説明

医用画像診断装置および医用画像処理装置

【課題】撮影対象部位を複数の領域に分割し、分割した領域ごとにボリュームデータの合成を行う時相の範囲を決定することができる医用画像診断装置および医用画像処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置は、再構成部51と、領域分割部52と、時相範囲設定部53と、画像生成部54と、を備える。再構成部51は、造影剤を注入された被検体の撮像により得られた投影データを取得し、この投影データにもとづいて所定の撮像対象部位について互いに時相が異なる複数の原ボリュームデータを生成する。領域分割部52は、撮像対象部位に対して3次元的な分割領域を複数設定する。時相範囲設定部53は、分割領域ごとに時相範囲を設定する。画像生成部54は、分割領域ごとに、時相範囲設定部53により設定された時相範囲に対応する原ボリュームデータを合成して分割領域ボリュームデータを作成し、この分割領域ボリュームデータにもとづいて撮像対象部位の画像を生成して表示部43に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置および医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、X線CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、X線診断装置などの医用画像診断装置(モダリティ)には、同一撮像対象部位のボリュームデータを複数時間にわたって収集可能なものがある。
【0003】
この種のモダリティには、被検体(患者)に対して造影剤を注入し、血管の3次元画像を生成可能に構成されたものがある。血管に注入された造影剤は、たとえば動脈から静脈へ流れ込むなど、時間に応じて血管内を移動する。このため、撮像対象部位に含まれる血管全体の3次元画像を生成する場合は、複数の時相のボリュームデータを合成して1つのボリュームデータを作成することにより、造影剤の軌跡を1つのボリュームデータに収めるようにする。
【0004】
また、動脈と静脈とを分類し、それぞれの3次元画像を生成する技術として、動脈での造影剤の流れが顕著な時相のボリュームデータを合成して動脈用のボリュームデータを作成するとともに、静脈での造影剤の流れが顕著な時相のボリュームデータを合成して静脈用のボリュームデータを作成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−161675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、造影剤の流速は、撮像対象部位内の位置ごとに異なる。このため、撮像対象部位の全体に対して造影剤の流れにもとづき時相を抽出してボリュームデータを合成しても、動脈と静脈とを正確に分離することが難しい。たとえば動脈のみのボリュームデータの作成を所望する場合、撮像対象部位の全体に対して動脈での造影剤の流れが顕著な時相のボリュームデータを合成しても、流れの速い位置では静脈が含まれてしまうとともに、流れの遅い位置では動脈の端部が消えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置は、上述した課題を解決するために、再構成部と、領域分割部と、時相範囲設定部と、画像生成部と、を備える。再構成部は、造影剤を注入された被検体の撮像により得られた投影データを取得し、この投影データにもとづいて所定の撮像対象部位について互いに時相が異なる複数の原ボリュームデータを生成する。領域分割部は、撮像対象部位に対して3次元的な分割領域を複数設定する。時相範囲設定部は、分割領域ごとに時相範囲を設定する。画像生成部は、分割領域ごとに、時相範囲設定部により設定された時相範囲に対応する原ボリュームデータを合成して分割領域ボリュームデータを作成し、この分割領域ボリュームデータにもとづいて撮像対象部位の画像を生成して表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像処理装置を含む医用画像診断装置の一例を示す概略的な全体構成図。
【図2】主制御部のCPUによる機能実現部の構成例を示す概略的なブロック図。
【図3】(a)は、撮影対象部位が頭部である場合において、造影剤が動脈全体に行き渡る前の時相における1つの原ボリュームデータにもとづく画像の一例を示す説明図、(b)は造影剤が動脈および静脈の両者に存在する時相における1つの原ボリュームデータにもとづく画像の一例を示す説明図。
【図4】撮影対象部位が頭部である場合において、頭部全体について、所定の時相範囲の複数の原ボリュームデータを合成したボリュームデータにもとづいて生成される画像の一例を示す説明図。
【図5】領域分割部の一例を示す構成図。
【図6】領域分割用参照画像にもとづいてユーザにより指示された領域分割線の一例を示す説明図。
【図7】時相範囲設定部の一例を示す構成図。
【図8】頭部における造影剤の濃度変化曲線の一例を示す説明図。
【図9】図1に示す画像処理装置の主制御部により撮影対象部位を複数の領域に分割し、分割した領域ごとにボリュームデータの合成を行う時相の範囲を決定する際の手順を示すフローチャート。
【図10】図9のステップS2で、図5に示す領域分割部により実行される分割領域の設定処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
【図11】図9のステップS3で、図7に示す時相範囲設定部により実行される分割領域ごとの時相範囲設定処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
【図12】領域分割部の他の例を示す構成図。
【図13】ユーザにより血管上の点(血管上指示点)が指定された様子の一例を示す説明図。
【図14】図9のステップS2で、図12に示す領域分割部により実行される分割領域の設定処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
【図15】時相範囲設定部の他の例を示す構成図。
【図16】図9のステップS3で、図15に示す時相範囲設定部により実行される分割領域ごとの時相範囲設定処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る医用画像診断装置および医用画像処理装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る医用画像処理装置を含む医用画像診断装置の一例を示す概略的な全体構成図である。
【0011】
なお、本発明は、同一撮像対象部位のボリュームデータを複数時間にわたって収集可能な様々な医用画像診断装置に適用可能である。以下の説明では、本発明に係る医用画像診断装置として、マルチスライス型や2次元アレイ型検出器を用いたX線CT装置(マルチスライスCT装置)を用いる場合の一例について示す。また、本発明を適用可能なX線CT装置としては、X線源とX線検出器とが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検知素子がアレイされ、X線源のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがある。以下の説明では、回転/回転タイプを用いる場合の一例について示す。
【0012】
X線CT装置10は、スキャナ装置11および医用画像処理装置としての画像処理装置12を有する。X線CT装置10のスキャナ装置11は、通常は検査室に設置され、患者Oの部位(被検体)に関するX線の透過データを生成するために構成される。画像処理装置12は、通常は検査室に隣接する制御室に設置され、透過データから投影データを生成して再構成画像の生成・表示を行なうために構成される。
【0013】
X線CT装置10のスキャナ装置11は、X線管21、絞り22、X線検出器23、DAS(Data Acquisition System)24、回転部25、高圧電源26、絞り駆動装置27、回転駆動装置28、インジェクタ29、天板30、天板駆動装置31、およびコントローラ32を有する。
【0014】
X線管21は、高圧電源26により電圧(以下、管電圧という)を印加されてX線を発生する。X線管21が発生するX線は、ファンビームX線やコーンビームX線として患者Oに向かって照射される。
【0015】
絞り22は、絞り駆動装置27を介してコントローラ32により制御されて、X線管21から照射されるX線のスライス方向の照射範囲を調整する。
【0016】
X線検出器23は、1または複数のX線検出素子(電荷蓄積素子)により構成される。このX線検出素子は、X線管21から照射されたX線を検知する。X線管21およびX線検出器23は、天板30に載置された患者Oを挟んで対向する位置となるよう回転部25に支持される。
【0017】
このX線検出器23としては、マルチスライス型の場合、チャンネル方向(X軸)に複数チャンネルを有するX線検出素子の列をスライス方向(Z軸)に複数配列したものを用いることができる。また、2次元アレイ型の場合、X線検出器23は、チャンネル方向(X軸)とスライス方向(Z軸)の両方向に関して稠密に分布して配置される複数のX線検出素子により構成することができる。
【0018】
DAS24は、X線検出器23を構成するX線検出素子が検知した透過データの信号を増幅してデジタル信号に変換して出力する。DAS24の出力データは、スキャナ装置11のコントローラ32を介して画像処理装置12に与えられる。
【0019】
回転部25は、X線管21、絞り22、X線検出器23、およびDAS24を一体として保持する。回転部25が回転駆動装置28を介してコントローラ32に制御されて回転することにより、X線管21、絞り22、X線検出器23、およびDAS24は一体として患者Oの周りを回転する。
【0020】
高圧電源26は、コントローラ32に制御されて、X線の照射に必要な電力をX線管21に供給する。
【0021】
絞り駆動装置27は、コントローラ32に制御されて、絞り22の開口を調整することによりX線のスライス方向の照射範囲を調整する。
【0022】
回転駆動装置28は、コントローラ32に制御されて、回転部25を空洞部の周りに回転させる。
【0023】
インジェクタ29は、コントローラ32による制御によって、患者Oの患部に挿入されたカテーテル(カテーテルチューブ、図示しない)に対して造影剤を注入する装置である。
【0024】
天板30は、患者Oを載置可能に構成される。天板駆動装置30は、コントローラ32に制御されて、天板30をY軸方向に昇降動させる。また、天板駆動装置30は、コントローラ32に制御されて、回転部25の中央部分の開口部のX線照射場へ天板30をZ軸方向に沿って移送する。
【0025】
コントローラ32は、CPU、RAMおよびROMをはじめとする記憶媒体などにより構成され、この記憶媒体に記憶されたプログラムに従って、X線検出器23、DAS24、高圧電源26、絞り駆動装置27、回転駆動装置28、インジェクタ29および天板駆動装置31を制御することによりスキャンを実行させる。コントローラ32のRAMは、CPUが実行するプログラムおよびデータを一時的に格納するワークエリアを提供する。コントローラ32のROMをはじめとする記憶媒体は、スキャン装置11の起動プログラム、スキャナ装置11の制御プログラムや、これらのプログラムを実行するために必要な各種データを記憶する。
【0026】
なお、コントローラ32のROMをはじめとする記憶媒体は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPUにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0027】
一方、X線CT装置10の画像処理装置12は、たとえばパーソナルコンピュータにより構成され、病院基幹のLAN(Local Area Network)等のネットワークとデータ送受信することができる。
【0028】
医用画像処理装置としての画像処理装置12は、図1に示すように、データ収集部41、入力部42、表示部43、ネットワーク接続部44、記憶部45および主制御部46を有する。
【0029】
データ収集部41は、スキャナ装置11が実行したスキャンにより得られた投影データをDAS24およびコントローラ32を介して収集する。データ収集部41によって収集されたデータは、記憶部45に記憶される。
【0030】
入力部42は、たとえばキーボード、タッチパネル、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を主制御部46に出力する。
【0031】
表示部43は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、主制御部46の制御に従ってスキャノ像などの各種画像を表示する。
【0032】
ネットワーク接続部44は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続部44は、この各種プロトコルに従って画像処理装置12と画像サーバなどの他の電気機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、病院基幹LANなどの無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0033】
記憶部45は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、主制御部46のCPUにより読み書き可能な記録媒体を含んだ構成を有する。記憶部45は、データ収集部41によって収集されたデータなどを記憶する。
【0034】
主制御部46は、CPU、RAMおよびROMをはじめとする記憶媒体などにより構成され、この記憶媒体に記憶されたスキャナ装置制御プログラムに従ってスキャナ装置11のコントローラ32を制御するとともに、領域別時相範囲決定プログラムに従って、撮影対象部位を複数の領域に分割し、分割した領域ごとにボリュームデータの合成を行う時相の範囲を決定する処理を実行する。
【0035】
主制御部46のRAMは、CPUが実行するプログラムおよびデータを一時的に格納するワークエリアを提供する。主制御部46のROMをはじめとする記憶媒体は、画像処理装置12の起動プログラム、スキャナ装置制御プログラム、領域別時相範囲決定プログラムや、これらのプログラムを実行するために必要な各種データを記憶する。
【0036】
なお、主制御部46のROMをはじめとする記憶媒体は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPUにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0037】
図2は、主制御部46のCPUによる機能実現部の構成例を示す概略的なブロック図である。なお、この機能実現部は、CPUを用いることなく回路などのハードウエアロジックによって構成してもよい。
【0038】
図2に示すように、主制御部46のCPUは、ROMをはじめとする記憶媒体に記憶された領域別時相範囲決定プログラムによって、少なくとも再構成部51、領域分割部52、時相範囲設定部53および画像生成部54として機能する。この各部51〜54は、RAMの所要のワークエリアをデータの一時的な格納場所として利用する。
【0039】
再構成部51は、造影剤を注入された被検体Oの撮像により得られた投影データを記憶部45から読み出し、この投影データにもとづいて所定の撮像対象部位について互いに時相が異なる複数の原ボリュームデータを生成して記憶部45に記憶させる。
【0040】
なお、以下の説明では、スキャナ装置11が、回転部25が1回転する間に1つの原ボリュームデータに対応する投影データを収集可能である場合について説明する。この場合、再構成部51は、たとえば回転部25の回転ごとに、各回転で得られる投影データに対応する原ボリュームデータと各回転の時相とを関連付けて記憶部45に記憶させておくとよい。
【0041】
また、再構成部51は、生成した複数の原ボリュームデータについて、たとえば造影剤注入前の原ボリュームデータファイルを基準とて個々に位置合わせをしておくとよい。この位置合わせは、いわゆる体動補正であり、呼吸や体動等による各原ボリュームデータの骨、臓器、血管の位置のずれを補正するために行う。
【0042】
図3(a)は、撮影対象部位が頭部である場合において、造影剤が動脈全体に行き渡る前の時相における1つの原ボリュームデータにもとづく画像の一例を示す説明図であり、(b)は造影剤が動脈および静脈の両者に存在する時相における1つの原ボリュームデータにもとづく画像の一例を示す説明図である。
【0043】
また、図4は、撮影対象部位が頭部である場合において、頭部全体について、所定の時相範囲の複数の原ボリュームデータを合成したボリュームデータにもとづいて生成される画像の一例を示す説明図である。
【0044】
1つの原ボリュームデータにもとづいて生成される画像は、原ボリュームデータが取得された時相における造影剤の軌跡のみを反映したものとなる。このため、1つの原ボリュームデータにもとづく画像では、動脈と静脈とを分離した画像を得ることが非常に難しく、たとえば造影剤が動脈全体に行き渡る前の時相の画像(図3(a)参照)や、造影剤が動脈および静脈の両者に存在する時相の画像(図3(b)参照)などしか得ることができない。
【0045】
1つの原ボリュームデータでは捕えきれない画像を生成する方法としては、所定の時相範囲に対応する複数の原ボリュームデータを合成したボリュームデータにもとづいて画像を生成する方法が考えられる。この方法では、たとえば動脈での造影剤の流れが顕著な時相範囲を抽出し、この時相範囲の複数の原ボリュームデータを合成したボリュームデータにもとづいて画像を生成することにより、動脈が強調された画像を得ることができると期待される。
【0046】
しかし、造影剤の流速は、撮像対象部位内の位置ごとに異なる。このため、たとえば図4に示すように、撮像対象部位の全体に対して動脈での造影剤の流れが顕著な時相範囲の複数の原ボリュームデータを合成すると、流れの速い位置では静脈が含まれてしまうとともに、流れの遅い位置では動脈の端部が消えてしまう。
【0047】
したがって、撮像対象部位の全体に対してボリュームデータを合成する場合、時相範囲をどのように設定しても、動脈と静脈とを的確に区別することは難しい。
【0048】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置12は、撮影対象部位に対して空間的位置が異なる分割領域を設定し、分割領域ごとに時相範囲を設定し、分割領域ごとに設定された時相範囲で原ボリュームデータを合成する。
【0049】
領域分割部52は、撮像対象部位に対して3次元的な分割領域を複数設定する。時相範囲設定部53は、分割領域ごとに時相範囲を設定する。そして、画像生成部54は、分割領域ごとに、時相範囲設定部53により設定された時相範囲に対応する原ボリュームデータを合成して分割領域ボリュームデータを作成し、この分割領域ボリュームデータにもとづいて撮像対象部位の画像(3次元画像やMPR(Multi Planar Reformation)画像など)を生成して表示部43に表示させる。
【0050】
図5は、領域分割部52の一例を示す構成図である。
【0051】
領域分割部52は、たとえば領域分割用参照画像生成部61、分割領域情報取得部62および分割領域設定部63を有する。
【0052】
領域分割用参照画像生成部61は、再構成部51によって生成された原ボリュームデータのうち、ユーザにより指示された1つの原ボリュームデータ(以下、領域分割用参照ボリュームデータという)にもとづいて撮像対象部位の領域分割用参照画像を生成して表示部43に表示させる。なお、領域分割用参照ボリュームデータは、ユーザにより指示された複数の原ボリュームデータを合成することにより得られるボリュームデータであってもよい。
【0053】
図6は、領域分割用参照画像にもとづいてユーザにより指示された領域分割線の一例を示す説明図である。なお、図6には、撮影対象部位が頭部である場合の例について示した。図6の左上は頭部のコロナル断面を、右上はサジタル断面を、左下はアキシャル断面をそれぞれ示す。
【0054】
分割領域情報取得部62は、領域分割用参照画像を参照したユーザから、入力部42を介して分割領域の情報を取得する。分割領域は、図6に示すように、3次元的な領域として設定され、複数の分割領域のそれぞれは、空間的位置が異なる。ユーザは、表示部43に表示された領域分割用参照画像に対して、たとえばマウス操作により領域分割線を描くことにより、分割領域の情報を入力する。
【0055】
分割領域情報取得部62は、たとえば、動脈が存在する分割領域(動脈領域(ROI1))と、静脈が存在する分割領域(静脈領域(ROI2))と、その他領域(ROI3)の情報を取得する。撮影対象部位が頭部である場合、脳の中心付近を動脈領域(ROI1)、脳表付近を静脈領域(ROI2)、これらの中間領域をその他領域(ROI3)とするとよい。
【0056】
分割領域設定部63は、入力部42を介して取得した分割領域の情報にもとづいて1または複数の分割領域を設定し、各分割領域の設定情報を記憶部45に記憶させる。
【0057】
図7は、時相範囲設定部53の一例を示す構成図である。
【0058】
時相範囲設定部53は、たとえば仮設定情報取得部71、時相範囲用参照画像生成部72、仮設定情報変更部73および時相範囲決定部74を有する。
【0059】
仮設定情報取得部71は、領域分割部52により設定された分割領域ごとに、ユーザから入力部42を介して時相の仮設定範囲の情報を取得する。
【0060】
図8は、頭部における造影剤の濃度変化曲線の一例を示す説明図である。
【0061】
図8に示すように、造影剤の時間(time)と濃度(density)の関係を示す濃度変化曲線(以下、TDC:Time-Density Curve という)は、動脈に由来するTDCと静脈に由来するTDCとが加算されたものとなる。
【0062】
たとえば、領域分割部52により、撮影対象部位に対して動脈領域ROI1、静脈領域ROI2およびその他領域ROI3が設定された場合を考える。この場合、図8から明らかなように、動脈領域ROI1において合成すべき時相範囲Δtaは、静脈領域ROI2において合成すべき時相範囲Δtvとは異なる範囲である。時相範囲Δtaは、動脈由来のTDCのピーク時間taを含む範囲とするとよく、時相範囲Δtvは、静脈由来のTDCのピーク時間tvを含む範囲とするとよい。また、動脈の画像と静脈の画像とを分離することが目的の場合には、その他領域ROI3については時相範囲を設定する必要は無い。また、その他領域ROI3そのものを設けず、頭部を動脈領域ROI1と静脈領域ROI2のみに分割してもよい。
【0063】
動脈領域(ROI1)は、領域分割部52により、主に動脈が存在する領域として設定された分割領域である。このため、動脈領域(ROI1)の内部についてどの時相範囲で原ボリュームデータを合成しても、予期せぬ静脈が紛れ込むことはなく、動脈全体を表示することができる。静脈領域(ROI2)についても同様である。このため、時相範囲ΔtaとΔtvとがたとえ一部重複する時相を有している場合であっても、各分割領域ROI1およびROI2に対してそれぞれ予期せぬ静脈および動脈が紛れ込むおそれがない。
【0064】
時相範囲用参照画像生成部72は、分割領域ごとに、原ボリュームデータのうち仮設定範囲に対応する原ボリュームデータを合成して時相範囲用参照ボリュームデータを作成し、分割領域ごとに時相範囲用参照ボリュームデータにもとづいて時相範囲用参照画像を生成して、表示部43に表示させる。ユーザは、表示部43に表示された時相範囲用参照画像を確認することにより、各分割領域ROI1およびROI2に対して仮設定した時相範囲が適切であるか否かを容易に判断することができる。ユーザは、仮設定した時相範囲でよい場合は入力部42を介して時相範囲の確定指示を入力し、仮設定した時相範囲を変更したい場合は変更指示を入力する。
【0065】
仮設定情報変更部73は、分割領域ごとに、時相範囲用参照画像を参照したユーザから入力部42を介して仮設定範囲の変更を受け付け、変更後の仮設定範囲の情報を時相範囲用参照画像生成部72に与える。
【0066】
時相範囲決定部74は、分割領域ごとに、時相範囲用参照画像を参照したユーザから入力部42を介して仮設定範囲の確定指示を受け付け、この確定指示のあった仮設定範囲を分割領域ごとの時相範囲として設定して画像生成部54に与える。なお、この設定した時相範囲は一旦記憶部45に記憶させてもよい。
【0067】
次に、本実施形態に係る医用画像処理装置を含む医用画像診断装置の動作の一例について説明する。
【0068】
図9は、図1に示す画像処理装置12の主制御部46により撮影対象部位を複数の領域に分割し、分割した領域ごとにボリュームデータの合成を行う時相の範囲を決定する際の手順を示すフローチャートである。図9において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。なお、以下の説明では、撮影対象部位が頭部である場合の例について示す。
【0069】
この手順は、スキャナ装置11により複数時間にわたる頭部の投影データが記憶部45に記憶された時点でスタートとなる。
【0070】
まず、ステップS1において、再構成部51は、造影剤を注入された被検体Oの撮像により得られた頭部の投影データを記憶部45から読み出し、この投影データにもとづいて互いに時相が異なる複数の頭部の原ボリュームデータを生成して記憶部45に記憶させる。また、再構成部51は、必要に応じて各原ボリュームデータの体動補正を行っておく。
【0071】
次に、ステップS2において、領域分割部52は、頭部に対して3次元的な分割領域を複数設定する。この分割領域は、少なくとも脳の中心付近に設定される動脈領域ROI1および脳表付近に設定される静脈領域ROI2を含む。また、これらの中間領域にその他領域ROI3を設定してもよい。
【0072】
次に、ステップS3において、時相範囲設定部53は、動脈領域ROI1に対して時相範囲Δtaを、静脈領域ROI2に対して時相範囲Δtvを、それぞれ設定する。なお、その他領域ROI3については時相範囲を設定しなくてもよい。以下の説明では、その他領域ROI3に対して時相範囲を設定しない場合の例について示す。
【0073】
次に、ステップS4において、画像生成部54は、分割領域ごとに、時相範囲設定部53により設定された時相範囲に対応する原ボリュームデータを合成して分割領域ボリュームデータを作成し、記憶部45に記憶させる。なお、画像生成部54は、その他領域ROI3については分割領域ボリュームデータを作成しない。
【0074】
次に、ステップS5において、画像生成部54は、分割領域ボリュームデータを用いて頭部の画像(3次元画像やMPR画像など)を生成し、表示部43に表示させる。このとき、画像生成部54は、その他領域ROI3については画像を表示しない。その他領域ROI3を表示しないことにより、ごみ等の表示を避け、より綺麗な画像表示を行うことができる。
【0075】
次に、領域分割部52は、ユーザにより入力部42を介して分割領域の変更指示があったか否かを判定する。分割領域の変更指示があった場合はステップS2に戻る。一方、分割領域の変更指示がない場合は、一連の手順は終了となる。
【0076】
以上の手順により、撮影対象部位を複数の領域に分割し、分割した領域ごとにボリュームデータの合成を行う時相の範囲を決定することができる。
【0077】
本実施形態に係る画像処理装置12を含むX線CT装置10は、撮影対象部位のボリュームデータを空間的位置が異なる複数の分割領域に分割し、分割領域ごとに合成する時相範囲を決定することができる。このため、造影剤の流速が速い位置と遅い位置とで異なる時相範囲を指定することができる。したがって、本実施形態に係る画像処理装置12を含むX線CT装置10によれば、動脈と静脈を容易かつ的確に分離し、動脈領域ROI1では動脈全体が、静脈領域ROI2では静脈全体が表示された画像をユーザに提示することができる。よって、ユーザはより容易に血管の走行の観察を行うことができる。
【0078】
続いて、図9のステップS2で行われる分割領域の設定処理および図9のステップS3で行われる分割領域ごとの時相範囲決定処理について、より詳細に説明する。
【0079】
図10は、図9のステップS2で、図5に示す領域分割部52により実行される分割領域の設定処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。図10において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。
【0080】
ステップS201において、領域分割用参照画像生成部61は、再構成部51によって生成された原ボリュームデータのうち、ユーザにより指示された1つの原ボリュームデータまたは複数の原ボリュームデータを合成したボリュームデータとしての領域分割用参照ボリュームデータにもとづいて、頭部の領域分割用参照画像を生成して表示部43に表示させる。
【0081】
次に、ステップS202において、分割領域情報取得部62は、領域分割用参照画像を参照したユーザから、入力部42を介して、少なくとも脳の中心付近に設定される動脈領域ROI1および脳表付近に設定される静脈領域ROI2の情報を取得する(図6参照)。
【0082】
次に、ステップS203において、分割領域情報取得部62は、ユーザから入力部42を介して分割領域の指定の終了指示があったか否かを判定する。分割領域の指定の終了指示がない場合は、ステップS204に進む。一方、分割領域の指定の終了指示がない場合は、ステップS202に戻る。
【0083】
次に、ステップS204において、分割領域設定部63は、入力部42を介して取得した分割領域の情報にもとづいて動脈領域ROI1および静脈領域ROI2を設定し、各分割領域の設定情報を記憶部45に記憶させる。なお、分割領域設定部63は、頭部(撮影対象部位)のうち分割領域が設定されなかった残りの領域をその他領域ROI3として設定してもよい。
【0084】
以上の手順により、頭部に対して3次元的な分割領域を複数設定することができる。
【0085】
図11は、図9のステップS3で、図7に示す時相範囲設定部53により実行される分割領域ごとの時相範囲設定処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。図10において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。
【0086】
ステップS301において、仮設定情報取得部71は、領域分割部52により設定された分割領域ごとに、ユーザから入力部42を介して時相の仮設定範囲の情報を取得する。
【0087】
次に、ステップS302において、時相範囲用参照画像生成部72は、分割領域ごとに、原ボリュームデータのうち仮設定範囲に対応する原ボリュームデータを合成して時相範囲用参照ボリュームデータを作成する。そして、時相範囲用参照画像生成部72は、分割領域ごとに時相範囲用参照ボリュームデータにもとづいて時相範囲用参照画像を生成して、表示部43に表示させる。
【0088】
次に、ステップS303において、仮設定情報変更部73は、分割領域ごとに、時相範囲用参照画像を参照したユーザから入力部42を介して仮設定範囲の変更指示があったか否かを判定する。仮設定範囲の変更指示があった場合は、仮設定情報変更部73は、変更後の仮設定範囲の情報を時相範囲用参照画像生成部72に与え、ステップS301に戻る。一方、仮設定範囲の変更指示がない場合は、ステップS304に進む。
【0089】
次に、ステップS304において、時相範囲決定部74は、その他領域ROI3を除く全ての分割領域について、時相範囲用参照画像を参照したユーザから入力部42を介して仮設定範囲の確定指示があったか否かを判定する。仮設定範囲の確定指示がない分割領域がある場合は、引き続き時相範囲参照画像の表示を維持すべくステップS302に戻る。一方、その他領域ROI3を除く全ての分割領域について仮設定範囲の確定指示があった場合は、ステップS305に進む。
【0090】
次に、ステップS305において、時相範囲決定部74は、分割領域ごとに、確定指示のあった仮設定範囲を分割領域ごとの時相範囲として設定して記憶部45に記憶させる。
【0091】
以上の手順により、分割領域ごとに時相範囲を設定することができる。
【0092】
図12は、領域分割部52の他の例を示す構成図である。
【0093】
図12に示す領域分割部52Aは、ユーザにより指定された血管上の座標にもとづいて血管をトレースする点で図5に示す領域分割部52と異なる。
【0094】
領域分割部52Aは、ユーザにより指定された血管上の座標にもとづいて血管をトレース可能なように、領域分割用参照画像生成部61、分割領域情報取得部62Aおよび分割領域設定部63に加え、血管上座標取得部64、連結血管抽出部65および血管画像生成部66を有する。
【0095】
領域分割用参照画像生成部61および分割領域設定部63は、図5に示す領域分割部52と同様の構成および作用を有するため説明を省略する。
【0096】
図13は、ユーザにより血管上の点(血管上指示点)が指定された様子の一例を示す説明図である。
【0097】
血管上座標取得部64は、領域分割用参照画像を参照したユーザにより入力部42を介して指定された、領域分割用参照画像に含まれる所定の血管の画像上の所定の座標(血管上指示点の座標)の情報を取得する(図13参照)。
【0098】
連結血管抽出部65は、領域分割用参照ボリュームデータに対応する時相に対して前後する複数の時相に対応する原ボリュームデータから、血管上指示点の座標の画素値にもとづいて、この血管上指示点を含む血管およびこの血管と連結された血管の座標を抽出する。たとえば、ユーザが入力部42を介して領域分割用参照画像に表示された血管の画像のうち動脈の画像上の点を指定した場合、連結血管抽出部65は、この画像の元となる領域分割用参照ボリュームデータの前後の時相の原ボリュームデータを検索して、指定された点に連結される血管(図13のハッチング部分参照)を抽出する。
【0099】
血管画像生成部66は、連結血管抽出部65により抽出された血管の座標にもとづいて血管上指示点を含む血管およびこの血管と連結された血管を示す血管画像を生成する。そして、血管画像生成部66は、この血管画像を領域分割用参照画像に重畳させて表示部43に表示させる(図13参照)。この血管画像は、動脈と静脈とが必ずしも分離された画像ではない。
【0100】
なお、血管画像生成部66は、必要に応じて血管画像を膨張、収縮するとよい。これは、画素値にもとづいて連結血管抽出部65により自動抽出される血管の輪郭は、実際の輪郭とは異なる場合があるためである。
【0101】
分割領域情報取得部62Aは、血管画像が重畳された領域分割用参照画像を参照したユーザから、入力部42を介して分割領域の情報を取得する。
【0102】
たとえば、ユーザが血管上指示点を動脈上に設定した場合、ユーザは、血管画像に含まれる各血管について動脈の始点および終点を見極めることにより動脈領域ROI1を設定することができる。血管ごとに領域分割線を設定することができるため、図12に示す領域分割部52Aによれば、ユーザはより正確に動脈領域ROI1および静脈領域ROI2を設定することができる。
【0103】
図14は、図9のステップS2で、図12に示す領域分割部52Aにより実行される分割領域の設定処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。図14において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0104】
図14に示す手順は、ユーザにより指定された血管上の座標にもとづいて血管をトレースする点で図10に示す手順と異なる。図10と同等のステップには同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0105】
ステップS211において、血管上座標取得部64は、領域分割用参照画像を参照したユーザから入力部42を介して指示されて、領域分割用参照画像に含まれる所定の血管の画像上の所定の座標(血管上指示点の座標)の情報を取得する(図13参照)。
【0106】
次に、ステップS212において、連結血管抽出部65は、領域分割用参照ボリュームデータに対応する時相に対して前後する複数の時相に対応する原ボリュームデータから、血管上指示点の座標の画素値にもとづいて、この血管上指示点を含む血管およびこの血管と連結された血管の座標を抽出する。
【0107】
次に、ステップS213において、血管画像生成部66は、連結血管抽出部65により抽出された血管の座標にもとづいて血管上指示点を含む血管およびこの血管と連結された血管を示す血管画像を生成する。そして、血管画像生成部66は、この血管画像を領域分割用参照画像に重畳させて表示部43に表示させる(図13参照)。
【0108】
次に、ステップS214において、分割領域情報取得部62Aは、血管画像が重畳された領域分割用参照画像を参照したユーザから、入力部42を介して分割領域の情報を取得する。このとき、ユーザは、血管画像に含まれる血管ごとに領域分割線を設定することができる。
【0109】
次に、ステップS215において、分割領域情報取得部62Aは、ユーザから入力部42を介して分割領域の指定の終了指示があったか否かを判定する。分割領域の指定の終了指示がない場合は、ステップS204に進む。一方、分割領域の指定の終了指示がない場合は、ステップS211に戻る。
【0110】
以上の手順によっても、頭部に対して3次元的な分割領域を複数設定することができる。
【0111】
図15は、時相範囲設定部53の他の例を示す構成図である。
【0112】
図15に示す時相範囲設定部53Aは、各分割領域内の血管を輝度値にもとづき自動抽出することにより、各分割領域の血管長が最長となるように各分割領域の時相範囲を自動設定する点で図7に示す時相範囲設定部53と異なる。
【0113】
時相範囲設定部53Aは、各分割領域内の血管を輝度値にもとづき自動抽出することにより各分割領域の時相範囲を自動設定可能なように、血管閾値取得部75、血管抽出部76、血管長算出部77および時相範囲決定部74Aを有する。
【0114】
血管閾値取得部75は、画素の輝度値の閾値の情報を取得する。この閾値は、血管を示す画素を抽出するために用いられ、あらかじめ記憶部45に記憶されてもよいし、ユーザにより入力部42を介して設定されてもよい。
【0115】
血管抽出部76は、分割領域ごとに、時相の所定の範囲に対応する原ボリュームデータから閾値以上の輝度値を有する画素を抽出することにより血管を抽出する。なお、時相の所定の範囲は、あらかじめ記憶部45に記憶された時相範囲またはユーザにより設定された時相範囲を初期範囲とし、時相範囲決定部74Aにより初期範囲からその範囲を変更されるものとする。
【0116】
より具体的には、血管抽出部76は、まず初期範囲に対応する原ボリュームデータから閾値にもとづいて血管として抽出する画素領域をセグメンテーションして血管を抽出した後、時相範囲決定部74Aから新たに設定された時相範囲を与えられると、この新たな時相範囲に対応する原ボリュームデータから血管を抽出することを繰り返す。
【0117】
血管長算出部77は、血管抽出部76により抽出された血管の長さを算出する。このとき、血管長算出部77は、血管抽出部76によりセグメンテーションされた領域を細線化し、細線化した線分の長さを算出するとよい。
【0118】
時相範囲決定部74Aは、血管抽出部76および血管長算出部77を制御し、時相範囲を変更しつつ血管を血管抽出部76に血管を抽出させる。そして、時相範囲決定部74Aは、分割領域ごとに、血管の長さが最長となる時相範囲を求め、この時相範囲を分割領域ごとの時相範囲として設定して画像生成部54に与える。なお、この設定した時相範囲は一旦記憶部45に記憶させてもよい。
【0119】
この時相範囲設定部53Aによれば、各分割領域内の血管を輝度値にもとづき自動抽出することにより、各分割領域の血管長が最長となるように各分割領域の時相範囲を自動設定することができる。
【0120】
図16は、図9のステップS3で、図15に示す時相範囲設定部53Aにより実行される分割領域ごとの時相範囲設定処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。図16において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0121】
図16に示す手順は、各分割領域内の血管を輝度値にもとづき自動抽出することにより、各分割領域の血管長が最長となるように各分割領域の時相範囲を自動設定する点で図11に示す手順と異なる。なお、記憶部45には、あらかじめ血管として抽出すべき輝度値の閾値の情報と、時相の初期範囲の情報が少なくとも記憶されているものとする。
【0122】
ステップS311において、血管閾値取得部75は、血管として抽出すべき輝度値の閾値の情報を記憶部45から取得する。
【0123】
次に、ステップS312において、血管抽出部76は、分割領域ごとに、記憶部45にあらかじめ記憶された時相の初期範囲に対応する原ボリュームデータから閾値以上の輝度値を有する画素を抽出することにより血管を抽出する。
【0124】
次に、ステップS313において、時相範囲決定部74Aは、血管抽出部76および血管長算出部77を制御し、時相範囲を変更しつつ血管抽出部76に血管を抽出させるとともに血管長算出部77に血管の長さを算出させることにより、各時相範囲の血管の長さを求める。
【0125】
次に、ステップS314において、時相範囲決定部74Aは、分割領域ごとに、血管の長さが最長となる時相範囲を求める。
【0126】
次に、ステップS315において、時相範囲決定部74Aは、血管の長さが最長となる時相範囲を分割領域ごとの時相範囲として設定して記憶部45に記憶させる。
【0127】
以上の手順によっても、分割領域ごとに時相範囲を設定することができる。
【0128】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0129】
たとえば、画像処理装置12の主制御部46の機能は、X線CT装置10とネットワークを介して接続された外部の機器(画像サーバや読影装置等)に備えられてもよい。
【0130】
また、本発明の実施形態では、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0131】
10 X線CT装置
12 画像処理装置
42 入力部
43 表示部
45 記憶部
46 主制御部
51 再構成部
52、52A 領域分割部
53、53A 時相範囲設定部
54 画像生成部
61 領域分割用参照画像生成部
62、62A 分割領域情報取得部
63 分割領域設定部
64 血管上座標取得部
65 連結血管抽出部
66 血管画像生成部
71 仮設定情報取得部
72 時相範囲用参照画像生成部
73 仮設定情報変更部
74、74A 時相範囲決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤を注入された被検体の撮像により得られた投影データを取得し、この投影データにもとづいて所定の撮像対象部位について互いに時相が異なる複数の原ボリュームデータを生成する再構成部と、
前記撮像対象部位に対して3次元的な分割領域を複数設定する領域分割部と、
前記分割領域ごとに時相範囲を設定する時相範囲設定部と、
前記分割領域ごとに、前記時相範囲設定部により設定された前記時相範囲に対応する前記原ボリュームデータを合成して分割領域ボリュームデータを作成し、この分割領域ボリュームデータにもとづいて前記撮像対象部位の画像を生成して表示部に表示させる画像生成部と、
を備えた医用画像処理装置。
【請求項2】
前記領域分割部は、
前記原ボリュームデータのうち、ユーザにより指示された1つの前記原ボリュームデータまたはユーザにより指示された複数の前記原ボリュームデータを合成したボリュームデータを領域分割用参照ボリュームデータとし、この領域分割用参照ボリュームデータにもとづいて前記撮像対象部位の領域分割用参照画像を生成して前記表示部に表示させる領域分割用参照画像生成部と、
前記領域分割用参照画像を参照したユーザから、入力部を介して前記分割領域の情報を取得する分割領域情報取得部と、
前記入力部を介して取得した前記分割領域の情報にもとづいて前記分割領域を設定する分割領域設定部と、
を有する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記領域分割部は、
前記原ボリュームデータのうち、ユーザにより指示された1つの前記原ボリュームデータまたはユーザにより指示された複数の前記原ボリュームデータを合成して作成したボリュームデータを領域分割用参照ボリュームデータとし、この領域分割用参照ボリュームデータにもとづいて前記撮像対象部位の領域分割用参照画像を生成して前記表示部に表示させる領域分割用参照画像生成部と、
前記領域分割用参照画像を参照したユーザにより入力部を介して指定された、前記領域分割用参照画像に含まれた所定の血管の画像上の所定の座標の情報を取得する血管上座標取得部と、
前記領域分割用参照ボリュームデータに対応する時相に対して前後する複数の時相に対応する前記原ボリュームデータから、前記所定の座標の画素値にもとづいて前記所定の血管および前記所定の血管と連結された血管の座標を抽出する連結血管抽出部と、
前記連結血管抽出部により抽出された前記所定の血管および前記所定の血管と連結された血管の前記座標にもとづいて前記所定の血管および前記所定の血管と連結された前記血管を示す血管画像を生成し、この血管画像を前記領域分割用参照画像に重畳させて前記表示部に表示させる血管画像生成部と、
前記血管画像が重畳された前記領域分割用参照画像を参照したユーザから、前記入力部を介して前記分割領域の情報を取得する分割領域情報取得部と、
前記入力部を介して取得した前記分割領域の情報にもとづいて前記分割領域を設定する分割領域設定部と、
を有する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記時相範囲設定部は、
前記領域分割部により設定された前記分割領域ごとに、ユーザから入力部を介して前記時相の仮設定範囲の情報を取得する仮設定情報取得部と、
前記分割領域ごとに前記原ボリュームデータのうち前記仮設定範囲に対応する前記原ボリュームデータを合成して時相範囲用参照ボリュームデータを作成し、前記分割領域ごとに前記時相範囲用参照ボリュームデータにもとづいて時相範囲用参照画像を生成して前記表示部に表示させる時相範囲用参照画像生成部と、
前記分割領域ごとに、前記時相範囲用参照画像を参照したユーザから前記入力部を介して前記仮設定範囲の変更を受け付け、変更後の前記仮設定範囲の情報を前記時相範囲用参照画像生成部に与える仮設定情報変更部と、
前記分割領域ごとに、前記時相範囲用参照画像を参照したユーザから前記入力部を介して前記仮設定範囲の確定指示を受け付け、この確定指示のあった前記仮設定範囲を前記分割領域ごとの前記時相範囲として設定して前記画像生成部に与える時相範囲決定部と、
を有する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記時相範囲設定部は、
画素の輝度値の閾値の情報を取得する血管閾値取得部と、
前記分割領域ごとに、前記時相の所定の範囲に対応する前記原ボリュームデータから前記閾値以上の輝度値を有する画素を抽出することにより血管を抽出する血管抽出部と、
前記血管抽出部により抽出された前記血管の長さを算出する血管長算出部と、
前記血管抽出部および前記血管長算出部を制御し、前記所定の範囲を変更しつつ前記血管抽出部に前記血管を抽出させることにより、前記分割領域ごとに前記血管の長さが最長となる前記所定の範囲を求め、この所定の範囲を前記分割領域ごとの前記時相範囲として設定して前記画像生成部に与える時相範囲決定部と、
を有する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記造影剤を注入された前記被検体を撮像することにより前記投影データを生成するスキャナ装置と、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の医用画像処理装置と、
を備えた医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3】
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【図4】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−187342(P2012−187342A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55214(P2011−55214)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】