説明

化粧用貼付材

【課題】使用直前にビタミンの溶媒をゲル層に吸収させても反りが発生し難く、十分な粘着力を有しているにも拘わらず貼付操作がしやすく、なおかつ、貼付している間も反りが発生し難い化粧用貼付材を提供する。
【解決手段】セグメントの大半ないし全てが常温で液状である粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルからなり且つビタミンが含有されたゲル層1と、このゲル層1の片面に積層された非粘着性のポリマー層2とを備えた化粧用貼付材10において、非粘着性のポリマー層2を、セグメント化ポリウレタンゲルを膨潤させるビタミンの溶媒によって膨潤するポリマーからなる層とする。ビタミンの溶媒に浸漬するとゲル層1もポリマー層2も膨潤、伸長し、反りが発生し難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時に反りを発生しないビタミン入りの化粧用貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミン、例えば代表的な水溶性ビタミンであるビタミンCや、代表的な脂溶性ビタミンであるビタミンEは、美白作用、色素沈着抑制、皮膚の老化抑制、肌荒れ防止などの効能を有することが知られている。このようなビタミンをヒドロゲルの基材に含有させた化粧用貼付材として、ポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸塩と水と架橋剤を必須成分とするアクリル系の架橋型含水ゲルよりなる基材に、ビタミンその他の美肌成分を含有させたシート状パック剤が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記のシート状パック剤は、基材として含水ゲルを使用しているため、脂溶性のビタミンは乳化分散して含有させる必要があるが、相溶性がないので、経時的に分離したり移行したりするなどの安定性に問題がある。一方、水溶性のビタミンは含水ゲルの基材に相溶させて含有させることができる。けれども、例えばビタミンC(アスコルビン酸)のように容易に酸化され、加水分解される水溶性のビタミンを含有させると、ゲル分解により生じた酸性化合物により侵されて劣化や着色をするという問題があった。また、含水ゲルよりなる基材は含水量によって粘着力が大きく変化し、含水量が減少すると粘着力が大幅に低下するという問題もあった。
【0004】
そこで、本出願人は、親水性のアルキレンオキサイドのセグメントと疎水性のアルキレンオキサイドのセグメントを有し、セグメントの大半ないし全てが常温で液状である粘着性のポリウレタンゲルからなるゲル層に、ビタミンを含有させてなる化粧用貼付材を提案した(特願2003−158250)。この化粧用貼付材は、水溶性のビタミンでも脂溶性のビタミンでもゲル層に含有させることができ、容易に酸化、加水分解して変質するビタミンCであっても、実質的に無水の乾燥状態で安定してゲル層に含有させることができるという優れた貼付材であった。
【0005】
上記の化粧用貼付材は、そのままでは粘ついて取扱いにくいため、ゲル層の片面にエチレン−酢酸ビニル共重合体などからなる非粘着性のフィルムを積層することにより、ゲル層の片面を非粘着性として取扱い性を向上させているが、かかる非粘着性のフィルムを積層して積層体の化粧用貼付材を形成すると、次のような問題を生じることがあった。即ち、化粧用貼付材が例えばビタミンCをゲル層に含有させたものである場合には、保管中にビタミンCが劣化するのを防ぐために、ビタミンCをゲル層に乾燥状態で含有させて、貼付ける直前にビタミンCの良溶媒である水をゲル層に吸収させてビタミンCを溶解させることが必要になるが、このように上記積層体のゲル層のみに吸水させると、セグメント化ポリウレタンゲルが膨潤してゲル層が伸長するのに対し、ゲル層片面の非粘着性フィルムは膨潤、伸長しないため、非粘着性フィルムが内周側となるように化粧用貼付材に反りが発生し、化粧用貼付材を顔面に密着させて貼付し難くなることがあった。この問題は、ビタミンCの溶解を高めるために吸水量を多くすればするほど顕著になる。
【0006】
そこで、非粘着性フィルムをなくして上記の問題を解決しようとしたが、貼付時の操作性と、貼付材が脱落しないという貼付の安定性を両立させることは難しいものであった。また、非粘着性フィルムを省略すると、上記の異種材料の膨潤の差による反りの問題は解決できるというものの、顔面に貼付けているうちに、ゲル層中の水分がゲル層の貼付面と反対側の表面から蒸発し、ゲル層の反対側の表層部分で乾燥、収縮が進行して、この反対側の表層部分が内周側となるように化粧用貼付材(ゲル層)に乾燥、収縮の違いによる反りが発生し、顔面との密着性が低下して化粧用貼付材が顔面から脱落することがあった。
【特許文献1】特開昭58−180408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、使用直前に、セグメント化ポリウレタンゲルよりなるゲル層に含まれているビタミンの溶媒を該ゲル層に吸収させても反りが発生し難く、十分な粘着力を有しているにも拘わらず貼付操作がしやすく、なおかつ、貼付している間も反りが発生し難い化粧用貼付材を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る化粧用貼付材は、セグメントの大半ないし全てが常温で液状である粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルからなり且つビタミンが含有されたゲル層と、このゲル層の片面に積層された非粘着性のポリマー層とを備えた化粧用貼付材であって、非粘着性のポリマー層が、セグメント化ポリウレタンゲルを膨潤させるビタミンの溶媒によって膨潤するポリマーからなる層であることを特徴とする。
【0009】
本発明の化粧用貼付材においては、ゲル層の周縁部の厚みを中央部よりも厚くすることが望ましく、また、ゲル層の片面側に伸縮性を有する織物又は編物からなる補強材層を埋設することも望ましい。本発明の化粧用貼付材の代表例は、ゲル層にビタミンCが実質的に乾燥状態で含有され、ゲル層の片面に形成された非粘着性のポリマー層が、水を吸収して膨潤、伸長する親水性ポリマーからなる層である化粧用貼付材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧用貼付材を使用直前にビタミンの溶媒に浸漬すると、この溶媒がセグメント化ポリウレタンゲルよりなるゲル層の露出面(ポリマー層が積層されていない粘着面や側面)から吸収されてゲル層が膨潤しながら伸長すると共に、ゲル層中のビタミンが溶媒に溶解する。そして、ゲル層の片面のポリマー層もビタミンの溶媒を吸収して膨潤しながら伸長し、この膨潤したポリマー層を通して溶媒がゲル層の片面側からも吸収される。このようにゲル層も片面のポリマー層もビタミンの溶媒を吸収して膨潤、伸長すると、化粧用貼付材に反りが発生し難くなるため化粧用貼付材を顔面等に密着させて貼付することができる。本発明の化粧用貼付材を上記のように顔面等に密着させて貼付すると、溶媒に溶解したビタミンは溶媒と共にゲル層から皮膚に移行して吸収され、ビタミンの効能が発揮される。その場合、ゲル層の片面(貼着面と反対面)が露出していれば、貼付中にゲル層の片面側が乾燥、収縮して反りを生じることになるが、本発明の化粧用貼付材のようにゲル層の片面にポリマー層が積層されていると、ゲル層の片面側の乾燥、収縮が抑制されて反りが発生し難くなるため、顔面等から化粧用貼付材が脱落する心配もほぼ解消される。また、非粘着性のポリマー層がゲル層の片面に積層されていると、ゲル層の片面が粘つかないので取扱い性も向上する。
【0011】
そして、ゲル層の周縁部の厚みを中央部よりも厚くした化粧用貼付材は、顔面等に貼付している間、ゲル層周縁部の乾燥、収縮が抑制されてゲル層周縁部も反り返り難くなるため、より密着した状態で安定して顔面等に貼付けておくことができる。
【0012】
更に、ゲル層の片面側に伸縮性を有する織物又は編物からなる補強材層を埋設した化粧用貼付材は、この補強材層の補強作用及び保形作用によってゲル層の破断や形崩れを防止することができ、しかも、ゲル層が溶媒を吸収して膨潤、伸長するときには、この伸縮性を有する補強材層もゲル層と共に伸長するので、反りが発生することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る化粧用貼付材の平面図、図2は図1のA−A線断面図である。
【0015】
この実施形態の化粧用貼付材10は、顔面の目の下側から目尻にいたる部分に貼付ける目元パック用とするために、図1に示すような「鳥の翼」に似た平面形状に作製されたものであって、図2に示すように、ビタミンを含有した粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルからなるゲル層1の片面(上面)に非粘着性のポリマー層2を積層すると共に、ゲル層1の片面側の表層部に伸縮性の補強材層3を埋設した構造とされている。化粧用貼付材10の平面形状は、貼付部位に応じて種々変更できることは言うまでもない。
【0016】
ゲル層1を構成するセグメント化ポリウレタンゲルは、親水性のアルキレンオキサイドのセグメントと疎水性のアルキレンオキサイドのセグメントを有し、セグメントの大半ないし全てが常温で液状である粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルであって、具体的には、親水性のエチレンオキサイド(EO)のセグメントと疎水性のプロピレンオキサイド(PO)のセグメントを有するか、又は、親水性のエチレンオキサイド(EO)と疎水性のプロピレンオキサイド(PO)との共重合体よりなるセグメントを有するものが好ましく使用される。
このポリウレタンゲルは、例えば下記の構造式A〜Dで示されるポリオール成分と、下記の構造式E〜Iで示されるポリイソシアネート成分をそれぞれ単独又は混合して使用し、双方の成分の−OH基と−NCO基をウレタン結合させることによって得られる、いわゆる三次元貫入型(Interpenetrated Network)のセグメントポリウレタンゲルである。
【0017】
【化1】

式中、R,Rはアルキル化合物、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
【0018】
【化2】

式中、AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、lは1または4の整数である。
【0019】
【化3】

式中、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
【0020】
【化4】

式中、AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、Rは水素原子もしくはアルキル化合物、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかである。
【0021】
【化5】

式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
【0022】
【化6】

式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
【0023】
【化7】

式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、lは1または4の整数である。
【0024】
【化8】

式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
【0025】
【化9】

式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
【0026】
構造式Aはポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応物であるポリウレタンポリオールプレポリマーであって、両末端成分がポリエーテルポリオールからなり、末端は−OH基である。ここで使用されるジイソシアネート化合物は、後に記載するポリウレタンポリイソシアネートのプレポリマーの中のそれと同じものであり、例えばフェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添加TDI、水素化MDI、ジシクロヘキシルジメチルメタン−p,p′−ジイソシアネート、ジエチルフマレートジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが任意に使用できる。
【0027】
構造式Bはグリセロール(l=1)またはソルビトール(l=4)にポリエーテルポリオールを付加したものであり、また、構造式Cはトリメチロールプロパンにポリエーテルを付加したものである。同様に下記の構造式Jの1,2,6−ヘキサントリオール、構造式Kのトリメチロールエタン、構造式Lのペンタエリスリットや構造式Mのポリグリセリン(n=2〜30の整数)やその部分エステルなどの多価アルコールとポリエーテルポリオールの付加物も使用できる。
【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
構造式Dはアルキレンオキサイドのセグメントを有するポリエーテルポリオールであり、両末端が−OH基の場合と、片末端がアルキル基、芳香族基などで封鎖されている場合があり、市販品として容易に入手できる。
【0033】
次に、構造式E〜Iに掲げたポリイソシアネートプレポリマーについて説明すると、構造式Eはトリメチロールプロパンにジイソシアネートを反応して得られるトリイソシアネートの2分子をAOの1分子で2量化したもので、4官能であるテトライソシアネートである。そして、トリメチロールプロパンの代わりにグリセロールを用いたものが構造式Fである。この種のテトライソシアネートは、AOの2分子または3分子でトリイソシアネートが2量化され易いので反応を微妙に調節する必要がある。そのため未反応のトリイソシアネートが混在するが、ポリオールと反応した場合にセグメントポリウレタン分子の大きさのバラツキが生じ粘着性をコントロールするのに都合の良い方に作用することもある。
【0034】
構造式Gは構造式Bのポリオールにジイソシアネートを反応させたものである。また、構造式Hは同様に構造式Cのポリオールにジイソシアネートを反応させたものであり、3官能である。構造式Iはポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応物で2官能である。
【0035】
上記の構造式A〜I中の(AO)で表記されるアルキレンオキサイドのセグメントは、具体的には親水性のエチレンオキサイド(EO)のセグメント、疎水性のプロピレンオキサイド(PO)のセグメント、EO−PO共重合体のセグメント、のいずれかである。EO−PO共重合体のセグメントは、例えば下記の構造式Nで表されるブロック共重合体や、−(PO−EO−EO−PO)−,−(PO−PO−EO)−,−(EO−EO−PO)−,−(EO−PO−EO−PO)−等の交互共重合体(mは1以上の正数である)や、EOとPOのランダムな共重合体などのいずれであってもよい。
【0036】
【化14】

【0037】
これらのEOセグメント、POセグメント、EO−PO共重合体セグメントのいずれかよりなるAOセグメントは、常温で優れた粘着特性を有し且つビタミンとの良好な親和性をもつセグメント化ポリウレタンゲルを得るためには、その大半ないし全てが常温で液状であることが必要であり、そのためには分子量が規制される。EOセグメントのMWは150〜1000が適当であり、好ましくは300〜800である。POセグメントは分子量が数万でも液体であり、使用できる分子量の範囲は広い。しかし、末端基の比率が小さいほど反応確率が低くなり、また、あまりに長いセグメントの場合は、ポリウレタンゲルが流動性に富み、保形性に乏しくなるので、大略200〜数千の範囲が好ましい。
【0038】
一方、EO−PO共重合体セグメントは、EOとPOの比率や配列によりその流動性(柔らかさ)、粘着性、およびビタミンとの親和性が左右される。すなわち、ブロック共重合体においてPOのモル分率が高い場合には分子量が高くても液状であるが、POのモル分率が低い場合でも、EOの分子量が低ければ液状となる。しかし、既述したようにPOセグメントの分子量が高ければ保形性などの問題が生じるため、60〜8000、好ましくは800〜6000の分子量を有する常温で液状のEO−PO共重合体が使用される。
【0039】
次に、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の官能数と反応比について説明する。良好な粘着性と充分なビタミンとの親和性を発現するセグメント化ポリウレタンゲルは、三次元網目鎖構造の比較的嵩高い分子構造を有し、かつ、自由に運動可能なセグメント長や、直鎖(linear)の自由な末端分子を多く有していることが重要である。良好なビタミンとの親和性とは、液状のEOセグメント又はPOセグメントに幾分なりとも溶解するか、溶解しなくとも、分子間力(水素結合やファンデルワールス力)で結合することにより、ビタミンの放出を適度にコントロールする性質を指すものである。従って、ポリオールとポリイソシアネートは各々が単一化合物であれば一方が2官能で、他方が3官能以上の組合わせとするか、互いに3官能以上の組合わせとするのが良い。但し、官能数が3以上のもの同士を反応させる場合は、網目鎖濃度が高すぎるので、よほど長いセグメントが存在しないと、弾性が粘性を上回って好ましい粘着性は得られ難く、ビタミンとの親和性や保有性(放出性)をコントロールし難い。それゆえ、双方の成分の好ましい官能数は大略2〜4の組合わせであり、この組合わせであれば、粘着性やビタミンとの親和性を微調整することができる。
【0040】
ポリオールとポリイソシアネートの各々のプレポリマーの反応比は、末端の官能基の比率、即ちOH/NCOの価によって規制できる。未反応の−NCOが残ると後反応が生じるので、OH/NCOは1以上でなければならないが、1≦OH/NCO≦5で良好な粘着性を有するポリウレタンゲルが得られる。OH/NCOが1以上5以下の状態では嵩高い分子の集まりにおいて末端にOH基を有する直鎖セグメントが尾(tail)を出して自由に運動している状態であると想像でき、5に近いほどフリーの尾が長くて多い状態である。そして、このものは粘着性を発現するに適した大きさとなって集合している。
【0041】
セグメント化ポリウレタンゲルを構成するポリオールとポリイソシアネートの分子量の範囲は、AOやイソシアネートの種類、分子形状およびAOがホモポリマーであるかコポリマーであるか等によって広い範囲で変わるが、ポリウレタンポリオールプレポリマーでは大略1400〜10000、ポリオールでは大略150〜6000、ポリウレタンポリイソシアネートプレポリマーでは大略500〜10000である。好ましくは各々大略2000〜8500、大略300〜3000、大略1000〜6000の範囲で選択できる。
【0042】
化粧用貼付材10のゲル層1を構成するセグメント化ポリウレタンゲルは、上記のポリオール成分とポリイソシアネート成分を上記の反応比で反応させたものであって、前述の分子量の規制された親水性のEOセグメントと疎水性のPOセグメントを有するか、或いは、EO−PO共重合体セグメントのみを有するか、或いは、EOセグメント又はPOセグメントのいずれかとEO−PO共重合体セグメントを有しており、含有させるビタミンがビタミンCなどの水溶性ビタミンであれば、常温で液状の親水性のEOセグメント、又は、共重合体セグメントのEO部分に良好に親和して保有され、含有させるビタミンがビタミンEなどの脂溶性ビタミンであれば、常温で液状の疎水性のPOセグメント、又は、共重合体セグメントのPO部分に良好に親和して保有される。従って、親水性のEOセグメントと疎水性のPOセグメントとのモル比率を変えたり、共重合体セグメントのEOとPOのモル比率を変えることによって、水溶性ビタミンの含有量や脂溶性ビタミンの含有量を増減できる。
【0043】
親水性のEOセグメントと疎水性のPOセグメントを有するポリウレタンゲルでは、含有させるビタミンが水溶性ビタミンである場合、EOセグメントとPOセグメントのモル比率を50〜90:50〜10にすることが望ましい。EOセグメントのモル比率が上記範囲よりも低くなると、ポリウレタンゲルの疎水性が強くなり、貼付時に溶媒(水)に溶解したビタミンCなどの水溶性ビタミンが皮膚側に移行、溶出する効率が低くなる。また、EOセグメントのモル比率が上記範囲よりも高くなると、ポリウレタンゲルの総合的な粘着力が低下したり、水との親和性が高くなりすぎて全放出率がかえって低下する。
【0044】
一方、脂溶性ビタミンを含有させる場合は、EOセグメントとPOセグメントのモル比率を50〜10:50〜90とすることが望ましい。POセグメントのモル比率が上記範囲よりも低くなると、ポリウレタンゲルの親水性が強くなって脂溶性ビタミンとの親和性が低下し、POセグメントのモル比率が上記範囲より高くなると、親和性が過剰となって放出率が低下するという不都合が生ずる。
【0045】
また、EO−PO共重合体セグメントのみを有するポリウレタンゲルでは、EO−PO共重合体セグメントのEOとPOを上記と同様のモル比率に設定することで、水溶性ビタミン又は脂溶性ビタミンとの良好な親和性、皮膚への良好な放出率を付与することができる。また、EOセグメント又はPOセグメントのいずれかとEO−PO共重合体セグメントを有するポリウレタンゲルも、EOとPOとの全体的なモル比率を上記と同様に設定することで、水溶性ビタミン又は脂溶性ビタミンとの良好な親和性、皮膚への良好な放出率を付与することができる。
【0046】
上記のように、この化粧用貼付材10のセグメント化ポリウレタンゲルよりなるゲル層1には水溶性ビタミンも脂溶性ビタミンも含有させることが可能であり、水溶性ビタミンとしてはビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ビリドキシン)、ビタミンB12(コパラミン)、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなどの従来公知のものやその誘導体などが、また、脂溶性ビタミンとしてはビタミンA(レチノール)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK(フィロキノンメナキノン)などの従来公知のものやその誘導体などが全て使用できる。
【0047】
ゲル層1におけるビタミンの含有量は特に限定されないが、2〜20質量%の範囲とするのが適当であり、好ましくは3〜10質量%の範囲である。ビタミン含有量が2質量%よりも少なくなると、ビタミンによる美白作用、色素沈着抑制、皮膚の老化抑制、肌荒れ防止、その他の効能を充分に発揮し難くなり、また、20質量%よりも多く含有させても、それに見合った効果がなく、却って皮膚を刺激して傷めるなどの不都合が生ずる。なお、ビタミンC等の酸を上記のように多量に含有させても、水を介在してビタミンCが加水分解により多量の酸性物質を生じるような状況にならなければ、ポリウレタンゲルが劣化する心配はない。
【0048】
常温で結晶の水溶性ビタミンは、保湿剤と共に適量の溶媒(水)に溶解してポリウレタンゲルに含有させればよく、常温で結晶の脂溶性ビタミンは油性添加剤を加えて脂肪油等に溶解して含有させればよい。また、常温で液状のビタミンはそのまま含有させてもよいし、希釈して含有させてもよい。保湿剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、植物性コラーゲン、セルロースとその誘導体などが使用され、油性添加剤としてはグリセリンと脂肪酸のエステル類(例えばイソステアリルグリセリン等)、ヒドロキシエチルイソステアリロキシジイソプロパノールアミンなどが使用される。
【0049】
上記のビタミンは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を反応させてセグメント化ポリウレタンゲルを形成する際に含有させてもよいが、セグメント化ポリウレタンゲルを形成してから含有させる方が簡便で好ましい。このセグメント化ポリウレタンゲルは、ほとんど水を含まないため、セグメント化ポリウレタンゲルを形成してからビタミンの溶液を添加しても、驚くほどすみやかに吸収して含有する。
【0050】
特に、酸化や加水分解が極めて容易に進行して分解劣化をおこす水溶性のビタミンCの場合は、ビタミンCを良溶媒の水に溶かして水溶液を作製し、セグメント化ポリウレタンゲルに浸漬させて含有させた後、乾燥により水分を除去することによって、溶媒としての水を実質的に含まない乾燥状態でセグメント化ポリウレタンゲルのゲル層1中にビタミンCを保持させ、ビタミンCの分解劣化による変質、変色を抑えた安定な化粧用貼付材10とすることが大切である。ゲル層1には水を全く含まないことが理想的であるが、乾燥等によって完全に無水状態にすることは極めて困難である。しかし、実質的に含水率がゼロの乾燥状態であれば、つまり、水が1質量%以下と極く微量含まれているに過ぎない状態であれば、ビタミンCの分解、劣化は生じないので安定良く含有保持させることができる。好ましい含水率は0.5質量%以下、更に好ましい含水率は0.3質量%以下である。このような化粧用貼付材10は、顔面等の皮膚に貼付する際にビタミンCの良溶媒である水をゲル層1に添加、吸収させてゲル層中のビタミンCを溶解させることにより、良好な放出率でビタミンCを皮膚へ移行、浸透させることができる。
【0051】
なお、このセグメント化ポリウレタンゲルのゲル層1には、上記のビタミン以外の美肌成分を含有させてもよい。
【0052】
ゲル層1の厚みは特に制限されないが、好ましい厚み(ゲル層1の中央部の厚み)は0.5〜2mm程度である。0.5mmより薄くなると、ビタミンの含有量が少なくなるので美顔効果が不十分になる恐れがあり、一方、2mmより厚くしてもそれに見合った効果が得られず、材料の無駄使いとなる。
【0053】
この化粧用貼付材10のゲル層1は、図2に示すように、周縁部1aの厚みを中央部の厚みよりも厚くすることが好ましい。このようにゲル層1の周縁部1aが厚くなっていると、化粧用貼付材10を顔面等に貼付している間、溶媒の吸収によって膨潤したゲル層1の周縁部1aが乾燥、収縮して反り返るのを抑制できるため、周縁部1aまで密着した状態で安定して顔面等に貼付けておくことができる。
【0054】
この化粧用貼付材10の非粘着性のポリマー層2は、ゲル層1の片面の粘つきをなくして取扱い性を向上させると共に、化粧用貼付材10の反りを防止する目的で、ゲル層1の片面(上面)に積層されたものであって、ゲル層1のセグメント化ポリウレタンゲルを膨潤させるビタミンの溶媒を吸収して膨潤するポリマーからなる薄層である。
【0055】
従って、ゲル層1に含まれるビタミンがビタミンCなどの水溶性ビタミンである場合には、その良溶媒である水を吸収して膨潤、伸長する親水性のポリマー層2が積層される。そのようなポリマー層2としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(CMC−Na)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CVC)、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリ2−エチル−2−オキサゾリン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、プルラン、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA−Na)、ポリエチレンオキサイド(PEO)のいずれか単独又は2種以上の混合ポリマーからなる層が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、セグメント化ポリウレタンゲルと大差のない膨潤性を有し、透水性も適度であるため、特に好ましく使用される。
【0056】
このポリマー層2には、柔軟性を高める目的で、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マルニトール、キシリトールなどの可塑剤を適量含有させてもよい。
【0057】
一方、ゲル層1にビタミンEなどの脂溶性ビタミンを含有させる場合は、その溶媒として脂肪油等の油性液体や界面活性剤を含む水溶液を使用することができ、これらの溶媒により、ゲルと同様に膨潤するポリマーからなるポリマー層2を積層すればよい。
【0058】
ポリマー層2の厚みが100μmを超えて厚くなり過ぎると、化粧用貼付材10の柔軟性が損なわれるのみならず、使用の際に化粧用貼付材10をビタミンの溶媒に浸漬してゲル層1中のビタミンを溶解させるとき、ポリマー層2の膨潤、伸長がゲル層1に比べて不十分となり、かつ、ポリマー層2を通して溶媒がゲル層1へ吸収されにくくなるので、化粧用貼付剤10の反りを十分に抑制することが難しくなる。従って、ポリマー層2の厚みは、厚くても100μm迄であり、好ましくは50μm以下、更に好ましくは30〜10μmである。
【0059】
この化粧用貼付材10の補強材層3は、伸縮性を有する織物又は編物からなるもので、ゲル層1を補強してゲル層1の破断や形崩れを防止し丈夫な化粧用貼付材10を得るために、ゲル層1の片面側(ポリマー層2が積層された片面側)の表層部に埋設したものである。伸縮性を有する織物又は編物としては、例えば、ジャージ、トリコット、スパンデックス布等が好ましく使用される。このように補強材層3が伸縮性を有する織物又は編物であると、ゲル層1やポリマー層2がビタミンの溶媒を吸収して膨潤、伸長するときに、補強材層3もゲル層1やポリマー層2と一緒に伸長すると共に、溶媒を透過させるため、化粧用貼付材10に反りを生じることがない。
【0060】
以上のような構成の化粧用貼付材10の代表例は、水溶性のビタミンCを実質的に乾燥状態で含有させたセグメント化ポリウレタンゲルからなる厚みが0.5〜2mmのゲル層1の片面に、ビタミンCの良溶媒である水を吸収して膨潤するヒドロキシプロピルセルロース(HPC)からなる厚みが10〜30μmの非粘着性のポリマー層2を積層すると共に、ゲル層1の片面側の表層部に伸縮性を有する織物又は編物からなる補強材層3を埋設したものである。かかる化粧用貼付材10は、ビタミンCが乾燥状態でセグメント化ポリウレタンゲルに含有されているため、ビタミンCの分解劣化による変質や変色がなく、ゲル層1の片面がHPCからなる非粘着性のポリマー層2で覆われてべたつかないため、取扱い性が良好であり、補強材層3がゲル層1に埋設されているため、ゲル層1の破断や形崩れが生じることもない。そして、この化粧用貼付材10を貼付する前にビタミンCの良溶媒である水に浸漬すると、水がゲル層1の露出面のみならずポリマー層2を通って反対面(片面)からもゲル層1にほぼ均一に吸収され、ゲル層1とポリマー層2の双方が吸水により膨潤、伸長すると共に、これに伴って伸縮性の補強材層3も伸長し、吸収された水にビタミンCが溶解する。従って、化粧用貼付材10に反りが発生し難いので、顔面等の皮膚に化粧用貼付材10を密着させて貼付できるようになり、溶解したビタミンCは水と共にゲル層1から皮膚へ移行、吸収されてビタミンCの効能を発揮する。しかも、化粧用貼付材10を貼付している間は、ポリマー層2によりゲル層1の片面からの水の蒸発が抑制されてゲル層1の片面側が乾燥、収縮しにくいため、貼付している間に化粧用貼付材10が反って皮膚から脱落することもほとんどない。特に、ゲル層1の周縁部1aの厚みが中央部よりも厚くなっていると、化粧用貼付材10を貼付している間、ゲル層周縁部1aの乾燥、収縮が抑制されてゲル層周縁部1aも反り返り難くなるため、より密着した状態で安定して顔面等に貼付しておくことができる。
【0061】
次に、図3を参照して、上記代表例のビタミンCを含有した化粧用貼付材10の製造方法の一例を説明する。
【0062】
まず、図3(a)に示すように、離型フィルム4(例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等)の上に型枠5(例えばシリコンゴム製の型枠)を載置し、この型枠5内に例えばHPC溶液(HPCを水/エタノール混合溶媒に溶解したもの)を流入、乾燥させて、図3(b)に示すようにHPCからなるポリマー層2(10〜30μm程度の厚みを有するもの)を形成する。このときHPC溶液は希薄な溶液であって大量なため、型枠内を満たす程度に流し込まれるので、型枠の側壁にもHPC膜が形成される。そして、図3(c)に示すように、型枠5とほぼ同形状の補強材層3(例えばHPC溶液で糊付けしたトリコットを型枠とほぼ同形状に打ち抜いたもの)を型枠5内のポリマー層2の上にセットし、前述のポリオール成分とイソシアネート成分の混合液を型枠5内に流し込んで加温下にウレタン結合反応させることにより、図3(d)に示すようにセグメント化ポリウレタンゲルからなるゲル層1を形成する。このようにポリオール成分とイソシアネート成分の混合液を型枠5内に流し込んで反応させると、表面張力によって周縁部の厚みが中央部より厚いゲル層1を容易に形成することができる。また、ゲル層1の側面が非粘着性ポリマー層で覆われるため、より取扱い性に優れた化粧用貼付材が得られる。
【0063】
次いで、図3(e)に示すように、ゲル層1の上に合成樹脂製のネット6を載置し、上方からビタミンCの水溶液7を滴下してゲル層1全体に吸収させる。そして、これを図3(f)に示すように乾燥器8(例えば真空乾燥器)に入れ、ゲル層1の含水率が1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下となるまで乾燥して、ビタミンCを乾燥状態でゲル層1中に含有させた化粧用貼付材10を作製し、図3(g)に示すように、型枠を外して化粧用貼付材10を得る。この化粧用貼付材10は、最終的には、図3(h)に示すようにネット6を下側にして合成樹脂製のトレー9aに収容され、貯水部9bを備えた合成樹脂製のトレー蓋9cが被着されて製品となる。このようにパッケージ化された製品は、使用直前にトレー蓋9cの貯水部9bを指で押さえると、V形突起9dが貯水部9bの底面を突き破って貯水部9bから水がトレー9aに流れ込み、化粧用貼付材10のゲル層1に吸水されてビタミンCが溶解されるが、このとき既述したように化粧用貼付材10に反りが発生し難いので、顔面等に密着させて貼付することができる。
【0064】
上記の製法例で使用するネット6は省略しても勿論良いが、このネット6をゲル層1に重ねると、図3(e)のようにビタミンC水溶液を滴下した際に、ビタミンC水溶液がネット6に沿ってゲル層1の上面全体に拡がりながら均等に吸収される利点があり、また、図3(h)のようにパッケージ化した製品の貯水部9bの底面をV形突起9dで突き破って吸水させるときには、水がネット6に沿ってゲル層1の下面側に回り込み、ゲル層1に速やかに吸収される利点があるので好ましい。上記の製法例ではゲル層1を乾燥させた後に型枠5を外しているが、この型枠5は、図3(d)のようにゲル層1を形成した後に外してもよい。ビタミンCは上記の製法例では水に溶解してゲル層1に吸収させているが、水とアルコール(例えばエタノールなど)との混合溶媒に溶解して吸収させてもよく、更に、吸収性を向上させるためビタミンCの溶液を滴下する前にゲル層1の表面をコロナ処理してもよい。また、上記の製法例では、HPC溶液を用いてキャスティング法によりポリマー層を形成しているが、ポリマー層として使用し得る親水性のポリマーフィルムが市販されている場合には、該フィルムを型枠と略同形状に打ち抜いたものや、該フィルムに伸縮性の補強材層を重ねて打ち抜いたものを型枠内にセットしてもよい。また、個別の型枠5内で積層体を作製するのではなく、長尺のベルトコンベア上に高粘度の溶液を滴下して長尺の積層体を作製した後に、所定の形状に打ち抜いて、化粧用貼付材を得ることもできる。この場合、生産性が優れるという利点がある。
【0065】
次に、更に具体的な実施例と比較例を説明する。
【0066】
[実施例1]
離型フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その上にシリコンゴム製の型枠を載置して、この型枠内にHPCの水/エタノール溶液(重量比でHPC:水:エタノール=1:49.5:49.5)を1.5cc/10cmの割合で流し込み、40℃で乾燥させて、HPCからなる厚みが略15μmのポリマー層を形成した。そして、HPCの水/エタノール溶液(重量比でHPC:水:エタノール=0.5:24.9:74.6)で糊付けしたトリコットを型枠とほぼ同形状に打ち抜いたものを、補強材層として型枠内のポリマー層の上にセットした。
【0067】
次いで、下記の表1に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイドのセグメントを有するポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び触媒を表1に示す割合で混合して混合液を調製し、この混合液を型枠内のトリコットの補強材層の上に流し込んで60℃で一昼夜反応させることにより、片面(下面)にHPCのポリマー層が積層され且つ片面側表層部にトリコットの補強材層が埋設された粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルからなるゲル層(厚み:1mm、体積1cm)を形成した。
【0068】
このゲル層の上にナイロンネット(モノフィラメントの直径:0.2mm、網目の大きさ:50メッシュ)を重ね、その上からビタミンCの水/エタノール溶液(重量比でビタミンC:水:エタノール=1:3:3)を滴下してゲル層に吸収させた後、型枠を除去し、真空乾燥器内で減圧乾燥してゲル層中の水とエタノールを除去することにより、ゲル層にビタミンCを5質量%含有する化粧用貼付材を得た。
【0069】
【表1】

【0070】
得られた化粧用貼付材を水中に浸漬し、15秒、30秒、60秒、120秒、180秒、300秒をそれぞれ経過した段階での化粧用貼付材の反りの有無を肉眼で調べたところ、反りの発生はどの段階でも見られなかった。但し、180秒以上経過した段階では、周縁部でゲルがより膨潤し、多少の外観の悪化が見られた。また、この化粧用貼付材を水中に30秒間浸漬して十分に吸水させたのち、10人の女性の顔面に1時間貼付け、回収した化粧用貼付材のビタミンC含量との差からビタミンCの放出率を求めて、化粧用貼付材のビタミンC放出特性を調べた。ポリウレタンゲル中のビタミンC含量の定量は、貼付材のポリウレタンゲルを細かく切断し、分析にかけてビタミンCが壊れにくい組成の溶液でポリウレタンゲルを膨潤させてビタミンCを抽出して行った。その結果、10人の顔面に1時間貼付けた後のビタミンCの放出率は、平均で21.6%であった。また、1時間貼付けている間に化粧用貼付材のゲル層の周縁部が少し反り返った人は2いたが、化粧用貼付材が顔面から脱落した人はなかった。
【0071】
[実施例2]
ポリマー層として使用する厚みが略15μmのPVAフィルムの上に実施例1のトリコットからなるを補強材層を重ねて型枠と略同形状に打ち抜いたものを型枠内にセットしたこと、並びに、下記の表2に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイドのセグメントを有するポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び触媒を表2に示す割合で混合した混合液を用いてセグメント化ポリウレタンゲルからなるゲル層(厚み:1mm、体積1cm)を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、ゲル層にビタミンCを5質量%含有する化粧用貼付材を得た。
【0072】
得られた化粧用貼付材について、実施例1と同様にして15秒、30秒、60秒、120秒、180秒、300秒をそれぞれ経過した段階での化粧用貼付材の反りの有無を肉眼で調べたところ、反りの発生はどの段階でも見られなかった。また、実施例1と同様にして10人の女性の顔面に化粧用貼付材を1時間貼付けたときのビタミンCの放出率を求めたところ、放出率は平均で11%であり、貼付けている間に化粧用貼付材の脱落は見られなかった。
【0073】
【表2】

【0074】
[実施例3]
実施例1と同様の型枠内において、HPCに比べ脂溶性に優れるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のうち、メトキシル基の置換度が比較的高いものを用い、厚み略15μmのポリマー層を形成した。そして、補強材層としてトリコットを型枠と略同形状に打ち抜いたものを、型枠内のポリマー層の上にセットした。その上から、表3に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイドのセグメントを有するポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び触媒を表3に示す割合で混合した混合液を流し込んで、セグメント化ポリウレタンゲルからなるゲル層(厚み:1mm、体積1cm)を形成した。
【0075】
このゲル層の上に実施例1のナイロンネットを重ね、その上から脂溶性ビタミンEをヘキサンに溶解し、ゲル層の上から滴下してゲル層に吸収させた後、型枠を除去し、真空乾燥器内で減圧乾燥してゲル層中のヘキサンを除去することにより、ゲル層にビタミンEを5質量%含有する化粧用貼付材を得た。
【0076】
得られた化粧用貼付材について、実施例1における水の代わりに、界面活性剤として少量のプロピレングリコールを含む水を用い、化粧用貼付材の反りの有無を調べた。15秒、30秒、120秒、180秒、300秒をそれぞれ経過した段階でも、反りの発生は見られなかった。また、実施例1と同様にしてビタミンEの放出率を調べたところ、放出率は平均で13%であた、貼付けている間に化粧用貼付材の脱落は見られなかった。
【0077】
【表3】

【0078】
[比較例]
離型フィルムとして使用したポリエチレンテレフタレートフィルムの上にシリコンゴム製の型枠を載置し、片面に補強材層としてポリエステル不織布(目付重量:37g/m)をラミネートした厚さ50μmのEVAフィルムを型枠と略同形状に打ち抜いて型枠内にセットした。そして、実施例1で調製したポリオール成分、ポリイソシアネート成分、触媒を含む混合液を型枠内に流し込んで反応させることにより、片面にEVAフィルムが積層され且つ片面側表層部にポリエステル不織布の補強材層が埋設された粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルからなるゲル層(厚み:1mm、体積1cm)を形成し、実施例1と同様にしてゲル層にビタミンCを5質量%含有させた化粧用貼付材を得た。
【0079】
得られた化粧用貼付材について、実施例1と同様にして15秒、30秒、60秒、120秒、180秒、300秒をそれぞれ経過した段階での化粧用貼付材の反りの有無を肉眼で調べたところ、15秒を経過した段階では、10個の化粧用貼付材のうち4個の化粧用貼付材に反りが発生し、60秒経過した段階では、全ての化粧用貼付材に反りが見られた。また、実施例1と同様にして10人の女性の顔面に化粧用貼付材を1時間貼付けたときのビタミンCの放出率を求めたところ、平均の放出率は実施例1とほぼ同様の20.9%であったが、1時間貼付けている間に大半の化粧用貼付材が大きく反り上がって顔面から脱落し、脱落しなかった化粧用貼付材は僅か1個であった。
【0080】
以上の実施例と比較例から、本発明の化粧用貼付材は、使用直前にビタミンの溶媒をゲル層に吸収させても反りが発生し難いため、顔面等の皮膚に密着させて貼付することができ、貼付している間も化粧用貼付材に反りが発生し難いため脱落を防止できるものであることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態に係る化粧用貼付材の平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明の化粧用貼付材の製造方法の一例を順を追って示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 ゲル層
1a ゲル層の周縁部
2 ポリマー層
3 補強材層
10 化粧用貼付材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントの大半ないし全てが常温で液状である粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルからなり且つビタミンが含有されたゲル層と、このゲル層の片面に積層された非粘着性のポリマー層とを備えた化粧用貼付材であって、非粘着性のポリマー層が、セグメント化ポリウレタンゲルを膨潤させるビタミンの溶媒によって膨潤するポリマーからなる層であることを特徴とする化粧用貼付材。
【請求項2】
ゲル層の周縁部の厚みが中央部よりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の化粧用貼付材。
【請求項3】
ゲル層の片面側に、伸縮性を有する織物又は編物からなる補強材層が埋設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧用貼付材。
【請求項4】
ゲル層にビタミンCが実質的に乾燥状態で含有され、ゲル層の片面に形成された非粘着性のポリマー層が、水を吸収して膨潤、伸長する親水性ポリマーからなる層であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化粧用貼付材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−263377(P2006−263377A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89928(P2005−89928)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】