説明

化粧料

【課題】魚特有の臭みや着色がない化粧料を提供することにあり、更に肌のダメージを防いで、若々しく健やかな肌状態を維持できる優れた美肌効果を有する化粧料を提供することにあり、また、かかる化粧料に含有される抽出物を提供すること。
【解決手段】チョウザメの浮袋からの抽出物を含有することを特徴とする化粧料、更には、該チョウザメの浮袋からの抽出物が、チョウザメの浮袋に含有されるコラーゲンを加水分解してから又は加水分解しつつ抽出したものである化粧料によって課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョウザメの浮袋からの抽出物を含有することを特徴とする化粧料に関し、更に詳しくは、美肌効果を有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の主要構成タンパク質であるコラーゲン類は、古くから接着剤(膠)として広く利用されている他、写真乳剤、製紙、染色、食品、化粧品、医薬品等の幅広い分野で利用されている。
【0003】
コラーゲンを得るために主に使用されている組織は子牛皮であり、他にも無色素の魚や魚の皮から抽出したコラーゲンについても開示されている(特許文献1及び特許文献2)。しかし、子牛や魚等の動物からコラーゲンを得るには、皮及び皮下組織の除去に係る処理の負担や抽出物の割合が比較的少ないため、その点では工業生産には不利であった。
【0004】
特許文献3には、海洋性生物である魚類(タラ、ヒラメ、サケ、イワシ、マグロ等)の各組織から抽出した海洋性コラーゲンが記載されており、該組織の例として浮袋が挙げられている。また、特許文献4〜6には、鮭、金目鯛、たら、ひらめ等の皮又は浮袋から抽出したコラーゲンについて記載されている。
【0005】
しかしながら、一般に魚類から抽出されたコラーゲンは、魚特有の味や臭いがあること、着色しやすい等の問題があった。そのため、化粧料組成物等の化粧品原料の用途においては、その臭気が使用時に不快感を与える原因となるため使用されないか、たとえ使用したとしても、濁りや不快臭を考慮するとその配合量には限界があり、コラーゲンの効果(保湿性、肌改質性等)を充分に発揮することができなかった。
【0006】
そこで、魚由来コラーゲンに特有の魚臭さを解決する手段として、種々のコラーゲンの抽出方法が開示されているが、これらの方法は、何れも収率が低い等の問題があり、抽出物を用いた製品の生産には適さないものであった(例えば、特許文献7〜特許文献9)。
【0007】
また、コラーゲン自体の種類や品質に関しても良質なものは少なく、優れた美肌効果を有する化粧料に含有させる目的のためには決して十分とはいえなかった。一方、若々しい肌状態を維持できる化粧料への要求は、ますます高くなってきており、上記公知技術ではその要求に答えるには不十分であり、更なる開発が望まれていた。
【0008】
一方、チョウザメの浮袋は、ワインやビールの発酵停止剤、美術品の修理、ヴァイオリン等の洋楽器の接着剤として使われているに過ぎず、化粧品の分野では全く使用されてこなかった。
【0009】
【特許文献1】特開2002−226356号公報
【特許文献2】特開2003−238597号公報
【特許文献3】特開2003−089616号公報
【特許文献4】特開2003−192565号公報
【特許文献5】特開2003−192566号公報
【特許文献6】特開2003−192567号公報
【特許文献7】特開平5−093000号公報
【特許文献8】特開平5−125100号公報
【特許文献9】特開平5−155900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、肌のダメージを防ぎ、若々しく健やかな肌状態を維持できる等、優れた美肌効果を有する化粧料を提供することにあり、更には、魚特有の臭みや着色がない化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、チョウザメの浮袋からの抽出物を含有する化粧料によって上記課題が達成されることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、チョウザメの浮袋からの抽出物を含有することを特徴とする化粧料を提供するものである。
【0013】
また本発明は、上記化粧料に含有されるチョウザメの浮袋からの抽出物を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、肌のダメージを防ぎ、若々しく健やかな肌状態を実現し、優れた美肌効果を有する化粧料を提供することができる。「美肌効果」とは、具体的には、肌水分量の上昇若しくは肌水分量の下降防止、肌弾力の上昇若しくは肌弾力の下降防止、肌色の明色化若しくは肌色のくすみ、シミ、シワの防止等をいう。
【0015】
また、本発明によれば、魚特有の臭いがなく、着色もなく、使用時に不快感を与えない、浮袋からの「コラーゲン等の有効成分を含む抽出物」を含有する化粧料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0017】
本発明は、チョウザメの浮袋からの抽出物を含有することを特徴とする化粧料である。本発明において「チョウザメ」とは、チョウザメ目、チョウザメ科に属する魚をいう。現在確認されているものだけで、天然又は養殖のチョウザメは約30種あり、その何れをも使用できる。その具体例としては、例えば、Acipenser baeri、Acipenser brevirostrum、Acipenser dabryanus、Acipenser fulvescens、Acipenser gueldenstaedti、Acipenser mediradoi、Acipenser naccarii、Acipenser nudiventris、Acipenser oxyrinchus、Acipenser persicus、Acipenser ruthenus、Acipenser schrencki、Acipenser sinensis、Acipenser stellatus、Acipenser sturio、Acipenser transmontanus、Huso dauricus、Huso huso、Pseudoscaphirhynchus fedtschenkoi、Pseudoscaphirhynchus hermannii、Pseudoscaphirhynchus kaufmanni、Scaphirhynchus albus、Scaphirhynchus platorynchus、Scaphirhynchus suttkusi等が挙げられる。
【0018】
本発明において使用される浮袋は、その何れのチョウザメの浮袋でもよいが、アムールチョウザメ、シロチョウザメ、シベリアチョウザメ、コチョウザメ又はベステルチョウザメの浮袋であることが、養殖技術が確立されており、自然環境保護の点で好ましい。ベステルチョウザメとは、雌のベルーガチョウザメと雄のコチョウザメから人工的に創られたチョウザメの一種であり、また、かかるF1ベステルチョウザメと、F1ベステルチョウザメ、ベルーガチョウザメ若しくはコチョウザメとの交配で作られるF2ベステルチョウザメも「ベステルチョウザメ」と呼ばれる。本発明においては、その何れの浮袋も好ましい。また、コチョウザメとは和名であり、学名ではアスペンサールサウス、露名でスルルヤージとも呼ばれるものである。
【0019】
「浮袋」とは、魚類の体内にある伸縮性に富む風船のような器官で、空気を溜めたり抜いたりして浮力調節を行っているものである。また、チョウザメの浮袋は、ほぼI型コラーゲンのみで構成されているコラーゲンを含有しており、その分子量は約30万といわれている。
【0020】
本発明において使用されるチョウザメの浮袋は、本発明のためにチョウザメを殺してそこから取り出してもよいが、本発明とは異なる用途、具体的には、採卵を含む食用、膠用等に用いるために殺されたチョウザメから取り出したものでよく、後者が自然環境保護等の点で好ましい。
【0021】
チョウザメの浮袋からの抽出物を得る時期に特に限定はないが、用いられるチョウザメの浮袋は、新鮮なものがよいため、チョウザメから取り出された直後のものであるか、又は、チョウザメから取り出された直後に冷凍されたものであることが好ましい。直ちに冷凍されなかった浮袋から抽出した場合には、抽出物に生臭さがあり、それを含有した化粧料にも生臭さがあり、化粧料として使用できない場合がある。また、更に、経時的に抽出物が変色したり、不溶物が析出したりする場合がある。浮袋を取り出した後、直ちに冷凍し、更に、抽出操作まで常に冷凍状態で維持した浮袋から抽出することが特に好ましい。「チョウザメから取り出してから直ちに冷凍」の「直ちに」とは、通常2時間以内をいい、1時間以内が好ましく、30分以内が更に好ましい。また、冷凍温度は特に限定はないが、−80℃〜−20℃が好ましい。また、解凍後直ちに下記の処理を行うことが好ましい。
【0022】
本発明におけるチョウザメの浮袋からの抽出物は、チョウザメの浮袋から溶媒を用いて、そのまま抽出して得た抽出物、或いは、チョウザメの浮袋に含有されるコラーゲンを加水分解してから又は加水分解しつつ溶媒を用いて抽出して得た抽出物である。
【0023】
抽出の前に、チョウザメの浮袋からは不要物、血液等の付着物を除去することが好ましい。洗浄により除去する場合、洗浄に用いる液体としては、好ましくは、水、生理食塩水、エタノール等、又はそれらの混合液等が挙げられる。また、チョウザメの浮袋は抽出効率を上げるために、適当な手段により、切断、細断、粉砕又はミンチしてから用いることが好ましい。その際、公知の粉砕装置、ミンチ装置、細断装置が使用できる。乾式及び湿式の何れでもよいが、湿式の方が、効率的で、変質や損傷も少ないため好ましい。また、乾燥してから上記操作を行うことも好ましい。好ましい乾燥方法としては、凍結乾燥、自然乾燥、温風乾燥等が挙げられる。具体的には例えば、好ましい乾燥温度としては、−80℃〜120℃であり、特に好ましくは、−30℃〜80℃である。
【0024】
また、本発明におけるチョウザメの浮袋からの抽出物は、アイシングラス(isinglass)からの抽出物であることも、抽出の容易さ、抽出の前段階での保存の容易さ等の点から好ましい。「アイシングラス(isinglass)」とは、魚類の浮袋を低分子量化のための処理をしてもよく、機械的に処理して半透明のシート状等の個体状態にしたものである。本発明においては、チョウザメの浮袋を、一旦アイシングラスに加工し、そこからの抽出物を用いることも好ましい。
【0025】
チョウザメの浮袋を溶媒で抽出する方法に特に制限はなく、通常知られている方法でよい。例えば、浸漬抽出、ソックスレー抽出等が挙げられる。このうち、コスト的に有利なため浸漬抽出が好ましい。浸漬抽出では、攪拌の有無は特に限定はないが、生産性を考慮すると定常的な攪拌を行わないことも好ましい。
【0026】
チョウザメの浮袋からの抽出に用いる溶媒としては特に制限はなく、水又は有機溶媒を用いることができる。具体的には、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール等の炭素数1〜8の低級アルコール類若しくは含水低級アルコール類;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ジプロピレンブリコール等の炭素数2〜8の多価アルコール類若しくは含水多価アルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル等の炭素数3〜8の低級エステル類、ベンゼン、トルエン、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数5〜10の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等の炭素数2〜8のケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドルフラン等の炭素数2〜6のエーテル類;アセトニトリル;等が好ましいものとして挙げられる。
【0027】
中でも、操作が簡便である点、毒性が少ない点、溶媒を留去して化粧料用の溶媒に置き換えるときに残留しても問題がない点等で、水及び/又は親水性有機溶媒が好ましい。ここで、親水性有機溶媒とは、30℃において、ある割合で水に相溶するものをいうが、任意の割合で水に相溶するものがより好ましい。その中でも、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン等が特に好ましく、上記の観点から、水、エタノール又は1,3−ブチレングリコールが更に好ましい。
【0028】
前記溶媒の中から選ばれる1種又は2種以上を混合して溶媒として用いることができる。ただし、用途により有機溶媒の含有が好ましくない場合、下記するように酵素により加水分解する場合等においては、水のみを使用したり、抽出後に留去しやすい低沸点溶媒を使用したり、又はそれらと水との任意の混合溶媒を用いたりすることもできる。本発明においては、水、親水性有機溶媒又は「水と親水性有機溶媒との混合溶媒」で抽出することが特に好ましい。
【0029】
溶媒で一旦抽出しておいてから、公知の方法で溶媒置換することも、抽出に最適な溶媒と化粧料に最適な溶媒が異なる場合が多いので好ましい。一旦抽出する際に用いる溶媒としては、浮袋から効率よく抽出できるものであれば特に限定はなく、例えば上記した溶媒と同様のものが挙げられるが、1気圧での沸点が50℃〜80℃の低沸点溶媒であることが、留去のし易さから好ましい。かかる低沸点溶媒としては、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン等が挙げられる。
【0030】
一旦抽出する際に用いた溶媒を完全に又はほぼ留去した後に加える溶媒は、化粧料にそのまま含有される溶媒として知られているものであれば特に限定はないが、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン等が好ましい。
【0031】
チョウザメの浮袋に含有されるコラーゲンを加水分解してから又は加水分解しつつ溶媒を用いて抽出することも好ましい。チョウザメの浮袋に含有されるコラーゲンは分子量が高いため、加水分解してから又は加水分解しつつ抽出することによって、溶媒に対する溶解性を上げられるため、また、配合される化粧品の安定性、肌への浸透性等のために加水分解の工程を加えることが好ましい。分子量は小さい方が肌への浸透性が良く、美肌効果が得られやすい。
【0032】
加水分解する方法は特に限定はなく、常法を用いることができる。具体的には、例えば、酸性又はアルカリ性下で加熱処理する方法、酵素により処理する方法、水を加えて加熱抽出する方法、水を加えて加圧加熱抽出する方法、それらを組合せる方法等が挙げられる。好ましくは、酸性又はアルカリ性下で加熱処理する方法、酵素を用いて処理する方法であり、更に好ましくは、生成物の品質の均一性、工程管理の容易性から、酵素を用いて処理する方法である。
【0033】
加水分解した後に、更に別の溶媒でそこから抽出してもよいし、加水分解液を濃縮、中和、酵素の失活等の処理を行い、そのまま本発明の「抽出液」としてもよい。本発明の「チョウザメの浮袋からの抽出物」には、これらの方法で得られた抽出物を1種又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明におけるチョウザメの浮袋に含有されるコラーゲンを加水分解する方法について、以下に説明する。酸性又はアルカリ性下で加熱処理する方法において、用いる酸としては、pHが5以下、好ましくはpHが4以下に調節できるものであれば特に制限はないが、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;酢酸、プロピオン酸、クエン酸、乳酸、エチレンジアミン4酢酸等の有機酸等が挙げられる。
【0035】
酸性で加水分解する際の液のpHとしては、0.5〜5.5が好ましく、1.0〜4.5がより好ましく、1.0〜3.0が特に好ましい。
【0036】
一方、アルカリとしては、pHを9〜13に調整できるものであれば特に制限はないが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸(水素)塩;エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム等が挙げられ、有効成分が良好に抽出できる点、コスト面で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸(水素)塩が好ましい。
【0037】
アルカリ性で加水分解する際の液のpHとしては、8.0〜14.0が好ましく、8.5〜13.5がより好ましく、9.0〜13.0が特に好ましい。
【0038】
上記、酸又はアルカリを用いて、好適なpH状態下で、好ましくは0℃〜120℃で、より好ましくは60℃〜90℃で、特に好ましくは70℃〜80℃で、好ましくは0.5時間〜24時間、より好ましくは1〜6時間、攪拌等の通常の操作を行う。
【0039】
本発明におけるチョウザメの浮袋を酵素により処理する方法において、用いる酵素としては、タンパク質分解酵素であれば特に制限はない。本発明における「タンパク質分解酵素」とは、ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素の総称であり、ペプチターゼ又はプロテアーゼと呼ばれているものである。ペプチタ−ゼは、狭義のペプチターゼとプロテイナーゼとに分類される。ペプチタ−ゼ(プロテアーゼ)は、作用形式により、エキソペプチターゼとエンドペプチターゼとに分類され、具体的には、アミノペプチターゼ、ジペプチターゼ、ジペプチジルペプチターゼ、トリペプチジルペプチターゼ、カルボキシペプチタ−ゼ等のエキソペプチターゼ、セリンエンドペプチターゼ(セリンプロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン等)、システインエンドペプチターゼ(システインプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、パパイン、キモパパイン等)、アスパラギン酸エンドペプチタ−ゼ(酸性プロテアーゼ、ペプシン等)、メタロエンドペプチタ−ゼ(金属プロテアーゼ、カルボキシペプチターゼ等)等のエンドペプチターゼが挙げられる。これらの中でも、有効成分が良好に抽出できる点で、アクチナーゼ、ペプシン、トリプシン、パパイン、ニューラーゼ、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ブロメライン、パンクレアチンが好ましく、更に好ましくはトリプシンである。これらの酵素を1種又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0040】
本発明におけるチョウザメの浮袋を、酵素を用いて処理する方法は、通常用いられている方法でよく、特に制限はない。また、チョウザメの浮袋に酵素を反応させる条件等は、用いる酵素に応じて適宜調節すればよいが、例えば、チョウザメの浮袋を水に浸漬し、通常10分〜24時間、好ましくは1時間〜6時間、更に好ましくは3時間〜5時間反応させればよい。反応時間が長すぎると、変色や異臭が生じる場合や、抽出物を含有させた化粧料が、安定性に欠ける場合がある。一方、短すぎると酵素が十分に働かない場合がある。
【0041】
好ましい温度としては20℃〜80℃であり、特に好ましくは25℃〜60℃である。また、pH調整には、通常用いられる有機又は無機の酸若しくは塩を用いることができる。酵素の使用量はチョウザメの浮袋100質量部に対し、通常0.0001質量部〜1質量部であり、好ましくは0.001質量部〜0.1質量部である。酵素の使用量が少なすぎると、目的の抽出物が効率良く得られない場合があり、多すぎると、変色や異臭が生じる場合がある。酵素を用いた処理は、1回に限られず、複数回行ってもよい。
【0042】
酵素を用いた処理後に、加熱処理等により酵素を失活させることが好ましい。加熱温度は75℃〜100℃が好ましく、特に好ましくは80℃〜90℃である。加熱時間は5分〜2時間が好ましく、特に好ましくは10分〜1時間である。失活条件が強すぎると、変色や異臭が生じる場合があり、化粧料としたときに色調や香りに異常を来す場合がある。一方、失活条件が弱すぎると、タンパク分解能力が残存してしまう場合があり、化粧料としたときに肌にカブレ等のスキントラブルが生じる場合がある。
【0043】
上記加水分解処理をする前に、予め無機物等の不要成分を取り除く目的で、脱灰処理を行ってもよい。脱灰処理は、上記した酸を用いて24時間〜48時間攪拌する等、通常の方法を用いればよく、これらの使用量は、適宜設定すればよく、特に制限はない。また、必要に応じて複数回行ってもよいし、更に脱灰後水洗いしてもよい。また、酵素を用いて処理する前に、脱脂処理を行ってもよい。脱脂処理としては、例えば、エタノールやアセトン等の有機溶剤処理液、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ処理液、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤処理液を用いて行うことができ、これらの使用量は、適宜設定すればよく、特に制限はない。脱脂処理の方法は、特に制限されるものではなく、例えば、チョウザメの浮袋を前記処理液中で3時間〜48時間攪拌する等、通常の方法により行えばよい。また、必要に応じて複数回行ってもよいし、更に脱灰処理後水洗いをしてもよい。
【0044】
チョウザメの浮袋からの抽出物は、上記の加水分解処理の後、一般的な抽出後の回収技術で回収すればよい。例えば、フィルタ濾過、遠心分離等で分離回収すればよい。その後、必要に応じて、例えば、精製水に再度溶解及び回収する、イオン交換樹脂、活性炭、透析、限外濾過等を利用して精製を行ってもよく、該精製を複数回繰り返し行ってもよい。また、脱臭処理を行ってもよい。具体的な処理方法としては、水洗、ウレアーゼ、加熱の併用による脱臭処理がある。
【0045】
得られたチョウザメの浮袋からの抽出物の分子量は、重量平均分子量が100〜300000が好ましく、500〜50000がより好ましく、1000〜10000が特に好ましい。重量平均分子量が大きすぎる場合には水等の溶媒に溶解し難かったり、抽出物を含有させた化粧料が、安定性に欠けたりする等の場合があり、一方、小さすぎる場合には、前記した本発明の化粧料としての効果が得られない場合がある。
【0046】
チョウザメの浮袋からの抽出物は、コチ、タラ、ヒラメ、サケ、キンメダイ、イワシ、マグロ、イシモチ等の海水魚からの抽出物に比較して、魚特有の臭いがほとんどない、また、そのため化粧料中の含有量を増やすこともでき、種々の化粧料に広く好適に使用することができる。
【0047】
得られたチョウザメの浮袋からの抽出物は、pH4〜8に調製し、そのまま或いは更に濃縮して使用してもよく、必要に応じて、スプレードライ法、凍結乾燥法等の常法に従って粉末化してもよい。
【0048】
凍結乾燥する方法としては、特に限定されるわけではなく、通常公知の方法及びその条件、すなわち、低温凍結させた後に高真空下にて凍結させたまま乾燥させることによって、容量を変化させずに水分等の溶媒分を凍結分離して蒸発(昇華)させ、孔隙を有するとともに速やかな復水性を有するものを得る方法及びその条件を採用すればよい。また、実際に凍結乾燥する前に適宜所望の前処理を行っておいてもよい。具体的には、例えば、チョウザメの浮袋からの抽出物又はその溶液をガラス製のビン等の容器に分注した後凍結乾燥させる方法や、チョウザメの浮袋からの抽出物の溶液を液体窒素内に添加(滴下)して水滴形状(粒子形状、ビーズ形状)にしたものを凍結乾燥する方法等が挙げられる。凍結乾燥に関する温度、圧力及び時間等の各種処理条件は、通常公知の凍結乾燥法と同様の条件にて行うことができる。
【0049】
以上の方法で得られたチョウザメの浮袋からの抽出物を粉末化する場合、その粒径は、5mm以下であることが好ましく、より好ましくは45μm〜2mm、更に好ましくは75μm〜500μmである。粒径が大きすぎる場合は、再溶解性の向上効果が認められにくくなる場合があり、小さすぎると取扱いが困難な場合がある。
【0050】
チョウザメの浮袋からの抽出物の配合量は固形分換算で(乾物換算で)、化粧料全体に対して、通常0.0001質量%〜10質量%、好ましくは0.001質量%〜1質量%である。特に好ましくは0.01質量%〜0.1質量%である。含有量が少なすぎる場合は、本発明の効果が見られず、多すぎる場合には、配合量に見合った効果の上昇が期待できない場合がある。
【0051】
剤型別では、基礎化粧品類の場合には、通常0.0005質量%〜1質量%、好ましくは0.005質量%〜0.1質量%、特に好ましくは0.05質量%〜0.1質量%である。また、メークアップ化粧品の場合には、通常0.0001質量%〜1質量%、好ましくは0.0005質量%〜0.05質量%、特に好ましくは0.001質量%〜0.01質量%である。また、ヘアケア化粧品の場合には、通常0.0005質量%〜1質量%、好ましくは0.005質量%〜0.1質量%、特に好ましくは0.05質量%〜0.1質量%である。
【0052】
本発明の化粧料には、チョウザメ以外の魚類の浮袋からの抽出物を含有することも、コスト削減、チョウザメ資源の確保・節約等の点から好ましい。チョウザメ以外の魚類としては、コチ、タラ、ヒラメ、サケ、キンメダイ、イワシ、マグロ、イシモチ等の海水魚;コイ、フナ等の淡水魚等が挙げられる。
【0053】
チョウザメ以外の魚類の浮袋からの抽出物の含有量は特に限定はないが、浮袋からの抽出物全体に対して、固形分換算で、70質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましく、チョウザメ以外の魚類の浮袋からの抽出物は含有しないことが最も好ましい。チョウザメ以外の魚類の浮袋からの抽出物の含有量が多過ぎる場合は、前記した本発明の効果が得られない場合がある。
【0054】
チョウザメ以外の魚類の浮袋から抽出物を得る方法は、前記したチョウザメの浮袋から抽出物を得る方法に準じて行うことができる。また、チョウザメ以外の魚類の浮袋を加工してなるアイシングラスからの抽出物も本発明には好適に使用できる。すなわち、「上記チョウザメの浮袋からの抽出物」及び/又は「上記チョウザメ以外の魚類の浮袋からの抽出物」が、浮袋を加工してなるアイシングラスからの抽出物である上記化粧料が好ましい。
【0055】
本発明の化粧料の種類としては、洗顔料、化粧水、美容液、パック、乳液、クリーム、マスクシート等の基礎化粧品類;下地クリーム、ファンデーション、口紅、アイシャドウ、ほほ紅等のメークアップ化粧品;シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアパック、石鹸、ボディーソープ、入浴剤等のトイレタリー化粧品;ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアクリーム等のヘアケア化粧品等が挙げられる。
【0056】
本発明の化粧料の剤型としては、ジェル、パック、リポソーム、液状、粘土状、ソリッド粉末状、エアゾール、ハップ剤等が挙げられる。また、使用方法としては、エアゾール式、ポンプ式、押出し式、又はこれらに類する機構で噴射する方式、更に、浴剤等様々な方法が挙げられる。
【0057】
本発明の化粧料には、チョウザメの浮袋からの抽出物以外に、その剤型にあわせて「他の成分」を含有できる。「他の成分」としては、具体的には例えば、水、アルコール、界面活性剤(カチオン、アニオン、ノニオン、両性界面活性剤等)、保湿剤(グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸塩、核酸類、単糖類、少糖類及びそれらの誘導体他)、増粘剤(多糖類、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、アルギン酸、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース等及びそれらの誘導体他)、ワックス、ワセリン、炭化水素飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、シリコン油等及びそれらの誘導体、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸グリセリル等のトリグリセライド類、ステアリン酸イソプロピル等のエステル油類、天然油脂類(オリブ油、椿油、アボカド油、アーモンド油、カカオ脂、月見草油、ブドウ種子油、マカデミアンナッツ油、ユーカリ油、ローズヒップ油、スクワラン、オレンジラフィー油、ラノリン、セラミド等)、防腐剤(オキシ安息香酸誘導体、デヒドロ酢酸塩、感光素、ソルビン酸、フェノキシエタノール等及びそれらの誘導体他)、殺菌剤(イオウ、トリクロカルバアニリド、サリチル酸、ジンクピリチオン、ヒノキチオール等及びそれらの誘導体他)、紫外線吸収剤(パラアミノ安息香酸、メトキシケイ皮酸等及びそれらの誘導体他)、抗炎症剤(アラントイン、クリチルリチン酸等及びそれらの誘導体他)、抗酸化剤(トコフェロール、BHA、BHT等及びそれらの誘導体他)、キレート剤(エデド酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等及びそれらの誘導体他)、動植物エキス(アシタバ、アロエ、エイジツ、オウゴン、オウバク、海藻、カリン、カミツレ、甘草、キウイ、キュウリ、クワ、シラカバ、トウキ、ニンニク、ボタン、ホップ、マロニエ、ラベンダー、ローズマリー、ユーカリ、ミルク、各種ペプタイド、プラセンタ、ローヤルゼリー等及びこれらの含有成分精製物又は発酵物他)、pH調整剤(無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩等及びそれらの誘導体他)、ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類、ビタミンD類等及びそれらの誘導体他)、酸化チタン、タルク、マイカ、シリカ、酸化亜鉛、酸化鉄、シリコン及びこれらを加工処理した粉体類等を本発明の目的を達成する範囲で0.001〜99.9質量%の範囲で配合することができる。なお、本発明の化粧料を構成する成分は決して上述に限られるものではなく、化粧料に用いる成分であれば自由に選択が可能である。
【0058】
ハップ剤においては上記の成分に加えて、基剤(カオリン、ベントナイト等)、ゲル化剤(ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール等)を配合することができる。また浴剤においては、硫酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸塩、色素、保湿剤を適宜配合し、パウダータイプ、液剤タイプに調整が可能である。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。以下、特に断りがない場合は、「%」は「質量%」を示す。
【0060】
調製例1
ベステル種のチョウザメの浮袋を1kg用い、水及び1,3−ブチレングリコール(質量比7:3)の混合溶媒に20℃で1週間浸漬し、溶媒抽出を行い、抽出物の溶液を得た。残渣を濾別した後、抽出物が溶けた溶液の濾過精製をし、チョウザメの浮袋からの抽出物(A)90kgを得た。これを用いて、以下の評価を行った。
【0061】
調製例2
ベステル種のチョウザメの浮袋1kgを、水33kgに浸漬し、浮袋に対して0.05質量%のトリプシンを添加し、37℃で4時間反応させた。次いで、85℃30分間の加熱処理を行い、該トリプシンを失活させた。この溶液を冷却後、濾過精製を行い、チョウザメの浮袋からの抽出物(B)30kgを得た。これを用いて、以下の評価を行った。
【0062】
<評価1:抽出物の保湿効果>
上記調製例2で調製したチョウザメの浮袋からの抽出物(B)1mLずつを、被験者5人の前腕内側に1日2回朝、夕に30日間塗擦した。30日の塗擦期間経過後、各被験者の塗擦部分の角層水分量を測定した。ここで、角質水分量は、インテグラル社(Integral Co.)製のコルネオメーター(商品名)を用いて、常法に従って測定したときの値である。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果から分かるように、調製例2で調製した抽出物(B)を用いた場合、単に溶媒を用いた場合に比較して、角質水分量が多くなった。
【0065】
<評価2:コラーゲン合成効果>
基本培地として、1%牛胎仔血清含有イーグルMEM培地を用い、細胞はヒト真皮由来線維芽細胞を用いた。細胞を基本培地で24時間培養した後、上記調製例2で調製したチョウザメの浮袋からの抽出物(B)を1〜5%含有した培地を添加し、2日間培養した。ブランクとして基本培地のみを用いて培養した。このときのコラーゲンの定量は、コスモバイオ社のコラーゲンステインキットを用いて行った。
【0066】
結果を図1に示す。抽出物Bを含有するものは、タンパク量が増え、中でもコラーゲン量が増えた。この効果については、抽出物Bの含有量0%、1%、2%、5%と含有量依存性が確認された。
【0067】
実施例1
(化粧水)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
抽出物(A) 1.00
濃グリセリン 2.00
1,3−ブチレングリコール 10.00
キサンタンガム 0.05
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
【0068】
実施例2
(乳液)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
抽出物(A) 3.00
トリオクタン酸グリセリル 3.00
ホホバ油 1.00
オリブ油 1.00
メチルポリシロキサン 0.10
天然ビタミンE 0.10
POE(20)ソルビタンモノオレエート 1.50
ソルビタンモノオレエート 1.50
L−アルギニン 2.00
L−セリン 0.50
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 0.10
ポリビニルピロリドン 0.05
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
【0069】
実施例3
(クリーム)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
抽出物(B) 0.50
ベヘニルアルコール 2.00
トリオクタン酸グリセリル 3.00
ホホバ油 1.00
オリブ油 1.00
メチルポリシロキサン 0.10
天然ビタミンE 0.10
POE(20)ソルビタンモノステアレート 2.50
POE(80)硬化ヒマシ油 0.50
L−アルギニン 2.00
L−セリン 0.50
ポロリドンカルボン酸ナトリウム 0.10
カルボキシビニルポリマー 0.05
水酸化カリウム 0.01
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
【0070】
実施例4
(美容液)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
抽出物(A) 5.00
カルボキシビニルポリマー(2%水溶液) 10.00
カルボキシビニルセルロース 3.00
グリセリン 10.00
植物抽出液 0.50
トリエタノールアミン 0.15
メチルパラベン 0.10
クインシード液(1%水溶液) 10.00
ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 4.00
L−アルギニン 2.00
精製水 全量が100.00となる量
【0071】
実施例5
(パック)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
抽出物(B) 1.50
ヒドロキシエトキシセルロース 3.00
カルボキシビニルポリマー(2%水溶液) 10.00
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(15EO) 1.00
L−アルギニン 2.00
エタノール 5.00
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
【0072】
実施例6
(浴剤)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
抽出物(B) 0.10
無水硫酸ナトリウム 45.00
炭酸水素ナトリウム 50.00
ホウ酸ナトリウム 3.00
L−アルギニン 2.00
【0073】
比較例1
(比較化粧水)
実施例1において、抽出物(A)の代わりに精製水を使用した以外は実施例1と同様にして比較化粧水を調製した。
【0074】
比較例2
(比較乳液)
実施例2において、抽出物(A)の代わりに精製水を使用した以外は実施例2と同様にして比較乳液を調製した。
【0075】
比較例3
(比較クリーム)
実施例3において、抽出物(B)の代わりに精製水を使用した以外は実施例3と同様にして比較クリームを調製した。
【0076】
比較例4
(比較美容液)
実施例4において、抽出物(A)の代わりに精製水を使用した以外は実施例4と同様にして比較美容液を調製した。
【0077】
比較例5
(比較パック)
実施例5において、抽出物(B)の代わりに精製水を使用した以外は実施例5と同様にして比較パックを調製した。
【0078】
比較例6
(比較浴剤)
実施例6の抽出物(B)の代わりに炭酸水素ナトリウムを使用した以外は実施例6と同様にして比較浴剤を調製した。
【0079】
<評価3:化粧料としての保湿効果>
実施例1で得た化粧水と比較例1で得た比較化粧水を、女性被験者20名の左右前腕内側に1mLずつ毎日朝夕30日間塗擦し、30日経過後の角層水分量を水分計で計測して比較した。結果を表2に示す。ここで角層水分量は、インテグラル社(Integral Co.)製のコルネオメーター(商品名)を用いて、常法に従って測定したときの値である。
【0080】
【表2】

【0081】
表2の結果から分かるように、実施例1で調製した「抽出物(A)を含む化粧水」を用いた場合、比較例1で調製した「抽出物(A)を含まない比較化粧水」を用いた場合に比較して、角質水分量が多くなった。
【0082】
<評価4:肌状態改善効果>
肌に衰えを訴えた40〜50歳台の10名の女性被験者に対して、顔全体に実施例1〜5の化粧料、及び比較例1〜5の比較化粧料について、朝晩2回塗布してもらい、実施例6の浴剤、比較例6の比較浴剤については、200Lの湯に対して浴剤50グラムを溶解し、1日1回入浴使用してもらい、以下の判定基準に基づいて、(a)肌のうるおい感、(b)肌のつや、(c)肌のハリについて使用前後の肌状態について、使用開始1ヵ月後に官能評価を行った。なお、本試験期間を通して皮膚に異常を訴えた者はいなかった。
【0083】
[肌状態改善度判定基準]
A 極めて顕著に改善した
B 顕著に改善した
C わずかに改善した
D 変化を認めなかった
E 増悪を感じた
【0084】
「(a)肌のうるおい感」に関し、判定A〜Eとしたそれぞれの人数を表3に示す。
【表3】

【0085】
「(b)肌のつや」に関し、判定A〜Eとしたそれぞれの人数を表4に示す。
【表4】

【0086】
「(c)肌のハリ」に関し、判定A〜Eとしたそれぞれの人数を表5に示す。
【表5】

【0087】
表3〜表5の結果から、肌状態改善作用について、(a)肌のうるおい感、(b)肌のつや、(c)肌のハリ、の全てにおいて、実施例の化粧料の方が比較例の化粧料に比べ格段に優れていた。
【0088】
実施例7
(ヘアークリーム)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
流動パラフィン 15.00
ワセリン 15.00
ミツロウ 2.00
防腐剤 適量
抽出物(A) 5.00
カルボキシビニルポリマー 0.10
キサンタンガム 0.10
グリセリン 5.00
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.00
苛性ソーダ 0.05
精製水 全量が100.00となる量
【0089】
比較例7
(比較ヘアークリーム)
抽出物(A)の代わりに精製水を使用した以外は実施例7と同様にして比較ヘアークリームを調製した。
【0090】
実施例8
(リンス)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
抽出物(A) 5.00
シリコーン油 3.00
流動パラフィン 1.00
セチルアルコール 1.50
ステアリルアルコール 1.00
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.70
グリセリン 3.00
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
【0091】
比較例8
(比較リンス)
抽出物(A)の代わりに精製水を使用した以外は実施例7と同様にして比較リンスを調製した。
【0092】
<評価5:髪状態改善効果>
無作為に選んだ年齢20〜40歳台の20名の女性被験者に対して、実施例7、8の化粧料及び比較例7、8の比較化粧料について、連日頭髪に使用してもらい、以下の判定基準に基づいて、(a)櫛通り、(b)髪のつやについて、使用前後の髪状態について、使用開始1ヵ月後に官能評価を行った。なお、本試験期間を通して異常を訴えた者はいなかった。
【0093】
[髪の状態改善判定基準]
A 極めて顕著に改善した
B 顕著に改善した
C わずかに改善した
D 変化を認めなかった
E 増悪を感じた
【0094】
「(a)櫛通り」に関し、判定A〜Eとしたそれぞれの人数を表に示す。
【表6】

【0095】
「(b)髪のつや」に関し、判定A〜Eとしたそれぞれの人数を表に示す。
【表7】

【0096】
製造例1と製造例2において、一旦アイシングラスに加工してから抽出して抽出物を得た場合も、評価1〜5において、実施例の化粧料の方が格段に優れているという上記と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の化粧料は、肌のダメージを防いで、若々しく健やかな肌状態を実現し、美肌効果を有するので、石鹸、洗顔料、化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック等の基礎化粧品、シャンプー、リンス、整髪料等の頭髪用化粧品、口紅、下地クリーム、ファンデーション等のメークアップ化粧品、石鹸、ボディーソープ、入浴剤等のトイレタリー商品等広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】ヒト真皮由来線維芽細胞を用いた、チョウザメの浮袋からの抽出物によるコラーゲン合成効果を示す図である(評価2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョウザメの浮袋からの抽出物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
該チョウザメの浮袋からの抽出物が、水で抽出されたものである請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
該チョウザメの浮袋からの抽出物が、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒で抽出されたものである請求項1に記載の化粧料。
【請求項4】
該親水性有機溶媒が、1,3−ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール又はペンタンジオールである請求項3に記載の化粧料。
【請求項5】
該チョウザメの浮袋からの抽出物が、チョウザメの浮袋に含有されるコラーゲンを加水分解してから又は加水分解しつつ抽出したものである請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の化粧料。
【請求項6】
上記加水分解がタンパク分解酵素によってなされたものである請求項5に記載の化粧料。
【請求項7】
更に、チョウザメ以外の魚類の浮袋からの抽出物を含有する請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の化粧料。
【請求項8】
上記チョウザメの浮袋からの抽出物及び/又は上記チョウザメ以外の魚類の浮袋からの抽出物が、浮袋を加工してなるアイシングラスからの抽出物である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の化粧料。
【請求項9】
該チョウザメが、アムールチョウザメ、シロチョウザメ、シベリアチョウザメ、コチョウザメ又はベステルチョウザメである請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の化粧料。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の化粧料に含有されることを特徴とする化粧料用のチョウザメの浮袋からの抽出物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−256225(P2009−256225A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105087(P2008−105087)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(506078068)株式会社アテナ (3)
【Fターム(参考)】