説明

包装材料、及び包装体

【課題】 レーザ照射によって、明瞭なレーザ印字ができ、基材が白化するなど変色せず、寸法安定性がよく、かつバリア性などの機能性が維持され、外観イメージに変化の少ない包装材料を提供する。
【解決手段】 基材11/着色インキ層13/銀色インキ層14/第1ポリオレフィン系樹脂層15/金属層17/第2ポリオレフィン系樹脂層19の層構成からなり、基材11がポリエステル系樹脂で、基材11の第1ポリオレフィン系樹脂層15側の少なくとも1部に着色インキ層13及び銀色インキ層14がこの順に積層されたレーザ印字領域を有し、レーザ光を基11材側から照射して、任意の模様をレーザ印字でき、かつ、金属層17のガスバリア性が維持され、かつまた、基材11が変色しないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料に関し、さらに詳しくは、着色インキ層及び銀色インキ層の着色インキ層面からのレーザ照射によって、基材が劣化したり変色せず、明確なレーザ印字ができる包装材料に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「Al」は「アルミニウム」、「PTR」は「セロファン」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、医薬品、飲料や食品などの包装容器に使用する包装材の表面には商品名、商品デザインなどの商品に共通する情報と共に、製造所、製造年月日、賞味期限、製造責任者などが記載されている。前者共通情報は内容物が密封される前に包装袋に印刷されるが、後者はその性質上、内容物が収納・密封された時点で記入され、かつ袋外面の所定の記録枠部分に記入される。この記載方法として包装材の表面に、直接インキ等で印字したり、別途印字したラベルを貼付したりする。しかし不定形の表面を有する包装体や衝撃に弱い内容物を収納した軟包装などの場合は機械的な印字方法は適当ではなく、また、印字部が取り扱いの過程や輸送の過程で消滅したり脱離するなどの問題がある。その対策として、包装体の印刷表面にレーザ照射によって文字や記号を描画し記載する印字方法が行われている。しかしながら、基材フィルム側からレーザ光を照射するので、基材フィルム層が白化して外観が悪化したり、層構成の1部の層がダメージを受けて、バリア性などの内容物の保存性が落ちたり、また、レーザ印字の判読をしやすくするために、白層、黒層及び金属層などの複数層を要するものが多く、高コストである。しかも、印字濃度差が小さいので、判読し辛いという欠点があった。さらに、セロファンを基材とすると、白化はしないものの巻取状で加工する際にピッチ(走行方向の寸法)が不安定となる欠点もあった。
包装材料は、レーザ照射によって、明瞭なレーザ印字ができ、基材が白化するなど変色せず、寸法安定性がよく、かつバリア性などの機能性が維持され、外観イメージに変化の少ないことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−175013号公報
【特許文献2】特開2009−67467−号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術)従来、レーザ光を用いて高速で印字可能で、印字が酸、アルカリ等と接触しても消失する恐れのない印字部を有する表示材料としては、表面側が白色以外の色からなる第1印刷層、この第1印刷層の下面に白色の第2印刷層を設けた表示材料に、レーザ光の照射により第1印刷層を除去し、所望の印字の形成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、白色以外層と白色層からなり、直射するレーザ光の照射のみで、下部からの反射レーザ光はなく、印字効率が悪いという欠点がある。
また、基材の安定性に優れ、印字識別性に優れるレーザーマーキング可能な包装材料としては、外層から内層に向かって淡色インキ塗工層、銀インキ塗工層、プラスチック基材層、濃色インキ塗工層が積層された積層体に、レーザー光を照射して、前記淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とを消失させ、前記濃色インキ塗工層を現出させて印字情報を提供するものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、淡色インキ塗工層と銀インキ塗工層とを消失させ、前記濃色インキ塗工層を現出させる方法、即ち、銀インキ塗工層もレーザー光の照射で消失させるので、高エネルギーのレーザ出力を要するという問題点がある。特許文献2は本出願人の出願によるもので、銀色インキ層から反射してきたレーザ光も利用してレーザ印字する技術的発想については、特許文献2には記載も示唆もされていない。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、レーザ照射によって、明瞭なレーザ印字ができ、基材が白化するなど変色せず、寸法安定性がよく、かつバリア性などの機能性が維持され、外観イメージに変化の少ない包装材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる包装材料は、基材、第1ポリオレフィン系樹脂層、金属層、及び第2ポリオレフィン系樹脂層が順に積層されてなるガスバリア性の包装材料であって、前記基材がポリエステル系樹脂で、前記基材の第1ポリオレフィン系樹脂層側の少なくとも1部に着色インキ層及び銀色インキ層がこの順に積層されたレーザ印字領域を有し、レーザ光を前記基材側から照射した際に、基材を透過して着色インキ層へ達したレーザ光及び銀色インキ層から反射してきたレーザ光によって、着色インキ層が透明化して任意の模様がレーザ印字でき、かつ、第1ポリオレフィン系樹脂層が基材、着色インキ層及び銀色インキ層を透過してきたレーザ光を吸収して金属層のガスバリア性を維持し、かつまた、基材がレーザ照射によって変色しないように、したものである。
請求項2の発明に係わる包装材料は、請求項1において、上記レーザ光が炭酸ガスレーザ光であり、上記包装材料のレーザ光を照射した後のガスバリア性が、レーザ光の照射前のガスバリア性の90%以上が保持されているように、したものである。
請求項3の発明に係わる包装体は、請求項1〜2のいずれかに記載の包装材料を用いて、レーザ印字されてなる上記模様が可変情報であるように、したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の本発明によれば、レーザ照射によって、明瞭なレーザ印字ができ、基材が白化するなど変色せず、寸法安定性がよく、かつバリア性などの機能性が維持され、外観イメージに変化の少ない効果を奏する。
請求項2の本発明によれば、レーザ照射によっても、ガスバリア性に劣化がなく、内容物の保管性に優れる効果を奏する。
請求項3の本発明によれば、レーザ印字によって製造ロットや賞味期間などの個別で固有の可変情報を印字でき、安心して消費できる包装体を提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の1実施例を示す包装材料の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
(包装材料)本願発明の包装材料10は、図1に示すように、基材11/第1ポリオレフィン系樹脂層15/金属層17/第2ポリオレフィン系樹脂層19からなっている。基材11面の少なくとも1部に、着色インキ層13及び銀色インキ層14が設けられ、基材11/着色インキ層13/銀色インキ層14/第1ポリオレフィン系樹脂層15/金属層17/第2ポリオレフィン系樹脂層19の層構成からなっている。
【0012】
(作用効果) 本発明によれば、次のような効果を奏することができる。レーザ光を照射した際に、基材11を透過してレーザ印字領域の着色インキ層13に到達したレーザ光エネルギーにより、インキ中の顔料や染料が蒸発などで飛散して透明化し、その下部の銀色インキ層14が観察できそのコントラストにより、レーザ文字が見えるようになるというものである。原理的には銀色インキ層14がなくても印字することはできるが、銀色インキ層14がないと、基材11及び着色インキ層13を透過したレーザ光は、そのまま通過し減衰してゆくか、さらに第1ポリオレフィン系樹脂層15を透過して金属層17に到達し、該金属層17で反射して戻ることもあるが、極めて弱いエネルギーでしかなく、もはや印字に寄与するエネルギーはない。
【0013】
そこで、本願発明では、着色インキ層13及び銀色インキ層14をこの順に設けることで、銀色インキ層14からの反射レーザ光エネルギーを利用することで、少ないエネルギーのレーザ光で印字ができるのである。即ち、基材11を透過して着色インキ層13へ達したレーザ光、及び銀色インキ層から反射して戻ってきたレーザ光の和によって、着色インキ層を透明化させてレーザ印字することができる。
【0014】
かつ、基材11/着色インキ層13/銀色インキ層14を透過してきたレーザ光を、第1ポリオレフィン系樹脂層15が吸収させることで、金属層17を保護させる。即ち、金属層17がレーザ光での劣化を防止しガスバリア性を維持することができるのである。
【0015】
さらに、一般的基材である普通セロファンは、炭酸ガスレーザーを照射すると、白化し易いが、基材11としてPETフィルムを用いることで、白化しにくく、外観に優れている。また、基材11/着色インキ層13/銀色インキ層14/第1ポリオレフィン系樹脂層15/金属層17/第2ポリオレフィン系樹脂層19の層構成とすることで、レーザ印字部分は下地の銀色インキ層14が観察でき、レーザ印字領域以外の部分は金属層17が観察できるので、統一性があって外観上の変化も極めて少なく、違和感もないという特徴もある。
【0016】
(基材)基材11としては、ポリエステル系樹脂を用い、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが例示でき、共重合体でもよい。ポリエステル系樹脂としては、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械強度や寸法安定性を有するものが好ましいので、2軸延伸フィルムが好ましい。
【0017】
また、基材11には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤なっどを添加してもよい。基材11の厚さとしては、特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性及び加工性を考慮すると、4.5〜250μmであることが好ましく、より好ましくは12〜100μmである。
【0018】
従来、一般的な基材である普通セロファンは、炭酸ガスレーザーを照射すると、白化し易いが、基材11としてPETフィルムを用いることで、白化しにくく、外観に優れている。
【0019】
(着色インキ層)着色インキ層13としては、少なくとも着色した顔料及び/又は染料とバインダ(ビヒクルともいう)からなり、必要に応じて、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加してもよい。着色した顔料及び/又は染料としては、特に限定されるものではなく、1つ又は複数を用いてもよい。
【0020】
バインダとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、硝化綿、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。
【0021】
上記のバインダ、着色した顔料及び/又は染料、さらに、必要に応じて添加剤を添加し、溶媒、希釈剤等で分散、混練してインキ組成物とする。該インキ組成物を用いて、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、その他の従来の印刷方式で、基材11へ印刷し着色インキ層13を形成すればよい。また、着色インキ層13はレーザ印字する予定の所望個所に形成すればよく、全面に形成する必要はなく、他の絵柄と共用してもよい。
【0022】
包装材料10の基材11側からレーザ光を着色インキ層13に照射することで、レーザ光の熱エネルギーによって変色させレーザ印字することができる。このため、使用する着色インキ層13には、レーザ光吸収剤を配合したり、使用するバインダを特定してレーザ光吸収能を向上させてもよいが、従来公知の一般的な着色インキ層13でもレーザ印字可能な包装材料を提供しうるもので、市販の赤、青、緑や紫などの着色インクを使用することもできる。
【0023】
着色インキ層13の厚さとしては、特に限定されるものではなく、1〜20μm程度、より好ましくは2〜10μmである。また、着色インキ層13は1回印刷(1度刷り)でも、複数回の印刷(多色刷り)で形成してもよいが、印刷回数は1〜3回が好ましく、4回以上の場合ではコスト面で不利となる。
【0024】
(銀インキ層)銀色インキ層14としては、アルミニウムペーストやアルミニウム粉等の金属顔料を用いた、シルバーまたはゴールド等のメタリック調印刷インキを用いる。
アルミニウムペーストには、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプがあるが、いずれを用いてもよく、蒸着アルミニウム薄膜を粉砕した粉末を用いたインキでもよい。
銀色インキ層14の形成は、グラビア印刷法、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの公知の印刷法でよく、少なくとも着色インキ層13面に設ければよい。もちろん、他の印刷絵柄に同時に形成してもよい。模様、写真などのすべての絵柄が使用できる。
【0025】
(第1ポリオレフィン系樹脂)第1ポリオレフィン系樹脂層15は、熱によって溶融し相互に融着し得る各種の熱融着性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、LDPE低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、及びそれらの金属架橋物等の樹脂、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。第1ポリオレフィン系樹脂層15の厚さは、特に制限を受けるものではなく、目的に応じて決めることができ、一般的には15〜100μmの範囲である。
【0026】
(金属層)金属層17としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、各種合金箔、その他等を使用することができ、一般的には、アルミニウム箔を使用する。金属箔の膜厚としては6〜50μm位、好ましくは、7μm〜20μm位が好ましい。
【0027】
(第2ポリオレフィン系樹脂)第2ポリオレフィン系樹脂層19は、第1ポリオレフィン系樹脂層15と同様な樹脂をもちいることができる。第2ポリオレフィン系樹脂層19と第1ポリオレフィン系樹脂層15とは、同じものでも、異なっていてもよい。第2ポリオレフィン系樹脂層19の厚さは、特に制限を受けるものではなく、目的に応じて決めることができ、一般的には15〜200μmの範囲である。
【0028】
(他の層)包装材料10の層間及び/又は基材面にはレーザ印字に影響のない範囲で、中間基材、デザイン印刷層などの他の層を設けてもよい。このような他の層としては、各他の層をドライラミネート積層法や溶融押出し法で積層したり、公知の印刷法で形成すればよい。
【0029】
(デザイン印刷層)包装材料10には、基材11のレーザ印字領域以外の内側または外側に、デザイン印刷層を有していてもよい。デザイン印刷層はグラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの従来公知の印刷方式で形成することができる。デザイン印刷層は、着色インキ層13及び/又は銀色インキ層14の印刷時に多色刷り法で同時に行ってもよく、もちろん、着色インキ層13、銀色インキ層14のレーザ印字領域外へ、デザイン絵柄を同じ版を用いて印刷してもよい。
【0030】
(製造方法)包装材料10は基材11/着色インキ層13/銀色インキ層14/第1ポリオレフィン系樹脂層15/金属層17/第2ポリオレフィン系樹脂層19の層構成からなっている。まず、基材11面へ、着色インキ層13及び銀色インキ層14を、公知のグラビア印刷法、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの公知の印刷法で設け、この銀色インキ層14へ第1ポリオレフィン系樹脂層15を溶融押出し、金属層17を積層する、所謂イクストルジョンコーティング法でポリサンドする。さらに、この金属層17面へ、必要に応じて、アンカーコートを塗布し乾燥して、第2ポリオレフィン系樹脂層19を溶融押出しし、所謂イクストルジョンコーティング法で積層すればよい。
【0031】
(レーザ印字)レーザ印字方法は、基材11/着色インキ層13/銀色インキ層14/第1ポリオレフィン系樹脂層15/金属層17/第2ポリオレフィン系樹脂層19の、基材11面よりにレーザ光を照射して、基材11を透過してレーザ印字領域の着色インキ層13に到達したレーザ光エネルギーにより、インキ中の顔料や染料が蒸発などで飛散して透明化し、その下部の銀色インキ層14が観察できそのコントラストにより、レーザ文字が見えるようになるというものである。しかしながら、印字部となる着色インキ層13中の顔料や染料では、例えば、藍顔料のように飛びいくいものもある。そこで、本願発明では、着色インキ層13及び銀色インキ層14をこの順に設けることで、銀色インキ層14からの反射レーザ光エネルギーを利用することで、少ないエネルギーのレーザ光で印字ができるのである。即ち、基材11を透過して着色インキ層13へ達したレーザ光、及び銀色インキ層から反射して戻ってきたレーザ光の和によって、着色インキ層を透明化させてレーザ印字することができる。また、レーザ光エネルギーにより、着色インキ層13が炭化する場合もある。
【0032】
また、基材11面を透過するように、レーザ光が照射されるので、基材11がレーザ光の影響を受け、基材11の機械的強度が低下したり、変色したり、変質や変形したりして、内容物の保存性が落ちたりする。そこで、基材11は溶融、破損、ピンホール、シワの発生が抑制できる、機械的強度があり耐熱性に優れるポリエステル系樹脂を用いる。
【0033】
レーザ印字に用いるレーザ光は、レーザ印字に使用可能なものであれば特に制限はないが、例えば、YV04レーザ、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、半導体レーザなどを使用することができき、好ましくは、炭酸ガスレーザ(波長=10.6μm)である。照射出力、印字速度などは、包装材料10の基材11の種類や厚さなどに応じて適宜選択すればよい。
【0034】
(包装体)本願発明の包装体は、包装材料10のポリオレフィン系樹脂層19を対向するように重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方を熱融着して熱融着部を形成すると共にその上部に開口部を形成して、三方シール型の包装袋を製造することができる。その他、本発明の包装袋の形状としては、ピロー包装形態、ガセット包装形態、スタンディング(自立性)パウチ包装形態、その他等の内容物に合った種々の形態からなる包装用袋を製造し得る。なお、熱融着の方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。包装体は、その上部に開封操作を容易にするノッチなどの易開封性手段であってもよい。ノッチは、通常、一字形やV字形などのノッチが使用されているが、形状は特に限定されず、切り取り方向に鋭角部分を有する形状であれば何でも使用することができる。
【0035】
包装材料10は少なくともその一部に、着色インキ層13及び銀色インキ層14からなるレーザ印字領域を有し、包装体におけるレーザ印字領域の形成箇所に限定はなく、包装体の表面及び/又は裏面の1部にレーザ印字領域が形成されていればよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0037】
(実施例1)基材11として厚さが12μmの2軸延伸PETフィルムを用い、緑インキ(DICグラフィックス社製、ウレタン系「CLIOS」緑インキ)と、銀インキ(DICグラフィックス社製、ウレタン系「CLIOS」銀インキ)を用いて、グラビア印刷で、2cm×4cmの大きさで、重ね刷りして緑インキ層(着色インキ層13)と銀インキ層(銀色インキ層14)を形成した。
この銀色インキ層14面へポリエチレンイミン系のアンカコート剤を塗布し乾燥させ、第1ポリオレフィン系樹脂層15となるLDPE15μmを溶融押出しし、所謂ポリサンド法で、金属層17となる厚さが9μmのアルミニウム箔と積層した。
このアルミニウム箔面へポリウレタン系のアンカコート剤を塗布し乾燥させ、第2ポリオレフィン系樹脂層19となるLDPE40μmを溶融押出して、PET12μm/緑+銀インキ層/LDPE15μm/Al箔9μm/LDPE40μmからなる実施例1の包装材料10を得た。
【0038】
(実施例2)緑インキと銀インキに代えて、紫インキと銀インキとを用いて、紫インキ層(着色インキ層13)と銀インキ層(銀色インキ層14)を形成する以外は、実施例1と同様にして、PET12μm/紫+銀インキ層/LDPE15μm/Al箔9μm/LDPE40μmからなる実施例2の包装材料10を得た。
【0039】
(比較例1)基材11として厚さが20μmのセロファンフィルムを用いる以外は、実施例1と同様にして、PT20μm/緑+銀インキ層/LDPE15μm/Al箔9μm/LDPE40μmからなる比較例1の包装材料10を得た。
【0040】
(比較例2)銀インキを用いず、緑インキ層(着色インキ層13)のみを形成する以外は、実施例1と同様にして、PET12μm/緑インキ層/LDPE15μm/Al箔9μm/LDPE40μmからなる比較例2の包装材料10を得た。
【0041】
(評価方法)レーザ印字による印字性、基材の損傷、包装材料のガスバリア性で評価した。
【0042】
(測定方法)印字性は、実施例、比較例の包装材料10の基材11面側から、キーエンス社製、炭酸ガスレーザマーカML−Z9520(出力80W、波長10.6μm)を用いて、照射出力70〜100%照射速度1000〜2000mm/secで照射し、「12345678910」の数字を印字した。
印字は印字状態及び明瞭に視認できるものを合格とし「○印」で表した。
基材の損傷は、レーザ照射後の実施例、比較例の包装材料10の基材11面を目視で観察し、著しい傷や凹凸のないのを合格とし「○印」で表した。
包装材料のガスバリア性は、JIS−K−7126に準拠した実施例、比較例の包装材料10の酸素透過度で、温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OXTRAN2/20)〕を使用して測定し、レーザ光を照射後のガスバリア性が、レーザ光の照射前のガスバリア性の90%以上が保持されているものを合格とし「○印」で表した。結果を表1に表す。
【0043】
【表1】

【0044】
(評価結果)比較例1ではレーザの照射で、基材が劣化し、表面に凹凸ができ、白っぽく変化していた。比較例2では基材の劣化もなく、ガスバリア性もよかったが、レーザ印字がぼやけ、明瞭でなかった。実施例1、2では、いずれの評価もよかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
(産業上の利用可能性)本発明は、医薬品、飲料や食品などの包装容器に使用する包装材料に利用することができる。しかしながら、レーザ照射によって、明瞭なレーザ印字ができ、基材が白化せず、寸法安定性がよく、かつバリア性などの機能性が維持され、外観イメージに変化の少ない用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
10:包装材料
11:基材
13:着色インキ層
14:銀インキ層
15:第1ポリオレフィン系樹脂
17:金属層
19:第2ポリオレフィン系樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、第1ポリオレフィン系樹脂層、金属層、及び第2ポリオレフィン系樹脂層が順に積層されてなるガスバリア性の包装材料であって、
前記基材がポリエステル系樹脂で、
前記基材の第1ポリオレフィン系樹脂層側の少なくとも1部に着色インキ層及び銀色インキ層がこの順に積層されたレーザ印字領域を有し、
レーザ光を前記基材側から照射した際に、基材を透過して着色インキ層へ達したレーザ光及び銀色インキ層から反射してきたレーザ光によって、着色インキ層が透明化して任意の模様がレーザ印字でき、
かつ、第1ポリオレフィン系樹脂層が基材、着色インキ層及び銀色インキ層を透過してきたレーザ光を吸収して金属層のガスバリア性を維持し、
かつまた、基材がレーザ照射によって変色しないことを特徴とする包装材料。
【請求項2】
上記レーザ光が炭酸ガスレーザ光であり、上記包装材料のレーザ光を照射した後のガスバリア性が、レーザ光の照射前のガスバリア性の90%以上が保持されていることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の包装材料を用いて、レーザ印字されてなる上記模様が可変情報であるを特徴とする包装体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−148197(P2011−148197A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11683(P2010−11683)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】