説明

医療用インプラントで使用される架橋された超高分子量ポリエチレン

【課題】超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)支持面部品の磨耗により引き起こされる骨溶解の防止および減少、磨耗粒子の分離、磨耗が低減されたインプラントの製造および生物学的な応答の低減したインプラントの製造方法を提供する。
【解決手段】体内で使用するための超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)医療用インプラントからの磨耗粒子を分離するためにUHMWPEを架橋し、UHMWPEをアニールし、UHMWPEを機械加工してインプラントを形成し、インプラントを磨耗試験して磨耗粒子を形成し、磨耗粒子を採取(harvesting)し、かつ0.05μmまたはそれより小さい空隙寸法を有するフィルターを使用した粒子を濾過する工程からなる方法および、これらの方法にて作り出されたインプラント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、整形外科のインプラントの分野に関する。具体的には、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)支持面部品の磨耗により引き起こされる骨溶解の防止および減少、磨耗粒子の分離、磨耗が低減されたインプラントの製造および生物学的な応答の低減したインプラントの製造の方法を開示している。これらの方法によって作り出されたインプラントも、本発明に含まれる。
【背景技術】
【0002】
関連技術
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、通常、そのユニークな多くの特性ゆえに、関節全置換術において、関節を形成する耐力表面として使用される。UHMWPEは、強靭性、低摩擦係数および生体適合性を提供する(Bakerら、1999)。金属、セラミックおよび重合体部品のさまざまな組合せから構成される関節全置換術は、耐用年数が制限される問題があり、またUHMWPEの磨耗は、制約因子である。UHMWPE部品からの磨耗破片が、骨溶解、ゆるみおよび最終的な修正外科手術の主要原因であることが明らかになってきている。人間の平均寿命の着実な増加により、単一のインプラントの有効耐用年数を有意に増大させる極めて強い要求がある。若年患者に人工装具のインプラントを使用する要望は、UHMWPEの磨耗抵抗を向上するための、別の強い動機である。本発明は、UHMWPEを用いて作られた人工装具のインプラントの長期磨耗特性を向上する方法を開示する。
【0003】
人間の関節が、病気または怪我で破壊されるかまたは損傷したとき、外科的置換(関節形成術)が通常必要とされる。関節全置換は、典型的に、天然の人間の関節をシミュレートする、
(a)ほぼ球形のセラミックまたは多くの場合コバルトクロム合金製である金属のボール、
(b)近接した長骨の中心に一般的に埋め込まれている“ステム”の付属物、および
(c)寛骨臼カップを置き換え、かつ球形のボールを保持する半球のソケット。
の部品を含む。
【0004】
この半球状の関節は、典型的には、機械的な付属物で関節ソケット中に加えられ、UHMWPEで内側が被覆された金属カップである。この方法で、球はソケット内を回転し、旋回して関節をなし、そしてボールを介してステムが旋回して関節をなす。
【0005】
人体中に埋め込むための何らかの装置の組み立てにおいて、困難なことの一つは、不都合な宿主の生物学的な応答を回避することが必要であることである。不都合な宿主の応答の確率は、ある種の合成材料を使用した場合、減少する。例えば、合成UHMWPEインプラントは、最小限の免疫原性を有しかつ毒性ではない。しかしながら、UHMWPEの部品の磨耗と破壊は、最終的に修正外科手術に至る宿主の細胞応答を起こす原因となることが、その分野で知られている。
【0006】
組織学的な研究は、整形外科的な挿入物からのUHMWPEの磨耗が、いくつかの反応に結び付くことを証明している。第一に、UHMWPEを用いて組み立てられたインプラントを取り巻く組織が、寸法でサブミクロンから数ミクロンの間の範囲の極めて小さいUHMWPEの粒子を含有していることを示している。UHMWPEインプラントの無傷の固体壁であるために、UHMWPEの大きな粒子は、人体により許容されるようであり、一方、人体は明らかにUHMWPEのより小さな粒子を許容しない。実際、UHMWPEの小さな粒子は、人体が外的物質を排除しようとする組織学的な反応の原因となりうる。このプロセスを通して放出された傷害要因が、磨耗破片により誘引された骨溶解を引き起こす。これは、言い換えると、固定の損失および人工装具のゆるみとなる。
【0007】
数多くの技術が、整形外科的なインプラントで、UHMWPEの磨耗抵抗を向上するべく提案されてきた。これらの例の内で、しかしながら、関節を成す重合体の新しい種類の多くは、一般的に磨耗における著しい低減を証明することに失敗し、かつしばしば、通常のポリエチレンに対して劣っていることを証明している。UHMWPEの磨耗特性を向上させる最近の試みは、特殊な圧力/温度プロセス技術、表面処理、高モジュラス繊維を用いる複合材料の形成、およびイオン化照射または化学作用物質による架橋を使用する。これらの試みの幾つかは、以下に要約される。
【0008】
温度/圧力処理
特別な熱的および圧力処理が、UHMWPEの物理的性能と磨耗抵抗を増加するために採用されていた(例えば、米国特許 Nos. 5,037,928および5,037,038)。例えば、“Hipping”(熱間等静圧圧縮成形)は、より少ない溶融欠陥、増大された結晶性、密度、剛性、硬さ、降伏点強度、およびクリープ、酸化および疲労に対する抵抗を構成すると主張する材料を製造する。しかしながら、臨床研究は、“Hipping”処理したUHMWPEは、通常のUHMWPEと比べて磨耗抵抗が劣ることを示唆している。磨耗抵抗が下がると、関節形成の間に、接触応力を増加させる結果となる剛性が増加されることとなる(Livingstonら、Trans. ORS、22、141〜24、1997)。
【0009】
固相圧縮成形のような、事後圧縮化温度および圧力処理も試みられている(Zachariades、米国特許No. 5,030,402)。Zachariadesは、更なる圧縮化とUHMWPEの鎖を延伸するために固体状態処理を利用した。しかしながら、整形外科的なインプラントで、磨耗に対する抵抗は、向上しなかった。
【0010】
表面処理
UHMWPE部品の表面に焦点を絞って、UHMWPE部品の表面の平滑性および/または潤滑性を増すことにより磨耗を低減する試みが行われた。Howmedicaのグループは、関節接合表面を溶融させるために熱加圧技法を採用し、粗い機械的な付着の“擦り切れ"を避けるようなUHMWPE部品の表面から機械的付着を取り除いた。しかしながら、この修飾は、高い関節接合−誘導応力が、結晶形態中に鋭い転移がある領域に局在化しているという事実により、層剥離および高磨耗を引き起こした(Bloeboum ら、Clin. Orthop. 269、120〜127、1991)。
【0011】
Andradeらは、滑り摩擦を低減するために、湿った親水性重合体の表面を酸化することを示唆した(米国特許No. 4,508,606)。好ましい手段は、表面にラジオ周波数のグロー放電を与えることを含んでいた。この技法を用いると、表面の化学的性質は、気体プラズマの暴露時間を変え、ガス組成を変えることで変えられる。該発明は、濡れ状態の間に、表面の摩擦特性を低減させるため、カテーテルの処理で提案された。同様に、Farrarは、気体プラズマ処理を使用して、UHMWPEの表面を架橋することを提案し、それにより磨耗抵抗を増加させた(国際特許出願WO 95 212212)。しかしながら、いずれのプラズマ処理も、いずれの知覚された利点も、関節接合により殆ど磨り減ったため、実用的ではなかった。
【0012】
複合材料
クリープがUHMWPEの磨耗の一因であり得るため、研究者らはまた、プラスチックの変形を低減させるためにポリエチレンのマトリックス中に高剛性繊維を含めた。米国特許No. 4,055,862は、層間剥離があって著しく不成功に終わった“ポリ−炭素 ポリエチレン複合体”を開示している。最近、Howmedicaは、PET/炭素繊維複合体が、1000万サイクル以上で、通常のポリエチレンより99%少ない股関節でシミュレートされた磨耗を示すことを報告した(Polineni, V.K.ら、J. 44th Annual OPS、49、1998.)。
【0013】
架橋
A 放射線誘導架橋
酸素の不存在下で、UHMWPEに対するイオン化照射の主な効果は、架橋である(Roseら、1984, Streicherら、1988)。UHMWPEの架橋は、個々の重合体鎖のコールドフロー(クリープ)を抑制する重合体鎖間の共有結合を形成する。しかしながら、照射を通して形成された遊離基は、架橋による停止反応または再結合の他の形態が起こらなければ、無制限に存在することができる。さらに、反応した中間体は、連続的に形成され、そして崩壊する。分子状酸素または、他のいずれかの反応性酸化剤に対するこれらの遊離基種の暴露は、いつでも(例えば、照射、棚エージングまたは、生体内エージング中に)、それらを酸化させる。広範な酸化は、分子量の低下および、結果として磨耗抵抗を含む物性特性の変化を引き起こす。
【0014】
ガンマー線殺菌の後の酸化を低減させるため、ある整形外科の製造業者らは、架橋を促進し、そして酸化を低減する条件下でそれらの材料を照射することを実行する技法を有している。
これらの技法は、プロセスの全段階を通した不活性気体の使用、真空包装の使用、および後消毒熱処理を含む。これらの技法の具体的な例を、以下に示す。
【0015】
Howmedicaは、処理に結び付いたUHMWPEの酸化を低減させるための各種の手段を開発した、すなわち、処理中での不活性気体の連続使用である(米国特許Nos.5,728,748,5,650,485,5,543,471、5,414,049および5,449,745を参照)。これらの特許はまた、遊離基を低減または除去するための重合体の熱的なアニールを記述している。請求された(室温から135℃)アニール温度は、しかしながら、UHMWPEの完全な溶融を避けている。
【0016】
Johnson&Johnsonは、ヨーロッパ特許出願(EP 0737481 A1)で、架橋を促進しかつ短期および長期的酸化分解を低減するための照射殺菌を伴う真空包装法を開示している。包装環境は、遊離基を“急冷”するための不活性気体、および/または水素を含むことができる。架橋/殺菌法は、UHMWPEの磨耗抵抗を強化させるために請求されている(Hamilton, J.V.ら、Scientific Exhibit、第64回 AAOS Meeting、February 1997; Hamilton, J.Vら、Trans 43th ORS、782、1997.)。
【0017】
BiometのPCT特許出願No.97/29787は、遊離基(例えば、水素)と結合することができる気体で、部分的に充填された酸素抵抗性の容器中での人工装具部品のガンマー線の照射を開示している。
【0018】
Oonishi/Mizuho Medical Company−JapanとMizuho Medical Companyのほかの研究者らは、彼らのSOM股関節インプラントに関して、1971年に、ガンマー線の照射によるPE(ポリエチレン)を架橋することを始めた。それ以来、彼らは、UHMWPEの機械的、熱的および磨耗特性に対する、1,000メガRad(MRad)に至る広範囲の殺菌照射線量の効果について研究した。彼らは、磨耗に対する各種の界面材料の効果についても研究し、アルミナまたはジルコニア頭の200MRadを照射したUHMWPEの内張りが、最も低い磨耗率を生じることを発見した(Oonishi, H.ら、Radiat.Phys.Chem.、39(6)、495,1992; Oonishi, H.ら、Mat. Sci: Materials in Medicine、7、753〜63、1966; Oonishi, H.ら、J. Mat. Sci.: Materials in Medicine、8、11〜18、1997)。
【0019】
Massachusetts General Hospital/Massachusetts Institute of Technology (MGH/MIT)は、UHMWPEを架橋させるために、照射(特に、電子線)処理を採用している。これらの処理は、非殺菌の対照と比べて、股関節部品のシミュレーターの磨耗率(wear rate)を80〜90%まで低減させる(例えば、WO97/29793を参照)。この技術は、UHMWPEを高度に架橋させることを可能にするが、しかしながら、架橋の程度は、照射されたUHMWPEが固体状態にあるかまたは溶融状態であるかに依存する。Massachusetts General Hospital/ Massachusetts Institute of Technology(MGH/MIT)は、また、微粒子の製造を少なくするために、1Mradより多く、好ましくは20Mradより多くでの、UHMWPEの架橋を開示している(米国特許No. 5,879,400)。彼らは、非照射ピンについて8mg/100万サイクルと、照射された(20Mrad)UHMWPEピンについて0.5mg/100万サイクルの磨耗率を開示した。
【0020】
Orthopaedic Hospital/University of Southern Californiaは、再溶融またはアニールのような熱処理を伴った照射を使用するUHMWPE股関節部品の磨耗抵抗の増加を探求する特許出願を開示している(米国特許No.6,228,900およびWO98/01085を参照)。UHMWPEの照射は、1−100MRadであり、より好ましくは5〜25 MRad 、および最も好ましくは5〜10 MRad であることを開示している。磨耗率は、各種の照射線量に関して開示されている。この方法を使用して、UHMWPEの架橋は、物理的特性がASTMの限界以上であるように最適化された。
【0021】
米国特許No. 6,165,220で、McKellyらは、UHMWPEの1〜25 MRad 、より好ましくは1〜15 MRad、最も好ましくは10 MRadでの架橋を開示している。酸化の特徴が、5、10または15MRadで架橋されたUHMWPEについて得られた。彼らは、磨耗粒子の寸法または数量については観察していない。
【0022】
BMGのヨーロッパ出願(EP 0729981 A1)は、関節接合で使用されるUHMWPEの摩擦および研磨磨耗の低減に関してユニークな処理方法を開示している。該方法は、少数の架橋点を導入するために、低線量でのUHMWPEの照射を含む。照射後、分子と結晶の配向を達成するために、溶融材料の一軸圧縮を行う。BMGの材料は、ピン−オン−ディスク(pin−on−disk)磨耗におけるかなりな低下を証明しているが、その低下はUHMWPEの高度に架橋された種類と同様には有意ではない(Okaら, "Wear‐resistant properties of newly improved HHMWPE" Trans,5th World Biomaterials Congress, 520,1996)。
【0023】
米国特許No.6,017,975において、Saumらは、磨耗特性を改善するために、0.5〜10 MRad、より好ましくは1.5〜6 MRadでのUHMWPEの架橋を開示している。彼らは、MRadについて、5MRadに至るまでの磨耗率を測定しているが、磨耗粒子の寸法または数量については観察していない。Saumら出願の米国特許No. 6,242,507、Saumら出願の米国特許No.6,316,158および関連出願を参照、UHMWPEの予備成形物は、パーセント破断伸度を上げるために予備加熱され、そして引き続き照射された。
【0024】
Yamamotoらは、架橋した超高分子量ポリエチレンからの磨耗粒子の磨耗モードと形態の分析を開示した。超高分子量ポリエチレンは、0〜150MRadでのガンマー線照射で架橋された。Yamamotoらは、カップ表面の小繊維と磨耗破片の両方の寸法が、ガンマー線の照射の線量に比例して減少することを提示した(Yamamotoら,Trans. 6th World Biomaterial Congress, 485, 2000)。
【0025】
これらの方法に関して、重要なことは、照射中または照射後の重合体のアニールが、遊離基(照射中に発生された)の再結合および/または一層高度に架橋した材料を形成する原因となる。遊離基の低減またはクエンチは、遊離基の欠如が著しいUHMWPEの老化を妨ぐことができるので極めて重要である。
【0026】
B 化学的架橋
放射線照射架橋と同様に、UHMWPEの化学的架橋は、磨耗抵抗を増すための方法として研究されてきた。化学的架橋は、イオン化照射の崩壊効果を避けながら、架橋の利点を与える。
【0027】
Salvoeyらに帰属する米国特許 No. 6,281,264は、架橋の結果として結晶化度の低下によって効果的である整形外科手術で、磨耗抵抗を向上させる(ヨーロッパ特許出願EP 0722973 A1)ためのUHMWPEの架橋、殊に化学的架橋について教示している。さらに、架橋されたUHMWPEは、寸法を安定化する(すなわち、重合体の予備収縮)ために、引き続いてアニールの段階が必要であると教示されている。化学的架橋反応からの残留物は、しかしながら、定常的な課題であり、かつ長期的な酸化性崩壊に寄与する。
【0028】
それ故、UHMWPEの長期的磨耗特性が改善され、整形外科用インプラントで使用するためのUHMWPEの処理用プロセスを提供することが、本発明の目的である。
【0029】
その場でのインプラントの性能が改善されているような、整形外科用の生体内インプラントにおける使用のために、UHMWPEを処理するプロセスを提供することは、本発明の他の目的である。
【0030】
整形外科用インプラントの支持面関節接合から出る微細な(マイクロメーターおよびサブミクロンの寸法の)磨耗破片が、明らかにインプラントの衛生性の喪失と修正外科手術の必要性をもたらす宿主体内におけるマクロファージ細胞−仲介応答を導き出すことは、刊行された臨床文献中で公知である。一般的に、支持面継ぎ手は、硬質材料―金属またはセラミックに対する軟質材料―超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)−関節接合の組み合せから形成される。この軟―硬の磨耗継ぎ手で主体的に磨耗を蒙るのは、軟質のUHMWPE材料である。UHMWPEの磨耗抵抗における改善が、それ故、関節接合を通して微細な粒子状破片の発生を低減するために期待されている。
【0031】
最終的に衛生性の喪失と修正外科手術の必要性をもたらす細胞仲介カスケードでの微粒子状の磨耗破片の役割を、関連技術は明らかに知っているが、重量による磨耗抵抗での改善と磨耗粒状破片数量の低減との間の1対1の関連性を単に予測するだけである。該技術は、磨耗重量における低減が、磨耗粒子の発生に付随して低減することになるであろうことを、明解にまたは暗黙に想定している。
【0032】
先行技術は、架橋エネルギーの増加が、磨耗重量の減少に対応することを教示している。これは、磨耗粒子の数の減少に対応すると想定される。間違いであるが、これはまた、発生した磨耗破片に対する生物化学的な反応の減少に対応すると想定される。本発明の発明者らは、減少した磨耗重量が、減少した粒子数量と相関する必要はないし、またそれ故に、減少した生物化学的な反応と相関することはないことを発見している。本発明は、架橋エネルギー投入量と磨耗粒子の発生との間の連続性がないことを説明している。
【0033】
該技術は、股関節シミュレーター試験において、吸収された放射線の線量と磨耗破片の発生との間の関連性を確立することに不十分である。5MRad(磨耗重量における顕著な減
少)から15MRad(材料強度を考慮して受入可能な上限)の間の範囲の許容線量の範囲内で、10MRadの線量が磨耗破片の発生の低減に対する要件を満足させることを示している。
【0034】
最近、Greenら(Greenら,2000)は、より小さなUHMWPEの粒子(0.24μm)が、より大きな粒子(0.45および1.71μm)よりも、低い投与量で生体外での骨吸収活性をもたらすことを発見した。この証拠は、より微小な磨耗粒子が、より大きな粒子よりも、顕著なマクロファージ応答を導き出すことを示唆している。それ故、整形外科的支持面継ぎ手で発生したより微小な磨耗破片は、正確にマクロファージ応答を予見するために十分に特徴付けられる必要がある。このことは、股関節シミュレーターで試験された場合、通常のUHMWPEの内張りよりも、より小さな磨耗粒子(0.1より小さい平均直径)を発生することが、Bhambriら( Bhambriら, 1999)によって報告されている架橋UHMWPEのような、新規な支持面材料に関して殊に重要である。
【0035】
磨耗破片に対する細胞応答が、他の要因の間で、粒子数量と寸法に依存することが見出されているので、新規な整形外科手術用の支持面材料の導入には、磨耗粒子のパラメータの正確な説明で支持されなければならない。本発明は、0.05μmより大きくない空隙寸法を有するフィルター膜は、粒子特性の正確な説明と、架橋されたUHMWPEから構成される人工装具の生体内での生物的応答の兆候を保証することを教示する。
【0036】
本発明に先立って、生体内磨耗を通して発生するUHMWPEの磨耗粒子の数量と寸法を予測する正確な方法は、実現していなかった。放射線量を増すことが、生体内での磨耗抵抗の低下に結び付く先行技術での仮定があった。しかしながら、先行技術で使用された方法は、大きい空隙寸法(0.2μmまたはそれ以上)を有するフィルターを使用し、その結果として、多くのより小さい粒子がフィルターを通過し、かつ検出されなかった。結果として、UHMWPEの部品の磨耗から発生した磨耗粒子の大多数が見過ごされ、悪いことに先行技術の分析法では考慮されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明の要約
それ故、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の磨耗により引き起こされる骨溶解の防止および低減に関する方法および医療用インプラントを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の実施態様は、体内で使用するための超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)医療用インプラントからの磨耗粒子を分離するためにUHMWPEを架橋し、UHMWPEをアニールし、UHMWPEを機械加工してインプラントを形成し、インプラントを磨耗試験して磨耗粒子を形成し、磨耗粒子を採取(harvesting)し、かつ0.05μmまたはそれより小さい空隙寸法を有するフィルターを使用した粒子を濾過する工程からなる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)消化され、濾過された脱イオン水および(b)消化され、濾過された膝シミュレーター血清の、10,000倍のSEM顕微鏡写真。
【図2】シミュレーター試験された脛骨装入物に関する、領域当たりの粒子数対測定されたUHMWPE磨耗。
【図3】シミュレーター試験された脛骨装入物に関する、領域(V領域)当たりの平均粒子容量対UHMWPE磨耗。
【図4】血清から回収された粒子、高密度ポリエチレン対照材料および臭化カリウムバックグラウンドのフーリエ変換赤外スペクトル。
【図5】股関節シミュレーター血清から分離され、0.2μm空隙寸法フィルター薄膜上に回収された磨耗破片の走査型電子顕微鏡写真。
【図6】股関節シミュレーター血清から分離され、0.05μm空隙寸法フィルター薄膜上に回収された磨耗破片の走査型電子顕微鏡写真。
【図7】0.2μm空隙寸法フィルター薄膜上に回収された粒子の寸法分布。
【図8】0.05μmフィルター空隙寸法薄膜上に回収された粒子の寸法分布。
【図9】0.2μmフィルターを使用した、100万サイクル当たりに発生した粒子。
【図10】0.05μmフィルターを使用した100万サイクル当たりに発生した粒子。
【図11】血清から抽出されたUHMWPE粒子のSEM顕微鏡写真。
【図12】粒子数量対寸法ヒストグラム。
【図13】粒子容量対寸法ヒストグラム。
【図14】ガンマー線照射され、引き続きアニールされたUHMWPEのトランス−ビニレン指数。
【図15】CoCrおよびジルコニア大腿骨頭に対して試験された140−XLPE内張りに関する、累積磨耗重量対サイクル数。
【図16】CoCrおよびジルコニア大腿骨頭に対して試験された140−XLPE内張りから発生した磨耗粒子の代表的なSEM顕微鏡写真。
【図17】140−XLPE内張り関する試験のサイクル当たりに発生した粒子の平均数量。
【図18】CoCr大腿骨頭に対して試験された、C−PE,147−XLPEおよび140−XLPE内張りに関して、粒子直径の関数としての、サイクル当たりに発生した磨耗粒子の数量。
【図19】ジルコニア大腿骨頭に対して試験された、C−PE,147−XLPEおよび140−XLPE内張りに関して、粒子直径の関数としての、サイクル当たりに発生した磨耗粒子の数量。
【図20】平滑なCoCr(A),平滑なジルコニア(B),および粗面化CoCr(C)大腿骨頭に対して、関節接合されたC‐PE内張りから発生した磨耗粒子のSEM顕微鏡写真。
【図21】平滑なCoCr(A),平滑なジルコニア(B),および粗面化CoCr(C)大腿骨頭に対して、関節接合された10‐XLPE内張り発生した磨耗粒子のSEM顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0040】
他の実施態様においては、フィルターは、0.04μmまたはそれ以下の、0.03μmまたはそれ以下の、0.02μmまたはそれ以下の、あるいは0.01μmまたはそれ以下の空隙寸法を有している。ある実施様態では、フィルターは、約0.19μm、約0.18μm、約0.17μm、約0.16μm、約0.15μm、約0.14μm 、約0.13μm 、約0.12μm 、約0.11μm 、約0.10μm、約0.09μm、約0.08μm、約0.07μm、または約0.06μmの空隙寸法を含む、0.2μmより小さい空隙寸法を有している。機械加工は、架橋の前に行われる。
架橋は、電磁気放射またはエネルギー性の亜原子を用いて行われる。架橋は、ガンマー線放射、電子線放射、またはX−線放射を用いて行われる。本発明のほかの様態では、架橋は、化学的架橋を用いて行われる。放射線架橋は、5より大きいが15メガRad(MRad)より少ないかまたは等しい線量で、あるいは5より大きいが10メガRad(MRad)より少ないかまたは等しい線量である。
【0041】
アニールは溶融段階で行われる。本発明の更なる様態では、アニールは不活性または周囲環境で行われる。アニールは150℃以下の温度で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明のほかの様態では、アニールは150℃以下でかつ約140℃以上で行われ、架橋は0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
他の様態においては、アニールは147℃で行われる。架橋は0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
【0042】
本発明の他の様態においては、アニールは140℃で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明のほかの様態では、アニールは約141℃で、約142℃で、約143℃で、約144℃で、約145℃で、約146℃で、約147℃で、約148℃で、または約149℃で行われる。
磨耗試験は、関節シミュレーター(joint simulator)上で行われる。関節シミュレーターは、人間の股関節または膝関節を擬態する。
他の実施様態において、本発明は、指、足首、肘、肩、顎または背骨におけるがごとく、人体における他の関節で使用される。磨耗試験はインビボで行い得る。採取は、酸消化、塩基消化または酵素的消化を用いて行われる。インプラントは、約300オングストロームより大きいラメラの厚みを有する重合体構造を有する。
【0043】
本発明の他の実施態様は、低減された磨耗粒子数量を有する、体内で使用するためのUHMWPEの医療用インプラントを製造するための、数量において低減された磨耗粒子が、0.2μmまたはそれ以下の直径を有する、UHMWPEを架橋し、UHMWPEをアニールし、UHMWPEを機械加工してインプラントを形成する工程から構成される方法である。
他の実施態様において、フィルターは、0.05μmまたはそれ以下の、0.04μmまたはそれ以下の、0.03μmまたはそれ以下の、0.02μmまたはそれ以下の、あるいは0.01μmまたはそれ以下の空隙寸法を有する磨耗粒子の数量を測定するために使用された。
ある実施様態では、フィルターは、約0.19μm、約0.18μm、約0.17μm、約0.16μm、約0.15μm、約0.14μm、約0.13μm、約0.12μm、約0.11μm、約0.10μm、約0.09μm、約0.08μm、約0.07μm、または約0.06μmの空隙寸法を含む、0.2μmより小さい空隙寸法を有している。機械加工は、架橋の前に行われる。
【0044】
架橋は、電磁気放射またはエネルギー性の亜原子粒子を用いて行われる。架橋は、ガンマー線放射、電子線放射、またはX−線放射を用いて行われる。
本発明のほかの様態では、架橋は化学的架橋を用いて行われる。放射線架橋は、5より大きいが15メガRad(MRad)以下の線量で、または5より大きいが10メガRad(MRad)以下の線量である。アニールは溶融段階で行われる。
本発明の更なる様態では、アニールは不活性または周囲環境で行われる。アニールは150℃以下で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明のほかの様態では、アニールは150℃以下でかつ約140℃以上で行われ、架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
【0045】
他の様態において、アニールは147℃で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明の他の様態において、アニールは140℃で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス‐ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明のほかの様態では、アニールは、約141℃で、約142℃で、約143℃で、約144℃で、約145℃で、約146℃で、約147℃で、約148℃で、または約149℃で行われる。
磨耗試験は、関節シミュレーター上で起こる。関節シミュレーターは、人間の股関節または膝関節を擬態する。
他の実施様態において、本発明は、指、足首、肘、肩、顎または背骨におけるように、人体における他の関節で使用される。磨耗試験は、インビボで行い得る。採取は、酸消化、塩基消化または酵素的消化を用いて行われる。インプラントは、約300オングストロームより大きいラメラの厚みを有する重合体構造を有する。
【0046】
さらに、本発明の他の実施態様は、体内で使用するためのUHMWPEの医療用インプラントに対するマクロファージ応答を低減するための、UHMWPEについての磨耗粒子の分析の実施、および存在する粒子数量が、0.05μm以下の空隙寸法を有するフィルターを用いて測定された股関節シミュレーターの100万サイクル当たり最低の粒子数を示す線量でのUHMWPEの架橋の工程から構成される方法である。
他の実施態様において、フィルターは、0.04μm以下の、0.03μm以下の、0.02μm以下の、あるいは0.01μm以下の空隙寸法を有している。ある実施様態では、フィルターは、約0.19μm、約0.18μm、約0.17μm、約0.16μm、約0.15μm、約0.14μm、約0.13μm、約0.12μm、約0.11μm、約0.10μm、約0.09μm、約0.08μm、約0.07μm、または約0.06μmの空隙寸法を含む、0.2μmより小さい空隙寸法を有している。
【0047】
さらに、本発明のほかの実施様態は、通常のUHMWPEと対比したときに、磨耗粒子の全容量が低減されかつ磨耗粒子の全数量が低減される、患者に植え込む前にUHMWPEを架橋することから構成される、体内のUHMWPEの医療用インプラントに対するマクロファージ応答を低減するための方法である。架橋は、電磁気放射またはエネルギー性の亜原子を用いて行われる。
本発明の他の様相では、架橋は、ガンマー線放射、電子線放射、またはX−線放射または化学的架橋を用いて行われる。
本発明のほかの様態では、放射線架橋は、5より大きいが15メガRad(MRad)以下の、または5より大きいが10メガRad(MRad)以下の線量である
【0048】
本発明の他の実施態様は、体内で使用するためのUHMWPEの医療用インプラントの骨溶解を低減するために、UHMWPEを架橋し、UHMWPEをアニールし、UHMWPEを機械加工してインプラントを形成し、インプラントを磨耗試験して磨耗粒子を形成し、磨耗粒子を採取し、0.05μm以下の空隙寸法を有するフィルターを使用する粒子を濾過し、形成した磨耗粒子の数量を測定し、かつ100万サイクル当たりに発生する約5×1012より少ない磨耗粒子を有するインプラントを与える架橋に対する架橋線量を選択する工程から構成される方法である。
磨耗粒子は、1.0μm以下の直径、または好ましくは0.2μmより小さい直径を有している。
【0049】
他の実施態様において、フィルターは、0.04μm以下の、0.03μm以下の、0.02μm以下の、あるいは0.01μmまたはそれ以下の空隙寸法を有している。ある実施様態では、フィルターは、約0.19μm、約0.18μm、約0.17μm、約0.16μm、約0.15μm、約0.14μm、約0.13μm、約0.12μm、約0.11μm、約0.10μm、約0.09μm、約0.08μm、約0.07μm、または約0.06μmの空隙寸法を含む、0.2μmより小さい空隙寸法を有している。機械加工は、架橋の前に行われる。
架橋は、電磁気放射またはエネルギー性の亜原子粒子を用いて行われる。架橋は、ガンマー線放射、電子線放射、またはX−線放射を用いて行われる。
本発明のほかの様態では、架橋は化学的架橋を用いて行われる。放射線架橋は、5より大きいが15メガRad(MRad)以下の線量で、または5より大きいが10メガRad(MRad)以下の線量においてである。アニールは溶融段階で行われる。
本発明の更なる様態では、アニールは不活性または周囲環境で行われる。アニールは150℃以下の温度で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
【0050】
本発明のほかの様態では、アニールは、150℃以下でかつ約140℃以上で行われ、架橋は0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
他の様態においては、アニールは147℃で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明の他の様態において、アニールは140℃で行われる。架橋は0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス‐ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明のほかの様態では、アニールは約141℃で、約142℃で、約143℃で、約144℃で、約145℃で、約146℃で、約147℃で、約148℃で、または約149℃で行われる。
【0051】
磨耗試験は、関節シミュレーター上で起こる。関節シミュレーターは人間の股関節または膝関節を真似る。他の実施様態において、本発明は、指、足首、肘、肩、顎または背骨におけるが如く、人体における他の関節で使用される。磨耗試験はインビボで行い得る。採取は、酸消化、塩基消化または酵素的消化を用いて行われる。インプラントは、約300オングストロームより大きいラメラの厚みを有する重合体構造を有する。キャラクタリゼーションは、制限するものではないが、走査電子顕微鏡または自動粒子カウンターを含む、高解像度顕微鏡法による。
【0052】
本発明の他の実施態様は、体内で使用するためのUHMWPEの医療用インプラントの骨溶解を低減するために、UHMWPEを架橋し、UHMWPEをアニールし、UHMWPEを機械加工してインプラントを形成し、インプラントを磨耗試験して磨耗粒子を形成し、磨耗粒子を採取し、0.05μm以下の空隙寸法を有するフィルターを使用して粒子を濾過し、全粒子の表面積または磨耗粒子を測定し、かつ約1.17m2/100万サイクルより小さい全粒子表面積以下を有するインプラントを与える架橋線量を選択する工程から構成される方法である。機械加工は、架橋の前に行われる。
他の実施態様においては、フィルターは0.04μm以下の、0.03μm以下の、0.02μm以下の、あるいは0.01μm以下の空隙寸法を有している。
ある実施様態では、フィルターは、約0.19μm、約0.18μm、約0.17μm、約0.16μm、約0.15μm、約0.14μm、約0.13μm、約0.12μm、約0.11μm、約0.10μm、約0.09μm、約0.08μm、約0.07μm、または約0.06μmの空隙寸法を含む、0.2μmより小さい空隙寸法を有している。
【0053】
さらに、本発明の他の実施態様は、体内で使用するためのUHMWPEの医療用インプラントに対するマクロファージ応答を低減するための、UHMWPEの架橋、宿主内での模擬的使用、および通常のUHMWPEに比べたときの、0.2μmより小さい直径を有する磨耗粒子の数量が低減している、0.05μmの空隙寸法を有するフィルターを使用する磨耗粒子のための血清試験の工程から構成される方法である。
他の実施態様においては、フィルターは、0.04μm以下の、0.03μm以下の、0.02μm以下の、あるいは0.01μm以下の空隙寸法を有している。
ある実施様態では、フィルターは、約0.19μm、約0.18μm、約0.17μm、約0.16μm、約0.15μm、約0.14μm、約0.13μm、約0.12μm、約0.11μm、約0.10μm、約0.09μm、約0.08μm、約0.07μm、または約0.06μmの空隙寸法を含む、0.2μmより小さい空隙寸法を有している。機械加工は架橋の前に行われる。
【0054】
架橋は、電磁気放射またはエネルギー性の亜原子粒子を用いて行われる。架橋は、ガンマー線放射、電子線放射、またはX−線放射を用いて行われる。
本発明のほかの様態では、架橋は化学的架橋を用いて行われる。架橋は、5より大きいが15メガRad(MRad)以下の線量で、または5より大きいが10メガRad(MRad)以下の線量
においてである。アニール段階は150℃以下の温度で行われる。
本発明のほかの様態では、アニールは、約141℃で、約142℃で、約143℃で、約144℃で、約145℃で、約146℃で、約147℃で、約148℃で、または約149℃で行われる。
磨耗試験は関節シミュレーター上で行われる。関節シミュレーターは、人間の股関節または膝関節を擬態する。他の実施様態において、本発明は、指、足首、肘、肩、顎または背骨におけるように、人体における他の関節で使用される。
【0055】
さらに、本発明の他の実施態様は、磨耗抵抗に関する試験で、百万サイクル当たり5×1012より少ない粒子数のゆえに、通常のUHMWPEに比べて、低減した骨溶解(マクロ
ファージ応答)を示す、体内で使用するための架橋されたUHMWPEの医療用インプラントである。
【0056】
本発明の他の実施態様は、UHMWPEを架橋し、UHMWPEをアニールし、UHMWPEを機械加工してインプラントを形成し、インプラントを磨耗試験して磨耗粒子を形成し、磨耗粒子を採取し、0.05μm以下の空隙寸法を有するフィルターを使用して粒子を濾過し、形成した磨耗粒子の数量を測定し、かつ100万サイクル当たりに発生する約5×1012より少ない磨耗粒子を有するインプラントを与える、架橋に対する架橋線量を選択する工程によって発生される、粒子の低減された磨耗粒子数量を有する、体内で使用するためのUHMWPEの医療用インプラントである。0.2μmより小さい直径を有している磨耗粒子が発生し、数量において低減される。
他の実施態様においては、フィルターは、0.04μm以下の、0.03μm以下の、0.02μm以下の、あるいは0.01μm以下の空隙寸法を有している。機械加工は、架橋の前に行われる。
【0057】
架橋は、電磁気放射またはエネルギー性の亜原子を用いて行われる。架橋は、ガンマー線放射、電子線放射、またはX−線放射を用いて行われる。
本発明のほかの様態では、架橋は化学的架橋を用いて行われる。放射線による架橋は、5より大きいが15メガRad(MRad)以下の線量で、または5より大きいが10メガRad(MRad)以下の線量においてである。アニールは溶融段階で行われる。
本発明の更なる様態では、アニールは不活性または周囲環境で行われる。アニールは150℃以下の温度で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明のほかの様態では、アニールは150℃以下でかつ約140℃以上で行われ、架橋は0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
他の様態においては、アニールは147℃で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス‐ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
【0058】
本発明の他の様態において、アニールは140℃で行われる。架橋は、0.10以上、または約0.15より大きくかつ約0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である。
本発明のほかの様態では、アニールは約141℃で、約142℃で、約143℃で、約144℃で、約145℃で、約146℃で、約147℃で、約148℃で、または約149℃で行われる。
磨耗試験は、関節シミュレーター上で行いうる。関節シミュレーターは人間の股関節または膝関節を擬態する。他の実施様態において、本発明は、指、足首、肘、肩、顎または背骨におけるように、人体における他の関節で使用される。磨耗試験は、インビボで行いうる。採取は、酸消化、塩基消化または酵素的消化を用いて行われる。インプラントは、約300オングストロームより大きいラメラの厚みを有する重合体構造を有する。
本発明のほかの様態では、キャラクタリゼーションは、高解像度顕微鏡法または自動粒子カウンターによる。本発明の更なる様態では、キャラクタリゼーションは、走査電子顕微鏡または自動粒子カウンターによる。
【0059】
本発明の一つの実施様態は、磨耗の百万サイクル当たりに発生する約5×1012より少な
い磨耗粒子を発生する、架橋されたUHMWPEから構成される支持面表面、およびセラミックから構成される対向支持面とから構成される、全関節人工装置を与える。支持面表面と対向支持面表面は、直接関節接合され、関節接合の結果、磨耗粒子を発生する。セラミックの対向支持面表面は、ジルコニアから構成される。
本発明の磨耗粒子分析は、人工の全関節装置の生体内での磨耗を予見し、かつ支持面表面がそこで与えられる架橋線量を示唆する。本発明の人工関節装置は、制限するためではないが、股関節、膝、指、足首、肘、肩、顎または背骨における関節を含む。
【0060】
本明細書で使用された“a”または“an”は、一つまたはそれ以上を意味する。本請求項(複数)で使用された言語“構成される”を用いて接続詞中で使用された場合、言語“a”または“an”は、一つよりは、一つまたはそれ以上を意味する。本明細書で使用された、“他の”は、少なくとも第二のまたはそれ以上を意味する。
【0061】
本発明の、他の目的、様態および利点は、次の詳細な説明から明確になる。しかしながら、本発明の精神と有効範囲内での各種の変更や修飾が、本詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明と具体的実施例は、本発明の好ましい実施様態を示唆する上に、説明方法としてだけ与えられることは了解されるべきである。
【0062】
図面の簡単な要約
次の図面は、本明細書の部分を形成し、かつ本発明のある様相をさらに証明するために含まれている。本発明は、個々に提示された具体的な実施様態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の一つまたはそれ以上を参照することで一層良く理解される。
【0063】
図1、(a)消化され、濾過された脱イオン水および(b)消化され、濾過された膝シミュレーター血清の、10,000倍のSEM顕微鏡写真。
図2、シミュレーター試験された脛骨装入物に関する、領域当たりの粒子数対測定されたUHMWPE磨耗。
図3、シミュレーター試験された脛骨装入物に関する、領域(V領域)当たりの平均粒子容量対UHMWPE磨耗。
図4、血清から回収された粒子、高密度ポリエチレン対照材料および臭化カリウムバックグラウンドのフーリエ変換赤外スペクトル。
図5、股関節シミュレーター血清から分離され、0.2μm空隙寸法フィルター薄膜上に
回収された磨耗破片の走査型電子顕微鏡写真。
図6、股関節シミュレーター血清から分離され、0.05μm空隙寸法フィルター薄膜上に回収された磨耗破片の走査型電子顕微鏡写真。
図7、0.2μm空隙寸法フィルター薄膜上に回収された粒子の寸法分布。
図8、0.05μmフィルター空隙寸法薄膜上に回収された粒子の寸法分布。
図9、0.2μmフィルターを使用した、100万サイクル当たりに発生した粒子。
図10、0.05μmフィルターを使用した100万サイクル当たりに発生した粒子。
【0064】
図11、血清から抽出されたUHMWPE粒子のSEM顕微鏡写真。
図12、粒子数量対寸法ヒストグラム。
図13、粒子容量対寸法ヒストグラム。
図14、ガンマー線照射され、引き続きアニールされたUHMWPEのトランス−ビニレン指数。
図15、CoCrおよびジルコニア大腿骨頭に対して試験された140−XLPE内張りに関する、累積磨耗重量対サイクル数。
図16、CoCrおよびジルコニア大腿骨頭に対して試験された140−XLPE内張りから発生した磨耗粒子の代表的なSEM顕微鏡写真。
図17、140−XLPE内張り関する試験のサイクル当たりに発生した粒子の平均数量。
図18、CoCr大腿骨頭に対して試験された、C−PE,147−XLPEおよび140−XLPE内張りに関して、粒子直径の関数としての、サイクル当たりに発生した磨耗粒子の数量。
図19、ジルコニア大腿骨頭に対して試験された、C−PE,147−XLPEおよび140−XLPE内張りに関して、粒子直径の関数としての、サイクル当たりに発生した磨耗粒子の数量。
図20、平滑なCoCr(A),平滑なジルコニア(B),および粗面化CoCr(C)大腿骨頭に対して、関節接合されたC‐PE内張りから発生した磨耗粒子のSEM顕微鏡写真。
図21、平滑なCoCr(A),平滑なジルコニア(B),および粗面化CoCr(C)大腿骨頭に対して、関節接合された10‐XLPE内張り発生した磨耗粒子のSEM顕微鏡写真。
【0065】
発明の詳細な説明
定義
ここで使用されたアニールは、UHMWPEのような、試料を加熱し、次に試料を冷却させることに関する。例えば、ガンマー線放射による架橋中または後の試料の熱アニールは、遊離基(ガンマー線放射を通して発生された)の再結合および/またはより高度に架橋した材料の形成を引き起こす。
【0066】
ここで使用された磨耗粒子のキャラクタリゼーションは、磨耗粒子の寸法、形状、数量、および濃度を測定することに関する。走査型電子顕微鏡または、自動粒子カウンターのような、顕微鏡的方法の使用を含む、それらに制限されるものではない。
ここで使用された低減または増加は、通常の(架橋されてない)ポリエチレンにおける変数と比べた変数の低減または増加に関する。
ここで使用された線量は、UHMWPEのような、試料により吸収された放射の量に関する。
【0067】
ここで使用された重量(gravimetric)は、重量損失の測定に関する。
ここで使用されたインビボには、被検者、好ましくは人間被検者の体内で起こる活性に関する。
【0068】
ここで使用されたラメラの厚みは、交互の非結晶と結晶の領域の層の深さである。ラメラ厚み(l)は、次式を使用する重合体中の想定されたラメラ構造の計算された厚みである。
l=(2・σe・TmO)/(ΔH・(TmO‐Tm)・ρ)
式中、σeはポリエチレンのエンドフリー表面エネルギー(2.22×10‐6cal/cm2)であり、ΔHはポリエチレン結晶の融解熱(69.2cal/g)であり、ρは結晶領域の密度(1.005g/cm3)であり、TmOは完全なポリエチレン結晶の融点(418.15K)である。
【0069】
ここで使用されたマクロファージ応答は、インプラントの骨溶解に結び付く逆反応に関する。
ここで使用された医療用インプラントは、人体用の合成置換装置およびそれらの全ての部品に関する。
ここで使用されたメガRad(MRad)は、放射によって加工された材料の単位質量当たりの吸収されたエネルギーに関する測定単位(吸収線量)に関する。放射線量は、±10%の誤差内である。1メガRadは、10キロGray(kGy)に相当する。ここで使用された用語“放射”は、用語“照射”と互換性をもって使用される。
【0070】
骨溶解は、ここで使用された如く、骨の再吸収に関する。
トランス−ビニレン指数(TYI)は、ここで使用された如く、低線量レベルでポリエチレンに関して吸収された放射線量と直線関係であることを示している、トランス‐ビニレン単位(TVU)の濃度に基づいている。TVUの濃度および、それ故TVIは、UHMWPE中の架橋レベルを測定するために使用できる。それは、UHMWPE中の架橋を通して受けた絶対線量レベルを測定するために使用できる。TVIは、965cm-1でのトランス−ビニレンの振動下の面積を1900cm-1下のそれと正規化することによって計算される。
【0071】
超高分子量ポリエチレンは、ここで使用された如く、175万より大きい分子量を有するポリエチレンに関する。
磨耗破片は、ここで使用された如く、支持面部品の関節接合、殊に支持面表面と対向支持面表面から発生する粒子に関係し、用語 “磨耗粒子”および“粒子状破片”と互換性をもって使用される。
【0072】
ここで使用された磨耗抵抗は、関節接合による材料中の物理変化に抵抗する性質に関する。
ここで使用された磨耗試験は、関節をなす関節部品(articulating joint components)、磨耗試験は水、骨液、またはいずれかの潤滑液中での試験を含む。
【0073】
架橋した超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)とインプラントは、人体における関節の部品のような、人体の各種の部分用の人工装具として有用である。例えば、股関節において、インプラントの部品は、人工装具の寛骨臼カップ(上記で例示したような)、またはカップの挿入物または内張り、または筒耳支持面の部品(例えば、組み立て頭および幹)であることができる。膝関節において、それらは、人工の膝関節のデザインに依存するが、人工の脛骨プラトウー(大腿骨―脛骨関節接合)、膝蓋骨ボタン(膝蓋骨‐大腿骨関節接合)、および筒耳または他の支持面部品であることができる。
【0074】
例えば、半月板支持面型の膝骨において、UHMWPE部品の上面と下面の両方が、表面架橋されていてもよい。すなわち、金属またはセラミックの表面に対して関節接合するこれらの表面。足首の関節において、それらは人工装具の踵骨表面(膝蓋骨−踵骨関節接合)および他の支持面部品であることができる。肘関節において、それらは橈骨−上腕骨関節、尺骨−上腕骨関節、および他の支持面部品であることができる。肩の関節において、それらは肩関節−上腕骨関節接合、および他の支持面部品において使用され得る。背骨においては、それらは椎間板の置換および面関節の置換において使用することができる。それらは又、側頭−下顎骨関節(顎)および指関節中に仕立てることができる。
【0075】
上記は、実施例のためであり、制限されることを意味するものではない。本出願は、しばしば、UHMWPEとインプラントの例として、それぞれUHMWPEと寛骨臼カップインプラントを使用する。しかしながら、本発明は、PE全般とインプラント全般に応用できることが理解されるべきである。
【0076】
骨溶解は、股関節全置換(THR)において、共通の長期的な厄介な問題(Harris,1995)であり、また超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)寛骨臼内張りから発生した磨耗破片に結び付いていた(Amstutzら, 1992; Schmalzriedら, 1992; Willertら,1990 ;および Goldringら, 1983)。
磨耗破片に対する前立腺周囲炎組織の応答が、十分に理解されていないのに、粒子状磨耗破片に対するマクロファージ応答が骨溶解における重要な因子であると信じられている(Goodmanら, 1998; Jastyら, 1994; Chibaら, 1994; および Jiranekら, 1993)。
【0077】
磨耗破片に対する細胞の応答は、他の因子の間で、粒子の数量、形状、寸法、表面積および材料の化学的特性に依存することが十分に確立されている(Greenら, 1998; Gonzalezら,1994;および Shanbhagら,1994)。架橋されたUHMWPEのような、新規の支持面材料の導入は、それ故、発生した磨耗破片の正確な数量、寸法、分布、表面積および容積の記述で支持されなければならない。
【0078】
各種の技法が、前立腺周囲炎組織および関節シミュレーター血清からUHMWPE磨耗破片を分離するために開発されている。通常の手順は、0.2μmの空隙寸法を有するフィルター薄膜を通して消化物の濾過を伴う、強塩基または酸のいずれかにおける細胞組織または血清試料の消化を含む(McKellopら, 1995; Campbellら, 1995;および Niedzwieckiら, 1999)。走査型電子顕微鏡(SEM)が、フィルター薄膜上に付着した粒子の数量、寸法および形状を測定するために使用される。
【0079】
THR患者の前立腺周囲炎組織および股関節シミュレーター血清から回収された粒子の以前の分析は、粒子寸法分布のモードがフィルター薄膜の空隙寸法(0.2μm)であるかまたはそれ以下であったことを示唆していた(McKellopら, 1995)。このようにして、0.2μm以下の直径を有する粒子のかなりの数量が、フィルターの空隙を通過し、かつ分析を通して検出されていなかった。それ故に、THR支持面部品によって発生したUHMWPEの粒子の数量が、0.2μmのフィルター薄膜を通過する破片の濾過を含む粒子分離技法によって、過小評価されていることが仮説として提案された。
【0080】
本発明において、股関節シミュレーター試験は、3組の材料、(1)通常の(非照射の)UHMWPE(C−PE)、(2)5MRadガンマー線照射架橋されたUHMWPE(5−XLPE)、および(3)10MRadガンマー線照射架橋されたUHMWPE(10−XLPE)で行われた。刊行された文献により、5−XLPEと10−XLPEは、共に増加した照射線量による増加した改善度により、C−PEに比べて強化された磨耗抵抗を示すことが期待される。
重量分析は、これまでは1500万サイクル試験の耐性をも保持する傾向が期待できることを示した。しかしながら、粒子状破片について分析した場合、5−XLPE材料が、およそ500万サイクルでC−PEより多い磨耗破片を発生し始めることが発見された。他方、10−XLPE材料は、試験の全期間より少ない粒子を示した。架橋は、粒子の寸法に影響する。全ての寸法における粒子の全容量と粒子の数量を低減することが理想である。
【0081】
UHMWPEの架橋
人工関節における磨耗プロセスは、多方向プロセスである。架橋は高線量の放射線を用いて達成される。酸素の欠損下で、架橋はUHMWPEに対するイオン化放射の支配的な効果である(Roseら, 1984, Streicherら, 1988)。UHMWPEの架橋は、個々の重合体鎖のコールドフロー(クリープ)を妨げる重合体鎖間の共有結合を形成する。UHMWPEを架橋することは、重合体鎖が多方向の動きに対してより安定である網目構造を形成するので、より低い磨耗率を与える。150℃より高い温度で照射された場合、永久的な分子間の均質な網目構造が形成される。
【0082】
放射線に対してUHMWPEを暴露することは、ポリエチレン鎖内で炭素‐炭素と炭素‐水素結合の開裂を起こす。そのような放射線は、エネルギー性の亜原子原子、ガンマー線、電子線またはX−線照射を含むが、制限するものではない。ガンマー線照射は、重合体鎖を切断し、かつ大気または滑液中の酸素と反応する遊離基を生成する。この酸化反応は、更なる分子鎖切断を起こし、重合体の表面に近いところに脆化した領域を形成する(Buchananら,1998,Materials Congress 1998, p148 )。放射線架橋の段階を通して形成される遊離基の酸化は、分子量の低下および、その結果としての磨耗抵抗を含む物理的特性の変化をもたらす。
【0083】
放射線架橋の段階を通した遊離基の形成は、主としてアルキルおよびアリル型の遊離基の組み合わせを含む。しかしながら、酸素の存在下では、パーオキシ基の少量も形成される。パーオキシ基の形成を低減するために、プロセスは、真空下またはアルゴンのような、不活性気体の存在中で実行される。遊離基は、抗酸化剤の添加かまたは再融解を通してかのいずれかを通して除去される。再融解は、インプラントが再加熱されて分子鎖の移動度を増加し、そのために遊離基が再結合または停止できるプロセスである。全体的な工業プロセスは、再融解される重合体シートを照射することである。再融解したシートのインプラントを機械加工し、その後殺菌する。
【0084】
エネルギー線(ガンマー線、電子線、X線等)を用いる照射を含む多くの手段によるか、または試料中での遊離基の形成を開始する化学的な架橋化合物のような化学的手段によるUHMWPEの架橋が、材料の摩耗抵抗を向上することが先行技術で公知である。架橋されたUHMWPEの臨床的な利用が、1970年代に初めて報告されたにもかかわらず、解剖学的関節(股関節および膝関節)シミュレーター試験が、架橋されたUHMWPEの強化された磨耗抵抗を証明するために行われることは、1990年代までなかった。現存する文献と技術は、UHMWPEが各種の程度で架橋することが出来、かつ関節シミュレーター試験での磨耗抵抗の改善を証明する方法を教えている。
【0085】
本発明は、全ての形態の架橋、全ての温度での架橋、不活性環境の存在または不存在下、および遊離基スカベンジャーの存在または不存在下での架橋を含む。架橋は、インプラントを形成(機械加工)する前または後で行い得る。
【0086】
マクロファージ応答および骨溶解
後期のインプラント欠損の主たる原因は、股関節置換のインプラント誘因骨溶解と殺菌性の喪失である。骨溶解は、この場合、ポリエチレン磨耗破片の反応に起因する骨の再吸収である。インプラントにより発生される磨耗破片の大部分は、寸法でサブミクロンであると考えられている。修正手術で検査された患者の組織は、ポリエチレン粒子と結び付くマクロファージおよび多核巨細胞(特化されたマクロファージとみなすことができる破骨細胞)を含む前立腺周囲炎の擬似―薄膜を示す。
【0087】
磨耗破片は、マクロファージを刺激して、インプラントの殺菌性の喪失を起こす骨溶解の媒介物を生成する。マクロファージによって生成した媒介物は、IL-1β、IL-6、TNFα、GM-CSF、PGE2およびコラゲナーゼのような酵素を含む。IL-6は破骨細胞の形成を刺激し、その結果、骨の再吸収を刺激する。IL-1βは、前駆細胞の破骨細胞への増殖と成熟を刺激する。IL-1βは、また破骨細胞の多核骨再吸収巨細胞への成熟の原因となる骨芽細胞を刺激する。TNFαは、この状況では、IL-1βと多くの同じ機能をもつ(Greenら, 1998)。破骨細胞のかき乱された境界は、蛋白質とミネラルを溶解する酸と加水分解酵素を放出する。
【0088】
骨芽細胞は、蛋白質を合成することによって骨を創生する。骨芽細胞は、破骨細胞の活性化を促進するコラゲナーゼを分泌する。骨芽細胞は、骨の成長と分化を制御するTGFβ
、IGF1、IGF2、PDGF、IL1、FGF、TNFαを生成する(Pathology, Rubin,第2版. 1994; Essential Medical Physiology, Johnson, 1992)。
【0089】
ポリエチレン磨耗破片の生物学的活性は、存在する粒子の寸法と数量に依存する(Matthewsら, 2000,Biomaterials, p.2033)。Matthewsらは、寸法0.24、0.45および1.7μmの粒子が最も生物学的に活性であることを発見した。この発見は、磨耗破片が1.0、1.0、0.4および0.1μmの空隙寸法のフィルターで濾過された細胞研究に基づいている。磨耗粒子は、供与体マクロファージと共に共同培養され、そして媒介物の生成が測定された。磨耗破片の比生物学的活性度(SBA)は、次式を用いて計算された。
【0090】
SBA=[B(r)×C(c)]0.1-1.0μm+[B(r)×C(c)]1-10μm+[B(r)×C(c)]10-100μm
式中、B(r)は、所定の粒子サイズの生物化学的活性関数であり、C(c)は、所定の粒子サイズに対する磨耗破片の容量濃度である。機能的生物学的活性度は、磨耗容量とSBAとの積である(Fisherら,2000 46th ORS Meeting )。
【0091】
磨耗分析の方法
整形外科の支持面部品の関節シミュレーターの磨耗試験(Joint Simulator wear testing)は、インビボでの磨耗機構を再現する。臨床的な磨耗機構の再現を検証する一般的な手段は、実験室の磨耗破片と回収された標本を比較することである(McKellopら, 1995)。UHMWPE破片は、Campbellらによって開発された方法を用いて、回収された前立腺周囲炎細胞とシミュレーターで試験された血清の両方から分離される(Campbellら, 1995)。この広く受け入れられた方法は、UHMWPE破片を分離するために、血清の塩基消化、遠心分離および密度勾配を使用する。
【0092】
しかしながら、該プロセスは労働集約的でありかつ高価である。シミュレーターで試験された血清からUHMWPE破片を分離するための代替方法は、粒子を分離するために、酸処理と真空濾過を含む(Scottら, 2000)。回収された磨耗破片は標本にされ、金を用いてスパッタリング塗布され、そして走査型電子顕微鏡法(SEM)で分析される。SEMは、粒子の数量、寸法および形状を測定するために使用される。破片のFTIRスペクトルは、磨耗破片の同一性を測定するために、UHMWPEのような対照のそれと比較される。
【0093】
重量測定法
磨耗抵抗は、重量測定法によって、試験持続時間の固定された間隔でUHMWPE部品の重量損失を計量することによって、定義と測定がなされる。重量測定法は、試験前から試験後までの重量変化を与える。磨耗重量率はミリグラム/シミュレーターの100万サイクルで定義される。それは磨耗表面から発生した破片の全質量を測定する。それは磨耗粒子の寸法や数量に関する如何なる情報も与えない。
【0094】
この方法は材料が体液を吸収する場合正確ではない。UHMWPEは体液を吸収しない。磨耗における重量値の低減は、粒子発生における低減に変換されることが以前から信じられていた。かくして、重量損失における減少は、減少した磨耗と減少した粒子特性と相関関係があると仮定されていた。それ故、骨溶解でも同様に減少があろうと期待されていた。磨耗質量合計と微粒子数量との間には予測可能な関係はない。このことは、次の等式で説明される。
【数1】

【0095】
式中、Nは粒子の数量である。例えば、もし架橋が個々の粒子の平均容量を低下させるなら、そのときは、より多数の粒子数量が合計磨耗の単位容量当たりに発生する。一方、もし架橋が平均粒子容量を増加させるなら、そのときは合計磨耗当たりより少ない粒子が存在する。かくして、粒子寸法は、合計磨耗の単位容量当たりに発生される粒子数量を決定する。重量測定法は、寸法、容量および数量のような、個々の粒子の因子を評価することができない。かくして、重量測定技法は限定的であり、これらの個々の粒子特性を測定および評価する手段を与えない。
【0096】
関節シミュレーター
関節シミュレーターは、股関節シミュレーター、膝関節シミュレーターおよびその他のシミュレーターを含む。股関節シミュレーターの一つの使用で、UHMWPE寛骨臼内張りはCoCrMo頭に対して関節接合される。市販の寛骨臼内張りは、ラム押出されたUHMWPEから機械加工され、エチレンオキサイドを使用して消毒される。内張りは、Ti−6Al−4V寛骨臼殻中に装入され、32mmの直径のCoCr大腿骨頭に対して試験される。
【0097】
支持面継手を、12局股関節シミュレーターで、生理学的負荷と作動条件(Bergmannら, 1993 ; JohnstonおよびSchmidt, 1969;ならびにISO/CD 14242-1.2)の下で試験した。試験持続時間は、ヒト宿主における通常の実用の1〜30年間に相当する1Hzのサイクル周波数で、100万から3000万サイクル(Mサイクル)の間の範囲である。試験潤滑剤は、0.2%のナトリウムアジドと20ミリモルのEDTAを含む牛の血清である。試験血清をおよそ500,000サイクル毎に交換した。
【実施例】
【0098】
次の実施例は、本発明の好ましい実施様態を明示することを含む。本発明の実施において、うまく機能するために本発明者によって発見された技法を理解し、描写し、その結果、その実施に関する好ましい様態を構築すると考えられる技法を実施例で開示することを、当業者では正しく評価すべきである。
【0099】
しかしながら、当業者は、本発明に照らして、多くの変更が開示され、さらに本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、同一かまたは類似の結果を得る具体的な実施様態においてなされることを正しく評価すべきである。
より具体的には、化学的および生理学的の両方に関連するある種の作用物が、同一かまたは類似の結果が達成される、ここに記述された作用物に置き換えられることは明確である。全てのそのような類似の置換と修飾が、当業者にとって、補足請求項で定義された如く、本発明の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされることは明らかである。
【0100】
実施例1.関節シミュレーター血清からUHMWPE磨耗破片を分離するための酸消化法の検証
粒子分離法を次の試料に対して行った。(1)脱イオン水、(2)未検査の仔牛血清、(3)37℃で1週間、シリコン管を通して汲み出された脱イオン水、および(4)AMTI膝シミュレーター上の四つの別々の局からのシミュレーターで試験された血清。
膝シミュレーターからの血清は、約500,000サイクルで回収され、1〜20mgの間のUHMWPE破片(UHMWPE脛骨装入物の重量損失によって測定されたような)を含む。10mlの各試料を40mlの37%HClに添加した。磁気式攪拌棒を溶液に入れ、350rpm、50℃で約1時間攪拌した。このときに1mlの溶液を除去し、100mlのメタノールに添加した。この溶液を0.2μm空隙寸法のポリカーボネートフィルター膜を通して濾過した。該フィルター膜は、金属顕微鏡スタップに載置し、金でスパッタリング塗布され、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて画像化した。画像分析を、汚染水準(“対照”サンプル1〜3)を測定し、かつ粒子の計量密度(シミュレーターで試験された血清)で観察された磨耗を補正するために、10,000Xで行った。シミュレーターで試験された血清のそれぞれに関して、最低500粒子と20視野(field)を分析し、粒子計量密度を、視野当たりの平均粒子数量で表現した。加えるに、全ての粒子を描画するために必要な視野数で割り算することで視野当たりの平均粒子容量(V視野)を、試料中の分析された粒子の全容量を計算した。それぞれの粒子の容積を次の等式を用いて推定した。
V粒子=4/3π(ECR)3
式中、ECRは測定された形態と同じ面積を有する円の半径である。
【0101】
消化された脱イオン水の試料が通過したフィルター膜の代表的なSEM画像は、図1aに示した。10,000Xでフィルター膜上に粒子は観察されなかったが、このことは操作手順で使用された試薬内での汚染がしないことを示唆している。未試験の血清が通過したフィルター膜も同様の外観を有し、これは血清中の蛋白質がHClで完全に消化されたことを示唆している。シリコン管を通して汲まれた水試料の濾過も、粒子の不在の結果であった。これは、血清が関節シミュレーター内で循環される管が、シリコン破片の問題にならない水準で放出することを示唆している。膝関節シミュレーターからの消化された血清は、2つの支配的なマクロファージ、スフェロイドおよび小繊維から構成される粒状物質を示す(図1b).
【0102】
定性的な画像分析は、シミュレーターで試験された血清試料に関して、視野当たりの粒子数量が、測定されたUHMWPE磨耗と、強く(R2=0.997)相関関係があることを明らかにしている。視野当たりの平均粒子容積もまた、測定されたUHMWPE磨耗と、強く(R2=0.983)相関関係がある(図3)。
【0103】
実施例2.股関節シミュレーター標本とパラメーター
市販の寛骨臼内張りを、ラム押し出しGUR1050UHMWPE(Poly-Hi Solidur,Ft. Wayne,IN)から機械加工し、エチレンオキサイドを用いて殺菌した。該内張りを、Ti−6Al−4V(ISO5832)寛骨臼殻中に装入し、32mmCoCr大腿骨頭(ASTMF799)に対して試験した。該支持面継ぎ手(n=3)を、12局のAMTI(Watertown, MA)股関節シミュレーター上で、生理学的負荷および動作条件(Bergmannら, 1003; JohnstonおよびSchmidt, 1969;ならびにISO/CD 1424201.2)下で試験した。試験潤滑剤は、0.2%のシアンナトリムと20ミリモルのEDTAを含むウシの血清(Hyclone Laboratories, Logan,UT)であった。試験血清を約500,000サイクル毎に置き換えた。
【0104】
実施例3.UHMWPE粒子の分離
8つの血清試料を1200万サイクル試験を通して収集した。各血清試料の試験間隔(サイクルで)を表1に記した。各資料を攪拌棒を含むエルレンマイヤーフラスコ中に集め、350rpmで一晩中攪拌した。次に10mlの血清を40mlの37%w/v HClに加え、50℃で1時間攪拌した。1mlの消化された溶液を100mlのメタノールに添加し、次に、0.2μmの空隙寸法のポリカーボネートフィルター膜を通して濾過した。反復消化を各血清試料に関して0.05μmの空隙寸法薄膜を通して濾過した。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例4.粒子寸法と数量のキャラクタリゼーション
各フィルター膜を、アルミニウムスタブ上に載せ、金でスパッタリング塗布し、SEM(S360, Leica, Inc., Deerfield, IL)を用いて検査した。画像を10,000Xの倍率で撮り、デジタル画像システム(eXL,II, Oxford Instruments社, England)に移した。最低20の視野をフィルター膜当たりで分析した。粒子直径(Dp)を各粒子の投影面積(A)を基にして計算した。この因子は円形幾何学を基にして、次の如く計算した。
p=2(A/π)1/2 (1)
【0107】
各フィルター膜に関して、視野当たりの平均粒子数(NF)を測定し、試験サイクル当たりに発生した粒子数(Nc)を、次の如く計算した。
c=NF(Aフィルター/A視野)d/c (2)
式中、Aフィルター=フィルター膜の面積=962mm2であり,A視野=視野の面積=9.0×10-5mm2であり,d=希釈比=2500、およびc=試験サイクル数である。
【0108】
フィルター膜のそれぞれの型に関して、異なる消化物からのデータを溜めた。粒子直径のデータを、平均、メジアン、モードおよび標準偏差として提示した。サイクル当たりの粒子数を平均および標準偏差として提示した。平均粒子因子における有意差(ANOVA、α=0.05)を、0.2μmと0.05μmの空隙寸法のフィルター膜上に付着した粒子の間で測定した。Kruskal−Wallis試験を、2つのフィルター膜の間のメジアン粒子における有意差を測定するために使用した。
【0109】
実施例5.粒子分離法の再現性
本研究において使用される酸消化/真空濾過法に関して、測定された磨耗容積(重量法的に測定されて)と全関節シミュレーターから回収された粒子の容積との間で、強い直線関係が立証されている(Scottら, 2000)。0.05μm空隙寸法フィルター膜を通して濾過
された消化に関して、観測者間再現性が、次の各パラメーターに関して10%以内の平均値であることが見出されている。(i)試験サイクル当たりに発生した粒子数、および(ii)平均粒子直径(表2)。
【0110】
【表2】

【0111】
実施例6.粒子の同一性の検証
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を、3つの血清試料からの磨耗破片の同一性を決定するために行った。それぞれの場合で、およそ1mgの粒子をフィルター膜から臭化カリウム円板上に移し、付属の赤外線顕微鏡を用いてFTIR分光法を用いて同定した(FTS165 分光光度計、UMA250顕微鏡, Bio‐Rad Laboratories, Hercules,カナダ)。
血清から分離された粒子のFTIRスペクトルを、市販のHDPE粉末のそれと比較した(Shamrock Technologies Inc., Newark, NJ)。
【0112】
実施例7.人工装具支持面部品から発生した粒子数を過小評価する現在の磨耗粒子手順
UHMWPE内張りを、1200万サイクルに至るまで解剖学的股関節シミュレーター上で、CoCrMo頭に対して関節接合した。血清試料を定期的に蒐集し、検証された酸消化法にかけた(Scottら, 2000)。反復した消化を、0.2μmまたは0.05μmのいずれかの空隙寸法フィルター薄膜を通して真空濾過した。粒子数と寸法分布における相対的な差異を、それぞれの薄膜の空隙寸法に関して測定した。
【0113】
回収した粒子を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)および走査型電子顕微鏡を用いてキャラクタライズした。股関節シミュレーター血清から回収された粒子のFTIRスペクトルは、対照のHDPE材料のそれと類似であり、かつ2917,2850,1470および721cm-1付近に主ピークを有するそれにおいて、UHMWPEと一致した(図4)(Painterら, 1982)。無関係の山と谷は、臭化カリウム円板の山の位置に相当することを見出した。フィルター材料、血清が循環された配管からの破片、または未消化の蛋白質のような、不純物の形跡はみられなかった。
【0114】
SEM分析は、回収された磨耗粒子が両方の型のフィルター膜上で均一に分散していることを明らかにしている(図5および6)。粒子の微小の凝集が観察された。0.2μmおよび0.05μmの空隙寸法フィルター膜の両方の上に付着した磨耗粒子は、大部分はサブミクロンであり、かつ外観で丸い。伸長した小繊維(長さで、3〜10μm)は、両型のフィルター膜上にときどき観察された。8つ全部の血清試料から溜められたデータに関して、0.2μmおよび0.05μmの空隙寸法フィルター上で画像化された粒子の全数は、それぞれ8272と20197である。0.2μmおよび0.05μmの空隙寸法フィルター上に付着した粒子の寸法分布を、それぞれ図7および8で示した。0.2μmおよび0.05μmの空隙寸法フィルター膜上で回収された磨耗粒子は、一様な様態で空間分布していた。粒子の凝集は微小であった。個々の粒子は、明らかに他の粒子から見分けがつき、かつフィルター薄膜上に均質に分布しているので、サンプリング誤差は最低であり、より正確な粒子計数および寸法分布の測定につながっている。
【0115】
0.2μmの空隙寸法フィルター上で分離された粒子に関しては、寸法分布の平均値(0.23μm)が特定された薄膜の空隙寸法より大きく、そこではメジアン(0.19μm)が特定された空隙寸法より小さい。分布の山(モード)は、0.2μmの空隙寸法より十分小さく、0.13μmであった。検出された全粒子数量の半分以上(52.2%)が、0.2μmのフィルターの空隙寸法より小さい直径を有していた。0.05μmの空隙寸法フィルター上に付着した粒子に関して、平均(0.19μm)およびメジアン平均(0.18μm)直径は、特定された薄膜の空隙寸法より十分に大きかった。粒子の大多数が均一に0.08〜0.25μmの間に分布しているので、単一の支配的な山は寸法分布で発生しなかった。検出された全粒子のたった2.8パーセントが、0.05μmの薄膜の空隙寸法より小さい直径を有していた。0.05μmの薄膜の上に付着した粒子の平均およびメジアン直径は、0.2μmの空隙寸法のフィルター上の粒子のそれよりかなり小さかった(p<0.001)。
【0116】
0.05μmの空隙寸法フィルター膜は、0.2μmの薄膜より多数の磨耗粒子を含んでいる(表1)。1サイクル当たりに発生した粒子の平均数は、0.05μmの空隙寸法フィルターを通して濾過された血清消化に関して6.4×106±2.2×106であり、0.2μmの空隙寸法薄膜を通して濾過された血清消化に関して2.6×106±0.2×106であった。この差異は、統計的に有意であった(p=0.002)。
0.2μmの空隙寸法薄膜の使用は、通常および5MRad線量の架橋されたUHMWPEの両方に関して、100万サイクル当たりに発生した磨耗粒子の数量を過小評価する原因となる。
【0117】
真空濾過を、消化された股関節シミュレーター血清からUHMWPE磨耗破片を分離するために使用した場合、回収された粒子の数量と分散は、フィルター膜の空隙寸法に強く依存する。磨耗破片の実質的な数量は、0.2μmの空隙寸法薄膜の空隙を通して自由に通過した。0.2μmの空隙寸法フィルターを通して消化された血清の濾過は、より細かい寸法の粒子の数、および結果として表面積と容積を過小評価する。
【0118】
より細かい寸法の粒子のかなりの多数が、0.05μmの空隙寸法フィルターを通して消化された血清を濾過することにより、分離されかつ分析される。完全な消化と濾過の手順は、消化物が0.2μmの空隙寸法フィルター膜を通して濾過された場合、およそ75分を要した。0.05μmの空隙寸法フィルター膜を通した消化物の濾過は、材料と装置のコストを著しく増加させることなく、手順にただの5分間加えるだけである。この操作手順の時間における増加は、股関節シミュレーター血清から回収された粒子数量、および結果として寸法分布が、使用されたフィルター膜の空隙寸法に強く依存した。微細な磨耗粒子が、磨耗破片に対するマクロファージ応答に大いに影響することが発見されている。このことは、新たな整形外科手術の軸材料から発生する磨耗破片を分離しかつキャラクタライズするために、微細な空隙寸法(<0.05μm)フィルター薄膜を使用することの重要性を際立たせる。
【0119】
実施例8.解剖学的股関節シミュレーターで試験された通常および架橋されたUHMWPEの磨耗粒子分析
股関節シミュレーター重量法磨耗で劇的な低下を立証する架橋されたUHMWPEの多くの形態が開発され(McKellopら, 1999;Muratogluら, 1999)、粒子―誘導骨溶解を低下する意図をもって臨床的に使用された。磨耗において重量で測定された低下を、粒子発生における低下へ転換することが一般的に信じられている。重量的な磨耗容積と磨耗粒子の特性(寸法、表面積、および容積)との間の関係は、一つの通常のと架橋されたUHMWPEの二つの変分を比較することで研究された。
【0120】
解剖学的股関節シミュレーター(AMTI, Watertown, MA)試験を、次の材料に対して1,000万サイクルまで行った。(i)通常のUHMWPE(C−PE)、(ii)5MRadで架橋されたUHMWPE(5−XPEまたは、5−XLPE)、および(iii)10MRadで架橋されたUHMWPE(10‐XPEまたは、10−XLPE)。ラム押出しされたGUR1050材料(Poly-Hi Solidur, Ft. Wayne,IN)は、全ての試験に関して出発材料である。
架橋を、5および10MRadのガンマー線照射線量で行い(SteriGenics, Gurnee, IL)、溶融アニール(150℃で2時間)と徐冷に引き継いだ。寛骨臼内張り(32mmID)を棒状の丸太から機械加工し、続いてエチレンオキサイドで殺菌した。5−XPEおよび10‐XPE内張りを、試験の前に人工的に70℃でかつ酸素5気圧で3週間エージした(Sanfordら, 1995)。股関節シミュレーター試験(各群に対して、n=3)を、100%ウシ血清中で、32mmのCoCrMo頭に対して行った。重量測定と血清の置換のために、試験を定期的に中断した。
【0121】
磨耗粒子を、事前に検証された酸消化/真空濾過プロトコルを使って、試験血清から蒐集した(Scottら2000)。0.05μmの空隙寸法フィルター膜上に付着した粒子を、拡大倍率1,000Xおよび20,000Xで、走査型電子顕微鏡の下でキャラクタライズした。最低20の無差別、非重複視野および100粒子は、検出された粒子を各血清試料以内で全粒子母集団の代表であることを確認するために画像化された。各材料に関して、平均粒子直径を、測定し、次の因子を100万サイクル当たりで計算した。(i)粒子の数、(ii)粒子の表面積、(iii)発生した破片の容積。粒子の直径、表面積および容積を、円形幾何学を仮定して計算した。ANOVAとDuncanの複数範囲試験を、材料条件間の発生した破片の平均粒子直径、粒子数、粒子の表面積および容積における有意差(α=0.05)を決定するために使用した。
【0122】
磨耗重量率は、架橋放射線量の増加につれて低下した。C‐PEに関しては、磨耗率は36.9mg/Mサイクルであり、それは5−XPEについては9.0mg/Mサイクルに低下し、さらに10−XPEについては-1.1mg/Mサイクルまで低下した。SEM顕微鏡法を基にすれば、C‐PE粒子は長さ5〜10μmの小繊維を偶に有するが、大部分はミクロン以下の長球であった(図11)。5−XPEと10−XPE粒子は、大部分はミクロン以下の長球であった(図11)。
【0123】
最高の磨耗重量率に加え、C−PE材料は、発生した破片の最も大きな粒子直径、表面積、および容積を示す(全ての組み合わせについて、p<0.05、表3)。粒子の直径および粒子の表面積と容積は、架橋放射線量の増加と共に減少した。5−XPE材料は、結果としてC−PEよりMサイクル当たりで2倍の粒子数となる粒子の最高数を導き出した(表3)。10−XPE材料は、C−PEと比べて、Mサイクル当たりで半分以下の粒子数量以下を導き出した。
【0124】
【表3】

【0125】
架橋放射線量が増加することは、われわれの解剖学的股関節シミュレーターで試験されたように、前の報告書(McKellopら、1999; Muratogluら、1999)と一致したより高い磨耗抵抗性ポリエチレンを得た。粒子の表面積と容積は、放射線量の増加と共に低下した。粒子寸法(直径)もまた、放射線量の増加と共に低下した。異なる粒子寸法の分布のため、磨耗重量と粒子数の間のユニークな関係が、それぞれの試験材料について存在する。結果として、5−XPE材料について磨耗重量の低下は、C−PE材料と比べたとき、粒子数量での低下に変換できない。
【0126】
10−XPE内張りについて、磨耗による質量損失は、試験を通して起こる液の吸収より少ない。結果として、10−XPE内張りは、正味の重量増加を示した。しかしながら、粒子分析は、磨耗粒子の、小さいけれども測定可能な容積が発生したことを示している。それゆえ、磨耗粒子の分析は、高度に架橋したUHMWPEから発生する粒子の容積と数の、より直接的な測定を与え、かつ低摩耗材料について補足的な重量測定に使用してもよい。
【0127】
微粒子状の磨耗破片に対するマクロファージ応答は、骨溶解における重要な因子であると信じられている。細胞応答が、他の因子の間で、粒子の数、寸法、表面積および材料の化学的性質に依存することは十分に確立されている(Shanbhagら、1997; Greenら、1998および Gonzalezら、1996)。粒子の数、寸法および表面積における差異を、通常および架橋したUHMWPEの間で観測した。その結果、これら3つの材料の微粒子形態に対する生物学的な応答は、粒子特性を変えることにより異なるようである。
【0128】
実施例9.UHMWPE粒子に暴露されたマクロファージによる媒介物の製造
マクロファージを、Greenら、1998の方法を用いて分離した。ヒトのマクロファージを、通常のUHMWPE、5MRadで架橋されたUHMWPE、および10MRadで架橋されたUHMWPEと共に、各種濃度で共培養した。粒子を、1%のアガロースに添加し、平板(培養)中に注ぐ。使用された粒子の濃度は、100万サイクルで検出された粒子の量の0、1倍、0.1倍、2倍、5倍、および10倍である。リポポリサッカライドを、実薬対照として使用した。次に、マクロファージを平板(培養)の表面に添加し、37℃で24時間培養した。マクロファージによって生成したIL1-αとTNF-αの量を、それぞれの粒子濃度でELISAにて測定した。IL1-αを対のモノクロナール抗体を用いて検定し、TNF-αを修飾された二重抗体サンドウイッチ技法を用いて測定した。
【0129】
実施例10.通常および架橋されたUHMWPEに関する粒子寸法対粒子数量および容積
架橋されたUHMWPEの多数の形態は、股関節シミュレーター重量法的磨耗での劇的な低下を立証している(McKellopら、1999; Muratoglu ら、1999およびEssnerら、2000)。重量的な技法は、磨耗表面から発生する破片の全質量の測定値を与えるが、個々の粒子に対する情報は得られない。本研究の目的は、股関節シミュレーター試験を通して、発生するUHMWPEの粒子について、数量、寸法分布および容積分布を直接測定することである。1つの通常の架橋されたUHMWPEの2つの種類を、本研究において比較した。
【0130】
解剖学的股関節シミュレーター(AMTI、Watertown、MA)試験を、次の材料で1500万サイクルまで行った。(i)通常のUHMWPE(C−PE)、(ii)5MRadで架橋されたUHMWPE(5−XPE)、および(iii)10MRadで架橋されたUHMWPE(10‐XPE)。ラム押出しされたGUR1050材料(Poly-Hi Solidur, Ft. Wayne,IN)は、全ての試験について開始材料である。架橋を、5および10MRadのガンマー線照射線量で行い(SteriGenics, Gurnee, IL)、ついでアニールおよび徐冷を行った。寛骨臼内張り(32mmID)を棒状の丸太から機械加工し、エチレンオキサイド殺菌した。5−XPEおよび10‐XPE内張りを、試験のために人工的に70℃でかつ酸素5気圧で3週間エージングした(Sanfordら, 1995)。
股関節シミュレーター試験(各群に対して、n=3)を、100%ウシ血清中で32mmのCoCrMo頭に対して行った。重量と血清の置換のために、試験を定期的に中断した。磨耗粒子を、事前に検証された酸消化/真空濾過プロトコルを使って試験血清から蒐集した(Scottら,2000)。0.05μmの空隙寸法フィルター膜上に付着した粒子は、拡大倍率1,000×および20,000×で、走査型電子顕微鏡(SEM)の下でキャラクタライズした。検出された粒子が各血清試料以内で全粒子母集団の代表であることを確認するために、ランダムで、最低20の非重複視野および100粒子を画像化した。
それぞれの検出された粒子について、等価円形直径および球状容積を、粒子の投影面積に基づいて計算した。各材料条件について、試験のサイクル(N)当たりに発生する粒子の平均数量を測定した。次の分散もプロットした。(i)粒子の直径に対する数、および(ii)全粒子の直径に対する容量。全粒子の容積を、それぞれ特定の粒子直径の間隔内で含まれる個々の粒子の容積の和として計算した。
ANOVAとDuncanの分析を、材料状態間で発生した粒子での有意差を試験するために使用した。
【0131】
磨耗重量率は、架橋放射線量の増加によって低下した。C‐PEに関しては、平均磨耗率±95%CIは36.9±0.5mg/Mサイクルであり、それは5−XPEについては9.0±0.6mg/Mサイクルに低下し、さらに10−XPEについては-0.5±0.2mg/Mサイクルまで低下した
。SEM顕微鏡法を基にすれば、C‐PE,5−XPEおよび10−XPE粒子は、同様な大部分のモルフォロジー−サブミクロン以下の顆粒を有している(図11)。長さが5〜10の小繊維は、C−PE粒子についてときとして見られた。
【0132】
5−XPE材料は、サイクル(N=11.1×106±2.5×106)当たり最大の粒子数量を発生し、C−PE材料(N=6.2×106±1.1×106)よりサイクル当たり78%より多い粒子となる(p<0.01)。10−XPE内張り(N=2.2×106±0.2×106)は、C−PE内張りよりサイクル当たり65%少ない粒子を発生した(p<0.01)。
【0133】
3つの材料条件について粒子の寸法分布に対する数量を図12に示した。全粒子の寸法に対する容積の分布を図13に示した。3つの材料が、全試験期間で異なる粒子の数量と容積を生成したため、分布を、パーセント周期の代わりに絶対数量で示している。5−XPE内張りは、C−PE内張りよりも直径で0.2μm以下のより多数でより大きな容積の粒子を発生した。0.2μm以上のC‐PE粒子は、5−XPE粒子より、数量と容積で勝っていた。C‐PEおよび10−XPE内張りは、0.125μmより小さな直径を有する同等の数量と容積の粒子を発生した。0.125μmより上では、C−PE粒子は10−XPE粒子より数量と容積で勝っていた。
【0134】
架橋放射線量の増加は、我々の解剖学的股関節シミュレーターにおける試験のような、少ない重量的磨耗の結果となり、以前の報告(McKelloら, 1999; Muratogluら, 1999)と一致する。放射線量の増加は、また粒子寸法分布に影響し、それぞれの試験材料に関して、磨耗重量と粒子寸法との間のユニークな関係の結果となる。結果として、5−XPE材料に関する磨耗重量における低下は、C−PE材料と比較したとき、粒子数量における低下へ言い換えられない。
【0135】
生体内細胞培養研究は、他の因子の間で、マクロファージ応答は、粒子のモルフォロジー、寸法、数量、および容積投量の関数であることを示している(Shanbhagら, 1997; Greenら, 2000および Gonzalezら, 1996)。通常および2つの架橋されたUHMWPE材料は、モルフォロジーにおいて類似の磨耗である粒子を発生した。しかしながら、粒子数量と容積分布における差異は、3つの材質の間に存在する。5−XPE材料は、0.2μm以下の直径を有する粒子の最大の数量と容積を生成した。0.2μm以上で、C−PE材料は、粒子の最大数量と容積を生成した。
それぞれの寸法間隔に関して、10−XPE粒子の数量と容積は、C‐PEのそれより小さいかまたは等しい。最近の細胞培養研究は、より小さいUHMWPE粒子(0.24μm)は、より少ない容積投与量(10μm3/マクロファージ)で骨吸収活動を起こし、一方、大きな粒子(0.45μmおよび1.71μm)は、マクロファージ当たり100μm3の投与量で、骨吸収活性を生じた(Greenら、2000)。試験された3つの材料の粒状形態が異なる粒子寸法分布を示すため、これらの材料からの磨耗破片に対する生物学的な応答は、異なっている。
【0136】
実施例11.ラメラの厚み
ラメラ厚みの値を、TA Instruments 2910示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。試験をASTM D−3417で行った。およそ2.5mg重量の5試料を、次の材料の中心部から採取した。(i)10MRadの線量でガンマー線照射し、かつ引き続き、147℃でアニールした(XL−147)GUR1050UHMWPEバーストック、および10MRadの線量でガンマー線照射し、かつ引き続き140℃でアニールした(XL−140)GUR1050UHMWPEバーストック。
【0137】
サンプルを、アルミニウム坩堝中に捲縮し、DSC試料室内に置いた。試料室内を、およそ30ml/分の流量で、窒素ガスで連続的に洗い流した。対照サンプルは空のアルミニウム坩堝中であった。DCSサイクルは30℃で平衡する2分からなり、引き続き10℃/分の速度で150℃まで加熱する。
【0138】
吸熱の山に相当する温度を、融点(Tm)として採用した。ラメラ厚み(l)を次のとおり計算した。

l=(2・σe・Tmo)/(ΔH・(Tmo―Tm)・ρ)

式中、σeはポリエチレンの末端自由表面エネルギー(2.22×10―6cal/cm2)で、ΔHはポリエチレン結晶の融解熱(69.2cal/g)で、ρは結晶領域の密度(1.005g/cm3)で、かつTmoは完全ポリエチレン結晶の融点である(418.15K)。
【0139】
平均ラメラ厚みの値は、XL−147およびXL−140材料に関して、それぞれ369.0および346.9オングストロームであった(表4、表5)。
【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

【0142】
実施例12.トランス‐ビニレン指数
ポリエチレンに関して、トランス‐ビニレン単位(TVU)の濃度は、低線量水準(<40Mrad)で吸収された放射線量と直線関係であることを示している(Lyonsら,1993)。
【0143】
トランス‐ビニレン濃度を、次の材料に関して測定した。(i)2.5MRadの線量でガンマー線照射され、かつ引き続き150℃でアニールしたGUR1050UHMWPEのバーストック(ガンマ−2.5)、(ii)5MRadの線量でガンマー線照射し、かつ引き続き150℃でアニールしたGUR1050UHMWPEのバーストック(ガンマ−5)、(iii)10MRadの線量でガンマー線照射し、かつ引き続き147℃でアニールしたGUR1050UHMWPEバーストック(ガンマ−10−147)、および(iv)10MRadの線量でガンマー線照射し、かつ引き続き140℃でアニールしたGUR1050UHMWPE棒株(ガンマ−10−140)。
それぞれの材料の型に関して、長方形の標本(63.50×12,70×6.35mm)を機械加工し、200〜250μm厚の試料をスレッジミクロトームおよびダイヤモンド刃を用いて薄切りした。それぞれの薄切りに関して、UMA 500赤外顕微鏡を備えたBio‐Rad FTS 25 分光光度計を用いてIRスペクトルを得た。それぞれのスペクトルについての正方形の試料採取面積は、200μm2×200μm2であった。965cm-1でのトランス−ビニレンの振動下の面積を1900cm-1振動下のそれに対して標準化することによりトランス‐ビニレン指数(TVI)を計算された。それぞれの材料の型に関する平均TVIを、標本の表面から0.5、1.0、1.5および2.0mm隔たった深さで採取された4つの測定値の平均として採用した。
【0144】
それぞれの材料型に関する平均TVI値を図14に示した。TVI値は放射線量の増加により増大することが発見された。
【0145】
実施例13.140℃と150℃の間でアニールされた架橋UHMWPEの磨耗に対する効果
UHMWPEを照射し、引き続き140℃の公称温度(138〜142℃の範囲)でアニールすることで140−XLPEを製造した。本発明の磨耗分析プロセスを用いておよそ500万サイクルで解剖学的股関節シミュレーター上のCoCrおよびジルコニア頭に対して、140−XLPE内張りを、磨耗に関して試験した。両方の関節接合の組み合わせに関して、磨耗重量および粒子発生率を測定した。結果を、CoCr頭およびジルコニア頭に対して試験された、通常の(非―架橋の)UHMWPE(C−UHMWPE)および147℃アニールXLPE(147−XLPE)のそれらと比較した。
【0146】
累積質量変化を試験内張りに関して測定し、浸漬対照を液吸収に関して補正するために使用した。質量データを、UHMWPEに関して、0.93g/cm3の密度で割り算することで、容積データに変換した。集合磨耗容積率を、累積磨耗容量対サイクル総数の直線回帰によって、それぞれの条件に関して測定した。集合磨耗率を、それぞれの全データセットを通して適合する直線の勾配として採用する。
【0147】
粒子の分離と分析を、実施例3で述べた如く、血清試料に対して実施した。合計30の血清試料を回収し、分析した。
【0148】
粒子のキャラクタリゼーションを、20,000×と1,000×の倍率で行った。最低20視野を、血清試料に対して分析した。各視野内に含まれた粒子を、完全自動デジタル画像システム(eXL II Analyzer, Oxfrod Instruments Ltd, Oak Ridge, TN)を使ってグレースケール水準の閾値に基づき、それぞれの粒子の境界を定義し、投影面積をデジタル画像ソフトウエアーにより計算した。粒子直径(Dp)、表面積(Ap)および容積(Vp)を、それぞれの粒子の投影面積に基づき計算した。

p=2(投影面積/π)1/2 (1)

p=πDp2 (2)

p=(πDp3)/6 (3)
【0149】
それぞれの支持面継ぎ手に関して、全ての血清採取物のデータを合わせ、粒子の直径の関数として発生した粒子の数量の分布を測定した。検出された粒子の合計数量を、それぞれの視野に関して測定し、視野(NF)当たりの平均粒子数量と試験サイクル(Nc)当たりに発生した粒子数量を、それぞれの血清試料に関して計算した。
【0150】
CoCrおよびジルコニア頭に対して試験された140−XLPEの未加工の質量測定により磨耗重量を計測した。磨耗のデータを表6に要約した。試験サイクルの関数としての累積磨耗を両方の条件に関してグラフ化して図15で示した。CoCrおよびジルコニア頭に対して、140−XLPE内張りは、試験の終点で、正味の質量増加(マイナス磨耗重量)を示した。
正味の質量増加は、次の二つの要因に起因する。(i)試験内張りによって吸収された液の質量が、浸漬対照によって吸収された質量より大きく、そのために試験内張りに関する正味の質量増加となる。(ii)液の吸収に起因する正味の質量増加が、試験内張りに関する磨耗に起因する正味の質量損失より多い。
CoCrおよびジルコニア頭に対する140−XLPE内張りは、最初の200万回サイクルの試験に関して液の吸収に起因する質量増加の傾向を示し、次に残りの300万サイクルの試験に関して質量損失傾向を示した。ジルコニア頭に対する140−XLPE内張りは、全ての試験を通して、質量増加の傾向を示した。集合磨耗率および95%信頼間隔は、次のとおりであった。140−XLPE/CoCr磨耗率は0.2±0.7mm3/Mサイクル(±95)であった。
【0151】
CoCr頭に対する140−XLPE、147−XLPEおよびC−UHMWPEの内張りの集合磨耗重量率を、表7に要約した。140−XLPEの内張りは、147−XLPEの内張りより高い集合磨耗重量率で磨耗した(0.2対―2.0mm3/Mサイクル;p<0.0001)。しかしながら、両方の内張り型は、C−UHMWPEの内張りよりも極めて低い集合磨耗重量率を示した。
【0152】
表8は、ジルコニア頭に対して試験された140−XLPE、147−XLPEおよびC−UHMWPEの内張りの重量率を要約している。140−XLPEおよび、147−XLPEの内張りの磨耗重量率は、同等(-1.8および1.7mm3/Mサイクル;p=0.55)で、かつC−UHMWPEの内張りのそれよりも極めて低かった(28.8mm3/Mサイクル;p<0.0001)。
【0153】
140−XLPEの磨耗粒子のSEM顕微鏡写真で評価された磨耗粒子の形態を、図16に示した。CoCrおよびジルコニア大腿骨頭の両方に対して、内張りから発生した磨耗破片の主要な形態は、円形およびミクロン以下であった。伸張した小繊維は、C−UHMWPE(または、C−PE)の内張りからの磨耗粒子の間でたまに見られる如く、XLPE内張りから発生した粒子の間には存在しなかった。
【0154】
140−XLPE/ジルコニア支持面継ぎ手は、全ての試験を通して、140−XLPE/CoCr支持面継ぎ手より少ない粒子を発生した(図17)。2つの支持面継ぎ手の平均粒子の発生率は、次のとおりである。140−XLPE/CoCrはサイクル当たり2.5×106±0.4×106の粒子を発生(±標準偏差)し、140−XLPE/ジルコニアはサイクル当たり1.5×106±0.6×106の粒子を発生した。
【0155】
CoCr頭に対して試験された140−XLPE、147−XLPEおよびC−UHMWPEの内張りの粒子発生率を、表7に要約した。140−XLPEおよび147−XLPE内張りの粒子発生率は、統計的に同等(それぞれ、サイクル当たり2.5×106対2.2×106粒子;p=0.50)で、C−UHMWPEの内張りの粒子発生率(サイクル当たり8.0×106粒子)より、およそ70%低かった(p<0.0001)。
【0156】
表8で示されたものは、ジルコニア頭に対して試験した140−XLPE、147−XLPEおよびC−UHMWPEの内張りの粒子発生率である。140−XLPEおよび147−XLPE内張りの粒子発生率は、同等(それぞれ、サイクル当たり1.5×106対1.3×106粒子;p=0.50)で、C−UHMWPEの内張りの粒子発生率(サイクル当たり6.1×106粒子)よりおよそ75%低かった。
【0157】
粒子寸法の分布をヒストグラムで評価した。CoCr頭に対して試験された内張りに関して、発生した粒子数量を、粒子直径の関数として図18に示した。140−XLPEおよび147−XLPE内張りは、C−UHMWPEの内張りに比べて、全ての寸法間隔でより少ない粒子を発生した。図19は、ジルコニア頭に対して試験された内張りに関して、発生した粒子数量を寸法の関数として示した。再び、140−XLPEおよび147−XLPE内張りは、C−UHMWPEの内張りに比べて、全ての寸法間隔で、より少ない粒子を発生した。
【0158】
【表6】

【0159】
【表7】

【0160】
【表8】

【0161】
実施例14.磨耗抵抗を増したセラミック対向支持面表面に関節接合された架橋UHMWPE(XLPE)支持面部品
【0162】
本発明の架橋されたUHMWPE(XLPE)を、架橋および磨耗抵抗を増加させるために、ガンマー線照射した。しかしながら、イオン化放射に対する曝露は、空気中で酸素と結合する遊離基を生成し、長期にわたると酸化劣化と脆化に結びつく。放射架橋(すなわち、照射)の段階に引き続き、XLPE材料を、遊離基を冷却しかつ酸化劣化に対する抵抗を与えるために、材料の融点の最高より高い147℃の温度でアニールする。この工程で製造されたXLPEは、股関節シミュレーターで試験された場合に、通常の非―架橋内張りよりも、低い重量的磨耗とより少ない磨耗粒子を発生することをここに示している。最高融点より僅かに低い140℃でのアニールは、XLPE材料の照射を通して生成した遊離基を有効に消化することを教えており、それにより酸化の安定性を付与(米国特許5,414,049を参照)するが、磨耗特性は検出されなかった。
【0163】
CoCr頭に対する140−XLPEの内張りは、147−XLPEの内張りより高い集合磨耗重量率で磨耗した(それぞれ、0.2対−2.0mm3/Mサイクル;p<0.0001)。しかしながら、140−XLPEの内張りの集合磨耗重量率は、C−UHMWPEの内張りのそれ(36.4mm3/Mサイクル)よりも極めて低かった(p<0.0001)。140−XLPEおよび147−XLPE内張りの平均粒子発生率は、統計的に同等(それぞれ、サイクル当たり2.5×106対2.2×106粒子;p=0.50)で、C−UHMWPEの内張りの平均粒子発生率(サイクル当たり8.0×106粒子)より、およそ70%低かった(p<0.0001)。140−XLPEおよび147−XLPE内張りは、C−UHMWPEの内張りに比べて、全ての寸法間隔でより少ない粒子を発生した。
【0164】
ジルコニア頭に対する140−XLPEおよび147−XLPEの内張りの磨耗重量率は、同等(−1.8および-1.7mm3/Mサイクル;p=0.55)で、かつC−UHMWPEの内張りのそれよりも極めて低かった(28.8mm3/Mサイクル;p<0.0001)。140−XLPEおよび147−XLPE内張りの平均粒子発生率は、同等(それぞれ、サイクル当たり1.5×106対1.3×106粒子;p=0.50)で、C−UHMWPEの内張りの平均粒子発生率(サイクル当たり6.1×106粒子)より、およそ75%低かった。140−XLPEおよび147−XLPEの内張りは、C−UHMWPEの内張りに比べて、全ての寸法間隔でより少ない粒子を発生した。
【0165】
CoCrおよびジルコニア頭の両方に対する試験に関して、140−XLPEおよび147−XLPE磨耗粒子は、主として円形およびミクロン以下であって同じ主要な形態を共有している。C−UHMWPEの内張りからの磨耗粒子の間でたまに見られる伸張した小繊維は、XLPE内張りから発生した粒子の間には存在しなかった。
【0166】
140℃でアニールされた10MradXLPE(10−XPEまたは、交替に10−XLPE)内張りは、通常の非―架橋の内張りと比べた場合、磨耗質量と粒子数量の両方において著しい低下を示した。これらの磨耗の低下は、CoCr大腿骨頭およびジルコニア大腿骨頭に対して関節接合されたときに立証された。さらに、140℃アニールされたXLPEは、147℃でアニールされたXLPEと類似の微粒子特性を示し、その中で両方の材料は、C−UHMWPE内張りと対比して、全ての寸法範囲で粒子数量の低下を示した。このことは、磨耗破片に対する生体内マクロファージ応答が、粒子寸法分布と数量の両方の関数であることが見出されているので、特に重要である(Greenら, 1998;Gonzalezら, 1996;Shanbhagら, 1994; Greenら, 2000)。140‐XLPEが全粒子寸法範囲で、C−UHMWPEより少ない粒子を発生するため、CoCrおよびジルコニア頭に対する140−XLPE材料の使用は、生体内炎症応答を低下させることが期待される。
【0167】
実施例15.研磨条件下での架橋UHMWPE(XLPE)中の磨耗破片
XPEの異なった形態も、大腿骨頭の事前粗面化(McKellop,1999)または試験血清中への研磨性アルミナ粒子の添加(Laurent,2000)のいずれかの研磨性シミュレーターの下での容積磨耗を改善するために試験された。これらの研究は、CoCr頭が生体内で粗面化され、ポリエチレン内張りの磨耗の加速に結び付くことが知られているので、特に重要である(Jasty,1994;Hall,1997)。研磨性条件の効果を改善する一つの戦略は、CoCr頭よりも擦り傷に対して抵抗性がより大きいセラミック頭(アルミナまたは、ジルコニア)を使用することである(Fenollosa,2000)。しかしながら、XPEと継ぎ手結合されたセラミック頭についての股関節シミュレーターのデータは、今日まで報告されていない。加うるに、研磨性条件下のC−PEおよびXPEから放出された磨耗粒子の分析は、研究されていなかった。本研究は、C−PEおよび10Mrad架橋されたUHMWPE(10−XPE)に対して試験された、事前に擦り傷をつけられたCoCrおよびジルコニア大腿骨頭に関する股関節シミュレーターの重量的および磨耗粒子のデータを報告する。
【0168】
C−PE(非照射の)と10Mrad(ガンマー線照射され、150℃で熱的にアニールされた)架橋されたUHMWPE(10−XPE)の12mm内張りを、解剖学的股関節シミュレーター中で500万サイクルまで試験した(AMTI,Watertown、MA)。内張りの両型を、(1)平滑CoCr、(2)粗面化CoCr、および(3)平滑ジルコニアに対して試験した。非希釈のアルファー分級物ウシ血清を使用した。
粗面化された大腿骨頭を、臨床的に見られたような、多方向の擦り傷を得るために、重合体の円錐体と100グリットのアルミナ粉末に対して、遠心槽仕上機中で、がら研磨することにより製造した(Jasty,1994)。頭の粗度の値を、干渉計(Wyko RST Plus,Veeco, Plainview,NY)を用いて測定し、以下のとおりであった。(i)平滑CoCr頭(Ra=0.02±0.01μm;Rpk=0.02±0.01μm)、(ii)平滑ジルコニア頭(Ra=0.01±0.01μm;Rpk=0.02±0.01μm)、および(iii)粗面化CoCr頭(Ra=0.17±0.01μm;Rpk=0.47±0.03μm)。
粗面化頭の平均Ra値は、干渉計で測定した、改修されたCoCr頭に関して報告された臨床の範囲内であった(Bauer、1994を参照)。
ジルコニア頭は、UHMWPEカップに対して関節接合された際、通常生体中で粗面化を示さないので、粗面化されなかった(Minikawaw、1998)。
【0169】
本研究で試験された頭/内張りの組合せに関する磨耗重量率を、表9に示した。10−XPE内張りは、全ての頭に対してC−PEより顕著に(p<0.01)低い磨耗重量を示した。試験された6つの頭/内張りの組合せのそれぞれからの粒子のSEM顕微鏡写真を、図20(C−PE)および21(10−XPE)に示す。全ての大腿骨頭の型に対するC−PE内張りからの破片は、たまに5μm長さに及ぶ小繊維を有するが、大部分はミクロン以下および円形である。平滑CoCrおよびジルコニア頭の両方に対する10−XPE内張りから発生した微粒子破片は、殆ど全くミクロン以下および円形だけであった。粗面化CoCr頭に対して試験されたときだけ、10−XPE内張りはかなりの数の小繊維を生成した。粒子の発生率を表9にリストアップした。10−XPE内張りは、平滑CoCrおよびジルコニア頭に対して、C−PE内張りより少ない磨耗粒子(p<0.01)を発生した。しかしながら、粗面化されたCoCr頭に対して、C−PE(10.5粒子/106サイクル)と10−XPE(8.9粒子/106サイクル)の間の粒子発生率における差異は、有意差なし(p=0.17)であった。
【0170】
高度に架橋したUHMWPEに関する、検出されざる清浄条件の磨耗重量は、Muratogluら、1999によって報告されている。しかしながら、検出できない磨耗は、粒子が発生していないことを必ずしも意味するわけではないことが報告されている(Scottら、2001)。粗面化されたCoCr頭に対して、臨床的に共通的に起こる条件では、10−XPEは、検出可能な磨耗重量を示し(19.0mm3/Mサイクル)、粒子の発生率はC−PEに関するよりも統計的に異なっていない。擦り傷抵抗性ジルコニアセラミック頭に対して、10−XPE内張りは、検出されざる重量的磨耗と粒子発生率が全ての他の内張り/頭の組合せより低いことを示した。加うるに、ジルコニア頭はC−PEに関してより少ない磨耗となる。
【0171】
股関節シミュレーターの研究は、CoCr頭に対する高度に架橋されたUHMWPEの磨耗特性の利点が、頭が生体中に見られるのと同じやり方で擦り傷をつけられた場合に、減少することを示した。しかしながら、擦り傷をつけた条件下では、重量的磨耗はC−PE関するよりも10−XPEに関していまだ大いに低く、粒子の発生率は統計学的に同等である。データは、セラミックの如くCoCrより硬く、かつ一層擦り傷抵抗性である対向支持面表面の使用が、XPEの極めて高い磨耗挙動を保持することによる利点であることを示唆している。さらに、ジルコニア頭は、延びた期間を超える研摩条件と、より低い磨耗と粒子発生率における結果の下で、CoCr頭に対して実施可能な代替である。
【0172】
【表9】

【0173】
参考文献
次の参考文献は、ここで開示されたものに対する典型的な手順または他の詳細な補足を与える範囲で、以下に言及することによりここに具体的に組み込まれる。
【0174】
アメリカ特許No.6,228,900
アメリカ特許No.6,242,507
アメリカ特許No.6,316,158
アメリカ特許No.6,281,264
アメリカ特許No.5,037,938
アメリカ特許No.4,055,862
アメリカ特許No.4,508,606
アメリカ特許No.5,030,402
アメリカ特許No.5,037,928
アメリカ特許No.5,414,049
【0175】
アメリカ特許No.5,449,745
アメリカ特許No.5,543,471
アメリカ特許No.5,650,485
アメリカ特許No.5,728,748
アメリカ特許No.5,879,400
アメリカ特許No.6,017,975
アメリカ特許No.6,165,220
EP 0722973 A1
EP 0729981 A1
EP.0737481 A1
【0176】
国際特許出願No.95/21212
国際特許出願No.97/29787
国際特許出願No.97/29793
国際特許出願No.98/01085
Amstutz,H.C.ら、Campbell, P.ら、Kossovsky,N.ならびにClarke,I.C.Clinical OrthopaedicsおよびRelated Reserch、276(1992) 7〜18.
Bekerら、1999、p.573
Bergmann,G.、Grachen,R.F.およびRohlmann,A.、Journal of Biomechanics、26(1993)969〜990
Bhambri,S.、Laurent,M.、Campbell,P.、Gilbertson,L.およびLin,S.、Transactions of the 45th Orthopaedic Reserch Society, 1999, 838p.
Bloebaum.ら、Clin.orthop. 269、120〜127、1991.
Buchanan.ら,1998、Materials Congress 1998、148.
【0177】
Campbell,P.、Ma,S.、Yeom,B.、McKellop,H.、Schmalzried、T.P. and Amstutz,H.C.Journal of Biomedical Materials Research,29(1995)127〜131.
Chiba,J.、Rubash,H.E.、Kim, K.J.およびIwaki, Y.、Clinical Orthopaedics and Related Resarch、300(1994)304〜312.
Essential Medical Physiology、Johnson、1992.
Essner、6th WBC、854(2000).
Goldring,S.R.、Schiller,A.L.およびRoelke,M.、Journal of Bone and Joint Surgery、65A(1983)575〜584.
Gonzalez,J 、Biomed Mater Res、30(4)、463〜73(1996)
Gonzalez、JBMR、30(4)、463〜73(1996).
Gonzalez, O.、Smith, R.L.およびGoodman, S.B.、Journal of Biomedical Materials Research、30(1996)463〜73.
【0178】
Goodman,S.B.、Huie,P.Y.、Song, Schurman,D.、Maloney,W.、Woolson,S.およびSibley,R.、Journal of Bone and Joint Surgery、80B(1998)531〜539.
Green、Biomaterials、19(24)、2297〜302(1998)
Green、JBMR,53(5)、490〜497(2000).
Green,T.R.、Fisher, J.、Mattews, J.B.、Stone, M.H.およびIngham, E.、Jornal of Biomedical Materials Research、53(2000)490〜497.
Green,T.R.、Fisher,J.、Stone,M.、Wroblewski, B.M.およびIngham,E.、Biomaterials、19(1998)2297〜2302.
Hamilton,J.V.ら、Trans 43rd ORS、782、1997.
Harris,W.H.、Clinical Orthopaedics and Related Research、311(1995)46〜53.
ISO/CD 14242〜1.2、"Implants for Surgery- Wear of Total Hip Prostheses- Part I:Loading and Displacment Parameters of Wear Testing Machines and Corresponding Environmental Conditions for Test,"Draft Standard、October 1997.
【0179】
Jasty,M.、Bragdon,C.、Jiranek, W.、Chandler,H.,Maloney, W.およびHarris, W.H.、Clinical Orthopaedics and Related Research、308(1994)111〜126.
Jianek,W.A.、Machado, M.、Jasty, Jevsevar,D.、Wolfe,H.J.、Goldring, S.R.、Goldberg,M.J.およびHarris,W.H.、Journal of Bone and Joint Surgery,75A(1993)863〜879.
Johnston, R.C.およびSmidt, G.L.、Journal of Bone and JointSurgery、51A(1969)1083〜1094.
Livingstonら、ORS、22、141〜24、1997.
【0180】
Lyons,B.J.およびJohnson, W.C.、Radiolytic Formation and Decay of trans-Vinylene Unsturation in Polyethylene,in Irradiation of Polymeric Materials:Processes,Mechanisms, and Applications, E.Reichmains,C.W.Frank, and J.H. O'Donnell,Editors.1993、American Chemical Society: Washington,D.C.、p.62〜73.
Metthewsら、2000 Biomaterials、p.2033.
McKellop、CORR、311、3〜20(1995).
McKellop,H.A.、Campbell,P.、Park,S.H.、Schmalzried, T.P.、Grigoris,P.、Amstutz,H.C.およびSarmiento,A.、Clinical Orthopaedics and RelatedResearch、311(1995)3〜20.
McKellop、J Ortho Res、17(2)、157〜67(1999)
Muratoglu、45th ORS trans、829(1999)
【0181】
Niedzwiecki, S.、Short,J.、Jani,S.,Sauer, W.、Klapperich, C.、Ries,M.およびPruitt, L.、Transactions of the 25th Society for Biomaterials,1999,150p.
Niedzwiecki、SFB Trans.、150(1998).
Oka,M.ら、"Wear-resistant properties of newly improved UHMWPE," Trans. 5th
Wolrd Biomaterials Congress、520、1996.
Oonishi,H.ら、J.Mat.Sci:Materials in Medichine、8、11〜18、1997.
Oonishi,H.ら、Mat.Sci:Materials in Medichine、7、753〜63、1996.
Oonishi,H.ら、Radiat.Phys.Chem.、39(6)、495、1992.
Painter, P.C.、Coleman,M.M.およびKoening, J.L、the Theory of Vibrational Spectroscopy and Its Application to Polymeric Materials、John Wiley、New York、1982、252p.
Pathology、Rubin、第2版、1994
Polineni,V.K.ら、J.44th Annual ORS、49、1998.
【0182】
Rose,R.M.、Goldfarb, E.V.、Ellis,E.およびCrugnola, A.N.、Radiation sterilization and the wear rate of polyethylene," Journal of Orthopaedic Research、Vol.2、No.4、pp.393〜400、1984.
Sanford、ORS Trans、119(1995)
Schmalzried, T.P.、Jasty,M.およびHarris, W.H.、Journal of Bone and Joint Surgery、74A(1992)849〜863.
Scott, M.、Forster, H., Jani, S.、Vadodaria, K.、Sauer, W.およびAnthony, M.、Transactions of the Sixth World Biomaterials Congress、2000、1777.
Shanbhag, A.S.、Jacobs, J.J.、Galante, J.O.およびGiant, T.T.、Journal of Biomedical Materials Research、(1994)28 81〜90.
Shanbhag, A.S.、Jacobs, J.J.、Glant, T.T.、Gilbert, J.L.、Black, J.およびGalante,J.O.、Journal of Bone and Joint Surgery、76B(1994)60〜67.
Shanbhag、(1997)Clin Ortho、342、205〜17.
【0183】
Streicher, R.M.、"Influence of Ionizing Irradiation in Air and Nitrogen for Sterilization of Surgical Grade Polyethylene for Implants,:Radiation Physics and Chemistry;The International Journal for Radiation Reactions, Processes and Industrial Applications、Vol.31、NO.4〜6,pp.693〜698、1988.
Willert, H.G.、Bertram, H.およびBuchhorn, G.H.、Clinical Orthopaedics and Related Research、258(1990)95〜107.
Yamamotoら、Trans.6th World Biometerials Congress、485、2000.
Muratoglu、45th ORS、829(1999).
McKellop、J Ortho Res、17(2)、157〜67(1999).
McKellop、CORR、369、73〜82(1999).
Laurent、6th WBC、874(2000).
Jasty、JBJS、76-B、73〜7(1994).
【0184】
Hall、Med Eng Phys、19(8)、711〜9(1997).
Fenollosa、CORR、379、55〜67(2000).
Bauer、CORR、298、11〜8(1994).
Minikawa、JBJS、80-B、894-9(1998).
Scott、Wear、251、1213〜7(2001).
Scott、47th ORS、1(2001)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)について磨耗粒子の解析を行い、
UHMWPEを、股関節シミュレータの100万サイクルあたり最も低い粒子数を示す線量で架橋する
工程からなり、存在する粒子の数が0.05μm以下の孔径を有するフィルターを使って測定される、磨耗粒子の数が減少した体内で使用するためのUHMWPE医療用インプラントを製造する方法であって、
UHMWPEを架橋し、
UHMWPEをアニールし、
宿主内での使用をシミュレーションし、
0.05μmの孔径を有するフィルターを使って磨耗粒子について血清を試験し、
磨耗粒子の数を測定し、
メガサイクルあたりに発生する約5×1012よりも少ない磨耗粒子を有するインプラントを
提供する架橋線量を選択し、
0.2μm以下の直径を有する磨耗粒子の数が減少される方法。
【請求項2】
UHMWPEを架橋し、
UHMWPEをアニールし、
UHMWPEを機械加工してインプラントを形成し、
インプラントを磨耗試験して磨耗粒子を発生し、
磨耗粒子を採取し、
粒子を0.05μm又はそれより小さな孔径を有するフィルターを用いて濾過し、
全粒子表面積を測定し、
1.17m2/メガサイクルより小さい全粒子表面積を有するインプラントを提供する架橋線量を選択する
工程からなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アニールを、150℃以下で行う請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アニールを、150℃より下、かつ140℃より上で行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
アニールを147℃で行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
アニールを140℃で行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
架橋が、0.10以上のトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
架橋が、0.15より大きく、かつ0.20より小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
機械加工を、架橋前に行う請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
架橋を、放射線を使って、5より大きいが15以下のメガラド(M Rad)の線量で行う請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
架橋を、放射線を使って、5より大きいが10以下のメガラド(M Rad)の線量で行う請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
磨耗試験又はシミュレーションを、関節シミュレータ上で行う請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
採取を、酸消化、塩基消化または酵素的消化を用いて行う請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
インプラントが、300オングストロームより大きいラメラの厚みを有する重合体構造を有する求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
磨耗粒子が、0.2μm以下の直径を有する1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
UHMWPE医療用インプラントへのマクロファージ応答が減少する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
UHMWPE医療用インプラントの骨溶解が減少する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
UHMWPEが架橋され、アニールされ、UHMWPE医療用インプラントが、磨耗試験して磨耗粒子を発生させたときに、0.05μm以下の直径を有する磨耗粒子の総数がメガサイクルあたり約5×1012よりも少ない磨耗特性を有する、体内で使用するためのUHMWPE医療用インプラント。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法で製造される、体内で使用するためのUHMWPE医療用インプラント。
【請求項20】
磨耗粒子が、0.2μm以下の直径を有する請求項18または19に記載のインプラント。
【請求項21】
架橋を、放射線を使って、5より大きいが15以下のメガラド(MRad)の線量で行う請求項18〜20のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項22】
架橋を、放射線を使って、5より大きいが10以下のメガラド(MRad)の線量で行う請求項18〜21のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項23】
アニールを150℃以下で行う請求項18〜22のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項24】
アニールを、150℃より下、かつ140℃より上で行う請求項18〜23のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項25】
アニールを147℃で行う請求項18〜24のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項26】
アニールを140℃で行う請求項18〜25のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項27】
架橋が、0.10以上のトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である請求項18〜26のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項28】
架橋が、0.15より大きく、かつ0.20よりも小さいトランス−ビニレン指数を有するインプラントを形成するためには十分である請求項18〜27のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項29】
インプラントが、300オングストロームより大きいラメラの厚みを有する重合体構造を有する請求項18〜28のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項30】
メガサイクルあたり約5×1012よりも少ない磨耗粒子を発生する架橋されたUHMWPEからなる耐久表面、およびセラミックからなる支持面表面からなる人工総関節である、請求項18〜29のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項31】
セラミックの支持面表面がジルコニアからなる請求項30に記載のインプラント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2010−88908(P2010−88908A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270544(P2009−270544)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【分割の表示】特願2002−567369(P2002−567369)の分割
【原出願日】平成14年2月25日(2002.2.25)
【出願人】(397071355)スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド (186)
【Fターム(参考)】