説明

医学的障害の治療における抗ウイルス剤の使用

本発明は、サイトメガロウイルス(CMV)血清反応陽性の免疫正常者の免疫応答を改善するための、または他のある種の医学的状態の改善のための、薬剤の調製における、CMVに対して有効な化合物の使用を提供する。適切な化合物は、ヌクレオシド類似体のアシクロビル、ファムシクロビルおよびバラシクロビルを含む。サイトメガロウイルスによる感染は、広範囲に及び、免疫正常者において無症候性であり、かつ強力な細胞毒性薬の使用なしには無敵であると一般に考えられている。実際、CMV感染は、偏って大きな免疫応答をもたらし、これによって他の感染に対して応答する免疫系の能力を弱体化させる(したがって無症候性ではない)ことがここに示される。さらに、低い細胞毒性(したがって、同様に低い有効性)を有する薬剤の比較的低い用量による治療が、このCMV特異的免疫応答の大きさを減少させることができるので、全体の免疫応答を改善し、他の医学的状態の症状を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医学的障害の治療または免疫応答の改善に関する。より詳細には、本願は、種々の医学的障害の治療または免疫応答の改善のための、薬剤の調製における、抗ウイルス化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の障害の既存の医学的治療は通常、物理的および/または化学的手段を通してその障害の原因を取除くことを試みようとしている。たとえば、細菌感染によって引起された膿瘍の治療は、抗生物質の利用と併せて膿瘍の排出を伴うであろう。概して、医学的治療は、特定の医学的状態に限定されており、病原体の薬剤耐性などの要因によって弱体化し得る。したがって、治癒率を改善し、または薬剤耐性もしくは他の要求の変化を克服するための、以前は治療不可能であると考えられた状態に対する新たな治療を開発するのに、かなりの研究努力が充てられている。
【0003】
体の自然免疫系は、さもなければ医学的障害の原因となるであろう様々な病原体、異物などに対処することができる。免疫系によって利用される方法は通常、先天性応答(炎症、補体たんぱくの外来細胞への結合、および食細胞による細胞の攻撃を含み、新たなタイプの感染に迅速に反応することができる)と特定の抗原を標的にする適応応答(抗体およびT細胞を含む)とに分けられる。適応系は新たな感染に反応するのは比較的ゆっくりであるが、高い特異性を有し、免疫記憶を構築することもできるので、同じ病原体による後の再感染への迅速な応答を可能とする。
【0004】
ある種の医学的状態が、免疫応答の部分的不活化または完全不活化に関与していると認識されている。たとえば、免疫応答は時折、臓器移植の拒絶を防止するべく臓器移植患者の場合などにおいて、意図的に抑制されることもある。このような抑制は一般に、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤または他の免疫抑制剤の投与によって、達成される。AIDS(HIV感染によって引起される)、ある種の悪性疾患、薬物乱用および栄養障害などの多くの状態もまた、不所望の免疫不全を引起こす。双方の場合とも、免疫機能の欠損が重い病気の原因となり得るので、これを妨げるためにさらなる行動がとられなければならない。免疫応答が意図的に抑制されていると、潜在的な感染源が、抗生物質の予防的投与などによって直接的に標的にされなければならない。免疫不全が医学的処置の必要条件ではない状況において、たとえば重大な食事性欠乏症または進行性HIV感染において、カロリの増加または抗レトロウイルス治療などの作用物質の使用を通して免疫機能を増強させようと試みるのが妥当である。
【0005】
しかし、免疫機能はあまり低下していないが最適なレベルでは機能していない患者(または外見上の健常者)において、免疫応答活性を最適化することによって他の病気の症状を改善することも所望される。これらの状態は、従来の意味では免疫不全として考えられず、この障害のある患者は、実体のある免疫抑制が付随する典型的な日和見感染の影響を受けにくいだろう。ゆえに、これらの個体は一般に免疫正常者として考えられ、免疫機能を最適化する潜在的な利点はこれまでは充分に評価されてこなかった。本発明は、この問題に少なくとも部分的に対処するべく考えられた。したがって、本発明の目的のために、このような個体は、以降免疫正常者と呼ぶ。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、サイトメガロウイルス(CMV)血清反応陽性の免疫正常者の免疫応答を改善するための、薬剤の調製における、CMVに対して有効な化合物の使用を提供する。
【0007】
明細書では、語句「CMVに対して有効な」は、CMVに対する化合物のID50が1000μM未満であることを意味することを目的としている。
【0008】
明細書では、「免疫応答を改善する」は、サイトメガロウイルスに特異的なエフェクタおよび/もしくは記憶T細胞の数を減らし、ならびに/または未感作T細胞の数を増やすことを意味することを目的としている。1つの実施形態において、(CMV特異的エフェクタおよび/または記憶T細胞の)減少および(未感作T細胞の)増加の少なくとも1つは、少なくとも20%である。さらなる実施形態において、減少および増加の少なくとも1つは、少なくとも40%である。さらなる実施形態において、減少および増加の少なくとも1つは、少なくとも60%である。これらのCMV特異的エフェクタおよび記憶T細胞は、リンパ系の資源を過剰に取上げ、未感作T細胞の数を抑え、かつ血流およびリンパ系に可溶性因子を分泌することによって、免疫機能の軽減に寄与すると考えられる。
【0009】
明細書では、「血清反応陽性の」は、血液中のCMV特異的抗体の検知可能な存在を示す普通の意味を有し、過去の感染の歴史を示す。
【0010】
1つの実施形態において、CMV特異的記憶またはエフェクタT細胞の数は、表面上でCD28分子の発現を失くしたCD4+T細胞の数によって表わされる。これらのCD4+CD28−T細胞は、van Leeuwenら(J. Immunology,2004年)の出版物によれば、CMV特異的CD4+T細胞応答の特徴である。このため、末梢血におけるこれらの細胞の割合または数は、CMV特異的免疫応答を判定するのに役立つ方法を表す。この値が、個体を判定するのに使用されてもよく、CMV特異的免疫応答の大きさが、個体が治療によって特に恩恵を受けられそうであることを示す。加えて、この測定は、治療に対する応答を監視するのに、したがって応答の有効性および治療用量を修正することの潜在的な必要性を案内するのに使用されてもよい。
【0011】
1つの実施形態において、CMV特異的記憶またはエフェクタT細胞の数は、表面上でCD27分子の発現を失くしたCD4+T細胞の数によって表わされる。CD4+CD27−T細胞は、Pourgheysariら(J. Virology,2007年)の出版物によれば、CMV特異的CD4+T細胞応答の特徴である。このため、末梢血におけるこれらの細胞の割合または数は、CMV特異的免疫応答を判定するのに役立つ方法を表す。この値が、個体を判定するのに使用されてもよく、CMV特異的免疫応答の大きさが、個体が治療によって特に恩恵を受けられそうであることを示す。加えて、この測定は、治療に対する応答を監視するのに、したがって応答の有効性および治療用量を修正することの潜在的な必要性を案内するのに使用されてもよい。
【0012】
1つの実施形態において、CMV特異的記憶またはエフェクタT細胞の数は、表面上でCD57分子の発現を得たCD4+T細胞の数によって表わされる。これらのCD4+CD57+T細胞は、Pourgheysariら(J. Virology,2007年)の出版物によれば、CMV特異的CD4+T細胞応答の特徴である。このため、末梢血におけるこれらの細胞の割合または数は、CMV特異的免疫応答を判定するのに役立つ方法を表す。この値が、個体を判定するのに使用されてもよく、CMV特異的免疫応答の大きさが、個体が治療によって特に恩恵を受けられそうであることを示す。加えて、この測定は、治療に対する応答を監視するのに、したがって応答の有効性および治療用量を修正することの潜在的な必要性を案内するのに使用されてもよい。
【0013】
当然のことながら、CMV特異的記憶またはエフェクタT細胞の数は、CD4+T細胞の表面上のCD27、CD28またはCD57のあらゆる組合せの発現パターンによって、測定されてもよい。代わりに、または加えて、CMV特異的記憶またはエフェクタT細胞の数は、CD8+T細胞の表面上のCD27、CD28またはCD57のあらゆる組合せの発現パターンによって、測定されてもよい。CD27またはCD28の発現を失くした末梢血におけるCD8+細胞の割合または数は、CMV血清反応陽性である個体において、増加する。CD57分子を発現するCD8+T細胞の数は、CMV血清反応陽性者において、増加する。
【0014】
明細書では、ID50値は、Crumpackerら(「Growth inhibition by acyloguanosine of herpesviruses isolated from human infections」、Antimicrobial Agents and
Chemotherapy、1979年、第15巻第5号第642〜645頁)のアッセイにおいて定義されたように測定される。
【0015】
1つの実施形態において、薬剤は、本発明の第2の態様に記載される少なくとも1つの状態に苦しむ、CMV血清反応陽性の免疫正常者の免疫応答を改善するためのものである。
【0016】
1つの実施形態において、免疫応答を改善することは、CMV特異的免疫応答を低下させること、およびそれによって全体の免疫応答を改善することを含む。
【0017】
本発明の第2の態様に従えば、免疫正常者におけるCMVの治療のための、薬剤の調製における、CMVに対して有効な化合物の使用が提供される。
【0018】
本明細書において使用されているように、「CMVの治療」は、CMV感染の1またはそれ以上の影響の改善を意味することを目的としており、感染者からのCMVの完全な除去を要求すると取られるべきではない。1つの実施形態において、CMVの治療とは、サイトメガロウイルスに特異的なエフェクタおよび/または記憶T細胞の割合の減少によって表わされてよい。前述のように、CMV特異的記憶またはエフェクタT細胞の数は、CD28もしくはCD27の発現を失くした、またはCD57の発現を得た、またはこれらのなんらかの組合せによるCD4+またはCD8+T細胞の数によって、表わされてよい。
【0019】
本発明の第3の態様に従えば、HIV感染;鬱病、疲労または不安神経症を含む気分障害;統合失調症;慢性疲労症候群;リウマチ性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、サルコイドーシス、強直性脊椎炎、乾癬性関節症、ヴェグナー肉芽腫症および他の脈管炎などの炎症状態;多発性硬化症、シェーグレン症候群、糖尿病、原発性胆管硬化症および全身性硬化症などの自己免疫状態;悪性疾患;サルコイドーシスまたはアミロイドーシス;ウイルス性肝炎およびシャーガス病を含む、慢性の細菌、ウイルスまたは寄生虫感染症;マラリア;気管支拡張症または嚢胞性線維症などの慢性肺疾患;不安定狭心症などの急性冠症候群;動脈(たとえば大動脈)瘤;アテローム性動脈硬化;ならびに脳血管閉塞(「脳卒中」)から選ばれる状態の症状の改善のための、薬剤の調製における、CMVに対して有効な化合物の使用が提供される。
【0020】
本発明の第4の態様に従えば、免疫正常患者におけるCMV媒介障害の治療のための、薬剤の調製における、CMVに対するID50(Crumpackerらのアッセイにおいて定義される)が20μMを超えるヌクレオシド類似体の使用が提供される。
【0021】
1つの実施形態において、ヌクレオシド類似体は、CMVに対するID50が少なくとも50μMである。さらなる実施形態において、ヌクレオシド類似体は、CMVに対するID50が少なくとも100μMである。
【0022】
1つの実施形態において、ヌクレオシド類似体は、CMVに対するID50が少なくとも1000μM未満である。
【0023】
本発明の第5の態様に従えば、CMVに対する免疫応答を低下させるために、CMV血清反応陽性の免疫正常患者に、CMVに対して有効な化合物を投与することを含む医薬治療方法が提供される。
【0024】
以下の点は、本発明のすべての態様に適用可能である。
好ましい実施形態において、化合物またはヌクレオシド類似体は、アシクロビル、ファムシクロビルおよびバラシクロビルから選ばれる。
【0025】
サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルス科の一員である、ヒトヘルペスウイルスである。他のヒトヘルペスウイルスは、口唇および/または性器ヘルペス(単純ヘルペスウイルス)、水疱瘡および帯状疱疹(水痘帯状疱疹ウイルス)ならびにバーキットリンパ腫(エプスタインバーウイルス)などの疾患を引起す。
【0026】
CMV感染は、極めて広範囲に及び、免疫正常者において無症候性であると一般に考えられる。感染率(体内での検知可能な抗体の存在に基づく)は、地理的地域に従って変化する。アフリカでは、人口の大部分が5歳までに感染する。日本では、人口の大部分が20歳までに感染する。欧州および北米では、おおよそ70%の人々が60歳までに感染する。
【0027】
いかなる年齢でも生じ得る一次感染後、CMVは通常、免疫正常者に依然潜伏したままである。これは、概して溶解ウイルス複製を制限することができる、CMV特異的免疫応答の作用の結果であると考えられている。正確な詳細は現在不明であるけれども、ウイルスは、一次感染に追随する「潜伏」状態に入り得るが、再活性化の発症を経験すると考えられており、その間、免疫応答が、広範囲に及ぶウイルス伝播を制御するのに不可欠である。
【0028】
この再活性化が頻発し得るという事実は、強い免疫抑制治療を受ける患者がしばしば数週間以内に臨床にてCMVウイルスの再活性化を被るという事実によって、明らかにされる。CMV再活性化、およびCMV再活性化から生じる組織障害は、同種移植を受けたか、進行性HIV感染をしたような、重い免疫抑制患者においてよく認識される問題である。このような場合、CMVは、肺炎、大腸炎および網膜炎などの疾患を引起すことが知られている。
【0029】
CMV感染が潜伏状態である期間中、感染者は依然血清反応陽性のままであり、明細書に記載される薬剤および治療方法が依然適用可能である。
【0030】
本発明は、以前に考えられたように無症候性であるというよりはむしろ、免疫正常者におけるCMV感染が実際に、ある種の医学的状態の重症度に寄与するという発見から生じている。この医学的状態は広く2つの階級に分けることができる(ここではまとめてCMV媒介障害と呼ぶ):
1)CMV感染に続発する免疫機能の機能障害
CMVによる感染は、CMV特異的免疫応答の進行の結果として、自然免疫機能の修飾および機能障害をもたらし得る。この機能修飾および機能障害は、
−特に生理的または精神的ストレス時の、免疫機能の低下;
−たとえば記憶T細胞の蓄積、または未感作T細胞の加速損失によって示されるような、免疫老化の進行の増加;
−他の免疫原に対するワクチン応答の低下、
を含む種々の形態を取り得る。
【0031】
この機能修飾および機能障害は特に、免疫系が、
−高齢者;
−腎臓透析を受けている患者;
−マラリア感染のリスクのある患者;
−同種移植を受けた患者;
−冠動脈のステント挿入または外科的バイパス手術を受けた患者;
−特定できる危険因子のある患者における脳血管閉塞(「脳卒中」)の予防;
−宇宙飛行士などの、宇宙探査を経験している個体、
などの、すでに悪化しているか、悪化のリスクのある者に関連する。
【0032】
2)他の医学的障害の症状の重症度の増加
これらの症状は、
−疾患のあらゆる段階でのHIV感染;
−鬱病、疲労または不安神経症を含む気分障害;
−統合失調症;
−慢性疲労症候群;
−リウマチ性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、サルコイドーシス、強直性脊椎炎、乾癬性関節症、ヴェグナー肉芽腫症および他の脈管炎などの炎症状態;
−多発性硬化症、シェーグレン症候群、糖尿病(勃起障害などの合併症を含む)、原発性胆管硬化症および全身性硬化症などの自己免疫状態;
−悪性疾患;
−サルコイドーシスまたはアミロイドーシス;
−ウイルス性肝炎またはシャーガス病などの、慢性の細菌、ウイルスまたは寄生虫感染症;
−マラリア;
−気管支拡張症または嚢胞性線維症などの慢性肺疾患;
−不安定狭心症などの急性冠症候群;
−動脈(たとえば大動脈)瘤;
−アテローム性動脈硬化;
−脳血管閉塞(「脳卒中」);
−アルツハイマー病;
−大型顆粒リンパ球増加症;
−ギランバレー症候群;
−クローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;
−アルコール摂取に続発する臨床的障害、
を含む、多くの医学的状態において生じ得る。
【0033】
理論に制約されることを望むのではないが、前述の医学的障害はCMV感染患者において悪化すると考えられる。このことは、CMV感染によってもたらされる、偏って大きな免疫応答の免疫調節効果に由来する臨床的続発症の進行に関連していると考えられる。したがって、この免疫応答を、抗ウイルス剤の使用を通して低下させることによって、感染の根絶を必要とすることなく、医学的状態の治療を改善することが可能である。
【0034】
サイトメガロウイルス感染が、これらの疾患の臨床症状を悪化させ得るという証拠は、2つの所見に由来する。前述の状態は、CMV血清反応陽性の有病率の増加(コントロール群との比較)が付随するか、CMV特異的免疫応答の増加を表すと取られ得るCD28−T細胞のレベル上昇がしばしば付随する。したがって、CMVに対する免疫応答は、これらの状態にある患者において増幅し、本発明の態様によって少なくとも部分的に回復することができる穏やかな免疫抑制または免疫調節異常の状態を反映しそうである、および/またはこの状態に寄与しそうである。
【0035】
ある種の抗ウイルス剤が、ヘルペスウイルス感染の治療で知られている。特に、アシクロビル(9-(2-ヒドロキシエトキシメチル)グアニン−GB 1 523 865)などのヌクレオシド類似体が、ヒトヘルペスウイルスの治療で知られており、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV−2)および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)に対して最も有効である。アシクロビルは、インビトロでのCMV複製に対して最小の活性を有し、ID50(薬剤がウイルスのプラーク形成を50%以上減らす濃度)が、HSV−1、HSV−2およびVZVのそれぞれに対する0.15μM、1.62μMおよび3.75μMの値(Crumpackerらのアッセイによる)と比較して、100μM超である。バラシクロビルは、アシクロビルのL-バリンエステルであり、アシクロビルのプロドラッグとして機能するので、同じ作用機構を有する。両薬剤とも、一般的な投与量にて、むかつき、嘔吐、下痢および/または頭痛を含む多くの副作用をもたらす。
【0036】
ガンシクロビルおよびバルガンシクロビルは、それぞれアシクロビルおよびバラシクロビルの類似体であり、CMVに対する顕著に改善された活性のために開発された。これらの薬剤は、免疫抑制患者におけるCMV疾患の管理において広く用いられる。しかし、ガンシクロビルは、潜在的なヒトの発癌物質、催奇形物質および突然変異誘発物質であると考えられ、精子形成の阻害を引起こすらしいと考えられる。知られている副作用は、顆粒球減少、好中球減少、貧血、血小板減少、発熱、むかつき、嘔吐、消化不良、下痢、腹痛、鼓腸、食欲不振、肝酵素の上昇、頭痛、混乱、幻覚、発作、注射部位の痛みおよび静脈炎(高pHによる)、発汗、発疹、かゆみ、ならびに血清中クレアチニンおよび血中尿素濃度の増加を含む。
【0037】
ペンシクロビルは、より少ない副作用でヘルペスウイルス感染を治療することができるアシクロビルの類似体である。ペンシクロビルの抗ウイルス範囲は、アシクロビルと類似しており、したがってCMVに対して最小の活性を有する。ファムシクロビルは、ペンシクロビルのプロドラッグであり、生物学的利用率が改善されている。
【0038】
したがって、以下の信念に基づく、免疫正常患者におけるCMVの治療に対する当該技術の偏見が存在する:
−ほとんどの抗ウイルス剤は、CMVを効果的に治療することができない;
−CMVを治療することができる抗ウイルス剤は、受け入れ難いほど高い毒性および副作用レベルを有する;
−CMV感染は、ほぼ遍在しており、免疫正常患者において無症候性であると考えられている。
【0039】
しかし、発明者らは、CMV感染が完全に無症候性ではなく、驚いたことに、インビトロアッセイによって推定されたように、サイトメガロウイルスに対して低い活性を有する抗ウイルス剤によってCMV感染患者を治療することに実際利益があることを発見した。患者に与えると、これらの薬剤は、最も可能性の高い、CMV再活性化の無症状の発症を低下させ、したがってCMV特異的免疫応答の再発刺激を制限することができるそれらの能力によって、サイトメガロウイルスに対する免疫応答の実質的な低下を引起こす。
【0040】
患者への投与量は、通常処方医師によって判断され、概して個々の患者の年齢、体重および反応ならびに患者の症状の重症度に従って、変化する。しかし、ほとんどの例において、治療効果のある1日投与量は、一回の、または分割した服用での投与で、(たとえば、バラシクロビルまたはアシクロビルについて)200〜2000mgの、好ましくは400〜1000mgの範囲内にある。しかし、場合によっては、これらの限界範囲外の服用量を用いることが必要となろう。
【0041】
有効成分を未加工の化合薬品として単独で投与することも可能であるが、有効成分を製剤として提供することが好ましい。本発明の製剤は、製剤用の医薬的に容認可能なキャリアと関連させた有効成分と、随意であるが他の治療成分とを含む。キャリアは、他の製剤成分と相性が良く、受容者に有害ではないという意味で「容認可能」でなければならない。
【0042】
誤解を避けるために述べるならば、本発明の有効成分の活性は、製剤の他の成分によって影響を受けてよい。その有効成分は、製剤の他のあらゆる成分との「併用療法」を形成してもよい。たとえば、1つの可能性のあるそのような併用療法としては、本発明のいずれかの態様の製剤の1つにおける亜鉛の使用がある。代替の併用療法として、本発明の製剤の1つにシンバスタチンなどの「スタチン」薬剤を使用してもよく、または筋骨格疾患の管理における使用のための製剤にインフリキシマブなどの抗腫瘍壊死因子(TNF)薬剤を含めてもよい。
【0043】
都合の良いことには、製剤の単位用量は、200mg〜800mgの有効成分を含む。好ましくは、かかる製剤は、1日あたり、2〜4回など、1〜6回の投与に適している。以下に記載される自己推進型粉体分注製剤(self-propelling powder-dispensing
formulation)などの経鼻または口腔投与に適切な製剤は、たとえば約2%w/wといった、0.1〜20%w/wの有効成分を含んでよい。
【0044】
これらの製剤は、経口、眼、直腸、非経口(皮下、膣、腹腔内、筋肉内および静脈内を含む)、関節内、経鼻または口腔投与に適した形態のものを含む。
【0045】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル、カシェ、錠剤もしくはトローチ剤などの、それぞれが所定量の有効成分を含有する別個の単位の形態、粉末もしくは顆粒の形態、水性液体もしくは非水性液体における溶液もしくは懸濁液の形態、または水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤の形態、であってよい。有効成分はまた、ボーラス、舐剤またはペーストの形態であってもよい。そのような製剤の場合、賦形剤における有効成分の希釈範囲は、1%〜99%、好ましくは5%〜50%、より好ましくは10%〜25%の希釈が適切である。希釈レベルに応じて、かかる製剤は、室温(約20°Cの辺り)で液体、または低融点固体のいずれかとなる。
【0046】
直腸投与用の製剤は、有効成分、およびココアバターなどのキャリアを組込んでいる座薬の形態で、または浣腸剤の形態であってよい。
【0047】
非経口投与に適した製剤は、前述のように、溶液、懸濁液または乳液を、都合の良いことには、好ましくは受容者の血液と等張である有効成分の滅菌水性調製液を、含む。
【0048】
関節内投与に適した製剤は、有効成分の滅菌水性調製液の形態であってよく、これはたとえば、水性微晶質懸濁液の形態で、またはミセル分散液もしくは懸濁液として、微晶質形態であってもよい。リポソーム製剤または生分解性高分子系が、特に関節内投与および眼投与の双方のために、有効成分を提供するのに使用されてもよい。
【0049】
本発明に従うドロップは、滅菌水性溶液または油性溶液を含んでよい。ドロップに含めるのに適した防腐剤、殺細菌剤および殺菌剤は、フェニル水銀塩(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油性溶液の調製に適した溶媒は、グリセロール、希釈アルコールおよびプロピレングリコールを含む。
【0050】
鼻腔または口腔への投与に適した製剤は、吸入または吹送に適したものを含み、粉末、エアロゾルなどの自己推進型噴霧製剤およびアトマイザを含む。分散される場合、これらの製剤は好ましくは、10〜200μmの範囲の粒子径を有する。
【0051】
そのような製剤は、粉末吸入装置から肺内投与するための微粉砕粉末の形態であってもよく、または自己推進型粉体投薬製剤であってもよく、微粉砕粉末としての有効成分は、製剤の99.9%w/wまで含んでよい。
【0052】
自己推進型粉体投薬製剤は好ましくは、固体の有効成分の分散粒子、および大気圧下で18°C未満の沸点を有する液体推進剤を含む。概して、推進剤の組成は製剤の50〜99.9%w/wであり、有効成分は、たとえば製剤の約2%w/wなど、0.1〜20%w/wの組成となる。
【0053】
本発明の製剤は、有効成分が溶液中に存在する自己推進型製剤の形態であってもよい。そのような自己推進型製剤は、有効成分、推進剤および共溶媒を、有利には抗酸化安定剤を含んでよい。適切な共溶媒は、低級アルキルアルコールおよびその混合物である。共溶媒は、製剤の5〜40%w/wの割合であればよく、好ましくは製剤の20%w/w未満である。抗酸化安定剤が、有効成分の劣化を抑制するために、上述のような溶液製剤に組込まれてよく、好ましくは、アスコルビン酸アルカリ金属塩または重亜硫酸アルカリ金属塩である。抗酸化安定剤は好ましくは、製剤の0.25%w/wまでの量とする。
【0054】
本発明の製剤は、ネブライザまたはアトマイザにおける使用のための有効成分の、水性または希釈アルコール溶液の形態、随意的に滅菌溶液の形態であってもよく、溶液の小滴から成る細かい霧をもたらすのに加速気流が使用される。このような製剤は通常、サッカリンナトリウムおよび揮発性油などの香味剤を含む。メタ重亜硫酸ナトリウムおよび界面活性剤などの緩衝剤が、ヒドロキシ安息香酸メチルなどの防腐剤も含まなければならないような製剤に含まれてもよい。
【0055】
経鼻投与に適した他の製剤は、20〜500ミクロンの粒子径を有する粉末を含み、この粉末は、嗅ぐようにして、すなわち鼻のところまで接近させた粉末のコンテナから鼻道を通過する迅速な吸入によって、投与される。
【0056】
前述の成分に加えて、本発明の製剤は、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、たとえばヒドロキシ安息香酸メチルといった防腐剤(抗酸化剤を含む)、および乳化剤などの、1またはそれ以上の付加的成分を含んでよい。本発明の製剤における使用に特に好ましいキャリアまたは希釈剤は、たとえばオレイン酸エチルといった、オレイン酸などのC18〜C24の一価不飽和脂肪酸の低級アルキルエステルである。他の適切なキャリアまたは希釈剤は、たとえばMiglyol 810といった、商標名Miglyolで販売されるカプリル酸/カプリン酸トリグリセライドなどの、カプリン酸もしくはカプリル酸のエステルもしくはトリグリセリド、またはそれらの混合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明は、添付の図を参照して、例のみを用いて記載される。
【図1】末梢血におけるT細胞数に及ぼすCMV感染の影響を示す図である。
【図2】末梢血におけるCD8+T細胞数に及ぼすCMV感染の影響を示す図である。
【図3】末梢血における記憶およびエフェクタCD8+T細胞数に及ぼすCMV感染の影響を示す図である。
【図4】末梢血における未感作CD8+T細胞数に及ぼすCMV感染の影響を示す図である。
【図5】デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)および対応する硫酸塩(DHEAS)の血液比に及ぼすCMV感染の影響を示す図である。
【図6】CMV感染細胞の溶解物で8人の健常ドナー由来の末梢血を刺激することによって明らかとなったCMV特異的CD4+T細胞の表現型を示す図である。
【図7】CMV由来の免疫優性ペプチドを含むHLAペプチドテトラマで健常ドナー由来の末梢血を染色することによって生産されたCMV特異的CD8+T細胞の表現型を示す図である。
【図8】CMV血清反応陽性である健常ドナーと、血清反応陰性である健常ドナーとの間での、CD4+T細胞プロフィールの比較を示す図である。
【図9】アシクロビル(ACV)またはバラシクロビル(VCV)を与えた患者とコントロール群との間での、CMV特異的T細胞数の比較を示す図である。
【図10】CMVに対するCD4+T細胞応答に及ぼすアシクロビルまたはバラシクロビルによる治療の時間依存的効果を示す図である。
【図11】アシクロビルまたはバラシクロビルを与えた患者とコントロール群との間での、Elispot分析によって測定される抗原特異的T細胞数の比較を示す図である。
【図12】アシクロビルまたはバラシクロビルを与えた患者とコントロール群との間での、CD27−、CD28−、またはCD57+CD4+T細胞の割合の比較を示す図である。
【図13】アシクロビルまたはバラシクロビルを与えた患者とコントロール群との間での、CD27−CD4+T細胞の割合の比較を示す図である。
【図14】アシクロビルまたはバラシクロビルを与えた患者とコントロール群との間での、CD28−CD4+T細胞の割合の比較を示す図である。
【図15】アシクロビルまたはバラシクロビルを与えた患者とコントロール群との間での、CD57+CD4+T細胞の割合の比較を示す図である。
【図16】アシクロビルまたはバラシクロビルを与えた患者とコントロール群との間での、CD57+CD8+T細胞の割合の比較を示す図である。
【図17】アシクロビルによる治療を受けた1患者における、CMV溶解物による刺激によって測定した、CMV特異的CD4+T細胞の割合の測定値を示す図である。
【図18】アシクロビルによる治療を受けた1患者における、Elispot分析によって測定した、CMV特異的CD4+T細胞の割合の測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1を参照すると、CMVによる感染は、すべての齢において、T細胞数の増加を導くことがわかる。リンパ球サブセット内のT細胞のパーセンテージを決定するために、自動細胞(「Coulter」)カウンタおよび蛍光細胞(FACS)分析を用いて、末梢血サンプル内の絶対リンパ球数の決定によって、T細胞数を数えた。
【0059】
図2を参照すると、T細胞の増加は、細胞毒性活性に関与するCD8コレセプタを有するT細胞の増大に大いに反映されることがわかる。同様に、図3から、「抗原を経験した」記憶およびエフェクタCD8T細胞の、対応する大幅な増加があることがわかる。最後に、図4から、CMV感染は、末梢血における未感作T細胞数の減少にも関連することがわかる。
【0060】
さらに、CMV血清反応陽性者に対するこれらの細胞数の絶対値から、CMV特異的免疫応答は、他のウイルス感染に関連する応答と比較して異常に高いことがわかる。
【0061】
図5は、CMVについて血清反応陽性か陰性かを試験する個体の、測定したステロイドプロフィール(DHEA/DHEAS比の形態)を示す。CMV感染は、コントロール(CMV血清反応陰性)群と比較して、比のより大きな広がり、および平均比の増加の双方をもたらすことがわかる。DHEA/DHEAS比の増加は、炎症状態に特有であり、穏やかな免疫抑制が付随する。
【0062】
図6に関して、CMV特異的T細胞は、CMV抗原(溶解物)による刺激に応じたインターフェロンガンマの発現によって検出し、これらの細胞の表現型は、CD45RA、CD45RO、CD28、CD27またはCD57に対する抗体による染色によって評価した。CMV特異的CD4+T細胞は、CD27および/もしくはCD28の発現の損失、ならびに/またはCD57の発現の獲得によって、特徴付けられる。これらの観察は、図8および図12〜図15に示されるように、全CD4+T細胞プールでのCD27、CD28およびCD57発現へのCMV感染の影響に対する説明を与える。
【0063】
図7に関して、CMV特異的CD8+T細胞を、CMV由来の免疫優性ペプチドを含むHLAペプチドテトラマで末梢血T細胞を染色することによって、検出した。テトラマによる陽性染色をy軸に示し、これらの細胞の表現型はさらに、x軸に示す、CD27、CD28、CD57、CD45RAまたはCD45ROに対する抗体による染色によって特徴付けられる。ここでも、CMV特異的CD8+T細胞は主に、CD27−、CD28−およびCD57+表現型を示すことがわかる。これらの観察は、図16に示されるように、全CD8+T細胞プールでのCD27、CD28およびCD57発現へのCMV感染の影響に対する説明を与える。
【0064】
図8に関して、35人の健常ドナーの末梢血由来のCD4+T細胞を、CD27、CD28およびCD57に対する抗体で染色した。これらのマーカを発現するCD4+T細胞のパーセンテージは、CMV血清反応陽性者(n=24)およびCMV血清反応陰性者(n=11)で異なることがわかる。血清反応陽性者は、血清反応陰性者と比較して、CD4+集団におけるCD27−、CD28−およびCD57+細胞の割合がより大きい。CMV血清反応陽性者において実質的に排他的に、全CD4+T細胞集団のおおよそ2%以上のCD4+CD28−T細胞の増加がみられる。
【0065】
実施例1
CMV特異的免疫応答を、アシクロビルまたはバラシクロビルを摂取しているCMV血清反応陽性ドナーまたはCMV血清反応陰性ドナーのコホートにおいて測定した。これを、齢適合コントロールコホートと比較した。これらのドナーに与えられる用量は概して、1日に2回のアシクロビル400mg、または1日に1回もしくは1日に2回のバラシクロビル500mg、であった。(1)これらのドナーの全T細胞プロフィール、および(2)それらのCMV特異的応答、の総合的分析を実行した。結果を、CMV血清反応陽性ドナーまたはCMV血清反応陰性ドナーの齢適合コントロール群と比較した。結果を図9〜図16に示す。
【0066】
図9に関して、アシクロビル(1日に2回のACV400mg)またはバラシクロビル(1日に1回または1日に2回のVCV500mg)を摂取している、健常コントロールCMV血清反応陽性ドナー(n=14)またはCMV血清反応陽性患者(n=15)から血液を得、ブドウ球菌エンテロトキシンB(ポジティブコントロールとして)またはpp65およびIE−1由来CMV溶解物もしくはCMVペプチドプールとインキュベートした。インターフェロンガンマの発現によって、抗原特異的T細胞を検出した。CMV特異的T細胞の数は、ACVまたはVCVを摂取している患者において減少していることがわかる。
【0067】
図10に関して、アシクロビル(1日に2回のACV400mg)またはバラシクロビル(1日に1回または1日に2回のVCV500mg)を摂取している患者から血液を得、CMV溶解物とインキュベートした。インターフェロンガンマの発現によって、抗原特異的T細胞を検出した。ここでも、CMV特異的T細胞の数は、ACVまたはVCVを摂取している患者において減少していることがわかる。
【0068】
図11に関して、健常CMV血清反応陽性ドナー、またはアシクロビルもしくはバラシクロビルを摂取している患者由来の血液を、CMV溶解物で刺激し、抗原特異的T細胞の数をElispot分析によって測定した。CMVに対するElispot応答の低下が、ACVまたはVCVを摂取している患者においてみられる。
【0069】
図12において、35人のCMV血清反応陽性または血清反応陰性健常ドナーの末梢血におけるCD4+T細胞を、CD27、CD28またはCD57に対する抗体で染色した。これらを左側のパネルに示す。同様の分析を、アシクロビルまたはバラシクロビルを摂取している患者に実行した(右側のパネル)。CD27もしくはCD28の発現を失った、またはCD57の発現を得た、CD4+T細胞のパーセンテージは、健常ドナーと比較して、ACVまたはVCVを摂取しているCMV血清反応陽性患者において、より低いことがわかる。
【0070】
図13に関して、25人の健常ドナーまたはACVもしくはVCVを摂取している患者の末梢血におけるCD4+T細胞を、CD27に対する抗体で染色した。CD27の発現を失ったCD4+T細胞のパーセンテージは、アシクロビルまたはバラシクロビルを摂取しているCMV血清反応陽性患者において減少していることがわかる。
【0071】
図14に関して、25人の健常ドナーまたはACVもしくはVCVを摂取している患者の末梢血におけるCD4+T細胞を、CD28に対する抗体で染色した。CD28の発現を失ったCD4+T細胞のパーセンテージは、アシクロビルまたはバラシクロビルを摂取しているCMV血清反応陽性患者において減少していることがわかる。
【0072】
図15に関して、25人の健常ドナーまたはACVもしくはVCVを摂取している患者の末梢血におけるCD4+T細胞を、CD57に対する抗体で染色した。CD57の発現を得たCD4+T細胞のパーセンテージは、アシクロビルまたはバラシクロビルを摂取しているCMV血清反応陽性患者において減少していることがわかる。
【0073】
図16において、健常ドナーまたはアシクロビルもしくはバラシクロビルを摂取している患者の末梢血におけるCD8+T細胞を、CD57に対する抗体で染色した。CMV血清反応陽性ドナーにおいてCD57を発現するCD8+T細胞のパーセンテージは、健常コントロールと比較して、アシクロビルまたはバラシクロビルを摂取している患者において減少している。
【0074】
実施例2
末梢血を、1日に2回のアシクロビル40mgによる治療前、ならびに治療3および14ヵ月後、単一個体から摂取し、CMV特異的免疫応答について分析した。結果を図17および図18に示す。
【0075】
図17に関して、血液をCMV溶解物で刺激し、抗原に応答してインターフェロンガンマを生産するCD4+T細胞のパーセンテージを測定した。このパーセンテージは、処理によって減少したことが分かる。
【0076】
最後に、図18に関して、血液を、CMV溶解物、またはCMV pp65もしくはIE−1由来のペプチドプールで刺激し、インターフェロンガンマElispot分析を用いてCMV特異的T細胞の数を検出した。この応答の大きさは、処理によって減少したことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトメガロウイルス(CMV)血清反応陽性の免疫正常者の免疫応答を改善するための、薬剤の調製における、CMVに対して有効な化合物の使用。
【請求項2】
免疫応答の改善は、CD4+T細胞総数に占める割合としてのCD4+CD28−T細胞の数を減らすことを含むことを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
免疫応答の改善は、CD4+T細胞総数に占める割合としてのCD4+CD27−T細胞の数を減らすことを含むことを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項4】
免疫応答の改善は、CD4+T細胞総数に占める割合としてのCD4+CD57+T細胞の数を減らすことを含むことを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項5】
免疫応答の改善は、CD8+T細胞総数に占める割合としてのCD8+CD28−T細胞の数を減らすことを含むことを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項6】
免疫応答の改善は、CD8+T細胞総数に占める割合としてのCD8+CD27−T細胞の数を減らすことを含むことを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項7】
免疫応答の改善は、CD8+T細胞総数に占める割合としてのCD8+CD57+T細胞の数を減らすことを含むことを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項8】
減少が少なくとも20%であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
免疫正常者におけるCMVの治療のための、薬剤の調製における、CMVに対して有効な化合物の使用。
【請求項10】
HIV感染;鬱病、疲労または不安神経症を含む気分障害;統合失調症;慢性疲労症候群;リウマチ性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、サルコイドーシス、強直性脊椎炎、乾癬性関節症、ヴェグナー肉芽腫症および他の脈管炎などの炎症状態;多発性硬化症、シェーグレン症候群、糖尿病、原発性胆管硬化症および全身性硬化症などの自己免疫状態;悪性疾患;サルコイドーシスまたはアミロイドーシス;ウイルス性肝炎およびシャーガス病を含む、慢性の細菌、ウイルスまたは寄生虫感染症;マラリア;気管支拡張症または嚢胞性線維症などの慢性肺疾患;不安定狭心症などの急性冠症候群;動脈(たとえば大動脈)瘤;アテローム性動脈硬化;ならびに脳血管閉塞(「脳卒中」)から選ばれる状態の症状の改善のための、薬剤の調製における、CMVに対して有効な化合物の使用。
【請求項11】
CMVに対する免疫応答を低下させるために、CMV血清反応陽性の免疫正常患者に、CMVに対して有効な化合物を投与することを含むことを特徴とする医薬治療方法。
【請求項12】
化合物は、アシクロビル、ファムシクロビルおよびバラシクロビルから選ばれることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用、または請求項11記載の方法。
【請求項13】
免疫正常患者におけるCMV媒介障害の治療のための、薬剤の調製における、CMVに対するID50が20μMを超えるヌクレオシド類似体の使用。
【請求項14】
ヌクレオシド類似体は、CMVに対するID50が少なくとも50μMであることを特徴とする請求項13記載の使用。
【請求項15】
ヌクレオシド類似体は、アシクロビル、ファムシクロビルおよびバラシクロビルから選ばれることを特徴とする請求項13または14記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−528097(P2010−528097A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509895(P2010−509895)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001844
【国際公開番号】WO2008/146008
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(305031567)ザ ユニバーシティ オブ バーミンガム (12)
【Fターム(参考)】