説明

化合物、重合性組成物、高分子、及びフィルム

【課題】高いΔnを示す重合性液晶の提供。
【解決手段】下記式(I)で表される重合性化合物である。式中、P1及びP2は、重合性基;m1及びm2は、1〜10の整数;Aは、5〜18員環の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環を含む2価基;L3及びL4はそれぞれ、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基;k1及びk2はそれぞれ、0〜4の整数;X1、X2、X3及びX4はそれぞれ、−O−、−S−、−NH−、−NR−、又は−SiR000−;n1及びn2はそれぞれ、0又は1を表し、但し少なくとも一方は1であり、L1a、L1b、L2a及びL2bはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、−CN、−NC、−NCO、−NCS、又は−OCNを表し、但し、n1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が1で且つL2a及びL2bの双方が水素原子の時、並びにn1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が0の時に限り、X2及びX3の双方が−O−で表される化合物、並びにX2及びX3の一方が−O−であり且つ他方が−NH−又は−NR−で表される化合物を除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとして、種々の用途において有用な重合性化合物、重合性液晶組成物、及び高分子、並びにこれらを利用したフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置の小型化が望まれており、それに伴い光学フィルムの薄膜化が求められている。例えば、高いΔnを示す液晶を、位相差板等の光学フィルムに用いることにより膜厚を薄くすることができる。Δnは液晶化合物の重要な基本物性のひとつであり、高いΔnを示す液晶は、光学素子の構成要素である位相差板、偏光素子、選択反射膜、カラーフィルタ、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜、など多くの工業分野に利用することができる(非特許文献1)。
【0003】
従来、重合性液晶化合物として、シンナメート基を有する化合物が種々提案されている(特許文献1〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−120091号公報
【特許文献2】特開2009−149754号公報
【特許文献3】WO2006/010431号公報
【特許文献4】WO2005/014756号公報
【特許文献5】WO2004/090025号公報
【特許文献6】GB 2306470号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D.J.Broer, G.N.Mol, J.A.M.M.Van Haaren, and J.LubAdv. Mater., 1999,11,573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来公知の重合性液晶化合物では、Δnが不十分であり、また、透明性、溶解性、塗工性の観点でも不十分であり、製膜できないという問題もある。また、配向性の観点及び重合性の観点でも不十分であり、硬化した後にフィルムの光学性能が劣化したり、散乱光が観察されたりし、未だ、使用に供し得る液晶化合物は得られていない。
【0007】
本発明は、高いΔnを示し、且つ溶剤への溶解性や他の液晶材料との相溶性も良好な新規な重合性化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、前記重合性化合物を利用した、種々の用途に有用な、重合性組成物、及び高分子を提供することを課題とする。
また、本発明は、前記重合性化合物を利用した、種々の用途に有用なフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 式(I)で表される化合物:
【化1】

式中、
1及びP2はそれぞれ、重合性基を表し;
m1及びm2はそれぞれ、1〜10の整数を表し、m1又はm2個のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく;
Aは、5〜18員の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環を有する2価基を表し、該芳香族炭化水素環及び該芳香族複素環に含まれる水素原子は、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよく;
3及びL4はそれぞれ、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、k1及びk2はそれぞれ、0〜4の整数を表し;
1、X2、X3及びX4はそれぞれ、−O−、−S−、−NH−、−NR−、又は−SiR000−を表し、R、R0及びR00はそれぞれ、炭素原子数1〜10のアルキル基を表し;
n1及びn2はそれぞれ、0又は1を表し、但し少なくとも一方は1であり、
1a、L1b、L2a及びL2bはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、−CN、−NC、−NCO、−NCS、又は−OCNを表し、但し、
n1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が1で且つL2a及びL2bの双方が水素原子の時、並びにn1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が0の時に限り、
2及びX3の双方が−O−で表される化合物、並びにX2及びX3の一方が−O−であり且つ他方が−NH−又は−NR−で表される化合物を除く。
【0009】
[2] 式(I)中、Aが、6員の芳香族炭化水素環を含む2価基である[1]の化合物。
[3] 式(I)中、X2及びX3の少なくとも一方が、−S−である[2]の化合物。
【0010】
[4] 式(I)中、P1及びP2がそれぞれ、以下の式(P−1)〜式(P−5)で表される基からなる群から選ばれる重合性基である[1]〜[3]のいずれかの化合物:
【化2】

式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
【0011】
[5] 式(I)中、P1及びP2はそれぞれ、メタクリレート基またはアクリレート基である[1]〜[4]のいずれかの化合物。
[6] [1]〜[5]のいずれかの化合物の少なくとも1種を含有する重合性液晶組成物。
[7] さらに、少なくとも1種のキラル化合物を含有する[6]の重合性液晶組成物。
[8] [1]〜[5]のいずれかにの化合物、又は[6]もしくは[7]の重合性組成物を、重合させてなる高分子。
[9] [8]の高分子の少なくとも1種を含有するフィルム。
[10] [7]の重合性液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
[11] 光学異方性を示す[9]又は[10]のフィルム。
[12] 選択反射特性を示す[9]〜[11]のいずれかのフィルム。
[13] 赤外線波長域に選択反射特性を示す[12]のフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高いΔnを示し、且つ溶剤への溶解性及び他の液晶材料との相溶性も良好な新規な重合性化合物を提供することを課題とする。
また、本発明によれば、前記重合性化合物を利用した、種々の用途に有用な、重合性組成物、及び高分子を提供することができる。
また、本発明によれば、前記重合性化合物を利用した、種々の用途に有用なフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む。
1.重合性化合物
本発明は、下記式(I)で表される重合性化合物に関する。本発明の化合物の一つの特徴は、シンナメート基を少なくとも1つ分子内に有することである。本発明の化合物は、従来のシンナメート基を有する化合物と比較して、高いΔnを示す。溶剤への溶解性、及び他の液晶材料との相溶性も良好であり、重合性で硬化可能であることから、光学部材等の種々の用途に有用である。
【0014】
【化3】

【0015】
前記式中、P1及びP2はそれぞれ、重合性基を表す。重合性基としては、ラジカル重合又はカチオン重合可能な重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、(メタ)アクリレート基(アクリレート基及びメタクリレート基の双方を含む意味の用語として用いる)とを挙げることができる。カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましい。前記式中、P1及びP2は互いに異なっていてもよく、即ち、前記式(I)の化合物は、重合性基を2種以上含んでいてもよい。その場合は、ラジカル重合性基とカチオン重合性基等、重合反応機構が異なる重合性基をそれぞれ有していてもよいし、同一の反応機構の重合性基を有していてもよい。
【0016】
1及びP2はそれぞれ、下記式(P−1)〜(P−5)のいずれかで表される重合性基であるのが好ましい。
【0017】
【化4】

【0018】
式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
1及びP2はそれぞれ、(メタ)アクリレート基であるのが好ましく、即ち、以下のいずれかの基であるのが好ましい。
【0019】
【化5】

【0020】
前記式中、m1及びm2はそれぞれ、1〜10の整数を表す。m1及びm2はそれぞれ、2〜8であるのが好ましく、3〜6であるのがより好ましい。
また、m1又はm2個のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよい。
【0021】
前記式中、Aは、5〜18員環の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環を有する2価基を表す。該芳香族炭化水素環及び芳香族複素環は、単環構造であっても縮合環構造であってもよい。単環構造としては、5〜7員環状構造が好ましく、5又は6員環構造が好ましい。前記複素環の環構成原子は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される1種又は2種以上であるのが好ましい。また、Aは、互いに等しいもしくは互いに異なる、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を2以上有していてもよく、複数の環状構造が含まれる場合には、該複数の環状構造は、単結合、又は二価基によって連結される。該二価基の例には、エテニル基、カルボニル基、アセチレン基、シッフ基、アゾ基等が挙げられる。
以下に、Aの例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【化6】

【0023】
Aは、6員の芳香族炭化水素環を有する2価基であるのが好ましく、6員の芳香族炭化水素環の基、即ちフェニレン基が好ましく、1,4−フェニレン基が特に好ましい。
Aに含まれる該芳香族炭化水素環及び該芳香族複素環に含まれる1以上の水素原子は、炭素原子数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n-及びiso-プロピル基、並びにn-、iso-及びtert-ブチル基)、炭素原子数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n-及びiso-プロピオキシ基、並びにn-、iso-及びtert-ブトキシ基)、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)に置換されていてもよい。
【0024】
前記式中、L3及びL4はそれぞれ、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。前記アルキル基及びアルコキシ基の炭素原子数は、1〜4であるのが好ましく、即ち、メチル基、エチル基、n-及びiso-プロピル基、n-、iso-及びtert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-及びiso-プロピオキシ基、並びにn-、iso-及びtert-ブトキシ基等が好ましい。
【0025】
k1及びk2はそれぞれ0〜4の整数であり、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。k1及びk2が1のとき、シンナメート基に対してm位に、前記アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を有するのが好ましい。
【0026】
前記式中、n1及びn2はそれぞれ、0又は1を表し、但し少なくとも一方は1である。即ち、前記式(I)の化合物は、少なくとも1つのシンナメート基を有する化合物である。
前記式(I)の化合物の例には、以下の式(Ia)及び(Ib)で表される化合物が含まれる。高いΔnを達成するという観点では、式(Ia)の化合物がより好ましい。
【0027】
【化7】

【0028】
式中、L5はそれぞれ、炭素原子数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n-及びiso-プロピル基、並びにn-、iso-及びtert-ブチル基)、炭素原子数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n-及びiso-プロピオキシ基、並びにn-、iso-及びtert-ブトキシ基)、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)であり、kはそれぞれ0〜4である。
【0029】
前記式(I)、(Ia)及び(Ib)中、L1a、L1b、L2a及びL2bはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、−CN、−NC、−NCO、−NCS、又は−OCNを表す。水素原子又は−CNが好ましい。
【0030】
前記式中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ、−O−、−S−、−NH−、−NR−、又は−SiR000−を表し、R、R0及びR00はそれぞれ、炭素原子数1〜10(好ましくは炭素原子数1〜4)のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-及びiso-プロピル基、並びにn-、iso-及びtert-ブチル基)を表す。
但し、前記式(I)中、n1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が1で且つL2a及びL2bの双方が水素原子の時(即ち、上記式(Ia)中、L1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びL2a及びL2bの双方が水素原子である時)、並びにn1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が0の時(即ち、上記式(Ib)中、L1a及びL1bの双方が水素原子である時)に限り、X2及びX3の双方が−O−で表される化合物、並びにX2及びX3の一方が−O−であり且つ他方が−NH−又は−NR−で表される化合物は除かれる。
【0031】
前記式中、X2及びX3の少なくとも一方が、−S−であるのが好ましく、一方が−S−であり、且つ他方が−O−であるのが好ましい。
特に、前記式(I)中、n1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が1で且つL2a及びL2bの双方が水素原子の時(即ち、上記式(Ia)中、L1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びL2a及びL2bの双方が水素原子である時)、並びにn1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が0の時(即ち、上記式(Ib)中、L1a及びL1bの双方が水素原子である時)は、X2及びX3の少なくとも一方が、−S−であるのが好ましく、一方が−S−であり、且つ他方が−O−であるのが好ましい。
【0032】
前記式(I)で表される化合物の好ましい例には、下記式(Ia−1)及び(Ia−2)並びに下記(Ib−1)及び(Ib−2)で表される化合物が含まれる。式(Ia)の化合物の中でも、より高いΔnを達成するという観点では、式(Ia−1)で表される化合物がより好ましく、式(Ib)の化合物の中でも、より高いΔnを達成するという観点では、式(Ib−1)で表される化合物がより好ましい。
【0033】
【化8】

【0034】
式中のそれぞれの記号の意義は、前記式(I)、(Ia)及び(Ib)中の記号のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。式中、X2’は、−S−、−NH−、−NR−、又は−SiR000−を表す。X2’は−S−が好ましく、X3は−O−が好ましい。L1a’は、ハロゲン原子、−CN、−NC、−NCO、−NCS、又は−OCNを表す。L1a’は、−CNが好ましい。
【0035】
また、前記式(I)で表される化合物の好ましい例には、下記式(Ia−3)、(Ia−4)、(Ia−5)及び(Ia−6)、並びに下記式(Ib−3)、(Ib−4)及び(Ib−5)で表される化合物が含まれる。式(Ia)の化合物の中でも、より高いΔnを達成するという観点では、式(Ia−3)で表される化合物がより好ましく、式(Ib)の化合物の中でも、より高いΔnを達成するという観点では、式(Ib−3)で表される化合物がより好ましい。
【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
式中のそれぞれの記号の意義は、前記式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ia−1)、(Ia−2)、(Ib−1)及び(Ib−2)中の記号のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。式中、X2及びX3は−O−であるのが好ましい。L1a’は、−CNが好ましい。
【0039】
以下に、前記式(I)で表される化合物の具体例を挙げるが、以下の具体例に何ら限定されるものではない。
【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【0046】
【化17】

【0047】
式(I)の化合物は、種々の有機合成反応を組み合わせることで合成することができる。
例えば、分子中に2つのシンナメート基を有する式(I)の化合物は、以下の式(II)で表される中間体を合成し、当該中間体の1種又は2種と、任意の試薬とを反応させることで合成することができる。また、分子中に1つのシンナメート基を有する式(II)の化合物は、式(II)で表される中間体とともに、下記式(III)で表される中間体を用いて、任意の試薬と反応させることで合成することができる。
【0048】
【化18】

【0049】
式(II)中の記号の意義は、上記式(I)中の記号それぞれと同義であり、G1及びG2はそれぞれ、反応性基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基など)を意味し、任意の試薬と反応して、式(I)中の−X2−及び−X3−となる基である。
前記式(II)の中間体は、特許第4355406号公報の23頁、[0109]及び[0110]段落に記載の方法等を参照して合成することができる。
前記式(III)の中間体は、特開2002−97170号公報の10頁、[0085]〜[0087]段落に記載の方法を参照して合成できる。
【0050】
本発明の重合性化合物は、液晶性を示す。さらに、高いΔnを示すので、その配向を固定した膜は、より低いΔnの液晶性化合物を利用した膜と比較して、より薄膜で所望の光学特性を達成することが期待できる。
また、本発明の重合性化合物は、化学的に安定であり、溶剤に溶解しやすく、重合しやすく、無色透明であるなど、複数の特性をも満足する。本発明の化合物を用いて作製される硬化膜は、十分な硬度を示し、無色透明であり、耐候性・耐熱性が良好である等、複数の特性を満足し得るであろう。従って、本発明の化合物を利用して形成された硬化膜は、例えば、光学素子の構成要素である位相差板、偏光素子、選択反射膜、カラーフィルタ、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
【0051】
2. 重合性組成物及びフィルム
本発明は、前記式(I)の化合物の少なくとも1種を含有する重合性組成物、及び当該組成物からなるフィルムにも関する。本発明の組成物は、位相膜、反射膜等の種々の光学フィルムの材料として有用である。
本発明の組成物の一態様は、前記式(I)の化合物の少なくとも1種と、少なくとも1種のキラル化合物とを含有する重合性組成物である。本態様の組成物をコレステリック液晶相とした後、それを固定して形成された膜は、その螺旋ピッチに応じて、所定の波長の光に対して、選択反射特性を示し、反射膜(例えば、赤外線反射膜)として有用である。本発明の高いΔnを示す重合性化合物を利用することにより、より低いΔnの液晶性化合物を利用した同一の厚みの膜と比較して、反射波長域が広帯域化されるという利点がある。
【0052】
本発明の組成物について、前記式(I)の化合物は、主成分であっても、添加剤として使用されていてもよい。前記式(I)の化合物を組成物の全質量に対して、5質量%以上含有していれば、式(I)の化合物による効果を得ることができ、好ましくは10〜85質量%、より好ましくは10〜75質量%、さらに好ましくは15〜70質量%である。但し、この範囲に限定されるものではない。
【0053】
(1) キラル化合物
本発明の組成物をコレステリック液晶相を示す組成物として調製するためには、キラル化合物を添加するのが好ましい。キラル化合物は液晶性であっても、非液晶性であってもよい。前記キラル化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。キラル化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物も用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。キラル化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性キラル化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
【0054】
本発明の組成物中のキラル化合物は、併用される式(I)の化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。キラル化合物の使用量を、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0055】
(2)他の液晶化合物
本発明の組成物は、前記式(I)の化合物とともに、他の1種以上の液晶性化合物を含有していてもよい。前記式(I)の化合物は、他の液晶性化合物との相溶性も高いので、他の液晶性化合物を混合しても、不透明化等が生じず、透明性の高い膜を形成可能である。他の液晶性化合物を併用可能であることから、種々の用途に適する種々の組成の組成物を提供できる。併用可能な他の液晶化合物の例には、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0056】
本発明に利用可能な他の液晶化合物は、重合性であっても非重合性であってもよい。重合性基を有しない棒状液晶化合物については、様々な文献(例えば、Y. Goto et.al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1995, Vol. 260, pp.23-28)に記載がある。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0057】
他の液晶化合物の添加量については特に制限はない。前記式(I)の化合物の含有割合が高くても、他の液晶化合物の含有割合が高くても、互いに等しい含有割合であってもよく、用途に応じて好ましい範囲に調整することができる。
【0058】
(3) 重合開始剤
本発明の組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。例えば、紫外線照射により硬化反応を進行させて硬化膜を形成する態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0059】
光重合開始剤の使用量は、組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0060】
(4) 配向制御剤
本発明の組成物中に、安定的に又は迅速に液晶相(例えば、コレステリック液晶相)となるのに寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなる。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、例えば、コレステリック液晶相とする場合は、その螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大や回折性を示すため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0061】
以下、配向制御剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)について、順に説明する。
【0062】
【化19】

【0063】
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0064】
【化20】

【0065】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0066】
【化21】

【0067】
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(XI)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0068】
本発明において配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0069】
前記組成物中における、一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量は、前記式(I)の化合物の質量の0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
【0070】
(5)その他の添加剤
本発明の組成物は、1種又は2種類以上の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、界面活性物質、分散剤、染料、顔料等の色材、等の他の添加剤を含有していてもよい。
【0071】
(6)組成物を用いたフィルムの作製方法
本発明の組成物は、位相差フィルム、反射フィルム等の種々の光学フィルムの材料として有用である。当該フィルムの製造方法の一例は、
(i) 基板等の表面に、本発明の重合性組成物を塗布して、液晶相(コレステリック液晶相等)の状態にすること、
(ii) 前記重合性組成物の硬化反応を進行させ、液晶相を固定して硬化膜を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(i)及び(ii)の工程を、複数回繰り返して、複数の上記硬化膜が積層されたフィルムを作製することもできる。
【0072】
前記(1)工程では、まず、基板又はその上に形成された配向膜の表面に、本発明の重合性組成物を塗布する。前記組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。該有機溶媒としては、アミド(例えばN,N−ジメチルホルムアミド);スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド);ヘテロ環化合物(例えばピリジン);炭化水素(例えばベンゼン、ヘキサン);アルキルハライド(例えばクロロホルム、ジクロロメタン);エステル(例えば酢酸メチル、酢酸ブチル);ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン);エーテル(例えばテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン);1,4−ブタンジオールジアセテートなどが含まれる。これらの中でも、アルキルハライド及びケトンが特に好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0073】
前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0074】
次に、表面に塗布され、塗膜となった組成物を、コレステリック液晶相等の液晶相の状態にする。前記組成物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、液晶相の状態にすることができる場合がある。また、液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的に液晶相の状態にすることができる。前記組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、基板の変形、変質等からも不利になる。
【0075】
次に、(2)の工程では、液晶相の状態となった塗膜を硬化させる。硬化は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等、いずれの重合法に従って進行させてもよい。式(I)の化合物に応じて、適する重合法が選択されるであろう。この重合により、本発明の式(I)の化合物から誘導される単位を構成単位中に有する重合体が得られる。
一例では、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、硬化膜が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0076】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、液晶相が乱れないように、液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。
【0077】
上記工程では、液晶相が固定されて、硬化膜が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、液晶相となっている化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に硬化膜中の組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0078】
上記硬化膜の厚みについては特に制限はない。用途に応じて、又は所望とされる光学特性に応じて、好ましい膜厚が決定されるであろう。一般的には、厚さは0.05〜50μmが好ましく、1〜35μmがより好ましい。
【0079】
(7)基板
本発明のフィルムは、基板を有していてもよい。当該基板は自己支持性があり、上記硬化膜を支持するものであれば、材料及び光学的特性についてなんら限定はない。ガラス板、石英板、及びポリマーフィルム等から選択することができる。用途によっては、紫外光に対する高い透明性が要求されるであろう。可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが好ましい。
【0080】
(8) 配向層
本発明のフィルムは、基板と前記硬化膜との間に、配向層を有していてもよい。配向層は、液晶化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。
【0081】
配向層に用いられる材料としては、有機化合物のポリマーが好ましく、それ自体が架橋可能なポリマーか、或いは架橋剤により架橋されるポリマーがよく用いられる。当然、双方の機能を有するポリマーも用いられる。ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレ−ト、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコ−ル及び変性ポリビニルアルコ−ル、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0082】
(9)本発明のフィルムの用途
本発明のフィルムの一態様は、本発明の重合性組成物の、液晶相の配向(例えば、水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向等)を固定したフィルムであって、光学異方性を示すフィルムである。当該フィルムは、液晶表示装置等の光学補償フィルム等として利用される。
本発明のフィルムの一態様は、本発明の重合性組成物のコレステリック液晶相を固定したフィルムであって、所定の波長域の光に対して選択反射特性を示すフィルムである。赤外線波長域(波長800〜1300nm)に選択反射特性を示す当該フィルムは、例えば建物又は車両の窓ガラスに貼付され、もしくは合わせガラスに組み込まれて、遮熱部材として利用される。
また、本発明のフィルムは、光学素子の構成要素である、偏光素子、選択反射膜、カラーフィルタ、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
【0083】
3. 高分子
本発明は、前記式(I)の重合性化合物の1種又は2種以上を重合してなる高分子、及び本発明の重合性化合物を重合してなる高分子にも関する。該高分子は、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。前記式(I)の重合性化合物から誘導される繰り返し単位を含むことから、高いΔnを示し、種々の光学要素の材料として有用である。
【実施例】
【0084】
以下に実施例と比較例(なお比較例は公知技術というわけではない)を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1:例示化合物(I−1)の合成例]
以下のスキームに従って、例示化合物(I−1)を合成した。
【0085】
【化22】

【0086】
中間体Aの合成:
特許第4355406号の23頁、[0109]及び[0110]段落に記載の方法を参照して合成した。1H−NMRで同定した。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン) δ (ppm):1.85-1.95 (4 H 、m)、4.03(2 H 、t)、4.25(2 H 、t)、5.82(1 H 、d)、6.12(1 H 、dd)、6.31(1 H 、d)、6.41(1 H 、d)、6.91(2 H 、d)、7.51(2 H 、d)、7.73(1 H 、d)。
【0087】
例示化合物 (I−1)の合成:
三口フラスコに、中間体(A)1.99g、テトラヒドロフラン(THF)10mLを入れ、氷/メタノール冷媒を用いて0℃にまで冷却した。その後、メシルクロライド(MsCl)0.53mLを滴下し、続いてN,N−ジイソプロピルエチルアミン1.33mLを滴下した。0℃で30分間攪拌した後、4−ヒドロキシチオフェノール 0.42g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.33mL を滴下し、室温で3時間攪拌した。得られた溶液にメタノールを注ぎ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。その後、メタノールを加え、再結晶することにより、例示化合物(I−1)を白色固体として1.2g得た(収率54%)。同定は、1H−NMRで行った。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.85 - 1 .95 (8 H 、m)、4.01 - 4 .10(4 H 、m)、4.22 - 4 .28(4 H 、m)、5.82(2 H 、d)、6.12(2 H 、dd)、6.41(1 H 、d)、6.49(1 H 、d)、6.65(1 H 、d)、6.82 - 6 .95(6 H 、m)、7.25(2 H 、d)、7.46 - 7 .63(4 H 、m)、7.63(1 H 、d)、7.82(1 H 、d)。
【0088】
得られた例示化合物(I−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き94℃付近で結晶相からネマチック液晶相に変わり、222℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、(I−1)は94℃から222℃の間でネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0089】
[実施例2:例示化合物(I−2)の合成]
下記スキームにしたがって、例示化合物(I−2)を合成した。
【0090】
【化23】

【0091】
中間体A及びBの合成:
中間体Aについては上記と同様にして合成した。
中間体Bについては、特許第4355406号の23頁、[0109]及び[0110]段落に記載の方法を参照し、但し、4−ヒドロキシベンズアルデヒドの代わりにバニリンを用いることにより合成した。
【0092】
例示化合物(I−2)の合成:
中間体A及びBを用いて、例示化合物(I−1)と同様にして、例示化合物(I−2)を合成した。同定は、1H−NMRにより行った。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.85 - 1 .95 (4 H 、m)、3.90(3 H 、s)、4.10(2 H 、t)、4.25(2 H 、t)、5.82(1 H 、d)、6.12(1 H 、dd)、6.31(1 H 、d)、6.41(1 H 、d)、6.91(2 H 、d)、7.51(2 H 、d)、7.73(1 H 、d)。
【0093】
[実施例3:例示化合物(I−3)の合成例]
中間体Aを中間体Bに代えた以外は、例示化合物(I−1)と同様に、以下のスキームに従って、例示化合物(I−3)を合成した。
【0094】
【化24】

【0095】
1H−NMRにより、例示化合物(I−3)であることを確認した。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.85 - 1 .95 (8 H 、m)、3.90(6 H 、s)、4.10(4 H 、t)、4.25(4 H 、t)、5.82(2 H 、d)、6.12(2 H 、dd)、6.31(2 H 、d)、6.50(1 H 、d)、6.91(2 H 、d)、7.10−7.40(10 H 、m)、7.58(2 H 、d)、7.83(2 H 、d)、8.11(1H 、d)。
【0096】
[実施例4:例示化合物(II−3)の合成例]
下記スキームに従って、例示化合物(II−3)を合成した。
【0097】
【化25】

【0098】
中間体Cの合成:
特許第4355406号の23頁、[0109]及び[0110]段落に記載の方法を参照して、但し、マロン酸の代わりにシアノ酢酸を用いることにより中間体Cを合成した。合成した化合物の同定は、1H−NMRにより行った。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):1.85-2.00(m、4H)、4.10-4.15(m、2H)、4.25-4.30(m、2H)、5.85(d、1H)、6.15(dd、1H)、6.40(d、1H)、7.00(d、2H)、8.00(d、2H)、8.25(s、1H)。
【0099】
例示化合物(II−3)の合成:
中間体Aを中間体Cに代え、4−ヒドロキシチオフェノールをメチルハイドロキノンに代えた以外は、例示化合物(I−1)と同様にして、例示化合物(II−3)を合成した。同定は、1H−NMRにより行った。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.85 - 1 .95 (8 H 、m )、4.01 - 4 .10(4 H 、m)、4.22 - 4 .28(4 H 、m)、5.82(2 H 、d)、6.12(2 H 、dd)、6.41(2 H 、d)、7.01(4 H 、d)、7.11 - 7 .28(4 H 、m)、8.06(4 H 、d)、8.31(1 H 、s)、8.32(1 H 、s)。
【0100】
[実施例5:例示化合物(III−1)の合成]
下記スキームに従って、例示化合物(III−1)を合成した。
【0101】
【化26】

【0102】
中間体A及びDの合成:
中間体Aについては、上記と同様にして合成した。
中間体D:4−(4−アクリロイルオキシブチルオキシ)安息香酸については、特開2002−97170号公報の10頁、[0085]〜[0087]段落に記載の方法を参照して合成した。
【0103】
例示化合物(III−1)の合成:
中間体A及びDを用いた以外は、例示化合物(I−1)の合成と同様の方法で、例示化合物(III−1)を0.8g得た。同定は、1H−NMRにより行った。
1H−NMR(溶媒:CDCl3 、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.85 - 1 .95 ( 8 H 、m )、4.00 - 4 .11(4 H 、m)、4.21 - 4 .30(4 H 、m)、5.82(2 H 、d)、6.12(2 H 、dd)、6.42(2 H 、d)、6.67(1 H 、d)、6.91(2 H 、d)、6.98(2 H 、d)、7.23 - 7 .35(4 H 、m)、7.50 - 7 .58(4 H 、m)、7.68(1 H 、d)、8.16(2 H 、d)。
【0104】
得られた例示化合物(III−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き85℃付近で結晶相からネマチック液晶相に変わり、199℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、例示化合物(III−1)は85℃から199℃の間でネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0105】
[各化合物の物性]
化合物のΔnは、液晶便覧(液晶便覧編集委員会)の202頁に記載の方法により、直接求めることができる。上記で合成した各化合物を、くさび型セルに注入し、これに波長532nmのレーザー光を照射し、透過光の屈折角を測定することにより、Δnを求めた。
下記表に、各化合物のΔnを示す。また相転移温度についても併せて示す。
また、比較例として、下記の比較例用化合物(R−1)及び(R−2)についても同様にして、相転移温度、及びΔnを測定した。結果を下記表にあわせて示す。
【0106】
【化27】

【0107】
【表1】

*結晶化のため測定不可
【0108】
[実施例6:位相差膜の形成]
実施例1で合成した本発明の例示化合物(I−1)を用いて、下記の組成の液晶性組成物塗布液(1)を調製した。
例示化合物(I−1) 33質量部
重合性液晶化合物(1) 67質量部
空気界面配向剤(1) 0.1質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 800質量部
【0109】
【化28】

【0110】
次に、洗浄したガラス基板上に日産化学社製ポリイミド配向膜SE−130をスピンコート法により塗布し、乾燥後に250℃で1時間焼成した。これをラビング処理して配向膜付き基板を作製した。この基板の配向膜のラビング処理面上に、液晶性組成物塗布液(1)をスピンコート法により室温で塗布し、120℃で30秒配向熟成を行った後に、窒素ガス雰囲気下室温でUVの短波長成分を除去した高圧水銀ランプを用いて10秒間光照射して配向を固定し位相差膜1を形成した。塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜に結晶の析出は見られなかった。
【0111】
この液晶組成物を配向固定して得られた位相膜1を偏光顕微鏡で観察したところ配向欠陥が無く均一に一軸配向していることが確認できた。
さらにこの膜をAXOMETRIX社製のAxoScanを用いてTip−Tiltモードで測定した結果、この装置が算出した液晶の平均傾斜角度は1度であり、A−plate型の位相差膜が形成できていることを確認した。
また、この装置を用いて測定した位相差と、共焦点レーザー膜厚測定装置(キーエンス社製FV−7510を用いて測定した位相差膜1の膜厚から算出した波長550nmにおけるΔnは0.235であった。また、日本電飾社製ヘイズメータNHD2000を用いて測定したヘイズは0.09であった。
【0112】
[実施例7〜10:位相差膜の形成]
上記実施例でそれぞれ合成した化合物を、例示化合物(I−1)の代わりにそれぞれ用いた以外は同様にして、液晶性組成物塗布液(2)〜(5)をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例6と同様にして位相差膜2〜5をそれぞれ形成した。
これらの位相差膜はいずれも良好な配向性を示し、0.1以下の低いヘイズであった。実施例6と同様にして求めた位相差膜のΔnを、下記表にまとめた。
【0113】
[比較例3:比較例用位相差膜の形成]
実施例6と同様にして下記の組成の液晶性組成物塗布液(11)を調製した。
上記重合性液晶化合物(R−2) 100質量部
空気界面配向剤(1) 0.1質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 800質量部
【0114】
液晶性組成物塗布液(1)の代わりに液晶性組成物塗布液(11)を用いる以外は実施例6と同様にして位相差膜6を形成した。但し、この液晶組成物の液晶上限温度が実施例1よりも低いため、配向熟成の温度は90℃とした。また塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜上に結晶が一部析出した。そのため再加熱して配向熟成後も、析出部分に膜厚ムラが残った。
実施例6と同様な方法よって測定した比較例3の位相膜の波長550nmにおけるΔnは0.17であった。また、ヘイズは0.19であった。
【0115】
[比較例4:比較例用位相差膜の形成]
重合性液晶化合物(R−2)の代わりに、重合性液晶化合物(R−1)を用いた以外は、比較例3と同様にして液晶性組成物塗布液を調製し、該塗布液を用いて、同様にして位相差膜を作製した。
実施例6と同様な方法よって測定した比較例4の位相膜の波長550nmにおけるΔnは0.197であった。また、ヘイズは0.1であった。
下記表に結果を示す。
【0116】
【表2】

【0117】
上記表に示した結果から、本発明の式(I)の化合物は、従来の液晶性化合物と比較して、高いΔnを有することが理解できる。
【0118】
[実施例11:選択反射膜の形成]
実施例1で合成した本発明の例示化合物(I−1)を用いて、下記の組成の液晶性組成物塗布液(6)を調製した。
例示化合物(I−1) 33質量部
重合性液晶化合物(R−2) 67質量部
キラル剤Paliocolor LC756 (BASF社製) 3質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 300質量部
【0119】
実施例6と同様にして製作した配向膜付き基板の配向膜表面に液晶性組成物塗布液(6)をスピンコート法により室温で塗布し、120℃で3分間配向熟成を行った後に、室温でUVの短波長成分を除去した高圧水銀ランプを用いて10秒間光照射して配向を固定し選択反射膜1を得た。塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜に結晶の析出は見られなかった。
得られた選択反射膜1を偏光顕微鏡で観察したところ配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。さらにこの膜を島津社製の分光光度計UV−3100PCで透過スペクトルを測定したところ1000nmに中心を持つ赤外領域に選択反射ピークがあり、その半値幅が147nmであった。ピークの半値幅と液晶組成物の螺旋周期とを用いて算出した波長1000nmにおけるΔnは0.22であった。 また、日本電飾社製ヘイズメータNHD2000を用いて測定したヘイズは0.09であった。
【0120】
[実施例12〜15:選択反射膜の形成]
上記実施例でそれぞれ合成した例示化合物を、例示化合物(I−1)の代わりにそれぞれ用いた以外は、実施例11と同様にして液晶性組成物塗布液(7)〜(10)をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例11と同様な方法によって、選択反射膜2〜5をそれぞれ作製した。これらの選択反射膜はいずれも良好な配向性を示し、0.15以下の低いヘイズであった。 同様に求めた選択反射膜のピーク半値幅とそれから求められるΔnを表3にまとめた。
【0121】
[比較例5:比較例用選択反射膜の形成]
実施例11と同様にして下記の組成の液晶性組成物塗布液(12)を調製した。
重合性液晶化合物(R−2) 100質量部
キラル剤Paliocolor LC756 (BASF社製) 2.8質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 300質量部
【0122】
液晶性組成物塗布液(6)の代わりに液晶性組成物塗布液(12)を用いる以外は実施例6と同様にして比較例用選択反射膜を形成した。但し、この液晶組成物の液晶上限温度が実施例11で用いた組成物よりも低いため、配向熟成の温度は90℃とした。
塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜上に結晶が一部析出した。そのため再加熱して配向熟成後も、析出部分に膜厚ムラと配向不均一性が残った。
この選択反射膜は、1000nm付近に中心を持つ赤外領域に選択反射ピークがあり、その半値幅が106nmであった。ピークの半値幅と液晶組成物の螺旋周期とを用いて算出した波長1000nmにおけるΔnは0.17であった。また、日本電飾社製ヘイズメータNHD2000を用いて測定したヘイズは0.65であった。
【0123】
[比較例6:比較例用選択反射膜の形成]
重合性液晶化合物(R−2)に代えて、重合性液晶化合物(R−1)を用いた以外は、比較例5と同様にして液晶性組成物塗布液を調製し、該塗布液を用いて、同様にして比較例用選択反射膜を形成した。
この選択反射膜は、1000nm付近に中心を持つ赤外領域に選択反射ピークがあり、その半値幅が127nmであった。ピークの半値幅と液晶組成物の螺旋周期とを用いて算出した波長1000nmにおけるΔnは0.199であった。また、日本電飾社製ヘイズメータNHD2000を用いて測定したヘイズは0.08であった。
下記表に結果を示す。
【0124】
【表3】

【0125】
上記表に示した結果から、本発明の式(I)の化合物は、従来の液晶性化合物と比較して、高いΔnを有することが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物:
【化1】

式中、
1及びP2はそれぞれ、重合性基を表し;
m1及びm2はそれぞれ、1〜10の整数を表し、m1又はm2個のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく;
Aは、5〜18員の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環を有する2価基を表し、該芳香族炭化水素環及び該芳香族複素環に含まれる水素原子は、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよく;
3及びL4はそれぞれ、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、k1及びk2はそれぞれ、0〜4の整数を表し;
1、X2、X3及びX4はそれぞれ、−O−、−S−、−NH−、−NR−、又は−SiR000−を表し、R、R0及びR00はそれぞれ、炭素原子数1〜10のアルキル基を表し;
n1及びn2はそれぞれ、0又は1を表し、但し少なくとも一方は1であり、
1a、L1b、L2a及びL2bはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、−CN、−NC、−NCO、−NCS、又は−OCNを表し、但し、
n1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が1で且つL2a及びL2bの双方が水素原子の時、並びにn1が1で且つL1a及びL1bの双方が水素原子であり、及びn2が0の時に限り、
2及びX3の双方が−O−で表される化合物、並びにX2及びX3の一方が−O−であり且つ他方が−NH−又は−NR−で表される化合物を除く。
【請求項2】
式(I)中、Aが、6員の芳香族炭化水素環を含む2価基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(I)中、X2及びX3の少なくとも一方が、−S−である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(I)中、P1及びP2がそれぞれ、以下の式(P−1)〜式(P−5)で表される基からなる群から選ばれる重合性基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物:
【化2】

式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
【請求項5】
式(I)中、P1及びP2はそれぞれ、メタクリレート基またはアクリレート基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1種を含有する重合性液晶組成物。
【請求項7】
さらに、少なくとも1種のキラル化合物を含有する請求項6に記載の重合性液晶組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項6もしくは7に記載の重合性組成物を、重合させてなる高分子。
【請求項9】
請求項8に記載の高分子の少なくとも1種を含有するフィルム。
【請求項10】
請求項7に記載の重合性液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
【請求項11】
光学異方性を示す請求項9又は10に記載のフィルム。
【請求項12】
選択反射特性を示す請求項9〜11のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項13】
赤外線波長域に選択反射特性を示す請求項12に記載のフィルム。

【公開番号】特開2011−207942(P2011−207942A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74760(P2010−74760)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】