説明

化合物の非経口送達のための処方物およびその使用

本発明は、メチルナルトレキソン組成物の効果的な送達を達成する処方物を提供する。提供される処方物は、鎮痛オピオイドの使用から生じる副作用の予防、遅延、消失または重篤度の軽減に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2006年8月4日出願の米国仮特許出願第60/835,574号の優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願の全ては出典明示により本明細書の一部とされる。
【背景技術】
【0002】
オピオイドは、苦痛を和らげるために進行癌や他の末期疾患の患者に広く用いられている。オピオイドは、中枢神経系に存在するオピオイド受容体を活性化して疼痛を緩和する麻薬性薬物である。しかしながら、オピオイドは、中枢神経系外の受容体とも反応し、結果として便秘、悪心、嘔吐、尿貯留および重度のかゆみなどの副作用を引き起こす。最も注目すべきは胃腸管(GI)内での作用であり、胃腸管でオピオイドは胃内容排出や腸の推進運動活性を阻害し、それによって腸管輸送速度が低下し、そのことが便秘を引き起こす場合がある。オピオイドの疼痛に対する有効性は結果として生じる副作用のために制限されることが多く、この副作用が身体を衰弱させ、多くの場合、患者はオピオイド鎮痛薬の使用を止めることになる。
【0003】
鎮痛薬オピオイドによる副作用に加えて、内因性オピオイド化合物および受容体も胃腸(GI)管の活性に影響を及ぼす可能性があり、動物およびヒトの両方における腸の運動性の正常な調節や流体の粘膜輸送に関与する可能性があることも研究により示唆された。(Koch, T. R, et al., Digestive Diseases and Sciences 1991, 36, 712-728; Schuller, A.G.P., et al., Society of Neuroscience Abstracts 1998, 24, 524, Reisine, T., and Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996, 521-555 and Bagnol, D., et al., Regul. Pept. 1993, 47, 259-273)。それゆえ、異常な生理学的レベルの内因性化合物および/または受容体活性が腸機能障害につながる可能性がある。
【0004】
例えば、外科的処置、とりわけ腹部の手術を受けたことがある患者は、手術後(または外科術後)腸閉塞などの腸機能障害に罹患していることが多く、この腸機能障害は天然オピオイドレベルの変動によって起こる可能性がある。同様に、最近出産した女性は産後腸閉塞に一般に罹患しており、この産後腸閉塞は出産ストレスの結果として同じような天然オピオイド変動によって起こると考えられている。手術後または産後腸閉塞に関連する腸機能障害は、一般に3〜5日間続き、一部の重症例では1週間より長く続く。現在ほぼ一般的に行われている慣行である外科術後の患者へのオピオイド鎮痛薬の投与は、腸機能障害を悪化させる可能性があり、それにより正常な腸機能の回復が遅れ、入院が長引き、医療費が高くなる。
【0005】
ナロキソン、ナルトレキソン、およびナルメフェンなどのオピオイド拮抗薬は、オピオイドの望ましくない末梢作用に拮抗する手段として研究されている。しかしながら、これらの薬剤は末梢オピオイド受容体に対してだけでなく、中枢神経系部位に対しても作用し、その結果、これらの薬剤はオピオイドの有益な鎮痛作用を減弱させることがあり、またはオピオイド離脱症状を引き起こすことがある。オピオイドによる副作用の制御に用いる好ましいアプローチには、血液脳関門を容易には通過しない末梢オピオイド拮抗薬化合物の使用がある。例えば、患者におけるオピオイドによる副作用(例えば便秘、そう痒、悪心、および/または嘔吐)を抑制するのに用いる末梢μオピオイド拮抗薬化合物メチルナルトレキソンおよび関連化合物が開示されている。例えば、米国特許第5,972,954、同第5,102,887号、同第4,861,781号および同第4,719,215号、ならびにYuan, C. -S. et al. Drug and Alcohol Dependence 1998, 52, 161参照。
【0006】
末梢μオピオイド受容体拮抗薬メチルナルトレキソンの処方物は記載されている(例えば、米国特許第6,608,075号、同第6,274,591号および同第6,559,158号参照)。しかしながら、メチルナルトレキソンはある特定の媒質中、ある特定の条件下で分解産物を形成することが分かった。例えば、US 2004266806A1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,972,954号明細書
【特許文献2】米国特許第5,102,887号明細書
【特許文献3】米国特許第4,861,781号明細書
【特許文献4】米国特許第4,719,215号明細書
【特許文献5】米国特許第6,608,075号明細書
【特許文献6】米国特許第6,274,591号明細書
【特許文献7】米国特許第6,559,158号明細書
【特許文献8】米国特許公開2004−266806号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Koch, T. R, et al., Digestive Diseases and Sciences 1991, 36, 712-728
【非特許文献2】Schuller, A.G.P., et al., Society of Neuroscience Abstracts 1998, 24, 524
【非特許文献3】Reisine, T.および Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996, 521-555
【非特許文献4】Bagnol, D., et al., Regul. Pept. 1993, 47, 259-273
【非特許文献5】Yuan, C. -S. et al. Drug and Alcohol Dependence 1998, 52, 161
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
冷凍および/または室温条件下でメチルナルトレキソンの大量分解なしにメチルナルトレキソンの効果的な送達が可能である投与形を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ある特定のメチルナルトレキソン処方物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、冷凍条件下ならびに室温条件において有効化合物の改善された貯蔵寿命安定特性を有する処方物を提供する。提供される処方物はメチルナルトレキソンの非経口投与に有用である。本発明はかかる処方物の生産および使用のための方法、ならびに提供される処方物を含む製品およびキットを含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、水溶液中に有効量の、少なくともメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、およびカルシウム塩キレート剤から選択される少なくとも1つの有効化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0012】
他の実施形態では、メチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウム塩、キレート剤、等張化剤、および水性溶媒を含む液体製剤が提供される。ある特定の実施形態では、カルシウム塩およびキレート剤はカルシウム塩キレート剤として一緒に提供される。いくつかの実施形態では、カルシウム塩キレート剤は、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、カルシウムジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、カルシウムヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、カルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、カルシウムニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸カルシウム、およびそのカルシウム塩誘導体から選択される。いくつかの実施形態では、カルシウム塩キレート剤はカルシウムEDTAである。
【0013】
いくつかの実施形態では、処方物は追加安定剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、グリシン、安息香酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、およびマレイン酸から選択される。ある特定の実施形態では、安定剤はグリシンである。
【0014】
ある特定の実施形態では、処方物はメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウムキレート剤、安定剤、および等張化剤、ならびに水性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、処方物は水溶液中にメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウムEDTA、グリシン、および塩化ナトリウムを含む。
【0015】
一般に、提供される処方物は、オピオイドの使用による副作用(胃腸機能障害(例えば便秘、腸の運動低下、埋伏、胃の運動低下、GI括約筋収縮、括約筋の緊張の増加、胃腸運動の抑制、腸運動の抑制、胃内容排出の抑制、胃内容排出の遅延、残便、悪心、嘔吐(emesis)(吐き気(vomiting))、鼓脹、腹部膨満)、皮膚の紅潮、発汗、不快、そう痒、尿貯留などの抑制を含む)の重篤度を予防、治療または軽減するのに有用である。提供される処方物は、短期オピオイド処置を受けている患者(例えば外科術(外傷性傷害の腹部外科術、整形外科術など)から回復しつつある患者、外傷性傷害から回復しつつある患者、および出産から回復しつつある患者)への投与に有用である。処方物は、長期オピオイド投与を受けている対象(例えばオピオイド療法(例えばエイズ患者、癌患者、心血管患者)を受けている末期症状の患者;疼痛管理(例えば背痛)のために長期オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためにオピオイド療法を受けている対象)への投与にも有用である。
【0016】
提供される処方物のさらなる用途には、内因性オピオイドの正常または異常な活性から生じる障害または状態に関連する症状の重篤度の予防、治療または軽減が含まれる。かかる障害または状態には、とりわけ、腸閉塞(例えば産後腸閉塞、麻痺性腸閉塞)、腹部外科術(例えば、限定されるものではないが、右半結腸切除術、左半結腸切除術、横行半結腸切除術、結腸切除分解、および低位前方切除術を含む結腸切除術)後に発症する胃腸機能障害(手術後腸閉塞など)、ならびに特発性便秘が含まれる。提供される処方物は、例えば、脈管形成を伴う癌、炎症性疾患(例えば過敏性腸障害)、免疫抑制、心血管障害(例えば徐脈、低血圧症)慢性炎症および/または慢性疼痛、鎌状赤血球貧血、血官創傷、および網膜症、胆汁分泌の減少、膵液分泌の減少、胆道痙攣、ならびに胃食道逆流の増加を含む状態の処置においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1Aおよび図1Bは、鉄の存在下で40℃(図1A)および室温、25℃(図1B)での2’,2−ビスメチルナルトレキソンの生成に対するCaEDTAおよびNaEDTAの効果を示す図である。カルシウムEDTAおよびナトリウムEDTAはいずれも2’,2’ビスメチルナルトレキソン分解物生成の効果的な阻害剤である。
【図2】図2A、図2B、図2C、および図2Dは、溶液中での7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンの生成に対するCaEDTAの効果を示す図である。鉄の存在下で40℃(図2A)および室温、25℃(図2B)での7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンの生成に対するCaEDTAおよびNaEDTAの効果を評価した。カルシウムEDTAは7−ジヒドロキシ−メチルナルトレキソン分解物生成の効果的な阻害剤であるがナトリウムEDTAはそうではない。溶液中での7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンの生成に対するCaEDTAの効果を、室温で(図2C)および40℃(図2D)で1ヶ月保存後に評価した。CaEDTAの存在はいずれの温度においても7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンの生成を低減した。室温で1ヶ月後、そのレベルは0.34%から0.11%に低減され;40℃/75%RHでは、そのレベルは0.64%から0.14%に低減された。サンプル中のNaEDTAの存在は生成される7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンのレベルをむしろ増大させる可能性がある。
【図3】図3Aおよび図3Bは、RRT0.79を有するメチルナルトレキソン分解物(「0.79分解物」)の生成に対するメチルナルトレキソン溶液中のCaEDTAの効果を示す図である。室温、25℃で(図3A)および40℃での(図3B)0.79分解物の生成に対するCaEDTAおよびNaEDTAの効果を評価した。カルシウムEDTAは0.79分解物の生成を阻害するのに効果的ではなく、分解物生成レベルを増大させる可能性がある。
【図4】確認されたメチルナルトレキソン分解物、それぞれの相対保持時間(RRT)、ならびに確認された生成についての関連触媒および/または阻害剤を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ある特定の条件下で改善された安定特性を有する医薬処方物が提供される。提供される処方物を含む組成物、キット、および製品は、長期間の保存期間と、有利な室温条件下での保存も可能にする。よって、提供される処方物を含む組成物およびキットおよび製品は、メチルナルトレキソンの使用から恩恵を受ける対象への治療用物質の改善された送達を可能にする。
【0019】
例えば、提供される処方物は、オピオイド投与に関連する副作用(胃腸機能障害(例えば便秘、腸の運動低下、埋伏、胃の運動低下、GI括約筋収縮、括約筋の緊張の増加、胃腸運動の抑制、腸運動の抑制、胃内容排出の抑制、胃内容排出の遅延、残便、悪心、嘔吐(吐き気)、鼓脹、腹部膨満)、不快、そう痒、尿貯留、呼吸抑制、乳頭収縮、心血管系への影響、胸壁硬直および咳抑制、ストレス反応抑制、ならびに麻薬性鎮痛の使用に伴う免疫抑制などを含む)の重篤度または罹患率を治療、予防、遅延、または軽減するのに有用である。オピオイド投与のさらなる効果には、例えば内皮細胞(例えば血管内皮細胞)の異常な移動または増殖、脈管形成の増大、および日和見感染病原体(例えば緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))による致死因子産生の増加が含まれ得る。処方物は、オピオイドによる短期処置を受けている患者(例えば短期オピオイド投与を受けている手術後胃腸機能障害に罹患している患者)への投与に有用である。処方物は、長期オピオイド投与を受けている対象(例えば、エイズ患者、癌患者、心血管疾患患者などのオピオイド療法を受けている末期症状の患者;疼痛管理のために長期オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためにオピオイド療法を受けている対象)への投与にも有用である。
【0020】
提供される処方物のさらなる用途には、例えば、内因性オピオイドの正常または異常な活性から生じる障害または状態に関連する症状の重篤度の予防、遅延、治療または軽減が含まれる。かかる障害または状態には、とりわけ、腸閉塞(例えば産後腸閉塞、麻痺性腸閉塞)、腹部外科術(例えば、限定されるものではないが、右半結腸切除術、左半結腸切除術、横行半結腸切除術、結腸切除分解、および低位前方切除術を含む結腸切除術)後に発症する胃腸機能障害(手術後腸閉塞など)、ならびに特発性便秘が含まれる。提供される処方物は、脈管形成を伴う癌、免疫抑制、鎌状赤血球貧血、血官創傷、網膜症を含む状態の処置、ならびに炎症関連障害(例えば過敏性腸症候群)、免疫抑制、および慢性炎症の処置においても有用である
【0021】
定義
用語「投与濃縮物」とは、有効薬剤の濃度が対象に直接投与される通常の単位投与形濃度より高い提供される処方物を含む医薬組成物を指す。投与濃縮物は、対象への投与について記述されているように使用してよいが、一般には対象への投与のための調製において通常の単位投与形濃度にさらに希釈される。投与濃縮物の全量、またはそのアリコートを、例えば、本明細書において提供される方法により、処置のための単位投与形を調製するのに使用してよい。いくつかの実施形態では、投与濃縮物は、単位投与形よりも約2倍、約5倍、約10倍、約25倍、約50倍、約100倍、または約200倍以上濃縮されている。ある特定の実施形態では、投与濃縮物は、単位投与形よりも約50倍、約100倍、または約200倍以上濃縮されている。
【0022】
本明細書において、「有効量」の化合物または医薬上許容される処方物は望ましい治療および/または予防効果をもたらし得る。いくつかの実施形態では、「有効量」は、オピオイド鎮痛療法に関連する副作用(例えば胃腸機能障害(例えば運動不全型便秘など)、悪心、嘔吐(例えば吐き気)など)などの末梢μオピオイド受容体の変調に関連する障害または状態の1以上の症状を治療するのに十分な、化合物、または化合物を含む処方物の少なくとも最少量である。ある特定の実施形態では、「有効量」の化合物、または化合物を含む処方物は、異常な内因性末梢オピオイドまたはμオピオイド受容体活性に関連する症状、異常な内因性末梢オピオイドまたはμオピオイド受容体活性に関連する疾患(例えば特発性便秘、腸閉塞など)を治療するのに十分なものである。
【0023】
用語「処方物」とは、対象への投与のために少なくとも1つの薬学上有効な化合物(例えば少なくともメチルナルトレキソン)を1以上の賦形剤または他の医薬品添加物と組み合わせて含む組成物を指す。一般に、特定の賦形剤および/または他の医薬品添加物は、用途に望まれる有効化合物の安定性、放出、分布および/または活性を可能にすることを目的として一般に選択される。
【0024】
本明細書における用語「対象」とは、処方物または処方物を含む組成物を投与する哺乳類を意味し、ヒト対象および家畜(例えばウマ、イヌ、ネコなど)などの動物対象が含まれる。
【0025】
「治療上有効な化合物」または「有効化合物」とは、予防的および/または治療的処置を含む療法(例えばヒト療法、獣医療法)に有用である、生物学的に活性な物質などの物質を指す。治療上有効な化合物は、薬物化合物、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖類、オリゴ糖、多糖類、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチドまたはタンパク質、タンパク質に結合された小分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、およびビタミンである有機分子であり得る。あるいはまたは加えて、治療上有効な化合物は、疾患、状態、または障害の治療、予防、遅延、軽減または改善のための医薬として使用される任意の物質であり得る。本発明の処方物に有用な治療上有効な化合物には、オピオイド拮抗薬化合物、オピオイド鎮痛薬化合物などがある。治療上有効な化合物として有用な化合物のさらに詳細な説明は以下に記述する。治療上有効な化合物には、例えば、第2化合物の効力を増強するかまたは悪影響を軽減することにより、第2化合物の効果または有効性を高める化合物が含まれる。本明細書における用語「治療する」または「治療すること」とは、障害または状態、あるいは該障害、疾患または状態の1以上の症状を部分的にまたは完全に緩和すること、抑制すること、その発症を遅延すること、その罹患率を減少させること、改善することおよび/または軽減することを指す。
【0026】
本明細書における表現「単位用量」とは、治療する対象に適当な処方物の物理的に分離された単位を指す。しかしながら、本発明の処方物の1日総使用量は正しい医学的判断に従って担当医により決定されることは理解されるであろう。任意の特定の対象または生物体に対する具体的な有効用量レベルは、様々な因子(治療する障害およびその障害の重篤度;使用する具体的な有効化合物の活性;使用する具体的な組成物;対象の年齢、体重、全般的健康状態、性別および食生活;投与時期、および使用する具体的な有効化合物の排泄速度;処置期間;使用する具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に用いられる薬物および/または追加療法、ならびに医療分野において周知の同様の因子を含む)によって決まるであろう。
【0027】
表現「投与形」とは、処方物を保存しかつ/または対象に投与するための手段を指す。例えば、処方物はバイアルまたはシリンジに保存してよい。また、処方物は光(例えばUV光)から処方物を保護する容器に保存してもよい。あるいは、容器またはバイアル自体は必ずしも光から保護するものではなく、その容器またはバイアルを光から処方物を保護する第2の保存容器(例えば外箱、バッグなど)に保存してよい。
【0028】
本発明は、メチルナルトレキソン(その医薬上許容される塩を含む)の非経口投与のための処方物および投与形を提供する。本明細書において、「メチルナルトレキソン」とは、N−メチルナルトレキソンおよびその塩を含む。メチルナルトレキソンは、例えば米国特許第4,176,186号;同第4,719,215号;同第4,861,781号;同第5,102,887号;同第5,972,954号;同第6,274,591号;米国公開特許出願番号20020028825および20030022909;およびPCT公報WO99/22737およびWO98/25613(これらの各開示内容は出典明示により本明細書の一部とされる)に記載されている。
【0029】
一般に、医薬上許容される塩としては、限定されるものではないが、化合物の塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、炭酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、カルボン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、セレン酸塩、およびパモン酸塩(すなわち1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の処方物において有用である塩は、メチルナルトレキソンについて記載されているもの、例えば臭化メチルナルトレキソンなどである。しかしながら、本発明はこれらの具体的な塩に限定されない。他の塩およびその混合物も、本発明の適当な化合物送達プロフィールを実現するように、適合させ、本発明による投与処方物(a dose formulation)に使用することができる(例えば塩化物、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、臭化物、ヨウ化物、フマル酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、またはコハク酸塩など)。あるいはまたは加えて、必要に応じて、末梢オピオイド受容体拮抗薬(例えばメチルナルトレキソン)ベース、化学的誘導体およびそのキラル誘導体ならびに他の塩を使用することができる。
【0030】
メチルナルトレキソンの臭化物塩は、例えば、臭化N−メチルナルトレキソン、臭化水素酸N−メチルナルトレキソン、臭化メチルナルトレキソン、臭化水素酸メチルナルトレキソン、ナルトレキソンメトブロミド、N−メチルナルトレキソン、MNTX、SC−37359、MRZ−2663−BR、およびN−シクロプロピルメチルノルオキシ−モルヒネ−メト−ブロミドとも呼ばれている。メチルナルトレキソンは、Mallinckrodt Pharmaceuticals, St. Louis, Mo.から粉末形状で入手可能であり、水に溶けやすい白色結晶性粉末として提供されている。その融点は254〜256℃である。いくつかの実施形態では、本発明は、処方物をバイアルにより提供する。ある特定の実施形態では、処方物は単位用量のメチルナルトレキソンの入ったバイアルで提供される。かかる実施形態では、処方物は約0.5mg〜約200mgの臭化メチルナルトレキソンを含んでよい。いくつかの実施形態では、単位用量は、約1mg〜約80mg、約5mg〜約40mg、または約8mg〜12mg〜約18mg〜約24mgを含み得る。
【0031】
メチルナルトレキソンはキラル中心を有しており、そのため、それらのキラル中心における置換基の配置によって立体化学的異性体として生じ得る。かかる立体化学的異性体は、本処方物における使用に意図される化合物の範囲内である。本発明の組成物および方法では、使用する化合物は単一立体異性体であってよく、立体異性体の混合物であってもよい。ある特定の態様では、本発明の方法は実質的に純粋な立体異性体である化合物を利用する。全ての互変異性体も本発明の組成物の中に含まれるように意図されている。
【0032】
用語「R」および「S」は、有機化学命名法において一般に使用されているように、キラル中心の特異的な立体配置を示すために、本明細書において用いられる。用語「R」とは、「右」を指し、結合に沿って最も低い優先順位の基に向かって見たときに基の優先順位(最も高い〜2番目に低い)が時計回りの関係を有するキラル中心の立体配置を表すために用いられる。用語「S」または「左」は、結合に沿って最も低い優先順位の基に向かって見たときに基の優先順位(最も高い〜2番目に低い)が半時計回りの関係を有するキラル中心の立体配置を表すために用いられる。基の優先順位はそれらの原子番号に基づいている(最も重い同位元素が第1位)。書籍:The Vocabulary of Organic Chemistry, Orchin, et al., John Wiley and Sons Inc., page 126 (1980)(出典明示よりそのまま本明細書の一部とされる)に優先順位と立体化学の考察についての部分的な表が記載されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、単離されたメチルナルトレキソンR−N異性体を処方物および方法に利用してよい。本明細書において、メチルナルトレキソン「R−N異性体」という表記は、窒素に関して(R)立体配置にあるかかる化合物を指す。単離異性体化合物としては、限定されるものではないが、2006年5月25日に出願され、WO2006/127899で公開された米国特許出願第11/441,395号(これは出典明示により本明細書の一部とされる)に記載されたR−N異性体メチルナルトレキソン化合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記有効化合物はR−N異性体メチルナルトレキソン、またはその塩である。メチルナルトレキソンR−N異性体はUSSN 11/441,395においてオピオイド拮抗薬であることが分かっている。
【0034】
いくつかの実施形態では、単離されたメチルナルトレキソンS−N異性体を処方物および方法に利用してよい。本明細書において、メチルナルトレキソン「S−N異性体」という表記は、窒素に関して(S)立体配置にあるかかる化合物を指す。単離異性体化合物としては、限定されるものではないが、2006年5月25日に出願され、WO2006/127898で公開された米国特許出願第11/441,452号(これは出典明示により本明細書の一部とされる)に記載されたメチルナルトレキソン化合物のS−N異性体が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記有効化合物はS−N異性体メチルナルトレキソン、またはその塩である。メチルナルトレキソンS−N異性体はUSSN 11/441,452においてオピオイド作動薬であることが分かっている。
【0035】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の処方物のメチルナルトレキソンは、オピオイド拮抗薬作用を有することを特徴とする立体異性体混合物である。例えば、メチルナルトレキソンはR−NメチルナルトレキソンとS−Nメチルナルトレキソンの混合物であってよく、混合物自体が拮抗薬作用を有し、オピオイド拮抗薬について本明細書に記載されている使用方法に有用であるようなものである。ある特定の実施形態では、S−Nメチルナルトレキソンを実質的に含まないR−Nメチルナルトレキソンが使用される。
【0036】
本発明のある特定の実施形態では、少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%のメチルナルトレキソンが、窒素に関して(R)立体配置にある。サンプル中に存在する(R)−N−異性体の量を、その同じサンプル中に存在する(S)−N−異性体の量と比較して決定するための方法は、WO2006/127899(この全ては出典明示により本明細書の一部とされる)に詳細に記載されている。他の実施形態では、メチルナルトレキソンは0.15%、0.10%、またはそれより少ない(S)−N−異性体を含む。
【0037】
薬学上有効な量にするのに必要なメチルナルトレキソン(またはメチルナルトレキソンと任意の他の特定有効薬剤の組合せ)の正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、副作用または障害の重篤度、特定の化合物の特性、投与様式などに応じて、対象によって異なるであろう。メチルナルトレキソン(例えば臭化メチルナルトレキソン)の1日総用量は、一般に、70kgの成人ヒトに対して10〜200mgの範囲、好ましくは20〜100mgであろう。本発明による単位投与処方物は、通常、単位当たり1〜250mgの有効化合物(例えば臭化メチルナルトレキソン)、単位当たり5〜100mgの有効化合物、単位当たり10〜50mgの有効化合物、または単位当たり約8mgもしくは約12mgもしくは約24mgの有効化合物を含むであろう。ある特定の実施形態では、70kgの成人ヒトへの投与に有効な量のメチルナルトレキソンは、1日1回以上投与される単位用量当たり約10mg〜約50mgの化合物(例えば臭化メチルナルトレキソン)からなってよい。上記に示した用量範囲は成人への有効化合物の投与についての指針を与えると理解されるであろう。例えば、幼児または乳児に投与すべき量は、医師または当業者ならば決定することができ、成人に投与する量より低いかまたは同じであり得る。
【0038】
処方物
本発明は、保存(室温での保存を含む)後に分解物の実質的な産生がなくメチルナルトレキソンの完全性の維持することができる処方物を提供する。よって、提供される処方物は、送達されるメチルナルトレキソンの改善された保存安定特性を与えることができる。例えば、いくつかの実施形態では、処方物はメチルナルトレキソン、カルシウム塩キレート剤、等張化剤、および担体を含む。いくつかの実施形態では、処方物はメチルナルトレキソン、カルシウム塩キレート剤、等張化剤、安定剤、および担体を含む。いくつかの実施形態では、処方物のpHは約pH2〜約pH5の間である。
【0039】
本発明は、医薬組成物の改善された保存および維持のためのメチルナルトレキソンの処方物および送達方法を提供する。特に、本発明は、メチルナルトレキソン組成物の非経口投与のための安定した処方物である処方物を提供する。非経口投与のために提供される処方物には、注射用滅菌溶液、注射用滅菌懸濁液、滅菌エマルジョン、および分散液を含んでよい。
【0040】
例えば、いくつかの実施形態では、処方物は等張液中にメチルナルトレキソン、およびカルシウム塩キレート剤を含む。いくつかの実施形態では、処方物は等張液中にメチルナルトレキソン、カルシウム塩キレート剤、および安定剤を含む。
【0041】
一般には、提供される処方物は、1以上の有効化合物とともに、1以上の賦形剤、例えば、1以上のキレート剤、カルシウムイオン、等張化剤、担体、緩衝剤、共溶媒、希釈剤、保存剤、および/もしくは界面活性剤、またはその組合せなどを含むであろう。成分の量ならびに/または他の成分および/もしくは有効化合物の存在に応じて、同じ成分が2以上の役割を果たし得ることがあり、または異なる処方物、および/もしくは処方物の一部との関連において異なる役割を果たし得ることは当業者ならば容易に理解するであろう。有効化合物は約0.5mg〜約200mgの臭化メチルナルトレキソンを含んでよい。いくつかの実施形態では、有効化合物は、約1mg〜約80mg、約5mg〜約40mg、または約8mg、または約12mg、約16mg、約18mg、または約24mgの臭化メチルナルトレキソンを含んでよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記処方物はキレート剤を含む。いくつかの実施形態では、キレート剤は、前記処方物中約0.01mg/mL〜約2mg/mLもしくは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または前記処方物の約0.2mg/mL〜約0.8mg/mLの量で存在してよい。いくつかの実施形態では、キレート剤は、前記処方物中約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で存在してよい。
【0043】
本発明者らは、キレート剤の使用は少なくとも1つの分解物の生成を阻害することとして効果的であることを見出した。例えば、少なくとも1つのキレート剤の添加はメチルナルトレキソンを含む処方物において特に有用であり、金属触媒による分解物産生および/または沈澱を防止する。適当なキレート剤には、任意の医薬上許容されるキレート剤およびその塩が含まれる。キレート剤の例としては、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、エデト酸、versene acid、およびsequestreneとも同義である)、およびEDTA誘導体、例えばナトリウムEDTAおよびカリウムEDTA、二アンモニウムEDTA、二カリウムEDTA、二ナトリウムEDTA、TEA−EDTA、四ナトリウムEDTA、三カリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、HEDTAおよび三ナトリウムHEDTA、ならびにその関連塩が挙げられる。他のキレート剤としては、ナイアシンアミドおよびその誘導体ならびにデソキシコール酸ナトリウムおよびその誘導体、エチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)およびその誘導体、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびその誘導体、N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)およびその誘導体、ニトリロ三酢酸およびその誘導体が挙げられる。さらに他のキレート剤としては、クエン酸およびその誘導体が挙げられる。クエン酸はクエン酸一水和物としても知られている。クエン酸の誘導体には無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム二水和物が含まれる。いくつかの実施形態では、キレート剤は、EDTAもしくはEDTA誘導体またはEGTAもしくはEGTA誘導体から選択される。いくつかの実施形態では、キレート剤はEDTA二ナトリウム(例えば、EDTA二ナトリウム水和物など)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、提供される処方物はカルシウム塩を含む。いくつかの実施形態では、カルシウム塩は、前記処方物中約0.01mg/mL〜約2mg/mLもしくは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または前記処方物の約0.2mg/mL〜約0.8mg/mLの量で存在してよい。いくつかの実施形態では、カルシウム塩は、前記処方物中約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で存在してよい。
【0045】
本発明者らは、カルシウムイオンの存在は少なくとも1つの分解物の生成を阻害することとして効果的であることを見出した。例えば、少なくとも1つのカルシウム塩の添加はメチルナルトレキソンを含む処方物において特に有用であり、金属触媒による分解物産生および/または沈澱を防止する。適当なカルシウム塩には、任意の医薬上許容されるカルシウム塩が含まれる。典型的なカルシウム塩としては、限定されるものではないが、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、処方物はカルシウムイオンおよびキレート剤を含み、カルシウムイオンおよびキレート剤は該処方物の単一成分として含まれる。従って、いくつかの実施形態では、カルシウム塩キレート剤は、前記処方物中約0.01mg/mL〜約2mg/mLもしくは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または前記処方物の約0.2mg/mL〜約0.8mg/mLの量で存在してよい。いくつかの実施形態では、カルシウム塩キレート剤は、前記処方物中約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で存在してよい。
【0047】
本発明者らは、カルシウム塩キレート剤の使用は少なくとも1つの分解物の生成を阻害することとして特に効果的であることを見出した。例えば、少なくとも1つのカルシウム塩キレート剤の添加はメチルナルトレキソンを含む処方物において特に有用であり、金属触媒による2,2’ビス−メチルナルトレキソンおよび7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンの産生および/または沈澱を防止する。いくつかの実施形態では、前記処方物はカルシウム塩キレート剤を含む。
【0048】
適当なカルシウム塩キレート剤には、任意の医薬上許容されるキレート剤およびそのカルシウム塩が含まれる。一般的なカルシウム塩キレート剤としては、限定されるものではないが、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびカルシウム塩EDTA誘導体、カルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’、N’−四酢酸(EGTA)およびカルシウム塩EGTA誘導体、カルシウムジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびカルシウム塩DTPA誘導体、カルシウムN,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)およびカルシウム塩NTA誘導体、ならびにクエン酸カルシウムおよびその誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、キレート剤は、カルシウムEDTAもしくはカルシウム塩EDTA誘導体またはカルシウムEGTAもしくはカルシウム塩EGTA誘導体から選択される。いくつかの実施形態では、キレート剤はカルシウムEDTA二ナトリウム(例えば、カルシウムEDTA二ナトリウム水和物など)である。
【0049】
いくつかの実施形態では、提供される処方物は少なくともメチルナルトレキソン、カルシウム塩キレート剤および等張化剤を含む。本処方物において有用な等張化剤は任意の医薬上許容される等張化剤であり得る。一般的な等張化剤としては、塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース(水和または無水)、スクロース、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択される薬剤、ならびに前述の溶液が挙げられる。ある特定の実施形態では、前記処方物はメチルナルトレキソン、等張化剤(塩化ナトリウムである)、およびカルシウム塩キレート剤(カルシウムEDTAまたはカルシウム塩EDTA誘導体である)を含む。いくつかの実施形態では、EDTAはカルシウムEDTA二ナトリウムである。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記処方物は少なくともメチルナルトレキソン、等張化剤、カルシウム塩キレート剤および担体ビヒクルを含む。ある特定の実施形態では、前記担体ビヒクルは水性担体である。水性担体ビヒクルは当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、滅菌水、注射水、塩化ナトリウム、リンゲル液、等張デキストロース注射液、デキストロース乳酸リンゲル液が含まれる。いくつかの実施形態では、前記処方物は注射水を含む。いくつかの実施形態では、処方物はメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウムEDTAまたはカルシウム塩EDTA誘導体、注射水、および最終的な溶液が等張となるようにある量の塩化ナトリウムを含む(例えば0.1%、0.25%、0.45%0.65%、0.9%塩化ナトリウム)。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムは塩化ナトリウムの終濃度が0.65%であるように等張量で存在する。
【0051】
提供される処方物に、安定剤、緩衝剤、共溶媒、希釈剤、保存剤、および/または界面活性剤などのさらなる追加成分を含めてよい。いくつかの実施形態では、処方物はかかる追加薬剤を含んでよく、かかる追加薬剤は前記処方物の約1%〜約30%もしくは約1%〜約12%または前記処方物の総重量に対して約1%〜約10%を占める。いくつかの実施形態では、追加薬剤は、前記処方物の総重量に対して、前記処方物の約1%、約2%、約5%、約8%または約10%を占めてよい、
。所望により含めてよい追加成分を以下に記載する。
【0052】
いくつかの実施形態では、提供される処方物は安定剤を含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、前記処方物中約0.01mg/mL〜約2mg/mLもしくは約0.05mg/mL〜約1mg/mL、または前記処方物中約0.1mg/mL〜約0.8mg/mLの量で存在してよい。いくつかの実施形態では、安定剤は、約0.15mg/mL、約0.2mg/mL、約0.25mg/mL、約0.3mg/mL、約0.35mg/mL、または約0.4mg/mLの量で存在してよい。
【0053】
本発明の処方物における使用に好適な安定剤としては、限定されるものではないが、グリシン、安息香酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、およびマレイン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記処方物はグリシンを含む。いくつかの実施形態では、グリシンはグリシン−HClからなる。いくつかの実施形態では、処方物はメチルナルトレキソン、カルシウムEDTAまたはカルシウム塩EDTA誘導体、注射水、終濃度が6.5mg/mL等張性塩化ナトリウムとなるようにある量の塩化ナトリウム、およびグリシン(グリシンHClなど)を含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、安定剤は、前記処方物のpHを調整し維持するのに十分な量で前記処方物に添加される。従って、いくつかの実施形態では、安定剤は、安定剤としての役割に加えて緩衝作用としても働く。いくつかの実施形態では、前記処方物のpHを維持するために、安定剤は緩衝化剤として働いてよい。ある特定の実施形態では、前記pHは約pH2.0〜約pH6.0の間である。いくつかの実施形態では、前記処方物のpHは約pH2.6〜約pH5.0の間である。いくつかの実施形態では、前記処方物のpHは約pH3.0〜約pH4.0の間である。いくつかの実施形態では、前記処方物のpHは約pH3.4〜約pH3.6の間である。いくつかの実施形態では、前記処方物のpHは約pH3.5である。
【0055】
いくつかの実施形態では、提供される処方物はメチルナルトレキソン、カルシウムEDTAまたはカルシウム塩EDTA誘導体、注射水、終濃度が6.5mg/mL等張性塩化ナトリウムとなるようにある量の塩化ナトリウム、グリシンを含み、該処方物のpHは約pH3.0〜約pH4.0の間である。いくつかの実施形態では、処方物はメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウムEDTAまたはカルシウム塩EDTA誘導体、注射水、終濃度が6.5mg/mL等張性塩化ナトリウムとなるようにある量の塩化ナトリウム、グリシンを含み、該処方物のpHは約pH3.4〜約pH3.6の間である。いくつかの実施形態では、処方物は臭化メチルナルトレキソン、カルシウムEDTAまたはカルシウム塩EDTA誘導体、注射水、終濃度が6.5mg/mL等張性塩化ナトリウムとなるようにある量の塩化ナトリウム、およびグリシンを含み、該処方物は約3.5のpHを有する。ある特定の実施形態では、前記pHはグリシンを用いて調整される。いくつかの実施形態では、グリシンはグリシンHClである。
【0056】
いくつかの実施形態では、提供される処方物は臭化メチルナルトレキソン、カルシウムEDTA、注射水、等張性塩化ナトリウム、グリシンHClを含み、該処方物は約3.4〜約3.6の間のpHを有する。いくつかの実施形態では、提供される処方物は、濃度約20mg/mLの臭化メチルナルトレキソン、濃度約0.4mg/mLのカルシウムEDTA、終濃度が6.5mg/mL等張性塩化ナトリウムとなるようにある量の塩化ナトリウム、および濃度約0.3mg/mLのグリシンHClを含み、該処方物は約3.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、処方物は、濃度約10mg/mLの臭化メチルナルトレキソン、濃度約0.2mg/mLのカルシウムEDTA、終濃度が3.25mg/mL等張性塩化ナトリウムとなるようにある量の塩化ナトリウム、および濃度約0.15mg/mLのグリシンHClを含み、該処方物は約3.5のpHを有する。
【0057】
提供される処方物が望ましいpHを有することを確実にするために追加pH調整が求められる場合があることは当業者ならば分かるであろう。従って、ある特定の実施形態では、さらなるpH調整は塩酸および/または水酸化ナトリウムを用いて行われる。
【0058】
追加成分
いくつかの実施形態では、処方物は放出特性および/または吸収特性の変更および/または最適化のために1以上の追加薬剤を含んでよい。例えば、上述のとおり、緩衝剤、共溶媒、希釈剤、保存剤、および/または界面活性剤の混合は有効化合物の溶解、吸収、安定性、および/または改善された活性を促進し得、本発明の処方物において利用してよい。いくつかの実施形態では、処方物に追加薬剤を含める場合、該処方物中の追加薬剤の量は所望により以下を含んでよい:適宜、該処方物の総重量に対して、緩衝剤約10%〜約90%、共溶媒約1%〜約50%、希釈剤約1%〜約10%、保存剤約0.1%〜約8%、および/または界面活性剤約1%〜約30%。
【0059】
好適な共溶媒(すなわち水混和性溶媒)は当技術分野で公知である。例えば、好適な共溶媒には、限定されるものではないが、エチルアルコール、プロピレングリコールが挙げられる。
【0060】
生理学上許容される希釈剤は、製品特性を改善するために所望により添加してよい。生理学上許容される希釈剤は当技術分野で公知であり、、限定されるものではないが、糖類、無機塩およびアミノ酸、ならびに前述の任意のものの溶液が含まれる。許容される希釈剤の代表例には、デキストロース、マンニトール、ラクトース、およびスクロース、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、および塩化カルシウム、アルギニン、チロシン、およびロイシンなど、ならびにその水溶液が含まれる。
【0061】
好適な保存剤は当技術分野で公知であり、例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベンのナトリウム塩、チメロサール、クロロブタノール、フェノールが含まれる。好適な保存剤としては、限定されるものではないが:クロロブタノール(0.3〜0.9%W/V)、パラベン(0.01〜5.0%W/V)、チメロサール(0.004〜0.2%W/V)、ベンジルアルコール(0.5〜5%W/V)、フェノール(0.1〜1.0%W/V)などが挙げられる。
【0062】
好適な界面活性剤もまた当技術分野で公知であり、例えばポロキサマー(poloxamer)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリソルベート(polysorbate)、セチルアルコール、グリセロール脂肪酸エステル(例えばトリアセチン、モノステアリン酸グリセロールなど)、ステアリン酸ポリオキシメチレン、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、塩化ベンザルコニウム、ポリエトキシル化ヒマシ油、およびドキュセートナトリウムなど、ならびにその組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、前記処方物は界面活性剤をさらに含んでよい。
【0063】
投与形
示したとおり、本発明は、非経口投与のための単位投与形、投与濃縮物などを含む投与形を提供する。提供される処方物の非経口投与には、単位用量の静脈注射、静脈注入、皮内注射、病巣内注射、筋肉内注射、皮下注射またはデポー投与のいずれもを含んでよい。処方医師が各投与(すなわち各投与例)において2以上の単位用量、1未満の単位用量、または正確に1の単位用量を投与することを選択してよいように、単位用量は有効化合物の単回「投与量」であってよくまたはそうでなくてもよい。例えば、単位用量は、1日1回、1日1回未満、または1日2回以上、例えば、週に1回、隔日(QOD)、1日1回、または1日2回、3回もしくは4回、より好ましくは1日1回もしくは2回投与してよい。
【0064】
ある特定の実施形態では、提供される投与形はリハビリ患者(整形外科手術、例えば関節置換術のリハビリテーションを受けている患者)に隔日または毎日投与される。他の実施形態では、提供される用量は12mgメチルナルトレキソンである。
【0065】
ある特定の実施形態では、提供される投与形は慢性疼痛患者に隔日または毎日投与される。いくつかの実施形態では、前記疼痛は悪性または非悪性である。他の実施形態では、提供される用量は12mgメチルナルトレキソンである。
【0066】
本発明は、非経口投与に有用な様々な異なる投与形を提供し、例えば、容器(例えばバイアル、アンプル、シリンジ、バッグ、ディスペンサーなど)により提供されるメチルナルトレキソン処方物を含む。
【0067】
一実施形態では、前記処方物は、メチルナルトレキソン溶液が充填されたバイアルに入れられ、このメチルナルトレキソン溶液は等張液中に少なくとも1つの有効化合物(メチルナルトレキソンである)およびカルシウム塩キレート剤を含む。一実施形態では、提供される処方物はバイアルに入れられ、このバイアルには、本明細書において上記のように、提供される処方物が充填される。いくつかの実施形態では、提供される処方物は約1mL容量〜約50mL容量のバイアルに入れられる。いくつかの実施形態では、バイアルは約1mL、約2mL、約5mL、約10mL、約25mLまたは約50mL容量である。
【0068】
一実施形態では、提供される処方物はシリンジまたは他のディスペンサーに入れられ、このシリンジまたは他のディスペンサーには、本明細書において上記のように提供される処方物が充填される。いくつかの実施形態では、シリンジまたはディスペンサーは約1mL〜約20mLの容量を有する。いくつかの実施形態では、シリンジまたはディスペンサーは、約1mL、約2mL、約2.5mL、約5mL、約7.5mL、約10mL、約15mL、または約20mLの容量を有する。いくつかの実施形態では、シリンジまたはディスペンサーは、該シリンジまたはディスペンサーの内容物の対象への投与のために皮下注射針を利用する。ある特定の実施形態では、シリンジまたはディスペンサーは、該容器の内容物の、対象への移動、あるいは別の溶液を用いた内容物の混合および/または希釈用の第2の容器への移動のために無針アダプターを利用する。提供される処方物の投与濃縮物は、必要に応じて、標準的な処置間隔で(例えば希釈直後にまたは希釈の24時間後までに)使用するある量の本発明の医薬処方物を収容する密閉容器に入れることができる。静脈投与のための溶液は、例えば、投与に望ましい濃度を得るために投与濃縮物処方物を希釈剤と組み合わせて容器(例えばガラスまたはプラスチックボトル、バイアル、アンプル)に加えることにより調製することができる。希釈剤に加える投与濃縮物の量は、約6時間〜約1週間、好ましくは約6または12時間〜約24時間の期間の間対象を治療するのに十分な量である。前記容器は、好ましくは、(i)水性溶媒の添加を可能にするのに十分な大きさの空きスペースと、さらに(ii)攪拌を可能にし、希釈される投与濃縮物処方物と添加された水性溶媒との完全混合を達成するのに必要な追加スペースも含む。容器には貫通可能なまたはスパイク可能な(spikable top)トップ、例えば、ゴムシールが装備されていてよく、その結果、濃縮内容物を移動するために皮下注射器で該シールをまたは他の種類の無針系で貫通可能なシールを貫通することにより水性溶媒を添加し得る。ある特定の実施形態では、提供される処方物はスパイク可能なバイアルにより提供される。いくつかの実施形態では、提供される処方物は10mLスパイク可能なバイアルにより提供される。
【0069】
水性溶媒の液体投与濃縮物への添加は、希釈のために投与濃縮物のアリコート部分または全量を取り出すことによって液体医薬処方物の単位用量を作るために便宜に用いられ得る。投与濃縮物は好適な水性溶媒の入った静脈内(IV)容器に加えてよい。有用な溶媒は、前述のとおり注射用標準溶液(例えば5%デキストロース、生理食塩水、乳酸リンゲル液または滅菌注射水など)である。典型的な単位用量IVバッグは、入口および出口手段を有し、標準(例えば25mL、50mL、100mLおよび150mL)容量を有する従来のガラスまたはプラスチック容器である。本発明の医薬処方物の投与濃縮物溶液は、1mL当たり約0.1〜約1.0mgメチルナルトレキソン、好ましくは1mL当たり約0.24〜約0.48mgの濃度を達成する量で単位用量IV容器に加えられる。
【0070】
他の実施形態では、提供される投与形を、使用まで光から前記処方物を保護する容器にパッケージングすることが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、かかる遮光容器の使用により1以上の分解経路を阻害し得る。例えば、バイアルは光に曝されることから内容物を保護する光容器(light container)であってよい。加えておよび/またはあるいは、バイアルを、光に曝されることから処方物を保護する任意の種類の容器にパッケージングしてよい(例えばバイアルの二次パッケージング)。同様に、任意の他の種類の容器は遮光容器であってよく、または遮光容器内にパッケージングしてよい。
【0071】
提供される処方物の調製
本発明の処方物は種々の公知の技術のいずれかに従って、例えばM. E. Aulton in “Pharmaceutics: The Science of Dosage Form Design” (1988) (Churchill Livingstone)(この関連する開示内容は出典明示により本明細書の一部とされる)によって記載されているように調製してよい。
【0072】
一実施形態では、提供される処方物は次のとおり調製される:有効化合物(例えば臭化メチルナルトレキソン)、およびカルシウム塩キレート剤(例えばカルシウムEDTA)を含む処方物の乾燥成分を、適当な溶媒(例えば等張液(例えば注射用等張性塩化ナトリウム))に溶かす。所望により、追加乾燥成分および/または湿潤成分(例えば溶媒(例えば水))、安定剤、または界面活性剤を加えてよい。所望により、他の成分を溶かす前に安定剤、または界面活性剤などの追加成分を溶媒に加えてよい。提供される処方物は低酸素条件下で調製してよい。
【0073】
別の実施形態では、提供される処方物は次のとおり調製される:有効化合物(例えば臭化メチルナルトレキソン)、およびカルシウム塩キレート剤(例えばカルシウムEDTA)を含む処方物の乾燥成分を適当な溶媒(例えば等張液(例えば注射用等張性塩化ナトリウム))に溶かす。あるいは、等張液中の有効化合物(例えば注射用等張性塩化ナトリウム中のメチルナルトレキソン)を作製するために、有効化合物(例えば臭化メチルナルトレキソン)、および等張化剤(例えば塩化ナトリウム)を含む処方物の乾燥成分を水性溶媒(例えば注射水)に溶かし、続いて、その溶液にカルシウム塩キレート剤(例えばカルシウムEDTA)をさらに加え、溶解する。次に、前記溶液のpHを調整してよい。例えば、グリシンを加えることによってそのpHを所望のレベルに調整してよい。例えば、pHを望ましいpH(例えばpH3〜4、pH3.4〜3.6、pH3.5)に調整するために、前記溶液への添加にグリシンHClの添加を利用してよい。所望により、追加乾燥成分および/または湿潤成分(例えば溶媒(例えば水)、安定剤(例えばグリシン)、または界面活性剤を加えてよい。所望により、他の成分を溶かす前に安定剤、界面活性剤などの追加成分を溶媒に加えてよい。提供される処方物は低酸素条件下で調製してよい。
【0074】
一実施形態では、調製された処方物は単独でまたは追加賦形剤とともにバイアル、アンプル、シリンジ、またはディスペンサーに組み入れられる。提供される処方物に加えられる典型的な賦形剤には、限定されるものではないが、界面活性剤、保存剤、希釈剤、緩衝剤、共溶媒などが含まれる。溶液に加えられる追加賦形剤の典型的な量は、例えば、総重量に対して、緩衝剤約10%〜約90%、共溶媒約1%〜約50%、希釈剤約1%〜約10%、保存剤約0.1%〜約8%、および界面活性剤約1%〜約30%を含んでよい。
【0075】
調製された処方物はパッケージングより前に濾過処理に付してよい。濾過処理には、例えば注射用調製物の場合には、前記処理溶液から微生物または他の汚染物を排除するためのパッケージング前の前記処理溶液の滅菌濾過および/または限外濾過を含んでよい。
【0076】
調製された処方物は、バイアル(例えば透明ガラスバイアル、琥珀色のバイアル)、アンプル、シリンジ、またはディスペンサー(例えば自動ディスペンサー)への分配処理に付してよい。分配処理には、例えばバイアルパッケージングの場合には、入れられた製品が望ましい量のメチルナルトレキソンを保持するように、メチルナルトレキソンの濃度を考慮に入れて前記溶液の好適な容量をバイアルに分配する処理が含まれる。
【0077】
分解産物の単離および同定
本発明者らは、メチルナルトレキソン溶液中に生じる分解物と、さらに分解物の生成についてのある特定の触媒作用経路を同定した。さらに、ある特定の点に関して、本発明者らは、分解物の生成を制御し、結果としてメチルナルトレキソンを含む液体製剤中の分解物のレベルが低下するための手段を同定した。かかる同定の方法および結果(得られる分解物化合物の構造を含む)は本明細書において実施例1でさらに詳細に提供される。さらなる実施例では、調製された溶液の特性評価、ならびに分解物の生成および/または生成阻害の触媒作用機構の同定をさらに提供する。
【0078】
よって、メチルナルトレキソン処方物中の1以上の分解物の存在を決定するための方法が提供される。ある特定の実施形態では、指定レベルを超えない分解物の検出方法は、メチルナルトレキソン処方物の生産のために好ましい。HPLC分析によるメチルナルトレキソン処方物中の個別分解物生成の検出と、処方物が規定レベルを超えない1以上の分解物を含むことの決定が好ましい。いくつかの実施形態では、前記方法は、HPLC分析によるメチルナルトレキソン処方物の分析と、1以上の特定分解物の前記レベルを超えないことの決定を提供する。提供される処方物中の分解物のレベルに関連して、1以上の分解物が超えない好ましい濃度レベルを次のパラグラフに記載する。
【0079】
メチルナルトレキソン分解物の生成を阻害する処方物がさらに提供され、改善された安定特性が処方物ならびにメチルナルトレキソン処方物を含む組成物および製品に付与される。いくつかの実施形態では、12または18ヶ月の保存条件後の、該調製物中において全分解産物の濃度が約2%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、12または18ヶ月の保存条件後の、該調製物中において全分解産物の濃度が約1.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、12または18ヶ月の保存条件後の、該調製物中において全分解産物の濃度が約1%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。好ましい保存条件としては、室温保存が挙げられる。
【0080】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において全分解産物の濃度が約1.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において全分解産物の濃度が約1%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において全分解産物の濃度が約0.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0081】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において2,2’ビス−メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.55)の濃度が約0.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において2,2’ビス−メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.55)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において2,2’ビス−メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.55)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0082】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解産物(RRT0.67)の濃度が約0.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解産物(RRT0.67)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解産物(RRT0.67)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0083】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において環縮小化メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.79)の濃度が約0.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において環縮小化メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.79)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において環縮小化メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.79)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0084】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてアルドール二量体メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.77)の濃度が約0.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてアルドール二量体メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.77)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてアルドール二量体メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.77)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0085】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてホフマン脱離メチルナルトレキソン分解産物(RRT2.26)の濃度が約0.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてホフマン脱離メチルナルトレキソン分解産物(RRT2.26)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてホフマン脱離メチルナルトレキソン分解産物(RRT2.26)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0086】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてO−メチルメチルナルトレキソン(RRT1.66)の濃度が約0.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてO−メチルメチルナルトレキソン(RRT1.66)の濃度が約0.25%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてO−メチルメチルナルトレキソン(RRT1.66)の濃度が約0.15%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0087】
いくつかの実施形態では、該出発処方物中のS−Nメチルナルトレキソンの量が(メチルナルトレキソンの総量に対して)0.5wt%未満であり、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてS−メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.89)の濃度が約0.5%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてS−メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.89)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。より特定の実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中においてS−メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.89)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0088】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において全分解産物の濃度が約1.25%メチルナルトレキソンを超えず、2,2’ビス−メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.55)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えず、かつ6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解産物(RRT0.67)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えず、環縮小化メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.79)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えず、アルドール二量体メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.77)が約0.2%メチルナルトレキソンを超えず、ホフマン脱離メチルナルトレキソン分解産物(RRT2.26)が約0.2%メチルナルトレキソンを超えず、O−メチルメチルナルトレキソン(RRT1.66)の濃度が約0.25%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0089】
いくつかの実施形態では、6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において全分解産物の濃度が約0.75%メチルナルトレキソンを超えず、2,2’ビス−メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.55)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えず、かつ6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解産物(RRT0.67)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えず、環縮小化メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.79)の濃度が約0.15%メチルナルトレキソンを超えず、アルドール二量体メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.77)の濃度が約0.05%メチルナルトレキソンを超えず、ホフマン脱離メチルナルトレキソン分解産物(RRT2.26)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えず、O−メチルメチルナルトレキソン(RRT1.66)の濃度が約0.15%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0090】
他の実施形態では、2,2’ビス−メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.55)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えず、かつ6か月の室温保存条件の後の、該調製物中において7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解産物(RRT0.67)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えず、環縮小化メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.79)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えず、ホフマン脱離メチルナルトレキソン分解産物(RRT2.26)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないメチルナルトレキソン処方物が提供される。
【0091】
併用製品および併用投与
いくつかの実施形態では、処方物はメチルナルトレキソンに加えて1以上の他の有効化合物を含む。かかる併用処方物では、追加化合物は、メチルナルトレキソンを含む1以上の部分に含めてよく、メチルナルトレキソンを含む1以上の部分から欠けていてよく、かつ/またはメチルナルトレキソンを含まない1以上の部分に含めてもよい。具体的には、本発明は、少なくともメチルナルトレキソンおよび少なくとも1つの他の有効化合物を送達する処方物を包含する。加えて、本発明は、メチルナルトレキソンの少なくとも2つの独立した部分を送達し、かつ少なくとも1つの他の有効化合物をさらに送達する処方物を包含する。
【0092】
いくつかの実施形態では、処方物はオピオイドとメチルナルトレキソン(例えばμオピオイド受容体拮抗薬)の両方を含む。オピオイドとオピオイド拮抗薬の両方を含むかかる併用製品は、疼痛の軽減とオピオイド関連副作用(例えば胃腸影響(例えば胃内容排出の遅延、GI管の運動性の変化)など)の最少化の両立を可能にするであろう。
【0093】
鎮痛の処置に有用なオピオイドは当技術分野で公知である。例えば、オピオイド化合物としては、限定されるものではないが、アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン(burprenorphine)、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、酢酸レボメタジル、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、ニコモルフィン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、およびトラマドールが挙げられる。いくつかの実施形態では、前記オピオイドは、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ニコモルフィン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニルおよび/またはトラマドールから選択される少なくとも1つのオピオイドである。ある特定の実施形態では、前記オピオイドは、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、フェンタニル、トラマドール、およびその混合物から選択される。特定の実施形態では、前記オピオイドはロペラミドである。別の特定の実施形態では、前記オピオイドはヒドロモルホンである。他の実施形態では、前記オピオイドはブトルファノールなどの混合作動薬である。いくつかの実施形態では、前記対象は2以上のオピオイド、例えば、モルヒネおよびヘロインまたはメタドンおよびヘロインを投与される。
【0094】
本発明の併用組成物中に存在する追加有効化合物の量は、一般に、唯一の治療薬として該有効化合物を含む組成物により通常投与される量以下であろう。ある特定の実施形態では、追加有効化合物の量は、唯一の治療薬として該化合物を含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%であろう。
【0095】
ある特定の実施形態では、処方物は、便秘および腸機能障害の改善を助けるために胃腸機能障害の処置のための追加有効化合物および/または従来の療法と関連しておよび/または組み合わせて使用してもよい。例えば、従来の療法としては、限定されるものではないが、腸管の機能的刺激、便軟化薬、緩下薬(例えばジフェニルメタン系緩下薬、瀉下性緩下薬、浸透圧性緩下薬、塩類緩下薬など)、膨張性薬剤および緩下薬、滑沢剤、静脈内水分補給、ならびに経鼻胃管減圧が挙げられる。
【0096】
キットおよび処方物の使用
使用
上述のとおり、本発明は、オピオイド鎮痛療法の望ましくない副作用(例えば胃腸影響(例えば胃内容排出の遅延、GI管の運動性の変化)など)に拮抗させるのに有用な処方物を提供する。さらに、本発明の処方物は、μオピオイド受容体を結合することにより、または任意の処置(μオピオイド受容体系の一時的抑制が望ましい)により改善される病状(例えば腸閉塞など)を有する対象を治療するために使用してよい。ある特定の実施形態では、処方物の使用方法はヒト対象に関するものである。
【0097】
従って、提供される処方物の投与は、オピオイド投与の副作用(例えば、胃腸機能障害(例えば腸運動の抑制、便秘、GI括約筋収縮、悪心、嘔吐(吐き気)、胆道痙攣、オピオイド腸機能障害、疝痛)不快、そう痒(pruritis)、尿貯留、呼吸抑制、乳頭収縮、心血管系への影響、胸壁硬直および咳抑制、ストレス反応抑制、ならびに麻薬性鎮痛の使用に伴う免疫抑制などまたはその組合せなど)の治療、予防、改善、遅延または軽減に有利であり得る。このように、提供される処方物の使用は、オピオイドの投与を受けている対象の生活の質の観点からだけでなく、慢性便秘から生じる合併症(痔核、食欲抑制、粘膜破壊、敗血症、結腸癌リスク、および心筋梗塞など)を軽減するのにも有益であり得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、提供される処方物は短期オピオイド投与を受けている対象への投与に有用である。いくつかの実施形態では、提供される処方物は手術後胃腸機能障害に罹患している患者への投与に有用である。
【0099】
他の実施形態では、提供される処方物は、長期オピオイド投与を受けている対象(例えばオピオイド療法を受けている末期症状の患者(エイズ患者、癌患者、心血管疾患患者など);疼痛管理のために長期オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためにオピオイド療法を受けている対象)への投与にも有用である。いくつかの実施形態では、前記対象は慢性疼痛管理のためにオピオイドを使用している対象である。いくつかの実施形態では、前記対象は末期症状の患者である。他の実施形態では、前記対象はオピオイド離脱維持療法を受けている人である。
【0100】
本明細書に記載の処方物のさらなる用途は、オピオイド投与の効果(例えば内皮細胞(例えば血管内皮細胞)の異常な移動または増殖、脈管形成の増大、および日和見感染病原体(例えば緑膿菌)による致死因子産生の増加を含む)を治療、軽減、抑制、または予防することであり得る。提供される処方物のさらなる有利な用途には、オピオイド誘発性免疫抑制の処置、脈管形成の阻害、血管増殖の阻害、疼痛の処置、炎症状態(炎症性腸症候群など)の処置、感染症および筋骨格系疾患(骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、筋疾患など)の処置、ならびに自己免疫疾患の処置が含まれる。
【0101】
ある特定の実施形態では、本発明の処方物は、胃腸機能障害(限定されるものではないが、過敏性腸症候群、オピオイド誘発性腸機能障害、大腸炎、手術後麻痺性腸閉塞、または産後腸閉塞、悪心および/または嘔吐、胃の運動および胃内容排出の低下、胃、ならびに小腸および/または大腸の推進抑制、非推進性部分の収縮増強、オディ括約筋収縮、肛門括約筋の緊張の増加、直腸拡張を伴う反射性弛緩障害、胃液、胆汁、膵液または腸液分泌の減少、腸内容物からの水分吸収の増加、胃食道逆流、胃不全麻痺、筋痙攣、鼓脹、腹部または上腹部痛および不快、便秘、特発性便秘、腹部外科術(例えば結腸切除術(例えば右半結腸切除術、左半結腸切除術、横行半結腸切除術、結腸切除分解、低位前方切除術)またはヘルニア修復)後の手術後胃腸機能障害、ならびに経口投与された薬物または栄養物質の吸収遅延を含む)を予防、抑制、軽減、遅延、減少または治療するための方法において使用してよい。
【0102】
提供される処方物は、脈管形成を伴う癌、免疫抑制、鎌状赤血球貧血、血官創傷、および網膜症を含む状態の処置、炎症関連障害(例えば過敏性腸症候群)、免疫抑制、慢性炎症の処置においても有用である。
【0103】
さらなる実施形態では、処方物の使用についての獣医応用(例えば家畜、例えばウマ、イヌ、ネコなどの処置)が提供される。よって、ヒト対象について上述したものと類似した、獣医応用における提供される処方物の用途が考えられる。例えば、ウマ胃腸運動の抑制(疝痛および便秘など)はウマにとって致命的であり得る。疝痛を有するウマが結果として苦しむ疼痛は死を誘導するショックをもたらす可能性があり、一方、長期間の便秘の場合もウマの死をもたらすかもしれない。末梢オピオイド拮抗薬でのウマの処置は、例えば2005年1月20日公開の米国特許公報第20050124657号に記載されている。
【0104】
本発明の処方物は併用療法において使用することができる、すなわち、メチルナルトレキソンとその組成物は、1以上の他の望ましい治療用物質または医学的手技と同時に、その前にまたはその後に投与することができることも理解されるであろう。併用レジメンにおいて使用する特定の併用療法(治療用物質または手技)は、所望の治療用物質および/または手技の適合性と達成すべき所望の治療効果を考慮に入れるであろう。使用される療法は同じ障害に望ましい効果をもたらし得(例えば、処方物は同じ障害を治療するために使用される別の化合物と同時に投与してよい)、または使用される療法は異なる効果(例えば任意の悪影響の制御)をもたらし得ることもまた理解されるであろう。本明細書において、特定の疾患、または状態を治療または予防するために通常投与される追加治療化合物は、「該疾患、または状態を治療するのに適当である」と知られている。
【0105】
他の実施形態では、提供される処方物および投与形は、薬剤(限定されるものではないが、オピオイド投与の副作用(例えば、胃腸への副作用(例えば腸運動の抑制、GI括約筋収縮、便秘、悪心、嘔吐)不快、そう痒(pruritis)など)またはその組合せなど)の処置において有用な薬剤を含む)の調製において有用である。提供される処方物は、短期オピオイド療法を受けている患者(例えば短期オピオイド投与を受けている手術後胃腸機能障害に罹患している患者)またはオピオイドを長期的に使用している対象(例えばオピオイド療法を受けている末期症状の患者(エイズ患者、癌患者、心血管疾患患者など);疼痛管理のために長期オピオイド療法を受けている対象;またはオピオイド離脱の維持のためにオピオイド療法を受けている対象)の処置において有用な薬剤の調製に有用である。さらに、疼痛の処置、炎症状態(炎症性腸症候群など)の処置、感染症の処置、筋骨格系疾患(骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、筋疾患など)の処置、自己免疫疾患および免疫抑制の処置、腹部外科術(例えば結腸切除術(例えば右半結腸切除術、左半結腸切除術、横行半結腸切除術、結腸切除分解、低位前方切除術)、特発性便秘、および腸閉塞)後の手術後胃腸機能障害の治療、ならびに障害(脈管形成を伴う癌、慢性炎症および/または慢性疼痛、鎌状赤血球貧血、血官創傷、ならびに網膜症など)の処置において有用な薬剤の調製
【0106】
医薬キットおよびパッケージング
本発明には、医薬パックおよび/またはキットもさらに包含される。提供される医薬パックおよび/またはキットは、処方物および容器(例えばバイアル、アンプル、ボトル、シリンジ、および/またはディスペンサーパッケージ、または他の好適な容器)を含んでよい。いくつかの実施形態では、提供されるキットは、所望により、IV投与による対象への投与の調製のために復元物の希釈に好適な水性担体を含む第2の容器をさらに含んでよい。いくつかの実施形態では、提供される処方物容器および溶媒容器の内容物は、単位投与形を作るために合わせられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明の処方物は、患者が疼痛管理の必要に応じてオピオイド鎮痛を施すことができる自己調節鎮痛(PCA)装置と併用して有利であり得る。かかる場合には、オピオイド投与の副作用を予防するために、提供される処方物の同時投与が有利であり得る。よって、本発明のキットは、PCA装置とともに用いるカートリッジ内に含まれるメチルナルトレキソンの投与のための処方物を含んでよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明の処方物は、冷凍保存に好適な希釈容器と併用して有利であり得、この際、処方物は好適な希釈剤で希釈され、冷凍に好適な容器で提供される。いくつかの実施形態では、かかる冷凍容器は対象へのメチルナルトレキソンの静脈投与の前に解凍してよい。よって、本発明のキットは、冷凍保存に好適な、対象への投与の前に解凍する容器に入ったメチルナルトレキソンの投与のための処方物を含んでよい。いくつかの実施形態では、かかる容器は冷凍点滴静注バッグである。
【0109】
所望により、単一容器は、凍結乾燥処方物および/または希釈に適当な水性担体を入れるための1以上のコンパートメントを含んでよい。いくつかの実施形態では、単一容器は変更に適当であり得、その結果として該容器は、コンパートメントおよび/または個別コンパートメントの成分を合わせることができるように物理的変更を受け得る。例えば、ホイルまたはプラスチックバッグは、多孔シールによって隔てられた2以上のコンパートメントを含んでよく、該シールは、一度該シールを破るシグナルが発生したら2つの個別コンパートメントの内容物を合わせることができるように破られ得る。よって、医薬パックまたはキットは、凍結乾燥処方物と再構成に適当な溶媒および/または復元物の希釈に適当な水性担体を含むかかるマルチコンパートメント容器を含んでよい。かかるキットでは、所望により、使用説明書も加えて提供される。
【0110】
いくつかの実施形態では、医薬キットは希釈パッケージまたは容器に入った処方物を含み、この場合には無針交換機構により処方物と静脈投与のための調製用等張液とを合わせることができる。例えば、ある特定の限定されない例では、本発明の処方物はMINIBAG(登録商標)プラス希釈容器システム(Baxter)またはADD VANTAGE(登録商標)希釈容器(Hospira)システムとともに利用し得る。
【0111】
本発明のかかるキットでは、所望により、使用説明書も加えて提供される。かかる使用説明書では、一般には、例えば、用量および投与についての説明を与えてよい。他の実施形態では、使用説明書により、投与のための特定の容器および/またはシステムについての専門的な説明に関する追加詳細をさらに与えてよい。さらに、使用説明書により、追加療法と関連しておよび/または組み合わせて用いる専門的な説明を与えてよい。1つの限定されない例では、本発明の処方物は、所望により自己調節鎮痛(PCA)装置の使用を含んでよいオピオイド鎮痛投与と併用してよい。よって、提供される処方物についての使用説明書は、PCA投与装置との併用についての説明を含んでよい。
【0112】
本明細書において記載した本発明をより十分に理解するために、次の実施例を示す。これらの実施例は単に例示するためのものであり、本発明を限定するものと解釈してはならないことは理解されるべきである。
【実施例】
【0113】
第I部:提供される処方物の安定性
実施例1
メチルナルトレキソン処方物の分解物の同定および特性決定
これまでに、20mg/mL等張性生理食塩水溶液中でのHPLC分析から少なくとも3つの分解産物が証明されている(生成物をHPLCによって分析した場合、約0.72、0.89および1.48におけるRRTピークとして同定)。例えば、2004年12月30日公開の米国特許出願公開番号20040266806A1参照。本発明者らは、20mg/mL生理食塩水メチルナルトレキソン溶液を分解物の生成および分解物の同定、ならびに種々の分解産物の形成の阻害剤の同定に関して検討した。本発明者らは、ある特定のメチルナルトレキソン溶液中に蓄積する分解物を同定および特性決定した。これらの分解実験およびこれらの例で調製された処方物では、メチルナルトレキソンの総重量に対して0.15重量パーセント未満のS−N−メチルナルトレキソンを含むR−N−メチルナルトレキソンを用いた。
【0114】
HPLC分析では、2つの異なる方法を用いて、本明細書に示されるデータを得た。これらの方法を以下にまとめる。
方法A:
カラム:Prodigy ODS−3 15cm×2.0mm、3μm粒子(Phenomenex)
流速:0.25mL/分
検出:UV、280nm
移動相:強度:均一濃度:75:25(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
移動相:純度:次のような勾配:
溶媒A:95:5(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
溶媒B:35:65(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
サンプル溶媒:0.05M第二リン酸ナトリウムpH6.8
勾配プログラム:
【表1】

カラム温度:50℃
方法B:純度
カラム:Prodigy ODS−3 15cm×4.6mm、3μm粒子(Phenomenex)
流速:1.5mL/分
検出:UV、280nm
移動相:次のような勾配:
溶媒A:95:5(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
溶媒B:25:75(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
サンプル溶媒:0.05M第二リン酸ナトリウムpH6.8
勾配プログラム:
【表2】


方法B:(強度)
カラム:Prodigy ODS−3 15cm×4.6mm、3μm粒子(Phenomenex)
流速:1.0mL/分
検出:UV、280nm
移動相:次のような勾配:
溶媒A:95:5(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
溶媒B:25:75(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
サンプル溶媒:0.05M第二リン酸ナトリウムpH6.8
勾配プログラム:
【表3】

【0115】
以下の化合物を示された保存条件下のサンプルのHPLC分析(方法A)を用いた安定性試験で確認したところ、以下の関連の算出相対保持時間を有していた。
臭化メチルナルトレキソン RRT1.00
【化1】

ナルトレキソン塩基 RRT1.17
【化2】

S−メチルナルトレキソン RRT0.86または0.89
【化3】

キノン RRT0.89(表11C−2、11C−3、12A−2、12B−2、12C−2、12D−2)
【化4】

8−ケトメチルナルトレキソンブロミド RRT0.49
【化5】

アルドール二量体 RRT1.77
【化6】

O−メチルメチルナルトレキソン RRT1.66
(3−メトキシナルトレキソンメソブロミド)
【化7】

2,2,ビス−メチルナルトレキソン RRT1.55
【化8】

ナルトレキソン塩基、S−メチルナルトレキソンおよびO−メチルメチルナルトレキソンはそれぞれ最初の製造サンプルに見られる。メチルナルトレキソン処方物中に生成および同定される付加的不純物/分解物としては、8−ケト臭化メチルナルトレキソン(RRT0.49)、アルドール二量体(RRT1.77)、O−メチルメチルナルトレキソン(RRT1.66)および2,2ビス−メチルナルトレキソン(RRT1.55)、ならびに相対保持時間0.67、0.79および2.26に生じる付加的分解物が含まれる。
【0116】
3つの付加的分解物のそれぞれをNMR分析によって同定した後、カラム溶出液から単離し、本明細書に記載のようにさらに特性決定した。0.67分解物は7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンとして同定され、0.79分解物は環縮小型((3R,4R,4aS,6aR,11bS)−6−カルボキシ−3−(シクロプロピルメチル)−4a,6,8−トリヒドロキシ−3−メチル−1,2,3,4,4a,5,6,6a−オクタヒドロ−4,11−メタノ[1]ベンゾフロ[3’,2’:2,3]シクロペンタ[1,2−c]ピリジン−3−イウム)として同定され、2.26分解物はホフマン脱離産物として同定された(下記の化合物名、相対保持時間および関連構造参照;また図4も参照)。
7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン RRT0.67
【化9】

環縮小化産物 RRT0.79
(3R,4R,4aS,6aR,11bS)−6−カルボキシ−3−(シクロプロピルメチル)−4a,6,8−トリヒドロキシ−3−メチル−1,2,3,4,4a,5,6,6a−オクタヒドロ−4,11−メタノ[1]ベンゾフロ[3’,2’:2,3]シクロペンタ[1,2−c]ピリジン−3−イウム)
【化10】

ホフマン脱離産物 RRT2.26
【化11】

【0117】
下記の実施例に示されている表における安定性試験の結果は、HPLC分析を用いてサンプル中で同定された分解物のそれぞれの結果としてのレベルを示す。下記の実施例で用いた安定性試験の手順は、25℃/60%相対湿度、40℃/65%相対湿度および/または70℃の条件下での、ICHガイドラインに従う標準的な医薬安定性を含む。図4は、主として得られた3つの分解物、ならびに同定され、下記の実施例にさらに記載される生成の触媒作用に関して提案される機構および/または精製の阻害の方法を示している。
【0118】
当業者ならば、HPLC方法またはサンプルの調製の微細な改変がRRTのシフトをもたらし得ることが分かるであろう。従って、本明細書に報告されているRRT値は実際の条件によってシフトし得ると考えられる。
【0119】
実施例2
金属およびカルシウムにより媒介されるメチルナルトレキソン処方物の分解の阻害
金属触媒による2,2’ビスメチルナルトレキソンの生成の阻害
本発明者らは、Fe3+が溶液中の臭化メチルナルトレキソンの分解を促進し、2,2’ビスメチルナルトレキソン分解物の生成をもたらすことを見出した。本発明者らはHPLC分析(方法B)により、2,2’ビスメチルナルトレキソン分解物がRRT約1.55のピークを生じることを見出した。Fe3+は、数種の供給源からこの液体処方物に入り込み得るイオンである。例えば、Fe3+はステンレス鋼処理装置、シリンジの針、ストッパーおよびアンバーバイアルから漏れ出すことがある。金属キレート剤としてのEDTAは溶液中の利用可能なFe3+を隔離し、それにより望ましくない金属触媒による反応の触媒作用を回避する。メチルナルトレキソン溶液は、鉄ならびに様々な濃度のナトリウムEDTAおよびカルシウムEDTAの存在下、0.9%NaCl中に調製した。実験を通じて用いる場合、ナトリウムEDTAはEDTA二ナトリウム二水和物であり、ナトリウムEDTA、EDTA二ナトリウム二水和物およびNaEDTAという用語は互換的に用いられる。実験を通じて用いる場合、カルシウムEDTAはカルシウムEDTA二ナトリウムであり、カルシウムEDTA、カルシウムEDTA二ナトリウムおよびCaEDTAという用語は互換的に用いられる。2,2’ビスメチルナルトレキソンの生成は室温ならびに40℃で評価した。ナトリウムまたはカルシウムEDTA溶液のいずれも添加も、2,2’ビスメチルナルトレキソン分解物の生成の阻害に効果的であった。図1Aおよび図1B参照。従って、キレート作用は室温で溶液中での臭化メチルナルトレキソンの安定性を助長する。
【0120】
金属触媒による7−ジヒドロキシ−メチルナルトレキソン生成の阻害
本発明者らは、EDTAがメチルナルトレキソン溶液中での金属触媒による7−ジヒドロキシ−メチルナルトレキソン分解物の生成を阻害することを見出した。本発明者らは、HPLC分析(方法B)により、0.67ピーク分解物が7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンの存在であることを見出した。メチルナルトレキソン溶液は、鉄および様々な濃度のEDTAの存在下、0.9%NaCl中に調製した。7−ジヒドロキシメチルナルトレキソンの生成を評価した。いずれのEDTA溶液の添加も7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解物の生成の阻害に効果的であった。表1参照。
【表4】

【0121】
本発明者らは、Ca2+キレート剤が、Na2+キレート剤と比べて、7−ジヒドロキシ−メチルナルトレキソン分解物の生成のさらなる阻害をもたらすことを見出した。メチルナルトレキソン溶液は、鉄ならびに様々な濃度のナトリウムEDTAおよびカルシウムEDTAの存在下、0.9%NaCl中に調製した。7−ジヒドロキシ−メチルナルトレキソンの生成を室温ならびに40℃で評価した。カルシウムEDTA溶液の添加は、両温度とも、7−ジヒドロキシ−メチルナルトレキソン分解物の生成の阻害に極めて効果的であった。図2Aおよび図2B参照。カルシウムの使用は、室温で溶液中での臭化メチルナルトレキソンの安定性を助長する。さらに、室温または40℃/75%相対湿度での溶液の長期保存も、カルシウムEDTAが存在した場合の安定化および7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解物生成の阻害を示した。室温で1か月の後、結果として生じる7−ジヒドロキシ−メチルナルトレキソンの生成は、カルシウムEDTAの存在下では0.34%から0.11%に減少した。さらに、40℃/75%RHでは、分解物は生理食塩水溶液単独での0.64%からカルシウムEDTAを含有するサンプル中の0.14%まで減少した。図2Cおよび図2D参照。
【0122】
改善された室温でのメチルナルトレキソン処方物の調製
本発明者らの結果は、有効化合物の生理食塩水溶液およびカルシウム塩キレート剤を含むメチルナルトレキソン処方物が改善された室温安定特性を有する処方物をもたらすことを示した。このような改善された処方物の調製は、下記の例示的成分の使用を含む。
有効成分 活性臭化メチルナルトレキソン(5〜40mg)
キレート剤 カルシウムEDTA(0.05〜1.5mg)
等張性送達ビヒクル 0.9%生理食塩水(1〜1.25mL)
【0123】
全0.6mLまたは全1.25mLでは、20または30mgの臭化メチルナルトレキソンを0.9%塩化ナトリウムに溶解させ、また0.24mgまたは0.5mgのカルシウムEDTAを溶解させた。得られた溶液を調製し、周囲温度で濾過除菌し、得られた処方物を透明なガラスバイアル、アンプル、シリンジまたはオートディスペンサーに充填した。

【表5】

【0124】
実施例3
メチルナルトレキソン処方物のpH依存性分解の阻害
pHにより影響を受けるメチルナルトレキソン分解物形成の阻害
本発明者らは、Ca2+およびEDTAの存在下で、溶液中の臭化メチルナルトレキソンの分解がいくつかの安定条件下で起こり、その結果、第三のメチルナルトレキソン分解物が生成されることを見出した。本発明者らは、HPLC分析(方法B)により、この分解物がRRT約0.79のピークを生じることを見出した。0.79分解物の同定および生成は、本願と同時に出願された2006年8月4日出願の米国仮特許出願60/835,687に記載されており、それらの内容は出典明示によりそのまま本明細書の一部とされる。
【0125】
0.79メチルナルトレキソン分解物の生成は、上記実施例2に記載されているCaEDTA処方物における室温では、生理食塩水溶液中の冷凍メチルナルトレキソンに比べて少なかった。CaEDTAを含有する、実施例2に記載されているメチルナルトレキソン溶液を、生理食塩水中の対照冷凍メチルナルトレキソン溶液と比較し、処方物を0.79分解物生成に関して評価した(室温CaEDTA0.03%と冷凍対照生理食塩水0.06%)。図3Aおよび図3B参照。カルシウムEDTAの使用は、本発明者らの加速化安定性条件下で0.79分解物の生成を促進するものと思われるが、40℃/75%RHで見られたように、0.79分解物は対照の0.19%からCaEDTAの存在下での0.38%に増大した。さらに、ピークRRT0.79分解物は、室温での0.03%から40℃/75%RH 1か月での4%に増大した。従って、上記実施例2に記載された処方物は分解物RRT0.67およびRRT1.55を抑えるが、RRT0.79に見られる分解物は40℃/75%RHの加速化安定性条件下でまだ留まっていた。
【0126】
本発明者らは、pHならびにグリシンの存在を低下させると、0.79分解物が安定化することを見出した。表4は、pH制御無しで70℃における処方物の安定性をまとめたものである。この処方物のpHは5.6である。このデータから、Ca EDTAを含有する処方物はRRT0.67および1.55の生成を制限するが、RRT0.79は減少させないことが確認される。わずか数日後に、RRT0.79は1.0%を超えるまでに増える。HPLCで得られた各ピークを表に示す。これらのピークによって同定される生成物に関して、RRT0.89はS−MNTXを表し;RRT1.17はナルトレキソン塩基を表し;RRT1.55は2,2ビスメチルナルトレキソンを表し;RRT1.66はO−メチル−メチルナルトレキソンを表し;RRT1.77はアルドール二量体の生成を表し;RRT2.26はホフマン脱離分解物の生成を表す。BRL=記録可能な限界を下回る。
【0127】
本発明者らは、0.79分解物がpH依存性かどうか、また、溶液の至適pH範囲を調べた。表5は、調製溶液の安定性をまとめたものである。さらに、表6は、40℃/75%相対湿度および70℃にて、グリシンでpH調整を行った場合と行っていない場合の調製溶液の安定性をまとめたものである。本発明者らは、さらなるグリシンHClを溶液に加えると、RRT0.79の分解物の生成量が著しく減り、RRT0.79に関する処方物の安定性がグリシンの存在によって安定化されることが確認されることを見出した。表5および6参照。

【表6】


【表7】


【表8】


【表9】

【0128】
pH調整され、改善された室温処方物の調製
下表7および8で挙げたように、目的pH3.5、pH範囲3.4〜3.6として、プロセス中にpH調整工程を含んだ、グリシンHCl含有処方物を開発する。特定の理論に拘束されるものではないが、これはpH3.0が安定であるが、注射部位の刺激および痛みの量が望ましくないという観点に基づくものである。さらに、pH4.0では、RRT0.79分解物が生じ始める。グリシンHClは皮下処方物においてpH調整のために汎用され、クエン酸バッファーの使用する結果として注射部位に痛みを生じる傾向が小さい。メチルナルトレキソンを含有する処方物のpHを調整するためにグリシンHClを使用する場合には、分解の制御も自明である。CaEDTAと0.3mg/mLグリシンHClの双方を含むメチルナルトレキソン含有溶液(pHは3.4〜3.6に調整)は、RRT1.55の生成を阻害し、分解物RRT0.67およびRRT0.79の生成を著しく減らす。メチルナルトレキソン、CaEDTA、0.65%NaCl、0.3mg/mLグリシンHClをからなるpH3.5の室温液体処方物は、皮下投与処方物または静脈投与処方物いずれとしても開発可能である。
【0129】
このような改善された処方物の調製は、次の成分例の使用を含む。
有効成分 臭化メチルナルトレキソン(5〜40mg)
キレート剤 カルシウムEDTA(0.05〜1.5)
等張性送達ビヒクル 0.65%生理食塩水(0.5〜1.75mL)
安定剤 グリシンHCl 0.3mg/mL
pH3.4〜3.6
適量を加えて最終容量とする
【表10】

【0130】
例えば、12mg/バイアルの調製では、12mgの臭化メチルナルトレキソンおよび3.9mgの塩化ナトリウムを注射水に溶解させた後、0.24mgのカルシウムEDTAを加え、この最終溶液を溶解させ、最終全容量0.6mLとした。pHをグリシンHClで3.4〜3.6の間、最適にはpH3.5に調整した。得られた溶液を調製し、0.45および0.22ミクロンのPVDFフィルターで濾過した。得られた溶液を低酸素条件下で透明なガラスバイアルに充填した。バイアル、アンプル、シリンジまたはオートディスペンサーを含む任意の好適な容器が使用可能である。得られた調製物を冷凍せずに室温またはそれ以下で保存する。得られた処方物は、皮下投与または静脈投与適用のいずれかの非経口投与に使用可能である。表7参照。
【0131】
同様に、最終全容量0.8(または他の好ましい最終容量)として、同じ濃度が得られるように成分のレベルを調整することができる。表7参照。
【表11】

【0132】
12mg/バイアルのもう1つの処方例では、12mgの臭化メチルナルトレキソンおよび3.9mgの塩化ナトリウムを注射水に溶解させた後、0.24mgのカルシウムEDTAを加え、溶解させ、最終溶液を最終全容量1.2mLとした。pHをグリシンHClで3.4〜3.6の間、最適にはpH3.5に調整した。得られた溶液を調製し、0.45および0.22ミクロンのPVDFフィルターで濾過した。得られた溶液を低酸素条件下で透明なガラスバイアルに充填した。バイアル、アンプル、シリンジまたはオートディスペンサーを含む任意の好適な容器が使用可能である。得られた調製物を冷凍せずに室温またはそれ以下で保存する。得られた処方物は、皮下投与または静脈投与適用のいずれかの非経口投与に使用可能である。表8参照。
【0133】
同様に、最終全容量1.6(または他の好ましい最終容量)として、同じ濃度が得られるように成分のレベルを調整することができる。表8参照。
【0134】
実施例4
バッファー適合性の比較および評価
リン酸バッファー溶液の安定性の評価
本発明者らはまた、適合性を判定するために種々のバッファーを評価し、種々の条件がメチルナルトレキソン溶液にさらなる安定性を与えるかどうかを評価した。表9および表10は、リン酸溶液(表9)およびグリシン溶液(表10)中に調製したメチルナルトレキソン溶液における経時的全分解物生成の結果を示す(HPLC方法A)。本発明者らは、pH7で、グリシンがサンプルにリン酸よりも良好な安定特性を与えることを見出した。
【表12】


【表13】

【0135】
ナトリウムEDTAおよびクエン酸バッファーを含むメチルナルトレキソン処方物(forumulation)の調製
クエン酸バッファー中、メチルナルトレキソン、ナトリウムEDTAおよび塩化ナトリウムからなるメチルナルトレキソン処方物はすでに記載されている(2004年12月30日公開の米国特許出願公開US2004/0266806A1)。本発明者らは、本発明者らの今回の処方物との安定性比較試験のために同じ成分を含む溶液を調製した。
【0136】
A−0.7mg/mL NaEDTA/クエン酸バッファーを用いてpH3.5に調整およびB−0.4mg/mL CaEDTA/0.65%NaCl/グリシンバッファーを用いてpH3.5に調整のいずれかに、20mg/mLの臭化メチルナルトレキソンを含有する処方物を調製した。各処方物を分解物生成の存在に関して経時的に評価し、結果を表11に示す。
【0137】
5mg/mL臭化メチルナルトレキソン(12mg/バイアルまたは24mg/バイアル)を含有する処方物を下記の実施例12に記載のように調製した。各処方物を分解物生成の存在に関して経時的に評価し、結果を表12に示す。
【0138】
加速化安定性条件下で、ナトリウムEDTAを含有する溶液は、高レベルのナトリウムEDTAであっても、0.67および0.79分解物は増加し始めなかった。メチルナルトレキソン溶液の製造に関して本明細書で提供される処方物および方法は、安定性を保持し、長期間、許容される分解物レベルを維持する組成物を提供すると考えられる。
【表14】


【表15】


【表16】


【表17】


【表18】


【表19】


【表20】


【表21】


【表22】


【表23】



【表24】


【表25】


【表26】

【0139】
実施例5
露光の作用を調べるため、5.0mg/mL IV(12mg/バイアルまたは24mg/バイアル)を含有する処方物の安定性を試験した。これらの処方物を分解物生成の存在に関して経時的に評価した(HPLC方法A)。光安定性試験の結果を表13Aおよび13Bに示す。
【表27】


【表28】

【0140】
実施例6
ストッパーの適合性の評価
本発明者らは、バイアルのキャップに用いる種々の利用可能なストッパーを、メチルナルトレキソン溶液との適合性に関して評価し、溶液中での分解物の生成に対して効果があるかどうかを調べた。
【0141】
実施例4に記載のように調製した同じ調製物を、13mm WPS S2−F451 4432/50 Gray B2−40 Wester RSストッパー(West Pharmaceutical Services)または13mm S2−F451 RS D 777−1 RB2 40ストッパー(Daikyo Seiko, Ltd)のいずれかを備えたバイアル中、様々な条件下で並行して保存した。各ストッパーはフルオロテック(登録商標)フルオロカーボンフィルムを含み、Wester 4432/50ストッパーはクロロブチルゴムであり、RB2−40 RS D 777−1ストッパーはブロモブチルゴムである。分解物の蓄積の存在を各構成に関して評価した(HPLC方法A)。表14はこれらの試験の結果を示す。加速化保存条件下で、ブロモブチルゴムを含むストッパーは、匹敵するクロロブチルストッパーよりも高率でアルドール二量体生成を蓄積するものと思われる。
【表29】

【0142】
実施例7
冷凍点滴静注バッグの安定性
次のメチルナルトレキソン5mg/ml、0.8mg NaCL、0.1mg CaEDTA、0.1mg塩酸グリシンおよび注射水の処方物を0.9%生理食塩水の100ml IVバッグに注入し、−200℃で冷凍した。この試験は12mg/100mlと24mg/100mlの2つのメチルナルトレキソン濃度で行った。0.9%生理食塩水を含むB/BraunバッグNDC 0264−1800−32を用いた。
【0143】
2つの処方物バッチを調製し、安定性の判定を行った。最初のバッチは、上記のメチルナルトレキソンIV処方物:0.9%生理食塩水IVバッグに注入した5mg/mlメチルナルトレキソン、0.8mg NaCL、0.1mg CaEDTA、0.1mg塩酸グリシンであった。もう1つのバッチは、0.9%生理食塩水IVバッグに注入した5mg/mlメチルナルトレキソンのみであった。これらのバッグを冷凍し、−20℃で維持した。安定性データは、2ヶ月間、両バッチとも分解物を生じることなく安定であったことを示した。冷凍バッグ保存に対するさらなる利益は、光からの保護の必要がないことである。
【0144】
2か月安定性試験(HPLC方法A)は分解が起こらないことを示し、これにより、この処方物が冷凍条件下で安定であること、使用および保存寿命の期間は6か月より長い可能性があること、ならびに病院スタッフがIVバッグに薬剤を注入する必要がないことを示す。これらのバッグは解凍をするだけですぐに使用可能である。表15はこれらの試験の結果をまとめたものである。
【表30】

【0145】
実施例8
本明細書に記載の皮下処方物に対するタングステン酸ナトリウムの効果(HPLC方法A)を下表16にまとめる。
【表31】

【0146】
第II部:皮下処方物
実施例9
室温メチルナルトレキソン処方物20mg/mL皮下注射溶液、CaEDTA処方物は、注射水中、20mg/mL臭化メチルナルトレキソン、0.4mg/mLエデト酸カルシウム二ナトリウム(CaEDTA)、0.3mg/mL塩酸グリシンおよび0.65%塩化ナトリウムからなる。室温保存条件で安定な生成物を単回使用バイアルに0.6mL量または皮下投与されるバイアル当たり12mgのメチルナルトレキソンとして無菌的に充填される。
【0147】
塩化ナトリウム濃度は、処方物の張力を維持するよう0.65%に調整する。
【0148】
このような皮下投与のための室温処方物を、下表17A、17Bおよび17Cにまとめられているように調製した。
【表32】


【表33】


【表34】

【0149】
ある特定の実施形態では、上記皮下投与用処方物は下表に従って投与することができる。体重が示されている範囲外にある患者は0.15mg/kgで投与することができる。
【表35】

【0150】
他の実施形態では、重篤な腎不全(クレアチニンクリアランス30mL/分未満)を有する患者において、上記皮下投与用処方物を1/2まで減じることができる。
【0151】
実施例10
本明細書に記載されるように、本発明は、本発明のメチルナルトレキソン処方物を含有する充填済みシリンジを提供する。このような充填済みシリンジは下表18に記載されている。
【表36】

【0152】
実施例11
皮下処方物−生物学的同等性試験
実施例9に記載の皮下処方物と生理食塩水中にメチルナルトレキソンのみを含む処方物とを比較する生物学的同等性試験を、一施設で行った健常被験者における非盲検、単位用量、無作為化、2期間、2配列クロスオーバー、入院患者/外来患者試験で行った。用量の投与は、少なくとも10時間の一晩絶食後に投与した。18〜50歳の健常な男性および授乳中および妊娠中でない女性は、他の全ての適格基準が満たされれば、登録者として適格とした。期間1および2の1日目のおよそ0800において、各被験者に0.15mg/kgのメチルナルトレキソンを含有するSC注射を行った(期間1の1日目の体重を用いて投与量を決定した)。試験品の投与3時間後に、診療所のスケジュールに従って出される標準的な中脂肪食を開始することができる。試験フローチャートに従って期間1および2の1日目、2日目および3日目の示された時点でバイタルサイン、ECG、検査値および薬物動態(PK)サンプル採取を行った。
【0153】
各被験者に、少なくとも10時間の一晩絶食後、各期間の1日目に、割り当てられたメチルナルトレキソンの処方物0.15mg/kgの単回SC投与を施した。この注射液を上腕に皮下投与し、各注射に同じ腕を用いた。注射部位は健康な外観の皮膚とした。全ての試みで、同じ人が両処方物を各被験者に投与するようにした。用量は期間1の1日目の被験者の体重から決定した。試験品の注射前後でシリンジを秤量し、注射容量を確認した。各1回量の間に少なくとも7日のウォッシュアウト期間を挟んだ。メチルナルトレキソンの薬物動態を決定するため、血液サンプルを得た。血液サンプル(6mL)を留置カテーテルから、または直接静脈穿刺により採取した。採血にカテーテルを用いる場合には、各サンプル採取時にサンプルを採取する前におよそ0.5mLの血液を流出させた。各期間、1日目に、試験品を投与する前2時間以内に血液サンプルを採取し、試験品投与後、0.083、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、6、8、12、16、24、36および48時間の時点で採取した。薬物動態試験の結果を下表19に示す。
【表37】

【0154】
上記表19に示されるように、実施例9の処方物のSC投与後の時間に対する平均メチルナルトレキソン濃度のプロフィールは、生理食塩水処方物で見られたものと本質的に同じであった。血漿メチルナルトレキソン濃度は各処方物のSC投与に応答して急激に上昇し、平均Cmaxは、示された処方物では127ng/mL、生理食塩水処方物では119ng/mLであり、ほとんどの場合で1時間以内に見られた(平均tmaxはそれぞれ0.34時間および0.41時間)。
【0155】
実施例12
犬におけるメチルナルトレキソン皮下処方物の薬物動態スクリーニング
皮下投与された3種類の異なるメチルナルトレキソン処方物を犬で評価した。雄ビーグル犬における0.15mg/kg用量の皮下投与1回後のメチルナルトレキソンの薬物動態。8匹のビーグル犬(9.4〜5kg)を各群2匹ずつ2群に分けた。期間1の参照処方物として両群の犬に生理食塩水中、0.15mg/kgのメチルナルトレキソン(バッチ1)を皮下投与した。1週間後、期間2として、群1(SAN1〜4)に、0.5mg/バイアルのNa.EDTAおよび0.6mMクエン酸を含有する生理食塩水中、0.15mg/kgメチルナルトレキソン(バッチ2)を皮下投与し、群2(SAN5〜8)に、0.5mg/バイアルのCa.EDTAを含有する生理食塩水中、0.15mg/kgのメチルナルトレキソン(バッチ3)を皮下投与した。血液サンプルを投与後0(投与前)、0.0833、0.167、0.25、0.5、0.75、1、2、4、6、8および12時間に採取し、血漿を分離し、メチルナルトレキソン含量を評価した。
【0156】
生物分析結果を得、薬物動態(PK)評価を行った。個々の犬の血漿メチルナルトレキソン濃度−時間プロフィールに対し、ノンコンパートメントPK分析(WinNonlin、モデル200)を行った。各犬で下記の薬物動態パラメーターを決定し、処方物間で比較するため記述統計を算出した:AUC、Cmax、tmaxおよびt1/2。表20参照。
【表38】

【0157】
第III部:静脈処方物
実施例12
特定の実施形態では、本発明は、静脈投与用のメチルナルトレキソン処方物を提供する。示されている静脈処方物は2mg/バイアルまたは24mg/バイアル濃度で調製することができる。12mg/バイアルおよび24mg/バイアルの両強度とも、5mg/mL濃度のメチルナルトレキソンを用いる。特定の実施形態では、示されている静脈処方物は、Baxterミニバッグと併用するように設計されている10mLスパイク可能なバイアルまたは他のいずれかのスパイク可能な注入系を用いる。いくつかの実施形態では、示されている処方物は、121℃で15分間加熱することによって最終的に滅菌した。
【0158】
12mg/バイアルまたは24mg/バイアルの濃度で調製された処方物をそれぞれ下表20Aおよび20Bに示す。このような処方物は24mg、または例えば、0.3mg/kg、6時間毎、20分の注入としての用量で投与することができる。特定の実施形態では、このような投与は3日間(計12用量)続けた。各メチルナルトレキソン処方物を50mLに希釈し、較正ポンプを用いて投与した。
【0159】
【表39】

【表40】

【0160】
特定の実施形態では、全容量は抽出可能量2.4mLに対して少なくとも2.6mL、抽出可能量4.8mLに対して少なくとも5.1mLである。下表20Cは、シリンジまたはスパイク可能なバイアルを用いた場合のバイアル内容希釈物を示している。
【表41】

【0161】
実施例14
特定の実施形態では、示されている静脈処方物を、外科術90分後に患者に投与する(なお、この外科術はヘルニア修復である)。いくつかの実施形態では、ヘルニア修復患者にPCAポンプでオピオイドを投与する。このような処方物は12mgもしくは24mg、または例えば、0.3mg/kg、6時間毎、20分の注入としての用量で投与する。特定の実施形態では、このような投与を10日間続け、患者が排泄するか、24時間後に内臓が動き出す。
【0162】
当業者ならば、本発明の本質的な特徴を容易に確認し、以上の説明および例が、示されている本発明を実施する例であることを理解するであろう。当業者ならば、通常の実験だけを用いて、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態に対して本明細書に示されている詳細の多くの改変を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0163】
本願を通じて特許、特許出願などが引用されている。これらの各文献の開示内容は出典明示により本明細書の一部とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中に有効量の、少なくともメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウム塩およびキレート剤から選択される少なくとも1つの有効化合物を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記カルシウム塩およびキレート剤がカルシウム塩キレート剤として一緒に提供される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記カルシウム塩キレート剤が、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、カルシウムジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、カルシウムヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、カルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、カルシウムニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸カルシウム、およびそのカルシウム塩誘導体から選択される、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記有効化合物が臭化メチルナルトレキソンである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
等張化剤をさらに含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記等張化剤が塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択される、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記等張化剤が5%デキストロース、乳酸リンゲル注射液、0.45%NaCl、0.65%NaClおよび0.9%NaClからなる群から選択される送達ビヒクルを含む、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記カルシウム塩キレート剤が、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはカルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、またはそのカルシウム塩誘導体である、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記溶液が2.5〜6.0の間のpHを有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記pHが約3〜約4の間のpHである、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
安定剤がグリシン、安息香酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、およびマレイン酸から選択されることをさらに含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項12】
2.5〜6.0の間のpHを有する水溶液中に有効量の、少なくともメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウム塩キレート剤および安定剤から選択される少なくとも1つの有効化合物を含む、医薬組成物。
【請求項13】
前記カルシウム塩キレート剤が、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、カルシウムジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、カルシウムヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、カルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、カルシウムニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸カルシウム、およびそのカルシウム塩誘導体から選択される、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記有効化合物が臭化メチルナルトレキソンである、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項15】
等張化剤をさらに含む、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記等張化剤が塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択される、請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記等張化剤が5%デキストロース、乳酸リンゲル注射液、0.65%NaClおよび0.9%NaClからなる群から選択される送達ビヒクルを含む、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記水溶液が注射水を含む、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記カルシウム塩キレート剤が、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはカルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、またはそのカルシウム塩誘導体である、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記安定剤がグリシンである、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記グリシンがグリシン−HClである、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
有効量のグリシンがpHを約3.0〜約4.0に維持する、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記pHが約3.5である、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
対象に皮下投与するためのバイアル、アンプルまたはシリンジ中に含まれている単位用量である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項25】
対象に静脈投与するための点滴静注容器、点滴静注バッグまたは点滴静注ボトルへの添加物として用いられる投与濃縮物である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項26】
投与濃縮物の希釈溶液を形成するのに十分な容量の水性溶媒の導入に十分な空間を有する密閉容器中の投与濃縮物である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項27】
皮下投与するためのバイアル、アンプルまたはシリンジ中に含まれている単位用量である、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項28】
静脈投与するための点滴静注容器、点滴静注バッグまたは点滴静注ボトルへの添加物として用いられる投与濃縮物である、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項29】
投与濃縮物の希釈溶液を形成するのに十分な容量の水性溶媒の導入に十分な空間を有する密閉容器中の投与濃縮物である、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項30】
水性担体中にメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウムEDTAまたはそのカルシウム塩誘導体、およびグリシンを含む、医薬組成物。
【請求項31】
1つまたは複数の(a)〜(d):
a.メチルナルトレキソンが臭化メチルナルトレキソンであること
b.カルシウムEDTAがカルシウムEDTA二ナトリウムであること;
c.グリシンが塩酸グリシンであること;および
d.水性担体が等張性塩化ナトリウムであること
を特徴とする、請求項30記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記化合物が約3〜約4の間のpHを有する、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
(a)〜(d)の各々を特徴とする、請求項32記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記化合物が約3.4〜約3.6の間のpHを有する、請求項33記載の医薬組成物。
【請求項35】
水溶液中に有効量のメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウム塩キレート剤および安定剤を含み、6か月の室温保存条件の後の、該組成物中の分解産物の濃度が1つまたは複数の次の特徴(a)〜(g):
a.全分解産物が約1.25%メチルナルトレキソンを超えないこと;
b.2,2’ ビス−メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.55)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないこと;
c.7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解産物(RRT0.67)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないこと;
d.環縮小化メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.79)の濃度が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないこと;
e.アルドール二量体メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.77)が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないこと;
f.ホフマン脱離メチルナルトレキソン分解産物(RRT2.26)が約0.2%メチルナルトレキソンを超えないこと;および
g.O−メチルメチルナルトレキソン(RRT1.66)の濃度が約0.25%メチルナルトレキソンを超えないこと
により特徴付けられる、医薬組成物。
【請求項36】
(a)〜(g)の各々を特徴とする、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
水溶液中に有効量のメチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウム塩キレート剤および安定剤を含み、6か月の室温保存条件の後の、該組成物中の分解産物の濃度が1つまたは複数の次の特徴(a)〜(g):
a.全分解産物の濃度が約0.75%メチルナルトレキソンを超えないこと;
b.2,2’ ビス−メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.55)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないこと;
c.7−ジヒドロキシメチルナルトレキソン分解産物(RRT0.67)の濃度が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないこと;
d.環縮小化メチルナルトレキソン分解産物(RRT0.79)の濃度が約0.15%メチルナルトレキソンを超えないこと;
e.アルドール二量体メチルナルトレキソン分解産物(RRT1.77)が約0.05%メチルナルトレキソンを超えないこと;
f.ホフマン脱離メチルナルトレキソン分解産物(RRT2.26)が約0.1%メチルナルトレキソンを超えないこと;および
g.O−メチルメチルナルトレキソン(RRT1.66)の濃度が約0.15%メチルナルトレキソンを超えないこと
により特徴付けられる、医薬組成物。
【請求項38】
(a)〜(g)の各々を特徴とする、請求項37記載の医薬組成物。
【請求項39】
非経口投与のためのメチルナルトレキソン処方物を調製する方法であって、
メチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、等張化剤およびカルシウム塩キレート剤を含む溶液を調製する工程;および
得られた溶液を滅菌し、1以上の密閉容器に分配する工程を含む、方法。
【請求項40】
前記カルシウム塩キレート剤が、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、カルシウムジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、カルシウムヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、カルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、カルシウムニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸カルシウム、およびそのカルシウム塩誘導体から選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記有効化合物が臭化メチルナルトレキソンである、請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記溶液が等張化剤を含む、請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記等張化剤が塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記等張化剤が5%デキストロース、乳酸リンゲル注射液、0.65%NaClおよび0.9%NaClからなる群から選択される送達ビヒクルを含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記溶液が注射水を含む、請求項39記載の方法。
【請求項46】
前記カルシウム塩キレート剤が、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはカルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、またはそのカルシウム塩誘導体である、請求項39記載の方法。
【請求項47】
前記溶液が安定剤を含む、請求項39記載の方法。
【請求項48】
前記安定剤がグリシンである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
有効量のグリシンによりpHを約3.0〜約4.0に維持する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記pHが約3.5である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
メチルナルトレキソン処方物を調製する方法であって、
メチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、等張化剤、カルシウム塩キレート剤および安定剤を含む溶液を調製する工程;
該溶液のpHをpH2.0〜pH6.0の間に調整する工程;および
得られた溶液を滅菌し、1つまたは複数の密閉容器に分配する工程を含む、方法。
【請求項52】
前記カルシウム塩キレート剤が、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、カルシウムジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、カルシウムヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、カルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、カルシウムニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸カルシウム、およびそのカルシウム塩誘導体から選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記有効化合物が臭化メチルナルトレキソンである、請求項51記載の方法。
【請求項54】
前記等張化剤が塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択される、請求項51記載の方法。
【請求項55】
前記等張化剤が5%デキストロース、乳酸リンゲル注射液、0.65%NaClおよび0.9%NaClからなる群から選択される送達ビヒクルを含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記水溶液が注射水を含む、請求項51記載の方法。
【請求項57】
前記カルシウム塩キレート剤が、カルシウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはカルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、またはそのカルシウム塩誘導体である、請求項52記載の方法。
【請求項58】
前記安定剤がグリシンである、請求項51記載の方法。
【請求項59】
前記グリシンがグリシン−HClである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
有効量のグリシンによりpHを約3.0〜約4.0に維持する、請求項51記載の方法。
【請求項61】
前記pHが約3.5である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
オピオイド処置または使用を受けている対象においてオピオイド療法の副作用を軽減するための方法であって、請求項1、請求項12、請求項30、請求項31、請求項35、請求項36、または請求項37のいずれか一項に記載のレジメン処方物を該対象に投与することを含み、有効量のメチルナルトレキソンが該対象に送達される、方法。
【請求項63】
密閉容器中に請求項1、請求項12、請求項30、請求項31、請求項35、請求項36、または請求項37のいずれか一項に記載の処方物を含む、製品。
【請求項64】
前記容器がバイアル、アンプル、バッグ、ボトル、シリンジ、およびディスペンサーパッケージから選択される、請求項63記載の製品。
【請求項65】
前記容器がバイアルであり、かつ該バイアルが約1mL、約2mL、約5mL、約10mL、または約20mL容量から成る、請求項64記載の製品。
【請求項66】
希釈容器システムを含む、請求項65記載の製品。
【請求項67】
前記希釈容器システムがMINIBAG(登録商標)プラス希釈容器システムまたはADD VANTAGE(登録商標)希釈容器システムである、請求項66記載の製品。
【請求項68】
スパイク可能なストッパーを含む、請求項64記載の製品。
【請求項69】
自己調節鎮痛装置に関連して用いるカートリッジを含む、請求項64記載の製品。
【請求項70】
冷凍バッグ希釈容器システムを含む、請求項63記載の製品。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−545603(P2009−545603A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522896(P2009−522896)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/017430
【国際公開番号】WO2008/019115
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】