説明

動圧空気軸受、ブラシレスモータ、光偏向器および光走査装置

【課題】 従来の動圧空気軸受においては、軸またはスリーブの回転数に比例して動圧が増大するので、消費電力、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズが増大するという問題があった。
【解決手段】 外周面に螺旋状の溝が形成された軸と、軸に隙間を有して挿入されたスリーブとからなる動圧空気軸受において、溝の幅を、溝の一端から他端に向かって除々に広くすることにより、従来の動圧空気軸受に対して消費電力、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズの発生を抑えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置、医療機器の露光装置等に用いられる動圧空気軸受、ブラシレスモータ、光偏向器および光走査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に用いられる光走査装置としては、レーザー光を出射する光源と、光源から出射されたレーザー光を偏向反射する光偏向器と、光偏向器により偏向反射されたレーザー光を感光体ドラム等に導くミラー、レンズ等を有する(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
ここで、光偏向器としては、図15に示すものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
この光偏向器は、ハウジング100に固定配設される円柱形状の固定軸101と、この固定軸101に回転自在に支持される回転体110とを有している。そして、この回転体110は、固定軸101との間にわずかの隙間をもって配設されるスリーブ111と、このスリーブ111の上部内側に固定配設されるリング状のマグネット112と、スリーブ111の中央部外側に固定配設されるポリゴンミラー113と、スリーブ111の下部外側にフランジ114を介して固定配設されるリング状のロータマグネット115とを備えている。尚、符号116は、回転体110の重量の偏心を修正するためのバランスウェイト(図示せず)が取り付けられる溝である。
【0004】
また、固定軸101の上部外側には、回転体110に設けられたリング状マグネット112と対向するようにリング状マグネット102が固定配設されており、これらリング状マグネット102及び112によって回転体110をスラスト方向に軸受けするスラスト磁気軸受Sが構成されている。
【0005】
更に、ハウジング100には、回転体110に設けられたリング状のロータマグネット115と対向するように鉄心コイル103が固定配設されており、これらロータマグネット115及び鉄心コイル103によって回転体110を回転させるブラシレスモータMが構成されている。
【0006】
また、回転体110のスリーブ111のうち、固定軸101と対向する内周面111aは、軸受面仕上げが施される一方、このスリーブ111の内周面111aと対向する固定軸101の外周面101aには、図中破線で示すようにヘリングボーン溝104が形成されている。このヘリングボーン溝104によって、回転体110をラジアル方向に支持するラジアル動圧空気軸受Rが構成されている。尚、ヘリングボーン溝104に代えて、固定軸に螺旋溝を設けたものもある(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
この光偏向器では、ブラシレスモータMにより回転体110を回転させると、回転体110が、ラジアル動圧空気軸受Rにより固定軸101に対して一定距離(隙間)をもって非接触に支持されると共に、スラスト磁気軸受Sにより固定軸101に対して一定高さに支持されることとなる。これにより、スラスト方向の軸受として動圧軸受を用いるタイプのものより、光偏向器の高さを低くできるという利点がある。
また、回転体110の重心の位置を回転体110の軸方向の略中心の位置にすることができるので、回転体110を安定して回転させることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2007−183327号公報
【特許文献2】特開平10−268222号公報
【特許文献3】特開平5−071532号公報
【特許文献4】特開2004−332784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
動圧空気軸受を用いた光偏向器等の回転装置は、回転装置の動作中に加えられる外力に耐えられるよう回転体を保持する力(動圧)が必要である。ここで、外力とは衝撃等により外部から受ける力をいい、より具体的には、光偏向器を備えた画像形成装置が、地震、作業者の衝突等により受ける衝撃力等をいう。
【0010】
一方、外部から加えられる外力は、回転装置の回転数とは無縁である。このため、回転装置は、外力に影響されないだけの必要な保持力(動圧)を回転装置の起動から終了まで、回転装置の回転数とは関係なく常に一定に備えていることが望まれる。
【0011】
しかし、前記した動圧空気軸受(特許文献3、4)では、回転体の保持力となる動圧は、回転装置の回転数によって大きく変化するため、以下の問題があった。
(1)発生する動圧は、回転体の回転数の上昇に比例して増加するため、外力に影響されないだけの必要な保持力を得るために設定された回転数(所定回転数)に達するまでに時間を要し、装置の立ち上がり(使用が可能となるまで)に時間を要するという問題があった。
【0012】
(2)また、それと同時に、所定回転数に達するまでの間は、外力に影響されないだけの必要な保持力が得らず、外力に耐えられないという問題もあった。
(3)さらに、共通の動圧空気軸受を複数の回転数(例えば、高速と低速)において使用する場合もあるが、所定回転数を高速側に設定すると、低速側では動圧が不足し外力に耐えられず、所定回転数を低速側で設定すると、高速側では動圧が過剰に発生するので、消費電力、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズが増大するという問題があった。
【0013】
ここで、共通の動圧空気軸受を複数の回転数で使用する場合としては、例えば、1つの光偏向器を有する画像形成装置等においてこの光偏向器を複数の回転数で使用する場合や、動圧空気軸受を標準部品とし、使用する回転数が異なる複数の画像形成装置等で標準部品である動圧空気軸受を使用する場合などである。
【0014】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、軸の外周面またはスリーブの内周面に形成した螺旋状の溝の溝幅を一端から他端に向かって徐々に広くするという簡単な構成により、所望の動圧が短時間で得られ(所定回転数に短時間に到達し)、かつ、高速回転時における過剰な動圧の発生を抑制して、消費電力、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズの増大を抑える動圧空気軸受、ブラシレスモータ、光偏向器および光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(第1発明)
第1発明に係る動圧空気軸受は、軸と、この軸に隙間を有して挿入されたスリーブとからなり、軸の外周面またはスリーブの内周面に螺旋状の溝が形成された動圧空気軸受に関し、溝の幅を、溝の一端から他端に向かって除々に広くしたものである。
【0016】
(第2発明)
第2発明に係る動圧空気軸受は、第1発明において、溝が軸の外周面またはスリーブの内周面に複数形成され、複数の溝が互いに交わることなく、該複数の溝の中心線を互いに平行としたものである。ここで、溝の中心線とは、溝の短手方向の両壁面から等距離にある点を結んでできる線のことである。
【0017】
(第3発明)
第3発明に係る動圧空気軸受は、第1発明または第2発明において、溝が一または複数の箇所で曲げられたものである。
【0018】
(第4発明)
第4発明に係るブラシレスモータは、第1発明、第2発明または第3発明の動圧空気軸受において、軸にロータマグネットが固定され、スリーブが基板に固定され、基板に固定されたモータコアが、ロータマグネットと対向したものである。
【0019】
(第5発明)
第5発明に係るブラシレスモータは、第1発明、第2発明または第3発明の動圧空気軸受において、スリーブにロータマグネットが固定され、軸が基板に固定され、基板に固定されたモータコアが、ロータマグネットと対向したものである。
【0020】
(第6発明)
第6発明に係る光偏向器は、第4発明のブラシレスモータにおいて、さらに、軸にポリゴンミラーが固定されたものである。
【0021】
(第7発明)
第7発明に係る光偏向器は、第5発明のブラシレスモータにおいて、さらに、スリーブにポリゴンミラーが固定されたものである。
【0022】
(第8発明)
第8発明に係る光偏向器は、第6発明または第7発明の光偏向器を備えた光走査装置に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、所望の動圧が短時間で得られるようにし、かつ、高速回転時における動圧の過剰な発生を抑制して、消費電力、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズの増大を抑えた動圧空気軸受、ブラシレスモータ、光偏向器または光走査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明に係る第1実施例を図1乃至図4を用いて説明する。
図1は本発明に係る光走査装置の平面図、図2はハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図(図1におけるA−A断面図)、図3はハウジングにおける光偏向器の取り付け箇所の部分拡大図(平面図)、図4はハウジングの表面に形成した円環状の突起の斜視図(図3における矢視B)である。説明を簡単にするため、図2においては、固定軸以外を断面図にしている。また、図2において、見えない部分(固定軸の反対側)に存する溝は波線等により図示していない。
【0026】
〔光走査装置〕
まず、本発明に係る光走査装置の基本構成について説明する。
図1に示すように、光走査装置1は、レーザー光3を出射するレーザーダイオード等の光源2と、光源2から出射されたレーザー光3を平行光にするコリメータレンズ4と、コリメータレンズ4を通過したレーザー光3を副走査方向に絞り込むシリンドリカルレンズ5と、シリンドリカルレンズ5を通過したレーザー光3を主走査方向に偏向反射するポリゴンミラー14を備えた光偏向器6と、ポリゴンミラー14により偏向反射されたレーザー光3を感光体7に導くFθレンズ8および反射ミラー9とを有する。
【0027】
ここで、主走査方向とは、光走査装置1が感光体7の表面にレーザー光3を照射する際のレーザー光3の移動方向をいう。また、副走査方向とは、感光体7の表面の移動方向である。これら主走査方向と副走査方向は、互いに直交する関係にある。
【0028】
光走査装置1は、その他にもレーザー光3が感光体7の表面を走査するタイミングを検知するための反射ミラー10および検出センサ11を有している。
前記した光源2、コリメータレンズ4、シリンドリカルレンズ5、光偏向器6、Fθレンズ8、反射ミラー9、10および検出センサ11は、ハウジング12に固定されている。
【0029】
〔光偏向器〕
次に、光偏向器6の構成について、図2を用いて詳細に説明する。
図2に示すように、光偏向器6は、金属製の基板13と、基板13に複数のネジ15によって固定された多段の円柱形状でかつセラミック製の固定軸16(外径φ11mm−4μm)と、この固定軸16に回転自在に支持された回転体17とから構成されている。
【0030】
この回転体17は、セラミック製のスリーブ18(内径φ11mm、外径φ16mm)と、このスリーブに圧入等で固定されたフランジ46と、このフランジ46のスカート部19の内周面に接着剤等により固定されたロータマグネット20と、フランジ46の上面に載せられたポリゴンミラー14と、ポリゴンミラー14の上面に載せられたバネ21と、バネ21を下方に押し付けながらフランジ46に圧入して固定した押圧部材22と、フランジ46の上面に図示しないネジ等で固定されたフタ63とから構成されている。
【0031】
ポリゴンミラー14は、バネ21が押圧部材22により下方に押し付けられているので、バネ21によって生じる弾性力により、フランジ46の上面に押し付けられて固定されている。
また、基板13には、複数のコイルを備えたリング形状のモータコア23がネジ15、接着剤等で固定され、コイルの端子が基板13に設けられた配線に半田付けされている。
【0032】
そして、基板13に実装されたドライバIC(Integrated Circuit)24等から送られてきた電気信号により、基板13に固定されたモータコア23のコイルが励磁され、このモータコア23と対向したロータマグネット20が動くことにより、回転体17が高速回転する。
【0033】
また、固定軸16の外周面には、図2に示すように、螺旋状の溝50が3本形成されている。これら3本の溝50は、その中心線(図2において一点鎖線で図示)が互いに平行で、溝50が互いに交わることが無いように、隣り合う中心線が等間隔になるように設定されている。そして、それぞれの溝50は、フランジ18の内周面と対向する部分の下端(一端)51から上端(他端)52に向かって溝の幅が徐々に広くなるように形成されている。尚、本実施例1においては、一端51における溝幅を2mm、他端52における溝幅を4mmとし、溝50の深さを4μm(一定)とした。つまり、溝50の溝幅は、一端(溝幅2mm)から他端(溝幅4mm)に至るまで直線的に増加している。
【0034】
この螺旋状の溝50が形成された固定軸16と、この固定軸16に対して隙間(4μm)を有して挿入されたスリーブ18により動圧空気軸受が構成されている。このため、回転体17が上から見て時計方向に回転を開始すると、所望の動圧が短時間で発生し、かつ、高速回転時における過剰な動圧の発生を抑制して、消費電力、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズの増大を抑えることができる。
【0035】
〔光偏向器の固定構造〕
次に、光偏向器6の固定構造について、図2乃至図4を用いて説明する。
光偏向器6の基板13は、図2に示すように、ハウジング12の表面に形成された円環状の突起25の上面26に載せられている。この円環状の突起25の、ハウジング12の上面に対する突出量は、どこでも同じで、突起25の上面26は平面になっている。そして、基板13を突起25の上面26に載せるに際し、図示しない位置決め治具を用いて、図3に示す円環状の突起25が形成する円の中心27に、基板13に固定された固定軸16の中心(中心軸)を位置させている。
【0036】
また、図3に示すように、ハウジング12の円環状の突起25の内側近傍には4個の貫通穴28があけられている。貫通穴28は、突起25の内周面に近い位置に形成されていれば良く、この貫通穴28と対応する基板13の位置に雌ねじ31が形成されている。ここで、貫通穴28と対応する基板13の位置とは、前記したように、円環状の突起25が形成する円の中心27と固定軸16の中心軸が一致するように、突起25の上面26に基板13を置いたときに、貫通穴28の真上の基板13の位置をいう。つまり、貫通穴28と雌ねじ31は鉛直線上に位置している。
【0037】
図2に示すように、雄ねじ29をハウジング12の裏面から貫通穴28に挿入し、雄ねじ29の先端部が基板13に形成された雌ねじ31に螺合させて締め付ける(ねじ込む)ことにより、基板13をハウジング12に固定している。さらに詳述すると、本実施例1においては、ハウジング12にA=90°間隔で形成された4個の貫通穴28のそれぞれに雄ねじ29を挿入し、4個の貫通穴28と対応する基板13の位置に90°間隔で形成された4個の雌ねじ31に、雄ねじ29の先端を螺合させて、雄ねじ29を締め付けることにより、光偏向器6を光走査装置1のハウジング12に固定している。
【0038】
この4個の雄ねじ29は、ハウジング12の内側近傍に位置しているので、雄ねじ29を光偏向器6がハウジング12に固定し得る程度に締め付けた後、さらに4個の雄ねじ29の少なくとも1個の締め付け力を上げると、固定軸16の近傍の基板13が変形する。そうすると、固定軸16の鉛直方向に対する角度を変化させることができるので、軸倒れ補正をすることができる。
【実施例2】
【0039】
本発明に係る第2実施例を、図5を用いて以下に説明する。
図5はハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である。説明を簡単にするため、図5においては、固定軸16以外を断面にしてある。
尚、実施例1との相違点のみを詳細に説明し、実施例1と同一の部分については、説明を省略する。
【0040】
本実施例2の実施例1との主な相違点は、固定軸16に形成した螺旋状の溝50の本数を1本にした点である。この場合は、溝50の水平線に対する角度を小さくし、溝50が固定軸16の外周を少なくとも1周するようにする。そうすると、前記した実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0041】
本発明に係る第3実施例を図6を用いて説明する。
図6は、光偏向器の側部断面図である。尚、説明を簡単にするため、図6においては、回転軸以外を断面にしてある。
【0042】
光偏向器6は、アルミニウム製のハウジング49に、ネジ等で固定された円筒形状でかつセラミック製のスリーブ18(内径φ11mm−4μm、外径φ16mm)と、このスリーブ18に回転自在に支持された回転体17とから構成されている。
【0043】
この回転体17は、スリーブ18との間に僅かの隙間(4μm)をもって挿入された円柱形状で、かつ、セラミック製の回転軸47(外径φ11mm)と、この回転軸47に固定されたアルミニウム製のフランジ46と、このフランジ46の上に置かれ、外周面に多数の鏡面が形成されたアルミニウム製のポリゴンミラー14と、このポリゴンミラー14の上に置かれたリング状の板バネ21と、この板バネ21の上に置かれ、ポリゴンミラー14をフランジ46の上面に押し付けるようにして回転軸47の上部で圧入又は焼嵌め等により強制的に嵌入されたアルミニウム製の押圧部材22と、フランジ46のスカート部19に接着剤等で固定されたロータマグネット20と、このロータマグネット20に対向するようにスリーブ18の外周面に取り付けられたモータコア23とから構成されている。
【0044】
このロータマグネット20と、モータコア23との間の吸引力によりスラスト磁気軸受が構成されているので、回転体17は、常に浮上した状態に保たれている。
また、ハウジング49には金属製の基板13が固定され、この基板13に、ロータマグネット20とモータコア23等から構成されるブラシレスモータの制御回路(図示せず)が実装されている。
【0045】
この光偏向器6は、回転軸47の外周面と、スリーブ18の内周面によって、ラジアル動圧軸受が構成されている。つまり、回転軸47の外周面に螺旋(スパイラル)状の溝50が1本形成されている。この溝50は、スリーブ18の内周面と対向する部分の下端(一端)51から上端(他端)52に向かって溝の幅が徐々に広くなるように形成されている。
【0046】
このため、回転体17が上から見て反時計方向に回転すると、光偏向器6の周囲の空気は、ブラシレスモータの内部に吸引され、回転軸47の外周面と、スリーブの内周面の間に動圧が発生する。そうすると、所望の動圧が短時間で得られ、かつ、高速回転時における過剰な動圧の発生を抑制して、消費電力、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズの増大を抑えることができる。
【0047】
尚、この溝50は、ブラシレスモータの周囲の空気を、ブラシレスモータの内部に向けて一方向(下方向)に吸引するものであるため、従来のように2方向(上下方向)とは異なる。したがって、動圧を発生させる溝の軸方向の長さは、従来の約半分にすることができる。
【実施例4】
【0048】
本発明に係る第4実施例を、図7を用いて以下に説明する。
図7はハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である。説明を簡単にするため、図7においては、回転軸以外を断面にしてある。また、見えない部分(回転軸の反対側)に存する溝を波線等により図示していない。
尚、実施例3との相違点のみを詳細に説明し、実施例3と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施例4の実施例3との主な相違点は、回転軸47に形成した螺旋状の溝50の本数を3本にした点である。これら3本の溝50は、その中心線(図7において一点鎖線で図示)が互いに平行で交わることが無いように等間隔に設定されている。そして、それぞれの溝50は、フランジ18の内周面と対向する部分の下端(一端)51から上端(他端)に向かって溝の幅が徐々に広くなるように形成されている。尚、本実施例1においては、一端51における溝幅を2mm、他端52(図示せず)における溝幅を4mmとし、溝50の深さを4μm(一定)とした。
【0050】
〔回転テスト結果〕
この光偏向器6を用いて回転テストを実施した結果を図10に示す。
図10において、横軸は回転体17の回転数(rpm)、縦軸は回転体17の回転により発生した動圧(軸受面の総圧(MPa))である。図10中における○は、図7に示した本実施例4に係る光偏向器6のデータである。
【0051】
比較例として、図7に示した光偏向器6の溝形状のみを変えた図8および図9に示す光偏向器のデータを図10に示した。図10に△で示したデータは、従来から用いられている溝幅が不変(均一)の螺旋状の溝を回転軸に形成した図8に示した光偏向器のものである。また、図10に□で示したデータは、従来から用いられているヘリングボーン溝を回転軸に形成した図9に示した光偏向器のものである。尚、図8および図9において見えない部分(回転軸の反対側)に存する溝は波線等により図示していない。
【0052】
図10に示したグラフを見てわかるように、光偏向器6の要求する動圧を1.0MPaとすると、本実施例4に示した光偏向器6は、回転数10000rpmに至るまでに要求する動圧を発生させることができる。また、回転数が上がっても、従来の光偏向器と比較して動圧の上がり方が低いことがわかる。
【0053】
一方、図8および図9に示した従来の光偏向器は、図8に示した光偏向器が要求する動圧に達するのが本実施例4の光偏向器と略同一であるが、両者とも回転数が上がると、本実施例4の光偏向器を超えて大きく動圧が上がっていくことがわかる。
【0054】
これら要求スペックを超えた過剰な動圧は、消費電流、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズを増大させる原因になるため、できるだけ低く抑える必要がある。図10により、本発明に係る動圧空気軸受、ブラシレスモータ、光偏向器および光走査装置は、従来の螺旋状の溝(図8)や、ヘリングボーン溝(図9)の動圧空気軸受を備えた光偏向器等と比較して、過大な動圧の発生を抑制できるので、消費電流、動作時の振動、動作時の騒音および電気放射ノイズの増大を抑制できることがわかる。
【実施例5】
【0055】
本発明に係る第5実施例を、図11を用いて以下に説明する。
図11はハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である。説明を簡単にするため、図11においては、回転軸以外を断面にしてある。見えない部分(回転軸の反対側)に存する溝を波線等により図示していない。
尚、実施例4との相違点のみを詳細に説明し、実施例4と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施例5の実施例4との主な相違点は、回転軸47に形成した螺旋状の溝50が一箇所で曲げられた点である。かかる構成であっても、前記した実施例4と同様の効果を得ることができる。
【実施例6】
【0057】
本発明に係る第6実施例を、図12を用いて以下に説明する。
図12はハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である。説明を簡単にするため、図12においては、回転軸以外を断面にしてある。見えない部分(回転軸の反対側)に存する溝を波線等により図示していない。
尚、実施例5との相違点のみを詳細に説明し、実施例5と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施例6の実施例5との主な相違点は、回転軸47に形成した螺旋状の溝50が複数箇所で曲げられた点である。かかる構成であっても、前記した実施例4と同様の効果を得ることができる。
【0059】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から当事者が認識する事ができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0060】
また、前記した実施例においては、軸およびスリーブの材質としてセラミックを用いたものを示したが、これに限定されるものではなく、鉄、アルミニウム等の金属を軸およびスリーブの材質としても良い。
【0061】
例えば、前記した実施例は、軸の外周面に螺旋状の溝50を形成したものを示したが、軸の外周面に溝50を形成せず、図13および図14に示すように、スリーブの内周面に螺旋状の溝50を形成したものを用いても良い。具体的には、図13および図14で示したスリーブを、例えば図2に示す光偏向器6のスリーブ18と交換し、図2に示す光偏向器6の固定軸16の螺旋状の溝50を無くすことにより光偏向器6を構成しても良い。この場合であっても、前記した実施例で示した効果と同様の効果を得ることができる。
【0062】
尚、図13は内周面に螺旋状の溝50を形成したスリーブの正面図であり、図
14は図13を縦に半分に切断した場合の断面図である。
かかるスリーブ62は、スリーブの材質がセラミックの場合、スリーブ62の内周面に溝50と同一の形状を形成したマスクシートを準備し、かかるマスクシートをスリーブ62の内周面に貼り付け、その後、スリーブ62の内周面にショットピーニング加工を施し、マスクシートを取り除く等すれば製造することができる。
【0063】
また、スリーブの材質が鉄等の金属である場合、スリーブ62は、スリーブ62の内周面に溝50と同一の形状を形成したマスクシートを準備し、かかるマスクシートをスリーブ62の内周面に貼り付け、スリーブ62の内周面に金属を溶解する液を塗布した後、液を洗浄してマスクシートを取り除く等すれば製造することができる。
【0064】
また、前記した実施例3乃至6では、ハウジング49に固定した光偏向器6を示したが、実施例3乃至6に示した光偏向器6における基板13を含めた基板13よりも上にある構成をそのまま実施例1で示した光偏向器6と交換しても良い。つまり、実施例3乃至6に示した光偏向器6は、実施例1の図1で示した光走査装置で使用することができる。
【0065】
また、前記した実施例においては、溝50を1本または3本の場合を示したが、この本数に限定されるものではなく、2本であっても5本であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、画像形成装置等に使用される動圧空気軸受、ブラシレスモータ、光偏向器および光走査装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る光走査装置の平面図である(実施例1)
【図2】ハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である(実施例1)
【図3】ハウジングにおける光偏向器の取り付け箇所の部分拡大図(平面図)である(実施例1)
【図4】ハウジングの表面に形成した円環状の突起の斜視図(図3における矢視B)である(実施例1)
【図5】ハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である(実施例2)
【図6】ハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である(実施例3)
【図7】ハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である(実施例4)
【図8】ハウジングに従来の光偏向器が固定された状態を示す断面図である(実施例4)
【図9】ハウジングに従来の光偏向器が固定された状態を示す断面図である(実施例4)
【図10】回転体の回転数と動圧の圧力の関係を示すグラフである(実施例4)
【図11】ハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である(実施例5)
【図12】ハウジングに光偏向器が固定された状態を示す断面図である(実施例6)
【図13】スリーブの正面図である。
【図14】スリーブの断面図である。
【図15】従来の光偏向器の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 光走査装置
6 光偏向器
12 ハウジング
13 基板
14 ポリゴンミラー
16 固定軸
17 回転体
18 スリーブ
20 ロータマグネット
23 モータコア
50 螺旋状の溝
51 一端
52 他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸に隙間を有して挿入されたスリーブとからなり、
該軸の外周面または該スリーブの内周面に螺旋状の溝が形成された動圧空気軸受において、
該溝の幅を、該溝の一端から他端に向かって除々に広くしたことを特徴とする動圧空気軸受
【請求項2】
前記溝が前記軸の外周面または前記スリーブの内周面に複数形成され、
該複数の溝が互いに交わることなく、該複数の溝の中心線が互いに平行である請求項1に記載の動圧空気軸受
【請求項3】
前記溝が一または複数の箇所で曲げられた請求項1または請求項2に記載の動圧空気軸受
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の動圧空気軸受において、
前記軸にロータマグネットが固定され、
前記スリーブが基板に固定され、
該基板に固定されたモータコアが、前記ロータマグネットと対向したブラシレスモータ
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の動圧空気軸受において、
前記スリーブにロータマグネットが固定され、
前記軸が基板に固定され、
該基板に固定されたモータコアが、前記ロータマグネットと対向したブラシレスモータ
【請求項6】
請求項4に記載のブラシレスモータにおいて、
さらに、前記軸にポリゴンミラーが固定された光偏向器
【請求項7】
請求項5に記載のブラシレスモータにおいて、
さらに、前記スリーブにポリゴンミラーが固定された光偏向器
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の光偏向器を備えた光走査装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−26135(P2010−26135A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185700(P2008−185700)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】