説明

化粧シート

【課題】水系塗工剤を用いて黄色顔料を含む化粧シートを製造する場合において、耐候性が改善された化粧シートを提供することにある。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート上に絵柄模様層が形成されている化粧シート。


〔R及びRは、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕で表される化合物であることを特徴とする化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及びその化粧シートを用いた化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、木質板等の被着材の表面保護、装飾等を目的とするものであって、基材シート、絵柄模様層、接着剤層、表面保護層等が積層させてなるものである。化粧シートは、被着材の表面に貼着することにより使用される。そして、これによって得られた化粧板は、各種の建材、家具等に使用されている。
【0003】
このような化粧シートにおいて、従来、絵柄模様層、接着剤層等は、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の脂肪族溶剤などを含む溶剤系塗工剤から形成されていた。
【0004】
上記芳香族溶剤、脂肪族溶剤等は、いずれも有機性揮発物質(VOC)であり、特にトルエン、キシレン等の芳香族溶剤は化学物質排出把握管理促進法の指定化学物質及び室内空気中化学物質の指針値策定物質として挙げられている。また、化粧シート製造時における溶剤系塗工剤に含まれるVOCの揮発による作業環境の問題、化粧シート使用時における残存VOCが一般の生活空間に拡散される環境安全性の問題等が指摘されている。そのため、化粧シート中のVOC使用量を低減した水系塗工剤からなる化粧シートが提供されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、水系塗工剤を用いた化粧シートでは、上述したVOC問題は解消されたものの、新たな問題が生じている。すなわち、溶剤塗工剤を用いた化粧シートに比べて、水系塗工剤を用いた化粧シートは、日光、蛍光灯等によって放出される紫外線などによる影響が大きい。特に、化粧シートを構成する層のうち、絵柄模様層が劣化しやすく、耐候性が低い。
【0006】
すなわち、水系塗工剤を用いて作製した絵柄模様層は、外気、紫外線等に暴露されると、施工当時と比して大きく褪せてしまい、施工当時の色合いを維持できないという問題が生じている。また、絵柄模様層は非常にもろくなりやすく、その結果、絵柄模様層上に積層される表面保護層、透明性接着剤層などが、絵柄模様層を境にして基材シートから剥離するという問題が生じている。これらの問題は、黄色顔料を用いる場合によく見られる。
【0007】
さらには、溶剤系塗工剤を用いて作製したものと比べ、水系塗工剤を用いて黄色顔料を含む絵柄模様層を作製した場合、絵柄模様層ひいては化粧シート全体の色がくすむ(色の鮮やかさ、明瞭さが劣る)という問題がある。そのため、色鮮やかな模様、色合いがはっきりした模様を表現できない場合が生じる。
【0008】
したがって、黄色顔料を用いた化粧シートであって、耐候性(退色性、もろさ等)が改善された化粧シートが求められている。さらには、上記特性に加え、溶剤系塗工剤を使用したものと同程度に色がくすみにくい化粧シートが求められている。
【特許文献1】特開2001−38849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、水系塗工剤を用いて黄色顔料を含む化粧シートを製造する場合において、耐候性が改善された化粧シートを提供することにある。すなわち、退色しにくく、かつ、剥離しにくい化粧シートを提供することにある。
【0010】
また、さらに溶剤系塗工剤を使用したものと同程度に色がくすみにくいという性質を兼ね備えた化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を有する積層体を化粧シートとして用いることによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の化粧シートに係る。
1.基材シート上に絵柄模様層が形成されている化粧シートであって、
(a)前記絵柄模様層が、黄色顔料を含む水性組成物により形成され、
(b)前記黄色顔料が下記一般式(1):
【0013】
【化1】

〔ただし、R及びRは各々独立に、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、R及びR’は各々独立に、水素、C−Cアルキル基、又はフェニル基を表す。フェニル基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基及びハロゲンの少なくとも1種の置換基を有していてもよい。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕
で表される化合物である
ことを特徴とする化粧シート。
2.前記黄色顔料が、
前記黄色顔料10重量部、水性ウレタン樹脂15重量部、水75重量部及びイソプロピルアルコール40重量部からなる組成物から形成される厚さが1μmの乾燥薄膜のヘイズ値を測定した結果が45%以下を示すもの、
である上記項1に記載の化粧シート。
3.前記基材シートと絵柄模様層との間に、さらに着色隠蔽層が形成されている、上記項1又は2に記載の化粧シート。
4.前記着色隠蔽層が黄色顔料を含む水性組成物から形成されているものであって、かつ前記黄色顔料が下記一般式(2):
【0014】
【化2】

〔ただし、R及びRは各々独立に、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、R及びR’は各々独立に、水素、C−Cアルキル基、又はフェニル基を表す。フェニル基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基及びハロゲンの少なくとも1種の置換基を有していてもよい。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕
で表される化合物である、上記項3記載の化粧シート。
5.前記基材シートがポリオレフィン系樹脂からなる、上記項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
6.絵柄模様層上に、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び表面保護層が順に積層されている、上記項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
7.前記透明性接着剤層及び表面保護層のうち少なくとも1種が水性組成物から形成されている、上記項6に記載の化粧シート。
8.上記項1〜7のいずれかに記載の化粧シートの基材シート側を被着材に貼着してなる化粧板。
9.下記一般式(3):
【0015】
【化3】

〔ただし、R及びRは各々独立に、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、R及びR’は各々独立に、水素、C−Cアルキル基、又はフェニル基を表す。フェニル基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基及びハロゲンの少なくとも1種の置換基を有していてもよい。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕
で表される黄色顔料を含有する水性インキ組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧シートによれば、絵柄模様層がキノクサリンジオン誘導体を有するため、耐候性が向上した化粧シートを提供することができる。
【0017】
すなわち、本発明の化粧シートは、絵柄模様層の退色性が改善されているため、退色しにくく、化粧シート製造当時の色合い等を効果的に維持できる。また、絵柄模様層がもろくなりにくいため、絵柄模様層を境にして表面保護層等が基材シートから剥離せず、長年の使用にも耐えることが可能である。
【0018】
さらには、本発明の化粧シートは溶剤系塗工剤を使用した場合と同程度又はそれ以上に色がくすみにくく、鮮明であり、色合いが明瞭である。
【0019】
よって、本発明の化粧シートでは、意匠性が大幅に向上し、長期的に優れた意匠性を維持できることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の化粧シートは、基材シート上に絵柄模様層が形成されている化粧シートであって、
(a)前記絵柄模様層が、黄色顔料を含む水性組成物により形成され、
(b)前記黄色顔料が下記一般式(4):
【0021】
【化4】

〔ただし、R及びRは各々独立に、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、R及びR’は各々独立に、水素、C−Cアルキル基、又はフェニル基を表す。フェニル基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基及びハロゲンの少なくとも1種の置換基を有していてもよい。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕
で表される化合物である
ことを特徴とする。
【0022】
基材シート
基材シートとしては、例えば、紙、不織布、熱可塑性樹脂シート又はこれらの複合材料等が使用される。
【0023】
紙としては、例えば薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等が挙げられる。
【0024】
また、不織布としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、ガラス等の繊維からなる不織布が挙げられる。紙又は不織布の坪量は、通常20〜100g/m2程度とすればよい。また、紙又は不織布は、その繊維間乃至は他層との層間強度を強化したり、ケバ立ち防止のため、例えばアクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでも良い。なお、基材シートに紙(或いは不織布)を用いた化粧シートは、化粧紙となる。
【0025】
熱可塑性樹脂シートとしては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0026】
本発明では、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。さらに、これらの中でも、特にポリプロピレン、ポリエチレン等が好ましい。
【0027】
ポリプロピレンを主成分とする共重合体も好ましく、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。
【0028】
また、ポリエチレンを主成分とする共重合体も好ましく、例えば、ブロックポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0029】
その他、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等も好ましい。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム状にすればよい。
【0031】
基材シートの厚みは特に限定されず、所望の製品特性に応じて設定できるが、通常40〜150μm程度、好ましくは50〜100μm程度である。
【0032】
基材シートには、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、着色剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0033】
着色剤としては特に限定されず、顔料、染料等の公知の着色剤を使用できる。基材シートの着色態様には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)があり、これらは任意に選択できる。例えば、被着材(化粧シートを接着する基材)の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、被着材の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
【0034】
基材シートの片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、基材シート表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0035】
基材シートの片面又は両面には、必要に応じて、プライマー層(例えば、被着材の接着を容易とするための裏面プライマー層等)を設けてもよい。プライマー層を設けることにより、隣接層(例えば、被着材)との層間密着力を高めることができる。
【0036】
プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートの片面又は両面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤等が挙げられる。
【0037】
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m2程度、好ましくは0.5〜15g/m2程度である。
【0038】
絵柄模様層
基材シートの上(被着材貼着面とは逆面、以下各層において同じ側を指す)には、絵柄模様層が形成されている。
【0039】
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0040】
本発明の絵柄模様層は、黄色顔料としてキノクサリンジオン誘導体を含む水性組成物により形成されている。
【0041】
前記水性組成物を用いて絵柄模様層を形成させることにより、絵柄模様層の耐候性が向上する。すなわち、絵柄模様層が退色しにくく、化粧シートは長期間の使用においても製造当時の色合いを維持することができる。さらに、絵柄模様層のもろさが解消され、絵柄模様層を境にして、表面保護層等が基材シートから剥離しにくくなる。
【0042】
本発明の水性組成物は、黄色顔料としてキノクサリンジオン誘導体を含有していれば特に制限はなく、水溶液又は水性樹脂エマルション(水分散体)のいずれであってもよいが、特に水性樹脂エマルションが好ましい。なお、本発明における「水性組成物」とは、後述する水性インキ及び水系塗工剤の両方を指す。
【0043】
本発明の水性インキは、キノクサリンジオン誘導体を樹脂等とともに、水又は水とアルコール等とからなる水系の混合分散媒(又は溶媒)中に分散(又は溶解)させて得られる。
【0044】
前記キノクサリンジオン誘導体は、下記一般式(5)で表される。
【0045】
【化5】

〔ただし、R及びRは各々独立に、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、R及びR’は各々独立に、水素、C−Cアルキル基、又はフェニル基を表す。フェニル基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基及びハロゲンの少なくとも1種の置換基を有していてもよい。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕
この中でも下記一般式(6)〜(8)で表される化合物の少なくとも1種が好ましい。
【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

[ただし、一般式(6)〜(8)中において、R及びRは、各々独立に、COOCH又はCOOCを表す。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、又は塩素を表す。Rは、水素又はメチル基を表す。]
より好ましくは、下記式(9)で表される化合物である。
【0049】
【化9】

また、黄色顔料(キノクサリンジオン誘導体)の粒径は、特に制限されないが、絵柄模様層をさらにくすみにくくできるという観点から、その平均一次粒径は好ましくは50〜210nmであり、より好ましくは50〜150nmである。
【0050】
さらに、本発明のキノクサリンジオン誘導体は、当該キノクサリンジオン誘導体10重量部、水性ウレタン樹脂15重量部、水75重量部及びイソプロピルアルコール40重量部からなる組成物から形成される厚さが1μmの乾燥薄膜のヘイズ値を測定した結果が45%以下を示すもの、であることが好ましい。より好ましくは当該測定結果が0〜40%である。
【0051】
すなわち、本発明で用いるキノクサリンジオン誘導体は以下の要件を満たすものが好ましい。
1)キノクサリンジオン誘導体10重量部、水性ウレタン樹脂15重量部、水75重量部及びイソプロピルアルコール40重量からなる組成物を作製し、2)得られた組成物から、厚さが1μmとなるように乾燥薄膜を形成した後、3)その乾燥薄膜のヘイズ値を測定した結果が45%以下を示す。より好ましくは、上記3)において測定結果が0〜40%である。
【0052】
ヘイズ値をこの範囲内にすることにより、絵柄模様層、ひいては化粧シート全体をくすみにくくすることができる。より具体的には、溶剤系塗工剤を使用して製造した絵柄模様層と同程度又はそれ以上に色がくすみにくく、鮮明にすることができる。その結果、本発明の化粧シートは意匠性が向上する。
【0053】
ここで、ヘイズ値(曇価)とは、被測定物質に可視光を照射した時の全光透過率に対する拡散透過率の割合を示す。なお、この値が低いほど透明性を示す。本発明では、ヘイズ値は、JIS K 7105に準拠して測定したものである。
【0054】
水性インキ中のキノクサリンジオン誘導体の含有量は、特に制限されないが、樹脂100重量部に対して、通常は1〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。
【0055】
水性インキに含まれる樹脂は特に制限されず、例えば、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、セルロース樹脂、セラック樹脂、カゼイン樹脂、これらの混合樹脂、これらに架橋成分を導入したもの等が挙げられるが、特に本発明では、水性ウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性アクリル−ウレタン樹脂等を用いることが好ましい。これら水性ウレタン樹脂等は、ウレタン樹脂等をエマルション化、マイクロカプセル化又はその他の方法で水等に分散することにより得られる。
【0056】
また、水性インキには、キノクサリンジオン誘導体に加えて、他の着色剤も併用できる。他の着色剤として、有機又は無機系の顔料を添加できる。赤色顔料としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、べんがら、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料などが挙げられる。青色顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料などが挙げられる。黒色顔料としては、例えば、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料などが挙げられる。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料などが挙げられる。着色顔料の中には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等が添加されていてもよい。
【0057】
さらに、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、シラノール基含有化合物等が挙げられるが、イソシアネート基含有化合物が好ましい。
【0058】
架橋成分を導入した水性インキには、例えば、アミノ基を有する水性化合物を主剤とし、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する水性化合物を架橋剤として含有する水性インキ、活性水素基を有する水性化合物を主剤とし、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する水性化合物を架橋剤として含有する水性インキ、カルボキシル基を有する水性化合物を主剤とし、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を有する水性化合物を架橋剤として含有する水性インキ等が挙げられる。
【0059】
溶媒(又は分散媒)は、水、又は水とアルコール等とからなる。アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられる。これらの中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールが好ましい。水とアルコールとの混合溶媒である場合、水とアルコールとの重量割合は溶解又は分散させる樹脂等によって適宜決定されるが、通常は100:0〜20:80である。
【0060】
水性インキ中の水又は水系の混合分散媒等の含有量も特に制限されないが、樹脂100重量部に対して,通常は100〜1000重量部程度である。
【0061】
絵柄模様層の形成方法はキノクサリンジオン誘導体を含む水性インキを含有する水系塗工剤を用いて形成すればよい。
【0062】
絵柄模様層を形成させる水系塗工剤(水性インキ組成物)は、例えば、上記水性インキにワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、架橋剤その他等の添加剤を任意に添加して、さらに、水又は水とアルコール等とからなる水系の混合分散媒(又は溶媒)中に分散(又は溶解)させて、ミキサー等で十分に混合して、調整することができる。
【0063】
水又は水系の混合分散媒等の添加量は限定的でないが、水性インキ100重量部に対して,通常は1〜500重量部程度である。
【0064】
絵柄模様層は、公知の印刷法などによって形成すればよい。絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0065】
上記水系塗工剤を基材シート、プライマー層、着色隠蔽層等に塗布する態様は、特に限定されず、当該層の全面に塗布してもよく、当該層の表面の一部であってもよい。絵柄模様層は模様を構成することを主目的とするため、通常は、部分的に塗布する。
【0066】
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の厚みは1〜15μm程度、乾燥後の厚みは0.1〜10μm程度である。
【0067】
着色隠蔽層
本発明の化粧シートでは、基材シートと絵柄模様層との間にさらに着色隠蔽層が形成されていてもよい。
【0068】
着色隠蔽層は、化粧シートと被着体とを接合した際に被着体の地色を隠蔽できればよく、通常は基材シートを被覆するように形成すればよい。
【0069】
着色隠蔽層を形成するための成分としては、絵柄模様層の形成に用いられる成分がそのまま使用できる。用途によっては着色を透明着色としてもよい。
【0070】
また、着色隠蔽層は上述したキノクサリンジオン誘導体を含有していても良い。キノクサリンジオン誘導体を含有している場合において、塗工時における着色隠蔽層を形成するインキ中のキノクサリンジオン誘導体の含有量は、特に制限されないが、樹脂100重量部に対して、通常は1〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。
【0071】
キノクサリンジオン誘導体を含有する場合、着色隠蔽層は優れた耐候性を発揮する。従って、化粧シートが、着色隠蔽層を境に剥離することが生じにくくなる。
【0072】
着色隠蔽層用のインキは水性組成物、特に水性樹脂エマルションが好ましい。水性樹脂エマルションは絵柄模様層で上述したものが挙げられる。これらの水性樹脂エマルションの中でも、密着性及びVOC減少の観点から、水性アクリル−ウレタン樹脂が最も好ましい。
【0073】
着色隠蔽層用の水系塗工剤は、上述したインキに例えば、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、架橋剤、その他等の添加剤を任意に添加して、さらに、水又は水とアルコール等とからなる水系の混合分散媒(又は溶媒)中に分散(又は溶解)させて、ミキサー等で十分に混合して、調整される。
【0074】
着色隠蔽層の形成方法は特に限定されず、塗工法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ドクターコート等の従来公知の各種塗工手段が利用できる。
【0075】
塗布量は、通常、乾燥硬化時に2〜30g/m2の範囲が望ましい。少なすぎると隠蔽力が低下するおそれがある。また、多すぎても隠蔽力は飽和する。着色隠蔽層の厚みは、通常0.1〜20μm程度、好ましくは1〜10μm程度である。
【0076】
透明性接着剤層
絵柄模様層の上には、必要に応じて、透明性樹脂層を形成しても良い。その透明性樹脂層と絵柄模様層との間に、層間の密着性を高めるため、透明性接着剤層を形成しても良い。透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
【0077】
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。
【0078】
化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0079】
透明性接着剤層は、例えば、接着剤を絵柄模様層の上に塗布し、透明性樹脂層を構成する透明性樹脂を塗工後、乾燥・硬化させることにより形成できる。
【0080】
本発明の化粧シートでは、接着剤層を形成するインキは、隣接層への密着性及び化粧シート中のVOC使用量を低減する等の観点から、水性組成物、好ましくは水性樹脂エマルションから形成される。
【0081】
水系塗工剤に含有する水性樹脂エマルションとしては、水性ウレタン樹脂が好ましく、さらには、架橋剤を含有する2液型の水性ウレタン樹脂が好ましい。架橋剤としては、水分散性のイソシアネート架橋剤を好ましく使用できる。
【0082】
また、他の水性樹脂エマルションとしては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども挙げられる。
【0083】
接着剤層用の水系塗工剤には、着色剤、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、架橋剤その他等の添加剤を任意に添加できる。水又は水とアルコール等とからなる水系の混合溶媒を使用し、ミキサー等で十分に混合して、水系塗工剤が調製される。
【0084】
塗工剤の乾燥温度・乾燥時間等の条件は特に限定されず、接着剤の種類に応じて適宜設定すればよい。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
【0085】
透明性接着剤層の厚みは特に限定されないが、乾燥後の厚みが0.1〜30μm程度、好ましくは1〜20μm程度である。
【0086】
透明性樹脂層
透明性接着剤層の上には、必要に応じて、透明性樹脂層が形成されていても良い。
【0087】
透明性樹脂層は、透明性を有するものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等を挙げることができる。
【0088】
好ましくは、ポリプロピレン樹脂を代表とするポリオレフィン系樹脂を使用する。従って、透明性樹脂層としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合は、基材シートを構成するものとして挙げた各種のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。
【0089】
なお、透明性樹脂層は、透明性を有する限り、着色されていても良いが、特に着色剤を配合しない方が望ましい。
【0090】
透明性樹脂層の形成方法は限定的でなく、例えば予め形成されたシート又はフィルムを隣接する層に積層する方法、透明性樹脂層を形成し得る樹脂組成物を溶融押出することにより隣接する層上に塗工する方法、隣接する層と一緒にラミネートする方法等のいずれも採用することができる。本発明では、特に溶融押出により透明性樹脂層を形成することが好ましい。とりわけ、透明性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂を溶融押出によって塗工することが望ましい。具体的には、絵柄層上に予め接着剤層を形成し、当該接着剤層上にポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを溶融押出して塗工することにより透明性樹脂層を好適に形成することができる。溶融押出の方法は、例えばTダイ等を用いる公知の方法に従って実施すれば良い。また、上記樹脂は、ポリ無水マレイン酸等の酸変性成分を中心としたポリプロピレン系樹脂を共押出しすれば、接着性をより向上させることもできる。
【0091】
上記の押し出し工程は、エンボス加工処理と同時に行うこともできる。すなわち、シート上に透明性樹脂を押し出しラミネートすると同時にエンボス加工処理を施すことによって、効率的に化粧シートを作製することができる。
【0092】
透明性樹脂層の厚みは、基材シート1と同様、通常は20〜200μm程度であるが、化粧シートの用途等に応じて上記範囲を超えても良い。
また、必要に応じて、表面にプライマー層(後述する表面保護層の形成を容易とするためのプライマー層)を設けてもよい。
【0093】
プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性樹脂層の上に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
【0094】
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m2程度、好ましくは0.5〜15g/m2程度である。
【0095】
表面保護層
透明性樹脂層の上には、必要に応じて、表面保護層が形成されていても良い。
【0096】
表面保護層は、床材用化粧シートに要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられる。この表面保護層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂が適当である
熱硬化型樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂には、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加される。
【0097】
また、VOC問題の観点から、表面保護層を形成するインキとしては、水性組成物、特に水性樹脂エマルションが好ましい。すなわち、表面保護層は水性組成物、特に水性樹脂エマルションから形成されていることが好ましい。水性樹脂エマルションとしては、上述したものが挙げられる。より好ましくは、水性ウレタン樹脂である。
【0098】
上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば上記した熱硬化型樹脂を溶液とし、この溶液をロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で塗布し、乾燥し、硬化させる方法が挙げられる。上記溶液の塗布量としては、固形分で概ね5〜30μmが適当であり、好ましくは15〜25μmとすれば良い。
【0099】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。電離放射線は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、例えば可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、特に紫外線、電子線等を用いることが望ましい。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nm程度の波長域を使用することができる。また、電子線源としては、例えばコッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、一般には100〜1000keV程度、好ましくは100〜300keV程度のものを使用することができる。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度とすれば良い。
【0100】
電離放射線硬化型樹脂は、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、複数種混合して用いることができる。なお、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
【0101】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速いため、高速度、短時間で効率良く硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0102】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
【0103】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
【0104】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェ−ト等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
【0105】
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。
【0106】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般には電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度とすれば良い。
【0107】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば電離放射線硬化型樹脂を溶液とし、この溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布すれば良い。この場合の溶液の塗布量としては、固形分として概ね5〜30μmとすれば良く、より好ましくは15〜25μmとすれば良い。
【0108】
また、電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層に、より一層耐擦傷性、耐摩耗性を付与する場合には、必要に応じて無機充填材を配合することができる。例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等を挙げることができる。
【0109】
無機充填材の使用量は限定的ではないが、通常は電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して1〜80重量部程度とすれば良い。
【0110】
表面保護層の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0111】
表面保護層のおもて面(大気に露出している面)には、凹凸が形成されていてもよい。通常はエンボス加工により凹凸模様を形成する。エンボス加工方法は特に限定されず、例えば、透明性アクリル系樹脂層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧・賦形後、冷却する方法が好ましい方法として挙げられる。エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0112】
被着材
本発明化粧シートが適用される被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。例えば、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられる。特に、本発明化粧シートは、木質材に好適に使用することができる。木質材としては、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
【0113】
被着材への積層
本発明の化粧シートは、各種の被着材等に積層され、化粧板として使用される。積層方法は限定的でなく、例えば接着剤により化粧シートを被着材に貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0114】
このようにして製造された化粧板は、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材、窓枠、扉、手すり等の建具の表面化粧板、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板等に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0115】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げ、さらに詳しく説明する。ただし、本発明の範囲は実施例に限定されない。
【0116】
実施例1
(1)着色隠蔽層用の水系塗工剤Aの調製
水性ウレタンーアクリル共重合体系白色インキ(ザ・インクテック(株)製、オーデKEX白)100重量部、水分散性イソシアヌレート結合含有イソシアネート架橋剤10重量部(日華化学(株)製 NKアシストIS−100N)、水20重量部及びイソプロピルアルコール20重量部を混合して、着色隠蔽層用の塗工剤Aを調製した。
【0117】
(2)絵柄模様層用の水系塗工剤Bの調製
〔化9〕で表されるキノクサリンジオン誘導体(ピグメントNo.PY213)10重量部、水性ウレタン系樹脂15重量部、水55重量部及びイソプロピルアルコール20重量部からなる水性インキに、さらに水20重量部及びイソプロピルアルコール20重量部を混合し、絵柄摸様層用の水系塗工剤Bを調製した。
【0118】
(3)透明性接着剤層用の水系塗工剤Cの調製
水性ウレタン樹脂含有接着剤100重量部(東洋紡績(株)製 バイロナールMD1480)、イソシアネート架橋剤(日華化学(株)製 NKアシストIS−100N)10重量部及び水10重量部を混合し、透明性接着剤層用の塗工剤Cを調製した。
【0119】
(4)表面保護層用の水系塗工剤Dの調製
水性アクリル樹脂系インキ100重量部(ザ・インクテック(株)製 オーデACT)、水分散性イソシアヌレート結合含有イソシアネート架橋剤14重量部、水5重量部及びイソプロピルアルコール5重量部を混合し、表面保護層用の塗工剤Dを調製した。
【0120】
(化粧シートの作製)
基材シートとして、ポリプロピレンを主成分とする60μmの着色シートを用い、その表裏両表面にコロナ放電処理を施した。その後、着色隠蔽層用の水系塗工剤A、絵柄模様層用の水系塗工剤Bを順次グラビア印刷法にて表面全体に均一に塗布・乾燥し、着色隠蔽層及び絵柄模様層を順次形成した。
【0121】
次いで、その上に、接着剤層用水系塗工剤Cをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、3g/mの透明性接着剤層を形成させた。
【0122】
その接着剤層上に、厚み80μmの透明なポリプロピレン系フィルムをドライラミネート方式で積層して透明性樹脂層を形成させた。
【0123】
次いで、その透明樹脂層の表面にエンボス加工により凹凸を形成させた後、上記に示す配合の表面保護層用の水系塗工剤Dをグラビア印刷法により塗布・乾燥し、5g/mの表面保護層を形成させた。
【0124】
比較例1
絵柄模様層用の水系塗工剤の黄色顔料として、〔化9〕で表されるキノクサリンジオン誘導体に代えて縮合アゾ(ピグメントNo.PY128)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0125】
比較例2
絵柄模様層用の水系塗工剤の黄色顔料として、〔化9〕で表されるキノクサリンジオン誘導体に代えてキノフタロン(ピグメントNo.PY138)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0126】
比較例3
絵柄模様層の水系塗工剤の黄色顔料として、〔化9〕で表されるキノクサリンジオン誘導体に代えてイソインドリノン(ピグメントNo.PY109)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0127】
(試験方法)
1.退色性試験
超促進耐候試験機(「アイスーパーUVテスター」、岩崎電気株式会社製)(以下S−UVと記す)を用いて、実施例1及び比較例1〜3で作製した化粧シートを温度63℃湿度50%RHの状況下においた。その後、照度が60mW/cm(365nm)である光を20時間化粧シートに照射し次いで4時間結露の状態にするというサイクルを200時間繰り返して、超促進耐候実験を行った。各化粧シートの実験前後の色差変化を色彩色差計(ミノルタ(株)製、製品名「CR−310」)により測定し、色差(ΔE)を求めた。すなわち、促進試験前後の化粧シートのL値、a値、b値を測定し、下記の式1により色差変化ΔEを算出した。その結果を下記の表1に示す。実施例1の化粧シートの色差(ΔE)は低く、塗工当時の色彩を維持していた。
【0128】
ΔE=〔(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2 ・・・式1
2.剥離試験
実施例1及び比較例1〜3において基材シートに水系塗工剤A及びBを基材シート全面に均一に塗布した時点のシートを各試験体(剥離試験用)として用いた。
【0129】
次いで、超促進耐候実験による水が当該各試験体表面に直接接触しないように、当該各試験体の表面に透明性樹脂層を設置した後、当該各試験体に対して上記超促進耐候実験を行った。耐候実験後、各試験体表面にある透明性樹脂層を取り除いた。
【0130】
絵柄摸様層が剥離されやすい状況を作るために、上記耐候試験後の各試験体表面に十字型の傷をつけた。次いで、セロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製)を試験片表面に貼着し、垂直上方に勢いよく剥がした。化粧シートから絵柄模様層が剥離しているか否かを観察した。「剥離が全く生じなかった」を「○」と、「セロテープ(登録商標)貼着面の2割以下の剥離が生じた」を「△」と、「セロテープ(登録商標)貼着面の2割以上の剥離が生じた」を「×」と評価した。その結果を下記の表1に示す。
【0131】
【表1】

3.ヘイズ値の測定
基材シートとして、厚さ75μmの透明PETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)、「HS74」)を用いた。その基材シート上に実施例1及び比較例1における絵柄模様層用の水系塗工剤Bをそれぞれグラビア印刷法にて均一に塗布、乾燥し、1g/mの絵柄模様層(厚さ1μm)を形成させた。
【0132】
得られた絵柄模様層形成シートのヘイズ値を直読ヘイズメーター((株)東洋精機製作所製)により、測定した。その結果を下記の表2に示す。

4.くすみ評価
実施例1及び比較例1において作製した化粧シートのくすみを目視により観察した。「くすみが認められなかった」を「○」、「くすみが認められた」を「×」と評価した。その結果を下記の表2に示す。
【0133】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に絵柄模様層が形成されている化粧シートであって、
(a)前記絵柄模様層が、黄色顔料を含む水性組成物により形成され、
(b)前記黄色顔料が下記一般式(1):
【化1】

〔ただし、R及びRは各々独立に、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、R及びR’は各々独立に、水素、C−Cアルキル基、又はフェニル基を表す。フェニル基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基及びハロゲンの少なくとも1種の置換基を有していてもよい。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕
で表される化合物である
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記黄色顔料が、
前記黄色顔料10重量部、水性ウレタン樹脂15重量部、水75重量部及びイソプロピルアルコール40重量部からなる組成物から形成される厚さが1μmの乾燥薄膜のヘイズ値を測定した結果が45%以下を示すもの、
である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記基材シートと絵柄模様層との間に、さらに着色隠蔽層が形成されている、請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記着色隠蔽層が黄色顔料を含む水性組成物から形成されているものであって、かつ前記黄色顔料が下記一般式(2):
【化2】

〔ただし、R及びRは各々独立に、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、R及びR’は各々独立に、水素、C−Cアルキル基、又はフェニル基を表す。フェニル基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基及びハロゲンの少なくとも1種の置換基を有していてもよい。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕
で表される化合物である、請求項3記載の化粧シート。
【請求項5】
前記基材シートがポリオレフィン系樹脂からなる、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
絵柄模様層上に、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び表面保護層が順に積層されている、請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項7】
前記透明性接着剤層及び表面保護層のうち少なくとも1種が水性組成物から形成されている、請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シートの基材シート側を被着材に貼着してなる化粧板。
【請求項9】
下記一般式(3):
【化3】

〔ただし、R及びRは各々独立に、Cl,COOCH、COOC、COOC、COOC、CONH、CONHCH、CON(CH,又はSONRR’を表し、R及びR’は各々独立に、水素、C−Cアルキル基、又はフェニル基を表す。フェニル基は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基及びハロゲンの少なくとも1種の置換基を有していてもよい。Rは、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素又は臭素を表す。Rは、水素、C−Cアルキル基、塩素又は臭素を表す。〕
で表される黄色顔料を含有する水性インキ組成物。

【公開番号】特開2006−205709(P2006−205709A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149711(P2005−149711)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】