化学反応装置
【課題】内容物の流通時に短絡を防止できる、横型のフロー式のリアクターを有する化学反応装置を提供する。
【解決手段】内部が複数の仕切り板によって複数の室に仕切られており、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式のリアクター13と、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器14と、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波を、リアクター13の未充填空間に伝送する1以上の導波管15と、を備え、内容物は、仕切り板の上方をオーバーフローで流れるものであり、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高い。
【解決手段】内部が複数の仕切り板によって複数の室に仕切られており、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式のリアクター13と、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器14と、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波を、リアクター13の未充填空間に伝送する1以上の導波管15と、を備え、内容物は、仕切り板の上方をオーバーフローで流れるものであり、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクターにおいてマイクロ波を照射する化学反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応物質に対してマイクロ波(電磁波)を照射することにより、熱処理等を行う化学反応装置や化学反応方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−516008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような従来の化学反応装置において、未反応の内容物が出力されることを防止したいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、横型のフロー式のリアクターにおいて、内容物の短絡を防止することによって、未反応の内容物が出力されることを防止できる化学反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による化学反応装置は、内部が複数の仕切り板によって複数の室に仕切られており、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式のリアクターと、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、マイクロ波発生器の発生したマイクロ波を、リアクターの未充填空間に伝送する1以上の導波管と、を備え、内容物は、仕切り板の上方をオーバーフローで流れるものであり、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高い、ものである。
このような構成により、各仕切り板における越流の少なくとも一部が同じ高さになることがない。したがって、越流がつながることを防止でき、内容物の短絡を防止することができる。その結果、未反応の内容物が出力されることを防止できる。
【0007】
また、本発明による化学反応装置では、リアクターにおける各仕切り板の堰高は、リアクターが傾斜していない場合に同じであり、リアクターは、内容物が流れる場合には、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高くなるように傾斜されていてもよい。
このような構成により、仕切り板の堰高が同じであったとしても、リアクターを傾斜させることによって、内容物が短絡しないようにすることができる。
【0008】
また、本発明による化学反応装置では、複数の仕切り板における流路の形状及び個数はすべて同じであり、傾斜の角度は、次式θ=sin−1(H/L)〔ただし、Lは、各室におけるリアクターの長さ方向の長さのうち、最も短い長さであり、Hは、次式で求められる越流深である。
【数1】
ただし、Qは流量であり、aは台形状の流路の底側の幅であり、bは台形状の流路の上辺側の幅であり、eは台形状の流路の底から上辺までの高さであり、Cは流量係数であり、Nは1個の仕切り板が有する台形状の流路の個数であり、gは重力加速度である〕で算出されるθ以上であってもよい。
このような構成により、流量や仕切り板の流路の形状を決めることによって、リアクターの傾斜角を算出することができる。そして、その傾斜角に応じてリアクターを傾斜させることによって、内容物の短絡を防止することができる。
【0009】
また、本発明による化学反応装置では、リアクターは、傾斜していないものであり、各室において、流入側の仕切り板の流路の底の高さは、流出側の仕切り板の流路の底の高さより、流出側の仕切り板における越流深以上高くてもよい。
このような構成により、リアクターを傾斜させない場合であっても、仕切り板の流路の高さを適宜、設定することによって、内容物が短絡しないようにすることができる。
【0010】
また、本発明による化学反応装置では、越流深は、次式
【数2】
〔ただし、Qは流量であり、aは台形状の流路の底側の幅であり、bは台形状の流路の上辺側の幅であり、eは台形状の流路の底から上辺までの高さであり、Cは流量係数であり、Nは1個の仕切り板が有する台形状の流路の個数であり、gは重力加速度である〕で算出されるHであってもよい。
このような構成により、流量や仕切り板の流路の形状を決めることによって、越流深を算出でき、隣接する仕切り板における流路の底の高さの差を知ることができる。そして、その仕切り板の流路の底の高さの差に応じて仕切り板の流路を構成することによって、内容物の短絡を防止することができる。
【0011】
また、本発明による化学反応装置では、リアクター内の内容物を回転撹拌する1以上の撹拌手段をさらに備えてもよい。
このような構成により、内容物が撹拌されることによって、リアクター内の内容物に対して、より均一にマイクロ波を照射することができるようになる。その結果、例えば、リアクター内の一部の内容物にだけマイクロ波が照射されるような事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による化学反応装置によれば、横型のフロー式のリアクターにおいて、内容物の短絡を防止することができ、未反応の内容物が出力されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1による化学反応装置の構成を示す図
【図2】同実施の形態におけるリアクターの内部の構成の一例を示す図
【図3A】同実施の形態におけるリアクターの形状の一例を示す斜視図
【図3B】同実施の形態におけるリアクターの形状の一例を示す斜視図
【図3C】同実施の形態におけるリアクターの形状の一例を示す斜視図
【図3D】同実施の形態におけるリアクターの形状の一例を示す斜視図
【図4A】同実施の形態における仕切り板の形状の一例を示す図
【図4B】同実施の形態における仕切り板の形状の一例を示す図
【図4C】同実施の形態における仕切り板の形状の一例を示す図
【図4D】同実施の形態における仕切り板の形状の一例を示す図
【図5A】同実施の形態における流路の形状の一例を示す図
【図5B】同実施の形態における流路の形状の一例を示す図
【図5C】同実施の形態における流路の形状の一例を示す図
【図6A】同実施の形態における仕切り板と越流との関係について説明するための図
【図6B】同実施の形態における仕切り板と越流との関係について説明するための図
【図6C】同実施の形態における仕切り板と越流との関係について説明するための図
【図7】同実施の形態における台形状の流路を示す図
【図8】同実施の形態における仕切り板と越流との関係について説明するための図
【図9】同実施の形態における越流深や傾斜角等の関係について説明するための図
【図10】同実施の形態における傾斜されたリアクターの内部の構成の一例を示す図
【図11】同実施の形態におけるマイクロ波発生部と導波管の他の一例を示す図
【図12A】同実施の形態におけるマイクロ波の照射位置について説明するための図
【図12B】同実施の形態におけるマイクロ波の照射位置について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による化学反応装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による化学反応装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による化学反応装置は、リアクターの内容物に対してマイクロ波を照射するものである。
【0016】
図1は、本実施の形態による化学反応装置1の構成を示す図である。本実施の形態による化学反応装置1は、混合部12と、リアクター13と、マイクロ波発生器14と、導波管15と、マイクロ波制御部16と、触媒分離部17と、処理液貯留槽18とを備える。
【0017】
混合部12は、原料と固体触媒とを混合させる。混合部12は、原料等と反応剤とを混合させてもよい。原料は、複数の物質を含むものであってもよい。例えば、リアクター13においてエステル化を行う場合には、油脂とアルコールが原料であってもよい。その原料と、固体触媒とは、図1で示されるように、ポンプ11によって混合部12に供給されてもよく、あるいは、他の方法によって混合部12に供給されてもよい。混合部12は、例えば、羽根状の部材や翼状の部材、スクリュー状の部材を回転させることによって、2以上の物質を混合してもよい。なお、本実施の形態では、原料と混合される触媒が固体触媒(不均一系触媒)である場合について説明するが、触媒は液状の触媒(均一系触媒)であってもよい。また、固体触媒は、リアクター13内で流動床を形成してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。また、その固体触媒の形状は問わない。固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状(中空であってもよく、そうでなくてもよい)、球状、ペレット状、リング状、シェル状等であってもよい。また、その固体触媒は、例えば、マイクロ波吸収性もしくはマイクロ波感受性を有してもよく、または、そうでなくてもよい。固体触媒がマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する場合には、後述するリアクター13の内部においてマイクロ波を照射した際に、固体触媒がマイクロ波によって加熱されることになり、その固体触媒近傍での化学反応が促進されることになる。なお、そのマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性については、照射されるマイクロ波の周波数やリアクター13の内部の温度等に依存することになる。すなわち、使用するマイクロ波の周波数、及び原料を反応させるリアクター13の内部の温度において、誘電損失係数の高いものがマイクロ波吸収性の高いものとなる。したがって、例えば、そのようなマイクロ波吸収性の高い物質を含む固体触媒を用いるようにしてもよい。例えば、2.45GHzのマイクロ波が照射される場合には、マイクロ波吸収性を有する物質として、フラーレンを除くカーボン類(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、または活性炭など)や、鉄、ニッケル、コバルト、またはフェライト等がある。したがって、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性を有する物質を含むものであってもよい。具体的には、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよく、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒とを組み合わせたコンポジットであってもよく、または、マイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよい。そのコンポジット化は、例えば、物理吸着によって行われてもよく、化学結合によって行われてもよく、合金化によって行われてもよく、または、その他の方法によって行われてもよい。また、混合部12において、リアクター13での反応に備えて、予備的な加熱を行ってもよく、あるいは、行わなくてもよい。その予備的な加熱を行う場合には、原料等がリアクター13に入る時点において所望の温度または所望の温度幅となるように、混合部12における予備的な加熱の温度が制御されることが好適である。なお、混合部12での予備加熱が行われない場合には、その予備加熱に対応する加熱がリアクター13において行われてもよい。混合部12で混合された原料と固体触媒は、リアクター13の上流側に入れられる。
【0018】
リアクター13は、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式の反応器である。なお、リアクター13において内容物が水平方向に流れるとは、リアクター13が、内容物が鉛直方向に流れる縦型のフロー式の反応器ではないことを意味するものであり、厳密に水平方向に流れなくてもよい。内容物が全体として水平に近い方向に流れるものであればよい。その内容物は、例えば、原料と触媒との混合物である。そのリアクター13の内部を、混合部12で混合された、原料と触媒とが流れることになる。なお、リアクター13における化学反応によって、原料から生成物が生成されるため、リアクター13の内容物には生成物が含まれていると考えてもよい。すなわち、その内容物は、原料及び/または生成物であると言うこともできる。また、内容物の上方に未充填空間が存在するため、内容物は通常、気体以外のものである。また、内容物は、リアクター13内部において、流動性を有するものであり、また、液面が平らになるものであるため、固体(例えば、粉体や粒状体等)以外のものである。したがって、内容物は、液状のものである。その液状の内容物は、例えば、水や油、水溶液、コロイド溶液等のように、流動性の高いものであってもよく、あるいは、スラリーや懸濁液のように、流動性の低いものであってもよい。なお、リアクター13内部において、内容物の液面は水平であることが好適であるため、液状の内容物は、流動性が低かったとしても、外部から振動を加えることなく、ある程度の時間の経過に応じて液面が水平になる程度の流動性を有していることが好適である。すなわち、液状の内容物は、外部からの振動がなくても、表面が変形しうる程度の流動性を有していることが好適である。なお、液面の水平状態は、完全な平坦であってもよく、または、細かい凹凸があったとしても全体として平坦であるといった程度であってもよい。内容物の流動性が高くない場合には、完全な平坦にならないこともありうるからである。リアクター13の内壁は、マイクロ波を反射する物質で構成されていることが好適である。マイクロ波を反射する物質としては、例えば、金属がある。このリアクター13の内部の構成については後述する。
【0019】
マイクロ波発生器14は、マイクロ波を発生する。本実施の形態による化学反応装置1は、1個のマイクロ波発生器14を備えていてもよく、あるいは、2個以上のマイクロ波発生器14を備えていてもよい。そのマイクロ波の周波数は限定されるものではないが、例えば、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、24GHzであってもよく、913MHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。
【0020】
1以上の導波管15は、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波を、リアクター13の未充填空間に伝送する。導波管15は、図1で示されるように、マイクロ波発生器14の個数と同じ個数だけ存在してもよい。また、導波管15は、分岐を有し、未充填空間の2以上の位置にマイクロ波を伝送してもよい。なお、導波管15は、マイクロ波発生器14が発生するマイクロ波の周波数に応じた規格のものを使用することが好適である。
【0021】
マイクロ波制御部16は、後述する温度測定部25が測定した温度に応じて、リアクター13に照射するマイクロ波の出力を制御する。このマイクロ波制御部16による制御によって、リアクター13の内部を所望の温度または所望の温度幅に維持することが可能となる。
【0022】
触媒分離部17は、リアクター13における反応後の生成物から触媒を分離する。原料と混合された触媒が固体触媒である場合には、例えば、フィルタによって固体触媒を分離してもよく、固体触媒と生成物の一方を沈澱させることによって固体触媒を分離してもよい。また、固体触媒が磁性体を含むものである場合には、磁石(永久磁石でもよく、電磁石でもよい)によって固体触媒を吸着することによって、固体触媒を分離してもよい。なお、分離された固体触媒は、適宜、再利用することができうる。また、液体の触媒を用いた場合には、触媒分離部17において、蒸留や抽出、中和を行うことによって、触媒を分離してもよい。
【0023】
処理液貯留槽18には、触媒分離部17において触媒の分離された生成物が入れられる。そして、適宜、最終的な製造物と副生成物等に分けられることになる。例えば、原料が遊離脂肪酸であり、リアクター13においてエステル化が行われた場合には、バイオディーゼル燃料である製造物と、水である副生成物とが得られることになる。その場合には、酸触媒が用いられる。また、例えば、原料がトリグリセリドであり、リアクター13においてエステル交換が行われた場合には、バイオディーゼル燃料である製造物と、グリセリンである副生成物とが得られることになる。その場合には、アルカリ触媒が用いられる。
【0024】
なお、リアクター13の後段に、リアクター13での反応後の物質を冷却する図示しない冷却器を備えてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、その冷却器は、リアクター13での反応後の物質を水冷するものであってもよい。
【0025】
図2は、本実施の形態によるリアクター13の内部構造の一例を示す図である。図2において、リアクター13は、内部が複数の仕切り板21によって複数の室31,32,33,34に仕切られている。その複数の室31,32,33,34は、直列に連続した室である。前述のように、リアクター13の内部では、上方に未充填空間22が存在する。その未充填空間22に対して、導波管15を介して、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が照射されることになる。なお、図2では、リアクター13内部に単一の未充填空間が存在する場合、すなわち、すべての室31〜34において未充填空間が共有されている場合について示しているが、そうでなくてもよい。すなわち、未充填空間は、すべての室のうち、少なくとも一部の2以上の室において共有されていてもよく、あるいは、すべての室において共有されていなくてもよい(この場合には、各仕切り板21によって未充填空間が分断されていることになる)。各導波管15は、図2で示されるように、各室32,33,34の上流側の位置に設けられてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、一の導波管15によって未充填空間22に伝送されたマイクロ波が、その下方に存在する室に主に照射される。なお、マイクロ波は未充填空間を伝わるため、例えば、室32の位置の導波管15によって伝送されたマイクロ波が、未充填空間を介して室31や室33の内容物にも照射されることになる。なお、導波管15を仕切り板21の位置、すなわち、仕切り板21の上方の位置に設けてもよい。そのようにすることで、一の導波管15によって未充填空間22に伝送されたマイクロ波が、その導波管15に対応する位置の仕切り板21で区切られる2個の室に主に照射されることになる。なお、未充填空間22が複数の室で共有されている場合には、その共有されている未充填空間22に伝送されたマイクロ波は、その未充填空間22を共有している複数の室の内容物20に対して照射されることになる。仕切り板21は、マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、あるいは、マイクロ波を反射するものであってもよい。マイクロ波を透過する材料としては、例えば、テフロン(登録商標)や、石英ガラス、セラミック、窒化珪素アルミナ等がある。したがって、マイクロ波透過性の仕切り板21は、そのようなマイクロ波を透過する材料で構成されたものであってもよい。また、マイクロ波を吸収する材料としては、例えば、フラーレンを除くカーボン類等がある。したがって、マイクロ波吸収性の仕切り板21は、そのようなマイクロ波を吸収する材料で構成されたものであってもよい。また、マイクロ波を反射する材料としては、例えば、金属がある。したがって、マイクロ波を透過しない仕切り板21は、そのようなマイクロ波を反射する材料で構成されたものであってもよい。また、仕切り板21は、マイクロ波透過性の材料、マイクロ波吸収性の材料、マイクロ波反射性の材料のうち、任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されてもよい。
【0026】
また、図2で示されるように、化学反応装置1は、撹拌手段23をさらに有してもよい。すなわち、本実施の形態による化学反応装置1は、リアクター13内の内容物20を回転撹拌する1以上の撹拌手段23をも有してもよい。図2では、各室31〜34に撹拌手段23が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。1以上の室に撹拌手段23が存在しなくてもよい。また、図2では、撹拌手段23が羽根状のものである場合について示しているが、これは撹拌手段23を模式的に示したものであり、その撹拌は、例えば、羽根状、翼状、あるいは、棒状の回転部材が回転されることによって行われてもよい。その回転部材は、マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、マイクロ波反射性のものであってもよく、あるいは、マイクロ波透過性の材料、マイクロ波吸収性の材料、マイクロ波反射性の材料のうち、任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されたものであってもよい。その回転は、例えば、シャフトに装着された回転部材がシャフトの回転に応じて回転されることによって行われてもよく、あるいは、マグネティックスターラーのように、磁性を用いて回転部材が回転されてもよい。シャフトを用いる前者の場合には、そのシャフトは室ごとに独立したものであってもよく、あるいは、複数の室において共通して用いられるものであってもよい。磁性を用いる後者の場合には、棒状や羽根状、翼状等の回転部材(磁性撹拌子)が、磁石によって回転されることになる。なお、撹拌手段23による内容物の撹拌が、内容物を上流から下流の方向、もしくは、逆の方向に流すために用いられてもよく、または、そうでなくてもよい。なお、回転撹拌については、すでに公知であり、それらの詳細な説明を省略する。
【0027】
ここで、撹拌手段23がリアクター13の内容物を回転撹拌する理由について簡単に説明する。撹拌手段23が内容物を撹拌する第1の理由は、マイクロ波によって内容物が均一に加熱されるようにするためである。内容物の種類や内容物の温度にも依存するが、あるマイクロ波が浸透する深さは決まっているため、内容物の全体に均一にマイクロ波が照射され、均一に加熱されるように撹拌することになる。また、未充填空間22における内容物の表面積が大きくなると、マイクロ波をより効率よく内容物に照射することができるようになる。したがって、内容物を撹拌する第2の理由は、マイクロ波の照射面積をより広くするためである。そのため、撹拌手段23による内容物の撹拌は、未充填空間22における内容物の表面に波が起こる程度の激しさであることが好適であるが、そうでなくてもよい(第1の理由に応じた撹拌が行われるのであれば、結果として内容物の全体が加熱され、それで十分である場合もあるからである)。また、このように、撹拌手段23を用いて原料等の撹拌を行うため、原料に密度の異なる2以上の物質が含まれている場合であっても、両者を適切に混合して反応させることができるようになる。例えば、縦型のフロー式のリアクターにおいて、アルコールと廃油のように、密度の違うものを反応させようとしても、両者が容易に分離してしまうことになるが、本実施の形態のように横型のフロー式のリアクター13であって、撹拌手段23が存在する場合には、両者を適切に混合して反応させることができるようになる。
【0028】
また、図2で示されるように、リアクター13は、温度測定部25をも有してもよい。すなわち、本実施の形態による化学反応装置1は、リアクター13の内部の温度を測定する温度測定部25を備えていてもよい。リアクター13の内部の温度は、リアクター13の内容物の温度であることが好適である。図2では、各室31〜34に温度測定部25が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。1以上の室に温度測定部25が存在しなくてもよい。また、図2では、温度測定部25を模式的に示しているが、温度測定部25は、例えば、熱電対によって温度を測定してもよく、赤外線センサによって温度を測定してもよく、光ファイバーによって温度を測定してもよく、その他の方法によって温度を測定してもよい。温度測定部25が測定した温度(厳密に言えば、温度を示すデータである)は、マイクロ波制御部16に渡され、マイクロ波発生器14によるマイクロ波の出力の制御のために用いられる。その制御は、前述のように、各室31〜34の温度を所望の温度または所望の温度幅に維持するための制御である。例えば、図2で示されるように、仕切り板21の位置にマイクロ波が照射される場合には、その位置に照射されるマイクロ波の出力の制御を、例えば、マイクロ波が照射される位置の仕切り板21で区切られる2個の室の温度のうち、一方を用いて行ってもよく、あるいは、両者を用いて行ってもよい。前者の場合には、例えば、低い方の温度を用いて制御を行ってもよく、高い方の温度を用いて制御を行ってもよく、あるいは、あらかじめ決められた室の温度を用いて制御を行ってもよい。後者の場合には、例えば、両者の平均を用いて制御を行ってもよく、あるいは、両者の室の容量に応じた加重平均(室の容量に応じた重みを考慮した平均)を用いて制御を行ってもよい。
また、リアクター13の壁面は、断熱材で覆われていてもよい。そのようにすることで、リアクター13の内部の熱が外部に放出されることを防止することができる。
【0029】
図3A、図3Bは、本実施の形態によるリアクター13の形状の一例を示す図である。なお、図3A、図3Bにおいて、説明の便宜上、仕切り板21や撹拌手段23等を省略している。図3A、図3Bにおいて、本実施の形態によるリアクター13は、内容物の量の変化に応じて液面の高さが変化しても、液面の面積が不変である形状を有している。なお、「内容物の量の変化に応じて液面の高さが変化しても、液面の面積が不変である」とは、内容物の量が変化したとしても、液面の面積が不変であるような内容物の範囲が少なくとも存在する、という意味である。したがって、どのような内容物の量であったとしても、内容物の量に応じて液面の面積が不変であってもよく、あるいは、内容物の量が所定の範囲内である場合、すなわち、内容物の量が第1の量から第2の量(第2の量は、第1の量よりも多い量であるとする)までの間である場合に、内容物の量に応じて液面の面積が不変であってもよい。本実施の形態では、後者の場合について主に説明する。すなわち、本実施の形態では、リアクター13は、内容物の量が所定の範囲内である場合に、内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変である形状を有する。そのため、リアクター13は、例えば、図3A、図3Bで示されるように、内容物の量が所定の範囲内である場合に、内容物の液面方向の断面が変化しない形状を有していてもよい。なお、前述の第1の量は通常、内容物の下限値となり、第2の量は通常、内容物の上限値となる。また、内容物が第2の量である場合にも、内容物の上方に未充填空間が存在していることが必要である。リアクター13では、未充填空間を介してマイクロ波を照射するからである。また、前述のように、リアクター13内部において撹拌を行う場合には、液面が波立つこともありうるが、ここでの液面は、そのような波立ち等のない状態における液面である。
【0030】
図3Aでは、リアクター13は、流れ方向に延びる、下側に凸である半円筒形状を有している。すなわち、図3Aのリアクター13は、上面が開口した、下側に凸である半円筒形状と、その半円筒形状と同じ長さであり、下面が開口した直方体とをその開口において連続させた形状を有している。なお、その半円筒形状の開口と、直方体の開口とはそれぞれ同じ大きさ、形状であり、両者がその開口で連続していることによって、リアクター13が形成されることになる。言い方を変えれば、図3Aのリアクター13は、断面がU字型の側面と、断面がそのU字型の開口部を閉じる上面とを有する管形状であって、その管形状の両端の開口が、長さ方向に直角な平面で閉じられた形状を有している。その図3Aのリアクター13では、内容物の液面の高さが、例えば、レベル1やレベル2の高さのように、範囲R1内である場合には、液面の面積は不変である。なお、範囲R1の最下位の液面の高さが、リアクター13の上側の直方体形状の最下位の位置となる。
【0031】
図3Bでは、リアクター13は、直方体の形状を有している。その図3Bのリアクター13では、内容物の液面の高さが、例えば、レベル1やレベル2の高さのように、すべての範囲R1である場合に、液面の面積は不変である。すなわち、内容物がどのような量であったとしても、液面の面積は不変となる。
【0032】
次に、仕切り板21について説明する。リアクター13に入った原料等の内容物20は、各室31〜34の間を流通し、最終的に下流(図2のリアクター13の右端)から出力される。なお、その仕切り板21には、内容物が流通する流路が存在する。本実施の形態において、その流路は、仕切り板21の上方におけるオーバーフローの流路である。すなわち、本実施の形態では、内容物は、仕切り板21の上方をオーバーフローで流れることになる。その流路は、内容物がリアクター13の上流側(図2の左側)から、下流側(図2の右側)に向かって流れていく流路である。図4A、図4Bは、図3Aの形状のリアクター13に設けられた仕切り板21を、そのリアクター13の長さ方向から見た図である。それらの仕切り板21では、未充填空間22の位置に仕切りが存在せず、その位置(すなわち、仕切り板21の上方)を内容物が流れることになる。そのオーバーフローの流路は、図4Aのように3個であってもよく、図4Bのように1個であってもよく、あるいは、その他の個数(2個または4個以上)であってもよい。また、各流路の形状は、図4A、図4B、図5Aで示されるように台形状であってもよく、図5Bで示されるようにV字状(くさび形状)であってもよく、図5Cで示されるように四角形状(矩形状)であってもよく、あるいは、その他の形状(例えば、U字形状や、半円形状等)であってもよい。なお、仕切り板21が複数の流路を有する場合に、各流路の形状は異なっていてもよく、あるいは、同じであってもよい。また、仕切り板21が複数の流路を有する場合に、各流路の底(流路の最も低いところ)の高さは同じであることが好適である。その流路の底の高さの位置を「堰高」と呼ぶこともある。なお、図5A〜図5Cにおいて、左向きの矢印で示される位置が、堰高(流路の底の高さの位置)となる。その堰高は、鉛直方向における高さを示すものである。また、流路が矩形である場合に、その幅がリアクター13の幅と同じであってもよい。すなわち、その場合の仕切り板21は、上方の辺に切り込み(切り欠き)等の凹形状を有しておらず、リアクター13の幅全体が流路となる(全幅堰)。また、図4A、図4Bでは、その仕切り板21によって仕切られる2個の室において未充填空間22が共有される場合の仕切り板について示しているが、未充填空間22が共有されない場合には、未充填空間22の位置にも仕切り板21が存在してもよい。例えば、図4Aや、図4Bの仕切り板21において、台形状の流路の上辺よりも上側にも仕切り板が存在してもよい。すなわち、仕切り板21は、流路に応じた複数の台形状の孔を有するものであってもよい。その場合であっても、その孔である流路においては、内容物が、仕切り板21の上方をオーバーフローで流れている、と考えることができる。また、リアクター13が図3A以外の形状である場合には、その形状に応じた仕切り板21の形状となることは言うまでもない。また、リアクター13の内部に複数の仕切り板21が存在する場合に、各仕切り板21は、同じ形状であってもよく、あるいは、そうでなくてもよい。また、仕切り板21の厚さは、例えば、1〜20mm程度であり、各室の長さ(リアクター13の長さ方向の長さ)と比較して十分に小さいものである。
【0033】
(1)リアクターが傾斜しておらず、仕切り板に段差がある場合
次に、リアクター13が傾斜していない場合の仕切り板21の堰高について説明する。ここでは、室33に注目して説明するが、他の室についても同様である。図6Aの右側の仕切り板21で示されるように、オーバーフローの流路では、内容物20の高さが、仕切り板21の堰高よりも越流深Hだけ高くなる。越流深とは、仕切り板21の流路を内容物が流れる際における越流(オーバーフロー)の高さ、すなわち、堰高から内容物の最も高い位置までの高さ(鉛直方向の高さ)である。なお、図5A〜図5Cの図中において示されるHが越流深である。また、図6Aで示されるように、リアクター13が傾斜していない場合であって、室33の流入側(図中の左側)の仕切り板21と流出側(図中の右側)の仕切り板21との堰高が等しい場合には、室33の流入側の仕切り板21と流出側の仕切り板21との越流が同じ高さとなり、両仕切り板21の越流が左右方向に連続していることになる。そのため、内容物20の少なくとも一部が、その連続している越流によって、室33に留まることなく、室32から室34に移動する可能性がある。すなわち、図6Aの場合には、室33において、内容物20が短絡して流出する可能性がある。また、図6Bで示されるように、室33の流入側の仕切り板21の堰高が、流出側の仕切り板21の堰高より高いが、両仕切り板21の越流において少なくとも一部(図中の網掛け部分)が左右方向に連続している場合にも、内容物20の少なくとも一部が、その連続している越流部分によって、室33に留まることなく、短絡して流れる可能性がある。一方、図6Cで示されるように、室33の流入側の仕切り板21の堰高が、流出側の仕切り板21の堰高より、流出側の越流深Hだけ高い場合には、両仕切り板21の越流において、左右方向に連続しているところが存在しないことになる。この場合には、流入側の仕切り板21を介して室33に流入する際に、すべての内容物20が少なくとも下方向に移動することになる。そして、その移動による位置エネルギーの減少に応じて、室33に流入した内容物20は、室33の底部に向かって沈むことになると考えられる。そのため、図6Cの場合には、流入側の越流を介して室33に流入してきた内容物20がそのまま流出側の越流を介して流出してしまうことが、図6A、図6Bの場合と比較してほとんどなく、内容物20が短絡することを効果的に防止できると考えられる。したがって、リアクター13の各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深H以上高くなっていればよいことになる。そのようにすることで、各室における内容物20の短絡を防止することができる。そのようにするために、図6Cで説明したように、傾斜していないリアクター13の各室において、流入側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)が、流出側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)より、流出側の仕切り板21における越流深H以上高くなるような仕切り板21を用いるようにしてもよい。また、後述するように、リアクター13を傾斜させることによって、リアクター13の各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深H以上高くなるようにしてもよい。また、このように室33の流入側の仕切り板21の堰高が、流出側の仕切り板21の堰高より、流出側の越流深Hだけ高くすることによって、逆流を防止することもできる。なお、図6A〜図6Cにおいて、説明の便宜上、撹拌手段23や温度測定部25の記載を省略している。また、説明の便宜上、堰高より上側の仕切り板21も省略している。
【0034】
次に、その越流深Hについて説明する。ここで、仕切り板21が、図7で示される台形状の流路をN個有する場合について考える。なお、図7の台形状の流路において、台形状の流路の底側の幅aと上辺側の幅bとが等しい場合、すなわち、a=bの場合には、矩形状の流路となる。また、台形状の流路の底側の幅aが0の場合、すなわち、a=0の場合には、V字状の流路となる。なお、台形状の流路の高さをeとしており、z軸を越流の上面から鉛直下方向にとっている。この場合には、D(z)は、次式で示されるようになる。
【数3】
【0035】
また、ベルヌーイの定理v=(2gz)1/2を用いることにより、流量Qは、次式で示されるようになる。なお、gは重力加速度であり、Cは流量係数であり、vは流体の速度である。流量係数は、流路の形状ごとに決まるものであり、例えば、実験により算出してもよく、または、計算により算出してもよい。
【数4】
【0036】
この式に前述のD(z)を代入してzで積分すると、次式のようになる。
【数5】
そして、その式を書き換えると、次式のようになる。
【数6】
【0037】
この方程式を解くことによって、越流深Hを算出することができる。また、リアクター13における各仕切り板の流路の個数及び形状を同じとすることにより、各仕切り板21の越流深Hが等しくなる。したがって、隣接する仕切り板21において、流入側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)が、流出側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)より、その越流深H以上高くなるような仕切り板21を設計することにより、リアクター13内における短絡を防止することができ、未反応の内容物がリアクター13から出力されることを防止することができる。
【0038】
なお、最後段の室34における流出孔の高さについても、上述の堰高と同じ関係を有していることが好適である。すなわち、最後段の室34の流入側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)が、流出孔の流路の底の高さより、その流出孔における越流深以上高くなるようになっていることが好適である。通常、仕切り板21における流路の形状と、最後段の室34の流出孔の形状とは異なることが多いため、その流出孔の越流深については、仕切り板21の越流深Hとは別途、計算するようにしてもよい。なお、台形状の流路については、上述のD(z)を用いることができるが、それ以外の形状の流路の場合には、適宜、その形状にあったD(z)を用い、上記積分を行うことによって、越流深を算出することができる。
【0039】
また、この(1)の場合には、複数の仕切り板21における流路の形状及び個数が、仕切り板21ごとに異なっていてもよい。その場合には、仕切り板21ごとに越流深Hiを算出する。なお、iは、仕切り板21を識別するインデックス(1以上の整数)である。そして、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深Hi以上高くなるようにすればよい。
【0040】
(2)リアクターが傾斜しており、仕切り板に段差がない場合
次に、リアクター13を傾斜させることによって、仕切り板21に段差を設けた場合と同様のことを実現する場合について説明する。ここでは、各仕切り板21の堰高が、リアクター13が傾斜していない場合に同じであるとする。また、その複数の仕切り板21の流路の形状及び個数もすべて同じであるとする。すなわち、リアクター13の長さ方向に直交するリアクター13内部の断面が変化しない場合には、すべての仕切り板21は、同じ形状であってもよい。そのようであっても、内容物20が流れる場合、すなわち、内容物20に対する処理が行われる場合に、図8で示されるように、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深以上高くなるように、リアクター13が傾斜されていることによって、前述のように、仕切り板21に段差を設けた場合と同様の効果を得ることができる。ここで、リアクター13を傾斜させる場合には、当然、内容物の流入側が上方となり、流出側が下方となるように傾斜させることになる。
【0041】
ここで、リアクター13を傾斜させる場合における傾斜角について説明する。図9で示されるように、リアクター13の長さ方向の室33の長さをLとする。Lの長さは限定されるものではないが、例えば、10〜300cm程度であり、好ましくは、10〜100cm程度であってもよい。また、リアクター13が、流入側が流出側よりも高くなるように、角度θだけ傾斜しているとする。また、室33における流出側の仕切り板21の越流深をHとする。すると、室33において、流入側の仕切り板21の堰高と、流出側の仕切り板21の堰高との差は、H0=Lsinθとなる。したがって、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深だけ高くなるためには、H0=H、すなわち、Lsinθ=Hであればよい。Hは、仕切り板21に段差を設けた場合の説明における方程式を解くことによって算出することができる。したがって、その算出したHと、Lとを用いると、θ=sin−1(H/L)となり、リアクター13をそのθ以上、傾斜させることによって、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深H以上高くなることになる。なお、すべての室の長さが同じ場合には、そのθを用いればよいが、そうでない場合には、最も短い室の長さであるLを用いる必要がある。最も短い室の長さに応じたθが、最も大きい値になるからである。したがって、θ=sin−1(H/L)における「L」は、各室におけるリアクター13の長さ方向の長さのうち、最も短い長さであればよい。
【0042】
なお、リアクター13を傾斜させた場合には、厳密には、仕切り板21も傾斜することになり、仕切り板21における流路も角度θだけ傾斜することになる。したがって、厳密に言えば、越流深は、上記方程式を解いたHの値と異なることになるが、通常、角度θは小さい値であり、傾斜の有無に応じたHの差も小さい値となる。さらに、通常、Hは、Lと比較して十分小さい値であるため、リアクター13の傾斜に応じたHの変化を考慮しなくても問題ないと考えられる。なお、リアクター13の傾斜も考慮して越流深Hを算出し、そのHを用いて、角度θを算出してもよいことは言うまでもない。リアクター13を傾斜させた場合の内部構造は、例えば、図10で示されるようになる。
【0043】
また、リアクター13を傾斜させる場合でも、(1)の場合と同様に、最後段の室34について考慮してもよい。すなわち、最後段の室34についても、流出孔の越流深を算出して、上述と同様にθを算出する。そして、最後段の室34について算出したθと、それ以外の室で算出したθとのうち、大きい方の値以上、リアクター13を傾斜させるようにしてもよい。
【0044】
(3)リアクターが傾斜しており、仕切り板に段差がある場合
前述の(1)、(2)の場合を組み合わせてもよい。すなわち、リアクター13を傾斜させ、かつ、仕切り板21に段差があることによって、結果として、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深以上高くなるようにしてもよい。その場合には、流入側の仕切り板21の堰高が、流出側の仕切り板21の流路の堰高より、「H−Lsinθ」以上高くなるようにしてもよい。なお、Hは、流出側の仕切り板21における越流深であり、Lは、各室におけるリアクター13の長さ方向の長さのうち、最も短い長さであり、θは、リアクター13の傾斜角である。また、ここでも、各仕切り板21において、流路の形状及び個数は同じであるとしており、リアクター13の傾斜角はあまり大きくないとしている。
【0045】
なお、(1)〜(3)の説明では、流路の形状や流量等を用いて越流深Hを算出する場合について説明したが、そうでなくてもよい。リアクター13において、実際に内容物を流通させ、その流通時の越流深Hを測定してもよい。そして、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の越流深以上高くなるように、仕切り板21の流路を設計したり、リアクター13の傾斜角を調整したりしてもよい。その場合には、各仕切り板21における流路の形状及び個数が同じでなくてもよい。すなわち、仕切り板21ごとに、流路の形状が異なっていてもよく、流路の個数が異なっていてもよく、流路の形状と個数とが異なっていてもよい。また、越流深を測定する場合には、リアクター13は、未充填空間22の上方において開閉可能であってもよく、あるいは、未充填空間22の上方からリアクター13内部を観察可能な窓が設けられていてもよい。後者の場合には、その窓はマイクロ波を透過しないものであることが好適であるが、マイクロ波を透過するのであれば、マイクロ波の照射中には、マイクロ波を透過しないもので窓を覆っておき、観察中のみ、マイクロ波の照射を止め、その覆いをのけて観察するようにしてもよい。また、越流深を測定する場合には、例えば、仕切り板21の流路の位置に、越流深を測定するための目盛を設けていてもよい。
【0046】
また、リアクター13の最前段の室31、すなわち、外部から内容物が投入される室については、通常、図2等で示されるように、上方から内容物を投入するため、上述の(1)〜(3)のように、仕切り板21に関する条件や、傾斜角の条件は考慮する必要がない。しかし、最前段の室31においても、後段の室と同様に、横方向から内容物を流し込む場合には、前述のように、最前段の室31において、流入側の堰高(流路の底の高さ)が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深以上高くなるようにしてもよい。
【0047】
また、仕切り板21の流路として、仕切り板21の上方において内容物がオーバーフローする流路に加えて、仕切り板21の隙間において内容物が流れる流路が存在してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。すなわち、「内容物が仕切り板21の上方をオーバーフローで流れる」とは、少なくともそのオーバーフローの流路が存在すればよいという意味であり、他の流路が存在することを妨げるものではない。前者の場合、すなわち、仕切り板21の隙間において内容物が流れる流路が存在する場合には、その隙間は、図4Cで示されるように、仕切り板21に設けられた隙間27であってもよく、図4Dで示されるように、仕切り板21とリアクター13の間の隙間27であってもよく、あるいは、その両方であってもよい。なお、隙間27の形状や位置、個数は問わない。また、仕切り板21に隙間27が存在する場合に、その隙間27を通過する内容物が短絡して流れないようにすることが好適である。そのため、例えば、隣接する仕切り板21が、図4Cで示されるものと、図4Dで示されるものとになるように、両仕切り板21を交互に配置してもよい。また、仕切り板21に隙間27が存在する場合に、その隙間の流量をも考慮して越流深Hを算出してもよく、あるいは、前述のように、越流深Hを測定してもよい。また、仕切り板21に隙間27が存在する場合には、その隙間27の流路において、内容物の一部が下流側から上流側に流れることもありうる。
【0048】
また、傾斜させないリアクター13の各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高よりも流出側の仕切り板21における越流深の5倍や10倍以上高くなるようにすることによっても、目的を達成することはできうる。しかしながら、そのようにすると、各室における液面の差が大きくなり、後段側になるにつれて内容量が少なくなり、リアクター13の処理量が減少することになる。したがって、各室において、流入側の堰高と、流出側の堰高との差は、流出側の仕切り板21における越流深以上である必要はあるが、極端に差が大きくならないようにすることが好適である。両者の堰高の差は、例えば、流出側の越流深の1〜3倍程度であってもよい。また、リアクター13を傾斜させる場合でも、傾斜角を大きくすると、各室における内容量が減ることになる。したがって、各室において、流入側の堰高と、流出側の堰高との差は、流出側の仕切り板21における越流深以上である必要はあるが、極端に差が大きくならない程度の傾斜角とすることが好適である。この場合にも、例えば、両者の堰高の差が、流出側の越流深の1〜3倍程度となるように傾斜させてもよい。なお、各室において、内容物の流入や流出があるため、各室の液面は多少上下することがありうる。そのため、安全サイドとなるように、各室において、流入側の堰高と、流出側の堰高との差が、流出側の越流深の2〜3倍程度となるように仕切り板21を設計したり、リアクター13を傾斜させたりしてもよい。また、撹拌手段23による撹拌を行う場合には、撹拌を行わない状況における越流深Hを用いて、仕切り板21を設計したり、リアクター13を傾斜させたりしてもよい。
【0049】
ここで、具体的な越流深等の計算例について説明する。流量Q=1000(リットル/時間)≒2.78×10−4(m3/s)、流路の底側の幅a=0.01(m)、流路の上辺側の幅b=0.1(m)、流路の高さe=0.05(m)、流量係数C=0.6、流路の個数N=3、重力加速度g=9.807(m/s2)とすると、
H=0.017(m)
となる。なお、Hは、数値計算により求めた。したがって、上述の(1)の場合には、各室において、上流側の仕切り板21の堰高が、下流側の仕切り板21の堰高よりも1.7cm以上高くなるようにすればよい。そのため、例えば、リアクター13の仕切り板21の堰高が、下流側に向かって2cmずつ低くなるように仕切り板21を設計してもよい。また、上述の(2)の場合であって、各室の長さL=0.5(m)である場合には、θ=0.035(rad)=2.0°となる。したがって、リアクター13を2°傾斜させればよいことになる。
【0050】
次に、本実施の形態による化学反応装置1の動作について簡単に説明する。原料と触媒とは、ポンプ11によって混合部12に供給される。そして、混合部12において混合され、リアクター13に投入される。そのリアクター13への原料等の供給速度は、前述の流量Qに応じた速度となることが好適である。
【0051】
リアクター13に供給された原料等は、撹拌手段23によって撹拌されながら、上流側から下流側に流れていく。また、マイクロ波発生器14が発生したマイクロ波が導波管15を介してリアクター13の未充填空間22に伝送され、原料等に照射される。その際に、前述のように、越流が連続することがないため、内容物が短絡して流通することを防止でき、効率よく内容物に対してマイクロ波を照射することができる。そのマイクロ波によって原料等が加熱されることになり、原料等の反応が促進されることになる。なお、各室31〜34の温度は、温度測定部25によって測定され、図示しない経路によって、マイクロ波制御部16に渡される。そして、マイクロ波制御部16は、各室31〜34の温度が所望の温度または所望の温度幅となるようにマイクロ波発生器14の出力を制御する。
【0052】
リアクター13から出力された生成物は、触媒分離部17に投入され、触媒が分離される。そして、触媒の分離された生成物がポンプ11によって処理液貯留槽18に投入され、処理液貯留槽18において、目的とする製造物と副生成物とに分けられる。このようにして、最終的な製造物が得られることになる。また、このような処理が繰り返して実行されることにより、目的とする製造物が順次、生成されていくことになる。
【0053】
なお、触媒分離部17における触媒の分離の処理や、処理液貯留槽18における製造物と副生成物との分離の処理は、生成物が投入されるごとに順次、行ってもよく、あるいは、投入された生成物が一定の分量だけたまってから、一括して行ってもよい。すなわち、リアクター13における処理はフロー式(流通式)で処理されるが、その後段の触媒分離部17や処理液貯留槽18における処理は、フロー式で処理されてもよく、あるいは、バッチ式で処理されてもよい。
【0054】
また、本実施の形態による化学反応装置1において行われる化学反応は、マイクロ波の照射自体、あるいは、マイクロ波の照射に応じた加熱によって引き起こされる化学反応であれば、どのようなものであってもよい。例えば、エステル化やエステル交換によるバイオディーゼル燃料の生成であってもよく、エステルであるインク原料の生成であってもよく、その他の化学反応であってもよい。
【0055】
次に、本実施の形態による化学反応装置1を用いて廃油からバイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)を生成する場合について説明する。なお、本発明がこの反応に限定されないことは言うまでもない。
【0056】
(反応システム構築例)
原料として、油脂と遊離脂肪酸との混合物、及びアルコールを用いる。アルコールは、反応剤である。その原料と触媒とは、それぞれポンプ11で混合部12へ送られ、均一に混合される。その混合液はリアクター13へ供給される。リアクター13内の混合液に対して、マイクロ波発生器14から発生したマイクロ波が照射され、エステル化反応が促進される。また、そのリアクター13内の混合液は、リアクター13内の仕切り板21で仕切られた各室31〜34に充填される。混合液は触媒と共に撹拌手段23によって撹拌されながらマイクロ波の照射によって反応が進行する。マイクロ波はリアクター13内部に存在する未充填空間22に対して照射され、リアクター13内部へ拡散する。各室内の反応液は仕切り板21に設けられた流路により次段の室へ移動する。反応液はリアクター13内で一定の滞留時間を保持した後、リアクター13外へ排出される。リアクター13から排出された反応後の混合液は触媒分離部17に供給され、その触媒分離部17において触媒が分離されて処理液貯留槽18へ充填される。触媒分離後の反応液は処理液貯留槽18において副生成物である水、グリセリンと分離され、目的物である粗メチルエステルが取り出される。リアクター13のマイクロ波出力は各室31〜34の内部温度によるフィードバック制御を行い、各室31〜34の温度を一定に保つ。例えば、反応温度を70℃に設定してもよい。
【0057】
以上のように、本実施の形態による化学反応装置1によれば、仕切り板21の流路の高さを変更することや、リアクター13を傾斜されること、または、その両方によって、各室の越流が水平方向に連続しないようにすることができる。したがって、内容物が短絡して流れることを防止することができ、内容物に対して適切にマイクロ波を照射することができる。その結果、未反応の内容物がリアクター13から出力されないようにすることができ、化学反応装置1における収率を向上させることができうる。また、撹拌手段23を用いてリアクター13内部で内容物を撹拌することによって、マイクロ波の浸透深さがあまり深くない場合であっても、内容物に対して均等にマイクロ波を照射することができるようになりうる。また、リアクター13が複数の室に分かれていることによって、内容物が各室に滞留しながら反応することになるため、各室において、内容物にマイクロ波を効果的に照射することができうるようになる。また、固体触媒がマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する場合には、マイクロ波の照射によって、固体触媒が効率よく加熱されることになり、固体触媒の近傍での化学反応を促進することができる。このように、リアクター13内部での化学反応が促進されることによって、より効率よく生成物を得ることができるようになる。
【0058】
なお、本実施の形態では、図3A、図3Bで示されるように、内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変であるリアクター13の形状が、リアクター13の側面が液面の法線方向に延びているものである場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。リアクター13の側面が液面の法線方向とは異なる方向に延びている場合でも、リアクター13の形状は、内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変であってもよい。例えば、図10で示されるように、リアクター13を傾斜させて設置した場合には、そのようになりうる。
【0059】
また、図2では、室ごとに撹拌手段23が存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。複数の室において、単一または複数の撹拌手段23が存在してもよい。化学反応装置1が単一の撹拌手段23を有する場合には、前述のように、その撹拌手段23は、複数の室において共通して用いられるシャフト(回転軸)を有するものであってもよい。その場合には、撹拌手段23は、回転軸と、複数の回転部材と、回転手段とを備えるものであってもよい。回転軸は、リアクター13の流れ方向に延びる軸である。例えば、図2において、回転軸は、リアクター13の左端の面から、右端の面まで延びていてもよい。その回転軸は、リアクター13の底面に平行に設けられていてもよい。この回転軸は、例えば、マイクロ波透過性の材料で構成されたものであってもよく、マイクロ波吸収性の材料で構成されたものであってもよく、マイクロ波反射性の材料で構成されたものであってもよく、あるいは、それらの任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されたものであってもよい。回転軸がマイクロ波反射性の材料(例えば、金属など)で構成されている場合には、回転軸にマイクロ波が照射されることによってマイクロ波が反射されることになる。したがって、そのような場合に、リアクター13内において、内容物の液面よりも上方に回転軸が存在すると、その回転軸によって一部のマイクロ波が反射され、その反射された分だけ内容物に照射されないことになる。したがって、そのような事態を回避するためには、内容物の液面が、回転軸よりも上方になる位置する、すなわち、内容物中に回転軸が存在することが好適である。また、回転軸がマイクロ波吸収性の材料で構成されている場合には、回転軸にマイクロ波が照射されることによってマイクロ波が吸収されることになる。したがって、そのような場合に、リアクター13内において、内容物の液面よりも上方に回転軸が存在すると、その回転軸によって一部のマイクロ波が吸収され、その吸収された分だけ内容物に照射されないことになる。また、回転軸が異常に加熱する可能性もある。したがって、そのような事態を回避するためには、内容物の液面が、回転軸よりも上方になる位置する、すなわち、内容物中に回転軸が存在することが好適である。したがって、内容物の液面が、回転軸よりも上方になるように内容物の量を制御してもよく、また、リアクター13は、少なくとも回転軸よりも上方側において、液面方向の断面積が変化しない形状を有していてもよい。例えば、図3Cで示されるように、液面の面積が不変となる範囲R1の最下位の液面の高さが、回転軸28がちょうど内容物で覆われる高さであるようにしてもよい。そのようにすることで、液面が範囲R1内である場合には、液面の面積は不変であり、かつ、液面は回転軸28よりも上に存在することになる。なお、図3Cにおいて、リアクター13の下部の半円筒形状における半径は、回転軸28を中心に回転する回転部材の回転半径に応じた半径を有していることが好適である。その場合には、リアクター13の底部領域において、撹拌洩れの起こることを効果的に防止することができるからである。また、例えば、図3Dで示されるリアクター13では、内容物の液面の高さがすべての範囲R1である場合に、液面の面積は不変であるが、その液面の高さが、範囲R2内となるようにコントロールすることによって、液面の面積は不変であり、かつ、液面は回転軸28よりも上に存在するようにコントロールできる。なお、範囲R2の最下位の液面の高さが、回転軸28がちょうど内容物で覆われる高さであるとする。また、上方、下方とは、鉛直方向における上方や下方の意味である。また、リアクター13の流れ方向とは、リアクター13内の内容物の流れ方向であり、通常、リアクター13の長さ方向と同じである。回転部材は、回転軸を中心として回転する部材である。この回転部材が回転することによって、内容物が回転撹拌されることになる。なお、回転部材は、前述のように、例えば、羽根状の部材であってもよく、あるいは、翼状の部材や、棒状の部材等であってもよい。また、その回転部材は、各室に存在してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。回転部材の存在しない室があってもよい。また、一の室に二以上の回転部材が存在してもよい。撹拌手段23は、少なくとも1以上の回転部材を有するものであればよい。また、回転手段は、各回転部材を回転させる。回転部材が回転軸に固定されている場合には、回転手段は、その回転軸を回転させるものであってもよい。その場合には、回転手段は、例えば、モータや、エンジン等であってもよい。また、回転軸が回転部材を回転可能に支持し、回転軸自体は回転しないものであってもよい。その場合には、回転手段は、例えば、磁石を有する回転部材を磁力によって回転させるものであってもよい。具体的には、永久磁石である回転子(ロータ)を、その回転子の周りに設けられた電磁石の固定子(ステータ)で回転させるタイプのモータと同様に、回転部材(回転子)を、回転手段(固定子)によって回転させてもよい。なお、その場合に、固定子である回転手段は、リアクター13の外部に存在することが好適であるが、そうでなくてもよい。リアクター13の材質によっては、リアクター13の外部に固定子である回転手段を設けることができないこともあるからである。また、撹拌手段23が複数の室にわたる回転軸を有する場合には、仕切り板21には、その回転軸が貫通する孔が存在してもよい。また、複数の室を貫く回転軸が存在する場合に、仕切り板21の隙間27の位置をその回転軸が貫通してもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、内容物の量が所定の範囲内である場合に、リアクター13は、その内容物の液面方向の断面が変化しない形状を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。結果として、内容物の量が所定の範囲内である場合に、リアクター13が内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変である形状を有するのであれば、内容物の液面方向の断面が変化しない形状を有していなくてもよい。具体的には、内容物の液面方向の断面が、液面の高さに応じて、ある形状(例えば、矩形等)から、別の形状(例えば、台形等)に変化したとしても、内容物の液面方向の断面の面積が、各液面の高さにおいて同じであるのであれば、リアクター13が、内容物の液面方向の断面が変化する形状を有していたとしても、内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変である形状を有していることになる。
【0061】
また、本実施の形態では、リアクター13の形状が、内容物の量が所定の範囲内である場合に、内容物の量の変化に応じて液面の高さが変化しても、その液面の面積が不変である形状を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。内容物の量の変化に応じて、液面の面積が変化してもよい。
【0062】
また、本実施の形態において、撹拌手段23の有する回転軸や回転手段の個数は問わない。例えば、単数の回転軸、回転手段によって、1以上の回転部材が回転されてもよく、2以上の回転軸や2以上の回転手段を用いて、2以上の回転部材が回転されてもよい。
【0063】
なお、本実施の形態では、原料と触媒とを混合する混合部12が存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、あらかじめ混合された原料と触媒とを用いる場合や、リアクター13において混合をも行う場合、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっている場合、または、リアクター13内を流れる固体触媒に代えて固定床の固体触媒を用いる場合などには、化学反応装置1は、混合部12を備えなくてもよい。なお、固定床の固体触媒を用いる場合には、通常、その固定床の固体触媒はリアクター13の内部に存在することになる。その固定床の固体触媒は、例えば、リアクター13の内壁に貼着されたものであってもよく、あるいは、リアクター13の内部において触媒充填層やカラム等に充填されることによって固定されたものであってもよい。その固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状(中空であってもよく、そうでなくてもよい)、球状、ペレット状、リング状、シェル状、ハニカム状、発泡体状、繊維状、布状、板状、あるいは、その他の形状であってもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、リアクター13が、図2で示されるように、直列に連続した4個の室31〜34を有する場合について説明したが、この室の個数は問わない。通常、室の数が多いほど、リアクター13の流入孔から流出孔に対して原料が短絡して流れることを効果的に防止できる。また、その室の数の増減に応じて室の容積が変わらない場合には、室の数が多いほど、リアクター13の内容物がリアクター13に流入してから流出するまでの滞留時間が長くなり、室の数が少ないほど、その滞留時間が短くなる。したがって、その場合には、所望の滞留時間となるように、その室の個数を調整することができうる。
【0065】
また、本実施の形態では、複数のマイクロ波発生器14を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、図11で示されるように、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波を、分岐を有する導波管15によって、複数の箇所に伝送してもよい。複数の箇所は、例えば、複数の室であってもよい。なお、図11では、化学反応装置1が一のマイクロ波発生器14のみを備えている場合について示しているが、化学反応装置1が2以上のマイクロ波発生器14を備えている場合に、その複数のマイクロ波発生器14のいずれかで発生されたマイクロ波が、分岐を有する導波管15によって複数の箇所に伝送されてもよい。例えば、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が複数の室に伝送される場合には、マイクロ波制御部16は、そのマイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が伝送される各室の温度のいずれか、あるいは、すべてを用いて、そのマイクロ波発生器14の出力を制御してもよい。例えば、マイクロ波制御部16は、各室のすべての温度の平均を用いて制御を行ってもよく、各室の温度の最高値または最低値を用いて制御を行ってもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、化学反応装置1が温度測定部25とマイクロ波制御部16とを備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、マイクロ波の出力をあらかじめ決められた値にすることによって、リアクター13の内部の温度を所望の温度や温度幅に維持することができる場合には、温度を用いたマイクロ波の出力の制御を行わなくてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、リアクター13の後段に触媒分離部17を備えた場合について説明したが、そうでなくてもよい。他の装置によって触媒を分離する場合や、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっている場合、リアクター13内を流れる固体触媒に代えて固定床の固体触媒を用いる場合、リアクター13での化学反応に触媒を用いない場合などのように、本実施の形態による化学反応装置1において触媒の分離を行わなくてもよい場合には、触媒分離部17を備えていなくてもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、原料と触媒とが混合されてリアクター13に投入される場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、原料のみがリアクター13に投入されてもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合には、リアクター13の内部を、原料のみが流れてもよい。すなわち、リアクター13の内容物は、例えば、複数の原料の混合物であってもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合であっても、例えば、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっているときには、リアクター13の内部を原料と触媒とが流れてもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合には、混合部12は、例えば、原料を混合させてもよく、あるいは、原料(基質)と反応剤とを混合させてもよい。また、その原料等の混合が必要ない場合には、前述のように、化学反応装置1は、混合部12を備えていなくてもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、リアクター13内の原料を撹拌する1以上の撹拌手段23を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、リアクター13がマイクロ波を原料の全体に容易に照射することができるような構成である場合(例えば、リアクター13の内径が小さい場合等)には、撹拌手段23がなくてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、化学反応装置1が処理液貯留槽18を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、化学反応装置1から出力された生成物や副生成物が混合したものについて、他の装置において生成物の抽出等が行われてもよい。
【0071】
また、本実施の形態において、化学反応装置1は2以上のマイクロ波発生器14を備えており、その2以上のマイクロ波発生器14は、2以上の周波数のマイクロ波を発生してもよい。すなわち、リアクター13の内容物に対して、2以上の周波数のマイクロ波が照射されてもよい。その場合において、2以上の周波数のマイクロ波を同じ位置において照射してもよく、2以上の周波数のマイクロ波をそれぞれ異なる位置において照射してもよい。例えば、図12Aで示されるように、リアクター13の同じ位置において、すなわちリアクター13の中流域において、マイクロ波発生器14a、14dがそれぞれ発生した周波数X,Yのマイクロ波を照射してもよい。なお、周波数X,Yのマイクロ波はそれぞれ、導波管15a,15dを介してリアクター13に伝送される。また、例えば、図12Bで示されるように、リアクター13の上流側から中流域において、マイクロ波発生器14a、14b、14cが発生した周波数Xのマイクロ波を照射し、リアクター13の下流側において、マイクロ波発生器14dが発生した周波数Yのマイクロ波を照射してもよい。なお、周波数Xのマイクロ波はそれぞれ、導波管15a,15b,15cを介してリアクター13に伝送される。また、周波数Yのマイクロ波は、導波管15dを介してリアクター13に伝送される。ここで、図12A、図12Bは、それぞれリアクター13を上方から見た図であり、図中の矢印は、リアクター13内における内容物の流れを示すものである。なお、2以上の周波数のマイクロ波が照射される場合に、その周波数の個数は、2個であってもよく、あるいは、3個以上であってもよい。その2以上の周波数は、300MHzから300GHzの範囲から選択される2以上の周波数であればどのような組み合わせであってもよい。例えば、2個の周波数のマイクロ波が照射される場合に、その周波数の組み合わせは、2.45GHzと5.8GHzであってもよく、2.45GHzと24GHzであってもよく、2.45GHzと913MHzであってもよく、5.8GHzと24GHzであってもよく、5.8GHzと913MHzであってもよく、24GHzと913MHzであってもよい。また、2以上の周波数のマイクロ波を照射する場合に、それらを照射するタイミングは問わない。例えば、2以上の周波数のマイクロ波を同時に照射してもよく、あるいは、周波数ごとに照射する期間が異なるようにマイクロ波を照射してもよい。例えば、後者の場合には、ある期間には周波数Xのマイクロ波が照射され、次の期間には周波数Yのマイクロ波が照射されてもよい。また、2以上の周波数のマイクロ波が照射される場合に、2以上の周波数のマイクロ波が一の未充填空間22に導入されてもよく、あるいは、各周波数のマイクロ波がそれぞれ異なる未充填空間22に導入されてもよい。後者の場合には、リアクター13において、仕切り板21によって分断された未充填空間22が少なくとも2以上存在することになる。なお、2以上の周波数のマイクロ波を照射した場合には、1個の周波数のマイクロ波の照射ではマイクロ波の作用(例えば、加熱等)の対象とならなかった物質に対してもマイクロ波を作用させることができ、より幅の広い物質に対してマイクロ波を作用させることができるようになる。
【0072】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0073】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0074】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
【0075】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上より、本発明による化学反応装置によれば、内容物の短絡を防止できるという効果が得られ、例えば、マイクロ波の照射を行う化学反応装置として有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 化学反応装置
12 混合部
13 リアクター
14、14a〜14d マイクロ波発生器
15、15a〜15d 導波管
16 マイクロ波制御部
17 触媒分離部
18 処理液貯留槽
21 仕切り板
23 撹拌手段
25 温度測定部
28 回転軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクターにおいてマイクロ波を照射する化学反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応物質に対してマイクロ波(電磁波)を照射することにより、熱処理等を行う化学反応装置や化学反応方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−516008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような従来の化学反応装置において、未反応の内容物が出力されることを防止したいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、横型のフロー式のリアクターにおいて、内容物の短絡を防止することによって、未反応の内容物が出力されることを防止できる化学反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による化学反応装置は、内部が複数の仕切り板によって複数の室に仕切られており、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式のリアクターと、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、マイクロ波発生器の発生したマイクロ波を、リアクターの未充填空間に伝送する1以上の導波管と、を備え、内容物は、仕切り板の上方をオーバーフローで流れるものであり、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高い、ものである。
このような構成により、各仕切り板における越流の少なくとも一部が同じ高さになることがない。したがって、越流がつながることを防止でき、内容物の短絡を防止することができる。その結果、未反応の内容物が出力されることを防止できる。
【0007】
また、本発明による化学反応装置では、リアクターにおける各仕切り板の堰高は、リアクターが傾斜していない場合に同じであり、リアクターは、内容物が流れる場合には、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高くなるように傾斜されていてもよい。
このような構成により、仕切り板の堰高が同じであったとしても、リアクターを傾斜させることによって、内容物が短絡しないようにすることができる。
【0008】
また、本発明による化学反応装置では、複数の仕切り板における流路の形状及び個数はすべて同じであり、傾斜の角度は、次式θ=sin−1(H/L)〔ただし、Lは、各室におけるリアクターの長さ方向の長さのうち、最も短い長さであり、Hは、次式で求められる越流深である。
【数1】
ただし、Qは流量であり、aは台形状の流路の底側の幅であり、bは台形状の流路の上辺側の幅であり、eは台形状の流路の底から上辺までの高さであり、Cは流量係数であり、Nは1個の仕切り板が有する台形状の流路の個数であり、gは重力加速度である〕で算出されるθ以上であってもよい。
このような構成により、流量や仕切り板の流路の形状を決めることによって、リアクターの傾斜角を算出することができる。そして、その傾斜角に応じてリアクターを傾斜させることによって、内容物の短絡を防止することができる。
【0009】
また、本発明による化学反応装置では、リアクターは、傾斜していないものであり、各室において、流入側の仕切り板の流路の底の高さは、流出側の仕切り板の流路の底の高さより、流出側の仕切り板における越流深以上高くてもよい。
このような構成により、リアクターを傾斜させない場合であっても、仕切り板の流路の高さを適宜、設定することによって、内容物が短絡しないようにすることができる。
【0010】
また、本発明による化学反応装置では、越流深は、次式
【数2】
〔ただし、Qは流量であり、aは台形状の流路の底側の幅であり、bは台形状の流路の上辺側の幅であり、eは台形状の流路の底から上辺までの高さであり、Cは流量係数であり、Nは1個の仕切り板が有する台形状の流路の個数であり、gは重力加速度である〕で算出されるHであってもよい。
このような構成により、流量や仕切り板の流路の形状を決めることによって、越流深を算出でき、隣接する仕切り板における流路の底の高さの差を知ることができる。そして、その仕切り板の流路の底の高さの差に応じて仕切り板の流路を構成することによって、内容物の短絡を防止することができる。
【0011】
また、本発明による化学反応装置では、リアクター内の内容物を回転撹拌する1以上の撹拌手段をさらに備えてもよい。
このような構成により、内容物が撹拌されることによって、リアクター内の内容物に対して、より均一にマイクロ波を照射することができるようになる。その結果、例えば、リアクター内の一部の内容物にだけマイクロ波が照射されるような事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による化学反応装置によれば、横型のフロー式のリアクターにおいて、内容物の短絡を防止することができ、未反応の内容物が出力されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1による化学反応装置の構成を示す図
【図2】同実施の形態におけるリアクターの内部の構成の一例を示す図
【図3A】同実施の形態におけるリアクターの形状の一例を示す斜視図
【図3B】同実施の形態におけるリアクターの形状の一例を示す斜視図
【図3C】同実施の形態におけるリアクターの形状の一例を示す斜視図
【図3D】同実施の形態におけるリアクターの形状の一例を示す斜視図
【図4A】同実施の形態における仕切り板の形状の一例を示す図
【図4B】同実施の形態における仕切り板の形状の一例を示す図
【図4C】同実施の形態における仕切り板の形状の一例を示す図
【図4D】同実施の形態における仕切り板の形状の一例を示す図
【図5A】同実施の形態における流路の形状の一例を示す図
【図5B】同実施の形態における流路の形状の一例を示す図
【図5C】同実施の形態における流路の形状の一例を示す図
【図6A】同実施の形態における仕切り板と越流との関係について説明するための図
【図6B】同実施の形態における仕切り板と越流との関係について説明するための図
【図6C】同実施の形態における仕切り板と越流との関係について説明するための図
【図7】同実施の形態における台形状の流路を示す図
【図8】同実施の形態における仕切り板と越流との関係について説明するための図
【図9】同実施の形態における越流深や傾斜角等の関係について説明するための図
【図10】同実施の形態における傾斜されたリアクターの内部の構成の一例を示す図
【図11】同実施の形態におけるマイクロ波発生部と導波管の他の一例を示す図
【図12A】同実施の形態におけるマイクロ波の照射位置について説明するための図
【図12B】同実施の形態におけるマイクロ波の照射位置について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による化学反応装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による化学反応装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による化学反応装置は、リアクターの内容物に対してマイクロ波を照射するものである。
【0016】
図1は、本実施の形態による化学反応装置1の構成を示す図である。本実施の形態による化学反応装置1は、混合部12と、リアクター13と、マイクロ波発生器14と、導波管15と、マイクロ波制御部16と、触媒分離部17と、処理液貯留槽18とを備える。
【0017】
混合部12は、原料と固体触媒とを混合させる。混合部12は、原料等と反応剤とを混合させてもよい。原料は、複数の物質を含むものであってもよい。例えば、リアクター13においてエステル化を行う場合には、油脂とアルコールが原料であってもよい。その原料と、固体触媒とは、図1で示されるように、ポンプ11によって混合部12に供給されてもよく、あるいは、他の方法によって混合部12に供給されてもよい。混合部12は、例えば、羽根状の部材や翼状の部材、スクリュー状の部材を回転させることによって、2以上の物質を混合してもよい。なお、本実施の形態では、原料と混合される触媒が固体触媒(不均一系触媒)である場合について説明するが、触媒は液状の触媒(均一系触媒)であってもよい。また、固体触媒は、リアクター13内で流動床を形成してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。また、その固体触媒の形状は問わない。固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状(中空であってもよく、そうでなくてもよい)、球状、ペレット状、リング状、シェル状等であってもよい。また、その固体触媒は、例えば、マイクロ波吸収性もしくはマイクロ波感受性を有してもよく、または、そうでなくてもよい。固体触媒がマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する場合には、後述するリアクター13の内部においてマイクロ波を照射した際に、固体触媒がマイクロ波によって加熱されることになり、その固体触媒近傍での化学反応が促進されることになる。なお、そのマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性については、照射されるマイクロ波の周波数やリアクター13の内部の温度等に依存することになる。すなわち、使用するマイクロ波の周波数、及び原料を反応させるリアクター13の内部の温度において、誘電損失係数の高いものがマイクロ波吸収性の高いものとなる。したがって、例えば、そのようなマイクロ波吸収性の高い物質を含む固体触媒を用いるようにしてもよい。例えば、2.45GHzのマイクロ波が照射される場合には、マイクロ波吸収性を有する物質として、フラーレンを除くカーボン類(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、または活性炭など)や、鉄、ニッケル、コバルト、またはフェライト等がある。したがって、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性を有する物質を含むものであってもよい。具体的には、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよく、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒とを組み合わせたコンポジットであってもよく、または、マイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよい。そのコンポジット化は、例えば、物理吸着によって行われてもよく、化学結合によって行われてもよく、合金化によって行われてもよく、または、その他の方法によって行われてもよい。また、混合部12において、リアクター13での反応に備えて、予備的な加熱を行ってもよく、あるいは、行わなくてもよい。その予備的な加熱を行う場合には、原料等がリアクター13に入る時点において所望の温度または所望の温度幅となるように、混合部12における予備的な加熱の温度が制御されることが好適である。なお、混合部12での予備加熱が行われない場合には、その予備加熱に対応する加熱がリアクター13において行われてもよい。混合部12で混合された原料と固体触媒は、リアクター13の上流側に入れられる。
【0018】
リアクター13は、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式の反応器である。なお、リアクター13において内容物が水平方向に流れるとは、リアクター13が、内容物が鉛直方向に流れる縦型のフロー式の反応器ではないことを意味するものであり、厳密に水平方向に流れなくてもよい。内容物が全体として水平に近い方向に流れるものであればよい。その内容物は、例えば、原料と触媒との混合物である。そのリアクター13の内部を、混合部12で混合された、原料と触媒とが流れることになる。なお、リアクター13における化学反応によって、原料から生成物が生成されるため、リアクター13の内容物には生成物が含まれていると考えてもよい。すなわち、その内容物は、原料及び/または生成物であると言うこともできる。また、内容物の上方に未充填空間が存在するため、内容物は通常、気体以外のものである。また、内容物は、リアクター13内部において、流動性を有するものであり、また、液面が平らになるものであるため、固体(例えば、粉体や粒状体等)以外のものである。したがって、内容物は、液状のものである。その液状の内容物は、例えば、水や油、水溶液、コロイド溶液等のように、流動性の高いものであってもよく、あるいは、スラリーや懸濁液のように、流動性の低いものであってもよい。なお、リアクター13内部において、内容物の液面は水平であることが好適であるため、液状の内容物は、流動性が低かったとしても、外部から振動を加えることなく、ある程度の時間の経過に応じて液面が水平になる程度の流動性を有していることが好適である。すなわち、液状の内容物は、外部からの振動がなくても、表面が変形しうる程度の流動性を有していることが好適である。なお、液面の水平状態は、完全な平坦であってもよく、または、細かい凹凸があったとしても全体として平坦であるといった程度であってもよい。内容物の流動性が高くない場合には、完全な平坦にならないこともありうるからである。リアクター13の内壁は、マイクロ波を反射する物質で構成されていることが好適である。マイクロ波を反射する物質としては、例えば、金属がある。このリアクター13の内部の構成については後述する。
【0019】
マイクロ波発生器14は、マイクロ波を発生する。本実施の形態による化学反応装置1は、1個のマイクロ波発生器14を備えていてもよく、あるいは、2個以上のマイクロ波発生器14を備えていてもよい。そのマイクロ波の周波数は限定されるものではないが、例えば、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、24GHzであってもよく、913MHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。
【0020】
1以上の導波管15は、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波を、リアクター13の未充填空間に伝送する。導波管15は、図1で示されるように、マイクロ波発生器14の個数と同じ個数だけ存在してもよい。また、導波管15は、分岐を有し、未充填空間の2以上の位置にマイクロ波を伝送してもよい。なお、導波管15は、マイクロ波発生器14が発生するマイクロ波の周波数に応じた規格のものを使用することが好適である。
【0021】
マイクロ波制御部16は、後述する温度測定部25が測定した温度に応じて、リアクター13に照射するマイクロ波の出力を制御する。このマイクロ波制御部16による制御によって、リアクター13の内部を所望の温度または所望の温度幅に維持することが可能となる。
【0022】
触媒分離部17は、リアクター13における反応後の生成物から触媒を分離する。原料と混合された触媒が固体触媒である場合には、例えば、フィルタによって固体触媒を分離してもよく、固体触媒と生成物の一方を沈澱させることによって固体触媒を分離してもよい。また、固体触媒が磁性体を含むものである場合には、磁石(永久磁石でもよく、電磁石でもよい)によって固体触媒を吸着することによって、固体触媒を分離してもよい。なお、分離された固体触媒は、適宜、再利用することができうる。また、液体の触媒を用いた場合には、触媒分離部17において、蒸留や抽出、中和を行うことによって、触媒を分離してもよい。
【0023】
処理液貯留槽18には、触媒分離部17において触媒の分離された生成物が入れられる。そして、適宜、最終的な製造物と副生成物等に分けられることになる。例えば、原料が遊離脂肪酸であり、リアクター13においてエステル化が行われた場合には、バイオディーゼル燃料である製造物と、水である副生成物とが得られることになる。その場合には、酸触媒が用いられる。また、例えば、原料がトリグリセリドであり、リアクター13においてエステル交換が行われた場合には、バイオディーゼル燃料である製造物と、グリセリンである副生成物とが得られることになる。その場合には、アルカリ触媒が用いられる。
【0024】
なお、リアクター13の後段に、リアクター13での反応後の物質を冷却する図示しない冷却器を備えてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、その冷却器は、リアクター13での反応後の物質を水冷するものであってもよい。
【0025】
図2は、本実施の形態によるリアクター13の内部構造の一例を示す図である。図2において、リアクター13は、内部が複数の仕切り板21によって複数の室31,32,33,34に仕切られている。その複数の室31,32,33,34は、直列に連続した室である。前述のように、リアクター13の内部では、上方に未充填空間22が存在する。その未充填空間22に対して、導波管15を介して、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が照射されることになる。なお、図2では、リアクター13内部に単一の未充填空間が存在する場合、すなわち、すべての室31〜34において未充填空間が共有されている場合について示しているが、そうでなくてもよい。すなわち、未充填空間は、すべての室のうち、少なくとも一部の2以上の室において共有されていてもよく、あるいは、すべての室において共有されていなくてもよい(この場合には、各仕切り板21によって未充填空間が分断されていることになる)。各導波管15は、図2で示されるように、各室32,33,34の上流側の位置に設けられてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、一の導波管15によって未充填空間22に伝送されたマイクロ波が、その下方に存在する室に主に照射される。なお、マイクロ波は未充填空間を伝わるため、例えば、室32の位置の導波管15によって伝送されたマイクロ波が、未充填空間を介して室31や室33の内容物にも照射されることになる。なお、導波管15を仕切り板21の位置、すなわち、仕切り板21の上方の位置に設けてもよい。そのようにすることで、一の導波管15によって未充填空間22に伝送されたマイクロ波が、その導波管15に対応する位置の仕切り板21で区切られる2個の室に主に照射されることになる。なお、未充填空間22が複数の室で共有されている場合には、その共有されている未充填空間22に伝送されたマイクロ波は、その未充填空間22を共有している複数の室の内容物20に対して照射されることになる。仕切り板21は、マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、あるいは、マイクロ波を反射するものであってもよい。マイクロ波を透過する材料としては、例えば、テフロン(登録商標)や、石英ガラス、セラミック、窒化珪素アルミナ等がある。したがって、マイクロ波透過性の仕切り板21は、そのようなマイクロ波を透過する材料で構成されたものであってもよい。また、マイクロ波を吸収する材料としては、例えば、フラーレンを除くカーボン類等がある。したがって、マイクロ波吸収性の仕切り板21は、そのようなマイクロ波を吸収する材料で構成されたものであってもよい。また、マイクロ波を反射する材料としては、例えば、金属がある。したがって、マイクロ波を透過しない仕切り板21は、そのようなマイクロ波を反射する材料で構成されたものであってもよい。また、仕切り板21は、マイクロ波透過性の材料、マイクロ波吸収性の材料、マイクロ波反射性の材料のうち、任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されてもよい。
【0026】
また、図2で示されるように、化学反応装置1は、撹拌手段23をさらに有してもよい。すなわち、本実施の形態による化学反応装置1は、リアクター13内の内容物20を回転撹拌する1以上の撹拌手段23をも有してもよい。図2では、各室31〜34に撹拌手段23が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。1以上の室に撹拌手段23が存在しなくてもよい。また、図2では、撹拌手段23が羽根状のものである場合について示しているが、これは撹拌手段23を模式的に示したものであり、その撹拌は、例えば、羽根状、翼状、あるいは、棒状の回転部材が回転されることによって行われてもよい。その回転部材は、マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、マイクロ波反射性のものであってもよく、あるいは、マイクロ波透過性の材料、マイクロ波吸収性の材料、マイクロ波反射性の材料のうち、任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されたものであってもよい。その回転は、例えば、シャフトに装着された回転部材がシャフトの回転に応じて回転されることによって行われてもよく、あるいは、マグネティックスターラーのように、磁性を用いて回転部材が回転されてもよい。シャフトを用いる前者の場合には、そのシャフトは室ごとに独立したものであってもよく、あるいは、複数の室において共通して用いられるものであってもよい。磁性を用いる後者の場合には、棒状や羽根状、翼状等の回転部材(磁性撹拌子)が、磁石によって回転されることになる。なお、撹拌手段23による内容物の撹拌が、内容物を上流から下流の方向、もしくは、逆の方向に流すために用いられてもよく、または、そうでなくてもよい。なお、回転撹拌については、すでに公知であり、それらの詳細な説明を省略する。
【0027】
ここで、撹拌手段23がリアクター13の内容物を回転撹拌する理由について簡単に説明する。撹拌手段23が内容物を撹拌する第1の理由は、マイクロ波によって内容物が均一に加熱されるようにするためである。内容物の種類や内容物の温度にも依存するが、あるマイクロ波が浸透する深さは決まっているため、内容物の全体に均一にマイクロ波が照射され、均一に加熱されるように撹拌することになる。また、未充填空間22における内容物の表面積が大きくなると、マイクロ波をより効率よく内容物に照射することができるようになる。したがって、内容物を撹拌する第2の理由は、マイクロ波の照射面積をより広くするためである。そのため、撹拌手段23による内容物の撹拌は、未充填空間22における内容物の表面に波が起こる程度の激しさであることが好適であるが、そうでなくてもよい(第1の理由に応じた撹拌が行われるのであれば、結果として内容物の全体が加熱され、それで十分である場合もあるからである)。また、このように、撹拌手段23を用いて原料等の撹拌を行うため、原料に密度の異なる2以上の物質が含まれている場合であっても、両者を適切に混合して反応させることができるようになる。例えば、縦型のフロー式のリアクターにおいて、アルコールと廃油のように、密度の違うものを反応させようとしても、両者が容易に分離してしまうことになるが、本実施の形態のように横型のフロー式のリアクター13であって、撹拌手段23が存在する場合には、両者を適切に混合して反応させることができるようになる。
【0028】
また、図2で示されるように、リアクター13は、温度測定部25をも有してもよい。すなわち、本実施の形態による化学反応装置1は、リアクター13の内部の温度を測定する温度測定部25を備えていてもよい。リアクター13の内部の温度は、リアクター13の内容物の温度であることが好適である。図2では、各室31〜34に温度測定部25が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。1以上の室に温度測定部25が存在しなくてもよい。また、図2では、温度測定部25を模式的に示しているが、温度測定部25は、例えば、熱電対によって温度を測定してもよく、赤外線センサによって温度を測定してもよく、光ファイバーによって温度を測定してもよく、その他の方法によって温度を測定してもよい。温度測定部25が測定した温度(厳密に言えば、温度を示すデータである)は、マイクロ波制御部16に渡され、マイクロ波発生器14によるマイクロ波の出力の制御のために用いられる。その制御は、前述のように、各室31〜34の温度を所望の温度または所望の温度幅に維持するための制御である。例えば、図2で示されるように、仕切り板21の位置にマイクロ波が照射される場合には、その位置に照射されるマイクロ波の出力の制御を、例えば、マイクロ波が照射される位置の仕切り板21で区切られる2個の室の温度のうち、一方を用いて行ってもよく、あるいは、両者を用いて行ってもよい。前者の場合には、例えば、低い方の温度を用いて制御を行ってもよく、高い方の温度を用いて制御を行ってもよく、あるいは、あらかじめ決められた室の温度を用いて制御を行ってもよい。後者の場合には、例えば、両者の平均を用いて制御を行ってもよく、あるいは、両者の室の容量に応じた加重平均(室の容量に応じた重みを考慮した平均)を用いて制御を行ってもよい。
また、リアクター13の壁面は、断熱材で覆われていてもよい。そのようにすることで、リアクター13の内部の熱が外部に放出されることを防止することができる。
【0029】
図3A、図3Bは、本実施の形態によるリアクター13の形状の一例を示す図である。なお、図3A、図3Bにおいて、説明の便宜上、仕切り板21や撹拌手段23等を省略している。図3A、図3Bにおいて、本実施の形態によるリアクター13は、内容物の量の変化に応じて液面の高さが変化しても、液面の面積が不変である形状を有している。なお、「内容物の量の変化に応じて液面の高さが変化しても、液面の面積が不変である」とは、内容物の量が変化したとしても、液面の面積が不変であるような内容物の範囲が少なくとも存在する、という意味である。したがって、どのような内容物の量であったとしても、内容物の量に応じて液面の面積が不変であってもよく、あるいは、内容物の量が所定の範囲内である場合、すなわち、内容物の量が第1の量から第2の量(第2の量は、第1の量よりも多い量であるとする)までの間である場合に、内容物の量に応じて液面の面積が不変であってもよい。本実施の形態では、後者の場合について主に説明する。すなわち、本実施の形態では、リアクター13は、内容物の量が所定の範囲内である場合に、内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変である形状を有する。そのため、リアクター13は、例えば、図3A、図3Bで示されるように、内容物の量が所定の範囲内である場合に、内容物の液面方向の断面が変化しない形状を有していてもよい。なお、前述の第1の量は通常、内容物の下限値となり、第2の量は通常、内容物の上限値となる。また、内容物が第2の量である場合にも、内容物の上方に未充填空間が存在していることが必要である。リアクター13では、未充填空間を介してマイクロ波を照射するからである。また、前述のように、リアクター13内部において撹拌を行う場合には、液面が波立つこともありうるが、ここでの液面は、そのような波立ち等のない状態における液面である。
【0030】
図3Aでは、リアクター13は、流れ方向に延びる、下側に凸である半円筒形状を有している。すなわち、図3Aのリアクター13は、上面が開口した、下側に凸である半円筒形状と、その半円筒形状と同じ長さであり、下面が開口した直方体とをその開口において連続させた形状を有している。なお、その半円筒形状の開口と、直方体の開口とはそれぞれ同じ大きさ、形状であり、両者がその開口で連続していることによって、リアクター13が形成されることになる。言い方を変えれば、図3Aのリアクター13は、断面がU字型の側面と、断面がそのU字型の開口部を閉じる上面とを有する管形状であって、その管形状の両端の開口が、長さ方向に直角な平面で閉じられた形状を有している。その図3Aのリアクター13では、内容物の液面の高さが、例えば、レベル1やレベル2の高さのように、範囲R1内である場合には、液面の面積は不変である。なお、範囲R1の最下位の液面の高さが、リアクター13の上側の直方体形状の最下位の位置となる。
【0031】
図3Bでは、リアクター13は、直方体の形状を有している。その図3Bのリアクター13では、内容物の液面の高さが、例えば、レベル1やレベル2の高さのように、すべての範囲R1である場合に、液面の面積は不変である。すなわち、内容物がどのような量であったとしても、液面の面積は不変となる。
【0032】
次に、仕切り板21について説明する。リアクター13に入った原料等の内容物20は、各室31〜34の間を流通し、最終的に下流(図2のリアクター13の右端)から出力される。なお、その仕切り板21には、内容物が流通する流路が存在する。本実施の形態において、その流路は、仕切り板21の上方におけるオーバーフローの流路である。すなわち、本実施の形態では、内容物は、仕切り板21の上方をオーバーフローで流れることになる。その流路は、内容物がリアクター13の上流側(図2の左側)から、下流側(図2の右側)に向かって流れていく流路である。図4A、図4Bは、図3Aの形状のリアクター13に設けられた仕切り板21を、そのリアクター13の長さ方向から見た図である。それらの仕切り板21では、未充填空間22の位置に仕切りが存在せず、その位置(すなわち、仕切り板21の上方)を内容物が流れることになる。そのオーバーフローの流路は、図4Aのように3個であってもよく、図4Bのように1個であってもよく、あるいは、その他の個数(2個または4個以上)であってもよい。また、各流路の形状は、図4A、図4B、図5Aで示されるように台形状であってもよく、図5Bで示されるようにV字状(くさび形状)であってもよく、図5Cで示されるように四角形状(矩形状)であってもよく、あるいは、その他の形状(例えば、U字形状や、半円形状等)であってもよい。なお、仕切り板21が複数の流路を有する場合に、各流路の形状は異なっていてもよく、あるいは、同じであってもよい。また、仕切り板21が複数の流路を有する場合に、各流路の底(流路の最も低いところ)の高さは同じであることが好適である。その流路の底の高さの位置を「堰高」と呼ぶこともある。なお、図5A〜図5Cにおいて、左向きの矢印で示される位置が、堰高(流路の底の高さの位置)となる。その堰高は、鉛直方向における高さを示すものである。また、流路が矩形である場合に、その幅がリアクター13の幅と同じであってもよい。すなわち、その場合の仕切り板21は、上方の辺に切り込み(切り欠き)等の凹形状を有しておらず、リアクター13の幅全体が流路となる(全幅堰)。また、図4A、図4Bでは、その仕切り板21によって仕切られる2個の室において未充填空間22が共有される場合の仕切り板について示しているが、未充填空間22が共有されない場合には、未充填空間22の位置にも仕切り板21が存在してもよい。例えば、図4Aや、図4Bの仕切り板21において、台形状の流路の上辺よりも上側にも仕切り板が存在してもよい。すなわち、仕切り板21は、流路に応じた複数の台形状の孔を有するものであってもよい。その場合であっても、その孔である流路においては、内容物が、仕切り板21の上方をオーバーフローで流れている、と考えることができる。また、リアクター13が図3A以外の形状である場合には、その形状に応じた仕切り板21の形状となることは言うまでもない。また、リアクター13の内部に複数の仕切り板21が存在する場合に、各仕切り板21は、同じ形状であってもよく、あるいは、そうでなくてもよい。また、仕切り板21の厚さは、例えば、1〜20mm程度であり、各室の長さ(リアクター13の長さ方向の長さ)と比較して十分に小さいものである。
【0033】
(1)リアクターが傾斜しておらず、仕切り板に段差がある場合
次に、リアクター13が傾斜していない場合の仕切り板21の堰高について説明する。ここでは、室33に注目して説明するが、他の室についても同様である。図6Aの右側の仕切り板21で示されるように、オーバーフローの流路では、内容物20の高さが、仕切り板21の堰高よりも越流深Hだけ高くなる。越流深とは、仕切り板21の流路を内容物が流れる際における越流(オーバーフロー)の高さ、すなわち、堰高から内容物の最も高い位置までの高さ(鉛直方向の高さ)である。なお、図5A〜図5Cの図中において示されるHが越流深である。また、図6Aで示されるように、リアクター13が傾斜していない場合であって、室33の流入側(図中の左側)の仕切り板21と流出側(図中の右側)の仕切り板21との堰高が等しい場合には、室33の流入側の仕切り板21と流出側の仕切り板21との越流が同じ高さとなり、両仕切り板21の越流が左右方向に連続していることになる。そのため、内容物20の少なくとも一部が、その連続している越流によって、室33に留まることなく、室32から室34に移動する可能性がある。すなわち、図6Aの場合には、室33において、内容物20が短絡して流出する可能性がある。また、図6Bで示されるように、室33の流入側の仕切り板21の堰高が、流出側の仕切り板21の堰高より高いが、両仕切り板21の越流において少なくとも一部(図中の網掛け部分)が左右方向に連続している場合にも、内容物20の少なくとも一部が、その連続している越流部分によって、室33に留まることなく、短絡して流れる可能性がある。一方、図6Cで示されるように、室33の流入側の仕切り板21の堰高が、流出側の仕切り板21の堰高より、流出側の越流深Hだけ高い場合には、両仕切り板21の越流において、左右方向に連続しているところが存在しないことになる。この場合には、流入側の仕切り板21を介して室33に流入する際に、すべての内容物20が少なくとも下方向に移動することになる。そして、その移動による位置エネルギーの減少に応じて、室33に流入した内容物20は、室33の底部に向かって沈むことになると考えられる。そのため、図6Cの場合には、流入側の越流を介して室33に流入してきた内容物20がそのまま流出側の越流を介して流出してしまうことが、図6A、図6Bの場合と比較してほとんどなく、内容物20が短絡することを効果的に防止できると考えられる。したがって、リアクター13の各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深H以上高くなっていればよいことになる。そのようにすることで、各室における内容物20の短絡を防止することができる。そのようにするために、図6Cで説明したように、傾斜していないリアクター13の各室において、流入側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)が、流出側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)より、流出側の仕切り板21における越流深H以上高くなるような仕切り板21を用いるようにしてもよい。また、後述するように、リアクター13を傾斜させることによって、リアクター13の各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深H以上高くなるようにしてもよい。また、このように室33の流入側の仕切り板21の堰高が、流出側の仕切り板21の堰高より、流出側の越流深Hだけ高くすることによって、逆流を防止することもできる。なお、図6A〜図6Cにおいて、説明の便宜上、撹拌手段23や温度測定部25の記載を省略している。また、説明の便宜上、堰高より上側の仕切り板21も省略している。
【0034】
次に、その越流深Hについて説明する。ここで、仕切り板21が、図7で示される台形状の流路をN個有する場合について考える。なお、図7の台形状の流路において、台形状の流路の底側の幅aと上辺側の幅bとが等しい場合、すなわち、a=bの場合には、矩形状の流路となる。また、台形状の流路の底側の幅aが0の場合、すなわち、a=0の場合には、V字状の流路となる。なお、台形状の流路の高さをeとしており、z軸を越流の上面から鉛直下方向にとっている。この場合には、D(z)は、次式で示されるようになる。
【数3】
【0035】
また、ベルヌーイの定理v=(2gz)1/2を用いることにより、流量Qは、次式で示されるようになる。なお、gは重力加速度であり、Cは流量係数であり、vは流体の速度である。流量係数は、流路の形状ごとに決まるものであり、例えば、実験により算出してもよく、または、計算により算出してもよい。
【数4】
【0036】
この式に前述のD(z)を代入してzで積分すると、次式のようになる。
【数5】
そして、その式を書き換えると、次式のようになる。
【数6】
【0037】
この方程式を解くことによって、越流深Hを算出することができる。また、リアクター13における各仕切り板の流路の個数及び形状を同じとすることにより、各仕切り板21の越流深Hが等しくなる。したがって、隣接する仕切り板21において、流入側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)が、流出側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)より、その越流深H以上高くなるような仕切り板21を設計することにより、リアクター13内における短絡を防止することができ、未反応の内容物がリアクター13から出力されることを防止することができる。
【0038】
なお、最後段の室34における流出孔の高さについても、上述の堰高と同じ関係を有していることが好適である。すなわち、最後段の室34の流入側の仕切り板21の流路の底の高さ(堰高)が、流出孔の流路の底の高さより、その流出孔における越流深以上高くなるようになっていることが好適である。通常、仕切り板21における流路の形状と、最後段の室34の流出孔の形状とは異なることが多いため、その流出孔の越流深については、仕切り板21の越流深Hとは別途、計算するようにしてもよい。なお、台形状の流路については、上述のD(z)を用いることができるが、それ以外の形状の流路の場合には、適宜、その形状にあったD(z)を用い、上記積分を行うことによって、越流深を算出することができる。
【0039】
また、この(1)の場合には、複数の仕切り板21における流路の形状及び個数が、仕切り板21ごとに異なっていてもよい。その場合には、仕切り板21ごとに越流深Hiを算出する。なお、iは、仕切り板21を識別するインデックス(1以上の整数)である。そして、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深Hi以上高くなるようにすればよい。
【0040】
(2)リアクターが傾斜しており、仕切り板に段差がない場合
次に、リアクター13を傾斜させることによって、仕切り板21に段差を設けた場合と同様のことを実現する場合について説明する。ここでは、各仕切り板21の堰高が、リアクター13が傾斜していない場合に同じであるとする。また、その複数の仕切り板21の流路の形状及び個数もすべて同じであるとする。すなわち、リアクター13の長さ方向に直交するリアクター13内部の断面が変化しない場合には、すべての仕切り板21は、同じ形状であってもよい。そのようであっても、内容物20が流れる場合、すなわち、内容物20に対する処理が行われる場合に、図8で示されるように、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深以上高くなるように、リアクター13が傾斜されていることによって、前述のように、仕切り板21に段差を設けた場合と同様の効果を得ることができる。ここで、リアクター13を傾斜させる場合には、当然、内容物の流入側が上方となり、流出側が下方となるように傾斜させることになる。
【0041】
ここで、リアクター13を傾斜させる場合における傾斜角について説明する。図9で示されるように、リアクター13の長さ方向の室33の長さをLとする。Lの長さは限定されるものではないが、例えば、10〜300cm程度であり、好ましくは、10〜100cm程度であってもよい。また、リアクター13が、流入側が流出側よりも高くなるように、角度θだけ傾斜しているとする。また、室33における流出側の仕切り板21の越流深をHとする。すると、室33において、流入側の仕切り板21の堰高と、流出側の仕切り板21の堰高との差は、H0=Lsinθとなる。したがって、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深だけ高くなるためには、H0=H、すなわち、Lsinθ=Hであればよい。Hは、仕切り板21に段差を設けた場合の説明における方程式を解くことによって算出することができる。したがって、その算出したHと、Lとを用いると、θ=sin−1(H/L)となり、リアクター13をそのθ以上、傾斜させることによって、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深H以上高くなることになる。なお、すべての室の長さが同じ場合には、そのθを用いればよいが、そうでない場合には、最も短い室の長さであるLを用いる必要がある。最も短い室の長さに応じたθが、最も大きい値になるからである。したがって、θ=sin−1(H/L)における「L」は、各室におけるリアクター13の長さ方向の長さのうち、最も短い長さであればよい。
【0042】
なお、リアクター13を傾斜させた場合には、厳密には、仕切り板21も傾斜することになり、仕切り板21における流路も角度θだけ傾斜することになる。したがって、厳密に言えば、越流深は、上記方程式を解いたHの値と異なることになるが、通常、角度θは小さい値であり、傾斜の有無に応じたHの差も小さい値となる。さらに、通常、Hは、Lと比較して十分小さい値であるため、リアクター13の傾斜に応じたHの変化を考慮しなくても問題ないと考えられる。なお、リアクター13の傾斜も考慮して越流深Hを算出し、そのHを用いて、角度θを算出してもよいことは言うまでもない。リアクター13を傾斜させた場合の内部構造は、例えば、図10で示されるようになる。
【0043】
また、リアクター13を傾斜させる場合でも、(1)の場合と同様に、最後段の室34について考慮してもよい。すなわち、最後段の室34についても、流出孔の越流深を算出して、上述と同様にθを算出する。そして、最後段の室34について算出したθと、それ以外の室で算出したθとのうち、大きい方の値以上、リアクター13を傾斜させるようにしてもよい。
【0044】
(3)リアクターが傾斜しており、仕切り板に段差がある場合
前述の(1)、(2)の場合を組み合わせてもよい。すなわち、リアクター13を傾斜させ、かつ、仕切り板21に段差があることによって、結果として、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深以上高くなるようにしてもよい。その場合には、流入側の仕切り板21の堰高が、流出側の仕切り板21の流路の堰高より、「H−Lsinθ」以上高くなるようにしてもよい。なお、Hは、流出側の仕切り板21における越流深であり、Lは、各室におけるリアクター13の長さ方向の長さのうち、最も短い長さであり、θは、リアクター13の傾斜角である。また、ここでも、各仕切り板21において、流路の形状及び個数は同じであるとしており、リアクター13の傾斜角はあまり大きくないとしている。
【0045】
なお、(1)〜(3)の説明では、流路の形状や流量等を用いて越流深Hを算出する場合について説明したが、そうでなくてもよい。リアクター13において、実際に内容物を流通させ、その流通時の越流深Hを測定してもよい。そして、各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の越流深以上高くなるように、仕切り板21の流路を設計したり、リアクター13の傾斜角を調整したりしてもよい。その場合には、各仕切り板21における流路の形状及び個数が同じでなくてもよい。すなわち、仕切り板21ごとに、流路の形状が異なっていてもよく、流路の個数が異なっていてもよく、流路の形状と個数とが異なっていてもよい。また、越流深を測定する場合には、リアクター13は、未充填空間22の上方において開閉可能であってもよく、あるいは、未充填空間22の上方からリアクター13内部を観察可能な窓が設けられていてもよい。後者の場合には、その窓はマイクロ波を透過しないものであることが好適であるが、マイクロ波を透過するのであれば、マイクロ波の照射中には、マイクロ波を透過しないもので窓を覆っておき、観察中のみ、マイクロ波の照射を止め、その覆いをのけて観察するようにしてもよい。また、越流深を測定する場合には、例えば、仕切り板21の流路の位置に、越流深を測定するための目盛を設けていてもよい。
【0046】
また、リアクター13の最前段の室31、すなわち、外部から内容物が投入される室については、通常、図2等で示されるように、上方から内容物を投入するため、上述の(1)〜(3)のように、仕切り板21に関する条件や、傾斜角の条件は考慮する必要がない。しかし、最前段の室31においても、後段の室と同様に、横方向から内容物を流し込む場合には、前述のように、最前段の室31において、流入側の堰高(流路の底の高さ)が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板21における越流深以上高くなるようにしてもよい。
【0047】
また、仕切り板21の流路として、仕切り板21の上方において内容物がオーバーフローする流路に加えて、仕切り板21の隙間において内容物が流れる流路が存在してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。すなわち、「内容物が仕切り板21の上方をオーバーフローで流れる」とは、少なくともそのオーバーフローの流路が存在すればよいという意味であり、他の流路が存在することを妨げるものではない。前者の場合、すなわち、仕切り板21の隙間において内容物が流れる流路が存在する場合には、その隙間は、図4Cで示されるように、仕切り板21に設けられた隙間27であってもよく、図4Dで示されるように、仕切り板21とリアクター13の間の隙間27であってもよく、あるいは、その両方であってもよい。なお、隙間27の形状や位置、個数は問わない。また、仕切り板21に隙間27が存在する場合に、その隙間27を通過する内容物が短絡して流れないようにすることが好適である。そのため、例えば、隣接する仕切り板21が、図4Cで示されるものと、図4Dで示されるものとになるように、両仕切り板21を交互に配置してもよい。また、仕切り板21に隙間27が存在する場合に、その隙間の流量をも考慮して越流深Hを算出してもよく、あるいは、前述のように、越流深Hを測定してもよい。また、仕切り板21に隙間27が存在する場合には、その隙間27の流路において、内容物の一部が下流側から上流側に流れることもありうる。
【0048】
また、傾斜させないリアクター13の各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高よりも流出側の仕切り板21における越流深の5倍や10倍以上高くなるようにすることによっても、目的を達成することはできうる。しかしながら、そのようにすると、各室における液面の差が大きくなり、後段側になるにつれて内容量が少なくなり、リアクター13の処理量が減少することになる。したがって、各室において、流入側の堰高と、流出側の堰高との差は、流出側の仕切り板21における越流深以上である必要はあるが、極端に差が大きくならないようにすることが好適である。両者の堰高の差は、例えば、流出側の越流深の1〜3倍程度であってもよい。また、リアクター13を傾斜させる場合でも、傾斜角を大きくすると、各室における内容量が減ることになる。したがって、各室において、流入側の堰高と、流出側の堰高との差は、流出側の仕切り板21における越流深以上である必要はあるが、極端に差が大きくならない程度の傾斜角とすることが好適である。この場合にも、例えば、両者の堰高の差が、流出側の越流深の1〜3倍程度となるように傾斜させてもよい。なお、各室において、内容物の流入や流出があるため、各室の液面は多少上下することがありうる。そのため、安全サイドとなるように、各室において、流入側の堰高と、流出側の堰高との差が、流出側の越流深の2〜3倍程度となるように仕切り板21を設計したり、リアクター13を傾斜させたりしてもよい。また、撹拌手段23による撹拌を行う場合には、撹拌を行わない状況における越流深Hを用いて、仕切り板21を設計したり、リアクター13を傾斜させたりしてもよい。
【0049】
ここで、具体的な越流深等の計算例について説明する。流量Q=1000(リットル/時間)≒2.78×10−4(m3/s)、流路の底側の幅a=0.01(m)、流路の上辺側の幅b=0.1(m)、流路の高さe=0.05(m)、流量係数C=0.6、流路の個数N=3、重力加速度g=9.807(m/s2)とすると、
H=0.017(m)
となる。なお、Hは、数値計算により求めた。したがって、上述の(1)の場合には、各室において、上流側の仕切り板21の堰高が、下流側の仕切り板21の堰高よりも1.7cm以上高くなるようにすればよい。そのため、例えば、リアクター13の仕切り板21の堰高が、下流側に向かって2cmずつ低くなるように仕切り板21を設計してもよい。また、上述の(2)の場合であって、各室の長さL=0.5(m)である場合には、θ=0.035(rad)=2.0°となる。したがって、リアクター13を2°傾斜させればよいことになる。
【0050】
次に、本実施の形態による化学反応装置1の動作について簡単に説明する。原料と触媒とは、ポンプ11によって混合部12に供給される。そして、混合部12において混合され、リアクター13に投入される。そのリアクター13への原料等の供給速度は、前述の流量Qに応じた速度となることが好適である。
【0051】
リアクター13に供給された原料等は、撹拌手段23によって撹拌されながら、上流側から下流側に流れていく。また、マイクロ波発生器14が発生したマイクロ波が導波管15を介してリアクター13の未充填空間22に伝送され、原料等に照射される。その際に、前述のように、越流が連続することがないため、内容物が短絡して流通することを防止でき、効率よく内容物に対してマイクロ波を照射することができる。そのマイクロ波によって原料等が加熱されることになり、原料等の反応が促進されることになる。なお、各室31〜34の温度は、温度測定部25によって測定され、図示しない経路によって、マイクロ波制御部16に渡される。そして、マイクロ波制御部16は、各室31〜34の温度が所望の温度または所望の温度幅となるようにマイクロ波発生器14の出力を制御する。
【0052】
リアクター13から出力された生成物は、触媒分離部17に投入され、触媒が分離される。そして、触媒の分離された生成物がポンプ11によって処理液貯留槽18に投入され、処理液貯留槽18において、目的とする製造物と副生成物とに分けられる。このようにして、最終的な製造物が得られることになる。また、このような処理が繰り返して実行されることにより、目的とする製造物が順次、生成されていくことになる。
【0053】
なお、触媒分離部17における触媒の分離の処理や、処理液貯留槽18における製造物と副生成物との分離の処理は、生成物が投入されるごとに順次、行ってもよく、あるいは、投入された生成物が一定の分量だけたまってから、一括して行ってもよい。すなわち、リアクター13における処理はフロー式(流通式)で処理されるが、その後段の触媒分離部17や処理液貯留槽18における処理は、フロー式で処理されてもよく、あるいは、バッチ式で処理されてもよい。
【0054】
また、本実施の形態による化学反応装置1において行われる化学反応は、マイクロ波の照射自体、あるいは、マイクロ波の照射に応じた加熱によって引き起こされる化学反応であれば、どのようなものであってもよい。例えば、エステル化やエステル交換によるバイオディーゼル燃料の生成であってもよく、エステルであるインク原料の生成であってもよく、その他の化学反応であってもよい。
【0055】
次に、本実施の形態による化学反応装置1を用いて廃油からバイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)を生成する場合について説明する。なお、本発明がこの反応に限定されないことは言うまでもない。
【0056】
(反応システム構築例)
原料として、油脂と遊離脂肪酸との混合物、及びアルコールを用いる。アルコールは、反応剤である。その原料と触媒とは、それぞれポンプ11で混合部12へ送られ、均一に混合される。その混合液はリアクター13へ供給される。リアクター13内の混合液に対して、マイクロ波発生器14から発生したマイクロ波が照射され、エステル化反応が促進される。また、そのリアクター13内の混合液は、リアクター13内の仕切り板21で仕切られた各室31〜34に充填される。混合液は触媒と共に撹拌手段23によって撹拌されながらマイクロ波の照射によって反応が進行する。マイクロ波はリアクター13内部に存在する未充填空間22に対して照射され、リアクター13内部へ拡散する。各室内の反応液は仕切り板21に設けられた流路により次段の室へ移動する。反応液はリアクター13内で一定の滞留時間を保持した後、リアクター13外へ排出される。リアクター13から排出された反応後の混合液は触媒分離部17に供給され、その触媒分離部17において触媒が分離されて処理液貯留槽18へ充填される。触媒分離後の反応液は処理液貯留槽18において副生成物である水、グリセリンと分離され、目的物である粗メチルエステルが取り出される。リアクター13のマイクロ波出力は各室31〜34の内部温度によるフィードバック制御を行い、各室31〜34の温度を一定に保つ。例えば、反応温度を70℃に設定してもよい。
【0057】
以上のように、本実施の形態による化学反応装置1によれば、仕切り板21の流路の高さを変更することや、リアクター13を傾斜されること、または、その両方によって、各室の越流が水平方向に連続しないようにすることができる。したがって、内容物が短絡して流れることを防止することができ、内容物に対して適切にマイクロ波を照射することができる。その結果、未反応の内容物がリアクター13から出力されないようにすることができ、化学反応装置1における収率を向上させることができうる。また、撹拌手段23を用いてリアクター13内部で内容物を撹拌することによって、マイクロ波の浸透深さがあまり深くない場合であっても、内容物に対して均等にマイクロ波を照射することができるようになりうる。また、リアクター13が複数の室に分かれていることによって、内容物が各室に滞留しながら反応することになるため、各室において、内容物にマイクロ波を効果的に照射することができうるようになる。また、固体触媒がマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する場合には、マイクロ波の照射によって、固体触媒が効率よく加熱されることになり、固体触媒の近傍での化学反応を促進することができる。このように、リアクター13内部での化学反応が促進されることによって、より効率よく生成物を得ることができるようになる。
【0058】
なお、本実施の形態では、図3A、図3Bで示されるように、内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変であるリアクター13の形状が、リアクター13の側面が液面の法線方向に延びているものである場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。リアクター13の側面が液面の法線方向とは異なる方向に延びている場合でも、リアクター13の形状は、内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変であってもよい。例えば、図10で示されるように、リアクター13を傾斜させて設置した場合には、そのようになりうる。
【0059】
また、図2では、室ごとに撹拌手段23が存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。複数の室において、単一または複数の撹拌手段23が存在してもよい。化学反応装置1が単一の撹拌手段23を有する場合には、前述のように、その撹拌手段23は、複数の室において共通して用いられるシャフト(回転軸)を有するものであってもよい。その場合には、撹拌手段23は、回転軸と、複数の回転部材と、回転手段とを備えるものであってもよい。回転軸は、リアクター13の流れ方向に延びる軸である。例えば、図2において、回転軸は、リアクター13の左端の面から、右端の面まで延びていてもよい。その回転軸は、リアクター13の底面に平行に設けられていてもよい。この回転軸は、例えば、マイクロ波透過性の材料で構成されたものであってもよく、マイクロ波吸収性の材料で構成されたものであってもよく、マイクロ波反射性の材料で構成されたものであってもよく、あるいは、それらの任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されたものであってもよい。回転軸がマイクロ波反射性の材料(例えば、金属など)で構成されている場合には、回転軸にマイクロ波が照射されることによってマイクロ波が反射されることになる。したがって、そのような場合に、リアクター13内において、内容物の液面よりも上方に回転軸が存在すると、その回転軸によって一部のマイクロ波が反射され、その反射された分だけ内容物に照射されないことになる。したがって、そのような事態を回避するためには、内容物の液面が、回転軸よりも上方になる位置する、すなわち、内容物中に回転軸が存在することが好適である。また、回転軸がマイクロ波吸収性の材料で構成されている場合には、回転軸にマイクロ波が照射されることによってマイクロ波が吸収されることになる。したがって、そのような場合に、リアクター13内において、内容物の液面よりも上方に回転軸が存在すると、その回転軸によって一部のマイクロ波が吸収され、その吸収された分だけ内容物に照射されないことになる。また、回転軸が異常に加熱する可能性もある。したがって、そのような事態を回避するためには、内容物の液面が、回転軸よりも上方になる位置する、すなわち、内容物中に回転軸が存在することが好適である。したがって、内容物の液面が、回転軸よりも上方になるように内容物の量を制御してもよく、また、リアクター13は、少なくとも回転軸よりも上方側において、液面方向の断面積が変化しない形状を有していてもよい。例えば、図3Cで示されるように、液面の面積が不変となる範囲R1の最下位の液面の高さが、回転軸28がちょうど内容物で覆われる高さであるようにしてもよい。そのようにすることで、液面が範囲R1内である場合には、液面の面積は不変であり、かつ、液面は回転軸28よりも上に存在することになる。なお、図3Cにおいて、リアクター13の下部の半円筒形状における半径は、回転軸28を中心に回転する回転部材の回転半径に応じた半径を有していることが好適である。その場合には、リアクター13の底部領域において、撹拌洩れの起こることを効果的に防止することができるからである。また、例えば、図3Dで示されるリアクター13では、内容物の液面の高さがすべての範囲R1である場合に、液面の面積は不変であるが、その液面の高さが、範囲R2内となるようにコントロールすることによって、液面の面積は不変であり、かつ、液面は回転軸28よりも上に存在するようにコントロールできる。なお、範囲R2の最下位の液面の高さが、回転軸28がちょうど内容物で覆われる高さであるとする。また、上方、下方とは、鉛直方向における上方や下方の意味である。また、リアクター13の流れ方向とは、リアクター13内の内容物の流れ方向であり、通常、リアクター13の長さ方向と同じである。回転部材は、回転軸を中心として回転する部材である。この回転部材が回転することによって、内容物が回転撹拌されることになる。なお、回転部材は、前述のように、例えば、羽根状の部材であってもよく、あるいは、翼状の部材や、棒状の部材等であってもよい。また、その回転部材は、各室に存在してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。回転部材の存在しない室があってもよい。また、一の室に二以上の回転部材が存在してもよい。撹拌手段23は、少なくとも1以上の回転部材を有するものであればよい。また、回転手段は、各回転部材を回転させる。回転部材が回転軸に固定されている場合には、回転手段は、その回転軸を回転させるものであってもよい。その場合には、回転手段は、例えば、モータや、エンジン等であってもよい。また、回転軸が回転部材を回転可能に支持し、回転軸自体は回転しないものであってもよい。その場合には、回転手段は、例えば、磁石を有する回転部材を磁力によって回転させるものであってもよい。具体的には、永久磁石である回転子(ロータ)を、その回転子の周りに設けられた電磁石の固定子(ステータ)で回転させるタイプのモータと同様に、回転部材(回転子)を、回転手段(固定子)によって回転させてもよい。なお、その場合に、固定子である回転手段は、リアクター13の外部に存在することが好適であるが、そうでなくてもよい。リアクター13の材質によっては、リアクター13の外部に固定子である回転手段を設けることができないこともあるからである。また、撹拌手段23が複数の室にわたる回転軸を有する場合には、仕切り板21には、その回転軸が貫通する孔が存在してもよい。また、複数の室を貫く回転軸が存在する場合に、仕切り板21の隙間27の位置をその回転軸が貫通してもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、内容物の量が所定の範囲内である場合に、リアクター13は、その内容物の液面方向の断面が変化しない形状を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。結果として、内容物の量が所定の範囲内である場合に、リアクター13が内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変である形状を有するのであれば、内容物の液面方向の断面が変化しない形状を有していなくてもよい。具体的には、内容物の液面方向の断面が、液面の高さに応じて、ある形状(例えば、矩形等)から、別の形状(例えば、台形等)に変化したとしても、内容物の液面方向の断面の面積が、各液面の高さにおいて同じであるのであれば、リアクター13が、内容物の液面方向の断面が変化する形状を有していたとしても、内容物の量の変化に応じて液面の面積が不変である形状を有していることになる。
【0061】
また、本実施の形態では、リアクター13の形状が、内容物の量が所定の範囲内である場合に、内容物の量の変化に応じて液面の高さが変化しても、その液面の面積が不変である形状を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。内容物の量の変化に応じて、液面の面積が変化してもよい。
【0062】
また、本実施の形態において、撹拌手段23の有する回転軸や回転手段の個数は問わない。例えば、単数の回転軸、回転手段によって、1以上の回転部材が回転されてもよく、2以上の回転軸や2以上の回転手段を用いて、2以上の回転部材が回転されてもよい。
【0063】
なお、本実施の形態では、原料と触媒とを混合する混合部12が存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、あらかじめ混合された原料と触媒とを用いる場合や、リアクター13において混合をも行う場合、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっている場合、または、リアクター13内を流れる固体触媒に代えて固定床の固体触媒を用いる場合などには、化学反応装置1は、混合部12を備えなくてもよい。なお、固定床の固体触媒を用いる場合には、通常、その固定床の固体触媒はリアクター13の内部に存在することになる。その固定床の固体触媒は、例えば、リアクター13の内壁に貼着されたものであってもよく、あるいは、リアクター13の内部において触媒充填層やカラム等に充填されることによって固定されたものであってもよい。その固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状(中空であってもよく、そうでなくてもよい)、球状、ペレット状、リング状、シェル状、ハニカム状、発泡体状、繊維状、布状、板状、あるいは、その他の形状であってもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、リアクター13が、図2で示されるように、直列に連続した4個の室31〜34を有する場合について説明したが、この室の個数は問わない。通常、室の数が多いほど、リアクター13の流入孔から流出孔に対して原料が短絡して流れることを効果的に防止できる。また、その室の数の増減に応じて室の容積が変わらない場合には、室の数が多いほど、リアクター13の内容物がリアクター13に流入してから流出するまでの滞留時間が長くなり、室の数が少ないほど、その滞留時間が短くなる。したがって、その場合には、所望の滞留時間となるように、その室の個数を調整することができうる。
【0065】
また、本実施の形態では、複数のマイクロ波発生器14を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、図11で示されるように、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波を、分岐を有する導波管15によって、複数の箇所に伝送してもよい。複数の箇所は、例えば、複数の室であってもよい。なお、図11では、化学反応装置1が一のマイクロ波発生器14のみを備えている場合について示しているが、化学反応装置1が2以上のマイクロ波発生器14を備えている場合に、その複数のマイクロ波発生器14のいずれかで発生されたマイクロ波が、分岐を有する導波管15によって複数の箇所に伝送されてもよい。例えば、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が複数の室に伝送される場合には、マイクロ波制御部16は、そのマイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が伝送される各室の温度のいずれか、あるいは、すべてを用いて、そのマイクロ波発生器14の出力を制御してもよい。例えば、マイクロ波制御部16は、各室のすべての温度の平均を用いて制御を行ってもよく、各室の温度の最高値または最低値を用いて制御を行ってもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、化学反応装置1が温度測定部25とマイクロ波制御部16とを備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、マイクロ波の出力をあらかじめ決められた値にすることによって、リアクター13の内部の温度を所望の温度や温度幅に維持することができる場合には、温度を用いたマイクロ波の出力の制御を行わなくてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、リアクター13の後段に触媒分離部17を備えた場合について説明したが、そうでなくてもよい。他の装置によって触媒を分離する場合や、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっている場合、リアクター13内を流れる固体触媒に代えて固定床の固体触媒を用いる場合、リアクター13での化学反応に触媒を用いない場合などのように、本実施の形態による化学反応装置1において触媒の分離を行わなくてもよい場合には、触媒分離部17を備えていなくてもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、原料と触媒とが混合されてリアクター13に投入される場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、原料のみがリアクター13に投入されてもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合には、リアクター13の内部を、原料のみが流れてもよい。すなわち、リアクター13の内容物は、例えば、複数の原料の混合物であってもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合であっても、例えば、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっているときには、リアクター13の内部を原料と触媒とが流れてもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合には、混合部12は、例えば、原料を混合させてもよく、あるいは、原料(基質)と反応剤とを混合させてもよい。また、その原料等の混合が必要ない場合には、前述のように、化学反応装置1は、混合部12を備えていなくてもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、リアクター13内の原料を撹拌する1以上の撹拌手段23を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、リアクター13がマイクロ波を原料の全体に容易に照射することができるような構成である場合(例えば、リアクター13の内径が小さい場合等)には、撹拌手段23がなくてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、化学反応装置1が処理液貯留槽18を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、化学反応装置1から出力された生成物や副生成物が混合したものについて、他の装置において生成物の抽出等が行われてもよい。
【0071】
また、本実施の形態において、化学反応装置1は2以上のマイクロ波発生器14を備えており、その2以上のマイクロ波発生器14は、2以上の周波数のマイクロ波を発生してもよい。すなわち、リアクター13の内容物に対して、2以上の周波数のマイクロ波が照射されてもよい。その場合において、2以上の周波数のマイクロ波を同じ位置において照射してもよく、2以上の周波数のマイクロ波をそれぞれ異なる位置において照射してもよい。例えば、図12Aで示されるように、リアクター13の同じ位置において、すなわちリアクター13の中流域において、マイクロ波発生器14a、14dがそれぞれ発生した周波数X,Yのマイクロ波を照射してもよい。なお、周波数X,Yのマイクロ波はそれぞれ、導波管15a,15dを介してリアクター13に伝送される。また、例えば、図12Bで示されるように、リアクター13の上流側から中流域において、マイクロ波発生器14a、14b、14cが発生した周波数Xのマイクロ波を照射し、リアクター13の下流側において、マイクロ波発生器14dが発生した周波数Yのマイクロ波を照射してもよい。なお、周波数Xのマイクロ波はそれぞれ、導波管15a,15b,15cを介してリアクター13に伝送される。また、周波数Yのマイクロ波は、導波管15dを介してリアクター13に伝送される。ここで、図12A、図12Bは、それぞれリアクター13を上方から見た図であり、図中の矢印は、リアクター13内における内容物の流れを示すものである。なお、2以上の周波数のマイクロ波が照射される場合に、その周波数の個数は、2個であってもよく、あるいは、3個以上であってもよい。その2以上の周波数は、300MHzから300GHzの範囲から選択される2以上の周波数であればどのような組み合わせであってもよい。例えば、2個の周波数のマイクロ波が照射される場合に、その周波数の組み合わせは、2.45GHzと5.8GHzであってもよく、2.45GHzと24GHzであってもよく、2.45GHzと913MHzであってもよく、5.8GHzと24GHzであってもよく、5.8GHzと913MHzであってもよく、24GHzと913MHzであってもよい。また、2以上の周波数のマイクロ波を照射する場合に、それらを照射するタイミングは問わない。例えば、2以上の周波数のマイクロ波を同時に照射してもよく、あるいは、周波数ごとに照射する期間が異なるようにマイクロ波を照射してもよい。例えば、後者の場合には、ある期間には周波数Xのマイクロ波が照射され、次の期間には周波数Yのマイクロ波が照射されてもよい。また、2以上の周波数のマイクロ波が照射される場合に、2以上の周波数のマイクロ波が一の未充填空間22に導入されてもよく、あるいは、各周波数のマイクロ波がそれぞれ異なる未充填空間22に導入されてもよい。後者の場合には、リアクター13において、仕切り板21によって分断された未充填空間22が少なくとも2以上存在することになる。なお、2以上の周波数のマイクロ波を照射した場合には、1個の周波数のマイクロ波の照射ではマイクロ波の作用(例えば、加熱等)の対象とならなかった物質に対してもマイクロ波を作用させることができ、より幅の広い物質に対してマイクロ波を作用させることができるようになる。
【0072】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0073】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0074】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
【0075】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上より、本発明による化学反応装置によれば、内容物の短絡を防止できるという効果が得られ、例えば、マイクロ波の照射を行う化学反応装置として有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 化学反応装置
12 混合部
13 リアクター
14、14a〜14d マイクロ波発生器
15、15a〜15d 導波管
16 マイクロ波制御部
17 触媒分離部
18 処理液貯留槽
21 仕切り板
23 撹拌手段
25 温度測定部
28 回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が複数の仕切り板によって複数の室に仕切られており、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式のリアクターと、
マイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器の発生したマイクロ波を、前記リアクターの未充填空間に伝送する1以上の導波管と、を備え、
前記内容物は、前記仕切り板の上方をオーバーフローで流れるものであり、
前記各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高い、化学反応装置。
【請求項2】
前記リアクターにおける各仕切り板の堰高は、当該リアクターが傾斜していない場合に同じであり、
前記リアクターは、前記内容物が流れる場合には、前記各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高くなるように傾斜されている、請求項1記載の化学反応装置。
【請求項3】
前記複数の仕切り板における流路の形状及び個数はすべて同じであり、
前記傾斜の角度は、次式
θ=sin−1(H/L)
〔ただし、Lは、前記各室における前記リアクターの長さ方向の長さのうち、最も短い長さであり、Hは、次式で求められる越流深である。
【数1】
ただし、Qは流量であり、aは台形状の流路の底側の幅であり、bは前記台形状の流路の上辺側の幅であり、eは前記台形状の流路の底から上辺までの高さであり、Cは流量係数であり、Nは1個の仕切り板が有する前記台形状の流路の個数であり、gは重力加速度である。〕
で算出されるθ以上である、請求項2記載の化学反応装置。
【請求項4】
前記リアクターは、傾斜していないものであり、
前記各室において、流入側の仕切り板の流路の底の高さは、流出側の仕切り板の流路の底の高さより、当該流出側の仕切り板における越流深以上高い、請求項1記載の化学反応装置。
【請求項5】
前記越流深は、次式
【数2】
〔ただし、Qは流量であり、aは台形状の流路の底側の幅であり、bは前記台形状の流路の上辺側の幅であり、eは前記台形状の流路の底から上辺までの高さであり、Cは流量係数であり、Nは1個の仕切り板が有する前記台形状の流路の個数であり、gは重力加速度である。〕
で算出されるHである、請求項4記載の化学反応装置。
【請求項6】
前記リアクター内の内容物を回転撹拌する1以上の撹拌手段をさらに備えた、請求項1から請求項5のいずれか記載の化学反応装置。
【請求項1】
内部が複数の仕切り板によって複数の室に仕切られており、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式のリアクターと、
マイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器の発生したマイクロ波を、前記リアクターの未充填空間に伝送する1以上の導波管と、を備え、
前記内容物は、前記仕切り板の上方をオーバーフローで流れるものであり、
前記各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高い、化学反応装置。
【請求項2】
前記リアクターにおける各仕切り板の堰高は、当該リアクターが傾斜していない場合に同じであり、
前記リアクターは、前記内容物が流れる場合には、前記各室において、流入側の堰高が、流出側の堰高より、流出側の仕切り板における越流深以上高くなるように傾斜されている、請求項1記載の化学反応装置。
【請求項3】
前記複数の仕切り板における流路の形状及び個数はすべて同じであり、
前記傾斜の角度は、次式
θ=sin−1(H/L)
〔ただし、Lは、前記各室における前記リアクターの長さ方向の長さのうち、最も短い長さであり、Hは、次式で求められる越流深である。
【数1】
ただし、Qは流量であり、aは台形状の流路の底側の幅であり、bは前記台形状の流路の上辺側の幅であり、eは前記台形状の流路の底から上辺までの高さであり、Cは流量係数であり、Nは1個の仕切り板が有する前記台形状の流路の個数であり、gは重力加速度である。〕
で算出されるθ以上である、請求項2記載の化学反応装置。
【請求項4】
前記リアクターは、傾斜していないものであり、
前記各室において、流入側の仕切り板の流路の底の高さは、流出側の仕切り板の流路の底の高さより、当該流出側の仕切り板における越流深以上高い、請求項1記載の化学反応装置。
【請求項5】
前記越流深は、次式
【数2】
〔ただし、Qは流量であり、aは台形状の流路の底側の幅であり、bは前記台形状の流路の上辺側の幅であり、eは前記台形状の流路の底から上辺までの高さであり、Cは流量係数であり、Nは1個の仕切り板が有する前記台形状の流路の個数であり、gは重力加速度である。〕
で算出されるHである、請求項4記載の化学反応装置。
【請求項6】
前記リアクター内の内容物を回転撹拌する1以上の撹拌手段をさらに備えた、請求項1から請求項5のいずれか記載の化学反応装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【公開番号】特開2013−103159(P2013−103159A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247954(P2011−247954)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【特許番号】特許第5109004号(P5109004)
【特許公報発行日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【出願人】(508067736)マイクロ波化学株式会社 (7)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【特許番号】特許第5109004号(P5109004)
【特許公報発行日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【出願人】(508067736)マイクロ波化学株式会社 (7)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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