説明

化粧材の製造方法

【課題】化粧シートが貼着された表側の面が内側に谷折りされた凹陥形状の化粧材の製造方法において、凹溝の上に被せられた化粧シートの部分が谷折り時に凹溝の外に飛び出ることを防ぐ。
【解決手段】樹脂基材10の表側の面の谷折りをする箇所に凹溝15を形成しつつ略平板状の樹脂基材10を押出成型し、押出成型した樹脂基材10が熱により柔軟性を保持している状態で、樹脂基材10の表側の面に化粧シート20を上下1対のローラR,Rで圧力Fをかけつつ貼着し、その後、凹溝15の上に被せられた化粧シート20の部分を凹溝15の中に挟み込みつつ樹脂基材10の表側の面を凹溝15に沿って谷折りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧材、特に化粧シートが貼着された表側の面が内側に谷折りされた形状の化粧材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物のスライド扉の引き手や、壁材と壁材との継ぎ目部分に充填される目地部材として、木目調や金属調の化粧シートが貼着された表側の面が1箇所又は複数箇所で内側に谷折りされて、全体又は1部分が凹陥した形状の化粧材が用いられることがある。
【0003】
一般に、そのような形状の化粧材の製造方法として、当初から樹脂基材を前記凹陥形状に異型押出で成型し、冷却固化した後に、該樹脂基材の表側の面に化粧シートを貼着する方法がある。しかし、凹陥部の底面や内側側面に化粧シートを良好に貼ることや、谷折りの内側角部に化粧シートを密着させることが難いという問題があり、特に化粧材のサイズが小さい場合は化粧シートの貼着作業がより一層困難となる。
【0004】
そこで、当初は略平板状の樹脂基材を押出成型し、該樹脂基材が熱により柔軟性を保持している状態で、該樹脂基材の表側の面に化粧シートを貼着した後、該表側の面をサイジング装置等により内側に谷折りし、その後、樹脂基材を冷却固化することが提案される。これによれば、化粧シートを略平板状の樹脂基材に貼着できるので、最終的に凹陥部の底面や内側側面になる部分や、谷折りの内側角部になる部分にも、化粧シートを良好に密着させて貼着することが容易にできることとなる。
【0005】
ところで、一般に、厚みのある部材を折り曲げる際、その折曲げを容易化するために折り目に予め凹溝を形成することは周知であり、例えば特許文献1には、押出成型した平板状の樹脂基材の表側の面に化粧シートを貼り、裏側の面にV字溝を賦形して、樹脂基材の端辺部分を前記V字溝に沿って裏側に折り込むことにより、化粧シートが表側の面から小口面まで連続して貼られた化粧板を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−237014号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、前記技術を前述の化粧材の製造方法に適用すると、押出成型した略平板状の樹脂基材の表側の面に化粧シートを貼着する前に、該表側の面の谷折りをする箇所に予め凹溝を形成しておき、その上から前記表側の面に化粧シートを貼着した後、前記凹溝に沿って該表側の面を内側に谷折りすることとなる。
【0008】
しかし、ここで、凹溝の上に被せられた化粧シートの部分の処理が問題となる。すなわち、図8に示すように、凹溝の上に被せられた化粧シートの部分は、最終的に化粧板において不要な部分であり、この部分が谷折り時に凹溝の外に飛び出ると、谷折りの内側角部でシワとなり、化粧材の外観が低下して商品価値が減損してしまうのである。
【0009】
そこで、本発明は、化粧シートが貼着された表側の面が内側に谷折りされた凹陥形状の化粧材の製造方法において、凹溝の上に被せられた化粧シートの部分が谷折り時に凹溝の外に飛び出ないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、化粧シートが貼着された板状の樹脂基材の表側の面が少なくとも1箇所で谷折りされた形状の化粧材の製造方法であって、前記表側の面の前記谷折りをする箇所に凹溝を形成しつつ略平板状の樹脂基材を押出成型する成型工程と、前記成型工程で押出成型した樹脂基材が熱により柔軟性を保持している状態で、該樹脂基材の表側の面に化粧シートを圧力をかけつつ貼着する貼着工程と、前記貼着工程の後、前記凹溝の上に被せられた化粧シートの部分を該凹溝の中に挟み込みつつ樹脂基材の表側の面を前記凹溝に沿って谷折りする谷折工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記凹溝は、押出成型のダイにより樹脂基材の押出成型と同時に形成してもよく、押出成型後に凹溝賦形用ローラ等により樹脂基材に形成してもよい。
【0013】
また、樹脂基材が熱により柔軟性を保持している状態とは、樹脂基材が押出成型直後で冷却固化される前の状態や、樹脂基材がいったん冷却固化された後に再加熱された状態等が含まれる。
【0014】
さらに、成型工程で樹脂基材を押出成型するときの略平板状とは、真直ぐに平らな板状の他、貼着工程での化粧シートの貼着に支障のない程度に湾曲した板状あるいは反った板状等が含まれる。
【0015】
次に、本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の化粧材の製造方法において、前記凹溝は、V字溝であることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の化粧材の製造方法において、前記凹溝は、円弧溝であることを特徴とする。
【0017】
一方、本願の請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧材の製造方法において、前記谷折工程の後、該谷折りによって生成した樹脂基材の内側角部に位置する化粧シートの部分を溶着する溶着工程をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
そして、本願の請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧材の製造方法において、前記化粧シートは、前記樹脂基材の小口面まで貼着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1に記載の発明によれば、成型工程において、表側の面の谷折りをする箇所に凹溝が形成された略平板状の樹脂基材を成型し、次いで、貼着工程において、成型した樹脂基材が熱により柔軟性を保持している状態で、該樹脂基材の表側の面に化粧シートを圧力をかけつつ貼着するので、貼着工程においては、化粧シートが樹脂基材の表側の面に良好に密着して貼着されると共に、その貼着時には、凹溝が圧力によって変形し(例えば凹溝の深さが浅くなる、凹溝の内側側面が倒れて化粧シートの方を向く、凹溝の周縁部のエッジが丸みを帯びる等)、その変形により、前記化粧シートのうち凹溝の上に被せられた部分が凹溝の中(例えば浅くなった凹溝の底面、倒れた凹溝の内側側面、丸みを帯びた凹溝の周縁部等)に部分的に貼着されることとなる。
【0020】
この結果、谷折工程において、樹脂基材の表側の面を前記凹溝に沿って谷折りしたときには、前記化粧シートのうち凹溝の上に被せられた部分は、前記の凹溝への部分的な貼着により、凹溝の外に飛び出ることなく、凹溝の中に向けて折り畳まれ、凹溝の中に挟み込まれることとなる。そして、最終的に凹溝は谷折りによって閉じられるので、凹溝の中に挟み込まれた化粧シートの部分は、凹溝内に収容され、樹脂基材の中に隠れて外部から見えなくなる。
【0021】
以上により、化粧シートが貼着された表側の面が谷折りされた凹陥形状の化粧材において、凹陥部の底面や内側側面あるいは谷折りの内側角部に化粧シートが良好に密着して貼着され、かつ化粧シートにシワが発生せず、化粧材の商品価値が確保されることとなる。
【0022】
その場合に、本願の請求項2又は3に記載の発明によれば、前記凹溝がV字溝又は円弧溝であるので、化粧シートの貼着時の圧力によって凹溝は溝幅が拡大するように変形し、その結果、該凹溝の上に被せられた化粧シートの部分が凹溝の中に部分的に貼着される面積が広がって、化粧シートの前記部分は、谷折り時に、より一層確実に凹溝の中に向けて折り畳まれ、凹溝の中に挟み込まれることとなる。
【0023】
なお、凹溝の深さが同じ場合、円弧溝はV字溝よりも容積が大きいから、挟み込んだ化粧シートをより一層確実に凹溝内に収容することができる。
【0024】
また、本願の請求項4に記載の発明によれば、谷折工程で樹脂基材の表側の面を凹溝に沿って谷折りした後、該谷折りによって生成した樹脂基材の内側角部に位置する化粧シートの部分を溶着するので、該内側角部で相互に対接した化粧シート同士が溶融して接合することとなり、該化粧シート間にゴミ等の異物が侵入することが防がれる。また、最終的に仕上がった化粧材を建材に組み付けるまでの保管等の期間中に前記谷折りが広がることが防がれ、化粧材の凹陥形状が良好に保持されることとなる。
【0025】
そして、本願の請求項5に記載の発明によれば、化粧シートが樹脂基材の小口面まで貼着されるので、化粧材が引き手や目地部材として用いられたときに前記小口面が外部から見える場合でも、化粧材全体としての意匠が統一し、化粧材の商品価値が高まることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る化粧材の断面図である。
【図2】前記化粧材の製造ラインの概略構成図である。
【図3】(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ樹脂基材の表側の面の谷折りをする箇所にV字溝を形成した場合における、前記製造ラインの(a)点、(b)点、(c)点、(d)点における製造途中物の断面図である(なお、見易さを確保するため、樹脂基材及び化粧シートのハッチングは省略してある。図4〜図6においても同様)。
【図4】(a)は、前記図3(b)の破線円で囲った部分の拡大図、(b)は、前記図3(c)の破線円で囲った部分の拡大図、(c)は、前記図3(d)の破線円で囲った部分の拡大図である。
【図5】樹脂基材の表側の面の谷折りをする箇所に円弧溝を形成した場合における、(a)は、前記図4(b)に対応する拡大図、(b)は、前記図4(c)に対応する拡大図である。
【図6】谷折工程の後に溶着工程を行った場合における、(a)は、前記図4(c)に対応する拡大図、(b)は、前記図5(b)に対応する拡大図である。
【図7】(a)〜(e)は、それぞれ本発明に係る他の形状の化粧材の断面図である。
【図8】本発明が解決しようとする課題の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る化粧材1は、押出成型された樹脂基材10の表側の面に、施工される場所に応じて木目調や金属調の化粧シート20が貼着された構成であって、特に、化粧シート20が貼着された表側の面が2箇所で内側に谷折りされており、断面形状がやや開いたコ字状で、化粧材1全体が凹陥形状を呈している。化粧材1のサイズは、縦横が数mm〜数cmであって、比較的小さいものである。
【0028】
化粧シート20は、凹陥部の底面11や内側側面12あるいは谷折りの内側角部αに良好に密着して貼着され、かつ化粧シート20にはシワが発生しておらず、化粧材1の商品価値が確保されている。また、化粧シート20は、樹脂基材10の小口面13まで貼着されており、図示したように、化粧材1が例えばスライド扉や壁材等の建材Xに施工されて、引き手や目地部材として用いられたときに、小口面13が外部から見える場合でも、化粧材1全体としての意匠が統一し、化粧材1の商品価値が高められている。
【0029】
この化粧材1は、例えば図2に示すような製造ラインで製造することができる。この製造ラインは、略平板状の樹脂基材10を水平に押出成型する(成型工程)押出成型機Aと、この押出成型機Aで押出成型された直後で熱により柔軟性を保持している状態にある略平板状の樹脂基材10の表側の面(図において上側の面)に、ロールから繰り出された化粧シート20を圧力をかけつつ貼着する(貼着工程)ための上下1対の加圧ローラR,Rと、化粧シート20が貼着された樹脂基材10の表側の面を2箇所で内側に谷折りして(谷折工程)、図1に示した断面コ字状の形状精度を出すためのサイジング装置Bと、化粧シート20が貼着され、かつ断面コ字状の凹陥形状に曲折された樹脂基材10を冷却固化する(冷却工程)ための冷却水槽Cとを有している。
【0030】
図3(a)に示すように、成型工程で押出成型機Aにより押出成型された略平板状の樹脂基材10は、水平方向に平らな板状であるが、その表側の面の谷折りをする2箇所にそれぞれ凹溝(図例ではV字溝)15が形成されている。この凹溝15は、押出成型機Aのダイにより樹脂基材10の押出成型と同時に形成してもよく、あるいは押出成型直後に例えば凹溝賦形用ローラ等により樹脂基材10に形成してもよい。
【0031】
樹脂基材10の樹脂は、用途に応じて、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリル樹脂等が好ましく使用可能である。
【0032】
次に、図3(b)に示すように、貼着工程では、樹脂基材10の表側の面の上に化粧シート20が一面に被せられ、上下1対の加圧ローラR,Rにより上下に挟まれて圧力がかけられる。このとき、樹脂基材10は、押出成型された直後で熱により柔軟性を保持している状態にあるので(樹脂基材10の表面温度は例えば150〜250℃等である)、ローラR,Rによる加圧により化粧シート20が樹脂基材10の表側の面に良好に密着して貼着される。
【0033】
なお、化粧シート20を樹脂基材10に貼付するための感熱性の接着剤層を化粧シート20の裏側の面(樹脂基材10の表側の面に対接する面)に設けてもよい。
【0034】
ここで、図3(b)に明示したように、化粧シート20の幅は樹脂基材10の幅よりも大きく、化粧シート20の両側縁部が樹脂基材10の両側縁部から食み出している。
【0035】
この樹脂基材10の両側縁部から食み出した化粧シート20の両側縁部は、図3(c)に示すように、樹脂基材10がサイジング装置Bによって断面コ字状に曲折される前に、左右1対のガイドG,Gによって樹脂基材10の裏側の面に折り曲げられる。これにより化粧シート20が樹脂基材10の小口面13,13まで貼着されることとなる。
【0036】
そして、図3(d)に示すように、谷折工程では、化粧シート20が貼着された樹脂基材10の表側の面がサイジング装置Bにより前記凹溝15,15に沿って内側に谷折りされる。この段階では、樹脂基材10は、まだ押出成型の熱が残っており、十分な柔軟性を保持している状態にあるので、このサイジング装置Bによる曲折は円滑に遂行される。
【0037】
そして、このようにして化粧シート20が貼着され、かつ断面コ字状の凹陥形状に曲折された樹脂基材10は、冷却工程で冷却水槽Cにより冷却固化されることにより、図1に示した化粧材1が得られることとなる。
【0038】
以上のような製造過程において、貼着工程では、図4(a)に拡大図示するように、化粧シート20の貼着時に、凹溝15がロールR,Rからの圧力Fを受けて変形する。図4(a)に示した鎖線は、変形前の凹溝15を示している。この貼着工程では、樹脂基材10は、押出成型された直後で熱により柔軟性を保持している状態にあるので、凹溝15は容易に変形する。凹溝15の変形は、例えば凹溝15の深さが浅くなることや、凹溝15の内側側面が倒れて化粧シート20の方を向くことや、凹溝15の周縁部のエッジが丸みを帯びること(符号ア参照)等である。
【0039】
そして、樹脂基材10がロールR,Rから出てロールR,Rからの圧力Fが解除されると、図4(b)に拡大図示するように、樹脂基材10の形状は元に戻るが、そのとき前記変形の結果、化粧シート20のうち凹溝15の上に被せられた部分が凹溝15の中(例えば浅くなった凹溝15の底面、倒れた凹溝15の内側側面、丸みを帯びた凹溝15の周縁部等)に部分的に貼着されることとなる(符号イ参照)。
【0040】
この結果、谷折工程において、樹脂基材10の表側の面が前記凹溝15に沿って谷折りされたときには、図4(c)に拡大図示するように、前記化粧シート20のうち凹溝15の上に被せられた部分が、前記の凹溝15への部分的な貼着により、凹溝15の外に飛び出ることなく、凹溝15の中に向けて折り畳まれ、凹溝15の中に挟み込まれることとなる(符合ウ参照)。そして、最終的に凹溝15は谷折りによって閉じられるので、凹溝15の中に挟み込まれた化粧シート20の部分は、凹溝15内に収容され、樹脂基材10の中に隠れて外部から見えなくなる。
【0041】
以上により、化粧シート20が貼着された表側の面が谷折りされた凹陥形状の化粧材1において、凹陥部の底面11や内側側面12あるいは谷折りの内側角部αに化粧シート20が良好に密着して貼着され、かつ化粧シート20にシワが発生せず、化粧材1の商品価値が確保されることとなる。
【0042】
なお、凹溝15はV字溝に限らず、他の断面形状、例えば図5に示すように円弧溝であってもよい。凹溝15の深さが同じ場合、円弧溝はV字溝よりも容積が大きいから、挟み込んだ化粧シート20をより一層確実に凹溝15内に収容することができる。ここで、図5(a)の符号エは、図4(b)の符号イに対応して、化粧シート20のうち凹溝15の上に被せられた部分が凹溝15の中に部分的に貼着されたことを示し、図5(b)の符号オは、図4(c)の符号ウに対応して、化粧シート20のうち凹溝15の上に被せられた部分が凹溝15の中に挟み込まれたことを示している。
【0043】
また、図6(a)及び図6(b)に示すように、前記谷折工程を行った後、あるいは冷却工程を行った後に、谷折りによって生成した樹脂基材10の内側角部αに位置する化粧シート20の部分を溶着する溶着工程をさらに行ってもよい。この溶着工程は、例えばヒータH等を前記内側角部αに近接させ、その熱で化粧シート20を部分的に溶融させることにより実行される。その結果、前記内側角部αで相互に対接した化粧シート20同士が、符号カ、キで示すように、溶融して接合することとなり、該化粧シート20間にゴミ等の異物が侵入することが防がれる。また、最終的に仕上がった化粧材1を例えばスライド扉や壁材等の建材Xに組み付けるまでの保管等の期間中に前記谷折りが広がることが防がれ、化粧材1の凹陥形状が良好に保持されることとなる。
【0044】
なお、溶着工程を行う場合、化粧シート20の良好な溶融及び接合を確保するため、化粧シート20としては、融点の比較的低い素材、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)等で製造された化粧シート20を用いることが好ましい。
【0045】
化粧材1の断面形状は、図1に限らず、例えば図7(a)のように、開いていないコ字状、図7(b)のように、谷折りが1箇所のV字状、図7(c)のように、谷折りが3箇所以上の多角状、図7(d)のように、化粧シート20が貼着された表側の面が外側に山折りされた部分を含み、化粧シート20が小口面13には貼着されていない形状、図7(e)のように、山折りが両側部で複数個所の形状等でもよい。
【0046】
また、押出成型機Aにより押出成型された略平板状の樹脂基材10をいったん冷却固化した後に再加熱し、熱により柔軟性を保持している状態にして、貼着工程以下を成型工程とは別に行ってもよい。
【0047】
また、以上の実施形態では、押出成型機Aにより押出成型される樹脂基材10の形状は、図3(a)に示したように、真直ぐに平らな板状であったが、これに限らず、加圧ローラR,Rを用いた貼着工程での化粧シート20の貼着に支障のない程度に湾曲した板状あるいは反った板状等(すなわち略平板状)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、化粧シートが貼着された表側の面が内側に谷折りされた凹陥形状の化粧材の製造方法において、凹溝の上に被せられた化粧シートの部分が谷折り時に凹溝の外に飛び出ることを防ぐことが可能な技術であるから、建物のスライド扉の引き手や、壁材と壁材との継ぎ目部分に充填される目地部材の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
【符号の説明】
【0049】
1 化粧材
10 樹脂基材
11 凹陥部の底面
12 凹陥部の内側側面
13 小口面
15 凹溝
20 化粧シート
α 谷折りの内側角部
A 押出成型機
B サイジング装置
C 冷却装置
F 圧力
G ガイド
H ヒータ
R 加圧ローラ
X 建材(スライド扉、壁材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧シートが貼着された板状の樹脂基材の表側の面が少なくとも1箇所で谷折りされた形状の化粧材の製造方法であって、
前記表側の面の前記谷折りをする箇所に凹溝を形成しつつ略平板状の樹脂基材を押出成型する成型工程と、
前記成型工程で押出成型した樹脂基材が熱により柔軟性を保持している状態で、該樹脂基材の表側の面に化粧シートを圧力をかけつつ貼着する貼着工程と、
前記貼着工程の後、前記凹溝の上に被せられた化粧シートの部分を該凹溝の中に挟み込みつつ樹脂基材の表側の面を前記凹溝に沿って谷折りする谷折工程とを含むことを特徴とする化粧材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧材の製造方法において、
前記凹溝は、V字溝であることを特徴とする化粧材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の化粧材の製造方法において、
前記凹溝は、円弧溝であることを特徴とする化粧材の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧材の製造方法において、
前記谷折工程の後、該谷折りによって生成した樹脂基材の内側角部に位置する化粧シートの部分を溶着する溶着工程をさらに含むことを特徴とする化粧材の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧材の製造方法において、
前記化粧シートは、前記樹脂基材の小口面まで貼着することを特徴とする化粧材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−214918(P2010−214918A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67486(P2009−67486)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(591100448)パネフリ工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】