説明

医療デバイス

【解決手段】
提供される生体埋込み用医療デバイスは、生理学的又は臨床的な関連パラメータを感知する能動的感知材料として作用可能な材料により形成された基板と、それぞれ能動的感知材料として作用するように編成された前記基板の一部分を含み且つ生理学的又は臨床的な関連データを感知する少なくとも1個のセンサーと、さらに少なくとも前記1個のセンサーに結合されて該少なくとも1個のセンサーが感知したパラメータに関するデータを遠隔デバイスへ遠隔伝送する遠隔計測通信手段とを備えてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体埋込み用医療デバイスに関し、例えば心臓弁デバイス又はインプラント(埋込み用組織)に関するものであるが、それらに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
デバイス埋込み後の患者の様態を遠隔計測して得たデータを遠隔伝送する機能を備えた生体埋込み用医療デバイスが知られている。次に掲げる特許文献1及び2は、患者の脈管系内に移植されると共に移植後の生理学的又は臨床的な関連パラメータ情報を伝送することができる医療器具を開示している。両特許文献を、それぞれ引用により本明細書に含める。また以下に掲げる特許文献3〜15は、患者の生体内データの収集に関する従来技術を開示している。これらの特許文献も、それぞれ引用により本明細書に含める。
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0072656号明細書
【特許文献2】米国特許第6,409,675号明細書
【特許文献3】米国特許第6,667,725号明細書
【特許文献4】米国特許第6,486,588号明細書
【特許文献5】米国特許第6,729,336号明細書
【特許文献6】米国特許第6,645,143号明細書
【特許文献7】米国特許第6,658,300号明細書
【特許文献8】米国特許第5,967,986号明細書
【特許文献9】米国特許第6、743,180号明細書
【特許文献10】米国特許6,592,518号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2003/0136417号明細書
【特許文献12】国際公開第03/061487号パンフレット
【特許文献13】国際公開第03/061504号パンフレット
【特許文献14】国際公開第04/014456号パンフレット
【特許文献15】国際公開第05/046467号パンフレット
【特許文献16】国際公開第02/073523号パンフレット
【特許文献17】米国特許第6,622,567号明細書
【非特許文献1】ジョン・ジー・ウェブスター編集『医療ロボティックス用の触覚センサー』(とくに第8章『ピエゾ電気センサー』)、ジョン・ワイリー社、1988年発行
【非特許文献2】『フェロエレクトリック高分子の応用』(とくに第8章『マイクロフォン、ヘッドフォン、及びトーン発生器』)、チャプマン・アンド・ホール社、1988年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、少なくとも幾つかの実施例において、生産が容易であり、経済的に製造することができ、高効率であり、しかも臨床的に利用可能な範囲内での設計が容易である改良型の生体埋込み用医療デバイスを提供する。
疑問を避けるため、本発明で使う「患者」及び「生体」の語はその範囲に人間及び動物の両者を含むことに留意すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の側面において本発明は、生理学的又は臨床的な関連データを感知する能動的感知材料として作用する材料製の基板と、それぞれ能動的感知材料として作用するように編成された基板の一部分を含み且つ生理学的又は臨床的な関連データを感知する少なくとも1つのセンサーと、その少なくとも1つのセンサーに結合され且つその少なくとも1つのセンサーが感知したパラメータに関するデータを遠隔デバイスへ遠隔伝送する遠隔計測通信手段とを備えた生体埋込み用医療デバイスを提供する。
【0006】
遠隔計測通信手段には、少なくとも1つのアンテナを含めることができる。
【0007】
好ましくは、遠隔計測通信手段の少なくとも一部分を基板上に配設する。一部の実施例では、遠隔計測通信手段の全体を基板上に配設する。
【0008】
好ましい実施例では、アンテナの少なくとも一部分を基板上に配設する。
【0009】
他の実施例では本発明のデバイスに、アンテナが取り付けられた基板を付加的に設け、その付加的基板を能動的感知材料として作用する材料製の基板に接触させる。
【0010】
好ましくは、基板を実質的平面形状とするか又は実質的平面から折り曲げた形状とする。これらの形状は、とくに生体内への適用に有用である。
【0011】
好ましい実施例では、基板の片側面上に接地面を設ける。更に好ましくは、基板の表側面上に少なくとも1つのセンサーを設け、その基板の裏側面上に接地面を設け、その接地面を少なくとも1つのアンテナにより定まる面積と対応する領域より広い領域に延在させ、或いは、その接地面を少なくとも1つのアンテナと少なくとも1つのセンサーとにより定まる面積と対応する領域に延在させる。この構成は、センサーの構造、作用、及び遠隔計測通信の効率に関して有利である。便宜上、基板の裏側面上の実質上全体に接地面を設けてもよい。
【0012】
本発明の好ましい一面による医療デバイスは、患者の心臓内に埋込まれ、且つ、i)その中で心臓弁として作動するか、又はii)患者の複数の心臓弁の1つの機能を補助するか、又はiii)患者の複数の心臓弁の1つの機能を監視するように適合される。
【0013】
選択肢i)の場合の医療デバイスは、デバイスを貫流する血流を調整するための更なる1つの弁を含むことができる。典型的には、弁に複数枚の小葉状の部分を含めてもよいが、これは本発明の限定的特徴ではない。
【0014】
選択肢ii)の場合の医療デバイスは、心臓弁修理デバイスを含むことができる。その心臓弁修理デバイスには、例えば環状支持構造のような心臓弁支持構造を設けてもよい。その環状構造は機能障害が生じた心臓弁へ縫い付けてもよい。
【0015】
選択肢iii)の場合の医療デバイスには、患者の心臓弁の内部又は表面への配置に適する構造物を含めてもよい。患者の心臓弁は、処置が施された生来の弁か、又は処置歴はないが将来の処置・交換の時期や要否を判断するために監視を必要とする弁とすることができる。
【0016】
医療デバイスは、生体組織からなる弁壁を有する組織弁デバイスとすることができる。この医療デバイスは、ステント付き又はステントレスとすることができる。詳細には、この医療デバイスに弁壁に対するステント支持体を更に設け、そのステント支持体と弁壁との間に、少なくとも1つのセンサー及び遠隔計測通信手段を配設する。
【0017】
組織弁医療デバイスには更にデバイスの外周を囲む保護カバーを設けることができ、その保護カバーと弁壁との間に上述した少なくとも1つのセンサーと遠隔計測通信手段とを配設してもよい。保護カバーの一例は、ダクロン(登録商標)又は架橋が典型的である心膜層(pericardial layer)等のポリマー層からなるものである。
【0018】
医療デバイスを機械的心臓弁としてもよい。
【0019】
代替的に、医療デバイスを移植片若しくはステントとし、又は医療デバイスを移植片若しくはステントのアタッチメント(attachment)としてもよい。
【0020】
このデバイスは、例えば縫合又は接着剤等の適当な手段により生体の所望部位へ張付けることができる。好ましい実施例においては、医療デバイスを生体への埋込みに適する形態とする。「生体への埋込みに適する形態」の用語は、そのデバイスが少なくとも臨床的に受容可能な態様で、例えば内視鏡経由で生体内へ導入可能であることを意味する。比較的小さな注入手段(例えば、皮下注射器用注射針)による埋込みに適するような医療デバイスを提供することが可能である。
【0021】
本発明の更なる実施例においては、医療デバイスを人工心臓又は左心室補助デバイス(LVad)とすることができる。このデバイスは複数の人工心臓弁を有する。上述した基板、センサー、及び遠隔計測通信手段を人工心臓弁上に配設することが可能であるが、或いはその代りに、基板、センサー、及び遠隔計測通信手段をデバイスの内部又は表面上の他の部位に配設することができる。
【0022】
好ましい実施例においては、遠隔計測通信手段が受動的デバイスである。例えばこのデバイスを、遠隔デバイスから伝送されたエネルギーにより駆動される受動的デバイスとしてもよい。
【0023】
遠隔計測通信手段を、例えばRFID(Radio Frequency IDdentification)デバイスとして知られている無線周波数タグ(RF-tag)のようなトランスポンダとしてもよい。この種のデバイスは、極めて経済的な利用が可能である。更にこの種のデバイスは有用な情報、例えばデバイスの初期データ(original performance data)の記録、デバイスの型式、デバイスが埋込まれた部位、埋込まれた手順(プロシージャー)の詳細等を提供する際に便利に利用することができる。
【0024】
医療デバイスには更に、コンデンサーと、外部エネルギー源から加えられるエネルギーを受け取り且つその外部から受け取ったエネルギーによりコンデンサーを充電する手段とを設け、デバイス中の遠隔計測通信手段及び/又はセンサーをコンデンサーに充電されたエネルギーにより駆動する。例えば、徐々に放電するコンデンサーの充電と遠隔計測通信手段及び/又はセンサーのエネルギー増強とのために、外部の無線周波数源を使用することができる。コンデンサーによる遠隔計測通信手段及び/又はセンサーの駆動開始は、制御装置によって制御することができる。制御装置は、例えば予め定めた時刻の到達時又は生体外から送られる適切な無線周波数信号の受信時等の所要時点においてコンデンサーを放電させる。
【0025】
代替的に、遠隔計測通信手段の駆動を、医療デバイス上に設けられ又は医療デバイスと物理的に接続された電池等のエネルギー源により行ってもよい。
【0026】
更なる代替として、遠隔計測通信手段の駆動を、患者が産み出すエネルギー即ち患者の心臓鼓動又は他の圧力変動を起こす身体機能に係るエネルギーにより行ってもよい。この種の実施例の医療デバイスには更に、コンデンサーと、生理学的事象関連のエネルギーを利用したコンデンサーの充電手段とを設け、その遠隔計測通信手段及び/又はセンサーをコンデンサーに蓄えられた電荷によって駆動することができる。好ましくは、コンデンサーを充電する手段にピエゾ電気装置、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)ピエゾ電気装置を含める。ピエゾ電気装置は、例えば心臓でポンピングされた血液に固有の脈動圧力変動を変換して所要の電荷を発生させることができる。コンデンサーの放電による遠隔計測通信手段及び/又はセンサーの駆動は、制御装置によって制御することができる。制御装置は、例えば予め定めた時刻の到達時又は生体外から送られる適切な無線周波数信号の受信時等の所要時点においてコンデンサーを放電させる。生理学的事象関連のエネルギーを利用したコンデンサーの充電手段は、センサーとして作用させることもできる。ピエゾ電気装置は、この点においてとくに有用である。
【0027】
遠隔計測通信手段を無線周波数の電磁場により駆動してもよい。
【0028】
遠隔計測通信手段は、無線周波数の電磁場を使ってデータ伝送を行ってもよい。
【0029】
遠隔計測通信手段は、他の手段によってデータ伝送してもよく、且つ/或いは、他の手段(例えば、マイクロ波その他の電磁放射、音響信号、又はその他の電磁場)によって駆動してもよい。
【0030】
他の実施例では、遠隔計測通信手段、遠隔計測通信手段がデータ伝送に用いる手段、及び遠隔計測通信手段を駆動する手段として、(セル電話としても知られた)移動体電話の分野の従来技術を用いることができる。この種の実施例の遠隔計測通信手段は、例えばブルートゥース(Bluetooth)、WLAN、GSM、GPRS、又はHMTSの技術を使ってデータ伝送を行うことができる。
【0031】
遠隔計測通信手段に集積回路を含めてもよい。
【0032】
その集積回路を基板上に設けてもよく、又は代替的に付加的な基板上に設けてもよい。
【0033】
集積回路にチップ、好ましくはマイクロチップを含めてもよい。
【0034】
上述した少なくとも1つのセンサーは、血圧検出用の圧力センサーとすることができる。こうすることにより、例えば心臓収縮や心臓拡張の圧力、及び時間の関数としての圧力プロファイル等の非常に重要な圧力臨床データを得ることができる。それだけでなく圧力変化の検出によって漏れ(血液漏れ)を検出することができ、この方法で代用血管等の血管に埋込まれた装置からの漏れ(血液漏れ)を容易に検出することができる。有利な実施例では、異なる2箇所、例えば患者の心臓内の異なる位置等で血圧を検知するための少なくとも2個の圧力センサーを相互に隔てて医療デバイスに設けることができる。この場合は、少なくとも2個の圧力センサーで検知された血圧の差圧に関するデータを、遠隔計測通信手段が遠隔計測によって伝送してもよい。こうして血流及び血液漏れについての情報が得られるが、とくに弁の縮小/狭窄/不全に関する貴重なデータを与える弁の全域にわたる差圧(又は弁の出入口間の差圧)又は弁の交換の情報が得られる。また、圧力瞬時値データを含む圧力データが得られる。それに加え、血流速度の瞬時値を算出することができる。
【0035】
また、少なくとも1つのセンサーを、音響信号検出用の音響センサーとしてもよい。こうすることにより、非常に重要な心臓鼓動に関する臨床データが得られる。とくに心臓弁修理作業(又は修理部分)の性能に対する評価を、遠隔計測的な測定により得られた心臓弁性能の音響的信号の解釈に影響するような異常リズム及び圧力プロファイルを全て考慮に入れて行うことができる。付加的に、血流に関する情報、例えば血流が正常であるか異常であるかに関する情報を得ることができる。
【0036】
少なくとも1つのセンサーに、血圧検出用及び音響信号感知用の少なくとも1つの圧力センサーと少なくとも1つの音響センサーとを共に含めることも有効である。血圧、圧力プロファイル、及び差圧を感知することができる。単一センサーで血圧信号と音響信号との両者を検知することが可能である。
【0037】
少なくとも1つのセンサーにより温度、pH、生物化学的パラメータ群、CO、及びO等の他の生理学的に重要なパラメータを検知してもよい。
【0038】
少なくとも1つのセンサーを受動的なセンサー、即ちセンサーとして作動するための電源が必要でないセンサーとしてもよい。
【0039】
少なくとも1つのセンサーをピエゾ電気センサーとしてもよい。基板を、能動的ピエゾ電気センサー材料として作用するポリマー材料製としてもよい。そのポリマー材料をポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はPVDF関連材料(related PVDF)とすることができる。好ましい材料はPVDFであるが、その理由は、圧力信号と音響信号との両者を監視することができるPVDFセンサーを提供することができるからである。PVDF関連材料はPVDFとの共重合体、例えばPVDF−トリフルオルエチレン(PVDF-trifluorethylene(TrFe))共重合体を含む。能動的ピエゾ電気センサー材料として作用するポリマー材料の他の例は、セラミックス及びセラミック/ポリマー混合物である。
【0040】
基板はポリマー又はセラミック/ポリマー混合物のように変形容易な材料製とすることが好ましいが、その理由は、本発明のデバイスを折り曲げ容易とすることにより実際の生体内部に配設する際にデバイスの配設が著しく簡単になるからである。
【0041】
医療デバイスは、少なくともその一部分に対し非血栓形成性(non-thrombogenic)又は抗血栓形成性(anti-thrombogenic)であって生体共存型(bio-compatible)の物質による被覆を設けることができる。とくに少なくとも1つのセンサーを、このような態様で被覆することができる。
【0042】
上述した少なくとも1つのセンサーと遠隔計測通信手段とを生体共存型の保護構造物内に密閉配置してもよく、その保護構造物を非血栓形成性又は抗血栓形成性の生体共存型の物質によって被覆してもよい。
【0043】
第2の側面において本発明による生体埋込み用医療デバイスは、対向する第1面と第2面とを有する単一の基板又はその基板を複数枚重ねた基板スタック、基板又は基板スタック上に配設されて生理学的又は臨床的な関連データを感知する少なくとも1つのセンサー、基板又は基板スタックの第1面上に配設された少なくとも1つのアンテナを含み且つ少なくとも1つのセンサーで感知されたパラメータの関連データを遠隔デバイスへ遠隔計測的に伝送するように少なくとも1つのセンサーに結合された遠隔計測通信手段、及び基板又は基板スタックの第2面上に配設され且つ少なくとも1つのアンテナにより定まる面積と対応する領域より広い領域に延在する接地面を備えてなるものである。
【0044】
典型的には、遠隔計測通信手段を全体的に又は部分的に基板又は基板スタック上に配設する。本発明の第2の側面には、本発明の第1の側面の特徴を含めてもよい。
【0045】
第3の側面において本発明は、本発明の上述した第1の側面、第2の側面、又は後述する第5の側面による医療デバイスと、遠隔計測通信手段から遠隔計測的に伝送されるデータを受信する遠隔デバイスとを備えた患者監視システムを提供する。
【0046】
重要な一側面において本発明は、本発明の第2の側面による医療デバイスと、その遠隔計測通信手段から遠隔計測的に伝送されるデータを受信する遠隔デバイスとを備えてなり、その遠隔デバイスに、少なくとも1つのデータ受信アンテナと、その少なくとも1つのデータ受信アンテナにより定まる面積と対応する領域より広い領域に延在する接地面とを含め、医療デバイスから遠隔計測的に伝送されるデータの受信が改良された患者監視システムを提供する。
【0047】
遠隔デバイスを、遠隔計測通信手段に対して遠隔的に電力を供給するように適合させてもよい。遠隔デバイスを、この目的用の無線周波数場を発生するように適合させてもよい。
【0048】
本発明の範囲には、少なくとも1つの中間中継デバイスを含めることができる。この態様の実施例では、中継デバイスが遠隔計測通信手段から伝送されるデータを受信し、そのデータを遠隔デバイス又は更なる他の中継デバイスへ伝送する。中継デバイスは、遠隔計測通信手段が短い伝送距離しか持たないに場合にとくに重要である。
【0049】
本発明の医療デバイスは、心臓、他の臓器、脈管、肺、整形外科の用途、神経外科への応用、泌尿器系、消化器系、集中治療監視において利用することができ、腎臓移植、肝臓移植、又は心臓移植等の移植臓器と共に(例えば、治療処置に対する拒絶又は反応の目安としての流入脈管及び流出脈管内の流量及び圧力差分を評価するために)利用することができる。非限定的な実施例として、腹大動脈瘤(Abdominal Aortic Aneurysm(AAA))の処置及び/又は監視における医療デバイスの用途を挙げることができ、とくに医療デバイスが腹大動脈瘤の移植片(AAA graft)である実施例を挙げることができる。脈菅は、肺の動脈及び大動脈等の動脈、又は静脈等である。集中治療監視における用途には、本発明の医療デバイスを肺動脈及び大動脈等の血管の一箇所以上に配置して、例えば心臓又は肺の開放手術の術中又は術後の心拍出力及び充塞圧力を測定する実施例が含まれる。本発明のデバイスは、手術以外の場合にも利用され、例えばトラウマ、心不全、又は敗血症等のため患者の生命が危険な状態にあるときにも利用される。整形外科の用途は、靭帯及び関節での利用を含み、例えば応力/歪が大切な付加的測定項目であるような腰及び膝等の関節嚢(joint capsules)上又は関節補充(joint replacement)内での利用を含む。神経外科への応用は、頭蓋内圧及び髄腔内圧の測定を含む。本発明のデバイスを脳の膜(硬膜)上に配設してもよい。肺に関連する用途は、気道閉塞の検出(とくに喘息患者におけるもの)、及び薬物投与に対する喘息病状の反応その他の肺の状態の計測を含む。気腫、慢性気管支炎、その他形態の気道狭窄等を含む肺の状態を監視することができる。泌尿器系の用途は、膀胱圧、尿管流又は逆流、及び、尿の流れの計測を含む。更なる用途は、動脈内膜切除後の弁修復及び頸動脈パッチに関連する。後者の場合において、本発明のデバイスを適正位置に縫付け、頸動脈流を計測することができる。心電図(ECG)の計測を行ってもよい。本発明の他の好ましい用途は、ステント及び代用血管に関連する用途を含む。代用血管は、ステント付きでもステント無し(ステントレス)でもよい。本発明の医療デバイス自体は、ステント又は代用血管そのものを備えてもよいが、代替的にその医療デバイスをステント又は代用血管上に(又はその内側に、又はその近傍に)配設してもよい。本発明の医療デバイスをステント又は代用血管の性能を監視するために用いることができ、例えば漏れや狭窄の発生を検出し又はステントや代用血管の移動の有無を判定することができる。非限定的なステントの例として、肺、血管、心臓の冠状動脈、胸、及び腹部のステントを挙げることができる。非限定的な移植片(grafts)の例として、腹大動脈瘤(AAA)、インフラ鼠蹊部、大腿膝窩、大腿末梢、静脈、及び脈管アクセス(vascular access)の移植片を挙げることができる。脈管アクセスの移植片の例には、小児心臓導管(paediatric cardiac conduits)及び透析が必要な患者用の移植片が含まれる。消化器系の計測は、例えばpH及び圧力(とくに食道、胃、及び腸管内における)について行われる。
【0050】
第4の側面において本発明は、能動的感知材料として作用する材料と、その材料上に形成されたアンテナパターンの電極とを備えてなり、i)その材料を能動的感知材料として作用させると共に、ii)その電極を能動的感知材料の作用に関連する信号の伝送及び/又は受信用アンテナとして作用させるセンサーを提供する。
【0051】
好ましくは、能動的ピエゾ電気材料として作用する材料を用いる。好ましくはポリマー材料とし、更に好ましくはPVDFとする。
【0052】
アンテナパターン(典型的にはスパイラル形状)は、電極の隣接部分の間に1つ以上の間隙が残されたものとすることができ、これらの間隙を最小化して材料の能動的領域のできるだけ多くをアンテナで覆うことが望ましい。その間隙は、一般的に50μm以下とすることが望ましく、好ましくは25μm以下、更に好ましくは約10μmとする。
【0053】
望ましくは、センサーの能動的感知材料上に、電極により定まる面積と対応する領域より広い領域に延在する接地面を形成する。
【0054】
センサーは様々な用途で用いることができるが、好ましい用途では、センサーを生体への埋込みに適した医療デバイスとし、センサーにより生理学的又は臨床的な関連パラメータを感知し、電極によりセンサーの検知したパラメータに関連するデータを遠隔デバイスへ遠隔計測的に伝送する。
【0055】
センサーには、本発明の第1の側面及び第2の側面の特徴を含めることができる。
【0056】
第5の側面において本発明は、生理学的又は臨床的な関連データを感知する少なくとも2つのセンサー、そのセンサーの応答の差分を計測する差分計測手段、及びその差分計測手段に結合されてセンサーの応答の差分に関連するデータを遠隔デバイスへ遠隔計測的に伝送する遠隔計測通信手段を備えた生体埋込み用医療デバイスを提供する。
【0057】
差分計測手段に、例えばホィートストン・ブリッジ等のブリッジ回路を含めることができる。
【0058】
また差分計測手段に、差分増幅器を含めることができる。
【0059】
こうして本発明のデバイスにより差分計測値を直接伝送することができる。好ましい実施例では、圧力及び/又は音響計測値の差分を伝送することにより、例えば心臓弁の小様部の表裏間の圧力及び/又は音響の差分を測定できる。これに加えて又は代えて、センサー応答への干渉の効果を補償することもできる。
【0060】
本発明の第5の側面には、本発明の第1の側面、第2の側面、又は第4の側面の特徴を含めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、添付図を参照して本発明による医療デバイス及びシステムの実施例を説明する。
【0062】
図1〜図5は、本発明による医療デバイスの各種実施例を示す。図示例では、やや図式的な同心円又は楕円によりアンテナが表されているが、これらの同心円又は楕円は現実のアンテナで一般的に必要とされる幾何学的らせん形状の略式表示であることに留意すべきである。図1において符号10で一般的に示された医療デバイスの実施例は、ピエゾ電気活性を有する材料製の基板12を有する。基板12は適宜の形状・寸法のものとすることができる。基板12の第1面(例えば表側面)に、アンテナ14及び集積回路16を有する遠隔計測通信手段(14+16)と、ピエゾ電気センサー18とを配設する。遠隔計測通信手段(14+16)の集積回路16はアンテナ14と結合されている。また集積回路16は、例えば金製電線等の相互接続線20によりピエゾ電気センサー18と接続されている。必要に応じて緩衝増幅器、ディジタル−アナログ変換器その他の回路を、関連接続手段と共に、基板12上に設けてもよい。ピエゾ電気センサー18は、基板12の一部表面上に例えば金属被覆等によって電極18aを設けることにより形成することができる。基板12の電極18a下方部分のみが、例えば音響及び/又は圧力感知用のピエゾ電気センサーとして作用する。基板12の残余部分は全て実質的上ピエゾ電気的に不活性である。図1(a)に示す基板12の反対側面(第2面)は接地面22である。接地面22は、基板12の表面上に例えば金等の金属材料を堆積させて形成する。好ましくは、基板12の反対側面全体に接地面を形成するが、必ずしもそうする必要はない。接地面22を基板12の一箇所以上の特定部分(例えば、アンテナ14により定まる面積と対応する領域)に形成してもよい。図示例では、接地面22をピエゾ電気センサー18の下にも延在させている。注意すべきことに、基板12上にある電極18aの下方に当る基板12の部分のみが電気的に極性化され、能動的なピエゾ電気材料となる。接地面22は、ピエゾ電気センサーの作用を助ける機能に加え、アンテナ14の作用を向上させる機能をも果たす。基板12の表側面と裏側面の間の相互接続、例えば接地面22から集積回路16への接続は、基板12の貫通孔の鍍金、又は微小リベットを使って行われる。
【0063】
好ましくは,基板12をポリフッ化ビニリデン(PVDF)製とする。PVDF(又は他のピエゾ電気特性を有するポリマー材料)の利点はある程度の成形可能性、即ち基板をいくらか折り曲げることができることにある。これは、生体内の用途の場合に著しい利点となる。PVDF製ピエゾ電気センサーの1つの利点は、それを圧力変換器及び音響信号監視用のマイクロフォンの両者として使えることにある。圧力変換器モードでは、PVDFセンサーが心臓サイクルにおける血圧に応動することができる。マイクロフォン・モードでは、心臓弁を通過する時に血液が放出する音響をPVDF変換器で聴き取ることができる。センサーが心臓サイクルにおける血圧に応動できる。圧力センサーとして及びマイクロフォンとしてのPVDFの使用の詳細は非特許文献1及び2に記載されている。両非特許文献の内容を引用により本明細書に含める。基板の代表的な厚さは60μmと150μmとの間、好ましくは60μmと110μmとの間である。好ましい実施例における集積回路16は、いわゆる無線周波数タグ・デバイス(RF-tag device)であり、この種のデバイスはRFIDチップとしても知られている(例えば2003年1月16日版の英国定期刊行物『コンピューティング』参照)。この種のデバイスは、位置監視の目的のためによく知られている。例えば、皮下取り付けの無線周波数タグを上記態様で使用し、家畜及びペット等の動物を監視することができる。無線周波数タグは、典型的には比較的強い適切な無線周波数信号による問い合わせが行なわれるまで受動的デバイスである。この問い合わせ信号は、無線周波数タグ・デバイスを駆動して位置測定の文脈中で典型的には電子的バーコード応答をさせるに十分なエネルギーを有し、その応答の典型的な応答周波数は450MHz近傍である。本発明の目的のためには、無線周波数タグの機能を従来の応用例のそれから幾分変更する。詳細には、無線周波数タグがセンサーからデータを受け取り、センサーの計測値に関連するデータを問合せ側の遠隔デバイスへ伝送する。1つの伝送方法は、センサーからの信号により無線周波数タグからの応答を適当な態様で変調するものである。好ましい伝送方法は、無線周波数タグの識別(ID)コードを、センサーから受け取ったデータに応じて変調するものである。他の伝送方法として、例えば無線周波数タグへのデータ伝送速度を変調する方法を想定することができる。当業者であれば、適当な駆動方式及びデータ収集方式を連想することができるであろう。特許文献16及び17は無線周波数タグの操作に関する更なる情報を記載しており、これら両特許文献の内容を引用により本特許明細書に含める。
【0064】
図1に示す本発明の第1実施例は、心臓弁等の多数の用途に利用できる。例えば、医療デバイス10をステント付き、半ステント付き又はステント無しの心臓弁に装填することができる。
【0065】
図2は、本発明の医療デバイスの第2実施例を一般的に符号24で示す。デバイス24が有する基板26上には、その基板から形成された2つのセンサー28、30と、集積回路32及び2つのアンテナ34、36からなる遠隔計測通信手段とが設けられている。この第2実施例の医療デバイス24の構造の詳細は、第1実施例の医療デバイス10について上述した説明と実質上同一である。詳しくは、図2に示した表側面と反対側の基板26の裏側面に接地面(図示せず)が形成されている。2つのセンサー28、30を設けることにより、例えば差圧を計測するような差分計測システムを提供することができる。図2の第2実施例の医療デバイス24を例えば代用血管上に取り付けることができる。2つのアンテナ34、36は、例えば別々の送信システムとして使用することができる。更に、2つのセンサー28、30と単一のアンテナとからなる実施例とすることも可能である。
【0066】
図3は、総括的に符号38で表される本発明デバイスの第3実施例を示す。この実施例のデバイス38は、基板40を有し、その上に形成された電極42はピエゾ電気センサーとして作用する。このデバイス38は更に、集積回路44とアンテナ46とを有する。接地面(図示せず)を、基板40の図3に示した表側面と反対側の裏側面に形成する。このデバイス38の構造上の細部及び動作は、図1(a)の医療デバイス10のそれと同様である。デバイス39は比較的長い形状を有し、比較的大きなアスペクト比を持った薄型の矩形ストリップである。このような編成は、心臓弁の下流側部分としての使用に好都合である。デバイス38を圧力検出用及び/又は音響信号検出用に使用することができる。
【0067】
図4は、総括的に符号48で表す本発明デバイスの第4実施例を示す。この実施例のデバイス48は、図2の第2実施例と若干類似しており、基板50と、2つのセンサー52、54と、集積回路56と、2つのアンテナ58、60とを有する。第4実施例と第2実施例との主たる相違点として、デバイス48は比較的長い形状を有し、比較的大きなアスペクト比を持った薄型の矩形ストリップである。このような編成は血管ステントへの取り付けに好都合である。2つのセンサー52、54を設けることにより、差圧計測を行う場合における差分計測等が可能になる。
【0068】
図5は、差信号計測への代替的アプローチとして2つの本発明デバイス62、64を用いた実施例を示す。このアプローチは、とくに心臓弁の内部の圧力差及び/又は音響信号差の計測に対して有利である。図5には弁の小葉状部66が図式的に示されている。同図から理解できるように、両デバイス62、64を弁の小葉状部66の両面に振分けて配設し、小葉状部66の機能の評価を行えるようにする。図6は、心臓弁68との関連における2つのデバイス62、64の配置を示す。心臓弁68の小葉状部の位置は、ほぼ図6に点線で示されたレベルである。その結果として、デバイス62を配置するための大きな余地は存在しなくなるので、第3実施例のように比較的薄いデバイスが好まれる。デバイス64(アンテナが形成された付加的基板)の配置に関する制限は比較的少ないので、例えば第1実施例のように比較的低いアスペクト比のデバイスを使うことができる。しかし、両方の場合にデバイスの配置に使える容積は制限されていること、及び実質的に平面性(平面形状)のデバイス(とくに実質的な平面性(planarity)からの折り曲げ変形がある程度許されるデバイス)を使うことが非常に有利であることに留意すべきである。両デバイス62、64を心臓弁68に関連させて位置決めするために多数の手法が存在する。例えば心膜カバー(pericardial cover)を主弁壁の外に設け、両デバイス62、64を心膜カバーと主弁壁との間に配設する。
【0069】
図8に示す本発明の医療デバイスの第5実施例は、4つの接触パッド92、94、96、98の上にフリップフロップ形式でRFID(無線周波数識別)集積回路90を取り付けた構成からなる。RFID集積回路90は、強化ポリエステルであるマイラー又は他の適当な屈曲自在の材料製の基板100上に取り付けられる。また基板100(アンテナが形成された付加的基板)上には、アンテナ・コイル102を配設する。アンテナ・コイル102はスパイラル形状のものであるが、図8では図面簡単化のため円形のものとして示している。アンテナ・コイル102への電気的接続のために2つの接触パッド92、94を使い、他の対の接触パッド96、98を基板100の裏側面に設けた更なる接触パッドの対(図示せず)への電気的接続のために使う。また、基板100の裏側面に設けた接触パッド対を、PVDF基板108の表側面に配設した接触パッド104、106への電気的接続のために使う。PVDF基板108の表側面の大部分には、そのPVDF基板の端縁にまでは達しないように形成された電極110が配設されている。接触パッド104が電極110との電気的接続を形成し、接触パッド106がPVDF基板108の裏側面全体を覆う接地面(図示せず)との電気的接続樹立のための鍍金貫通孔を有する。本デバイスを組み立てるには、2枚の基板100、108を密に接触させて結合する(基板スタックとする)。この目的のために、電気的接触に必要な接触パッドを除く表面部分にエポキシ接着剤のような非導電性接着剤を塗布し、接触パッドの表面部分に少量の導電性接着剤を塗布してもよい。適当な導電性接着剤の一例は、銀添加のエポキシ接着剤、又は典型的には直径2〜3μmの中空の金メッキ重合体球含有の異方性導電性接着剤である。本デバイスを完成するための組み立て結合過程を真空中で行い、2つの基板の間におけるエア・ポケット形成を排除・防止してもよい。この本デバイスの構成には主な利点が2つある。即ち、第1はPVDFセンサーが本デバイスの大部分を覆うことで感度向上を図ることができる点であり、第2は与えられた基板寸法に対してアンテナの有効広さを最大化することで本デバイスと外部読み取り器との間の結合を改善できる点である。接地面に関連して前述した利点も適用される。本デバイスは、圧力及び/又は音響計測に対してとくに有用である。
【0070】
図9に示す本発明の医療デバイスの第6実施例は、金属化したアンテナ/電極114が表面に形成されたPVDF基板112を有する医療デバイスである。好ましくは、RFIDである集積回路116を基板112上に配設し、これとアンテナ/電極114とを接続する。この実施例では、単一構造のアンテナ/電極114がアンテナとPVDF電極との両者として作用する。PVDFの標準的分極方法が使われる。アンテナ/電極114をしてPVDF基板112の活性領域をできるだけ多くカバーさせるのが有利である。このことは、アンテナ/電極114本体のらせん軌道の隣接軌道間の隙間を最小化することにより達成できる。この隙間を約10μmとすることは標準的な金属堆積法(metallic deposition)を使って実現できる。好ましくは、このデバイスにPVDF基板112の裏側面(図示せず)全体をカバーする接地電極又は接地面を含める。その接地面をメッキ貫通孔により集積回路116へ接続してもよい。本デバイスは音響及び/又は圧力の計測にとくに有利であるが、例えば別の材料の使用による他の計測方法の採用も考えられる。別々の計測、例えば別途の圧力計測が必要な場合には、単一の集積回路に2つの個別アンテナを接続してもよい。その代りに、それぞれ固有の集積回路を有する2つの完全に分離された基板を使ってもよい。基板を、センサーの能動的感知材料として作用する材料によって形成することが望ましい。しかし、1つの電極をセンサーの極性化及び駆動(poll/drive)とアンテナの作用という両目的のために使用するという原則は一般的に適用可能であり、例えば分離された基板を用いたデバイスにも適用することができる。
【0071】
図10に図式的態様で示すシステムは、複数の異なる計測を生体内で行うものである。図10において、4つのセンサー118、120、122、124からの出力は、各センサーの応答における差分に関連した出力を提供する差分計測デバイス126への入力となる。差分計測デバイス126の出力は遠隔計測通信手段へ伝送されるが、好ましくは遠隔計測通信手段をRFID等である集積回路128とアンテナ130とにより構成する。差分計測デバイス126は、ホィートストン・ブリッジ又は他の適当なブリッジ回路である。複数センサー118、120、122、124は、既に説明した形式のPVDFデバイスの頂部電極を4つの区分領域に分けたものとしてもよい。このようにして電磁雑音等の干渉に対する一層高度なイミュニティ(immunity)を得ることができる。代替的に、より少ない数のセンサーからの出力をホィートストン・ブリッジ又は他の適当なブリッジ回路に加えてもよい。このようにして本デバイスでは、差分値の測定と絶対的センサー値の測定との間の切り換えを行なうことができる。このような構成は圧力差分計測にとくに有用であり、図9を参照して説明した2つのアンテナ/電極を設けた形式のデバイスがとくに好ましい。
【0072】
埋込みデバイスだけでなく遠隔の読み取りデバイスにも接地面を使用するならば、更なる改良が可能になる。図7は、埋込みデバイス70と遠隔読み取りデバイス72とから想定される構成を図式的態様で示す。埋込みデバイス70は、接地面76で裏打ちされたアンテナ74を有する。同様に読み取りデバイス72は、接地面80で裏打ちされたアンテナ78を有する。同図では簡明化のため、埋込みデバイス70及び遠隔読み取りデバイス72における他の構成要素を省略していることに留意されたい。注目すべきことに、埋込みデバイス70及び遠隔読み取りデバイス72の両者の何れにおいても、一般的にアンテナ面と接地面とは基板の反対側面に配設される。しかし、埋込みデバイス70の場合は、基板がセンサーの形成材料と同じ材料により形成される必要がある。典型的には、読み取りアンテナと接地面との間隔は約2mmである。図7に一般的に示す構成は、埋込みデバイス70への遠隔計測通信(送信)及び埋込みデバイス70からの遠隔計測通信(受信)を改善する。特定の理論による説明を意図するものではないが、この改善は磁界結合の改善に起因するものと考えられる。埋込みデバイス70から伝送された一定レベルのエネルギーに対して一層効率的な遠隔計測通信(受信)が得られるということは、即ち、埋込みデバイス及び遠隔読み取りデバイスの両者に接地面が設けられている場合には一層厚い生物組織を貫通させることが可能になるということである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の医療デバイスの第1実施例のそれぞれ平面図及び側面図を示す。
【図2】医療デバイスの第2実施例の平面図を示す。
【図3】医療デバイスの第3実施例の平面図を示す。
【図4】医療デバイスの第4実施例の平面図を示す。
【図5】心臓弁の小葉状部を横切って複数の計測をする装置の平面図を示す。
【図6】埋込み用組織心臓弁を横切って設けられる2つのデバイスの配置を示す。
【図7】埋込み用医療デバイスと読み取りデバイスとの背後にそれぞれ接地面を使用した配置を示す。
【図8】医療デバイスの第5実施例の展開図を示す。
【図9】医療デバイスの第6実施例の平面図を示す。
【図10】差分計測用の医療デバイスを示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
10、24、38、48、62、64…医療デバイス
12、26、40、44、50、100、108、112…基板
14、34、36、52、58、60、74、78、102、130…アンテナ
(14+16)…遠隔計測通信手段
16、32、44、52、56、90、128…集積回路
18、28、30、42、52、54、118、120、122、124…ピエゾ電気センサー
18a、110…電極 20…相互接続線
22、76、80…接地面 66…小葉状部
68…心臓弁 70…植え込みデバイス
72…読み取りデバイス 90、92、94、96、104、106…接触パッド
126…差分計測デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的又は臨床的な関連データを感知する能動的感知材料として作用する材料製の基板、それぞれ能動的感知材料として作用するように編成された前記基板の一部分を含み且つ生理学的又は臨床的な関連データを感知する少なくとも1つのセンサー、及び前記少なくとも1つのセンサーに結合され且つ前記少なくとも1つのセンサーが感知したパラメータに関するデータを遠隔デバイスへ遠隔伝送する遠隔計測通信手段を備えてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項2】
請求項1のデバイスにおいて、前記遠隔計測通信手段に少なくとも1つのアンテナを含めてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2のデバイスにおいて、前記遠隔計測通信手段を少なくとも部分的に前記基板上に配設してなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項4】
請求項2に従属する請求項3のデバイスにおいて、前記アンテナを少なくとも部分的に前記基板上に配設してなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項5】
請求項2のデバイスにおいて、前記アンテナが形成された付加的基板を設け、その付加的基板を前記能動的感知材料として作用する材料製の基板に接触させてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項6】
請求項1から5の何れかのデバイスにおいて、前記基板を実質的平面形状又は実質的平面から折り曲げた形状としてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項7】
請求項1から6の何れかのデバイスにおいて、前記基板の少なくとも片側面上に接地面を設けてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項8】
請求項2に従属する請求項7のデバイスにおいて、前記基板の表側面上に少なくとも1つのセンサーを設け,前記基板の裏側面上に接地面を設け、その接地面を、前記少なくとも1つのアンテナにより定まる面積と対応する領域より広い領域又は前記少なくとも1つのアンテナと少なくとも1つのセンサーとにより定まる面積と対応する領域に延在させてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項9】
請求項1から8の何れかのデバイスにおいて、前記少なくとも1つのセンサーをピエゾ電気センサーとしてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項10】
請求項9のデバイスにおいて、前記基板を能動的ピエゾ電気センサー材料として作用するポリマー材料製としてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項11】
請求項10のデバイスにおいて、前記ポリマー材料をポリフッ化ビニリデン(PVDF)としてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項12】
請求項1から11の何れかのデバイスにおいて、前記少なくとも1つのセンサーを圧力検出用及び/又は音響信号検出用としてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項13】
請求項1から12の何れかのデバイスにおいて、前記遠隔計測通信手段を受動的デバイス又は遠隔デバイスから伝送されたエネルギーにより駆動される受動的デバイスとしてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項14】
請求項1から13の何れかのデバイスにおいて、前記遠隔計測通信手段をトランスポンダとしてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項15】
請求項1から14の何れかのデバイスにおいて、前記遠隔計測通信手段にRFIDデバイスを含めてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項16】
請求項1から15の何れかのデバイスにおいて、前記遠隔計測通信手段に集積回路を含めてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項17】
請求項16のデバイスにおいて、前記集積回路を前記基板上に配設してなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項18】
請求項1から17の何れかのデバイスにおいて、患者の心臓内に埋め込まれ、且つ、i)その中で心臓弁として作動するか、又は、ii)患者の複数の心臓弁の1つの機能を補助するか、又は、iii)患者の複数の心臓弁の1つの機能を監視するように適合された生体埋込み用医療デバイス。
【請求項19】
請求項18のデバイスにおいて、前記医療デバイスを、生体組織からなる弁壁を有する組織弁デバイスたる心臓弁としてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項20】
請求項19のデバイスにおいて、前記弁壁に対するステント支持体を備え、前記基板、少なくとも1つのセンサー及び遠隔計測通信手段を弁壁とステント支持体との間に配設してなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項21】
請求項19によるステントレス医療デバイス。
【請求項22】
請求項18から21の何れかのデバイスにおいて、前記デバイスの外周を囲む保護カバーを設け、前記基板、少なくとも1つのセンサー及び遠隔計測通信手段を弁壁と保護カバーとの間に配設してなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項23】
請求項18から22の何れかのデバイスにおいて、前記医療デバイスを機械的心臓弁としてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項24】
対向する第1面と第2面とを有する単一の基板又はその基板を複数枚重ねた基板スタック、前記基板又は基板スタック上に配設されて生理学的又は臨床的な関連データを感知する少なくとも1つのセンサー、前記基板又は基板スタックの第1面上に配設された少なくとも1つのアンテナを含み且つ前記少なくとも1つのセンサーで感知されたパラメータの関連データを遠隔デバイスへ遠隔計測的に伝送するように前記少なくとも1つのセンサーに結合された遠隔計測通信手段、及び前記基板又は基板スタックの第2面上に配設され且つ前記少なくとも1つのアンテナにより定まる面積と対応する領域より広い領域に延在する接地面を備えてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項25】
請求項24による医療デバイスと、前記遠隔計測通信手段から遠隔計測的に伝送されたデータを受信する遠隔デバイスとを備えてなり、その遠隔デバイスに、少なくとも1つのデータ受信アンテナと、その少なくとも1つのデータ受信アンテナにより定まる面積と対応する領域より広い領域に延在する接地面とを含め、前記医療デバイスから遠隔計測的に伝送されるデータの受信を改良した患者監視システム。
【請求項26】
能動的感知材料として作用する材料と、その材料上に形成されたアンテナパターンの電極とを備えてなり、i)前記材料を能動的感知材料として作用させると共に、ii)前記電極を前記能動的感知材料の作用に関連する信号の伝送及び/又は受信用アンテナとして作用させてなるセンサー。
【請求項27】
請求項26によるセンサーにおいて、前記材料を能動的ピエゾ電気材料として作用する材料としてなるセンサー。
【請求項28】
請求項27によるセンサーにおいて、前記材料をポリマー材料、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)としてなるセンサー。
【請求項29】
請求項26から28の何れかのセンサーにおいて、前記電極を、隣接部分の間に50μm以下、25μm以下、又は約10μmの間隙が1以上残されたアンテナパターンとしてなるセンサー。
【請求項30】
請求項26から29の何れかのセンサーにおいて、前記材料上に、前記電極により定まる面積と対応する領域より広い領域に延在する接地面を形成してなるセンサー。
【請求項31】
請求項26から30の何れかのセンサーにおいて、前記センサーを生体内への埋込みに適した医療デバイスとし、前記センサーにより生理学的又は臨床的な関連パラメータを感知し、前記電極によりセンサーの検出したパラメータに関連するデータを遠隔デバイスへ遠隔計測的に伝送してなるセンサー。
【請求項32】
生理学的又は臨床的な関連パラメータを感知する少なくとも2つのセンサー、前記センサーの応答の差分を計測する差分計測手段、及び前記差分計測手段に結合されて前記センサーの応答の差分に関連するデータを遠隔デバイスへ遠隔計測的に伝送する遠隔計測通信装置を備えてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項33】
請求項32のデバイスにおいて、前記差分計測手段にブリッジ回路を含めてなる生体埋込み用医療デバイス。
【請求項34】
請求項33のデバイスにおいて、前記差分計測手段にホィートストン・ブリッジを含めてなる医療デバイス。
【請求項35】
請求項32のデバイスにおいて、前記差分計測手段に差動増幅器を含めてなる医療デバイス。
【請求項36】
添付図面を参照して明細書に説明した医療デバイス、センサー又はシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−518706(P2008−518706A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539636(P2007−539636)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004265
【国際公開番号】WO2006/048664
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(507145695)エル・アンド・ピー・100・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】