説明

化粧品組成物並びに当該化粧品組成物を用いる美容処理方法

【課題】アスコルビン酸又はその誘導体が水相中に存在する場合であっても、微細な油滴が長期間に亘って安定に水相中に分散することのできる、オレオソーム配合化粧品を提供すること。
【解決手段】水相に分散している油相を有する水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物であって、
(a)油;(b)水;(c)少なくとも1つの親油性界面活性剤;(d)少なくとも1つのエーテル型非イオン性親水性界面活性剤;(e)少なくとも1つのC10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩;及び(f)アスコルビン酸又はその誘導体を含み、
前記油相は(c)親油性界面活性剤、(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩からなる少なくとも1つの層で被覆されており、
前記(f)成分が前記水相中に存在する、化粧品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性が改善された水中油型エマルジョン形態の化粧品組成物、並びに、当該化粧品組成物を用いる美容処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレオソームとは、モノ−又はオリゴラメラ液晶層によって被覆された油滴を意味しており、当該オレオソームを水相中に分散した水中油型エマルジョンの形態を有する化粧品が既知である。そして、前記液晶層を構成する物質として、例えば、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、及び、他の成分の組み合わせが挙げられる。
【0003】
オレオソームは、バリア機能、湿潤効果、及び、浸透促進効果を備えており、これらの機能及び効果を利用して優れた美容効果を発揮する化粧品が提案されている。
【0004】
例えば、特開平7−165530号公報には、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、及び、脂肪酸からなるモノラメラ層又はオリゴラメラ層で被覆された、ビタミンE等の親油性有効成分を含む油滴が水相中に分散した水中油型エマルジョンの形態の化粧品が開示されている。
【0005】
また、特開平8−127526号公報には、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、及び、イオン性両親媒性脂質からなるモノラメラ層又はオリゴラメラ層で被覆された油滴が水相中に分散した水中油型エマルジョンの形態の化粧品が開示されている。
【0006】
なお、上記の各公報には、水相中に親水性の有効成分を含むことができる旨が記載されているが、例えばアスコルビン酸等の美白成分を使用することについては記載も示唆もされていない。
【特許文献1】特開平7−165530号公報
【特許文献2】特開平8−127526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、皮膚のしみ、そばかす等の色素沈着は、ホルモンの異常分泌、紫外線、炎症等によって、表皮色素細胞内のメラニン産生信号伝達回路が活性化して、メラニン産生主要酵素であるチロシナーゼの産生、活性発現が亢進した結果等により、メラニンが表皮に過剰に沈着するために生じる。
【0008】
このような色素沈着への対処手段として、従来より、アスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸誘導体、コウジ酸、エラグ酸、レゾルシン及びその誘導体、その他の美白成分が、皮膚に塗布される美白用化粧品等の有効成分として使用されている。
【0009】
そこで、本発明者らは、アスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体等の美白成分と共にオレオソームを含む化粧品を鋭意検討したが、アスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体を美白成分として使用する場合、オレオソーム構成成分として親油性界面活性剤及びC10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩と共に親水性界面活性剤としてエステル型のものを使用すると、微細な油滴が長期間に亘って安定に水相中に分散することができず、油滴が合一して不安定化することが判明した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、アスコルビン酸又はその誘導体を配合する場合であっても、微細な油滴が長期間に亘って安定に水相中に分散することのできる、オレオソーム配合化粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、新たな界面活性剤系を用いてオレオソームを構成することによって達成される。すなわち、本発明の目的は、水相に分散している油相を有する水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物であって、
(a)油;
(b)水;
(c)少なくとも1つの親油性界面活性剤;
(d)少なくとも1つのエーテル型非イオン性親水性界面活性剤;
(e)少なくとも1つのC10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩;及び
(f)アスコルビン酸又はその誘導体
を含み、
前記油相が(c)親油性界面活性剤、(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩からなる少なくとも1つの層で被覆されており、
前記(f)成分が前記水相中に存在する、化粧品組成物によって達成される。
【0012】
前記(c)親油性界面活性剤は2〜5のHLBを有することが好ましい。2〜5のHLBを有する前記(c)親油性界面活性剤は、好ましくは、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖トリステアリン酸エステル、ジステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、デカステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ジエチレングリコール、パルミチン酸とステアリン酸とのグリセリルエステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレン2EO(エチレンオキシド単位を2個有する)、モノ−及びジベヘン酸グリセリル、及び、テトラステアリン酸ペンタエリスリトールからなる群から選択される。
【0013】
前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤は8〜13のHLBを有することが好ましい。8〜13のHLBを有する前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤は、好ましくは、ポリエチレングリコール及び任意にプロピレングリコールとモノ−又はポリ(C12−C22)飽和又は不飽和アルコールとのエーテルであって、2〜20のエチレンオキシド単位と任意に1〜10のプロピレンオキシド単位を有するエーテル;5〜25のエチレンオキシド単位を有する、蜜蝋とエトキシル化ソルビタンとのエーテル;5〜30のエチレンオキシド単位を有する、ポリエチレングリコールとコレステロールとのエーテル;及び、12〜20の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルポリグルコシドからなる群から選択される。
【0014】
前記(e)少なくとも1つのC10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩はグルタミン酸ステアロイルのアルカリ塩であることが好ましい。
【0015】
前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の総量は組成物の全重量を基準にして1〜6重量%であることが好ましい。
【0016】
前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の各量の比は、前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の総重量を基準にして35〜70重量%/25〜40重量%/5〜35重量%であることが好ましい。
【0017】
前記(a)油の量は、組成物の全重量を基準にして5〜50重量%であることが好ましい。
【0018】
前記(a)油/前記(b)水の重量比は1以下であることが好ましい。
【0019】
前記(f)成分の量は組成物の全重量を基準にして0.01〜20重量%であることが好ましい。
【0020】
前記油相からなる油滴の直径は1000nm未満であることが好ましい。また、前記油相からなる油滴は2以上の層で被覆されていることが好ましい。
【0021】
上記化粧品組成物は好適に美白に使用することができる。したがって、本発明は、上記の化粧品組成物をケラチン物質に塗布することを含む、ケラチン物質の美容処理方法にも関する。前記ケラチン物質は好ましくは皮膚である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の化粧品組成物では、アスコルビン酸又はその誘導体が水相中に配合されているにもかかわらず、油滴が合一して不安定化することがなく、微細な油滴が長期に亘って安定して存在することができる。したがって、本発明によれば、微細な油相が均一に水相中に分散した化粧品を得ることができる。
【0023】
また、本発明の化粧品組成物及び当該化粧品組成物を用いる美容処理方法では、アスコルビン酸又はその誘導体が有する美白効果に加えて、オレオソームの有するバリア機能、湿潤効果、及び、浸透促進効果を利用して効果的な美容処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、オレオソーム配合水中油型エマルジョンにおいて、アスコルビン酸又はその誘導体が水相中に存在する場合には、親油性界面活性剤、エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の組み合わせを用いてオレオソームのラメラ層を構成すると、オレオソームが安定に水相中に存在し、微細な油相が長期に亘って維持されるという新規な知見に基づく。
【0025】
したがって、本発明の化粧品組成物は前記アスコルビン酸又はその誘導体と共に、親油性界面活性剤、エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の組み合わせからなるラメラ層を有するオレオソームを必須に含むものである。なお、エーテル型非イオン性親水性界面活性剤に代えてエステル型非イオン性親水性界面活性剤を使用すると、オレオソームは不安定化する。したがって、本発明の化粧品組成物では、エステル型非イオン性親水性界面活性剤を使用しない。
【0026】
本発明の化粧品組成物に配合されるオレオソームはラメラ状すなわち薄膜状の液晶層によって被覆された油相(油滴)を含んでおり、モノラメラ液晶層又はオリゴラメラ液晶層を有している。なお、モノラメラ層とは1つのラメラ層を、また、オリゴラメラ層とは2つ以上、好ましくは2〜5のラメラ層を意味している。
【0027】
前記油相からなる油滴の平均直径は1000nm未満であり、好ましくは800nm未満、より好ましくは500nm未満である。皮膚の内部角質細胞の間隙は比較的大きいのに対し、オレオソームはそのサイズが小さいので、オレオソームは皮膚に良好に浸透することができる。
【0028】
前記液晶層(液晶膜)は少なくとも1つの親油性界面活性剤、少なくとも1つのエーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、少なくとも1つのC10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の組み合わせからなる。
【0029】
親油性界面活性剤としては、親油性である限り任意の界面活性剤を使用することができるが、好ましくは2〜5のHLB(親水性−親油性バランス)を有する。2〜5のHLBを有する親油性界面活性剤としては、例えば、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖トリステアリン酸エステル、ジステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、デカステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ジエチレングリコール、パルミチン酸とステアリン酸とのグリセリルエステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレン2EO(エチレンオキシド単位を2個有する)、モノ−及びジベヘン酸グリセリル、及び、テトラステアリン酸ペンタエリスリトールからなる群から選択される1又は2以上が挙げられる。親油性界面活性剤としては、特に、ショ糖トリステアリン酸エステルが好ましい。前記親油性界面活性剤は単独で使用されてもよいし、2種類以上の混合物として使用されてもよい。
【0030】
本発明で使用されるエーテル型非イオン性親水性界面活性剤は、エーテル部位を有し、非イオン性で且つ親水性の界面活性剤である。エーテル型非イオン性親水性界面活性剤としては、8〜13のHLBを有するものが好ましい。8〜13のHLBを有するエーテル型非イオン性親水性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール及び任意にプロピレングリコールとモノ−又はポリ(C12−C22)飽和又は不飽和アルコールとのエーテルであって、2〜20のエチレンオキシド単位と任意に1〜10のプロピレンオキシド単位を有するエーテル;5〜25のエチレンオキシド単位を有する、蜜蝋とエトキシル化ソルビタンとのエーテル;5〜30のエチレンオキシド単位を有する、ポリエチレングリコールとコレステロールとのエーテル;及び、12〜20の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルポリグルコシドからなる群から選択される1又は2以上が挙げられる。前記エーテル型非イオン性親水性界面活性剤は単独で使用されてもよいし、2種類以上の混合物として使用されてもよい。
【0031】
ポリエチレングリコール及び任意にプロピレングリコールとモノ−又はポリ(C12−C22)飽和又は不飽和アルコールとのエーテルであって、2〜20のエチレンオキシド単位と任意に1〜10のプロピレンオキシド単位を有するエーテルとしては、例えば、
日本エマルジョン(株)製EMALEX 608、又は、Croda社製BRIJ 76として市販されている、8又は10のエチレンオキシド単位を有する、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(INCI名;ステアレス−8又はステアレス−10):
日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BC-7、又は、日本エマルジョン(株)製EMALEX107として市販されている、7のエチレンオキシド単位を有する、セチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(INCI名;セテス−7):
Croda社製BRIJ 56、又は、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BC-10として市販されている、10のエチレンオキシド単位を有する、セチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(INCI名:セテス−10):
日本エマルジョン(株)製のEMALEX703、又はCognis社製のDehydol LS3DEONとして市販されている、
3のエチレンオキシド単位を有する、ラウリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(INCI名:ラウレス−3):
ICI Surfactant社製RENEX 36として市販されている、6のエチレンオキシド単位を有する、トリデシルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(INCI名:トリデセス−6):
Croda社製VOLPO 10、又は、日光ケミカルズ(株)製 Nikkol BO-10として市販されている、10のエチレンオキシド単位を有する、オレイルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(INCI名;オレス−10):
日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BB-10として市販されている、10のエチレンオキシド単位を有する、ベヘニルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(INCI名;ベヘネス−10):
日光ケミカルズ(株)製NIKKOL PBC-31として市販されている、1のエチレンオキシド単位及び4のプロピレンオキシド単位を有する、セチルアルコールのポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール エーテル(INCI名;PPG−4−セテス−1):
Croda社製VOLPO CS 5、又は、Jeen International Corporation製Jeecol CS-5として市販されている、5のエチレンオキシド単位を有する、セチルステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(INCI名;セテアレス−5):及び
日光ケミカルズ(株)製NIKKOL PBC-33として市販されている、10のエチレンオキシド単位及び4のプロピレンオキシド単位を有する、セチルアルコールのポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール エーテル(INCI名;PPG−4−セテス−10)
等が挙げられる。
【0032】
5〜25のエチレンオキシド単位を有する、蜜蝋とエトキシル化ソルビタンとのエーテルとしては、例えば、
日光ケミカルズ(株)製GBW-25として市販されている、ソルベス−6 ビーズワックス:及び
日光ケミカルズ(株)製GBW-125として市販されている、ソルベス−20 ビーズワックス
等が挙げられる。
【0033】
5〜30のエチレンオキシド単位を有する、ポリエチレングリコールとコレステロールとのエーテルとしては、例えば、
日本エマルジョン(株)製EMALEX CS-10として市販されている、10のエチレンオキシド単位を有するもの(INCI名;コレス−10):
日本エマルジョン(株)製EMALEX CS-15として市販されている、15のエチレンオキシド単位を有するもの(INCI名;コレス−15):
日本エマルジョン(株)製EMALEX CS-20として市販されている、20のエチレンオキシド単位を有するもの(INCI名;コレス−20):
日本エマルジョン(株)製EMALEX CS-24として市販されている、24のエチレンオキシド単位を有するもの(INCI名;コレス−24)
等が挙げられる。
【0034】
12〜20の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルポリグルコシドは、C12〜C20アルコールとグルコースとの縮合によって得られる。前記アルキルポリグルコシドとしては、12〜18の炭素原子を有するものが好ましく、親水性基であるグルコシド部位を1〜3個有するものが好ましい。前記アルキルポリグルコシドの例としては、Seppic社製Montanov L(C12〜C20アルキルグルコシド、及び、C14〜C22アルコールの混合物20/80) が挙げられる。また、他の例としては、Seppic社製Oramix CG100として市販されている、カプリリル/カプリル グルコシドが挙げられる。また、更に他の例としては、Seppic社製Montanov 68(セチルステアリルグルコシド、セチルアルコール及びステアリルアルコールの混合物(12/46/42))、又は、Degusaa Care & Surface Specialities社製Tegocare CG90として市販されている、セテアリルグルコシドが挙げられる。 また、更に他の例としては、Seppic社製Montanov 14(ミリスチルグルコシド及びミリスチルアルコールの混合物)として市販されている、ミリスチルグルコシドが挙げられる。また、更に他の例としては、Cognis社製Plantaren 1200Nとして市販されている、ラウリルグルコシドが挙げられる。また、更に他の例としては、Aldrich社製のステアリルグルコシド、及び、セチルグルコシド等が挙げられる。
【0035】
エーテル型非イオン性親水性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール及び任意にプロピレングリコールとモノ−又はポリ(C12−C22)飽和又は不飽和アルコールとのエーテルであって、2〜20のエチレンオキシド単位と任意に1〜10のプロピレンオキシド単位を有するエーテルが好ましく、8又は10のエチレンオキシド単位を有する、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテルがより好ましい。
【0036】
10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩としては、C10−C22アシルグルタミン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。C10−C22アシルグルタミン酸としては、グルタミン酸ステアロイル、グルタミン酸ラウロイル、グルタミン酸パルミトイル、グルタミン酸ココイル、グルタミン酸水添牛脂等が挙げられる。好ましいC10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩は、グルタミン酸ステアロイルのナトリウム塩、グルタミン酸ステアロイルの2ナトリウム塩、グルタミン酸ステアロイルのカリウム塩、グルタミン酸ラウロイルのナトリウム塩、グルタミン酸ラウロイルの2ナトリウム塩、グルタミン酸ラウロイルのカリウム塩、グルタミン酸ココイルのナトリウム塩、グルタミン酸水添牛脂のナトリウム塩、及び、これらの混合物である。グルタミン酸ステアロイルのナトリウム塩がより好ましい。グルタミン酸ステアロイルのナトリウム塩は、例えば、味の素(株)よりAmisoft HS11Pという名称で市販されており、グルタミン酸ステアロイルの2ナトリウム塩は、例えば、味の素(株)より、Amisoft HS21(P)という名称で市販されている。前記C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩は単独で使用されてもよいし、2種類以上の混合物として使用されてもよい。
【0037】
前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の総量は組成物の全重量を基準にして1〜6重量%であることが好ましく、2〜4重量%であることがより好ましい。
【0038】
前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の各量の比は、前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の総重量を基準にして35〜70重量%/25〜40重量%/5〜35重量%であることが好ましい。
【0039】
前記(a)油としては、任意の油を使用することができる。油は、好ましくは液状である。ここで、「液状」とは、室温(25℃)及び大気圧(760mmHg)下で液状又はペースト状(非固形)であることを意味する。液状油としては、一般に、化粧品に使用されている油を単独で又は混合して使用することができる。
【0040】
前記油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油;植物油、エステル油等の極性油;又は、これらの混合物であってよい。
【0041】
炭化水素油としては、例えば、ミネラルオイル(流動パラフィン)、流動ワセリン、液体ナフタレン等の直鎖又は分枝状の炭化水素、水素化ポリイソブテン、イソエイコサン、スクワラン、スクアレン、及び、デセン/ブテンコポリマー、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0042】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、等の鎖状オルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、シクロヘキサシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0043】
植物油としては、例えば、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、大豆油、落花生油、メドウフォーム油、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0044】
エステル油としては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル、オクタン酸2−エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、コハク酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸トリデシル等が挙げられる。ミリスチン酸イソプロピル、トリエチルヘキサノイン、マレイン酸ジイソステアリル、パルミチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、イソステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン等が挙げられる。トリエチルヘキサノイン、及び、マレイン酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチレングリコール、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0045】
前記油としては、全体として極性を有するものが好ましい。したがって、極性油、又は、極性油と非極性油の混合物が好ましい。特に、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル等の極性油が好ましい。
【0046】
前記油の量は、組成物の全重量を基準にして5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。
【0047】
本発明の化粧品組成物を構成する油相は、前記(a)油の他に、更に、ステアリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール等の他の油性成分を含むことができる。
【0048】
前記油相は、前記他の油性成分を、組成物の全重量に対して、0.01〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%含んでもよい。
【0049】
油相の被覆層を構成する成分に対する油相の重量比は、1〜15が好ましく、5〜15がより好ましい。
【0050】
前記(b)水としては任意の水を使用することができる。前記水は、ヤグルマギクの水等の芳香蒸留水、及び/又は、ヴィテル(Vittel)の水、ルーカス(Lucas) の水、ラ ロシェ ポセイ(La Roche Posay)の水等のミネラルウォーター、及び/又は、温泉水、及び/又は、海洋深層水等の海水であってもよい。
【0051】
前記水の量は、組成物の全重量を基準にして50〜95重量%が好ましく、60〜90重量%がより好ましい。前記(a)油/前記(b)水の重量比は1以下であることが好ましい。
【0052】
本発明の化粧品組成物を構成する前記水相は、前記(b)水の他に、更に、水混和性媒体を更に含むことができる。水混和性媒体としては、常温(25℃)において水と混和性の有機溶媒(水混和性有機溶媒)を使用することができる。
【0053】
常温(25℃)において水と混和性の有機溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
エタノール、イソプロパノール等の2〜6の炭素原子を有するモノアルコール類;
2〜20の炭素原子、好ましくは、2〜10の炭素原子、より好ましくは2〜6の炭素原子を有するポリオール類、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、及びジエチレングリコール;
グリコールエーテル類(特に、3〜16の炭素原子を有するもの)、(例えば、モノ−、ジ−、トリプロピレングリコールの(C1-C4)アルキルエーテル類、及び、モノ−、ジ−、トリエチレングリコールの(C1-C4)アルキルエーテル類);並びに
これらの混合物。
【0054】
前記水相は、前記水混和性有機溶媒を、組成物の全重量に対して、0.1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%含んでもよい。
【0055】
前記(f)アスコルビン酸又はその誘導体は、本発明の化粧品組成物を構成する前記水相中に存在する。したがって、本発明における前記(f)成分は、水溶性美白成分である。ここで、「美白成分」とは、ヒトの皮膚を効果的に脱色及び/又は白くする成分を意味している。それは、特に、外的要因等による茶色の色素によるしみ又は老化等の内的要因によるしみを有するヒトの皮膚、或いは、紫外線照射後等のメラニン生成による茶色の着色の始まりに対抗しようとするヒトの皮膚に塗布される。アスコルビン酸又はその誘導体は水溶性という共通の特性を有しており、類似の挙動を示す。アスコルビン酸又はその誘導体としては、単一種類のものを用いてもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0056】
アスコルビン酸はD又はL体があり、L体が好適に使用される。アスコルビン酸はビタミンCとも称されており、その強い還元作用により、メラニン生成抑制作用を有する。アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸の塩であってもよく、アスコルビン酸の塩は、好ましくは、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、及び、リン酸アスコルビルナトリウムから選択される。アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸の配糖体又はアスコルビン酸のエステルであってもよく、例えば、アスコルビン酸の配糖体としてはアスコルビルグルコシドが挙げられる。アスコルビン酸のエステルとしては、例えば、アスコルビン酸のシリルエステル、アスコルビン酸のトコフェリルエステル、アスコルビン酸のアルキルエステルが挙げられる。アスコルビン酸のアルキルエステルとしては、好ましくは、アスコルビン酸メチルエステル、又は、アスコルビン酸エチルエステルが使用できる。特に、アルコルビン酸またはアスコルビルグルコシドが好ましい。
【0057】
アスコルビン酸としては、Ascorbic Acid Fine Powder (\t "new" DSM Nutritional Products, Inc.)が挙げられる。アスコルビン酸の誘導体としては、具体的には、例えば、Exsymol社よりPRO-AAの名称で市販の5,6−ジ−O−ジメチルシリルアスコルベート;千寿製薬(株)よりSEPIVITAL EPCの名称で市販のdl−α−トコフェリル−2−l−アスコルビルフォスフェート;Roche社よりStay-C50の名称で市販のリン酸アスコルビルナトリウム;(株)林原生物化学研究所より市販のアスコルビルグルコシド;日本ファインケミカル(株)製の3−O−エチルアスコルビン酸等が挙げられる。
【0058】
アスコルビン酸又はその誘導体は、無水マレイン酸及びスチレンのコポリマーと組み合わせて使用することが好ましい。特に、前記コポリマーの無水マレイン酸単位の少なくとも一部は加水分解されていることが好ましい。前記加水分解された無水マレイン酸単位は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ塩の形態とされていてもよい。前記無水マレイン酸単位はコポリマー全体を1モルとした場合にその0.4〜0.9モルを占めることが好ましく、更に、無水マレイン酸単位とスチレン単位が50:50の比率であることが好ましい。特に、無水マレイン酸単位とスチレン単位が50:50で、且つ、アンモニウム塩又はナトリウム塩の形態にあることが好ましい。前記コポリマーと組み合わせて使用することにより、アスコルビン酸又はその誘導体の安定性が向上する。前記コポリマーとしては、例えば、Clay Valley社により品番SMA1000H(登録商標)として市販の、水中30%のアンモニウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)のコポリマー、またはClay Valley社により品番SMA1000HNa(登録商標)として市販の、水中40%のナトリウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマーを使用することができる。前記コポリマーは、化粧品組成物の全重量に対して0.1乃至20重量%の濃度で、好ましくは0.1乃至10重量%の濃度で使用することが好ましい。
【0059】
本発明の化粧品組成物中への前記(f)成分の配合量は特には限定されないが、通常は、組成物の全重量を基準として、0.01〜20重量%であり、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0060】
本発明の化粧品組成物は、水溶性高分子化合物を含んでもよく、また、含まなくてもよい。ここでの水溶性高分子は、植物、微生物、動物などに由来する天然高分子化合物(多糖類、たんぱく質など)、半合成高分子化合物(セルロース系、デンプン系、アルギン酸系など)および合成高分子化合物(アクリル系、ビニル系など)に分類される。さらに、電気的性質により陰イオン性、陽イオン性、両性および非イオン性に分けられる。これらの水溶性高分子化合物は、レオロジー的性質の改善(増粘作用など)、界面活性作用、皮膜形成作用、保湿作用、包接作用など多岐にわたる機能を有している。天然高分子化合物としては、例えば、アラビアガム、カラーギナン、グアガム、ローストビーンガム、ペクチン、トラガント、デンプン、キサンタンガム、デキストリン、フルクタン、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類、ゼラチン、カゼインなどのたんぱく質などが挙げられる。セルロース系の半合成高分子化合物としては、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、カチオン化セルロースなどが挙げられる。アルギン酸系の半合成高分子化合物としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールなどが挙げられる。アクリル系の合成高分子化合物としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、アクリルアミド/アクリル酸共重合体などが挙げられる。ビニル系の合成高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。その他ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、カチオン化グアガム、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどが挙げられる。さらに、これらの高分子化合物の誘導体、あるいはこれらの高分子化合物と適切なモノマーとの共重合体で、水溶性のものなどが挙げられる。これらの化合物の中で、肌保護効果、肌にはり、透明感およびすべすべ感を与える効果を考慮すると、多糖類化合物、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のモノマーとの共重合体が好ましい。また、増粘剤としては、カルボキシビニルポリマーが好ましい。
【0061】
本発明の化粧品組成物が、水溶性高分子化合物を含む場合はその配合量は0.1重量%〜3重量%、0.2重量%〜2重量%、0.3重量%〜1重量%がより好ましい。
【0062】
更に、本発明の化粧品組成物は、親油性活性成分を含むことができる。親油性活性成分は、油相中に存在することができる。親油性活性成分としては、例えば、
D-α-トコフェロール、DL-α-トコフェロール、D-α-トコフェロール酢酸エステル、DL-α-トコフェロール酢酸エステル、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンFのグリセリド;
ビタミンD類、特にビタミンD2 及びビタミンD3 ;
レチノール、レチノールエステル(パルミチン酸レチノールエステル及びプロピオン酸レチノールエステル)、β-カロチン、D-パンテノール、ファルネソール、酢酸ファルネシル;
必須脂肪酸に富んだ油、特にホホバ油及び黒すぐり(cassis)油;
5-n-オクタノイルサリチル酸、サリチル酸;
α-ヒドロキシ酸、例えばクエン酸、乳酸及びグリコール酸のアルキルエステル;
アジア酸、マダガスカル酸(acide madecassique)、アジアチコシド、ツボクサ(Centellaasiatica)の全抽出物、β-グリシレチン酸、α-ビサボロール;
セラミド類、特に2-オレアミド-1,3-オクタデカンジオール;
フィタントリオール(phytanetriol)、乳からのスフィンゴミエリン、ポリ不飽和必須脂肪酸に富む海産物由来のリン脂質、エトキシキン、マンネンロウ抽出物、香油抽出物、ケルセチン、乾燥した微細藻類の抽出物(Algatec社製のalgoxan red)、ベルガモット精油、メトキシケイ皮酸オクチル(Givauden-Roure社製のParsol MCX)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(Givauden-Roure社製のParsol 1789)、オクチルトリアゾン(BASF社製のUvinul T150)、黄色酸化鉄、褐色酸化鉄、黒色酸化鉄、赤色酸化鉄、マイクロメーターサイズ又はナノメーターサイズの形態で提供されてもよいしあるいは被覆された(ペルフルオロオクチルアルキル)形として提供されてもよい酸化チタン、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジリデン-3-カンファー、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4-メチル-6-{3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-(トリメチルシリルオキシ)ジシロキサニル]-2-メチルプロピル}フェノール、ペルフルオロ油(ペルフルオロデカリン及びペルフルオロブロミド)及び超酸化コーン油(Carilene社から市販されているEpaline 100)を挙げることができる。
【0063】
親油性活性成分の配合量は特には限定されないが、通常は、化粧品組成物の全重量を基準として、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%である。
【0064】
また、本発明者らは、本発明の組成物にナノメーターサイズの顔料、特にナノチタン(nanotitanes)を配合すると、本発明の油滴を含有していない組成物の保護指数(un indice de protection)(SPF)よりも高い保護指数を有する太陽光保護組成物を得ることが可能になることを知見した。ナノメーターサイズ(taille nanometriqe)という用語は、200ナノメーターよりも小さい粒度、特に10〜50ナノメーター程度の粒度を意味するものと解釈されるべきである。
【0065】
本発明の化粧品組成物は追加成分として、水相中に、アスコルビン酸又はその誘導体以外の、遊離の状態又は封入された状態の美容的又は皮膚科学的に活性な親水性活性成分の1種又はそれ以上を含有し得る。
【0066】
前記追加の親水性活性成分としては、慣用の親水性活性成分、例えば抗酸化剤、遊離基(フリーラジカル)捕捉剤、保湿剤、メラニン調節剤、日焼け促進剤、脱色剤、皮膚着色剤、脂質調節剤、希釈剤(amincissants)、抗ざ瘡剤、抗脂漏剤、老化防止剤、しわ防止剤、UV防止剤〔ベンゼン-1,4-ジ(3-メチリデンカンファー-10-スルホン酸)〕、角質分解剤、抗炎症剤、清涼化剤(refraichissants)、抗瘢痕形成剤、血管保護剤、抗微生物剤、抗菌剤、発汗防止剤、脱臭剤、皮膚状態調節剤、毛髪状態調節剤、免疫調節剤、栄養剤、ふけ防止剤、脱毛防止剤、染髪剤、毛髪漂白剤、パーマネントウェーブ還元剤、精油及び香料を使用することが可能である。
【0067】
これらの化合物が封入された状態で提供される場合には、これらの化合物はイオン性脂質又は非イオン性脂質から得られる脂質ベシクルあるいはこれら両者の混合物から得られる脂質ベシクルに配合し得る。また、これらの化合物は脂質ナノ粒子、例えばナノ球、ナノスポンジ又はナノカプセルに配合し得る。
【0068】
本発明の化粧品組成物に脂質小胞を配合することは特に好都合である。その理由は、これら2種類のベシクル、すなわち一方は親油性活性成分を含有する油滴であって、ラメラ状の液晶の被膜によって範囲を定められた200 nm近辺の(voisine)好ましい平均寸法を有する液滴と、他方は親水性活性成分を含有する水性コア(芯)をもつ脂質小胞(vesicules)であってそのラメラすなわち薄膜の壁によって範囲を定められた200 nm近辺の好ましい平均寸法を有する脂質小胞とが補足的性質及び良好な相溶性を有するからである。
【0069】
前記追加の親水性活性成分の配合量は特には限定されないが、通常は、化粧品組成物の全重量を基準として、0.01〜20重量%であり、好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは0.01〜10重量%である。
【0070】
また、本発明の化粧品組成物は水相に種々の補足的添加剤、例えば防腐剤、金属封鎖剤及びゲル化剤を含有していてもよい。最終組成物に対して所望される粘度に応じて、1種又はそれ以上のゲル化剤を添加してもよいし、又は添加しなくてもよい。
【0071】
また、本発明の化粧品組成物には油相に種々の補足的添加剤、例えば皮膚軟化性又は潤滑性を有する油類、ワックス類を含有させてもよい。本発明の化粧品組成物は、ほとんどの場合、乳液、クリーム又はゲルの形態で提供され、他の提供の形態も包含される。該組成物は油相の粒径が80nmよりも小さい場合には透明又は半透明である。
【0072】
本発明の化粧品組成物は、水中油型エマルジョンの形態を有している。本発明の化粧品組成物は、皮膚化粧料又は頭髪化粧料のいずれでもよいが皮膚化粧料であることが好ましい。本発明の化粧品組成物は特に化粧水又は美容液、乳液、クリームとして好適である。
【0073】
本発明の化粧品組成物は美白に用いられることが好ましい。美白用化粧品は、美白(whitening)のためにヒトの身体表面に塗布される局所用(topical)組成物であり、好ましくは、皮膚上に塗布される。ここでの「美白」とは、メラニンの生成・沈着を阻害するあらゆる作用を意味しており、例えば、メラニンの生成を抑制したり、生成したメラニンを還元することを含む。
【0074】
本発明の化粧品組成物が化粧水の場合は、当該化粧水は透明又はその外観が均一であることが好ましい。ここで、「透明」とは、屈折または反射による偏向を引き起こさずに光を通過させることを意味する。化粧水の如き組成物の透明性は濁度計を用いて測定できる。Hach社の携帯用濁度計モデル2100P(登録商標)を、例えば組成物の透明限度を測定するために使用することができる。測定された濁度が0から250NTUの間である場合に組成物が透明であると見なされる。
【0075】
本発明の化粧品組成物は、前記(a)、(c)、(d)及び(e)成分を混合・撹拌して被覆油相を構成し、当該被覆油相を前記(b)成分と混合・撹拌することによって、油相が被覆されて水相中に分散された水中油型エマルジョンを形成する方法によって製造することができる。前記(f)成分は前記(b)成分に当初から添加されてもよく、水中油型エマルジョン形成後に、水相中に添加されてもよい。
【0076】
例えば、ポリオール等の水混和性有機溶媒及び/又は防腐剤等の他の任意の親水性成分を高温(好ましくは80℃)で水に溶解して水相を形成する。一方、任意の親油性活性成分と、前記(c)、(d)及び(e)成分、並びに、油とをやや高温(好ましくは75℃)で混合して、均一な油相を形成するまで撹拌する。次に、やや低温(好ましくは70℃)で水相を油相に急速に添加し、混合機(PRIMIX社製TK Robomix等)を使用して高速(好ましくは10000rpm)で撹拌して乳化する。好ましくは10分間、温度を維持して乳化を継続する。乳化された粒子(油相)を粒子分析機(Partical Sizing System社製NICOMP 380ZLS等)にて計測し、1000nm以下であることをチェックすることが好ましい。そして、乳化物の温度を室温に戻す。これにより、水中油型エマルジョンが生成する。必要に応じて水溶性高分子化合物又はゲル化剤を水相中に添加して混合機(Rayneri社製Rayneri VMI等)を用いて中速(好ましくは500rpm)で撹拌して混合してもよい。最後に、アスコルビン酸又はその誘導体を、必要に応じて低級アルコール等の水混和性有機溶媒と共に、室温で、混合機(PRIMIX社製TK Robomix等)を用いて高速(好ましくは5000rpm)で好ましくは3分間撹拌して水相に混合する。これにより、アスコルビン酸又はその誘導体が水相に存在し、当該水相中に液晶層で被覆された油相が分散している水中油型エマルジョン形態の本発明の化粧品組成物を得ることができる。
【0077】
本発明の化粧品組成物は、ケラチン物質に塗布する工程を含むケラチン物質の美容処理方法において使用される。前記ケラチン物質は皮膚であることが好ましい。また、前記美容処理方法は皮膚美白方法であることが好ましい。この方法は、特に、外的要因等による茶色の色素によるしみ及び/又は老化等の内的要因によるしみを除去するために、及び/又は、茶色の皮膚を白くするために好適である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0079】
[実施例1〜4及び比較例1〜3]
以下の表1に示す成分からなる実施例1〜4及び比較例1〜3の水中油型エマルジョンを以下の方法により調製した。表中の数字は全て重量%である。
【0080】
【表1A】

【表1B】

【0081】
ショ糖トリステアリン酸エステル:リョートーシュガーエステルS370(三菱化学フーズ(株)製)
ステアレス−10(エチレンオキシド10単位を有するオキシエチレン化ステアリルアルコール):BRIJ76(Croda社製)
セテス−10(セチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル): NIKKOL BC-10(日光ケミカルズ(株)製)
コレス−20(20のエチレンオキシド単位を有する、ポリエチレングリコールとコレステロールとのエーテル): EMALEX CS-20(日本エマルジョン(株)製)
コレス−24(24のエチレンオキシド単位を有する、ポリエチレングリコールとコレステロールとのエーテル): EMALEX CS-24(日本エマルジョン(株)製)
ステアリン酸PEG−8:モノステアリン酸のポリエチレングリコール(8EO)エステル:MYRJ45V(Croda社製)
ショ糖ステアリン酸エステルとショ糖ジステアリン酸エステルの混合物(50/50):CRODESTA F110(Croda社製)
ポリソルベート61:オキシエチレン化(4EO)されたモノステアリン酸ソルビタン:TWEEN61V(Croda社製)
グルタミン酸ステアロイルナトリウム:アミソフトHS11P(味の素(株)製)
【0082】
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン:KF-56A(信越化学工業(株)製)
カルボマー(カルボキシビニルポリマー):Carbopol 980(Lubrizol社製)
(スチレン/MA)コポリマーNa:スチレン/マレイン酸共重合体のナトリウム塩(濃度40%水溶液)SMA1000HNa(CRAY VALLEY社製)
【0083】
(1)相Aと相Bをそれぞれ約70℃に加熱する。
(2)相Aを相Bに迅速に注入する。
(3)10000rpmで10分間ホモジナイズして均一な混合物を得る。
(4)冷却して他の相を添加する。
【0084】
[安定性評価]
上記のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1〜3の水中油型エマルジョンを45℃で1ヶ月維持して、各エマルジョンの顕微鏡写真から安定性を評価した。
【0085】
図1〜図7は、それぞれ、実施例1〜4及び比較例1〜3の顕微鏡写真である。図1〜図7から明らかなように、実施例1〜4のエマルジョンでは微細な油滴が安定に存在しているのに対し、比較例1〜3のエマルジョンでは微細な油滴が合一して大きな油滴が発生しており、微細な油滴が安定して存在することができない。したがって、比較例1〜3の水中油型エマルジョンに比べて実施例1〜4の水中油型エマルジョンの方が安定である。これらの結果を表1に併せて示す。
【0086】
[実施例5及び比較例4〜5]
以下の表2に示す成分からなる実施例5及び比較例4〜5の水中油型エマルジョンを以下の方法により調製した。表中の数字は全て重量%である。
【0087】
【表2】

【0088】
ショ糖トリステアリン酸エステル:リョートーシュガーエステルS370(三菱化学フーズ(株)製)
グルタミン酸ステアロイルナトリウム:アミソフトHS11P(味の素(株)製)
ステアレス−10(エチレンオキシド10単位を有するオキシエチレン化ステアリルアルコール):BRIJ76(Croda社製)
ステアリン酸PEG−8:モノステアリン酸のポリエチレングリコール(8EO)エステル:MYRJ45V(Croda社製)
ショ糖ステアリン酸エステルとショ糖ジステアリン酸エステルの混合物(50/50):CRODESTA F110(Croda社製)
ポリソルベート61:オキシエチレン化(4EO)されたモノステアリン酸ソルビタン:TWEEN61V(Croda社製)
【0089】
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン:KF-56A(信越化学工業(株)製)
カルボマー(カルボキシビニルポリマー):Carbopol 980(Lubrizol社製)
【0090】
(1)相Aと相Bをそれぞれ約70℃に加熱する。
(2)相Aを相Bに迅速に注入する。
(3)10000rpmで10分間ホモジナイズして均一な混合物を得る。
(4)冷却して他の相を添加する。
【0091】
[安定性評価]
上記のようにして得られた実施例5及び比較例4〜5の水中油型エマルジョンを45℃で1ヶ月維持して、各エマルジョンの顕微鏡写真から安定性を評価した。
【0092】
実施例5のエマルジョンでは微細な油滴が安定に存在していたが、比較例4〜5のエマルジョンでは微細な油滴が合一して大きな油滴が発生しており、微細な油滴が安定して存在することができなかった。したがって、比較例4〜5の水中油型エマルジョンに比べて実施例5の水中油型エマルジョンの方が安定である。これらの結果を表2に併せて示す。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施例1の水中油型エマルジョンの顕微鏡写真(400倍) オリンパス(株)製BX−51で撮影
【図2】実施例2の水中油型エマルジョンの顕微鏡写真(400倍) オリンパス(株)製BX−51で撮影
【図3】実施例3の水中油型エマルジョンの顕微鏡写真(400倍) オリンパス(株)製BX−51で撮影
【図4】実施例4の水中油型エマルジョンの顕微鏡写真(400倍) オリンパス(株)製BX−51で撮影
【図5】比較例1の水中油型エマルジョンの顕微鏡写真(400倍) オリンパス(株)製BX−51で撮影
【図6】比較例2の水中油型エマルジョンの顕微鏡写真(400倍) オリンパス(株)製BX−51で撮影
【図7】比較例3の水中油型エマルジョンの顕微鏡写真(400倍) オリンパス(株)製BX−51で撮影

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相に分散している油相を有する水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物であって、
(a)油;
(b)水;
(c)少なくとも1つの親油性界面活性剤;
(d)少なくとも1つのエーテル型非イオン性親水性界面活性剤;
(e)少なくとも1つのC10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩;及び
(f)アスコルビン酸又はその誘導体
を含み、
前記油相は(c)親油性界面活性剤、(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩からなる少なくとも1つの層で被覆されており、並びに、
前記(f)成分が前記水相中に存在する、化粧品組成物。
【請求項2】
前記(c)親油性界面活性剤が2〜5のHLBを有する、請求項1記載の化粧品組成物。
【請求項3】
2〜5のHLBを有する前記(c)親油性界面活性剤が、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖トリステアリン酸エステル、ジステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、デカステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ジエチレングリコール、パルミチン酸とステアリン酸とのグリセリルエステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレン2EO(エチレンオキシド単位を2個有する)、モノ−及びジベヘン酸グリセリル、及び、テトラステアリン酸ペンタエリスリトールからなる群から選択される、請求項2記載の化粧品組成物。
【請求項4】
前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤が8〜13のHLBを有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項5】
8〜13のHLBを有する前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール及び任意にプロピレングリコールとモノ−又はポリ(C12−C22)飽和又は不飽和アルコールとのエーテルであって、2〜20のエチレンオキシド単位と任意に1〜10のプロピレンオキシド単位を有するエーテル;5〜25のエチレンオキシド単位を有する、蜜蝋とエトキシル化ソルビタンとのエーテル;5〜30のエチレンオキシド単位を有する、ポリエチレングリコールとコレステロールとのエーテル;及び、12〜20の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルポリグルコシドからなる群から選択される、請求項4記載の化粧品組成物。
【請求項6】
前記(e)少なくとも1つのC10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩がグルタミン酸ステアロイルのアルカリ塩である、請求項1乃至5のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項7】
前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の総量が組成物の全重量を基準にして1〜6重量%である、請求項1乃至6のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項8】
前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の各量の比が、前記(c)親油性界面活性剤、前記(d)エーテル型非イオン性親水性界面活性剤、及び、前記(e)C10−C22アシルグルタミン酸アルカリ塩の総重量を基準にして35〜70重量%/25〜40重量%/5〜35重量%である、請求項1乃至7のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項9】
前記(a)油の量が、組成物の全重量を基準にして5〜50重量%である、請求項1乃至8のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項10】
前記(a)油/前記(b)水の重量比が1以下である、請求項1乃至9のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項11】
前記(f)成分の量が組成物の全重量を基準にして0.01〜20重量%である、請求項1乃至10のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項12】
前記油相からなる油滴の直径が1000nm未満である、請求項1乃至11のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項13】
前記油相からなる油滴が2以上の層で被覆されている、請求項1乃至12のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項14】
美白に用いられる、請求項1乃至13のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の化粧品組成物をケラチン物質に塗布することを含む、ケラチン物質の美容処理方法。
【請求項16】
前記ケラチン物質が皮膚である、請求項15記載の美容処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−143858(P2010−143858A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322709(P2008−322709)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】