説明

化学コーティングの塗布方法

水中にある金属構造物を防汚処理する方法であって、金属構造物にきれいな表面を提供することと、その表面に固定コートを塗布することと、固定コート上に熱可塑性トップコートを塗布することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学コーティングの技術に関連し、特に熱可塑性コーティングを塗布する方法、及びより詳細には海の波にさらされる表面を防汚コーティングで塗装する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
コーティングは様々な表面に塗布される事でその表面を保護する。例えば、コーティングは防水及び絶縁をするため、並びに表面における他の種類の劣化及び損傷と同様に腐食、錆び、腐敗、水害、汚染及び燃焼を防ぐために用いられる。限定するのではないが、表面には金属、木材、コンクリート又は、例えば複合材料、タイル、泡、グラスファイバ、PVC若しくはプラスチックなどのような合成物が含まれる。表面はいくつか例を挙げると車、パイプ、チューブ、船、家具、棺、建造物(床、屋根、デッキなど)であろう。コーティングが効果的であり、塗布及び維持が安価であり、長い耐用年数を有することが重要である。
【0003】
コーティングのある用途において、海の波又は海洋生物を含む水にさらされる表面は汚れやすい。例えば、船の船体は風又は船を駆動する機械的な力の最高の効率のために、最小の抵抗で水を切って通るように設計されている。水力学的設計に加えて、船体はきれいで滑らかでなければならない。しかしながら、時間が経過すると(場合によっては比較的早くに)船の船体又は他の露出した表面は、あらゆる種類の有機及び無機の物質、すなわち露出した表面への有機物の付着によって汚れる。水に晒されている他の構造物も同様に汚れる。フジツボ、コケムシ、軟体動物、環形動物、被嚢動物、藻類、ヘドロ及びヒドロ虫が最も一般的な種類の汚染する海洋生物を構成する。
【0004】
結果は深刻である。汚れはかつて滑らかであった船体を著しく起伏がある状態にし、腐食を促進し、船体を脆弱にし、最終的に船の操縦性を低下させ抵抗を増加させる。連鎖反応は明らかであり、(ある場合においては30%ほど)燃料消費は増加する。このことは経済的(例えば燃料費の増加)及び環境的(例えばグリーンハウスガスの増加)結果の両方の原因となる。驚くべき事ではないが、かなりの注目がこの問題に注がれている。
【0005】
歴史的に、一つの解決法は頻繁に船体を擦る又は吹き付け洗浄する事によって汚れを除去する事であった。しかしながら、この煩わしい作業は時間がかかり費用も高い。さらに、船体を頻繁に擦る事は船体の脆弱化の原因となる。最も広く受け入れられた汚れを管理及び/又は予防する方法はある種の防汚コーティングを表面に塗布する事である。一般的な防汚コーティングは、例えば銅、アルミ又は錫といった金属を含んでおり、それらは有機体にとって不快、毒でさえある。更なる利点として、コーティングは腐食も防止する。
【0006】
防汚複合物がここ数年において周知になっている。そのような防汚複合物は改善されているにもかかわらず、それらは完全な溶液には相当しない。現在においてもいくつかの問題が存在しており、例えば均一にコーティングを塗布する際に塗料を扱うのが困難であり、塗料を塗布するための有用で安定しており耐久性のある装置が必要であり、及びコーティングが表面に付着しにくい性質について悪評が高い事実がある。例えば、米国特許第2,602,752号には、米国海軍によって開発された船の船体の汚れを予防するための防汚組成物が開示されている。実際、米国特許第2,602,752号において開発された組成物は、金属の船体へのコーティングの付着が困難である事、及び平らで、滑らかで、均一なコーティングをすることが困難である事によってわずかな成功しか成し得ていない。これは一部において高硬度の成分を原因とする。米国特許第2,602,752号に記載されている塗料はほぼ100%の固形成分を実質的に有する。塗料は、一般的に約50−60%の固形成分を含み、他の防汚組成物は約60−75%の固形成分を含む。
【0007】
また、防汚化学物質及び噴霧技術が、粘度を低下させ、塗料を流体として保持するために例えば約300°F(149℃)以上の高い取り扱い温度を必要とした。このような高温は扱いにくい設備と取り扱い条件とをもたらす。また、新たな問題が生じている。
【0008】
現在の市場における防汚コーティングは毒性の金属複合物を水へと浸出させる。短期間における毒性金属複合物の多量の浸出は不必要に水を汚染する。規制機関が一定の期間において生じる浸出の量を制限しようとしている。例えば、銅に対してはスウェーデンでは55μg/cm/日未満であることが求められ、カナダでは40μg/cm/日未満であることが求められている。また、多量の浸出はコーティングの耐用年数の短縮をもたらす。すなわち、毒性化合物が浸出してしまえば、コーティングはもはや汚染する生物に対する抑止にはなり得ない。したがって、ゆっくりで、しかし効果的な浸出速度を有するコーティングが、長く延長した耐用年数という更なる利益をもたらすことができる。
【0009】
また、現在の市場におけるコーティングの耐用年数は比較的短く、船は約18月毎の頻度で洗浄のために乾ドックに入らなければならない。防汚コーティングを塗布するために現在用いられる方法は、数週間の間船を乾ドックに入れる事を必要とする。一般にその方法は、船体を吹き付けてきれいにするのに約1日、船体を下塗するのに少なくとも1日、下塗りを完全に乾かすのに数日、続いて船体を防汚塗料で塗装するのに少なくとも2週間を要する。5、6回の塗装が必要であり、それぞれの塗装は塗布に約1日と乾燥に約2日を要する。毎日かなりの損失を船の所有者に与え、それは乾ドックに置くための費用の支払いと、船が使用できない事による損益である。
【0010】
また、従来技術の防汚コーティングにみられる有機複合物は汚染問題を引き起こし、それらは揮発性の有機複合物(VOC)を塗布及び乾燥を補助するために必要とする。
【0011】
現在において、防汚コーティングを用いる事に関して興味深い二つの重要な分野が残っている。すなわち、コーティングと金属表面との間のより良い結合、及び特に高温においてコーティングを塗布するためのより効率的で生産的な手段を得る事である。したがって、この分野において改良が行われる必要がある。本発明は上述の従来技術における欠点を解消する。
【特許文献1】米国特許第2,602,752号公報
【発明の開示】
【0012】
本発明は防汚コーティングを塗布するための方法に関連し、より詳細には海の波に晒される表面に多層の防汚コーティングを塗布するための方法に関する。本発明の方法は、他の用途にも等しく用いる事ができ、難燃剤又は抗腐食コーティングなどのコーティングに有用である。したがって、好適な実施形態は海洋生物に晒される被覆表面について言及されているものの、他の用途が想定されるとともに発明の範囲に位置する。
【0013】
本発明の表面を被覆する方法は、表面を洗浄する、洗浄された表面にアンダーコート又は固定コートを塗布する、そして最後に防汚複合物を含むトップコート又は外部コートを塗布する段階を有する。適切な表面は、限定するのではないが金属、木材、発泡体、グラスファイバ、プラスチック及びそれらの組み合わせを含む。好適な固定コートは硬化剤及び樹脂を含む二つのエポキシ樹脂を含む。固定コートの塗布は、噴霧技術を用いてきれいな金属上に直接外部環境において行われる。固定コートは表面に結合し、表面上に合計で約3−4ミル(0.076−0.102mm)の厚さの乾燥層を得るために用いられる事が好ましい。固定コートが完全に硬化する前に、外部コート又はトップコートが塗布される。固定コートが完全に硬化する前に、固定コート上に外部コートを塗布する事によって、二つのコーティングがそれらの界面において相互作用及び/又は反応し、表面に防汚コーティングを直接塗布した場合に比べて表面へのより強力な結合を生じることができる。
【0014】
トップコートは防汚化学複合物を有する。好適なトップコートは熱可塑性であり、したがって、一般に外気温においては固体であり、高温においてのみ粘度を低下させるため、トップコートの塗布には固定コートより高い取り扱い温度を必要とする。好適な温度は、防汚コーティングの特定の化学組成(例えば融点及び粘度)及び/又はコーティングが行われる外部条件の関数である。また、トップコートの温度は固定コートの硬化及び/又は反応速度にも影響を与える。好適な熱可塑性のトップコートは、流体にするために140°F(60℃)以上の温度に予め加熱されなければならず、温度が175°F(79℃)以上である事がより好ましい。
【0015】
防汚トップコートは異なる複合物の混合物であり、限定するのではないが金属複合物、硫化物、ガム、ロジン、様々なワックス、及び色素のような他の不活性材料を含む。好適なトップコートは米国特許第2,602,752号において説明されている。トップコートを用いる事で、20ミル(0.508mm)から30ミル(0.762mm)の間の合計の層の厚さを得る事が好ましい。所望される最終的な厚みが達成できるまで、トップコートは一層あたり5から10ミル(0.127から0.254mm)の厚みで塗布されることが好ましい。
【0016】
本発明の被覆方法は多くの利点を有する。固定コートは金属表面及びトップコートとより強い結合を生じ、より付着性のコーティングをもたらす。また、固定コートを用いる事で、乾燥時間を早くし、多層コートの塗布の間に必要な時間を短縮する事ができる。したがって、修理所要時間又は乾ドック内にある時間を著しく減少する事ができ、それは数週又は数月に対して数時間又は数日しかかからないためであり、この事は費用を減少させるとともに船が作動している時間を増やす事ができる。処置に短時間を要することは装置の使用に際して扱いを容易にし、可撓性を増大させる。また、固定コートは船体を防水にし、腐食及び他の損傷を防ぐ。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態は、本明細書中で説明されるような装置を用いて防汚コーティングを塗布する事を含む。好適な実施形態は固体処理装置、液体処理装置及び液体塗布機を含む完全に温度制御されたシステムを用いてコーティングを塗布する事を含む。固体処理装置は、室温で固体である熱可塑性化学混合物を加熱する一つ以上の手段を有する事で、液体処理装置へと温度制御された管またはホースを通って流れるようにする。液体の処理は温度管理された加熱ジャケットで包まれた容器で行われ、それは混合の均一性を維持するための手段を有する。加熱ジャケットは組成物を液相で維持するために必要な熱を供給する。温度管理されたポンプステーション又はスタンドは、液体処理装置から温度制御されており加熱されているホースを通って、表面上に均一な液体混合物の一定のコーティングを塗布するための液体塗布機に均一な混合物を移すために用いられる。好適な液体塗布機は、液体塗料を加圧し、トップコーティングを加熱されたホースとスプレーガンとを通して流す事で、事前にきれいな表面に塗布された硬化しつつある固定コートにトップコートを噴霧する。
【0018】
本発明の好適な実施形態は、トップコートの調製及び塗布の処理にわたって熱可塑性トップコート中における金属複合物を懸濁状態で維持するための手段を更に有する。液体処理装置は継続的にトップコートを攪拌する事で、トップコートの液体混合物から金属複合物が沈殿するのを防ぐ。さらに液体塗布機は、トップコートが液体処理装置からポンプステーションを通ってスプレーガンに流れる際に、機械的に継続して剪断を加えることによって、表面の固定コート上におけるコーティング中の金属複合物の均一な懸濁をもたらす。
【0019】
本発明による装置を有する本明細書で開示されている方法は、いくつかの利点を有する。独自の設計は熱可塑性技術を仕上げ技術と組み合わせ、金属の防汚剤がトップコートから沈殿する事を防ぐとともに、トップコートが最終塗装のように用いられる事を可能にする。言い換えるとトップコートは、コーティング全体における上塗りされたコーティングの物理的な厚み及び化学物質の分布の両方に一様にそしてしっかりと塗布される(すなわちより均一なコーティング)。必要となる比較的小さなサイズの装置はより可動性のある処理を可能にする。
【0020】
防汚熱可塑性コーティングを用いるための別の好適な実施形態は、防汚混合物を加熱することで混合物を液体として維持すること、液体を攪拌すること、及び固定コートによって下塗りされた表面に攪拌された液体を塗布することを含む。
【0021】
本発明の他の目的及び利点が以下の説明から明らかになるであろう。
本発明の好適な方法及び装置の実施形態の詳細な説明のために、これ以降において添付図面が参照される。添付図面は本発明に基づく防汚熱可塑性コーティングを塗布するための温度管理されたシステムを表す。
【0022】
本発明は様々な変更及び代替形態が可能であり、それらの特定の実施形態が図面において示されており、明細書中において詳細に説明される。しかしながら、図面及びそれらの詳細な説明は発明を開示された特定の形状に限定する事を意図しておらず、反対に本発明は添付された請求の範囲によって規定される本発明の範囲に入る全ての改良物、同等物、及び代替物を網羅する事を意図していることが理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は熱可塑性コーティングを塗布するための方法、特に海の波に晒される表面を防汚コーティングで被覆する方法に関する。好適な実施形態においては、本発明は海洋生物又は海の波に晒される表面に対して使用するために説明される。しかしながら、本発明は断熱材、抗腐食剤及び難燃剤などの他の周知な用途も含む。特定の実施形態において特に主張されない限り、最終的な用途は本発明に重要ではないと考えられる。むしろ、説明され主張されている方法及び関係する装置は、コーティングを必要とする又はコーティングから恩恵を受けるあらゆる特別な最終用途に適用可能であると考えられる。
【0024】
また、いくつかの実施形態は熱可塑性コーティングを塗布するための装置を用いる事を含む。好適な装置は、固体処理装置、液体処理装置及び液体塗布機を含む完全に温度管理されたシステムを有する。システムは処理中において熱可塑性コーティング中の金属複合物を懸濁した状態で維持する事で、表面上に均一なコーティングを提供することができ、コーティングの温度を維持する事によって、仕上げ材のようにコーティングを塗布する事が出来る。その結果、熱可塑性トップコートは固定コートに結合し表面上に一様に塗布される。
【0025】
したがって、本発明は熱可塑性コーティングを塗布するための方法及び装置に関連する。本発明の特定の実施形態が示されており、本開示は本発明の原理の例証を考察する事を意図しており、本発明を本明細書中で図示され説明された発明に限定する事を意図していないことが理解される。特に、本発明の方法及び関連する装置は船の表面に防汚コーティングを塗布するための使用について説明される。しかしながら、本発明はその用途に限定される事はなく、異なる形態の実施形態となることができる。同様に、特に記載されない限り、手順の順番は重要と考えない。以下において説明される実施形態の異なる教唆は、所望される結果を生じるために個別又はあらゆる適切な組み合わせにおいて用いられる。
【0026】
以下の定義は明細書において理解されるであろう。本明細書において用いられる場合、「固定コート」及び「アンダーコート」の用語は交換可能に用いられる。同様に、「トップコート」と「外部コート」の用語も本明細書中において交換可能に用いられる。他の特別な記載がされない限り、本明細書において「表面」の称呼は、基材の表面又は塗装される表面を指すのであって、コーティングが既に塗布されている表面を指すのではない。「防汚」の用語は、汚染を防止、好ましくはフジツボや他の海洋生物などの付着物が船底に堆積するのを防ぐ能力を指す。また「防汚」の用語は、製品としてのトップコート又は固定コートとトップコートとの組み合わせを特徴付けるために一般的な意味でも用いられる。本明細書中で用いられる場合、「仕上げ技術」の用語は、一般には塗料である約150°F(66℃)以下の温度で均一に表面に塗布する事ができる仕上げ剤の使用を意味し、また、約150°F(66℃)以下の温度で仕上げ剤を表面に均一に塗布するための方法及びスプレー機器のような道具を含む。当業者によって理解されるように、「有毒化学物質」は物理的(付着を防ぐ)又は生物学的(死滅)のいずれかによって海洋生物の堆積を防ぐあらゆる化学物質であり、これらは例えば本明細書において提示されるような産業上周知の金属化合物である事が好ましい。「デイタンク」はあらゆる保持容器を指すために用いられる。「加熱路」はその長さ方向に沿って温度管理されている可撓性の導管又はホースを指す。「熱可塑性」は、限定するのではないが、当該分野における一般的な定義が外気温で固体であり、加熱された際に融解又は屈曲するが、冷却された際に硬化し、再加熱された際に融解又は屈曲するワックスを含む化学混合物を許容し、明確に含むように広く解釈されるべきである。熱可塑性における「可塑性」の用語は特定の温度における材料の柔軟性を指し、材料がプラスチックを含むことを意味しない。
【0027】
以下の説明において、類似の部分には明細書及び図面全体において同一の参照番号がそれぞれ記されている。図面の図は寸法を測るために必ずしも必要ではない。本発明のある特徴は誇張された寸法又は模式的な形状で記載されており、従来型の部品の細部は明確及び簡潔にするために示されていない。
【0028】
本発明の好適な実施形態は、選択された表面に熱可塑性コーティングを塗布するための方法及び、前記コーティングを塗布するための関連するシステムを含む。表面をコーティングするための方法又は処理は、(必要であれば)表面をきれいにする段階と、アンダーコート又は固定コートを塗布する段階と、防汚成分を含んでいる事がより好ましい熱可塑性トップコート又は外部コートを最後に塗布する段階とを含む。新たな表面は「きれい」である必要があってもなくても良いことが理解されるであろう。一般に「きれいにすること」は、表面とコーティングに対してそのときに表面が示す状態とに関係する。新たな表面は拭いて洗浄されるか、例えば単純に空気洗浄又は表面の濯ぎなどの遊離した埃又は塵を除去するための他の手段を実施する事のみが必要になるであろう。他の表面は徹底的な洗浄を必要とするであろう。防汚コーティングを塗布する際において、生物で汚れている、例えば表面に付着した生物を有する表面は、生物及び他の汚染物質をはがす又は除去する必要があるであろう。サンドブラストはある種の金属表面を洗浄する効果的な方法である。しかしながら、この処理は船体に対しては大半において禁止されており、水又はドライアイスの吹き付けに置き換わっている。
【0029】
また、洗浄方法は塗装される表面の種類に大きく依存している。塗装される表面は、適切な洗浄方法を選択する際に一つの要因として確実に考慮されるべきである事を除けば、本発明にとって重要ではないことが当業者によって理解されるであろう。適した表面は限定するのではないが、金属、木材、複合物、発泡体、グラスファイバ、プラスチック、及びそれらの組み合わせを含む。
【0030】
(必要であれば)表面を洗浄した後に、固定コートが塗布される。固定コートの塗布は、きれいで乾燥した表面上に直接付着される事が好ましい。表面への固定コートのスプレー塗装は好適な付着方法である。固定コートは一層以上、好ましくは一層のみで塗布され、乾燥した層の好適な合計の厚みは5ミル(0.127mm)以下、より好ましくは3から4ミル(0.0762から0.1016mm)の間である。
【0031】
好適な固定コートはエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂の固定コートはトップコートと反応又は相互作用することで表面と結合する事ができ、可撓性及び熱安定性をコーティング全体にもたらすと共に、コーティング全体の耐水性を向上させる。エポキシ樹脂の化学物質及び複合物は当該分野において周知である。本発明の好適なエポキシ樹脂は少なくとも硬化剤と樹脂とを有する二つの部分のエポキシ樹脂を有する。より好適なエポキシ樹脂はビスフェノール樹脂を有するエポキシ樹脂であり、さらに好適なエポキシ樹脂はビスフェノールA型の樹脂を有する。
【0032】
本発明のある好適な実施形態においては、固定コートはオリゴマのポリアミン硬化剤とポリマ樹脂とを含む。前記ポリマ樹脂は75重量%の2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシラン)を含有するフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスポリマと、(少量のベンゼンを含むキシレンを中心に構成される)25重量%の溶媒とを含有する。特に、この硬化剤及び樹脂は、EPIKURE(商標)硬化剤3164(EPI-CURE(商標)3164としても知られる)及びEPON(商標)レジン1001−X−75(EPI-REZ(商標)レジン2136としても知られる)として市販されている。これら複合物のいずれもがレゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ(Resolution Performance Products)から販売されている。このエポキシ樹脂の製剤は、優れた化学及び腐食耐性と組み合わさった高度の強度と可撓性とを有する均一でしっかりしたコーティングを提供する。特に、芳香環を含むエポキシ樹脂は収縮を防ぐ事で硬化したコーティングにひびが入るのを回避し、より可撓性を有することの助けとなる。エポキシ樹脂は表面及び好適なトップコートと強い結合を形成する。
【0033】
固定コートの塗布はスプレー技術を用いて行われる事が好ましい。付着方法に関わらず、エポキシ樹脂成分(硬化剤及び樹脂)は付着前に混合されることが好ましい。一般に最初の混合時には、エポキシ樹脂は外気温条件下において流体である。容易にエポキシ樹脂が塗布、好ましくはスプレーすることができるように、温度はエポキシ樹脂を流体の状態にするのに十分なだけしか暖める必要はない。しかしながら、一度混合されると、エポキシ樹脂は即座に硬化し始め「ポットライフ」又は「ゲルタイム」を生じる。素早く使用しない場合、エポキシ樹脂は入れられていた容器又はポットの中で硬化し固まるであろう。したがって、固定コートは液体の状態であり、かつポットの中で固まらない又は準備ができていることが保証される一定の時間内に塗布(例えば噴霧)される事が好ましい。当業者によって理解されるように、ポットライフは用いられる樹脂に対する硬化剤の比率を調節することである程度操作することが出来る。しかしながら、比率が化学量論から離れすぎると、硬化が完了しないであろう。エポキシ樹脂のポットライフは十分に長いためエポキシ樹脂を表面に塗布することができ、少なくとも約60分のポットライフであることがより好ましい。
【0034】
トップコートは熱可塑性であり、防汚化学複合物を含む。トップコート又は防汚コートは異なる複合物の混合物であり、限定するのではないが金属複合物、硫化物、ガム、ロジン、様々なワックス及び色素のような他の不活性物質を含む。特定の防汚複合物は本発明にとって重要ではない。しかしながら、組成物は例えば銅、アルミ又は錫などの生物にとって不快、さらには毒である金属を含むことが好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂はあるコーティングの塗布においては下塗剤として用いられているものの、それらの使用はペンキなどの仕上げ剤を塗布するための下塗剤である。ペンキは総じて環境にとって有毒であり、室温で固体ではない。すなわち、ペンキは室温で噴霧する事ができる。本発明の熱可塑性組成物に求められる温度の上昇は、従来技術において欠点であったコーティングの潜在的な硬化の問題、接着の懸念、化学反応及び長期の耐久性に対する更なる考慮を必要とする。
【0036】
本発明の好適な熱可塑性で防汚性の組成物は、その全体が参照によって文献援用されている米国特許第2,602,752号に記載されている。したがって、本発明用の防汚複合物は


を含む。ワックス成分(特にパラフィンワックス)は加熱された際に組成物の粘度を噴霧に適した軟度まで低下させるのに役立つ。さらに、ワックスはより可撓性の膜又はコーティングを提供する。ガムロジンは結合材料として機能する。酸化銅は有毒な薬剤である。ケイ酸マグネシウム(アベスチン(abestine))はより良い懸濁をもたらし、組成物の浸出作用を改善する。したがって、この好適な防汚組成物は室温でほぼ100%の固体成分を有する。本発明の好適な防汚組成物は、室温において約75%以上の固体成分を有する。結果的に、好適な防汚コーティングはVOC問題にほぼ関与しない。本発明の好適な防汚組成物は約2%以下、好ましくは約1%以下のVOC成分を含む。
【0037】
本発明のコーティングのための好適な防汚組成物は、約10μg/cm/日以下、より好ましくは3μg/cm/日以下であり、従来技術のコーティングに対して顕著に改善している好適な平均浸出率を有する。平均浸出率はASTM D6442−03によって決定される。それ故に、好適なトップコーティングは従来技術に対して長い耐用年数を有し、水棲生物に対して有毒である金属複合物が浸出するその長い耐用年数のおかげで防汚剤として長期にわたって効果を有する。
【0038】
トップコート用の熱可塑性組成物は外気温において固体である。したがって、好適なトップコートの塗布にはアンダーコートより高い処理温度が必要となる。好適な温度は、熱可塑性組成物の融点及び粘度及び/又はトップコートの塗布が行われる外気条件の関数である。また、好適なトップコートの温度は硬化、及び/又はトップコートとの境界における固定コートの反応/相互作用速度に影響を与える。好適なトップコートは、最初に140°F(60℃)以上、より好ましくは175°F(79℃)以上の温度に予め加熱される事で、好適な熱可塑性トップコートの流動性を獲得することが好ましい。塗布の前に、好適なトップコートの温度はペンキなどの仕上げ剤のようにトップコートを塗布できる粘度を得るため、すなわち250°F(121℃)以上、最高で325°F(162℃)まで上昇される。この高温はトップコートが付着直前に均一に混合されるトップコートの粘度を得ることを可能にし、それを塗布が容易な流体に維持し、均一で平らな噴霧パターンを可能にして、トップコートが表面上で玉を形成する及び重力下で垂れるよう塗布されることを回避する。
【0039】
外部コート又はトップコートは、固定コートの完全な硬化の前に塗布される事が好ましい。固定コートの完全な硬化前に外部コートを付着させる事は、二つのコーティングがそれらの境界で相互作用及び/又は反応して相互間、結果的に船体に対して防汚塗料のみを用いた場合と区別できる強い結合を生じる事を可能にする。固定コートは約1時間のポットライフを有するものの、完全な硬化には12時間以上がかかる。したがって、トップコートは固定コートが表面に付着された後に最大12時間、好ましくは約10時間以下、より好ましくは約1時間以下、さらにより好ましくは固定コートが塗布された後ほんの数分で塗布することができる。しかしながら、固定コートが粘着性又は粘り気のある状態まで硬化した後にトップコートを塗布する事が好ましい。
【0040】
トップコートの温度は、固定コートとのトップコートの反応又は相互作用速度に直接影響を与える。トップコートが塗布されると、トップコートからの熱が固定コートの硬化速度を上昇させ、結果的に固定コートが早く固化する。トップコートは約1時間で固定コートと結合する能力を有しており、2時間以内に硬くなる事が可能である。固定コートが完全に硬化する前に固定コート上にトップコートを塗布する事によって、付加的な結合(すなわち水素、共有及び/又はイオン結合)が固定コートとトップコートとの間でそれらの境界において生じる事でより強い結合を形成すると考えられる。したがって、固定コートはトップコートと表面とに結合し、表面に対するトップコートの接着を提供する。トップコートは24時間以内に固化する。結果的に、船は船体の塗装が完了する1日以内に通常は水中へと進水することができる。
【0041】
トップコートは、約10ミル(0.254mm)から約40ミル(1.016mm)、好ましくは約20ミル(0.508mm)から約30ミル(0.762mm)の範囲の合計のトップコートの厚み、より好ましくは約20ミル(0.508mm)の合計のトップコートの厚みを有するように塗布されることが好ましい。所望される最終的な厚みが実現されるまで、トップコートは一層当たり約5から10ミル(0.127mmから0.254mm)の層で塗布されることが好ましい。トップコートの層が塗布される場合、次の層が塗布される前に各層は冷却する事が可能である。しかしながら、層は完全に冷却又は硬化される必要はない。次の層が塗布される前に、層は約15分、好ましくは約30分間冷却する事が可能である。しかしながら、層の塗布の間の実際の時間は塗布の際における実際の天候に依存することが理解されるべきである。たとえば実際に、100平行フィート(9.29m)の表面が一度に塗装することができる。一つの噴霧器のみを用いた場合、第1のコートが完全に塗布される時間までに、トップコートは第2のコートを塗布し始めるのに十分に冷却されているであろう。
【0042】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で説明される方法に基づいて熱可塑性コーティングを塗布するための装置又は関連するシステムを使用する事を含む。好適な実施形態は、固体処理装置を有する熱可塑段階アセンブリと、液体処理装置及び液体塗布装置を有する仕上げ段階アセンブリ又は仕上げアセンブリとを通常は有する。熱可塑段階アセンブリ及び仕上げ段階アセンブリの両方が完全に温度管理されている。特に図を参照すると、化学コーティングを塗布するための完全に温度管理されたシステムの好適な実施形態が示されており、前記システムは熱可塑段階の固体処理アセンブリ100と、仕上げ段階の液体処理アセンブリ120及び液体塗布アセンブリ130とを有する。
【0043】
固体処理アセンブリ100は、固形組成物をそれが流動性になるよう十分に溶かすために組成物を加熱するなどの熱可塑性及び/又は防汚複合物を液化するための手段を有する。上述されたように、好適な防汚組成物は外気温において固体である。固形組成物は固体110として貯蔵又は購入され、それはドラムアンローダ105などの固体処理アセンブリ内に完全に配置される。ドラムアンローダ105は固体110を加熱するための手段を有しており、固体110はドラムアンローダ105内で融解する。ドラムアンローダ105は固体防汚組成物を融解する事ができる適切な棚の設備を有することもできる。
【0044】
ドラムアンローダ105内の温度は、固形組成物が流動可能になるように固形組成物の粘度を低下できるほど十分に高いことが好ましい。ドラムアンローダ105の適切な設定温度は、一般に約140°F(60℃)から約175°F(79℃)の範囲内であり、約145°F(63℃)から約150°F(66℃)の範囲内である事がより好ましい。
【0045】
固形組成物を流動可能にするために必要な温度を超える温度は望まれない。好適な防汚組成物などの熱可塑性物質は熱分解性を有している。温度が高くなるにつれて、熱可塑性物質の分解傾向は大きくなる。したがって、ドラムアンローダ105内の温度は、防汚組成物を液体処理アセンブリ120へ流すための所望される粘度を提供するのに必要な最低温度で維持される事が好ましい。ドラムアンローダ105の温度が低いほど、熱可塑性物質の分解傾向は小さくなる。
【0046】
固体の防汚組成物が融解して熱可塑段階アセンブリ100において流動可能になると、仕上げ段階アセンブリの液体処理アセンブリ120に移される。仕上げ段階アセンブリはトップコートを熱可塑段階アセンブリから塗装される表面に移すための流路を提供する。仕上げ段階アセンブリは完全に温度管理される事で、トップコートを好適な温度範囲に維持する事ができ、トップコートは仕上げ剤として仕上げ段階アセンブリから出て表面に均一に及びしっかりと塗布される。また、仕上げ段階アセンブリはトップコートの均一性を維持する事で、トップコートはトップコート中に均一に拡散したトップコートの金属複合物と共に仕上げ段階アセンブリを出て、その結果、金属成分は一様に及びしっかりと表面に塗布される。仕上げ段階アセンブリはトップコートが防汚性を付与する金属複合物と共に表面を完全に覆う事と、トップコートが均一でありひび割れたり剥がれたりしないことを保証する。
【0047】
コントロールパネル200は継続的にモニタし、熱可塑段階アセンブリ100及び仕上げ段階アセンブリ120、130に指示を与える。熱可塑段階アセンブリ100及び仕上げ段階アセンブリ120、130の様々な構成機器は、コントロールパネル200に連結されたセンサ及び加熱装置をそれぞれ有する。コントロールパネル200はセンサから受信したデータを処理する手段を有しており、その後に加熱装置にその温度を変更する指示を送る手段を有する事で、流路を流れるトップコートを好適な温度の範囲内に維持する事ができる。例えば、センサ又は熱電温度計が特定の部品を通って流れるトップコートが好適な温度範囲より低い事を示す場合には、コントロールパネル200は、トップコートが好適な温度範囲の上部における好ましい温度に達するまで、適切な加熱装置に電源が入るよう指示する。
【0048】
また、熱可塑段階アセンブリ100及び仕上げ段階アセンブリ120、130の様々な装置はシステムに関連する所定のパラメータを検出又は測定するための他の検出手段を有しており、そのような検出手段はコントロールパネル200に連結されているであろう。例えば、様々な構成装置は、特定部品を通って流れるトップコートの流速又は体積を測定するための流量計を有し、又は特定部品を通って流れるトップコートの流圧を測定するための圧力計を有することもできる。さらに、検出手段は特定の構成装置における金属複合物の懸濁を決定する構成装置に配置される事によって、適度に均一な防汚複合物を保証することが好ましい。さらにその上、流体処理アセンブリ120における液面はコントロールパネル200に連結された適切なセンサを用いて測定することができる。
【0049】
融解し、流動可能なトップコートはドラムアンローダ105から加熱処理された導管又はホース140を通ってデイタンク120などの液体処理アセンブリに移される。ホース140は温度管理される事で、熱可塑性組成物が流動可能に維持され、ドラムアンローダ105からデイタンク120への物体の移送中に固体化が起こらないことを保証する。ホース140の中及びホース140における温度を制御することは、ホース140内又はホース140に沿って配置された様々なセンサ又は熱電温度計(例えば111、112)を有することができ、それらはコントロールパネル200に連結されている。図において単一ユニットとしてのみ示されているものの、複数のドラムアンローダ100が用いられることで、流動性材料が継続的又はほぼ継続的にデイタンク120に供給されて、塗装される表面への塗布に必要なことが満たされることが理解されるべきである。同様に、複数のデイタンク120が用いられることによって継続的に均一な原料を液体塗布アセンブリ130に供給し、塗装される表面に必要な量の液化したトップコーティングを塗布する手段を提供することができる。
【0050】
デイタンク120は、仕上げ剤の状態への熱可塑性防汚トップコートの粘度を得ることが十分にできるようデイタンク120内の温度を維持する温度管理手段121を有する。温度管理手段121はデイタンク120周囲に加熱ジャケット122を有し、熱可塑性トップコートの温度を仕上げ剤の温度まで上昇させて維持する。デイタンク120内のトップコートは、ポンプスタンド170に対して材料の一定の頭部圧力を提供する流速を可能にする材料の粘度を得るのに十分な温度に維持され、これ以降において詳細に説明する。また、デイタンク120の温度管理手段121はコントロールパネルに連結された温度管理装置(例えば123)を有する。温度はプラスマイナス3又は4度以内に維持される事が好ましい。適切な温度はデイタンク120内の材料の組成に依存するであろう。デイタンク120の好適な温度はドラムアンローダ105に対する温度よりもわずかに高い。好ましい実施形態においては、デイタンク120内の温度は約245°F(118℃)から約325°F(162℃)、より好ましくは約245°F(118℃)から約275°F(135℃)の範囲を有する。
【0051】
デイタンク120は温度管理及び攪拌されることで、その中の均一な混合物を維持することができる。デイタンク120内の材料をより流動的な粘度に加熱することは、より均一な混合を可能にする。防汚混合物はデイタンク120内において可能な限り均一であることが好ましい。防汚混合物中の金属複合物は液体材料から沈む又は沈殿する傾向にある。それ故に、材料は攪拌手段150を用いて継続的に攪拌される事で、トップコートが表面に付着されるために移送される前は金属をトップコート中に拡散した状態で維持する。攪拌手段150は、金属複合物がトップコートから沈む又は沈殿するのを防ぐために材料を混合及び攪拌するあらゆる適切な手段である。好適な実施形態においては、攪拌手段150は複数のパドル又はプロペラ152を有しており、それはトップコートを混合及び攪拌するためにモータ駆動164される。プロペラ152はデイタンク120の軸154に対してある角度で回転する。
【0052】
デイタンク120は温度監視装置を有し、それは加熱装置に一定のエネルギを流した後に加熱装置にパルスエネルギを流すことで所望される温度を得ることができる。デイタンク120内の高温RTDs(側温抵抗体)又は熱電温度計は継続的に温度をモニタする。これらのセンサはコントロールパネル200に温度のフィードバックを提供する事が好ましい。
【0053】
好適な実施形態においては、デイタンク120は円筒形の容器であり、タンク120の検査、整備及び洗浄のための二枚貝状の開口125を有する。デイタンク120は加熱ジャケット122として機能する環状チャンバ128を形成する外部金属タンク127を備えた内部金属タンク126を有することが好ましい。外部金属タンク127は外部の断熱材156を更に有する。内部タンク126周囲の環状チャンバ又はジャケット122は、オイルなどの加熱可能な液体158で満たされることによって、内部タンク126においてトップコート周囲の槽として機能する。環状チャンバ内のオイルの液面は入口162を介して制御可能である。電熱線などの加熱装置128は加熱ジャケット122を通って延びており、オイルを加熱された状態で維持し、順々に内部ドラム126内の液体のトップコーティングを加熱する。センサ(例えば129)は環状チャンバ122に配置される事で、オイルの温度をモニタする。熱電温度計(例えば124)は内部タンク126内のトップコート内へ延びる事でデイタンク120内のトップコートの温度をモニタすることもできる。加熱装置128、センサ123及び熱伝温度計124はコントロールパネル200に連結されている、そうでなければ通信している。
【0054】
デイタンクの上部は、パドル152のシャフトを備えた二枚貝状の蓋163で閉じられている事が好ましく、前記シャフトはある角度でデイタンクの上部を通って内部タンクへと突き出ていることが好ましい。デイタンク120はドーム状の底157を有することが好ましい。また、好適な実施形態はデイタンク120の底部に一つ以上の排液管131を有することで内部タンク126及びジャケット122を排水する。また、環状チャンバ122をオイルで満たすために、外部タンク127の壁部を通って延びるポート162が存在する事も可能である。
【0055】
温度は、デイタンク120の内部タンク126内における異なる位置、特に、荷揚ドラム100からの入口(図示しない)、デイタンク120からのトップコート用の出口(図示しない)、又はデイタンク120の排液管131において変化するであろう。デイタンク120におけるトップコートの温度が継続的にモニタされることで、出て行くトップコートの温度を所定の好適な温度範囲、例えば約250°F(121℃)から約325°F(162℃)に維持する事は重要である。デイタンク120から引き出されたトップコートが好適な温度範囲内にない場合、コントロールパネル200は全てを停止させる。液状のトップコートが適温に維持される事は重要であり、それは、トップコーティングは低すぎる温度では液体塗布アセンブリ130を介して塗布できず、トップコートは固定コートに適切に結合しない又は表面を均一に被覆しないためである。
【0056】
塗布アセンブリ130は、トレースホース160及び190によって共に連結された複数のポンプスタンド170と塗布機180とを含む。ポンプスタンド170と、塗布機180と、ホース160及び190とは、デイタンク120から塗装される表面にトップコートを運ぶ流路のある部分を形成する。これらのアセンブリは温度管理されることでトップコートの温度をある範囲内の温度に維持し、トップコート中に拡散した金属複合物を維持する手段を提供する。前記手段は、トップコートが流路を通って流れる際のトップコートの攪拌及び機械的剪断を含む。
【0057】
均一なトップコート混合物は、デイタンク120から加熱トレースホース160を介する流路をさらに通って温度管理されたポンプスタンド170へと移される。好適な実施形態においては、ポンプスタンド170はトップコートがデイタンク120から流れ込むタンク170を含む。ポンプスタンドはトップコートをデイタンク126からポンプスタンド170へ引き込むためのポンプ171を有する。ポンプ171はトップコートを加圧する。ポンプ171は温度管理できるあらゆるポンプであることが可能である。加熱装置又はカートリッジ172、173はポンプタンク170内に配置される事で、トップコートの温度を好適な温度範囲に維持する。また、センサ174はポンプスタンドに配置される事で、ポンプタンク170内のトップコートの温度をモニタする。ポンプ171、加熱装置172、173及びセンサ174はコントロールパネル200に連結されている、又はそうでなければ通信している。ポンプスタンド170は、保護される表面206上の固定コート204にトップコート202を塗布する手段にデイタンク120から追加加熱ホース160を介して均一なトップコート混合物を移すために用いられる。好適な塗布手段180はスプレーノズル182を有する温度管理されたスプレーガン180を含み、前記ノズルは、表面206上の固定コート204にコーティングを吹き付けるために用いられるポンプスタンド170によって生み出される圧力がかかっている。ノズル182は仕上げ剤を塗布するために用いられるノズルと同じ型であることが好ましい。
【0058】
複数の加熱トレースホース160(例えば温度管理ホース)がデイタンク120に連結されることで、トップコーティングを塗布するための複数のスプレーガン180に供給する事が想定される。デイタンク120はドラムアンローダ105と塗布アセンブリとの間の緩衝装置として機能する。この事は、スプレーガン180が継続的に仕上げ剤としてのトップコートと共に機能する事を保証する。デイタンク120は毎分約1から2ガロン(3.8から7.6リットル)をおよそ四つのスプレーガン180に同時に供給する事が好ましい。デイタンク120は塗布温度の液状のトップコーティングを供給する。従って、ポンプ171、加熱トレースホース160、190及びスプレー装置180は好適な温度範囲にトップコートを維持する。
【0059】
ホース190はポンプスタンド170からスプレーガン180に延びている。ホース190は加熱テープで覆われたテフロン(登録商標)の裏打ち又はチューブを含み、前記加熱テープは、内部の裏打ちを通る液体のトップコーティングとホースとを加熱するために電気が通るらせん状のワイヤを有する。また、ホース190はホースに沿って2から5フィート(0.6から1.5m)毎に内蔵されたRTDセンサ191、192を有する。センサはセンサの位置における温度を測定し、温度の信号又は測定値をコントロールパネル200に送信する。ホース190の部分に沿った温度は、RTDセンサの読み取り値から平均化されることで、平均温度が液状のトップコーティング用の好適な範囲内に維持される。この事は、トップコーティングがホース190を通って流れる際に、液状のトップコーティングの温度がある温度範囲内に維持される事を可能にする。
【0060】
ポンプスタンド170からスプレーガン180へのホース190は約150フィート(45.7m)であることにより、デイタンク120から表面に届く事が好ましい。ホース190が150フィート(45.7m)より長い場合、非常に費用がかかるようになる。ホース190は連続であってもなくても良く、すなわち30−50フィート(9.1−15.2m)がコネクタによって相互に連結される事で150フィート(45.7m)の全長に達してもよい。部分は水力コネクタを用いて連結される事もできる。ホースの各部分はコントロールパネル200まで延びる複数のセンサ(例えば191、192)を有する。さらに、ホースの全ての部分は共通のジャケット193によって覆われている事が好ましい。好適なジャケット193は起伏のあるナイロンカバーである。ホース160、190は約3−4インチ(7.6−10cm)の径であることが好ましい。
【0061】
また、スプレーガン180も温度管理されており、約250°F(121℃)から約450°F(232℃)の温度に加熱できる事が好ましい。また、それぞれのスプレーガン180は、温度が好適な範囲より下がった場合に液状のトップコーティングを加熱するための加熱装置186を有するのに加えて、RTDセンサ184を有するであろう。スプレーガン180もRTDセンサ184を有することで、ガン180を通過する液状のトップコーティングの温度をモニタできることが好ましい。
【0062】
ガン本体188はアルミのブロック構造から作られており、その中に内蔵されたヒーターカートリッジ186を有する事が好ましい。また、スプレーガン180は189で覆われていることによって、トップコートの仕上げ剤の粘度を維持するために必要な高温によって熱せられることなくガンを取り扱う事が可能である事が好ましい。他の設備と同様にスプレーガン180は、温度を管理し、スプレーガン180内のヒーターカートリッジ186を制御することでトップコーティングの温度を維持するために、コントロールパネルへの連結を有する事が好ましい。
【0063】
上述したように、液体が静止しないことが重要である。ポンプ171からホース190を通ってスプレーガン180にいたる液体は加圧下におかれる。デイタンク120における攪拌は防汚組成物中の金属複合物が液体から沈殿する事を防ぐ。液体がデイタンク120から出て、ポンプスタンド170及びその後にスプレーガン180を通った後、ホース160、190、ポンプ171及びスプレーガン180を通る液体の流れの機械的な剪断は防汚混合物中の金属複合物が沈殿する事を防ぐ。
【0064】
全ての設備が中央のコントロールパネル200に連結されており、コントロールパネルが液体の温度及び設備の各部品を含む全ての設備を管理する事が好ましい。全ての設備が温度センサ(例えば111、112、124、174、184、191及び192)を有し、温度センサが設備の特定の部品における液体の温度を検出する事が好ましい。その後温度はコントロールパネル200又は他の自動システムに送信され、それらは設備の各部品における加熱装置を調整することで液状のトップコーティングの所望される温度を維持することができるであろう。このタイプの自動加熱は液体の粘度の平衡を管理する助けとなる。
【0065】
さらに、全ての設備は、ある場所から別の場所へと移動することができるスキッド208上に配置される事が好ましい。このことはシステムを可動式にする。例えば、ある好適な実施形態においてドラムアンローダ105とデイタンク120は約4フィート(1.2m)×4フィート(1.2m)であるプラットフォーム210上に支持されている事が好ましい。別の実施形態においては、塗布システムは動くために油田のトラック又は他の車の荷台に取り付けられることができる。
【0066】
したがって、熱可塑性コーティングを塗布するための別の好適な実施形態は、前記混合物を液体として維持するために熱可塑性混合物を加熱することと、前記液体を攪拌することと、前記攪拌された液体を予め固定コートで塗装されている表面に塗布することとを含む。攪拌された液体は固定コートが塗布されてから12時間以内に固定コートに対して塗布される。攪拌された液体の塗布は、スプレーコーティングによってなされる事が好ましい。
【0067】
本発明の特有の実施形態が示されており、本開示が発明の原理の例示であって、本明細書中で描かれ説明された発明に限定する事を意図していないことが理解される。様々な寸法、サイズ、量、体積、速度及び他の数値パラメータ及び数値が発明の原理の説明及び例示のために用いられているものの、発明を本明細書中で示され、説明され、又は他に記載された数値パラメータ及び数値に限定する事を意図しない。
【0068】
発明の好適な実施形態が図示され説明されているものの、発明の範囲を逸脱することなく当業者によってそれらの改良がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】化学コーティングを塗布するためのシステムの模式図
【図2】接続機器を含むコントロールパネルの模式図
【図3】各コーティングを表す模式図
【図4】各アセンブリを支持するプラットフォームの模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に熱可塑性コーティングを塗布する方法であって、
(a)前記表面に固定コートを塗布する段階と、
(b)前記固定コート上に熱可塑性材料のコーティングを塗布する段階とを有する方法。
【請求項2】
船舶の表面に防汚コーティングを塗布する方法であって、
(a)防汚混合物を液体として維持するのに十分な温度に防汚混合物を加熱する段階と、
(b)前記液体を均一な混合物として維持するために十分に攪拌する段階と、
(c)予め固定コートで塗装された船舶の表面に前記攪拌された液体を塗布する段階とを有する方法。
【請求項3】
水中に配置される金属構造物を防汚処理するための方法であって、
金属構造物の表面をきれいにする段階と、
金属構造物の表面に固定コートを塗布する段階と、
固定コート上に熱可塑性トップコートを塗布する段階とを有する方法。
【請求項4】
固定コートが硬化剤と樹脂とを含むエポキシ樹脂である請求項1の方法。
【請求項5】
硬化剤がポリアミンを含む請求項4の方法。
【請求項6】
樹脂がビスフェノール樹脂を含む請求項4の方法。
【請求項7】
固定コート及びトップコートが、固定コートとトップコートとの境界で結合を形成する請求項1の方法。
【請求項8】
結合が主に水素結合である請求項7の方法。
【請求項9】
固定コートが5ミル(0.127mm)未満の厚みを有する層を形成する請求項1の方法。
【請求項10】
固定コートが硬化する間にトップコートが塗布される請求項1の方法。
【請求項11】
トップコートが銅とワックスを含む請求項1の方法。
【請求項12】
トップコートが米国特許第2602752号に記載されている組成物である請求項1の方法。
【請求項13】
トップコートが室温でほぼ100%固体である請求項1の方法。
【請求項14】
トップコートが金属複合物を約10μg/cm/日以下の平均浸出率で浸出させる請求項13の方法。
【請求項15】
トップコートが室温で固体である請求項1の方法。
【請求項16】
トップコートを加熱することで流動可能にする段階を更に有する請求項1の方法。
【請求項17】
トップコートを加熱して仕上げ剤の粘度を得る段階を更に有する請求項1の方法。
【請求項18】
トップコートが高温で固定コートに塗布されることで、それらの境界におけるトップコートの固定コートに対する反応及び/又は結合速度を高める請求項1の方法。
【請求項19】
仕上げ剤としての粘度を得るためにトップコートが250°F(121℃)より高い温度に加熱される請求項1の方法。
【請求項20】
固定コートの硬化速度を上昇させ、かつ固定コートの固化速度を上昇させる高温でトップコートが固定コートに塗布される請求項1の方法。
【請求項21】
トップコートが20から30ミル(0.508mmから0.762mm)の合計の厚さを有する請求項1の方法。
【請求項22】
トップコートが3から5ミル(0.076mmから0.127mm)の厚さを有する請求項1の方法。
【請求項23】
固定コートとトップコートとの厚さの合計が23から25ミル(0.584mmから0.635mm)の範囲内である請求項1の方法。
【請求項24】
トップコートが、熱可塑性段階において固体から流動可能な組成物へと最初に加熱され、その後に仕上げ段階において仕上げ剤の粘度へと更に加熱される請求項1の方法。
【請求項25】
トップコートが仕上げ段階を通して所定の温度範囲内に維持される請求項24の方法。
【請求項26】
トップコートが金属複合物を含み、前記金属複合物が仕上げ段階中にトップコート内に拡散した状態で維持される請求項24の方法。
【請求項27】
トップコートが外気温で固形物を約75%より多く含む請求項1の方法。
【請求項28】
トップコートが2%以下の揮発性有機化合物を含む請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−504381(P2009−504381A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526086(P2008−526086)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/030462
【国際公開番号】WO2007/021589
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(508041253)ティーエムシー−アイピー,エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】