説明

化粧料

【課題】 細菌、ウィルスなどのあるいは皮脂から出る老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつ、キシミ感の抑制された化粧料の提供を課題としている。
【解決手段】 マイカ粒子を非晶質リン酸カルシウムで被覆した非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が0.1〜99質量%配合され、且つ、前記非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が酸処理工程、洗浄工程、アルカリ工程、リン酸カルシウム被覆工程が実施される製造方法により製造されたものであることを特徴とする化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質リン酸カルシウム複合粒子を用いた化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鱗片状または板状の粒子形状を有する、タルク、カオリン(白土)、ベントナイト、雲母族鉱物(セリサイト、白雲母、金雲母、黒雲母)、焼成カオリンなどの、天然または人造の粘土鉱物やその加工品、あるいは表面処理品(以下、これらを総称する場合は「粘土鉱物類」とする)は、その粒子形状ゆえに肌に対するすべり感にすぐれることから、粉白粉、固形白粉、ファンデーションなどの、いわゆる粉物のベースメーク化粧料の主原料として、詳しくは着色顔料の色を薄める体質顔料や、あるいは肌からの分泌物である皮脂(油分)や汗(水分)を吸着する吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分として、多用されてきた。
【0003】
このうちタルクは透明感があり、また肌に塗り伸ばす際の感触がとくに滑らかで、かつ付着性にすぐれるという特性を有している。またカオリンは、タルクに比べて滑らかさの点で劣るものの、肌からの分泌物を吸着する吸着力や、下地を隠ぺいする隠ぺい力が比較的大きい上、肌の健康に適した弱酸性を示すという特性を有している。
【0004】
それゆえこれまでは、この2者が、ベースメーク化粧料の主原料として併用される場合が多かった。しかし近時、雲母族鉱物でも透明感の高い化粧効果を持つセリサイトや、あるいは真珠の光沢を持つ酸化チタン被覆粒子(チタン雲母など)も、新たな化粧感を持ったベースメーク化粧料用としてその需要を広げつつある。
【0005】
特にセリサイトについては、粘土鉱物類の中でも人気が高く、国内産の純度の高い原料が不足をきたしたり、高価であったりし、海外産の純度の低い原料を輸入して、精製して使用しているのが現状である。そのため、通常、セリサイトと他の雲母族鉱物とは“セリサイト”と“マイカ”との呼び名で区別されて用いられている。
またチタン雲母などの酸化チタン被覆粒子は、白雲母、金雲母などの粉砕物や、セリサイト、タルク、合成雲母などの表面に、屈折率の高い酸化チタンの細かな粒子を被覆した加工品で、チタン層の厚みによって多様な干渉色を生じ、それが真珠光沢として好まれている。さらに、近年、酸化チタンに代えて酸化鉄や酸化クロムなどを被覆したものや、酸化チタンにさらに酸化鉄や酸化クロムなどを被覆したもの、もしくはこれらに染料、顔料が複合されたものなどが開発され、それを称してパール顔料もしくはパール光沢顔料といわれている。このパール顔料は、チタン雲母、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆チタン雲母、黒酸化鉄被覆チタン雲母、カルミン被覆チタン雲母、コンジョウ被覆チタン雲母、カルミン・コンジョウ被覆チタン雲母、酸化クロム被覆チタン雲母、ベンガラ・黒酸化鉄被覆チタン雲母、黒酸化鉄カルミン被覆チタン雲母、黒酸化鉄コンジョウ被覆チタン雲母、チタン雲母+黄色4号、チタン雲母+赤色202号、チタン雲母+青色1号、チタン雲母+青色1号+黄色4号などがあげられる。
【0006】
実際の使用に際しては、これらの粘土鉱物類、即ち、鱗片状または板状の粒子形状を有する鉱物粒子が、その目的に応じて適宜、配合された上、少量の油性成分や着色顔料などの他の成分と混合されて、ベースメーク化粧料が製造される。
【0007】
先に発明者は、肌の過剰な皮脂やそこに生息する細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能にすぐれた非晶質リン酸カルシウムを配合することで、ニキビなどによる肌荒れや炎症などを抑制して、肌を正常な状態に維持するとともに、老廃物による化粧くずれを抑制してメイクアップを長持ちさせる効果を付与した化粧料を提案している(特許文献1)。
また、特許文献2には、顔料を分散させた水系中で、水可溶性カルシウム塩と水可溶性リン酸または水可溶性リン酸塩とを徐々に反応させて顔料表面に水酸化アパタイト及び/またはリン酸三カルシウムを沈着させる被覆顔料と該被覆顔料を用いた化粧料が記載されている。
【0008】
しかし非晶質リン酸カルシウム粒子は、とくに前述したベースメーク化粧料や、あるいはアイシャドウ、口紅などの、肌に塗り伸ばす化粧料に用いた場合に、キシミ感を生じて感触が悪くなることがあり、多量に配合できない場合がある。
そこで、発明者は、マイカなどの鱗片状または板状の基体粒子の表面を、非晶質リン酸カルシウムの微粒子で被覆したことを特徴とする非晶質リン酸カルシウム複合粒子およびこれを用いた化粧料を提案している(特許文献3)。
しかし、このような非晶質リン酸カルシウム複合粒子も基体粒子のみの場合に比べてキシミ感を発生させ易く、化粧料に多量に配合するとキシミ感が生じてしまうという問題を有している。一方、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能については、このような非晶質リン酸カルシウム複合粒子を化粧料に多く配合しなければ、十分満足するものとならないおそれを有している。
即ち、従来の化粧料においては、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつ、キシミ感を抑制することが困難であるという問題を有している。
【0009】
【特許文献1】特開平8−133942号公報
【特許文献2】特許第2914460号公報
【特許文献3】特開2000−169122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつ、キシミ感の抑制された化粧料の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、非晶質リン酸カルシウム被覆粒子の表面が非晶質リン酸カルシウムに被覆されている被覆状態とキシミ感とが関係していること、即ち、非晶質リン酸カルシウムで被覆されない部分があるなど基体粒子の表面を覆う非晶質リン酸カルシウムが不均一となることを抑制することで、キシミ感を抑制し得ることを見出した。
さらに、マイカなど鱗片状または板状の基体粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムの微粒子で、より均一に被覆することについて鋭意検討を行った結果、マイカに所定の方法で非晶質リン酸カルシウムを被覆することで、従来の非晶質リン酸カルシウム複合粒子に比べて非晶質リン酸カルシウムで被覆されない部分を減少させ得ることを見出し、本発明の完成に到ったのである。
【0012】
すなわち、本発明は、前記課題を解決すべく、マイカ粒子を非晶質リン酸カルシウムで被覆した非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が0.1〜99質量%配合され、且つ、前記非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が(1)マイカ粒子とpH1.5以下のリン酸とを混合することにより、前記マイカ粒子の表面をpH1.5以下のリン酸で洗浄処理する酸処理工程、(2)マイカ粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたマイカ粒子を洗浄する洗浄工程、(3)該洗浄工程により洗浄されたマイカ粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、(4)該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりマイカ粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程、が実施される製造方法により製造されたものであることを特徴とする化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が、マイカ粒子とpH1.5以下のリン酸とを混合することにより、前記マイカ粒子の表面をpH1.5以下のリン酸で洗浄処理する酸処理工程、マイカ粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたマイカ粒子を洗浄する洗浄工程、該洗浄工程により洗浄されたマイカ粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりマイカ粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程が実施され製造されていることから非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムで被覆されない部分が発生することを抑制することができる。
したがって、この非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が配合される化粧料を、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつキシミ感の抑制されたものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず本実施形態の化粧料に用いる非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の製造方法について説明する。
本実施形態における非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の基体粒子には、マイカ粒子が用いられる。
また、本実施形態の非晶質リン酸カルシウム被覆粒子の製造方法においては、前記マイカ粒子とリン酸とを混合してマイカ粒子の表面をpH1.5以下のリン酸で洗浄処理する酸処理工程、マイカ粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように前記酸処理工程にて処理されたマイカ粒子を洗浄する洗浄工程、該洗浄工程により洗浄されたマイカ粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、および、該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりマイカ粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程を実施して、マイカ粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させる。
【0015】
前記酸処理工程においては、酸によりマイカ粒子表面に付着している鉄、チタン、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、カリウム、マグネシウムなどの付着物をマイカ粒子の表面から付着物イオンなどとして除去するとともに、マイカ粒子どうしの凝集を抑制させる。この酸処理工程としては、マイカ粒子にリン酸水溶液などをシャワーリングする方法や、リン酸水溶液にマイカ粒子を漬け洗いする方法など、一般の粒状物の洗浄処理方法を採用することができるが、マイカ粒子を全体的に均一かつ十分に処理し得る点から、リン酸水溶液にマイカ粒子を漬け洗いする方法を行うことが好ましい。
なお、このような点において、漬け洗い時のリン酸水溶液に分散させるマイカ粒子の固形分濃度としては、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。この固形分濃度がこのような範囲であることが好ましいのは、固形分濃度が50質量%を超えると、前述の付着物イオン除去、凝集の抑制などの効果が基体材料全体に均一かつ十分に得られないおそれを有し、0.1質量%未満の固形分濃度としても、前述の効果を、それ以上、均一かつ十分とすることが期待できないばかりでなく、使用する設備が大掛かりとなることや使用するリン酸の量に対して得られる非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の量が少なくなることなど生産性が低下するおそれを有するためである。
【0016】
このリン酸水溶液にマイカ粒子を漬け洗いする方法に用いるリン酸としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されている75〜89質量%の濃度のものを水などで適宜希釈して用いたりすることができる。
【0017】
前記マイカ粒子としては、無処理のマイカ粒子や、パール顔料とされたマイカ粒子などから選ばれた少なくとも1種が使用される。また、このようなマイカ粒子としては、通常、平均粒径が1〜100μmのものを用いることができる。なお、本明細書中における、前記平均粒径とは、レーザ回折法により求められる累積粒度分布を示す曲線の50vol%の値を意味し、例えば、日本レーザー株式会社から「ロドス」の商品名にて市販のレーザ回折式粒度分布測定装置などにより測定することができる。
また、このようなマイカ粒子は、その寸法についてはとくに限定されないが、前述した肌に対するすべり感を維持して、化粧料に使用した際にキシミ感を生じず良好な感触を持たせるためには、その平板平面における長径の平均値が1〜1000μm程度、短径の平均値が上記長径の平均値の1/2倍以上で、かつ厚みが、上記長径の平均値の1/1000倍以上、1/2倍未満程度であるのが好ましい。
なお長径の平均値は、上記の範囲内でもとくに3〜500μm程度であるのが好ましい。また短径の比率の上限は、言うまでもなく長径の1倍である。さらに厚みは、上記の範囲内でもとくに、長径の平均値の1/200〜1/5倍程度であるのが好ましい。平板平面における長径の平均値が上記の範囲未満では、全体としてのサイズが小さすぎて、たとえ全体形状として鱗片状、板状を維持していても、かかるマイカ粒子を使用して製造された非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子を化粧料に使用すると、肌に対するすべり感が不十分になるおそれがある。また逆にこの範囲を超えた場合には、大きくなりすぎたマイカ粒子が割れたり折れたりして却ってそのサイズが小さくなりやすく、しかも割れたり折れたりしたものは、長径に対する短径および厚みの比率が前記の範囲を外れて、もはや鱗片状、板状とは言いがたいものとなってしまうために、かかるマイカ粒子を使用して製造された複合粒子を化粧料に使用すると、やはり肌に対するすべり感が不十分になるおそれがある。
【0018】
なお、マイカ粒子としてパール顔料とされたマイカ粒子を用いる場合には、その干渉色として青、黄、緑、赤、紫など様々な色合いのものを選択することができ、肌の色彩的な欠点を補正しつつ、自然で美しい仕上がりが可能となる。例えば、くすんだ肌や目のまわりのくまなどは、通常、メラニンやうっ血により肌の色彩として黄〜赤色の光が吸収され不足していることから、赤〜橙色の反射干渉色を有するマイカ粒子(パール顔料)を用いて補正し肌を健康的で明るく透明感のある仕上がりとすることができる。また、近年多く見られる敏感肌やアトピー、にきび肌など赤味を呈する肌には、ヘモグロビン色素に吸収され不足している緑色の反射干渉色を有するマイカ粒子を用いることで、赤味をやわらげ自然で美しい仕上がりが可能となる。さらに、しみやそばかすなどの色むらの多い肌には濃いメラニン色素により吸収され不足している黄色の干渉色を有するマイカ粒子を用いて補正し肌を自然に均一化された仕上がりとすることができる。
このような点において、化粧料に用いるマイカ粒子としては、パール顔料とされたマイカ粒子が好適である。
なお、通常、このようなマイカ粒子は、市販品をそのまま使用することができるが、要すれば、分級などを行ってもよい。上記マイカ粒子の表面を被覆する非晶質リン酸カルシウムとは、一般式:Ca3(PO42・nH2Oで表されるように結晶水を含んだリン酸三カルシウムであって、特にその結晶構造が非晶質のものを言う。なお、結晶構造が非晶質であることは、非晶質リン酸カルシウムは、結晶水を多く保有しているため、粉末X線回折法のパターンが図5に例示のごとく結晶質リン酸カルシウムに比べてブロードとなることから確認することができる。
また、本発明の効果を損ねない限りにおいては、上記非晶質リン酸カルシウムのカルシウムの一部に、例えば、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、チタンなどの元素が固溶していたり、あるいは、イオン交換または置換されていたりしてもよく、PO4の一部が、例えば、VO4、SiO4、CO4などの原子団の1種で置換されていても良い。
さらに、リン酸カルシウムが、1種または2種以上の金属酸化物と複合してもよい。金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどがあげられる。
【0019】
前記洗浄工程においては、前述の酸処理時にマイカ粒子の表面から除去された付着物イオンの濃度を低下させて、後段のリン酸カルシウム被覆工程においてこの付着物イオンがマイカ粒子表面への非晶質リン酸カルシウムの被覆を阻害することを抑制させる。
このとき、洗浄後のマイカ粒子を固形分濃度0.1〜50質量%、好ましくは1〜50質量%で水に分散させた懸濁液がpH2.0以上となるよう洗浄する。
この洗浄工程における洗浄方法としては、前述の漬け洗い状態のマイカ粒子に単に水を加えることで洗浄してもよく、漬け洗い状態のマイカ粒子から遠心脱水法などにより酸性液体とともに前述のような付着物イオンを系外に排出させ脱水した後にマイカ粒子を分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるまで水を加えてすすぐ方法などを用いることができ、要すれば、脱水/すすぎを繰り返し行う方法を採用することもできる。
【0020】
前記アルカリ工程においては、前述の洗浄工程で洗浄されたマイカ粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成する。ここで、マイカ粒子と水酸化カルシウムとを混合して懸濁液をアルカリ性とするのは、酸性状態で後段のリン酸カルシウム被覆工程を行った場合には、加えたリン酸がリン酸水素カルシウムの形成に消費されて、マイカ粒子表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆することが困難となるためである。
【0021】
前記リン酸カルシウム被覆工程においては、アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりマイカ粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆する。このとき、前述のごとく懸濁液が酸性状態、特に、pH5.0未満の状態となればリン酸水素カルシウムの形成が生じるおそれを有することから、このリン酸カルシウム被覆工程におけるアルカリ性懸濁液へのリン酸の添加は、pHが5.0以上に維持された状態で行うことが好ましい。なお、要すれば、アルカリ工程とリン酸カルシウム被覆工程とを交互に実施しつつ、pHを5.0以上に維持させてリン酸水素カルシウムの形成を抑制させてもよい。なお、リン酸カルシウム被覆工程においては、液温を50℃以下に維持することが好ましい。このとき液温が50℃を超えるとリン酸カルシウムの結晶性が高くなって結晶水が脱落する結果、得られる非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の老廃物の吸着性能などの活性が低下するおそれがあるからである。
【0022】
以上のごとく、製造された非晶質リン酸カルシウム被覆粒子は、噴霧乾燥やケーキ乾燥など一般的な乾燥手段を採用することができるが、解砕などの工程を必要とせず、解砕時に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子同士が擦れあって、非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の表面から非晶質リン酸カルシウムが脱落してしまうことを抑制し得る点から、噴霧乾燥による乾燥手段を採用することが好ましい。
【0023】
次いで、このように製造された非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が配合された化粧料について説明する。
本実施形態の化粧料としては、前記非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が0.1〜99質量%配合される。
なお非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の配合量がこのような範囲とされるのは、非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の配合量が0.1質量%未満の場合には、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する効果が得られず、99質量%を超えて配合する場合には、後述する他の粉末成分、油性成分、機能性成分など化粧料として必要な成分を含有させる余地がなく、化粧料とすることが困難となるためである。
また、前記非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子に用いるマイカ粒子として、パール顔料とされたマイカ粒子が用いられる場合には、肌の色彩的な欠点を補正しつつ自然な仕上がりが得られる点において、化粧料に対する非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の配合量は1〜60質量%であることが好ましい。また、パール顔料以外の無処理のマイカ粒子が用いられた非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の場合には、化粧効果の持続性ならびに粉っぽさ、白っぽさといった不自然な仕上がりとなることを抑制して自然な仕上がりとし得る点において化粧料に対する配合量は1〜95質量%であることが好ましい。
【0024】
上記化粧料に配合する非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子は、事前に表面処理されていてもよい。表面処理の例としては、たとえばシリコーン、アクリルシリコーン、金属石鹸、レシチン、アミノ酸、コラーゲン、カップリング剤、フッ素系化合物など化粧料で従来用いられている処理であればいずれも採用できる。もちろん、非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子は、表面処理せずに化粧料に使用してもよい。
【0025】
前記化粧料には、他の粉末成分として、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、酸化セリウム、タルク、マイカ(白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、合成雲母)、セリサイト、カオリン、ベントナイト、クレー、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、含フッ素金雲母、合成タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、チッ化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、カラミン、炭酸マグネシウムおよびこれらの複合体などの無機粉体や、シリコーン粉末、シリコーン弾性粉末、ポリウレタン粉末、セルロース粉末、ナイロン粉末、PMMA粉末、スターチ、ポリエチレン粉末およびこれらの複合体などの有機粉末を、それぞれ1種または2種以上必要に応じて配合することができる。
【0026】
また、前記化粧料には、油性成分として、流動パラフィン、スクワラン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、パーフルオロポリエーテル、ワセリン、ラノリン、セレシン、カルナバロウ、固形パラフィン、脂肪酸、多価アルコール、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ビニルピロリドンなどを1種または2種以上必要に応じて配合することができる。
【0027】
また、前記化粧料には、機能性成分として、色素、pH調整剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料なども本発明の効果を損ねない範囲において適宜配合することができる。
【0028】
また、前記化粧料の剤型としては、たとえば乳化ファンデーション、パウダーファンデーション、油性ファンデーション、固形乳化ファンデーション、アイシャドウ、チークカラー、ボディパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、フェースパウダー、乳液、美容ローション、化粧水、美容クリーム、日焼け防止ローションなどがあげられる。
【0029】
なお、このような化粧料として、乳化ファンデーション、パウダーファンデーション、油性ファンデーション、固形乳化ファンデーションにおいては、配合される前記非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の平均粒径は、1〜50μmであることが、感触面において好ましく、アイシャドウ、チーク、ネイルカラーにおいては、それらの化粧が施された部位にきらめきを与え美観を向上させ得る点において、配合される非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の平均粒径は、50〜100μmであることが好ましい。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の製造)
(製造例1)
イオン交換水1リットルに、基体材料としての鱗片状マイカ(株式会社山口雲母工業所製「Y−2400」:平均粒径約9.66μm)450gを入れ、攪拌下で7.5質量%リン酸水溶液を1500g加えて10分間攪拌して懸濁液とした後に、この懸濁液を一昼夜静置することにより酸処理工程を実施した。このときの懸濁液のpHをpHメーターにて測定したところ、0.1であった。
さらに、吸引ろ過により鱗片状マイカをろ別し、固形分濃度20%でpHが2.0以上となるまでイオン交換水を加えて再懸濁液を作成することにより洗浄工程を実施した。
次いで、ホモミキサーを用いて水酸化カルシウム37.3gをイオン交換水1リットルに分散させた水酸化カルシウム懸濁液を作成し、前記再懸濁液に対して、該再懸濁液のpHが12.5となるまでこの水酸化カルシウム懸濁液を加えてアルカリ工程を実施しアルカリ懸濁液を作成した。
さらに、このアルカリ懸濁液の液温を、50℃以下になるよう維持しつつ、7.5質量%リン酸水溶液を最終的なpHが6.5となるまで加え30分間攪拌しリン酸カルシウム被覆工程を実施した。
さらに、前述のアルカリ工程とこのリン酸カルシウム被覆工程とを交互に2回ずつ(合計3回ずつ)実施したものをスプレードライヤー(大川原化工機械株式会社製「L−8」)を用いて、噴霧乾燥造粒を行い、非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0032】
(製造例2)
製造例1のイオン交換水1リットルに代えてイオン交換水2.5リットル用いて、7.5質量%リン酸水溶液1500gを加えなかった(酸処理工程を実施しなかった)こと以外は製造例1と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0033】
(製造例3)
製造例1にて製造された非晶質リン酸カルシウム被覆粒子97質量%に対して、メチルハイドロジエンポリシロキサンが3質量%となるように配合し、攪拌、乾燥してシリコーン処理された非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0034】
(製造例4)
製造例1にて製造された非晶質リン酸カルシウム被覆粒子に代えて製造例2にて製造された非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を用いたこと以外は製造例3と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0035】
(製造例5)
鱗片状マイカ(株式会社山口雲母工業所製「Y−2400」:平均粒径約9.66μm)に代えて、赤色干渉色系パールマイカ(Merck社製:商品名「TimironSuperRed」:平均粒径約24μm)を用いたこと以外は、製造例1と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0036】
(製造例6)
鱗片状マイカ(株式会社山口雲母工業所製「Y−2400」:平均粒径約9.66μm)に代えて、赤色干渉色系パールマイカ(Merck社製:商品名「TimironSuperRed」:平均粒径約24μm)を用いたこと以外は、製造例2と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0037】
(製造例7)
鱗片状マイカ(株式会社山口雲母工業所製「Y−2400」:平均粒径約9.66μm)に代えて、黄色干渉色系パールマイカ(Merck社製:商品名「TimironSuperGold」:平均粒径約24μm)を用いたこと以外は、製造例1と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0038】
(製造例8)
鱗片状マイカ(株式会社山口雲母工業所製「Y−2400」:平均粒径約9.66μm)に代えて、黄色干渉色系パールマイカ(Merck社製:商品名「TimironSuperGold」:平均粒径約24μm)を用いたこと以外は、製造例2と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0039】
(製造例9)
水酸化カルシウムの量を37.3gに代えて18.65gとしたこと以外は、製造例2と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0040】
(顕微鏡観察)
製造例1、2の走査型電子顕微鏡写真を図1、2に示す。
また、製造例5の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
さらに、マイカ粒子単体の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
図1および図3では、マイカ粒子の表面に付着した非晶質リン酸カルシウムが均一かつ平滑に被覆され、図4に示すマイカ粒子単体と同様の表面状態を示していることがわかる。
また、このときの非晶質リン酸カルシウムの状態は球状あるいは塊状であることも観察された。
これに対して、図2では、非晶質リン酸カルシウムの表面被覆状態が不均一で非晶質リン酸カルシウムが棒状になっていることがわかる。
このように、(1)マイカ粒子とpH1.5以下のリン酸とを混合することにより、前記マイカ粒子の表面をpH1.5以下のリン酸で洗浄処理する酸処理工程、(2)マイカ粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたマイカ粒子を洗浄する洗浄工程、(3)該洗浄工程により洗浄されたマイカ粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、(4)該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりマイカ粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程が実施され製造された非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子は、表面に非晶質リン酸カルシウムで被覆されない部分の発生が抑制され、均一且つ平滑な表面性状を示すことがわかる。
【0041】
(表面均一平滑性の測定)
(表面粗さ:Ra)
上記顕微鏡観察において示されているように、製造例1および製造例5の非晶質リン酸カルシウム被覆粒子は、基体材料であるマイカ粒子の表面が非晶質リン酸カルシウムにより均一かつ平滑に被覆されている。この非晶質リン酸カルシウムが均一かつ平滑に被覆されているかどうかは、光学式の表面形状測定機などを用いて非晶質リン酸カルシウム被覆粒子の表面粗さを測定することによっても確認することができる。
表面形状を半導体レーザーにより測定することが可能なキーエンス社製の超深度表面形状測定顕微鏡(商品名「VK−8500」)を用いて、製造例1、2、9の非晶質リン酸カルシウム被覆粒子及び基体材料である株式会社山口雲母工業所製の鱗片状マイカ(商品名「Y−2400」:平均粒径約9.66μm)について、0.01μmピッチで、JIS B 0601−1994に基づく算術平均粗さ(Ra)の測定をそれぞれの非晶質リン酸カルシウム被覆粒子(あるいは基体材料)について10回ずつ実施し、その平均を求めた。
なお、測定に際しては、製造例1、2、9の非晶質リン酸カルシウム被覆粒子及び基体材料をエタノールに分散させた希釈溶液をスライドガラスに塗布、乾燥したものを測定試料として用いた。結果を下記表1に示す。
【0042】
(使用感触)
また、併せて、製造例1、2、9の非晶質リン酸カルシウム被覆粒子及び基体材料である株式会社山口雲母工業所製の鱗片状マイカ(商品名「Y−2400」:平均粒径約9.66μm)について専門パネラー5名による使用感触(なめらかさ)評価を実施した。
この使用感触評価においては、専門パネラー5名が非晶質リン酸カルシウム被覆粒子あるいは基体材料を直接肌に塗布することにより感触(なめらかさ)の評価を行い、その使用感触を以下の評価基準により採点し、それぞれの非晶質リン酸カルシウム被覆粒子(あるいは基体材料)に対する5名の採点を平均して各評点とした。結果を表1に示す。
評価基準:
4点:なめらか
3点:ややなめらか
2点:ややきしむ
1点:きしむ
【0043】
【表1】

【0044】
上記の顕微鏡観察結果(図1乃至4)ならびに表面均一平滑性(表面粗さ、使用感触)評価の結果(表1)からもわかるように、非晶質リン酸カルシウム被覆粒子の表面が算術平均粗さにおいて0.2μm以下であれば、良好なる使用感触が得られ、基体材料の表面が非晶質リン酸カルシウムによって均一かつ平滑に被覆されている状態であることがわかる。
しかも、上記表1において、製造例1の非晶質リン酸カルシウム被覆粒子は基体材料の表面粗さ以下になっており、非晶質リン酸カルシウムが、特に均一かつ平滑に基体材料の表面に被覆されていることがわかる。
また、この製造例1のような、非晶質リン酸カルシウムにより表面を均一且つ平滑に被覆されたマイカ粒子、すなわち、算術平均粗さにおいて0.2μm以下となるように表面が非晶質リン酸カルシウムで被覆された非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を配合することにより、化粧料を皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつ、使用感触に優れたものとさせ得ることがわかる。
【0045】
(実施例、比較例)
次いで、各製造例により製造された非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子を用いて化粧料を製造し、この化粧料を20名の女性パネラーに下記の評価項目について評価してもらい、評点を算出した。なお、この評点の算出に際しては、各パネラーに下記実用特性評価基準により点数をつけてもらい、この点数の20名の平均値を求めて評点とした。
評価項目:
・肌の色彩的欠点(くすみ・しみ・そばかす、赤味、目の周りのくまなど)補正効果
・仕上がりの透明感
・仕上がりの自然さ
・塗布時の使用感触(なめらかさ)
・3時間後の化粧持ち
実用特性評価基準:
4点:非常に効果があると感じた
3点:効果があると感じた
2点:やや効果があると感じた
1点:効果を感じなかった
【0046】
(実施例1、比較例1および2)
下記、表2の配合(質量%)に基づきパウダーファンデーションの製造および評価を行った。
なお、製造においては、配合剤の内、粉末原料を攪拌機にて攪拌混合したものに液状材料を加えてさらに混合攪拌し、得られた混合物をプレス機で中皿に圧縮成型しパウダーファンデーションとした。
【0047】
【表2】

注1)トピー工業社製、「PDM−1000」
注2)太平化学産業社製、「HAP−100」
注3)東レ・ダウコーニングシリコーン社製、「トレフィルE−506C」
注4)信越化学工業社製、「KF−96A−6cs」
表2から、実施例1では、比較例1および2に比べて使用感触がなめらかできしみ感のない化粧料が得られていることがわかる。また、仕上がりの自然さや化粧持ちにおいても優れたものであることがわかる。
【0048】
(実施例2、比較例3および4)
下記、表3の配合(質量%)に基づきパウダーファンデーション(水使用可能な夏用粉末固形ファンデーション)の製造および評価を行った。
なお、製造においては、配合剤の内、粉末原料を攪拌機にて攪拌混合したものに液状材料を加えてさらに混合攪拌し、得られた混合物をプレス機で中皿に圧縮成型しパウダーファンデーションとした。
【0049】
【表3】

注1)太平化学産業社製、「HAP−100」
注2)松本油脂製薬社製、「マツモトマイクロスフェアーM−305」
注3)信越化学工業社製、「KF−96A−6cs」
注4)信越化学工業社製、「KF−56」
表3から、実施例2では、比較例3および4に比べて使用感触がなめらかできしみ感のない化粧料が得られていることがわかる。また、仕上がりの自然さや化粧持ちにおいても優れたものであることがわかる。
【0050】
(実施例3、比較例5)
下記、表4の配合(質量%)に基づきパウダーファンデーションの製造および評価を行った。
なお、製造においては、配合剤の内、粉末原料を攪拌機にて攪拌混合したものに液状材料を加えてさらに混合攪拌し、得られた混合物をプレス機で中皿に圧縮成型しパウダーファンデーションとした。
【0051】
【表4】

注1)トピー工業社製、「PDM−1000」
注2)東レ・ダウコーニングシリコーン社製、「トレフィルE−506C」
注3)信越化学工業社製、「KF−96A−6cs」
表4から、実施例3では、比較例5に比べて使用感触がなめらかできしみ感のない化粧料が得られていることがわかる。また、仕上がりの自然さや化粧持ちにおいても優れたものであることがわかる。
【0052】
(実施例4、比較例6)
下記、表5の配合(質量%)に基づきパウダーファンデーション(水使用可能な夏用粉末固形ファンデーション)の製造および評価を行った。
なお、製造においては、配合剤の内、粉末原料を攪拌機にて攪拌混合したものに液状材料を加えてさらに混合攪拌し、得られた混合物をプレス機で中皿に圧縮成型しパウダーファンデーションとした。
【0053】
【表5】

注1)信越化学工業社製、「KF−96A−6cs」
注2)信越化学工業社製、「KF−56」
表5から、実施例4では、比較例6に比べて使用感触がなめらかできしみ感のない化粧料が得られていることがわかる。また、くすみ・くまなどの色彩的欠点を補正する効果に優れ、仕上がりの自然さを有し、さらに化粧持ちにおいても優れたものであることがわかる。
【0054】
(実施例5、比較例7および8)
下記、表6の配合(質量%)に基づきフェースパウダー(白粉)の製造および評価を行った。
なお、製造においては、配合剤の内、粉末原料を攪拌機にて攪拌混合したものに液状材料を加えてさらに混合攪拌し、得られた混合物をプレス機で中皿に圧縮成型しフェースパウダーとした。
【0055】
【表6】

注1)太平化学産業社製、「球状HAP」
注2)太平化学産業社製、「板状HAP」
表6から、実施例5では、比較例7および8に比べて使用感触がなめらかできしみ感のない化粧料が得られていることがわかる。また、くすみ・くまなどの色彩的欠点を補正する効果に優れ、仕上がりの透明感、自然さにも優れたものであることがわかる。
【0056】
(実施例6)
下記、表7の配合(質量%)に基づきO/W乳化クリームファンデーションの製造を行った。
【表7】

この実施例6のO/W乳化クリームファンデーションは、なめらかできしみ感のない使用感触が優れたものであった。また、くすみ・くまなどの色彩的欠点を補正する効果に優れ、仕上がりの透明感、自然さにも優れたものであった。
【0057】
(実施例7)
下記、表8の配合(質量%)に基づきパウダーファンデーションの製造を行った。
【表8】

この実施例7のパウダーファンデーションは、なめらかできしみ感のない使用感触が優れたものであった。また、くすみ・くまなどの色彩的欠点を補正する効果に優れ、仕上がりの透明感、自然さにも優れたものであった。
【0058】
(実施例8)
下記、表9の配合(質量%)に基づき化粧水の製造を行った。
【表9】

この実施例8の化粧水は、なめらかで使用感触が優れたものであった。
【0059】
(実施例9)
下記、表10の配合(質量%)に基づきO/W型乳液の製造を行った。
【表10】

この実施例9のO/W型乳液は、なめらかで使用感触が優れたものであった。
【0060】
以上に示した表1〜10からも非晶質リン酸カルシウムで表面が均一且つ平滑に被覆されたマイカ粒子(非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子)が用いられることで、表面が不均一もしくは平滑でない被覆状態の非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が用いられる場合に比べて化粧料を優れた使用感触(なめらかさ)とし得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1a】製造例1の非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の走査顕微鏡写真(×20000)。
【図1b】製造例1の非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の走査顕微鏡写真(×60000)。
【図2a】製造例2の非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の走査顕微鏡写真(×20000)。
【図2b】製造例2の非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の走査顕微鏡写真(×60000)。
【図3a】製造例5の非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の走査顕微鏡写真(×20000)。
【図3b】製造例5の非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子の走査顕微鏡写真(×60000)。
【図4a】リン酸カルシウムによる被覆がなされていないマイカ粒子単体の走査顕微鏡写真(×20000)。
【図4b】リン酸カルシウムによる被覆がなされていないマイカ粒子単体の走査顕微鏡写真(×60000)。
【図5】非晶質リン酸カルシウムと結晶質リン酸カルシウムとの粉末X線回折チャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイカ粒子を非晶質リン酸カルシウムで被覆した非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が0.1〜99質量%配合され、且つ、前記非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が
(1)マイカ粒子とpH1.5以下のリン酸とを混合することにより、前記マイカ粒子の表面をpH1.5以下のリン酸で洗浄処理する酸処理工程、
(2)マイカ粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたマイカ粒子を洗浄する洗浄工程、
(3)該洗浄工程により洗浄されたマイカ粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、
(4)該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりマイカ粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程、
が実施されることにより製造されてなることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
前記非晶質リン酸カルシウム被覆マイカ粒子が、パール顔料とされたマイカ粒子を非晶質リン酸カルシウムで被覆したものである請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
非晶質リン酸カルシウムにより表面を均一且つ平滑に被覆されたマイカ粒子が0.1〜99質量%含有されてなることを特徴とする化粧料。

【図5】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2007−1970(P2007−1970A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133909(P2006−133909)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】