説明

化粧材

【課題】 VOCの放散量が少なく、表面硬度が硬く、耐汚染性に優れた化粧材を得る。
【解決手段】 結晶性オリゴマー90部に対し、不飽和ポリエステル10部、ヒュームドシリカ10部、離型剤2部を配合して得られた樹脂組成物を坪量80g/mの無地柄の化粧紙に、ホットロールコーター(塗工温度90℃)を用いて、含浸率が100%となるように塗布し、これにジアリルフタレートモノマーに溶解させた10wt%過酸化ベンゾイル溶液を20g/mの塗布量で塗布して結晶性オリゴマー塗工化粧紙を得、この化粧紙を酢酸ビニル系接着剤を60g/m塗工した合板基材とともに150℃、0.5Mpaで1分間熱圧プレスする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来、合板、MDF等の木質系基材にジアリルフタレート系含浸紙を積層し、熱圧成形してなるDAP合板や、合板、MDF等の木質系基材に化粧板用の化粧紙を貼着し、表面を合成樹脂よりなる樹脂液をフローコーター法、スプレー法、フィルム成形法などの手段で被覆するポリエステル化粧合板があった。
【特許文献1】特開2005−154626号公報
【特許文献2】特開2006−35839号公報
【特許文献3】特開平11−140777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
これまでのダップ合板やポリエステル化粧合板は、含浸紙作製時に有機溶剤を使用していたり、モノマーにスチレンが含まれる等、環境負荷が大きく、使用時にVOCが放散されることがあった。また、ダップ合板やポリエステル化粧合板は表面硬度や耐汚染性が低い為、使用部位に制限があった。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、常温で固形の結晶性オリゴマーと不飽和ポリエステルを含む組成物が化粧紙に塗布されコア基材とともに熱圧成形してなる化粧材である。
【発明の効果】
【0004】
本発明によれば、硬化性を有する常温で固形の結晶性オリゴマーを含浸した化粧紙を合板やケイ酸カルシウム板等の基材と熱圧プレスすることにより、含浸時に有機溶剤を使用することなく、環境負荷の少ないものづくりが可能である。また得られた化粧材は使用時のVOC放散量が極端に少ない。物性面においても表面硬度が硬く、耐汚染性に優れた化粧材を作製することが可能となった。ケイ酸カルシウム板を基材として用いた場合は不燃性を有するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明について詳細に説明する。硬化性を有し常温において固形の結晶性オリゴマーには、ウレタン(メタ)アクリレート、アリルウレタン、ビニルエーテルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。これらは、常温において固形であって、室温においてベトつかず、取り扱い性が良好であることから使用上好都合である。
【0006】
硬化性を有し常温において固形の結晶性オリゴマーを合成する一例として、水酸基を有する重合性化合物と、イソシアネート基を持つ化合物とを反応させてウレタン(メタ)アクリレート、アリルウレタン、ビニルエーテルウレタンを得る方法がある。また、エポキシ樹脂にカルボキシル基を含有する(メタ)アクリル酸などを反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを得る方法、あるいはフマル酸とヘキサメチレングリコールを重縮合させてなる不飽和ポリエステルなどが挙げられる。
【0007】
水酸基を有する重合性化合物と、イソシアネート基を有する化合物とを反応させる方法の例について述べると、水酸基を有する重合性化合物として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1、4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートなどのアクリル系モノマーおよびオリゴマー類、エチレングリコールモノアリルエーテル、アリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアリル系モノマーおよびオリゴマー類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどビニルエーテル系モノマーおよびオリゴマー類が例示される。
【0008】
イソシアネート基を有する化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、4、4´−ジフエニルメタンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、2、4−トルエンジイソシアネート、2、6−トルエンジイソシアネート、2、4−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、リジンイソシアネート、1、5−ナフチレンジイソシアネート、トランスシクローキサン1、4−ジイソシアネート、2、4−キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、などが挙げられる。好ましくはジイソシアネート基間が直鎖状炭化水素構造、左右対称直線構造のものが得られる化合物の結晶性の点で優れている。
【0009】
硬化性を有し常温において固形の結晶性オリゴマーの合成例について説明すれば、攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下装置を備えたフラスコに、水酸基を持つ重合性化合物を仕込み、生成させる結晶性オリゴマーの融点まで昇温したのち、イソシアネート基を有する化合物を滴下し、重合固化しない温度条件に保持しながらウレタン化反応させることにより、硬化性を有し常温において固形の結晶性オリゴマーが得られる。
【0010】
カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル酸などを反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを得る合成に使用されるエポキシ樹脂としては、常温で固体、好ましくは融点が50〜120℃で、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するものがあり、具体例として脂肪族ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂肪族トリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、酸ペンダントエポキシ(メタ)アクリレート、リン酸塩含有エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0011】
化粧紙に含浸或いは塗布される樹脂組成物は前述の結晶性オリゴマーと不飽和ポリエステルを必須成分とするものであり、不飽和ポリエステルは不飽和二塩基酸及び/又はその酸無水物と必要に応じて用いられるその他の飽和酸及び/又はその酸無水物とを含む酸成分と、多価アルコールとを窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で160〜230℃程度、好ましくは210〜230℃で常法に従い脱水縮合反応させたものが用いられる。
【0012】
不飽和二塩基酸及びその酸無水物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられ、単独で用いても2種以上を併用しても良い。不飽和二塩基酸及びその酸無水物は、酸成分中50〜100mol%使用されることが好ましく、特に60〜100mol%使用されることが好ましい。
【0013】
必要に応じて用いられるその他の飽和酸及び/又はその酸無水物としては、無水フタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの飽和二塩基酸などが挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。飽和酸の配合量は、酸成分中0〜50mol%、好ましくは0〜40mol%の範囲とされる。
【0014】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、2,3―ブタンジオール、1,5―ペンタジオール、1,6―ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ペンタエリスリトールなどの四価アルコールなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。配合量は全酸成分100に対して100〜110molの範囲が良い。
【0015】
結晶性オリゴマーの固形分100重量部に対する不飽和ポリエステルの配合割合は5〜400重量部とするのが好ましく、下限に満たないと成型後、ピンホール等ができ外観不良となる。上限を超えると樹脂粘度が高くなり、塗工が困難となり、また表面硬度が得られない。
【0016】
また、結晶性オリゴマーと不飽和ポリエステルの混合物には結晶化を促進させ、かつ取扱い時のべたつきを防止するために、ヒュームドシリカ等の無機微粉末、炭酸カルシウム等の充填剤、保存安定性を向上させるためハイドロキノン等の重合禁止剤が配合可能である。結晶性オリゴマーと不飽和ポリエステルの混合物100重量部に対する無機微粉末の配合割合は1〜10重量部とするのが好ましく、下限に満たないと、べたつき防止に効果が無く、上限を超えると樹脂粘度が高くなり塗工が困難となる。
【0017】
結晶性オリゴマーを硬化させる為には重合開始剤の塗布が必要である。重合開始剤はプリプレグの裏面に塗布し、場合によってはジアリルフタレートモノマー等に溶解させて塗布してもよい。重合開始剤には、加熱によって融解した硬化性を有する結晶性オリゴマー、さらには反応性モノマー等の重合を引き起こすものであれば、いずれも使用できる。具体例として、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、パーオキシジカーボネート系などの有機過酸化物ならびにアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。
【0018】
コア基材には合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)などの木質系基材や、珪酸カルシウム板、石膏ボードなどの無機質系基材が適用できる。常温で固形の結晶性オリゴマーと不飽和ポリエステルを含む組成物を化粧紙に含浸或いは塗工し、コア基材と一体化するには接着剤、例えば酢酸ビニル系接着剤を介して110〜150℃、0.3〜5Mpa、時間20秒〜30分で成形すればよい。基材によっては、接着剤を塗布する前にプライマー、例えばウレタン系プライマーを塗布しても良い。
【0019】
合成例1 結晶性オリゴマー(A)(ウレタンメタクリレート)
攪拌装置、温度計、留分凝縮冷却管(コンデンサー)、滴下装置を備えた2リットルのセパラブルフラスコに2−ヒドロキシエチルメタアクリレート260g(2モル)及びウレタン化触媒であるジ−n−ブチルスズラウレート0.13gを加え攪拌して70℃に昇温した。内温が90℃以下になるようにヘキサメチレンジイソシアネートの滴下速度を調整しながら168g(1モル)を添加した。滴下終了後、内温を80℃に保ちながら、反応液をサンプリングし、FTIRにてイソシアネート基にもとづく2275cm−1の吸収ピークが消失したことを確認した時点で、冷却バットに反応液を移送し、結晶化固化した結晶性オリゴマー(A)を得た。DTA測定(昇温速度・毎分10℃)による吸熱ピーク先端温度の測定法で融点78℃であった。
【0020】
合成例2 結晶性オリゴマー(B)(アリルウレタン)
攪拌装置、温度計、留分凝縮冷却管(コンデンサー)、滴下装置を備えた2リットルのセパラブルフラスコにアリルアルコール116g(2モル)及びウレタン化触媒であるジn−ブチルスズラウリレート0.13gを加え攪拌して70℃に昇温した。内温が90℃以下になるようにヘキサメチレンジイソシアネートの滴下速度を調整しながら168g(1モル)を添加した。滴下終了後、内温を80℃に保ちながら、反応液をサンプリングし、FTIRにてイソシアネート基にもとづく2275cm−1の吸収ピークが消失したことを確認した時点で、留分冷却器を留分追い出し用冷却管にかえ、減圧20mmHg条件下にして未反応のアリルアルコールを留去させた。さらに極微量のアリルアルコールを除去するためにイソシアネート基を有するオリゴマーであるコロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社 製品名)を8g添加した。冷却バットに反応液を移送し、結晶化固化した結晶性オリゴマー(B)を得た。DTA測定(昇温速度・毎分10℃)による吸熱ピーク先端温度の測定法で融点74℃であった。
【0021】
実施例1
結晶性オリゴマー(A)90部に対し、不飽和ポリエステル10部、ヒュームドシリカ10部、離型剤2部を配合して得られた樹脂組成物を坪量80g/mの無地柄の化粧紙に、ホットロールコーター(塗工温度90℃)を用いて、数1で示す含浸率が100%となるように塗布し、これにジアリルフタレートモノマーに溶解させた10wt%過酸化ベンゾイル溶液を20g/mの塗布量で塗布して結晶性オリゴマー塗工化粧紙を得た。この化粧紙を酢酸ビニル系接着剤を60g/m塗工した合板基材とともに150℃、0.5Mpaで1分間熱圧プレスすることにより、化粧材を得た。
【0022】
不飽和ポリエステル;昭和高分子株式会社製、商品名リゴラック
ヒュームドシリカ;商品名レオロシールDM−30 平均粒径7μm
離型剤;商品名セパール#326 中京油脂株式会社製
酢酸ビニル系接着剤;AX−895A、AX−895B アイカ工業株式会社製
【0023】
【数1】

【0024】
実施例2
実施例1において樹脂組成物の配合を結晶性オリゴマー(A)90部に対し、不飽和ポリエステル10部、ヒュームドシリカ1部、離型剤2部とした以外は同様に実施した。
【0025】
実施例3
実施例1において樹脂組成物の配合を結晶性オリゴマー(A)20部に対し、不飽和ポリエステル80部、ヒュームドシリカ7部、離型剤2部とした以外は同様に実施した。
【0026】
実施例4
実施例1において樹脂組成物の配合を結晶性オリゴマー(A)95部に対し、不飽和ポリエステル5部、ヒュームドシリカ7部、離型剤2部とした以外は同様に実施した。
【0027】
実施例5
実施例1において、合成例2で調製した結晶性オリゴマー(B)を用いた以外は同様に実施した。
【0028】
実施例6
実施例1において基材として、ウレタンプライマーTN-100(シンク化学)を20g/m2塗工したケイ酸カルシウム板を用いた以外は同様に実施した。
【0029】
比較例1
実施例1において樹脂組成物の配合を結晶性オリゴマー(A)90部に対し、不飽和ポリエステル10部、ヒュームドシリカ15部、離型剤2部とした以外は同様に実施した。
【0030】
比較例2
実施例1において樹脂組成物の配合を結晶性オリゴマー(A)90部に対し、不飽和ポリエステル10部、ヒュームドシリカ0.5部、離型剤2部とした以外は同様に実施した。
【0031】
比較例3
実施例1において樹脂組成物の配合を結晶性オリゴマー(A)17部に対し、不飽和ポリエステル83部、ヒュームドシリカ7部、離型剤2部とした以外は同様に実施した。
【0032】
比較例4
実施例1において樹脂組成物の配合を結晶性オリゴマー(A)97部に対し、不飽和ポリエステル3部、ヒュームドシリカ7部、離型剤2部とした以外は同様に実施した。
【0033】
比較例5
ジアリルフタレート系樹脂
ジアリルオルソフタレートプレポリマー 60重量部
(ダイソーダップA ダイソー株式会社)
不飽和ポリエステル樹脂 40重量部
硬化剤
(ベンゾイルパーオキサイド) 8重量部
シリカ粒子 4重量部
(商品名ファインシールX70 平均粒径2.0μm 株式会社トクヤマ製)
80g/mの化粧紙に上記配合のジアリルフタレート系樹脂を数1で示す含浸率が120%となるように含浸し、乾燥して含浸紙を得た。次いでこの含浸紙を厚み12mmの合板(3尺×6尺)の上に積層し、140℃、1Mpaで12分間熱圧プレスすることにより、DAP合板を得た。
【0034】
比較例6
不飽和ポリエステル樹脂
不飽和ポリエステル 65重量部
(フマル酸、無水フタル酸−エチレングリコール、プロピレングリコール系)
スチレン 24重量部
メチルメタクリレート 11重量部
重合禁止剤
(tブチルカテコール) 200ppm
樹脂液(a)
不飽和ポリエステル樹脂 100重量部
硬化剤
(メチルエチルケトンパーオキサイド) 1重量部
硬化促進剤
ナフテン酸コバルト6%溶液 0.5重量部
厚み2.5mmの合板(3尺×6尺)の上に酢酸ビニル系接着剤を用いて80g/mの化粧紙を貼着し、表面に上記の樹脂液(a)を塗布量が80g/m2となるようにフローコーターで塗布した。
【0035】
次いで、化粧紙の樹脂液塗布面を、ポリエステルフィルムで被覆し、ゴムローラーで樹脂液を均一に広げながら気泡を除去し硬化させた。1時間後フィルムを剥がしてポリエステル化粧合板を得た。
評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
評価方法は以下の通りとした。
外観;プレス成型後、成型品の表面に、樹脂の欠落部分や艶落ち部分等の外観以異常がないか観察した。
樹脂粘度;BM型粘度計を用いて測定した。(温度90℃、回転数60rpm、ローターNo.4)
表面硬度;硬化性の判断として鉛筆硬度測定を行った。
耐汚染性;JIS K 6902;1998(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)
VOC放散量;JIS A 1901「建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、(2003年)に準拠して、容積20Lの小型チャンバー法により行った。測定条件は温度28±1.0℃、相対湿度50±5%、換気回数を0.5±0.05回/hとし、試料負荷率2.2m/mの条件にサンプルを設置し、7日後の空気を捕集してVOC放散量を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固形の結晶性オリゴマーと不飽和ポリエステルを含む組成物が化粧紙に含浸或いは塗工され、コア基材とともに熱圧成形されてなることを特徴とする化粧材。


【公開番号】特開2009−61593(P2009−61593A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228824(P2007−228824)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】