説明

動的荷重の補償のためのチェーンホイール及びタイミングチェーンドライブ

本発明は、特にタイミングチェーンドライブ用のチェーンホイール(2,3)に関し、チェーンホイールは、回転シャフトと、回転シャフトの回りに位置し、円周回りに配置された複数の交互の歯(17)及び歯間隙(16)を有するスプロケットホイール(7)と、少なくとも1つのチェーンガイド(8)と、を含み、スプロケットホイール(7)及びチェーンガイド(8)は、堅固に接合され、チェーンガイド(8)は、リンクプレート(13,14)の接触面に当たる有形周囲支持ケージ(9)を有し、支持ケージ(9)または支持ケージ(9)の隆起領域は、チェーンガイド(8)の周囲を構成する湾曲円周に沿って延び、チェーンガイド(8)の前記周囲は、非円形形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸線と、回転軸線を中心に配置され、円周方向に分配された複数の交互の歯と歯間隙を有するスプロケットと、少なくとも1つのチェーンガイドと、を含み、前記スプロケット及び前記チェーンガイドは、堅固に接合され、前記チェーンガイドは、リンクプレートの接触面に当たるための円周方向に延びる支持輪郭を備え、前記支持輪郭及びその隆起部分は、チェーンガイドの周囲を構成する湾曲円周に沿って延びる、特に、タイミングチェーンドライブ用のチェーンホイールに関する。加えて、本発明は、ヒンジチェーンと、駆動チェーンホイールと、少なくとも1つの被動チェーンホイールと、を含む、機械的荷重を補償するための、対応するタイミングチェーンドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の開発において、NVH性能(騒音、振動、及びハーシュネス)は、益々重要になってきている。高い振動快適性に関する顧客の要請に加えて、低い騒音及び運転者に及ぼす振動荷重もまた、積極的なセキュリティに貢献する。更に、特に振動荷重は、該当構成部品の有効寿命及び必要寸法を減ずる。
【0003】
自動車では、多くの構成部品が、振動及び騒音の励起源として同時に作用する。これらの構成部品は、内燃機関自体に加えて、動力系、トランスミッション、ファン、吸気システム、排気ガスシステム、並びにタイヤ及びシャシーであり、個々の騒音及び振動源から起こる騒音及び振動は無視できない。しかしながら、動力系の振動及び騒音励起、例えばクランクシャフト及びカムシャフトの回転振動、フライホイールの不規則な回転運動、ベアリング荷重並びにクランクシャフトの角速度振動及びトルク励起は、この点に関して支配的な役割を果たす。動力系のこれらの動的荷重、特に内燃機関に使用され、クランクシャフトチェーンホイール、少なくとも1つのカムシャフトチェーンホイール及び駆動チェーンからなる、タイミングチェーンドライブの動的荷重は、支配的に自動車全体に伝搬し、それら自身が、他の騒音及び振動源全てと重なり合う。
【0004】
動力列の動的荷重の減少は、歯付きベルトまたは歯付きチェーンが駆動の目的に使用されるかにかかわらず、内燃機関の開発の分野では、長年、第1の優先事項の1つであった。例えば、独国特許第3739336C2号は、回転振動が、振動吸収材の使用によって、打ち消されることを開示するが、しかしながら、これは、実質的に追加的な費用を伴い、かなりの量の追加的な設置空間を必要とする。独国特許第3920528C1号は、カムシャフトから起こる交互トルクが、油圧ブレーキユニットによって打ち消されるべきであることを提案する。独国公開特許第19520508A1号は、歯付きベルトドライブに関して、振動の励起を減ずることができるように、カムシャフトプーリとして使用される非円形プーリを記載する。この刊行物に示された非円形プーリは、プーリの回りに規則的な間隔で配置された、4つの突出部と4つの非突出領域とを有する。加えて、日本公開公報第10266868A号は、歯付きベルトタイミングドライブ用の楕円形のクランクシャフトピニオンを開示する。独国実用新案第20220367U1号及び第20319172U1号は、同期ドライブユニットの開発を追加的に記載し、ここでは、歯付きベルトに限定されず、動力列の動的荷重を、少なくとも1つの歯付きベルトホイールの、非円形形状、特に楕円形状によって、反対の変動する調整トルクを介して減ずる。
【0005】
荷重減少タイミングチェーンドライブは、例えば欧州特許第097041B1号及び欧州公開特許第1208646A2号で知られている。チェーンホイールの歯は、ここでは、在来の均一間隔と比較して、半径方向及び円周方向位置に関して僅かにずらされている。この方法で、チェーンホイール歯の間のチェーンヒンジの半径方向係合位置は変動するが、噛み合いチェーンヒンジ間のピッチ間隔は一定のままである。チェーンホイール歯の配置は、ランダムに分配されるか、均一な制御チェーン荷重に関して選択される。
【0006】
加えて、補助チェーンガイドの助けを借りて、チェーンホイールに及ぼすチェーンの入り及び接触作用を変化させる、平坦リンク関節チェーン用のチェーンドライブが知られている。チェーンのリンクプレートは、これらのガイドに当たり、かくしてチェーンヒンジと歯との係合を変化させる。まず、日本国公開公報第61171942A号は、チェーンのより急でない入り角度を実現するように、拡大された直径を有し、且つチェーンホイールに対して偏心して配置された、回転自在に支持されたガイドを開示する。チェーンヒンジとチェーンホイールの歯との間の接触荷重を減ずるために、国際公開公報第03/093700A2号は、チェーンホイールの円形ガイドセクションとずれた関係をなして延びる、それぞれの入りガイドを含むチェーンガイドを提案する。欧州特許第1184593B1号は、チェーンヒンジと歯との間の接触騒音を減ずるためのチェーンガイドを追加的に開示する。チェーンガイドは、ここでは、噛み合いチェーンリンクの瞬間回転中心が、第1のチェーンヒンジから、チェーンリンクプレートのチェーンガイドの支持輪郭との接触点まで、次いで第2のチェーンヒンジまで通過する方法で、チェーンホイールに連結される。そのようなチェーンガイドモードから生じる揺動運動は、騒音及び振動の所望の減少を可能にする。チェーンリンクプレートとこれらの接触面の構造的設計に応じて、チェーンホイールに連結されたチェーンガイドは、滑らかな、または不均一な表面、即ち、それぞれの歯から同一距離で、チェーンホイールの歯の数に応じて繰り返される、円形、線形、凸状、または凹状のセグメントを備える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
動力列の騒音及び振動荷重を減ずるための従来技術で知られる解決策の多くは、使用中有用であることがわかった。自動車におけるNVH性能を改善するための現在の集中的な努力は、特にまた動力列の支配的な騒音及び振動源の場合に、追加の開発努力を依然として更に必要とする。加えて、駆動装置にかかる動的荷重は、これまでに利用可能な解決策が用いられるとき、依然として比較的高い。したがって、タイミングドライブの更なる荷重減少が望ましく、小型化によって、またタイミングドライブの領域におけるコストの削減をもたらす。
【0008】
したがって、本発明の目的は、動力列、特にタイミングチェーンドライブにおける動的荷重を減ずることにあり、また既知の解決策の不利益を回避するとともに、これらの効率を超えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
当該タイプのチェーンホイールの場合、この目的は、非円形形状を有するチェーンガイドの周囲を設けることによって達成される。
【0010】
チェーンガイドの周囲の前記非円形形状によって、追加の励起がタイミングドライブに効果的に導入され、タイミングドライブのチェーン力を減少させる。共振位置の領域に起こるような形態で、タイミングドライブのこの効果的な追加の励起を設けることにより、チェーン力の実質的な減少を引き起こし、かくして、NVH性能の改善だけでなく、性能及び使用条件の変更なしに、タイミングドライブのより小さい寸法を可能にする。
【0011】
好ましい実施形態によれば、チェーンガイドの周囲と中心との間の距離は、非円形形状を画成するように、少なくとも部分的に、1つの歯から次の歯まで変化するのがよい。支持輪郭の湾曲円周の非円形形状は、1つの領域から次の領域まで、チェーンホイールの回転角度で変化する、即ち、回転軸線とチェーンガイドの周囲との間の距離は、少なくとも部分的に、歯の頂点(または歯形状のその他の繰り返し点)の中心と回転軸線とを通って延びるそれぞれの半径方向線に関して変化する。距離の均一な変化の場合には、支持輪郭の正弦波形状が得られ、これは、タイミングチェーンドライブの同期に関して有利である。かくして、チェーンガイドの周囲の非円形形状は、歯または歯間隙の領域で繰り返す支持輪郭不連続性とは無関係である。
【0012】
有利な実施形態は、チェーンガイドの周囲が、少なくとも2つの突出セクションを含むと考えられる。少なくとも2つの突出セクションの使用は、チェーンホイールの回転中、複数の反復励起の補償または減少を可能にする。チェーンホイールの周囲は、規則的な間隔で繰り返す2つの励起、例えば、4筒直列内燃機関のクランクシャフトで起こる正弦波励起を補償するように、特に楕円形状を有する。チェーンガイドの楕円形状は、好ましくは、1.025よりも小さく、好ましくは、1.01ないし1.015の、チェーンガイドの中心までの最大距離及び最小距離のアスペクト比を有する。このアスペクト比は、チェーンホイールの歯及びチェーンガイドによってタイミングドライブに伝達される力のより均一な分布を可能にする。突出セクションの数、したがって、凹部の数を、特に、振動性能が影響を受けるエンジンのエンジン配列に応じて選択することができる。
【0013】
適切な実施形態は、チェーンガイドの中心が、チェーンホイールの回転軸線に配置されると考えられる。チェーンホイールの回転軸線、即ち、チェーンホイールの中心にチェーンガイドを配置することにより、質量分布は、できるだけ均一に達成され、これはチェーンホイールの最良の可能な運転の基礎となる。
【0014】
本発明によるチェーンホイールからの力を均一に動力列に付与するために、2つのチェーンガイドが設けられ、チェーンガイドは、特に、1つのチェーンガイドがチェーンホイールのスプロケットの各側に配置されるように対称に配置される。
【0015】
1つの変形例は、スプロケットが、円形である、及び/又はスプロケットの歯が回転軸線回りに均一に配置されると考えられる。従来のタイミングチェーンドライブのほとんどでは、均一に配置された歯を有する円形チェーンホイールが用いられる。かくして、従来のチェーンドライブは、大きな構造的改造を必要とすることなく、本発明によるチェーンホイールを備えることができる。加えて、また、非円形周囲形状を有する少なくとも1つのチェーンガイドを、非円形チェーンホイール、または半径方向位置及び円周方向位置に関してチェーンホイールに非均一形態で配置されたチェーンホイール歯に組み合わせることも可能である。様々な補償効果の重ね合わせにより、そのような組み合わせは、動力列の動的荷重を更により均一にする。
【0016】
好ましい実施形態は、チェーンガイドの中心までの、チェーンガイドの非円形形状の最小距離を有するチェーンホイールの歯間隙セグメントでは、最小距離は、この歯間隙セグメントでスプロケットと噛み合うチェーンヒンジの軸線が、スプロケットのピッチ円上に配置されるように選択される。歯間隙セグメントは、例えば、隣り合った歯の歯頂点の中心を通って延びる2つの半径方向線の間の領域である。最小距離の上述の選択により、力を実質的にチェーンヒンジを介して伝達することができ、そして、これは、できるだけ均一な荷重分布のため、及びチェーンドライブの動力の減少のための前提条件である。しかしながら、チェーンガイドとチェーンガイドの中心との間の最大距離は、好ましくは、必要な力成分がリンクプレートの接触面及びチェーンガイドの円周方向に延びる支持輪郭を介して伝達されるように、寸法付けられる。この観点で、最大距離が、チェーンホイールの歯内のチェーンまたはチェーンヒンジの昇りをもたらさないとき、有利である。歯内のチェーンの昇りは、チェーンヒンジと歯間隙との間の接触を阻止し、それにより、チェーンは、より非効率的に案内され、より多くの騒音を生じさせる。
【0017】
適切な実施形態によれば、歯間隙は、平らな側面を有するのがよい。平らな傾斜を有する側面は、個々の側面間に比較的大きな距離を、かくして、比較的大きな歯間隙をもたらす。歯間隙が大きいほど、チェーンガイドの周囲形状の、その中心までの最小距離及び最大距離の差が大きくなり、これは、タイミングドライブの荷重及びチェーン力の変化を減少させる強化された可能性をもたらす。非円形形状とチェーンガイドの中心の間の距離の変化により、ヒンジ中心軸線の歯間隙の中心線への相対移動が引き起こされ、それにより、さもなければ起こるチェーンの噛み合いミスと、その結果生じるチェーンホイールの張力を回避し、または少なくとも減ずることができる。
【0018】
加えて、本発明は、チェーンヒンジによって接合され、互いに平行に配置された内リンクプレート及び外リンクプレートを含む内チェーンリンク及び外チェーンリンクを含むヒンジチェーン、特にローラチェーンと、駆動チェーンホイールと、少なくとも1つの被動チェーンホイールと、を含み、動的荷重の補償のために、前記チェーンホイールの少なくとも1つ、好ましくは駆動チェーンホイールは、本発明による上述の実施形態に従った非円形周囲形状を有するチェーンガイドを含むチェーンホイールとして実施される、動的荷重の補償を伴うタイミングチェーンドライブに関する。そのようなタイミングチェーンドライブでは、内燃機関によって導入されるチェーンドライブの動的荷重は、特に共振領域で、より均一になり、関連した振動振幅を、実質的に減ずることができる。
【0019】
ヒンジチェーンとタイミングチェーンドライブの駆動チェーンホイール及び被動チェーンホイールとのよい協働のために、ヒンジチェーンの内リンクプレート及び/又は外リンクプレートは、チェーンガイドの円周に延びる支持輪郭に当たる接触面を備えるのがよい。内リンクプレート及び/又は外リンクプレートを、ヒンジチェーンの移動方向と本質的に平行に配置することにより、既に、関連したチェーンリンクのヒンジ間に騒音減少運動を生じさせることができる。単純なリンクプレート形状に加えて、リンクプレートの外縁がチェーンの移動方向と互いに平行に延びる場合には、内リンクプレート及び外リンクプレートは、例えば、ウエスト形状のリンクプレートとして、または幾つかの他の適当な形状を有するように実施される。均一支持輪郭を有するチェーンガイドの半径に順応するウエスト形状のリンクプレートは、チェーンヒンジとチェーンリンクプレートの接触面との間の力の伝達及び力分布の荷重形状、並びにチェーンがチェーンホイールに噛み合うときに発生する騒音を更により均一にすることができる。加えて、ウエスト形状のリンクプレート形状は、リンクプレートとチェーンガイドとの間の最大面圧の減少を可能にする。更に、外リンクプレート形状及びチェーンホイールセグメントの輪郭を、タイミングドライブのチェーン力をより均一にする可能性に加えて、騒音及び振動の更なる減少が可能であるように、互いに対して形成することができる。
【0020】
タイミングチェーンドライブの好ましい実施形態は、駆動チェーンホイールが、少なくとも1つのチェーンガイドを備え、且つ内燃機関のクランクシャフトに配置され、駆動チェーンと駆動チェーンホイールとの間の接線接触点は、駆動チェーンホイールに最高モーメントが発生した時点で、駆動チェーンと接触状態にある突出セクションと、駆動チェーンとまだ接触状態にない次の非突出セクションとの間の実質的に中央に配置されると考えられる。駆動チェーンホイールに最高モーメントが起こる時点で、駆動チェーンは、また、荷重側で最高速度で移動する。駆動チェーンと駆動チェーンホイールとの間の接線接触点は、荷重側の駆動チェーンと駆動チェーンホイールのピッチ円に接した接触点である。かくして、力の導入位置で直接タイミングドライブの荷重を減ずること、及びチェーンガイドの非円形周囲形状の追加的な励起によって、特に共振領域での振動振幅を減ずることが可能である。突出セクション及び非突出セクションの数は、抑制されるべき振動程度による。抑制されるべき振動の序数は、突出セクションの数に、したがって、非突出セクションの数に相当する。最高モーメントが起こる時点での接線接触点の正確な位置は、また、タイミングチェーンドライブ、内燃機関、振動励起及び他の副作用の個々の性質を考慮に入れた修正要因に依存し、それにより、突出セクションと次の非突出セクションの間の接触点の中央位置は、突出セクションと非突出セクションの間の角度の、±10%、好ましくは±5%だけ変化する。
【0021】
内燃機関が4気筒エンジンでなければならないなら、チェーンガイドを、駆動チェーンと接触状態にある楕円形状及び突出セクションとして構成し、接触点に対して約45°だけずらして配置するのがよい。45°だけずらした楕円チェーンガイド形状によって、2次振動の振動振幅を大幅に減少させることができ、また、この場合には、正確な位置は、副作用を考慮に入れた、それぞれの修正要因に依存し、変動幅は±9%まで、好ましくは±4.5%までである。かくして、チェーンガイドの追加的な励起は、楕円チェーンガイド形状によって、ピストンによって生じた励起ピーク間の角度位置の半分の位置で、チェーンドライブに付与され、したがって2次振動振幅は減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、1つの実施形態を基礎として、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
図1は、2つのチェーンホイール2,3と、チェーンホイール2,3の回りに配置された無端駆動チェーン4と、を有する単純なチェーンドライブ1を示す。駆動チェーンの荷重側には、チェーンホイール2,3の間で駆動チェーン4を支持するガイドレール5が設けられている。駆動チェーン4の非荷重側には、駆動チェーン4に外向き予張力を付与する追加の張りレール6が設けられている。前記予張力を付与するために、張りレール6は、適当に支持され(図示せず)、そして引張装置に連結される(図示せず)。
【0024】
小チェーンホイール2は、回転軸線、即ちチェーンホイール2の中心M2を中心とする円に配置された18個の歯17を有するスプロケット7と、チェーンガイド8と、を含み、支持輪郭9の円周は、非円形形状を有する。大チェーンホイール3は、36個の歯17を有するスプロケット7を含み、前記スプロケット7は、また、回転軸線、即ちチェーンホイール3の中心M3を中心とする円に配置されている。駆動チェーン4は、例えば3/8インチのピッチを有する70個のチェーンリンク10を備える。
【0025】
図1に示す概略チェーンドライブ1は、4気筒直列往復ピストン内燃機関の最小タイミングチェーンドライブとして作用することができる。小チェーンホイール2は、内燃機関のクランクシャフト(図示せず)に連結され、大チェーンホイール3は、内燃機関のカムシャフト(図示せず)に連結される。
【0026】
図2は、駆動チェーン4のないチェーンガイド8を有する小チェーンホイール2の拡大図を示す。チェーンホイール2のスプロケット7に対して横方向に突出するチェーンガイド8は、チェーンガイド8の周囲を画成する円周方向に延びる支持輪郭9を備え、リンクプレート13,14の接触面15は、前記支持輪郭9上に当たる。図2に示す実施形態では、チェーンガイドは、2つの突出セクションAを有する楕円として実施され、チェーンホイール2の表示と水平な直径aは、チェーンホイール2の表示と垂直な直径bよりも大きい。図2に示す楕円チェーンガイド8は、均一湾曲面を有する支持輪郭9を有し、それにより、支持輪郭9自体は、チェーンガイド8の周囲を画成する。そのような支持輪郭の均一湾曲面に加えて、支持輪郭9の面は、欧州特許第1184593B1号に示すチェーンガイドの変形例に従って、個々のチェーンリンク10のリンクプレート13,14のそれぞれの形状と協働するように、線形、凸状、または凹状の面形態を備えてもよい。この線形、凸状、または凹状の面形態は、1つの歯から次の歯に規則的に繰り返し、それにより、少なくとも1つの隆起部分または隆起点が、1つの歯から次の歯に常に形成される。円周方向に延びる支持輪郭がこの方法で構成されるときには、チェーンガイドの周囲は、隆起部分と連続的に湾曲した湾曲形状との連結によって画成される。したがって、周囲は、チェーンガイド8にはまるのにちょうど十分な大きさの最小円周/容量比を有する開口として画成され、チェーンガイド8のセクションと関連した支持輪郭の各隆起部分は、本質的に周囲と接触状態にある。
【0027】
図3は、駆動チェーン4の係合状態における、図1のIII−III線に沿ったチェーンホイール2の断面を示す。この断面図は、チェーンホイール2が、外側突出歯17を有するスプロケット7が配置される円周の中央部分と、ヒンジスリーブ11と、ヒンジスリーブ11に配置され、前記歯17と噛み合うローラチェーンのローラと、からなることを明確に示す。隣接したチェーンリンク10を相互連結するヒンジピン12は、ヒンジスリーブ11を貫ぬいて延びる。内リンクプレート13及び外リンクプレート14は、少なくともチェーンホイール2に面する側に接触面15を有し、前記接触面15は、チェーンホイール2の両側に設けられたチェーンガイド8の支持輪郭9に当たる。図3に示すチェーンガイド8に加えて、チェーンガイドは、また、チェーンホイール2の中央部分を越えて横方向に突出する楕円リングとして実施されるのがよい。
【0028】
図4及び図5は、再び、駆動チェーン4の係合状態における、チェーンホイール2の拡大詳細図を示す。チェーンドライブ1において、チェーン力減少は、スプロケット7及びチェーンホイール2のチェーンガイド8を介して、チェーンホイール2と駆動チェーン4の間に起こり、チェーン力の分布は、本質的に、チェーンガイド8の支持輪郭9の瞬間位置によって決定される。チェーン4の通常位置では、歯のチェーン力減少は、最初の4つから5つの噛み合い歯17によって起こる。図4は、楕円周囲形状を有するチェーンガイド8の最小直径bが、駆動チェーン4と、即ちそれぞれのチェーンリンク10の内リンクプレート13及び外リンクプレート14と完全係合状態にあるチェーンホイール2の位置を示す。チェーンホイール2と係合状態にあるチェーンリンク10のヒンジスリーブ11は、スプロケット7の歯間隙16と最適なはめ合い接触状態にある、即ち、チェーンヒンジのヒンジ軸線は、スプロケット7のピッチ円上に位置する。この配置では、チェーンホイール2から駆動チェーン4への力減少は、チェーンヒンジとスプロケット7との接触によって本質的に起こり、リンクプレート13,14とチェーンガイド8の間の接触によって最小程度にだけ起こる。
【0029】
しかしながら、図5は、チェーンホイール2上の駆動チェーン4の極端な位置を示し、この位置では、楕円チェーンガイド8の最大直径aは、特に、駆動チェーン4と噛み合い状態にあるチェーンホイール2の最初の(4つから5つの)歯17に作用する。支持輪郭9の高さ、即ちチェーンガイド8の突出セクションAは、駆動チェーン4がチェーンホイール2の歯を昇るのを阻止されるように選択される。チェーンまたは歯17間のチェーンヒンジの昇りは、それぞれチェーンガイド8とチェーンホイール2の中心M2までの最大距離及び最小距離(a/2、b/2)のアスペクト比だけでなく、歯間隙16の形状にも依存する。チェーンガイド8の本楕円形状の場合では、最大直径aと最小直径bのアスペクト比は、1.025よりも小さく、好ましくは、1.01ないし1.015である。最小直径bの場合には、中心M2までの距離(b/2)は、リンクプレート13,14と支持輪郭9の間の最小力接触が依然として起こっている距離と考えるべきであり、ここで前記支持輪郭は、非突出セクションBと称される。支持輪郭9の過度に大きい高さ(a/2)が選択されるならば、チェーン、即ちチェーンヒンジは、歯と昇り、これは相応じて摩耗に及びチェーンの運転特性に負の効果を及ぼす。
【0030】
もし、図5に示すように、支持輪郭9の高さAが効力を生ずるならば、リンクプレート13,14の接触面15とチェーンガイド8の支持輪郭9との間に最大接触力が起こる。チェーンホイール2の歯間隙16内に位置した最初のチェーンヒンジは、駆動チェーン4とチェーンホイール2との間の力の減少に小さい程度しか貢献しない。更なる歯間隙16の場合には、チェーンヒンジのヒンジスリーブ11と歯間隙16との間の接触点は、歯側面の方向にずれる。リンクプレート13,14に作用する最大接触力は、スプロケットとチェーンヒンジとの間の接触力に近づく大きさに達することができる。駆動チェーン4のチェーンヒンジとチェーンホイール2のスプロケットとの間、並びにリンクプレート13,14とチェーンホイール2のチェーンガイド8との間の接触力の非均一分布は、支持輪郭9の、即ちチェーンガイド8の周囲の非円形形状の上述のセクションAが、適切な方法で配置されているとき、チェーンドライブ1の動的荷重を、特に共振点の付近で本質的に減ずることができ、自動車のNVH性能を実質的に改善することができる。
【0031】
チェーンガイドの非円形周囲形状は、特に支持輪郭9の比較的高く突出するセクションAの場合には、駆動チェーン4の噛み合いミスをもたらし、チェーンホイールに張力を生じさせる。そのような噛み合いミスが起こるならば、チェーン4に及ぼす負の効果を、スプロケット7のそれぞれのセクションに歯側面の輪郭を適用することによって、特に非対称歯形状によって、緩和することができる。
【0032】
図6は、タイミングチェーンドライブとして使用されたとき、ドライブホイール、即ちチェーンホイール2の接触力の変動の形態で、チェーンドライブ1に加わる動的荷重を示す。図6に示す表示は、毎分1233回転の速度(共振速度より約10%低い)で、図1に示すチェーンドライブ1を基礎としてシミュレーションに基づいている。この線図において、曲線Iは、チェーンホイール2にいかなるチェーンガイド8もない拙速力特性を示すが、チェーンガイド8の突出セクションAの異なる位置で起こる長手方向力も示す。曲線IIは、0°の角度位置に対応する、最大励起の同じ角度位置におけるチェーンガイドの突出セクションAの位置を表し、曲線IIIの場合には、前記セクションAは、それに対して45°だけずらされ、曲線IVの場合には、前記セクションはそれに対して90°だけずらされている。いかなるチェーンガイド8もない動的接触力の特性(曲線I)と比較して、チェーンドライブ1の動的荷重の改善は、非円形周囲形状を有するチェーンガイド8によって、最大励起に対して0°及び45°の角度位置(曲線II及びIII)で既に達成されている。支持輪郭9の突出セクションAの有利な位置、即ちチェーンホイール2の(クランクシャフトによる)90°の角度位置に対応する励起の最大値の間では、チェーンホイール2の動的接触荷重の振幅は、チェーンガイド8による補償なしで起こる荷重に対して30%まで減少する。
【0033】
チェーンドライブ1に加わる動的荷重が、チェーンホイール3での出力トルクに重ね合わさったとき、本発明によるチェーンガイド8を有するチェーンホイール2は、10%までの接触力の振幅の減少を更に達成する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】2つのチェーンホイールを有するチェーンドライブの平面図である。
【図2】図1によるチェーンガイドを有するチェーンホイールの平面図である。
【図3】図1のIII−IIIセクションに沿った、図2によるチェーンガイドを有するチェーンホイールの断面図である。
【図4】駆動チェーンが最小程度にチェーンガイドに当接する状態の、図1によるチェーンガイドを有するチェーンホイールの詳細図である。
【図5】駆動チェーンがチェーンガイドに当接する状態の、図1に夜チェーンガイドを有するチェーンホイールの詳細図である。
【図6】時間に対してプロットしたチェーンホイールの当接力を示す、図1によるチェーンドライブの動的荷重の線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にタイミングチェーンドライブ用のチェーンホイール(2,3)であって、
回転軸線と、回転軸線を中心に配置され、複数の円周方向に分配された交互の歯(17)と歯間隙(16)を有するスプロケット(7)と、少なくとも1つのチェーンガイド(8)と、を含み、前記スプロケット(7)及び前記チェーンガイド(8)は、堅固に接合され、前記チェーンガイド(8)は、リンクプレート(13,14)の接触面(15)に当たるための円周方向に延びる支持輪郭(9)を備え、前記支持輪郭(9)またはその隆起部分は、チェーンガイド(8)の周囲を構成する湾曲円周に沿って延びるチェーンホイールにおいて、チェーンガイド(8)の周囲は、非円形形状を有する、
ことを特徴とするチェーンホイール(2,3)。
【請求項2】
チェーンガイド(8)の周囲と中心(M2)の間の距離は、非円形形状を画成するように、少なくとも部分的に、1つの歯から次の歯まで変化する、
請求項1に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項3】
チェーンガイド(8)の周囲は、少なくとも2つの突出セクション(A)を含む、
請求項1又は2に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項4】
チェーンガイド(8)の周囲は、楕円形状を有する、
請求項3に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項5】
チェーンガイド(8)の楕円形状は、1.025より小さく、好ましくは1.01ないし1.015である、チェーンガイド(8)の中心(M2)までの最大距離と最小距離のアスペクト比を有する、
請求項4に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項6】
チェーンガイド(8)の中心(M2)は、チェーンホイール(2,3)の回転軸線に位置する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項7】
2つのチェーンガイド(8)が設けられ、前記チェーンガイド(8)は、特に1つのチェーンガイド(8)がチェーンホイール(2,3)の各側に配置されるように、対称に配置される、
請求項1から6のいずれか1項に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項8】
スプロケット(7)は、円形である、及び/又は、スプロケット(7)の歯(17)は、チェーンホイール(2,3)の回転軸線を中心に均一に配置されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項9】
チェーンガイド(8)の中心(M2)までの、チェーンガイド(8)の非円形形状の最小距離を有するチェーンホイールの歯間隙セグメントにおいて、最小距離は、この歯間隙セグメント内でスプロケット(7)と噛み合うチェーンヒンジの軸線が、スプロケット(7)のピッチ円上に位置するように選択される、
請求項1から8のいずれか1項に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項10】
歯間隙(16)は、平らな側面を有する、
請求項1から9のいずれか1項に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項11】
スプロケット(7)は、非対称歯形状を有する、
請求項1から10のいずれか1項に記載のチェーンホイール(2,3)。
【請求項12】
動的荷重の補償を伴うタイミングチェーンドライブ(1)であって、
チェーンヒンジによって接合され、互いに平行に配置された内リンクプレート(13)及び外リンクプレート(14)を含む内チェーンリンク及び外チェーンリンクを含むヒンジチェーン(4)、特にローラチェーンと、駆動チェーンホイール(2)と、少なくとも1つの被動チェーンホイール(3)と、を含み、動的荷重を補償するために、前記チェーンホイール(2,3)の少なくとも1つ、好ましくは、駆動チェーンホイール(2)は、請求項1から11のいずれか1項に記載のチェーンホイールとして実施される、
ことを特徴とするタイミングチェーンドライブ(1)。
【請求項13】
内リンクプレート(13)及び/又は外リンクプレート(14)は、チェーンガイド(8)の円周方向に延びる支持輪郭(9)に当たる接触面(15)を備える、
請求項12に記載のタイミングチェーンドライブ。
【請求項14】
内リンクプレート(13)及び/又は外リンクプレート(14)の接触面(15)は、ヒンジチェーン(4)の移動方向に本質的に平行に配置される、
請求項13に記載のタイミングチェーンドライブ。
【請求項15】
駆動チェーンホイール(2)は、少なくとも1つのチェーンガイド(8)を備え、内燃エンジンのクランクシャフトに配置され、駆動チェーン(4)と駆動チェーンホイール(2)の間の接線接触点は、最高モーメントが駆動チェーンホイール(2)に起こる時点で、駆動チェーン(4)と接触状態にある突出セクション(A)と、駆動チェーン(4)とまだ接触状態にない次の非突出セクション(B)との間の実質的に中央に位置する、
請求項12から14のいずれか1項に記載のタイミングチェーンドライブ。
【請求項16】
内燃機関は、4気筒エンジンであり、チェーンガイド(8)は、楕円形状として構成され、駆動チェーンと接触状態にある突出セクション(A)は、接線接触点に対して約45°だけずらされるように配置される、
請求項15に記載のタイミングチェーンドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−533616(P2009−533616A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504576(P2009−504576)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000069
【国際公開番号】WO2007/118519
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(507253635)イーヴィス モートールジステメ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】