固着されている。
【0124】
ベーン15112−1は、回転軸1512と接続するように形成され、筐体15111−1の内壁面とシール剤を介して接触する。ベーン15112−1の面積はA1である。
【0125】
筐体15111−1が形成する密閉空間は、ベーン15112−1と衝立部15113−1とにより、第1及び第2の空間に分割される。ベーン15112−1は、第1の空間へ高濃度塩水が流入される場合には、図16に示すように矢印方向へ回転し、第2の空間に充填された高濃度塩水を押し出して排出する。これに対し、第2の空間へ高濃度塩水が流入される場合には、図16に示す矢印方向とは逆の方向へ回転し、第1の空間に充填された高濃度塩水を押し出して排出する。
【0126】
ロータリーアクチュエータ1511−2は、筐体15111−2及びベーン15112−2を備える。筐体15111−2は、密閉空間を形成し、半径r2の円筒形をしている。なお、半径r1>半径r2である。筐体15111−2の中心軸には、回転軸1512が貫通するように配置されている。また、筐体15111−2の内壁面から回転軸1512までには、衝立部15113−2が形成される。衝立部15113−2は、筐体15111−2内で固着されている。
【0127】
ベーン15112−2は、回転軸1512と接続するように形成され、筐体15111−2の内壁面とシール剤を介して接触する。ベーン15112−1と、ベーン15112−2とは、常に同じ角度関係を保っている。
【0128】
ベーン15112−2の面積はA2である。ここで、面積A1,A2の関係は、高圧RO膜50からの高濃度塩水の圧力、高圧ポンプ40からの海水の圧力、筐体15111−1,15111−2とベーン15112−1,15112−2との間の摩擦力等に基づいて予め設定されている。
【0129】
筐体15111−2が形成する密閉空間は、ベーン15112−2と衝立部15113−2により、第1及び第2の空間に分割される。ベーン15112−2は、第1の空間へ海水が流入される場合には、図16に示すように矢印方向へ回転し、第2の空間に充填された海水を押し出して排出する。これに対し、第2の空間へ海水が流入される場合には、図16に示す矢印方向とは逆の方向へ回転し、第1の空間に充填された海水を押し出して排出する。
【0130】
回転角検出部152は、回転軸1512の回転角を検出するものである。回転角検出部152は、所定の角度に達した場合、検出信号を制御部153へ出力する。例えば、回転角検出部152には、ベーン15112−1,15112−2が衝立部15113−1,15113−2へ左側から近接するときの角度、及び、ベーン15112−1,15112−2が衝立部15113−1,15113−2へ右側から近接するときの角度の計2個の角度が予め登録されており、その角度に達すると、検出信号を制御部153へ出力する。これにより、ロータリーアクチュエータ1511−1,1511−2におけるベーン15112−1,15112−2の位置を把握する事が可能となる。
【0131】
制御部153は、回転角検出部152から検出信号を受けると、高濃度塩水を流入する空間と、排出する空間とを切り換えるように、4ポート切換弁62に対して切換指示を与える。
【0132】
モータ制御部154は、圧力計測器61からの計測結果に基づいて、モータ1513への供給電流を制御するものである。モータ制御部154は、モータ1513への供給電流を制御することで、回転軸1512に左回転又は右回転のトルクを加える。例えば、モータ制御部154は、圧力計測器61の計測結果が予め想定していた値よりも減少した場合、回転軸1512に対してそのときの回転方向にトルクを加えるように、モータ1513への供給電流を制御する。
【0133】
次に、上記構成に動力回収装置150の動作を説明する。
【0134】
図15における動力回収装置150は、ロータリーアクチュエータ1511−1の第1の空間へ高濃度塩水が給水され、ロータリーアクチュエータ1511−1の第2の空間から高濃度塩水が排出される状態となっている。
【0135】
保安フィルタ30からの海水は、0.2MPaで高圧ポンプ40へ供給されると共に、逆止弁641−4を通過してロータリーアクチュエータ1511−2の第1の空間へ供給される。
【0136】
高圧ポンプ40で6.0MPaに昇圧された海水は、動力回収装置150からの海水と合流され、高圧RO膜50へ導入される。このとき、動力回収装置150からの海水は、ロータリーアクチュエータ1511−2の第2の空間から排出され、逆止弁641−2を通過したものである。高圧RO膜50は、淡水と高濃度塩水とを出力する。
【0137】
高圧RO膜50から排出された高濃度塩水は、圧力計測器61、4ポート切換弁62を通過し、ロータリーアクチュエータ1511−1の第1の空間へ流入する。このとき、ロータリーアクチュエータ1511−1の第2の空間には高濃度塩水が充填されている。高濃度塩水は、ロータリーアクチュエータ1511−1内にあるベーン15112−1を第2の空間方向へ回転させ、第2の空間内の高濃度塩水を4ポート切換弁62及びバルブ70を介して排出させる。
【0138】
ロータリーアクチュエータ1511−1のベーン15112−1が回転すると、回転軸1512により結合された、ロータリーアクチュエータ1511−2のベーン15112−2も回転する。これにより、ロータリーアクチュエータ1511−2の第2の空間から海水が逆止弁641−2を介して排出されると共に、ロータリーアクチュエータ1511−2の第1の空間へ逆止弁641−4を介して海水が流入される。
【0139】
ここで、ベーン15112−1の面積がA1であり、ベーン15112−2の面積がA2である。このことから、ロータリーアクチュエータ1511−2の第2の空間から排出される海水の圧力は、4ポート切換弁62からの高濃度塩水の圧力より大きな圧力となる。
【0140】
ここで、モータの動作を説明する。モータ1513により正ないし負のトルクが加えられることにより、ベーン15112−1,15112−2の回転トルクが上下する。圧力計測器61で測定された圧力が、あらかじめ設定された圧力より小さければ、モータは現在の回転方向にトルクを発生させる。また、設定された圧力より大きければ、モータは現在の回転方向と反対方向のトルクを発生させる。以上の動作により、ロータリーアクチュエータ1511−2の第2の空間から排出される海水の圧力は、高圧RO膜50に導入される圧力と同等か少し高い圧力となる。
【0141】
そして、上記の動作が持続された場合、ベーン15112−1,15112−2は、衝立部15113−1,15113−2へ左側から近接することとなる。すると、回転角検出部152は所定の角度に達したことを検出し、制御部153へ検出信号を出力する。制御部153は、回転角検出部152からの検出信号を受信すると、高濃度塩水の流入及び排出の方向を切り換える様に4ポート切換弁62に対して切換指示を出す。
【0142】
以上の構成により、上記第4の実施形態に係る動力回収装置150は、第1の実施形態に係る動力回収装置60と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0143】
なお、上記第4の実施形態では、圧力変換器151がベーン型ロータリーアクチュエータ1511−1,1511−2を備える例について説明したが、これに限定される訳ではない。例えば、ベーン型ロータリーアクチュエータの代わりに、歯車モータ、アキシアルピストンモータ、プランジャーポンプ、ラジアルピストンモータ及びトロコイドモータ等を備える場合であっても同様に実施可能である。
【0144】
また、面積A1と面積A2とが同一面積であっても構わない。
【0145】
さらに、この発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0146】
10…前処理系
20…送水ポンプ
30…保安フィルタ
40…高圧ポンプ
50…高圧RO膜
60,120,130,140,150…動力回収装置
61…圧力計測器
62,68…4ポート切換弁
62−1〜62−3…3ポート切換弁
63,131,141,151…圧力変換部
631,1311,1411…変換器
6311…シリンダ
6312…ピストン
6313,13115…シャフトモータ可動子
6314,13116…シャフトモータ固定子
64…海水供給部
641…逆止弁
65,132…検出部
66,133,143,153…切換制御部
67…モータ制御部
69…5ポート切換弁
70…バルブ
80…低圧ポンプ
90…低圧RO膜
100…浄水池
110…供給ポンプ
121…昇圧ポンプ
13111,13112,14111,14112…シリンダ
13113,13114,14113,14114…ピストン
14115,14116…連結棒
1412…クランクシャフト
1413,1513…モータ
142,152…回転角検出部
1511…ベーン型ロータリーアクチュエータ
15111…筐体
15112…ベーン
15113…衝立部
1512…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力の海水を高圧ポンプにより第2の圧力に昇圧して逆浸透膜へ供給し、前記逆浸透膜から淡水を取り出すとともに、第3の圧力の濃縮水を排出する海水淡水化装置に用いられ、前記濃縮水が有するエネルギーを回収する動力回収装置において、
前記逆浸透膜からの第3の圧力の濃縮水を第1の空間で受けることで可動部を動かし、前記可動部の移動により、第2の空間に充填された海水を押し出して前記第2の圧力で出力する圧力変換部であって、前記第2の空間から安定して前記第2の圧力の海水が出力されるように前記可動部を駆動する駆動機構を備える圧力変換部と、
前記圧力変換部からの海水を前記高圧ポンプからの海水に合流させる海水供給部と
を具備することを特徴する動力回収装置。
【請求項2】
前記逆浸透膜からの第3の圧力の濃縮水を前記第1の空間へ給水するか、又は、前記第1の空間から濃縮水を排出させるかを、切換指示に従って切り換える切換部と、
前記圧力変換部における可動部の位置を検出する検出部と、
前記可動部の位置に基づいて前記切換部を切り換えるか否かを判断し、前記可動部が第2の空間を予め設定した容量だけ狭めた位置にある場合、前記第1の空間から前記濃縮水を排出させるように前記切換部に対して前記切換指示を与え、前記可動部が第1の空間を予め設定した容量だけ狭めた位置にある場合、前記第1の空間へ前記濃縮水を給水するように前記切換部に対して前記切換指示を与える切換制御部と、
をさらに具備し、
前記海水供給部は、前記第1の空間から前記濃縮水が排出される場合は、前記第2の空間へ前記第1の圧力の海水を供給し、
前記圧力変換部は、前記第1の空間から前記濃縮水が排出される場合は、前記海水供給部からの第1の圧力の海水を前記第2の空間で受けることで前記可動部を動かし、前記可動部の移動により、前記第1の空間に充填された濃縮水を前記切換部を介して排出することを特徴とする請求項1記載の動力回収装置。
【請求項3】
前記圧力変換部は、前記切換部により濃縮水の供給と排出とが交互に切り換えられる少なくとも二つの変換器を備え、
前記変換器は、
密閉空間を形成するシリンダと、
前記シリンダ内に前記可動部として配置され、前記密閉空間を前記第1及び第2の空間に分割するピストンと、
磁石の集合体から成るシャフトと、電流が供給されることにより前記シャフトを長手方向にスライドさせるコイルとを備えるシャフトモータであって、前記シャフトの一端が前記第2の空間側から前記ピストンに接着し、他端が外部へ貫通するシャフトモータと
を備え、
前記海水供給部は、前記変換器のうち一方の第2の空間からの海水を前記高圧ポンプからの海水に合流させ、他方の第2の空間へ前記第1の圧力の海水を供給し、
前記検出部は、前記シャフトのうち外部に貫通する貫通部分を検出することで、前記ピストンの位置を検出し、
前記切換制御部は、前記ピストンの位置に基づいて前記切換部に対して前記切換指示を与えることを特徴とする請求項2記載の動力回収装置。
【請求項4】
前記圧力変換部は、前記切換部により濃縮水の供給と排出とが交互に切り換えられる少なくとも二つの変換器を備え、
前記変換器は、
一方が開放された第1及び第2のシリンダと、
第1の面積を有して前記第1のシリンダ内に配置され、前記第1のシリンダ内に前記第1の空間を形成する第1のピストンと、
第2の面積を有して前記第2のシリンダ内に配置され、前記第2のシリンダ内に前記第2の空間を形成する第2のピストンと、
磁石の集合体から成るシャフトと、電流が供給されることにより前記シャフトを長手方向にスライドさせるコイルとを備えるシャフトモータであって、前記シャフトは、所定の位置にドグを備え、前記第1及び第2のピストンを連結することで、前記可動部を形成するシャフトモータと
を備え、
前記海水供給部は、前記変換器のうち一方の第2の空間からの海水を前記高圧ポンプからの海水に合流させ、他方の第2の空間へ前記第1の圧力の海水を供給し、
前記検出部は、前記ドグを検出することで、前記第1及び第2のピストンの位置を検出し、
前記切換制御部は、前記第1及び第2のピストンの位置に基づいて前記切換部に対して前記切換指示を与えることを特徴とする請求項2記載の動力回収装置。
【請求項5】
前記逆浸透膜からの濃縮水の圧力をモニタし、前記モニタ結果に従って、前記コイルへの供給電流を制御するモータ制御部をさらに具備することを特徴とする請求項3及び4のいずれかに記載の動力回収装置。
【請求項6】
前記圧力変換部は、前記切換部により濃縮水の供給と排出とが順次切り換えられる少なくとも三つの変換器を備え、
前記変換器は、クランクシャフトにそれぞれが120度づつずれて形成されたアームにそれぞれ接続され、
一方が開放された第1及び第2のシリンダと、
第1の面積を有して前記第1のシリンダ内に配置され、前記第1のシリンダ内に前記第1の空間を形成する第1のピストンと、
第2の面積を有して前記第2のシリンダ内に配置され、前記第2のシリンダ内に前記第2の空間を形成する第2のピストンと、
前記アームと前記第1のピストンとを連結する第1の連結棒と、
前記アームと前記第2のピストンとを連結する第2の連結棒と
を備え、
前記クランクシャフトは、電流が供給されることによりトルクを発生させるモータに接続され、
前記海水供給部は、前記変換器のうち少なくとも一つの第2の空間からの海水を前記高圧ポンプからの海水に合流させ、その他の第2の空間へ前記第1の圧力の海水を供給し、
前記検出部は、前記クランクシャフトの回転角を検出することで、前記変換器毎の第1及び第2のピストンの位置を検出し、
前記切換制御部は、前記変換器毎の第1及び第2のピストンの位置に基づいて前記切換部に対して前記切換指示を順次与えることを特徴とする請求項2記載の動力回収装置。
【請求項7】
前記圧力変換部は、同一の回転軸により連結された少なくとも第1及び第2のベーン型ロータリーアクチュエータを備え、
前記第1のロータリーアクチュエータは、
前記濃縮水が充填された第1の密閉空間を形成し、内部に第1の衝立部を有する第1の筐体と、
第1の面積を有し、前記第1の筐体内における前記回転軸に前記可動部として配置され、前記第1の衝立部と共に前記第1の密閉空間を二つの空間に分割することで、前記第1の空間を形成する第1のベーンと
を備え、
前記第2のロータリーアクチュエータは、
前記海水が充填された第2の密閉空間を形成し、内部に第2の衝立部を有する第2の筐体と、
第2の面積を有し、前記第2の筐体内における前記回転軸に前記可動部として配置され、前記第2の衝立部と共に前記第2の密閉空間を二つの空間に分割することで、前記第2の空間を形成する第2のベーンであって、前記第1のベーンと同一角度で回転する第2のベーンと
を備え、
前記回転軸は、電流が供給されることによりトルクを発生させるモータに接続されることを特徴とする請求項1記載の動力回収装置。
【請求項8】
前記逆浸透膜からの第3の圧力の濃縮水を前記第1の空間へ給水するか、又は、前記濃縮水を前記第1の空間と隣接した第3の空間へ給水するかを、切換指示に従って切り換える切換部と、
前記回転軸の回転角を検出することで、前記第1及び第2のベーンの位置を検出する検出部と、
前記第1及び第2のベーンの位置に基づいて前記切換部を切り換えるか否かを判断し、前記第1のベーンが第3の空間を予め設定した容量だけ狭めた位置にある場合、前記第3の空間へ前記濃縮水を給水するように前記切換部に対して前記切換指示を与え、前記第1のベーンが第1の空間を予め設定した容量だけ狭めた位置にある場合、前記第1の空間へ前記濃縮水を給水するように前記切換部に対して前記切換指示を与える切換制御部と
をさらに具備し、
前記圧力変換部は、前記第1の空間へ前記濃縮水が供給される場合は、前記第1のベーンにより前記第3の空間に充填された濃縮水を押し出して排出し、これに伴って前記第2のベーンにより前記第2の空間に充填された海水を押し出して前記第2の圧力で出力し、前記第3の空間へ前記濃縮水が供給される場合は、前記第1のベーンにより前記第1の空間に充填された濃縮水を押し出して排出し、これに伴って前記第2のベーンにより前記第2の空間に隣接する第4の空間に充填された海水を押し出して前記第2の圧力で出力し、
前記海水供給部は、前記第1の空間へ前記濃縮水が給水される場合は、前記第4の空間へ前記第1の圧力の海水を供給し、前記第3の空間へ前記濃縮水が給水される場合は、前記第2の空間へ前記第1の圧力の海水を供給することを特徴とする請求項7記載の動力回収装置。
【請求項9】
前記逆浸透膜からの濃縮水の圧力をモニタし、前記モニタ結果に従って、前記モータへの供給電流を制御するモータ制御部をさらに具備することを特徴とする請求項6及び7のいずれかに記載の動力回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−56480(P2011−56480A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212189(P2009−212189)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】